2020-003020
地下土壌浄化システム
- 審判番号
- 2020-003020
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-011654外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年03月04日
- 審決日
- 2021年01月05日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (B09B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月25日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和2年3月4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、原査定時の請求項3に係る発明と実質的に同じであると認められるその請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「地下土壌に含まれる汚染物質を分解するための地下土壌浄化システムであって、前記地下土壌から地下水を揚水する揚水手段と、前記揚水手段にて揚水された地下水を貯留し、貯留した地下水に含まれる分解菌のうち、培養対象となる嫌気性菌である対象分解菌を嫌気状態で培養すると共に、前記地下水を加温することにより、前記対象分解菌の選択圧を高めることにより、又は、前記地下水に栄養材を添加することにより、前記対象分解菌を培養する培養手段と、前記培養手段にて培養された前記対象分解菌を地中に注入する注入手段と、前記揚水手段にて揚水された地下水から分離された培養非対象地下水であって、前記培養手段に貯留されない培養非対象地下水と、前記揚水手段にて揚水された地下水から分離された培養対象地下水であって、前記培養手段に貯留され、且つ前記培養手段にて前記対象分解菌の培養が行われた培養対象地下水と、を混合して前記注入手段へ送る混合手段と、を備え、前記培養対象地下水の流量を、前記培養非対象地下水の流量よりも少なくした、地下土壌浄化システム。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1.特開2006-7182号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線については、当審において付与した。)。
「【請求項1】汚染土壌・汚染地下水に含まれる汚染物質分解性能を備えた微生物の分解活性を培養することにより向上させ、前記汚染土壌・前記汚染地下水を原位置で浄化するための前培養を伴う原位置バイオレメディエーション工法であって、前記汚染土壌・前記汚染地下水の一部を原位置から採取する採取工程と、該採取工程で採取された汚染土壌・汚染地下水を培養液又は培地で培養する培養工程と、該培養工程で培養された培養液又は培地を前記原位置に還元供給する供給工程と、該供給工程で供給された前記原位置の汚染土壌・汚染地下水に含まれる前記汚染物質を前記微生物に分解させ、前記汚染土壌・前記汚染地下水を原位置で浄化する浄化工程とを有することを特徴とする前培養を伴う原位置バイオレメディエーション工法。」
「【技術分野】【0001】本発明は、汚染土壌・汚染地下水に含まれる汚染物質分解性能を備えた微生物の分解活性を培養することにより向上させ、汚染土壌・汚染地下水を原位置で浄化するための前培養を伴う原位置バイオレメディエーション工法、及びそのシステムに関する。」
「【0008】そこで、本発明は、汚染土壌・汚染地下水の浄化を効率的且つ安価に行うことができ、しかも、環境や人体等に対する影響を少なくすることができる前培養を伴う原位置バイオレメディエーション工法、及びそのシステムを提供することを目的とする。」
「【0014】本発明によれば、汚染土壌・汚染地下水の浄化を効率的且つ安価に行うことができ、しかも、環境や人体等に対する影響を少なくすることができる。」
「【0016】図1は、本発明の実施形態における前培養を伴う原位置バイオレメディエーションシステムを示す概略断面図であり、ベンゼンで汚染された(地下)汚染領域10から汚染地下水を取水して地上に揚水するために汚染領域の下流側に掘削して設けられた取水井戸1と、取水井戸1から揚水された汚染地下水を好気条件下で培養するために地上に設けられた培養プラント2と、培養プラント2で培養された培養液を汚染領域に還元供給するために汚染領域の上流側に掘削して設けられた注入井戸3と、原位置の地下汚染領域全体を好気状態にするために汚染領域内に掘削して設けられた酸素供給ポンプ4とで構成されている。【0017】図1に示すように、地下汚染領域10は、地下水が流れている飽和層11と、その上層の不飽和層12と、飽和層11の下にある不透水層13の地層からなっており、ベンゼンなどの汚染物質は飽和層11と不飽和層12,不透水層13に存在し、特に各層の境界部分に多くなっており、離脱し難い状態で存在している。ベンゼンなどの汚染物質は、地層内に含まれる粘土質や土壌中の有機物に吸着されやすく、このため飽和層11では、汚染物質が徐々に地下水中に離脱し、この地下水中には汚染物質(ベンゼン)が含まれている。続きを表示(全15行)【0018】なお、本発明における汚染物質としては、揮発性の有機化合物であるベンゼン以外にも、フェノール,安息香酸,トルエン,キシレン,クレゾール等の芳香族化合物、あるいは、ジクロロエチレン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,テトラクロロエタン,塩化ビニル,ダイオキシン等の有機塩素化合物のうち、少なくとも一種以上含んでいてもよい。【0019】また、本発明における微生物としては、汚染土壌・汚染地下水に含まれ、且つ当該汚染物質の分解活性を備えた微生物であればよく、Pseudomonas mendocina, P. putida F1, Nitrosomonas europaea, Mycobacterium sp.等の好気性微生物であってもよく、また、Methanosarucina sp.,Methanosarucina metai,Methanosarucina acetivorans,Methanothrix sp., Dechlorinating bacterium DCB-1,Methanosarucina sp.DCM Methanococcusthermolithotrophics, M. thermodeltae Methanobact,Desulfobacterium autotrophicum, Acetobacterium woodii, Clostridium thermoaceticumerium,等の嫌気性微生物であってもよい。【0020】上記構成の本発明において、取水井戸1は、揮発性の有機化合物であるベンゼンの分解性能を備えた好気性微生物を含む汚染地下水の一部を原位置から採取する採取装置として機能する。なお、本発明における採取装置は、必ずしも取水井戸1のような採取装置に限られるものではなく、地下汚染領域における汚染土壌の一部を原位置から掘削して採取する掘削装置のような採取装置であってもよい。このような取水井戸1により、原位置の地下汚染領域では好気性微生物の培養条件を最適化することが困難であるが、原位置以外の地上プラント等で培養条件を最適化することが容易となる。【0021】また、培養プラント2は、培養槽21及び曝気槽22を備え、前者の培養槽21は、採取装置(取水井戸1)で採取された汚染地下水を分解基質(ベンゼン)を含有する中性の培養液とともに好気条件下で培養する培養装置として機能し、他方、後者の曝気槽22は、培養槽21で培養された培養液に残存するベンゼンを除去するために曝気処理する曝気処理装置として機能する。【0022】図2は培養槽21及び曝気槽22を備えた培養プラント2を示す概略断面図である。培養槽21は、図2に示すように密閉された状態にあり、取水井戸1か揚水された汚染地下水をpH調整によって中和処理した上で(pH6~8)、さらに、揮発性の有機化合物であるベンゼン(10~50ppm,タールが少量でベンゼンが多量等)を分解基質として添加するようになっている。さらに、培養槽21の槽底には攪拌用ポンプが備えられ、揚水された汚染地下水に含まれていた微生物とベンゼンとを十分に混和し、最適な培養条件下(好気性条件等)で培養することができるようになっている。培養条件を最適化するための他の要素としては、例えば、温度(20~40℃,好ましくは25~35℃),栄養素(窒素,リン等),活性化促進剤等がある。また、培養槽21には、培養液の品質管理を行うために試料を採取する培養液採取口(図示せず)を設けておくことが好ましい。」
「【0024】このような培養槽21により、微生物のベンゼン分解活性が向上する要因としては、微生物のベンゼン分解性能や増殖性能が促進され、あるいは微生物の生育阻害因子に対する耐性が獲得されることが挙げられる。また、微生物が産出するベンゼン分解性能を備えたタンパク質等の半減期が増進することも、このような要因として挙げられる。さらに、このような要因が複数組み合わされて、微生物によるベンゼン分解活性の向上に寄与することもある。また、汚染地下水に含まれていた阻害因子や他の土着菌が減少・除去される場合には、培養液のベンゼン分解活性をよりいっそう向上させることが容易となる。」
「【0026】また、注入井戸3は、培養プラント2で培養され且つ曝気処理された培養液を原位置の地下汚染領域全体(汚染土壌・汚染地下水を含む)に拡散混和させるために原位置に還元供給する供給装置として機能する。このような注入井戸3により、原位置から採取して培養した汚染地下水を再び原位置に戻すことができるようになる。この際,バッチ法,半連続法,連続法等の各種方法を用いてもよい。また、培養した微生物を半固定状態、あるいは適当な担体に担持させた状態で原位置に戻す方法を用いてもよい。【0027】なお、注入井戸3は、曝気槽で曝気処理された培養液を、注入水とともに1/100等の浄化に最適な割合で原位置に還元供給するように制御する制御手段(図示せず)を有することが好ましい。このような制御手段により、原位置に供給する培養液の量を最適化することができるようになる。また、取水井戸1で揚水され、培養プラント2で培養されない汚染地下水のうち、砒素等の有害物質を除去する水処理装置(図示せず)を通した水を、注入水の一部として用いることもできる。」
「図1」
2 引用発明
引用文献1の請求項1には、「汚染土壌・汚染地下水に含まれる汚染物質分解性能を備えた微生物の分解活性を培養することにより向上させ、前記汚染土壌・前記汚染地下水を原位置で浄化するための前培養を伴う」と記載されているから、「汚染物質分解性能を備えた微生物」が「培養」されているものといえる。
引用文献1の図1の矢印の記載、及び【0027】の「取水井戸1で揚水され、培養プラント2で培養されない汚染地下水のうち、砒素等の有害物質を除去する水処理装置(図示せず)を通した水を、注入水の一部として用いることもできる。」との記載をあわせて参酌すれば、取水井戸1にて揚水された汚染地下水は、培養プラント2で培養されない汚染地下水と、培養プラント2にて微生物の培養が行われるための培養液と、に分離されているものであって、培養プラント2で培養されない汚染地下水を水処理装置に通した水と、培養プラント2にて微生物の培養が行われた培養液とを合わせて注入井戸3へ送る手段が存在しているといえる。
引用文献1の【0022】の「培養槽21…(中略)…を備えた培養プラント2…(中略)…培養槽21の槽底には攪拌用ポンプが備えられ、揚水された汚染地下水に含まれていた微生物とベンゼンとを十分に混和し、最適な培養条件下(好気性条件等)で培養することができるようになっている。」との記載を参酌すれば、「培養プラント2」には、「取水井戸1」にて揚水された「汚染地下水」が「貯留」されているといえる。
これらの点を踏まえつつ、引用文献1の記載事項、特に実施形態に関する記載事項を中心に整理すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「地下汚染領域10に含まれる汚染物質を分解するための原位置バイオレメディエーションシステムであって、前記地下汚染領域10から汚染地下水を揚水する取水井戸1と、前記取水井戸1にて揚水された汚染地下水を貯留し、貯留した汚染地下水に含まれる汚染物質分解性能を備えた微生物を培養すると共に、前記汚染地下水に分解基質を添加することにより、前記微生物を培養する培養プラント2と、前記培養プラント2にて培養された前記微生物を原位置の地下汚染領域全体に拡散混和させるために原位置に還元供給する注入井戸3と、前記取水井戸1にて揚水された汚染地下水から分離され水処理装置を通した水であって、前記培養プラント2で培養されない水と、前記取水井戸1にて揚水された汚染地下水から分離された培養液であって、前記培養プラント2にて前記微生物の培養が行われた培養液と、を合わせて前記注入井戸3へ送る手段と、を備えた、原位置バイオレメディエーションシステム。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「地下汚染領域10」は、本願発明の「地下土壌」に相当する。
引用発明の「原位置バイオレメディエーションシステム」は、地下汚染領域10に含まれる汚染物質を分解するものであるから、本願発明の「地下土壌浄化システム」に相当する。
引用発明の「汚染地下水」、「取水井戸1」は、本願発明の「地下水」、「揚水手段」に、それぞれ相当する。
引用文献の【0019】には、「本発明における微生物としては、汚染土壌・汚染地下水に含まれ、且つ当該汚染物質の分解活性を備えた微生物であればよく、Pseudomonas mendocina…(中略)…等の好気性微生物であってもよく、また、Methanosarucina sp.…(中略)…等の嫌気性微生物であってもよい。」と記載されている。そして、例示されている「Pseudomonas mendocina」や「Methanosarucina sp.」等が菌であることは、出願時の技術常識であるといえる。そうすると、引用発明の「貯留した汚染地下水に含まれる汚染物質分解性能を備えた微生物」は、本願発明の「貯留した地下水に含まれる分解菌のうち、培養対象となる対象分解菌」に相当する。
引用発明において、微生物を培養する際に「分解基質を添加する」ものであるから、「分解基質」を分解する微生物が増殖する上で有利な環境となっているといえる。そうすると、引用発明の「分解基質を添加すること」は、本願発明の「選択圧を高めること」に相当する。
引用発明の「培養プラント2」は、本願発明の「培養手段」に相当する。
引用発明の「原位置に還元供給する注入井戸3」は、「培養プラント2にて培養された微生物を原位置の地下汚染領域全体に拡散混和させるために原位置に還元供給する」ものであるから、本願発明の「地中に注入する注入手段」に相当する。
引用発明の「前記取水井戸1にて揚水された汚染地下水から分離され水処理装置を通した水であって、前記培養プラント2で培養されない水」は、本願発明の「揚水手段にて揚水された地下水から分離された培養非対象地下水であって、培養手段に貯留されない培養非対象地下水」に相当する。
引用発明の「汚染地下水から分離された培養液」、「培養プラント2にて微生物の培養が行われた培養液」は、それぞれ、本願発明の「地下水から分離された培養対象地下水」、「培養手段にて対象分解菌の培養が行われた培養対象地下水」に相当する。
2 してみると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、それぞれ次のとおりである。
(1)一致点
「地下土壌に含まれる汚染物質を分解するための地下土壌浄化システムであって、前記地下土壌から地下水を揚水する揚水手段と、前記揚水手段にて揚水された地下水を貯留し、貯留した地下水に含まれる分解菌のうち、培養対象となる対象分解菌を培養すると共に、前記対象分解菌の選択圧を高めることにより、前記対象分解菌を培養する培養手段と、前記培養手段にて培養された前記対象分解菌を地中に注入する注入手段と、前記揚水手段にて揚水された地下水から分離された培養非対象地下水であって、前記培養手段に貯留されない培養非対象地下水と、前記揚水手段にて揚水された地下水から分離された培養対象地下水であって、前記培養手段に貯留され、且つ前記培養手段にて前記対象分解菌の培養が行われた培養対象地下水と、を前記注入手段へ送る手段と、を備えた、地下土壌浄化システム。」
(2)相違点
(相違点1)
対象分解菌について、本願発明は、「嫌気状態で培養」される「嫌気性菌」と特定されるのに対し、引用発明は、「微生物」である点。
(相違点2)
培養非対象地下水と培養対象地下水とを注入手段へ送る手段について、本願発明は、「培養手段に貯留されない培養非対象地下水」と「培養手段にて対象分解菌の培養が行われた培養対象地下水と、を混合して注入手段へ送る混合手段」と特定されるのに対し、引用発明における「注入井戸3へ送る手段」は、「培養プラント2で培養されない水」と「培養プラント2にて微生物の培養が行われた培養液」と、を「合わせて」いるものの、混合しているのか否か、不明である点。
(相違点3)
培養対象地下水の流量について、本願発明は、「培養非対象地下水の流量よりも少なくした」と特定されるのに対し、引用発明は、「培養プラント2で培養されない水」の流量よりも少なくしているのか否か、不明である点。
第6 判断
1 相違点1について
引用文献1の請求項1には「汚染土壌・汚染地下水に含まれる汚染物質分解性能を備えた微生物」、【0019】には「本発明における微生物としては、汚染土壌・汚染地下水に含まれ、且つ当該汚染物質の分解活性を備えた微生物であればよく、…(中略)…Methanosarucina sp.…(中略)…等の嫌気性微生物であってもよい。」と記載されている。そして、例示されている「Methanosarucina sp.」等が嫌気性菌であることは、出願時の技術常識であるといえる。
引用文献1の上記記載及び上記技術常識に基づけば、引用発明における「微生物」として、嫌気状態で培養される嫌気性菌を選択することは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 相違点2について
引用文献1には、【0026】に「また、注入井戸3は、培養プラント2で培養され且つ曝気処理された培養液を原位置の地下汚染領域全体(汚染土壌・汚染地下水を含む)に拡散混和させるために原位置に還元供給する供給装置として機能する。」、【0027】に「なお、注入井戸3は、曝気槽で曝気処理された培養液を、注入水とともに1/100等の浄化に最適な割合で原位置に還元供給するように制御する制御手段(図示せず)を有することが好ましい。このような制御手段により、原位置に供給する培養液の量を最適化することができるようになる。また、取水井戸1で揚水され、培養プラント2で培養されない汚染地下水のうち、砒素等の有害物質を除去する水処理装置(図示せず)を通した水を、注入水の一部として用いることもできる。」と記載されている。
引用文献1の上記記載に鑑みれば、「培養液」を原位置の地下汚染領域全体に拡散混和するために、「培養液」とは別途に注入水を用意し、「培養液」を注入水で1/100等の浄化に最適な割合で希釈していると解される。そして、「培養プラント2で培養されない水」は注入水の一部として用いられるものである。
そうすると、引用発明における「培養プラント2で培養されない水」は注入水の一部として用いられるものであるから、「培養プラント2で培養されない水」を含む注入水と「培養液」とは、地下汚染領域全体に拡散混和されるように、両者が偏在せず均一な状態とされていると考えるのが自然である。
したがって、引用発明における「注入井戸3へ送る手段」は、注入水の一部である「培養プラント2で培養されない水」と「培養液」とを混合している、すなわち、「混合手段」であると解されるから、相違点2は、実質的に相違点ではないといえる。仮に、そういえなかったとしても、引用発明において、「培養プラント2で培養されない水」を含む注入水と「培養液」とを地下汚染領域全体に拡散混和されるように、両者を偏在させず均一な状態としようとすることは、当業者にとって当然のことであるから、「注入井戸3へ送る手段」に、「培養プラント2で培養されない水」と「培養液」とを混合する混合手段を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。
3 相違点3について
引用発明においては、「取水井戸1にて揚水された汚染地下水」は、「培養プラント2で培養されない水」と「培養プラント2にて微生物の培養が行われ」る「培養液」とに「分離」されるものであるから、「培養液」の流量と「培養プラント2で培養されない水」の流量とは、所定の比率に設定されている。そして、当該比率については、「培養液」の流量が、「培養プラント2で培養されない水」の流量よりも少ないか、多いか、同じかの3つの選択肢のうちのいずれかである。
さらに、引用文献1の【0027】には、「培養液を、注入水とともに1/100等の浄化に最適な割合で原位置に還元供給する」、「取水井戸1で揚水され、培養プラント2で培養されない汚染地下水のうち、砒素等の有害物質を除去する水処理装置(図示せず)を通した水を、注入水の一部として用いることもできる。」との記載があり、当該記載からは、「培養液」の量は注入水の量の1/100程度で良いこと、すなわち、「培養液」は少なくて良く、注入水は多く必要となること、注入水の一部として「培養プラント2で培養されない水」を用いることが理解される。
これらのことを踏まえれば、引用発明において、「培養液」の流量を、注入水の一部となる「培養プラント2で培養されない水」の流量よりも少なくすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
4 効果について
本願発明における地下土壌の浄化に要する時間を短縮することができるという効果(明細書の【0012】、【0013】)は、引用文献1の【0008】及び【0014】の「汚染土壌・汚染地下水の浄化を効率的且つ安価に行うことができ」との記載からみて、引用発明から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものともいえない。
また、引用発明において、「培養プラント2にて微生物の培養が行われ」る「培養液」の流量が少なくなれば、その流量にあわせて、「培養プラント2」を小さくできることが、当業者にとって当然予測し得る事項である。そうすると、本願発明における培養手段の小型化を図ることができるという効果(明細書の【0023】)は、引用発明から当業者が予測し得る程度のものであって、格別顕著なものともいえない。
5 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「当該発明に係る地下土壌浄化システムにおいて、『培養対象地下水の流量を、培養非対象地下水の流量よりも多くする場合と比べて培養手段で貯留する地下水の量を削減でき、培養手段の容積を低減して培養手段の小型化を図ることができる。…(中略)…』という効果(…(中略)…また、この効果は、本願特徴1からすれば当業者に自明です。)を奏するものです。」と主張している。
しかしながら、上述したとおり、本願発明における培養手段の小型化を図ることができるという効果は、引用発明から当業者が予測し得る程度のものであって、格別顕著なものともいえないから、請求人の前記主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-003020