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特許拒絶査定不服審判

2020-005322

アミン化合物、これから由来された官能基を含む変性共役ジエン系重合体、及び変性共役ジエン系重合体の製造方法

審判番号
2020-005322
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-544128外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年04月20日
審決日
2022年07月26日
公報発行日
2023年01月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .536-Z (C08F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-544128「アミン化合物、これから由来された官能基を含む変性共役ジエン系重合体、及び変性共役ジエン系重合体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月12日国際公開、WO2018/128330、平成31年 3月28日国内公表、特表2019-508552〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2017年(平成29年)12月28日(パリ条約による優先権主張 2017年1月6日、2017年11月8日 韓国)を国際出願日とする出願である。そして、令和1年9月3日付けの拒絶理由通知に対し、同年12月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和2年4月20日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がされた。

そして、当審は、令和3年10月26日付けで、拒絶査定の理由(実施可能要件)に関連して、審判請求人の主張を明らかにするため、概略、以下の内容の審尋を行ったが、審判請求人から回答はなかった。

「特許請求の範囲における化学式1及び化学式2で表される第3級アミン化合物に関して、審判請求人が審判請求書において示した製造方法(合成方法)の主な反応条件を提示すると共に、本願出願時に当業者が過度の試行錯誤を要することなく、上記反応条件を採用して上記第3級アミン化合物を製造することができたことを説明してください。」

第2 本件補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和2年4月20日の手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容

本件補正は、特許請求の範囲の請求項7における補正前の「前記化学式1中、Aは、炭素数1から20のアルキレン基であり、」を、補正後の「前記化学式1中、Aは、炭素数1から10のアルキレン基であり、」とし、補正後の請求項6とする補正事項を含むものである。

2 補正の適否

(1)補正の目的について

本件補正は、以下に示す補正前の請求項7を補正後の請求項6にする補正事項を含むものである。

[補正前の請求項7]

「下記化学式1で表される第3級アミン化合物由来の官能基を含み、
ゲル透過型クロマトグラフィーで分析されるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が 100,000g/molから3,000,000g/molであり、
分子量分布(Mw/Mn)が1.30から2.50であり、
重量平均分子量(Mw)とピークトップ分子量(Mp)の比(Mw/Mp)が0.70から1.125である変性共役ジエン系重合体。
【化10】
[図:0001392419000001.jpg]
前記化学式1中、
Aは、炭素数1から20のアルキレン基であり、
X1からX3は、互いに独立して酸素原子である。」

[補正後の請求項6]

「下記化学式1で表される第3級アミン化合物由来の官能基を含み、
ゲル透過型クロマトグラフィーで分析されるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が 100,000g/molから3,000,000g/molであり、
分子量分布(Mw/Mn)が1.30から2.50であり、
重量平均分子量(Mw)とピークトップ分子量(Mp)の比(Mw/Mp)が0.70から1.125である変性共役ジエン系重合体。
【化10】
[図:0001392419000002.jpg]
前記化学式1中、
Aは、炭素数1から10のアルキレン基であり、
X1からX3は、互いに独立して酸素原子である。」

(以下、補正後の請求項6に係る発明を「本件補正発明」という。なお、下線部は補正された箇所を示し、当審が下線を付与した。)

上記補正事項は、補正前の「Aは、炭素数1から20のアルキレン基であり、」を補正後の「Aは、炭素数1から10のアルキレン基であり、」にすることにより、Aであるアルキレン基の炭素数の範囲を狭くするものである。そして、補正前の請求項7に記載された発明と補正後の請求項6に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。

そうすると、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(独立特許要件)について検討する。

(2)独立特許要件について

ア 本件補正発明

本件補正発明は、上記(1)に記載したとおりのものである。

イ 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)の判断について

(ア)実施可能要件の判断手法

特許法第36条第4項第1号は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。

一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と定めている。

これは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が、明細書に記載した事項と出願時の技術常識とに基づき、物の発明については、その物を作れ、かつ、その物を使用することができ、物を生産する方法の発明については、その方法により物を生産することができる程度に、発明の詳細な説明を記載しなければならないことを意味するものである。そこで、この点について以下に検討する。

(イ)本願明細書に記載された事項

本願明細書には、以下の記載がある。

a 「【0027】
本発明は、下記化学式1で表される第3級アミン化合物由来の官能基を含む変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0028】
【化4】
続きを表示(全30行)
(当審注:構造式は省略する。以下、同様。)
【0029】 前記化学式1で、
Aは、炭素数1から20のアルキレン基であり、
X1からX3は、互いに独立して酸素原子、又は酸素原子を含む炭素数1から4のアルキレン基である。
【0030】
具体的に、前記化学式1において、Aは炭素数1から10のアルキレン基であり、X1からX3は、互いに独立して酸素原子、又は酸素原子を含む炭素数1ないし2のアルキレン基であるものであってよい。
【0031】
さらに具体的には、前記化学式1で表される第3級アミン化合物は、化学式2で表されるものであってよい。
【0032】
【化5】
【0033】
本発明の一実施形態による前記変性共役ジエン系重合体は、後述する製造方法を介し、有機金属が結合された活性重合体と前記化学式1で表される第3級アミン化合物とを反応させることにより製造されるものであってよく、前記変性共役ジエン系重合体は、前記化学式1で表される第3級アミン化合物由来の官能基を含むことにより物性が改善され得る。例えば、前記変性共役ジエン系重合体は、前記化学式1で表される第3級アミン化合物変性剤由来の官能基を含むことによって充填剤親和性官能基及び溶媒親和性官能基を含むことができ、よって、これを含むゴム組成物、及びこれから製造されたタイヤなどの成形品の耐磨耗性、低燃費特性及び加工性が改善され得る。
【0034】
前記変性共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が100,000g/molから2,000,000g/mol、具体的には150,000g/molから1,000,000g/molであってよい。
【0035】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、重量平均分子量(Mw)が100,000g/molから5,000,000g/mol、具体的には200,000g/molから2,000,000g/molであってよい。
【0036】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、分子量分布(Mw/Mn)が1.0から3.0であるものであってよく、よって、これをゴム組成物に適用した時に引張特性及び粘弾性が改善され得る。
【0037】
併せて、本発明の一実施形態による前記変性共役ジエン系重合体は、ゴム組成物に適用した時の、ゴム組成物の機械的物性、弾性率及び加工性のバランス良い改善効果を考慮すれば、前記のような分子量分布の範囲を有しつつ、重量平均分子量及び数平均分子量が同時に前述した範囲の条件に満たされるものであってよい。
【0038】
具体的には、前記変性共役ジエン系重合体は、分子量分布が3.0以下であり、重量平均分子量が100,000g/molから5,000,000g/molであり、数平均分子量が100,000g/molから2,000,000g/molであるものであってよく、さらに具体的には、分子量分布が2.5以下であり、重量平均分子量が200,000g/molから2,000,000g/molであり、数平均分子量が150,000g/molから1,000,000g/molであるものであってよい。
【0039】
ここで、前記重量平均分子量及び数平均分子量は、それぞれゲル透過型クロマトグラフィー(GPC)で分析されるポリスチレン換算分子量であり、分子量分布(Mw/Mn)は多分散性(Polydispersity)とも呼ばれ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で計算した。また、前記数平均分子量は、n個の重合体分子の分子量を測定し、これら分子量の総合を求めてnに分けて計算した個別の重合体分子量の共通平均(common average)であり、重量平均分子量は重合体の分子量分布を表すものである。
【0040】
また、本発明の他の一実施形態によれば、前記変性共役ジエン系重合体は、前記化学式1で表される第3級アミン化合物由来の官能基を含み、ゲル透過型クロマトグラフィーで分析されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が100,000g/molから3,000,000g/molであり、分子量分布(Mw/Mn)が1.30から2.50であり、重量平均分子量(Mw)とピークトップ分子量(Mp)の比(Mw/Mp)が0.70から1.125であるものであってよい。ここで、ピークトップ分子量(Mp)は最大ピークでの分子量を表すものである。」
b 「【0045】
また、本発明は、前記化学式1で表される変性剤由来の官能基を含む変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0046】
本発明の一実施形態による前記製造方法は、炭化水素溶媒中で、有機金属化合物の存在下で共役ジエン系単量体又は芳香族ビニル系単量体及び共役ジエン系単量体を重合し、少なくとも一末端に有機金属が結合された活性重合体を製造する工程(工程1); 及び、前記活性重合体を下記化学式1で表される第3級アミン化合物と反応させる工程(工程2)を含むことを特徴とする。
続きを表示(全51行)
【0047】
【化6】
【0048】
前記化学式1で、
Aは、炭素数1から20のアルキレン基であり、
X1からX3は、互いに独立して酸素原子、又は酸素原子を含む炭素数1から4のアルキレン基である。
【0049】
具体的に、化学式1で表される第3級アミン化合物は前述した通りであってよい。
【0050】
前記工程1は、少なくとも一末端に有機金属が結合された活性重合体を製造するための工程であって、炭化水素溶媒中で有機金属化合物の存在下で共役ジエン系単量体又は芳香族ビニル系単量体及び共役ジエン系単量体を重合することにより行うことができる。
【0051】
前記工程1の重合は、単量体として、前述したところのように、共役ジエン系単量体を単独で、又は芳香族ビニル系単量体及び共役ジエン系単量体をともに用いることであってよい。すなわち、本発明の一実施形態による前記製造方法を介して製造された重合体は、共役ジエン系単量体由来の単独重合体であるか、芳香族ビニル系単量体及び共役ジエン系単量体由来の共重合体であるものであってよい。
【0052】
前記共役ジエン系単量体は特に制限されるのではないが、例えば、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン及び2-フェニル-1,3-ブタジエンからなる群より選択される1種以上のものであってよい。
【0053】
前記芳香族ビニル系単量体は特に制限されるのではないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン及び1-ビニル-5-ヘキシルナフタレンからなる群より選択される1種以上のものであってよい。
【0054】
前記変性共役ジエン系重合体が共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル系単量体由来の共重合体である場合、前記共役ジエン系単量体は、製造された変性共役ジエン系重合体内の共役ジエン系単量体由来の単位が60重量%以上、具体的には60重量%から90重量%、より具体的には60重量%から85重量%で含まれるようにする量で用いるものであってよい。
【0055】
前記炭化水素溶媒は特に制限されるのではないが、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン及びキシレンからなる群より選択される1種以上であってよい。【0056】
前記有機金属化合物は、単量体の合計100gを基準に0.01mmolから10mmolで用いるものであってよい。
【0057】
前記有機金属化合物は特に制限されるのではないが、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムイソプロピルアミドからなる群より選択される1種以上のものであってよい。
【0058】
前記工程1の重合は、必要に応じて極性添加剤をさらに添加して行うことであってよく、前記極性添加剤は、単量体の合計100重量部に対して0.001重量部から10重量部で添加するものであってよい。 具体的には、単量体の合計100重量部に対して0.001重量部から1重量部、より具体的には0.005重量部から0.1重量部で添加するものであってよい。
【0059】
前記極性添加剤は、テトラヒドロフラン、ジテトラヒドロフリルプロパン、ジエチルエーテル、シクロアミルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、第3級ブトキシエトキシエタン、ビス(3-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン及びテトラメチルエチレンジアミンからなる群より選択される1種以上のものであってよい。
【0060】
本発明の一実施形態による製造方法は、前記極性添加剤を用いることにより共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル系単量体を共重合させる場合、これらの反応速度の差を補うことによりランダム共重合体を容易に形成できるように誘導することができる。
【0061】
前記工程1の重合は、断熱重合を介して行うか、等温重合を介して行うことであってよい。
【0062】
ここで、断熱重合は、多官能性陰イオン重合開始剤を投入した後、任意に熱を加えずにそれ自体の反応熱で重合させる工程を含む重合方法を表すものであり、前記等温重合は、前記多官能性陰イオン重合開始剤を投入した後、任意に熱を加えるか熱を奪い、重合物の温度を一定に維持する重合方法を表すものである。
【0063】
前記重合は、-20℃から200℃の温度範囲で行うことであってよく、具体的には0℃から150℃、より具体的には10℃から120℃の温度範囲で行うことであってよい。
【0064】
前記工程2は、前記活性重合体と前記化学式1で表される第3級アミン化合物とを反応させ、重合鎖に前記化学式1で表される第3級アミン化合物由来の官能基を結合させるための工程である。
【0065】
前記化学式1で表される第3級アミン化合物は、有機金属化合物1モルに対して0.01モルから5モルとなる割合で用いるものであってよい。
【0066】
本発明の一実施形態による前記工程2は、重合体鎖に官能性官能基を導入させるための変性反応であって、0℃から120℃で1分から5時間反応を行うことであってよい。
【0067】
また、本発明の一実施形態による前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、回分式(バッチ式)、又は1種以上の反応器を含む連続式重合方法により行うことであってよい。
【0068】
前記変性反応の終了後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液などを重合反応系に添加して重合反応を停止させることができる。以後、水蒸気の供給を介して溶剤の分圧を低めるスチームストリッピングなどの脱溶媒処理や真空乾燥処理を経て変性共役ジエン系重合体が収得され得る。また、前記変性反応の結果で収得される反応生成物の中には、前記変性共役ジエン重合体とともに、変性されていない活性重合体が含まれてもよい。
【0069】
本発明の一実施形態による製造方法は、前記工程2以後、必要に応じて溶媒及び未反応単量体の回収及び乾燥のうち1つ以上の工程をさらに含んでよい。」
c 「【0070】
併せて、本発明は、ゴム用変性剤として容易に適用することができる、化学式1で表される第3級アミン化合物を提供する。
【0071】
本発明の一実施形態による前記第3級アミン化合物は、下記化学式1で表されるものであってよい。
続きを表示(全14行)
【0072】
【化7】
【0073】
前記化学式1で、
Aは、炭素数1から20のアルキレン基であり、
X1からX3は、互いに独立して酸素原子、又は酸素原子を含む炭素数1から4のアルキレン基である。
【0074】
一方、前記化学式1で表される第3級アミン化合物の具体的な物質は、前記で定義した通りである。
【0075】
また、本発明による前記化学式1で表される第3級アミン化合物は、共役ジエン系重合体に対する反応性官能基、充填剤親和性官能基及び溶媒親和性官能基を含むことにより、共役ジエン系重合体を高変性率で容易に変性させることができ、これを含むゴム組成物、及びこれから製造されたタイヤなどの成形品の耐磨耗性、低燃費特性及び加工性を改善させることができる。具体的に、前記化学式1で表される第3級アミン化合物は、前述したところのように、分子内に重合体に対する反応性官能基であるアミン基を含むものであってよく、前記反応性官能基は、共役ジエン系重合体の活性部位に対して高い反応性を示すことで、共役ジエン系重合体を高い変性率で変性させることができるので、結果として官能性官能基を共役ジエン系重合体内に高い収率で導入させることができる。また、前記アミン基は、共役ジエン系重合体の末端と反応して1級又は2級アミノ基に転換されるに伴い、充填剤、特にカーボンブラックとの親和性をさらに向上させることができる。」
d 「【0095】
以下、実施例及び実験例により本発明をさらに詳細に説明する。しかし、下記実施例及び実験例は本発明を例示するためのものであって、これらだけに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0096】
[実施例1]
続きを表示(全47行)
20Lのオートクレーブ反応器にスチレン270g、1,3-ブタジエン710g及びノルマルヘキサン5,000g、極性添加剤としてDTP(2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン)0.86gを入れた後、反応器の内部温度を40℃に昇温した。反応器の内部温度が40℃に到達した時、n-ブチルリチウム4mmolを反応器に投入し断熱昇温反応を進めた。20分程度経過した後、1,3-ブタジエン20gを投入し、重合体鎖の末端をブタジエンでキャッピング(capping)した。5分後、トリ(2-(2,8,9-トリオキサ-5-アザ-1-シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン-1-イル)エチル)アミン(tri(2-(2,8,9-trioxa-5-aza-1-silabicyclo[3.3.3]undecan-1-yl)ethyl)amine)を0.8mol投入した後、15分間変性反応させた。以後、エタノールを利用して重合反応を停止させ、酸化防止剤であるBHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)がヘキサンに0.3重量%溶解されている溶液45mlを添加した。その結果で得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を取り除いた後、ロール乾燥して残量の溶媒と水を取り除くことで、変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0097】
[実施例2]
実施例1において、トリ(2-(2,8,9-トリオキサ-5-アザ-1-シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン-1-イル)エチル)アミンを0.5mol投入して変性反応を進めたことを除いては、実施例1と同様の方法を介して変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0098】
[実施例3]
実施例1において、トリ(2-(2,8,9-トリオキサ-5-アザ-1-シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン-1-イル)エチル)アミンを1.2mol投入して変性反応を進めたことを除いては、実施例1と同様の方法を介して変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0099】
[実施例4]
実施例1において、トリ(2-(2,8,9-トリオキサ-5-アザ-1-シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン-1-イル)エチル)アミンを0.2mol投入して変性反応を進めたことを除いては、実施例1と同様の方法を介して変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
・・・
【0102】
<実験例1>
前記実施例1から実施例4、比較例1及び比較例2の各共重合体に対し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、多分散指数(PDI)、成分分析及びムーニー粘度(MV)をそれぞれ測定した。 結果を下記表1に示した。
【0103】
1)成分分析
各共重合体内のスチレン由来単位(SM)及びビニルの含量は、NMRを利用して測定した。
【0104】
2)分子量分析
各共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、40℃の条件下でGPC(Gel permeation chromatohraph)分析で測定した。このとき、カラム(Column)は、Polymer Laboratories社のPLgel Olexis 2本とPLgel mixed-Cカラム1本とを組み合わせて用い、新たに入れ替えたカラムは全て混床(mixed bed)タイプのカラムを用いた。また、分子量の計算時に、GPC基準物質(Standard material)としてPS(polystyrene)を用いた。多分散指数(PDI)は、前記方法で測定された重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)で計算した。
【0105】
3)ムーニー粘度分析
各共重合体のムーニー粘度は、MV-2000(ALPHA Technologies社)を利用し、各試料の重さ15g以上の2つを1分間予熱した後、100℃で4分間測定した。
【0106】
【表1】
[図:0001392419000003.jpg]
【0107】
<実験例2>
前記実施例1から実施例4、比較例1及び比較例2の変性あるいは未変性共重合体を含むゴム組成物、及びこれから製造された成形品の物性を比較分析するため、引張特性及び粘弾性特性を測定した。結果を下記表2に示した。
【0108】
1)ゴム組成物の製造
各ゴム組成物は、第1段混練と第2段混練の過程を介して製造した。このとき、共重合体を除外した物質の使用量は、変性共役ジエン系共重合体100重量部を基準として示したものである。第1段混練では、温度制御装置付きバンバリーミキサーを用いて、前記各共重合体137.5重量部、シリカ70重量部、シランカップリング剤としてビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド11.2重量部、プロセス油(process oil、TDAE)25重量部、老化防止剤(TMDQ)2重量部、酸化亜鉛(ZnO)3重量部及びステアリン酸(stearic acid)2重量部、ワックス1重量部を配合して混練した。このとき、混練機の温度を制御して145℃~155℃の排出温度で1次配合物を得た。第2段混練では、前記1次配合物を室温まで冷却した後、混練機にゴム促進剤(CZ)1.75重量部、硫黄粉末1.5重量部、及び加硫促進剤2重量部を添加し、100℃以下の温度でミキシングして2次配合物を得た。以後、100℃で20分間のキュアリング工程を経て各ゴム組成物を製造した。
【0109】
2)引張特性
引張特性は、ASTM 412の引張試験法に準じて各試験片を製造し、前記試験片の切断時の引張強度及び300%伸張時の引張応力(300%モデュラス)を測定した。具体的に、引張特性は、Universal Test Machin 4204(Instron社)引張試験機器を利用し、室温で50cm/minの速度で測定して引張強度及び300%伸張時の引張応力の値を得た。
【0110】
3)粘弾性特性
粘弾性特性は、動的機械分析機(TA社)を利用し、ねじりモードで周波数10Hz、各測定温度(-60~60℃)で変形を変化させてTan δを測定し、結果は比較例1の測定値を基準値として指数化して示した。このとき、前記指数化は、下記数式1及び数式2を介して計算した。
・・・
【0114】
【表2】
[図:0001392419000004.jpg]
」

(ウ)当審の判断

発明の詳細な説明には、本件補正発明に係る「変性共役ジエン系重合体」の製造方法に関して、炭化水素溶媒中で、有機金属化合物の存在下で共役ジエン系単量体又は芳香族ビニル系単量体及び共役ジエン系単量体を重合し、少なくとも一末端に有機金属が結合された活性重合体を製造する工程(工程1)と、前記活性重合体を化学式1で表される第3級アミン化合物と反応させる工程(工程2)を含む方法により製造することができることが記載されており(上記(イ)の【0046】)、また、その具体例である実施例1~4には、オートクレーブ反応器にスチレン、1,3-ブタジエン及びノルマルヘキサン、極性添加剤としてDTP(2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン)を入れた後、反応器の内部温度を40℃に昇温し、n-ブチルリチウムを反応器に投入し断熱昇温反応を進め、20分程度経過した後、1,3-ブタジエンを投入し、重合体鎖の末端をブタジエンでキャッピングし、5分後、トリ(2-(2,8,9-トリオキサ-5-アザ-1-シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン-1-イル)エチル)アミンを投入した後、15分間変性反応させ、変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造したことが記載されている(上記(ウ)の【0096】~【0099】)。ここで、トリ(2-(2,8,9-トリオキサ-5-アザ-1-シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン-1-イル)エチル)アミンは、上記化学式1を具体化した化学式2で表される第3級アミン化合物である。

しかしながら、発明の詳細な説明には、本件補正発明における「化学式1で表される第3級アミン化合物」や、実施例1~4で用いられたトリ(2-(2,8,9-トリオキサ-5-アザ-1-シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン-1-イル)エチル)アミンの商品名や入手先(製造元)は記載されていない。また、化学式1で表される第3級アミン化合物の入手先が本願出願時に広く知られていた事実は見当たらない。

また、発明の詳細な説明には、本件補正発明に係る「変性共役ジエン系重合体」の製造方法に関連して、上記(イ)の摘記事項が記載されているが、その原料である上記第3級アミン化合物については、化学式1及び2が記載されるに留まり、その合成の具体例はもとより、反応経路、当該反応経路で使用する原料及びその量、触媒及びその量、溶媒の有無や種類及びその量、並びに、温度及び時間などの反応条件など(以下、「反応経路等」という。)、上記第3級アミン化合物を合成するために必要とされる事項が一切記載されておらず、合成のための指針さえも記載も示唆もされていない。そして、これらの事項及び指針が本願出願時の技術常識であったとも解されない。

このような状況において、本件補正発明に係る「変性共役ジエン系重合体」を製造するためには、当業者が、上記第3級アミン化合物を合成する反応経路を創生及び設定し、反応経路等を新たに設定する必要がある。しかしながら、上述のように、発明の詳細な説明には、上記第3級アミン化合物を合成した具体例も、反応経路等の合成に必要とされる事項も、合成のための指針も記載されていないのであるから、反応経路等が定まらず、本願出願時の技術常識を参酌するとしても、結局、やみくもに反応経路等を設定して試験を繰り返すことにより、反応経路等の組み合わせを見いだす他なく、過度の試行錯誤をする必要があると解される。また、上記反応経路として多段階の化学反応を設定する場合には、各段階の化学反応において過度の試行錯誤が必要になると解される。

そうすると、発明の詳細な説明には、本件補正発明に係る「変性共役ジエン系重合体」を製造するために、化学式1及び2で表される第3級アミン化合物の入手先も、当該第3級アミン化合物を合成するために必要とされる事項が記載されておらず、また、これらが本願出願時の技術常識とは解せないから、当業者において、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件補正発明に係る「変性共役ジエン系重合体」を製造することができるとは解せない。

したがって、発明の詳細な説明には、当業者が、本願出願時の技術常識を参酌して、本件補正発明を製造することができる程度に明確かつ十分に記載されていると解することはできない。

(エ)請求人の主張について

a 審判請求書における主張について

審判請求人は、審判請求書において、以下の参考資料1及び2を提示し、「出願時に公知であった以下の文献を参考に、化学式1または化学式2で表される化合物を製造することは、本願の発明の詳細な説明及び技術常識から、当業者にとって自明です。」(7頁11~13行)と主張する。

参考資料1:特開2009-524715号公報
参考資料2:特開2015-131943号公報

具体的には、参考資料1(実施例1(【0106】及び【0107】)について、「参考資料1に記載の製法を参考とし、前記参考資料1の実施例1で用いた原料「ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド」の代わりに下記の「トリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン」を用いることにより本願発明の変性剤を十分に製造することができると存じます。

<原料の物質: トリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン CAS No.: 82984-64-3 及びトリエタノールアミン>

【化1】

[図:0001392419000005.jpg]

」(7頁14~17行)と主張する。

しかしながら、参考資料1には、「(c)一般式I…の有機ケイ素化合物」(【0014】~【0028】)、その製造方法(【0049】~【0086】)、実施例1~6(【0106】~【0120】)が記載されており、上記有機ケイ素化合物は、S(硫黄元素)が1つ又は複数連結してなる-Sx-構造を化学構造の中心部に備えるチオ化合物であり、本願補正発明のアミン化合物のN(窒素元素)とは周期律表の族が異なる元素同士であり、結合手の数が異なるものであるため、参考資料1に記載された有機ケイ素化合物は、シラトラン構造が2つ結合したものであるし、一般的にチオ化合物とアミン化合物とが化学的に同列に扱える性質を有するものと直ちにいえるものでもない。そして、参考資料1には、もっぱら-Sx-構造を必須とする一般式Iの有機ケイ素化合物を製造する方法が記載されるに留まり、当該-Sx-構造とは異なる構造を中心部とする化合物、特に本件補正発明の化学式1及びその具体例である化学式2で表される第3級アミン化合物の製造に転用できることについては何ら記載がない。

そうすると、参考資料1は、「(c)一般式I…の有機ケイ素化合物」及びその製造方法が記載されるに留まるものである。

そして、審判請求人は、参考資料1には、その実施例1における「ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド」の代わりに「トリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン」を用いることにより本願補正発明の変性剤を製造することができると主張するが、それを裏付ける記載はないし、上記主張の化学的な根拠(例えば、本願出願時の技術常識)を何ら説明していない。

また、審判請求人は、参考資料2の実施例2(【0070】)について、「前記製法を参考とし、トリイソプロパノールアミンの代わりにトリエタノールアミンを、そして(3-クロロプロピル)トリエトキシシランの代わりにトリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンを用いることにより、当業者であれば、本願発明の変性剤を十分に製造することができると存じます。」(9頁4~7行)と主張する。

しかしながら、参考資料2には、以下の式Iで表される重合停止剤(【0036】~【0038】)、その合成例である実施例1~5(【0069】~【0074】)が記載され、式Iは、Zが構造IVで表される第3級アミノ基であってもよいことが示されている。そして、実施例2にはCSTI(1-(3-クロロプロピル)-(3,7,10-トリメチルシラトラン)の合成方法が記載されているが、これは窒素原子にシラトラン構造が結合したものではない。また、参考資料2には、第3級アミン化合物であるDMASTI(N,N-ジメチル-3-(3,7,10-トリメチル-2,8,9-トリオキサ-5-アザ-1-シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン-1-イル)プロパン)-1-アミン)が記載されるものの(【0037】及び【0038】)、これは窒素原子が1つのシラトラン構造と結合したものであって、本件補正発明における化学式1で表される第3級アミン化合物のように、窒素原子が3つのシラトラン構造と結合したものではないし、上記DMASTIを合成する具体例さえも記載されていない。このように、参考文献2は、第3級アミン化合物であるDMASTIが例示されるに留まるものである。

そして、審判請求人が、このような参考資料2における実施例2の製法を参考とし、トリイソプロパノールアミンの代わりにトリエタノールアミンを、そして(3-クロロプロピル)トリエトキシシランの代わりにトリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンを用いることにより、当業者であれば、本願補正発明の変性剤を十分に製造することができると主張するが、そのようなことは参考資料2に一切記載されていない。また、審判請求人は、上記主張の化学的な根拠(例えば、本願出願時の技術常識)を何ら説明していない。

このように、参考資料1及び2には、本件補正発明の化学式1又は化学式2で表される第3級アミン化合物は記載されておらず、当該第3級アミン化合物を合成するために必要とされる、原料及びその使用量、触媒及びその使用量、温度及び時間などの反応条件などの事項は一切記載されていないのであるから、当業者が、参考資料1及び2に記載された製法を参考にして、本件補正発明の化学式1又は化学式2で表される第3級アミン化合物を合成できると解することはできない。

したがって、審判請求人の主張を採用することはできない。

b 令和1年12月10日提出の意見書における主張について

上記aにおいて、拒絶査定の理由に対する審判請求人の主張を検討したが、念のため、上記意見書における主張についても検討する。

審判請求人は、上記意見書の「(5)理由1について」において、「化学式1で表される化合物と、実施例に記載された化合物(化学式2で表される化合物)は、有機化学分野において一般的に知られた反応を適用するものです。これらの化合物は、2段階の反応だけで合成できるものであるため、製造段階が過度な試行錯誤をするほど複雑ではないと思われ、前記合成工程中に予想外の反応に進められると見られる要因は存在しないと思われます。」(3頁下6~下2行)と述べ、「(a)化学式1において、A=炭素数3のアルキルレン(プロピレン)、X1からX3=Oである化合物の合成メカニズム」として、

「【化1】
[図:0001392419000006.jpg]
前記反応物質は、いずれも出願当時に通常的に入手可能な物質です。また、ピリジン存在下でSN2置換反応を行うのは、有機化学技術分野の通常の技術者にそれほど難しいことではありません。よって、出願当時に通常の技術者は、本願明細書の化学式1の化合物を製造し、本願発明を実施することに困難がなかったと存じます。」(2頁29行~下6行)と述べる。

また、「(b)化学式2で表される化合物の合成メカニズム」として、

「【化2】
[図:0001392419000007.jpg]
・・・
【化3】
[図:0001392419000008.jpg]
・・・
【化4】
[図:0001392419000009.jpg]
有機化学技術分野においてSN2反応は、一般的に広く知られた反応の一つであり、前記反応生成物からSN2反応で製造されたものであることを通常の技術者は充分に予測できるところ、ピリジン存在下で前記の反応物質からSN2置換反応を行って化学式2で表される化合物を製造するのは、この技術分野の通常の技術者にそれほど難しいことではありません。」(2頁下1行~3頁下12行)と述べる。

しかしながら、上記合成メカニズムで示された化学式1及び化学式2で表される第3級アミン化合物の反応経路は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、本願出願時の技術常識であると解することもできない。

また、上記意見書における主張は、SN2反応が有機化学分野で一般的であることを述べるに留まるものであり、上記意見書には、上記第3級アミン化合物及びその合成方法が本願出願時の技術常識であることは何ら説明していないし、上記第3級アミン化合物を合成するために必要とされる、原料の使用量、触媒及びその使用量、温度及び時間などの反応条件についても何ら説明されていない。

また、審判請求人は、上記意見書において、以下の参考資料1a及び2aを提示し、「これに対する参考資料として、Si-R-NH2を含む化合物と、R-Clを含む化合物が反応することを示す反応式が開示された文献を2部添付致します」(参考資料1aの22頁、Fig.14参照、参考資料2aの666頁右側コラム参照)と述べる。

参考資料1a:Zuang-Cong Lu, Macrocyclic Multidentate Ligands: Synthesis and Immobilization on Silica Gel, Dec.1990

参考資料2a:Louis A. Carpino et al., Piperazino-Functionalized Silica Gel as a Deblocking-Scavenging Agent for the 9-Fluorenylmethyloxycarbonyl Amino-Protecting Group, J.Org.Chem., 1983, 48, 666-669

しかしながら、参考資料1aには、(3-アミノプロピル)-トリエトキシシランとメタクリロイルクロライドの反応が記載されるに留まり、また、参考資料2aには、(クロロプロピル)トリメトキシシランとピペラジンとの反応が記載されるに留まるものであって、いずれの文献にも、上記【化1】及び【化4】に示された反応が進行することも、その反応条件も記載されていない。そもそも、参考資料2aは、上記「Si-R-NH2を含む化合物と、R-Clを含む化合物が反応すること」を示すものではない。

したがって、審判請求人の上記主張を採用することができない。

カ まとめ

したがって、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、補正後の請求項6に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定のむすび

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、審判請求時の手続補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、特許請求の範囲の請求項1~15に係る発明は、令和1年12月10日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項7に係る発明は、以下のとおりのものである。

「下記化学式1で表される第3級アミン化合物由来の官能基を含み、
ゲル透過型クロマトグラフィーで分析されるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が 100,000g/molから3,000,000g/molであり、
分子量分布(Mw/Mn)が1.30から2.50であり、
重量平均分子量(Mw)とピークトップ分子量(Mp)の比(Mw/Mp)が0.70から1.125である変性共役ジエン系重合体。
【化10】
[図:0001392419000010.jpg]
前記化学式1中、
Aは、炭素数1から20のアルキレン基であり、
X1からX3は、互いに独立して酸素原子である。」(以下「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりのものである。

理由1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

記

「請求項1~15に係る発明を構成する化学式1又は2で表される化合物は、本願出願日時点で新規な化学構造を有する、新規な化合物である。
ここで、一般に化合物については、実際に実験をしてみない限り、机上で想定したとおりの化学構造のものが、同想定したとおりの反応経路を経て製造できるかどうか、客観的に判断することが困難というのが技術常識である。
しかしながら、上記新規な化合物の製造方法は、本願の発明の詳細な説明に記載されていないし、本願の発明の詳細な説明及び本願出願日時点の技術常識から当業者にとって自明であるともいえない。この点、仮に反応経路が机上で想定し得るとしても、当該想定した反応経路を経るための具体的な手段(使用する全ての試薬の種類、量及び添加順序、反応時の温度や圧力の推移等)や、当該反応経路を経て実際に上記新規な化合物が創製し得ることが、実際に実験をしてみるまでもなく、本願の発明の詳細な説明及び本願出願日時点の技術常識から当業者にとって自明であるとはいえない。
よって、本願の発明の詳細な説明は、本願請求項1~15に係る発明について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。」

3 当審の判断

本願発明は、第2の1及び2で述べたとおり、本件補正発明における「Aは、炭素数1から10のアルキレン基であり、」に代えて、「Aは、炭素数1から20のアルキレン基であり、」としたものであり、本願補正発明の発明特定事項を全て含むものである。

そして、第2の2(2)イ(ウ)で述べたように、発明の詳細な説明は、当業者が、本件補正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、これと同じ理由により、発明の詳細な説明は、当業者が、本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

したがって、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび

以上のとおり、発明の詳細な説明は、本願発明について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-005322

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