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特許拒絶査定不服審判

2020-001616

情報提供システム、情報提供方法及び情報提供プログラム

審判番号
2020-001616
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-020131外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年02月05日
審決日
2021年06月03日
公報発行日
2021年09月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G06F) / P18 .537-WZ (G06F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2019- 20131「情報提供システム、情報提供方法及び情報提供プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月27日出願公開、特開2019-106195〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
【理 由】

第1 手続経緯

本願は、平成29年3月21日(優先権主張 平成28年3月18日)に出願した特願2017-54858号の一部を平成31年2月6日に新たな特許出願としたものであって、平成31年2月27日に手続補正がなされ、令和元年6月3日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月6日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年11月1日付けで拒絶査定され、これに対し、令和2年2月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

その後、当審において、令和3年1月21日付けの補正の却下の決定により、令和2年2月5日付けの手続補正を却下し、令和3年2月10付けで拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もなかった。

第2 本願発明

令和2年2月5日提出の手続補正書による補正は、令和3年1月21日付けの補正の却下の決定により却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明は、令和元年8月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載されたとおりであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の言語による告知情報を管理する情報提供サーバであって、
少なくとも告知のジャンルを含む告知属性を記憶する第1記憶部と、
前記告知属性について、第1言語で表記された文字情報と第2言語で表記された文字情報とを互いに関連付けて記憶する第2記憶部と、
各告知者による所定の告知について、前記第1記憶部に記憶された告知属性の中から第1言語で表記された告知属性の文字情報の選択入力を受け付ける入力処理部と、
前記第2記憶部に基づいて、前記受け付けた第1言語で表記された告知属性の文字情報を第2言語で表記された告知属性の文字情報に変換する変換処理部と、
前記受け付けた第1言語で表記された告知属性の文字情報、および、前記変換された第2言語で表記された告知属性の文字情報を、当該文字情報を含む画面を表示するための画面表示データを携帯端末に送信可能な情報処理装置に送信する送信部と、
を有することを特徴とする情報提供サーバ。」

第3 拒絶の理由

令和3年2月5日付けで当審が通知した拒絶理由の要旨は、次のとおりのものである。

(理由1)

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

請求項1,2,5,6について、引用文献1,2

請求項3,4について、引用文献1~3

引用文献1:長谷川聡、宮尾克、「携帯電話における多言語表示-携帯電話の災害時利用」、システム/制御/情報、システム制御情報学会、平成18年6月15日、第50巻、第6号、pp.232-237
引用文献2:長谷川聡、宮尾克、「外国人を災害弱者としないために-多言語災害情報システムについて」、株式会社シノドス、[online]、2013年5月30日、インターネット

<URL:https//synodos.jp/fukkou/4179>

<URL:https//synodos.jp/fukkou/4179/2>

引用文献3:特開2015-195030号公報

(理由2)

発明の詳細な説明には、「イベント情報」に関する記載しかないにもかかわらず、特許請求の範囲の請求項1、5、6において「告知情報」と記載することは、「イベント情報」とは異なる「災害情報」までも特許請求の範囲に含めて請求するものであり、発明の詳細な説明の開示内容を超えて拡張ないし一般化するものであるから、「告知情報」を含む請求項1、5、6に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

また、請求項1を引用する請求項2~4に記載された発明も、同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではない。

したがって、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1

引用文献1(長谷川聡、宮尾克、「携帯電話における多言語表示-携帯電話の災害時利用」、システム/制御/情報、システム制御情報学会、平成18年6月15日、第50巻、第6号、pp.232-237)には、以下のとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。

「はじめに
・・・
ここでは、ケータイに文字メールで外国人向けの防災情報を配信するシステム(第1図)をとりあげる。本システムは、防災情報などを、テンプレート翻訳によって多言語に翻訳し、画像文字を利用してケータイの画面に表示する方法を提案するものである。本稿では、まず、(1)多言語防災情報の必要性と、(2)ケータイにおける多言語表示について述べ、(3)多言語防災情報システムの実現に向けた取組みを紹介し、あわせて(4)ケータイの災害時利用における課題について考察する。」(当審注:マル囲いの数字は、(1)~(4)で代用した。)(第232頁左欄1~16行)
「4. 多言語防災情報翻訳システムについて
4.1 テンプレート翻訳
文字コードではなく画像文字を使えば表示機能がないケータイへも多言語の文章を送信できる。ケータイはパーソナルな情報端末であり、ユーザごとに個別の形式(たとえば、各ユーザの母国語)で防災情報を伝えれば、防止・減災に有効であると考えられる。
しかし、緊急時に必要な情報を正確かつ迅速に翻訳するのは困難で、地震がない地域から来た外国人もおり、たとえば「津波警報」が出されたことを知っても、どのように行動すればよいのかが分からなかったり、日本で発表される「震度」について知識のない外国人も多いと考えられ、日本語で発表される防災・災害情報を単純に直訳しても情報が正確に伝わるとは限らないと考えられる。そこで、外国人が必要とする防災情報の各種を定型化し、あらかじめテンプレートとその翻訳文を用意しておくことで、正確・迅速に多言語に翻訳する「多言語防災情報翻訳システム」を開発した(第4図)。本システムは、多言語防災情報研究開発コンソーシアムの岡本耕平(名古屋大学環境学研究科教授)や宮尾克らによって開発され、地震防災に関する情報を日本語から英語、韓国語、中国語、ポルトガル語の4カ国語に正確・迅速に翻訳できる。本システムの地震防災に関する情報は、阪神・淡路大震災で公的機関・メディアから実際に流された情報、研究書などで指摘された「地震災害時に必要とされる情報」、外国人が必要とする情報、および気象庁の発表する観測情報・注意情報・警戒宣言などの発表文の4種の中から選択されたものである。
続きを表示(全24行)
「多言語防災情報翻訳システム」のテンプレートは、地震発生前、発生時、救援時期別に約350の日本語の文章から成り立っており、日本で発表される「震度」について知識のない外国人にも分かるように、「震度1」から「震度7」までの揺れの状態について気象庁震度階級の説明文にもとついて簡略化した文章も用意された。
これらの文例をカテゴリー別に、「予知段階」、「地震発生」、「被害・救援」、「生活情報」、「交通・ライフライン」、「安否・相談」、「外国人向け情報」の大項目に分類し、それぞれの大項目の下に、津波、余震、避難場所、給水などの項目を設けた。日本語からあらかじめ多言語に翻訳して整理しておき、When(いつ)、Where(どこで)、Who(だれが)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)などを、ローマ字・数字・日本語文字で入力すれば即座に4カ国語(英語、ポルトガル語、中国語、ハングル)に翻訳できるようにした。このシステムを利用すれば、一つ一つ情報を翻訳していくという手間や時間、人手を省くことが可能となり、緊急時の混乱の中でも誤訳の心配がなくなる。利用者は、日本語のテンプレートの中から必要な文章を選び、適当に組み合わせることによって、各国語の地震災害情報を簡単に作成できる。できあがった各国語の文章は、Unicodeの表示できるMS-Wordなどで編集でき、印刷して配布したり、メールに添付して配信できる。Unicodeが表示できないケータイなどには、画像文字とすれば配信することができる。出力される訳文は、第5図に示すようにそれぞれ短い文章で、ケータイに画像文字で表示するのに適している。
4.2 システムの利用方法
「多言語防災情報翻訳システム」は、2005年3月にWeb公開された。現状のシステムは、登録すれば誰でもWeb上で無料で利用できる。本システムの利用法は、以下の通りである。
(1)Webの上記URLでアクセスすると第4図の上のようなトップページが表示されるので、初めての場合は登録を行ってから、ログインする。
(2)多言語防災情報テンプレートパネル(第4図の下)の小見出し「ボタン」をクリックして、その項目に関連したテンプレートの一覧を表示する。あるいは、検索ボタンを押して、自由に「キーワード」を入れて検索すれば、全文検索によってキーワードのあるテンプレート文が一覧できる。
(3)つぎに、一覧の中から、編集・翻訳したい文をボタンで選択する。
(4)選んだテンプレート文の中で、入力部分(空白がある部分)に、「いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように」にあたる5W1Hを、メニュー選択または英数字で人力する。地名などは、外国人であっても漢字も併用して表示された方がわかりやすい場合があるので、漢字を英数字につづけて、入力することもできる。
(5)翻訳ボタンを押せば、第5図のように、4カ国語へ翻訳される。
(6)翻訳結果を「ダウンロードする」によって、テキストファイルとして保存する。このテキストは、Unicode(UTF-8)で書かれている。保存されたテキストファイルを右クリックして、「アプリケーションから開く」のサブメニューで、「Microsoft Word」(Win XP版)を選択して、Unicode(UTF-8)のファイル変換に「OK」ボタンを押せば、翻訳された4カ国語をMS-Wordで読める。(当審注:マル囲いの数字は、(1)~(6)で代用した。)
4.3 システムの今後
「多言語防災情報翻訳システム」は、今後の拡張を目指して、(1)未公開ではあるが、水害情報のテンプレートをすでに完成している。また、(2)地震・水害情報ともに、公開された4カ国語の他に、スペイン語、フィリピン・タガログ語、インドネシア語、中国繁体字の合計8種類の言語への翻訳システムを保有している。
さらに、今後、まず、防災情報を充実して翻訳語の種類を増やすとともに、気象庁からの気象電文などを、「地震・津波」、「台風」、「警報」の3種について、リアルタイム自動翻訳することを計画している。そして、次に、防災にかぎらず、公共情報全般の多言語情報翻訳システムへと拡張する計画である、医療・福祉・生活・交通・観光・行政など、日本で生活していくうえで必須の情報は、多言語に容易に翻訳できれば、外国人を情報弱者にしないための一助になると考えられる。
5. ケータイ防災情報の災害時利用
5.1 多言語防災情報翻訳システムの構成
「多言語防災情報翻訳システム」は、災害発生時に集中するWebサーバの負荷を分散し、安定した性能を維持できるよう「多言語防災情報Webサーバ」と「テンプレート翻訳サーバ」から構成されるシステムアーキテクチャ(第6図)を採用している。ユーザは、「Webサーバ」にアクセスするが、要求された多言語テンプレートは「テンプレート翻訳サーバ」がデータベースから検索してXML形式の文書として「Webサーバ」に返す。「Webサーバ」は多言語防災情報テンプレートを編集し、多言語の文章をユーザがダウンロードできるようにする。現状ではパソコンからの利用を想定しているが、訳文(第5図)を画像化してケータイで表示する実験を進め、多言語防災情報のケータイへの配信に、Webを用いる方法(第7図)やメールで配信する方法(第8図)を検討している。
5.2 ケータイへの情報配信の課題
ケータイへの防災情報配信を実用化するための今後の課題として、災害時のケータイメールの輻輳(通信が集中することによる通信障害)の回避や、ユーザ情報の管理(あらかじめ登録されたメールの宛先アドレスなどが災害発生時に有効かどうか)の問題がある。
輻輳の問題の解決のためには、まず、通信インフラの改善が期待される。近年、音声通話とパケット通信を独立ネットワークにして災害時のWebアクセスやメール送受信を確保する方法がとられるようになった。また、情報配信側の負荷分散のために、情報配信の流れを、たとえば、気象庁→都道府県→市町村→地域組織→各個人のように階層化しておくことで、各個人に送るメール件数を各サーバに分散することも有効であると思われる。さらに、メール配信(push型)(第8図)だけでなく緊急性の低い情報にはWebアクセス(pull型)(第7図)による情報提供を併用することも有効であると考えられる。
ユーザ情報(第8図)管理の問題の解決には、登録者のメールアドレスの変更などに日常的に対処する必要がある。災害時だけでなく日常的に利用するシステムにすることで、利用者と情報提供者双方が日頃から受信・配信を確認できるようにする方法が考えられる。自然災害のみならず、在日外国人も含めた市民向けの生活情報・天気予報・交通情報などや日常の防犯システムなどとしての利用も考慮した情報提供システムの実現が望まれる。」(第233頁右欄14行~236頁左欄27行)

以上、引用文献1の上記記載によると、引用文献1には、

「Webサーバと翻訳サーバとから構成され(第235頁右欄23~27行、第6図)、
テンプレートは、地震発生前、発生時、救援時期別に約350の日本語の文から成り立っており、カテゴリー別に、「予知段階」、「地震発生」、「被害・救援」、「生活情報」、「交通・ライフライン」、「安否・相談」、「外国人向け情報」の大項目に分類し、それぞれの大項目の下に、津波、余震、避難場所、給水などの項目を設け(第234頁左欄6行~右欄4行)、
テンプレートの日本語の文章はあらかじめ多言語に翻訳され、When(いつ)、Where(どこで)、Who(だれが)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)などを、ローマ字、数字、日本語文字で入力すれば即座に4カ国語に翻訳でき(第234頁右欄4~9行)、
ユーザは、Webサーバにアクセスし、要求された多言語テンプレートは翻訳サーバがデータベースから検索してXML形式の文書としてWebサーバに返し、Webサーバはテンプレートを編集し、多言語の文章をユーザがダウンロードできるように構成され(第235頁右欄27~33行)、
Webサーバは、ユーザがアクセスすると多言語防災情報テンプレートパネルを表示し、小見出しボタンがクリックされると、その項目に関連したテンプレートの一覧を表示し(第235頁左欄15~20行)、
テンプレートの一覧の中から、編集・翻訳したい文がボタンで選択され、選択されたテンプレート文の中で、入力部分に、「いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように」に当たる5W1Hがメニュー選択または英数字で入力され(第235頁左欄24~31行)、
翻訳ボタンが押されると4カ国語に翻訳し(第235頁左欄32~33行)、
日本語を含む翻訳結果を「ダウンロードする」によって、テキストファイルとして保存し(第235頁左欄34~35行、第5図)、
ユーザは、できあがった各国語の文章を印刷して配布したり、メールに添付してケータイ等に配信する(第235頁左欄3~9行)、
多言語防災情報翻訳システム。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

2 引用文献2

引用文献2(長谷川聡、宮尾克、「外国人を災害弱者としないために-多言語災害情報システムについて」、株式会社シノドス、[online]、2013年5月30日、インターネット<URL:https//synodos.jp/fukkou/4179><URL:https//synodos.jp/fukkou/4179/2>)には、引用文献1の多言語防災情報翻訳システムに相当する多言語災害情報システムについて記載され、「システムの応用と今後」という見出しの欄には、

「このシステムは、在日外国人の地域での生活情報や外国人旅行者向けの観光情報にも応用され、多様な情報提供が可能になっている。」

と記載されている。

第5 理由1(進歩性)について

1 対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「テンプレート」は、災害時に日本にいる外国人向けに必要な情報を知らせるためのものであるから、引用発明の「テンプレート」を含む「多言語防災情報」は、本願発明1の「告知情報」に相当し、引用発明の「Webサーバと、翻訳サーバとから構成され」た「多言語防災情報翻訳システム」は、本願発明1の「複数の言語による告知情報を管理する情報提供サーバ」に相当する。

イ 引用発明の、テンプレートをカテゴリー別に分類した「大項目」及びその下の「項目」は、「ジャンル」といえ、本願発明1の「少なくとも告知のジャンルを含む告知属性」に相当するものであり、引用発明における「大項目」及び「項目」は、「翻訳サーバ」に記憶されていることは明らかであるから、引用発明は、本願発明1の「少なくとも告知のジャンルを含む告知属性を記憶する第1記憶部」に相当する構成を有している。

ウ 引用発明の「テンプレート」は、「項目」を選択すると一覧表示され、テンプレートの日本語の文章は、あらかじめ多言語に翻訳され、翻訳サーバのデータベースに格納されているから、データベースには、「項目」と「テンプレートの日本語の文章」と「テンプレートの多言語に翻訳した文章」とが、関連付けて記憶されるものであり、引用発明の「テンプレートの日本語の文章」、「テンプレートの多言語に翻訳した文章」は、それぞれ、本願発明1の「第1言語で表記された文字情報」、「第2言語で表記された文字情報」に相当する。

よって、引用発明は、本願発明1の「前記告知属性について、第1言語で表記された文字情報と第2言語で表記された文字情報とを互いに関連付けて記憶する第2記憶部」に相当する構成を有している。

エ 引用発明における「ユーザ」は、災害時に日本にいる外国人向けに必要な情報を知らせる者であるから、本願発明1の「告知者」に相当し、引用発明の多言語防災情報テンプレートパネルにおいて、小見出しボタンがクリックされると、その項目に関連したテンプレートの一覧が表示され、一覧から、編集、翻訳しようとする文がボタンで選択されるから、引用発明は、本願発明1の「各告知者による所定の告知について、前記第1記憶部に記憶された告知属性の中から第1言語で表記された告知属性の文字情報の選択入力を受け付ける入力処理部」に相当する構成を有している。

オ 引用発明は、翻訳ボタンが押されると、選択したテンプレートの日本語の文章を4カ国語に翻訳するから、引用発明は、本願発明1の「前記第2記憶部に基づいて、前記受け付けた第1言語で表記された告知属性の文字情報を第2言語で表記された告知属性の文字情報に変換する変換処理部」に相当する構成を有している。

カ 引用発明において、ユーザが日本語を含む翻訳結果をダウンロードすることは、Webサーバが翻訳結果をユーザに送信することであるから、引用発明における送信結果を送信する構成と、本願発明1の「前記受け付けた第1言語で表記された告知属性の文字情報、および、前記変換された第2言語で表記された告知属性の文字情報を、当該文字情報を含む画面を表示するための画面表示データを携帯端末に送信可能な情報処理装置に送信する送信部」は、「前記受け付けた第1言語で表記された告知属性の文字情報、および、前記変換された第2言語で表記された告知属性の文字情報を送信する送信部」である点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は次のとおりである。

[一致点]

「複数の言語による告知情報を管理する情報提供サーバであって、
少なくとも告知のジャンルを含む告知属性を記憶する第1記憶部と、
前記告知属性について、第1言語で表記された文字情報と第2言語で表記された文字情報とを互いに関連付けて記憶する第2記憶部と、
各告知者による所定の告知について、前記第1記憶部に記憶された告知属性の中から第1言語で表記された告知属性の文字情報の選択入力を受け付ける入力処理部と、
前記第2記憶部に基づいて、前記受け付けた第1言語で表記された告知属性の文字情報を第2言語で表記された告知属性の文字情報に変換する変換処理部と、
前記受け付けた第1言語で表記された告知属性の文字情報、および、前記変換された第2言語で表記された告知属性の文字情報を送信する送信部と、
を有することを特徴とする情報提供サーバ。」

[相違点]

送信部が、本願発明1では「当該文字情報を含む画面を表示するための画面表示データを携帯端末に送信可能な情報処理装置」に送信するのに対し、引用発明では、文字情報をメールに添付してケータイ等に配信するユーザ、すなわち告知者に送信する点。

2 当審の判断

上記[相違点]について検討する。

引用発明は、ユーザが、Webサーバからダウンロードした各国語の文章を、メールに添付してケータイ等に配信するものであるが、引用文献1には、「現状ではパソコンからの利用を想定しているが、訳文(第5図)を画像化してケータイで表示する実験を進め、多言語防災情報のケータイへの配信に、Webを用いる方法(第7図)やメールで配信する方法(第8図)を検討している。」(第235頁右欄33行~第236頁左欄1行)と記載されているから、多言語防災情報翻訳システムからの多言語防災情報をシステム的に画面表示データとして携帯端末にシステムに配信することが考えられている。

よって、引用発明において、ユーザが、多言語防災情報をメールに添付してケータイ等に配信する代わりに、システム的に配信するものとし、「送信部」が、「画面表示データを携帯端末に送信可能な情報処理装置」に送信するように構成することは、当業者が容易に想到し得た事項である。

なお、本願発明1の「告知情報」が本願明細書に記載された「イベント情報」のことであったとしても、引用文献2には、多言語防災情報翻訳システムが、防災情報に限らず生活・観光情報にも応用されていることが記載されているから、引用発明において、防災情報を生活・観光等の「イベント情報」とすることも、当業者が容易に想到し得た事項である。

したがって、本願発明1は、当業者が、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 理由2(サポート要件)について

本願明細書には、以下のとおりの記載がある。

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、バーゲンセール等のイベントを開催する開催者は、日本語で表記されたイベントの内容を、正確に複数の言語に翻訳する必要があるため、従来のシステムのような機械翻訳を用いることは難しかった。また、人手による翻訳は時間が掛かるため、イベントの開催の準備期間が短い場合、イベントを開催する開催者にとって、人手による翻訳は利用しづらいものであった。

【0006】

本発明は、このような課題を解決すべくなされたものであり、複数の言語で正確に表記されたイベント情報を即座に提供し、情報提供システム等の利便性を向上させることを可能とする。

【発明の効果】

【0018】

本発明に係る情報提供システム、情報提供方法及び情報提供プログラムは、複数の言語で正確に表記されたイベント情報を即座に提供することが可能となる。

【0021】

(情報提供システム1の概要)

情報提供システム1は、複数の言語によるイベント情報を管理する。イベントは、外国人観光客が訪問又は体験可能なイベントであって、飲食店経営者、企業又は自治体等の開催者によって開催される。また、イベント情報は、イベントに関する情報であり、例えば、イベント名称、開催者情報及びイベント属性等を含む。

【0022】

開催者情報は、イベントを開催する開催者の開催者名称、及び/又は、開催者によって開催されるイベントの開催場所等を含む。イベント属性は、イベントのジャンル、イベントの対象客層、及び/又は、イベントの開催期間等を含む。イベント属性として、イベントの開催場所の最寄り駅の名称、イベント費用等が含まれてもよい。なお、対象客層は、開催者によって設定された、イベントに参加してもらいたい客層であり、例えば、性別、年齢等で区分される。

【0114】

(周辺検索処理)

図14は、周辺検索処理の一例を示すフローチャートである。図14に示す周辺検索処理は、図13のステップS404において実行される。

【0115】

まず、判定処理部265は、受信された検索結果表示要求に含まれる端末位置情報を取得する(ステップS501)。次に、判定処理部265は、取得された端末位置情報に基づいて、携帯端末4の現在位置を示す所定エリアを判定する(ステップS502)。所定エリアは、例えば、市区町村情報及び町丁目情報等の行政区画で規定されるエリア(例えば、港区、八王子市、銀座2丁目等)である。次に、判定処理部265は、検索結果表示要求が受信された現在日時を取得する(ステップS503)。

【0116】

次に、判定処理部265は、判定された所定エリア及び取得された現在日時に基づいて、イベント情報を抽出する(ステップS504)。まず、判定処理部265は、イベント情報テーブルを参照し、第1言語で表記されたイベント属性に記憶されたイベントの開催期間内に現在日時が含まれるイベントのイベントIDを判定する。次に、判定処理部265は、現在日時を用いて判定されたイベントIDのうち、開催者情に記憶された第1言語で表記された開催場所が所定エリアに含まれるイベントのイベントIDを判定する。そして、所定アリアを用いて判定されたイベントIDに関連付けられたイベント情報をイベント情報テーブルから抽出する。

【0117】

そして、画面作成部261は、抽出されたイベント情報から、周辺検索画面表示要求に含まれる言語指定情報で指定された言語で表記されるイベント情報を特定し、特定されたイベント情報を含む検索結果画面810を表示するための画面表示データを作成し(ステップS505)、一連のステップを終了する。

【0118】

以上詳述したとおり、情報提供システム1は、第1言語で表記されたイベント属性の文字情報を他の複数の言語で表記されたイベント属性の文字情報に変換することができ、複数の言語で正確に表記されたイベント属性を即座に提供することが可能となる。

【0119】

(変形例1)

なお、イベント情報は、開催者によって開催されるイベントの情報に限らない。例えば、イベント情報は、開催者が所有する施設の状況に関する情報、開催者が所有する施設において提供される商品又はサービスに関する情報、又は開催者が所有する施設において利用できるクーポン情報等であってもよい。

【0122】

(変形例4)

図15は、店舗端末3の表示機能によって表示される他の登録画面1500の例を示す図である。

【0123】

登録画面1500は、図6に示した登録画面600をスクロールすることにより表示される。登録画面1500には、登録画面600に表示される各項目に加えて、SNS(Social Networking Service)選択チェックボックス1501及び言語選択チェックボックス1502等が表示される。

【0124】

SNS選択チェックボックス1501は、イベント(イベント属性)を登録するSNSを選択するためのチェックボックスである。開催者は、SNS選択チェックボックス1501を用いて、イベントを登録するSNSを選択入力することができる。言語選択チェックボックス1502は、イベント属性の文字情報を変換する言語を選択するためのチェックボックスである。開催者は、言語選択チェックボックス1502を用いて、イベント属性の文字情報を変換する言語を選択入力することができる。

【0125】

図16は、携帯端末4の表示機能によって表示される他の検索結果画面1600の例を示す図である。

【0126】

検索結果画面1600は、図8(b)に示した検索結果画面810の代わりに表示される。検索結果画面1600には、検索結果画面810と同様に、所在エリア名称1601、イベント紹介情報1602及び開催告知ボタン1603等が表示される。但し、検索結果画面1600では、所在エリア名称1601及びイベント紹介情報1602は、言語選択チェックボックス1502を用いて選択された各言語で表示される。言語選択チェックボックス1502を用いて複数の言語が選択されている場合には、所在エリア名称1601及びイベント紹介情報1602は、複数の言語で表示される。なお、携帯端末4が、SNS選択チェックボックス1501を用いて選択されたSNSにアクセスしたときにも、検索結果画面1600と同様の画面が表示されてもよい。

【0127】

また、本変形例では、図8(a)に示した周辺検索画面800、図9(a)に示したイベント情報画面900、及び図9(b)に示した詳細説明画面910も同様に、言語選択チェックボックス1502を用いて選択された言語で表示される。

【0128】

本変形例では、図11のステップS201において入力処理部262が店舗端末3から受け付ける登録要求には、上記した各情報に加えて、SNS選択チェックボックス1501で選択入力されたSNSと、言語選択チェックボックス1502で選択入力された言語とが含まれる。即ち、入力処理部262は、第1言語と異なる複数の第2言語の中から特定の第2言語の選択入力を受け付ける。

【0129】

また、ステップS202において、変換処理部263は、受け付けたイベント属性の文字情報を、言語選択チェックボックス1502を用いて選択された、当該文字情報の言語とは異なる他の言語で表記されたイベント属性の文字情報に変換する。言語選択チェックボックス1502を用いて当該文字情報の言語とは異なる複数の他の言語が選択されている場合には、変換処理部263は、受け付けたイベント属性の文字情報を、選択された複数の言語のそれぞれで表記されたイベント属性の文字情報に変換する。

【0130】

また、ステップS203において、記憶処理部264は、受け付けたイベント属性の文字情報、及び、変換したイベント属性の文字情報をイベント情報テーブルに記憶する。また、サーバ送信部266は、イベント情報テーブルに記憶された各情報を、サーバ通信部21を介して、SNS選択チェックボックス1501で選択入力されたSNSのサーバに送信する。即ち、サーバ送信部266は、第1言語で表記されたイベント属性の文字情報と、言語選択チェックボックス1502を用いて選択された各言語で表記されたイベント属性の文字情報とをSNSの各サーバに送信する。SNSのサーバは、情報処理装置の一例である。

【0131】

各SNSのサーバは、携帯端末4から送信された所定の画面表示要求を受信すると、サーバ2から受信していた各イベント属性の文字情報を含む画面(検索結果画面1600と同様の画面)を表示するための画面表示データを作成し、携帯端末4に送信する。携帯端末4の閲覧実行部451は、各SNSのサーバから携帯端末通信部41を介して各種画面表示データを受信すると、受信された画面表示データに基づいて対応する画面を携帯端末表示部44に表示する。なお各SNSのサーバは、携帯端末4から言語指定情報を受け付け、受け付けた言語指定情報で指定された言語のみで表記された画面を表示するための画面表示データを作成し、携帯端末4に送信してもよい。

【0132】

また、本変形例では、図13のステップS402、S406、S407、図14のステップS505において、画面作成部261は、第1言語、及び、言語選択チェックボックス1502において選択入力されて変換処理部263により変換された各言語で表記された各画面を表示するための画面表示データを作成する。

【0133】

これにより、開催者は、携帯端末4に表示される言語を選択することが可能となり、開催者の利便性を向上させることが可能となる。また、開催者は、サーバ2に登録した各イベント情報を、各SNSサーバにも同時に登録することが可能となり、開催者の利便性を向上させることが可能となる。さらに、開催者は、選択された言語を理解する人種に適したイベントを携帯端末4のユーザへ提供できるため、イベントへの効率的な集客が可能となる。また、携帯端末4のユーザは、複数の言語で表記された画面を閲覧することが可能となり、ユーザの利便性を向上させることが可能となる。

以上、本願明細書の記載によれば、発明の詳細な説明に記載された情報提供システムは、複数の言語によるイベント情報を管理し、イベントは、バーゲンセール等の外国人観光客が訪問又は体験可能なイベントであって、飲食店経営者、企業又は自治体等の開催者によって開催されるものであり、発明が解決しようとする課題は、機械翻訳や人手による翻訳を用いずに、日本語で表記されたイベントの内容から、短時間で正確に複数の言語で表記されたイベント情報を提供することである。

そして、本願明細書の段落【0114】~【0117】の「周辺検索処理」には、携帯端末の現在位置のエリアと現在日時に基づいてエリア内で開催されているイベント情報を特定し、検索結果画面に表示すること、同段落【0119】には、イベント情報は、開催者が所有する施設の状況に関する情報、開催者が所有する施設において提供される商品又はサービスに関する情報、開催者が所有する施設において利用できるクーポン情報であってもよいこと、同段落【0133】には、特定の言語を理解する人種に適したイベントへの効率的な集客ができることが記載されている。

よって、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された「イベント情報」の「イベント」とは、開催者が開催、あるいは、開催者が所有する施設に関するものであり、周辺検索処理が行われるのであるから、開催者により場所が特定され、集客を目的としたものであり、ユーザが参加するものである。

そして、発明の詳細な説明には、「イベント情報」「イベントのジャンル」「イベント属性」「イベントを開催する開催者」という記載はあるものの、請求項1に記載された「告知情報」「告知のジャンル」「告知属性」「告知者」、さらには、「各告知者による所定の告知」という記載はない。

ここで、請求項1に記載された「告知情報」は、引用発明に例示される「災害情報」を含むものであり、「災害情報」の「災害」は、「開催者」を有さず、予め場所や時間が定まったものではなく、その情報は、広く一般に周知させなければならないものであるから、「災害情報」は、発明の詳細な説明に記載された「イベント情報」とは、異なるものである。

したがって、発明の詳細な説明には、「イベント情報」に関する記載しかないにもかかわらず、特許請求の範囲の請求項1において「告知情報」と記載することは、開催者により場所が特定され、特定のユーザの参加を前提とした「イベント情報」とは異なる、予め場所や時間が定まったものではなく、広く一般に周知させる必要がある「災害情報」までも特許請求の範囲に含めて請求し、発明の詳細な説明の開示内容を超えて拡張ないし一般化するものであり、その結果、本願発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるとも、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できる範囲のものであるとも認められないので、本願請求項1の記載は、特許法第36条第6項1号に適合するものではない。

第7 むすび

以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとともに、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について特許法第29条第2項の規定に対する検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-001616

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