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特許異議申立

2019-700981

段ボールシート給紙装置

審判番号
2019-700981
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-173163
登録番号
特許第6524503号(P6524503)
請求日
2019年12月04日
審決日
2020年06月23日
公報発行日
2020年09月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ISOWA
  • 【権利者代理人】田中 伸一郎
  • 【権利者代理人】松下 満
  • 【権利者代理人】倉澤 伊知郎
  • 【権利者代理人】山本 泰史
  • 【権利者代理人】石崎 亮
  • 【異議申立人】鈴木 幸代
審判長/審判官
  • 審判長 吉村 尚
  • 審判官 藤本 義仁
  • 審判官 河内 悠
分類
P1651.121-YAA(B65H) / P1651.537-YAA(B65H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6524503号発明「段ボールシート給紙装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6524503号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第6524503号の請求項2乃至9に係る特許を維持する。 特許第6524503号の請求項1に係る特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6524503号の請求項1乃至8に係る特許についての出願は、平成27年9月2日に出願され、令和1年5月17日にその特許権の設定登録がされ、同年6月5日に特許掲載公報が発行され、その後、同年12月4日付けで特許異議申立人鈴木幸代(以下「異議申立人」という。)より請求項1乃至8に対して特許異議の申立てがされ、令和2年1月24日付けで特許権者株式会社ISOWAに対して取消理由が通知され、同日付けで異議申立人に対して審尋がなされ、同年3月3日に異議申立人より回答書が提出され、同年同月26日に特許権者より意見書の提出及び訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)がされた。 なお、令和2年4月1日付けで異議申立人に対して、期間を指定して、特許法第120条の5第5項の規定に基づく通知をするとともに訂正請求書等を送付し、意見書の提出を求めたが、異議申立人からは、指定期間内に意見書の提出はなかった。 第2 本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否についての判断 1 本件訂正の内容 本件訂正の内容は以下のとおりである。(注:下線部分は訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を独立形式に改め、 「積層された段ボールシートを1枚ずつ送り出すための段ボールシート給紙装置であって、 段ボールシートの送り出し方向に沿って回転して、積層された段ボールシートのうちの最下層の段ボールシートを送り出す複数の給紙ローラと、 段ボールシートが載置されるよう板状に形成されると共に、上記複数の給紙ローラのそれぞれを受け入れる複数の開口部が形成され、給紙ローラに対して昇降して、給紙ローラと最下層の段ボールシートとの接触状態と非接触状態とを切り替える昇降部材と、 上記複数の給紙ローラ及び上記昇降部材が上部に設けられ、これらによって上面の一部分が形成された筐体であって、この筐体には吸引装置が更に取り付けられ、この吸引装置による吸引によって、上記給紙ローラと上記昇降部材の開口部との隙間を介して最下層の段ボールシートを下方に吸引する、上記筐体と、 を有し、 上記段ボールシート給紙装置は、 上記給紙ローラと上記昇降部材の開口部との隙間寸法が10mm以下に形成され、 更に、 段ボールシートを送り出している間に、上記給紙ローラ及び上記昇降部材を含む給紙部での作業を行うためのエリアへの人の進入を検知する人検知装置と、 上記人検知装置が人の進入を検知したときに、上記給紙ローラ及び上記昇降部材の少なくとも一方の動作を停止させる制御装置と、 を有し、 上記制御装置は、最下層の1枚の段ボールシートを送り出すための上記給紙ローラ及び上記昇降部材の1サイクルの動作が完了したタイミングで、上記給紙ローラ及び上記昇降部材の少なくとも一方の動作を停止させる、ことを特徴とする段ボールシート給紙装置。」 に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の段ボールシート給紙装置。」と記載されているのを、「請求項2に記載の段ボールシート給紙装置。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1乃至3のいずれか一項に記載の段ボールシート給紙装置。」と記載されているのを、「請求項2又は3のいずれか一項に記載の段ボールシート給紙装置。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「上記制御装置は、上記給紙ローラの動作を停止させずに、上記昇降部材の動作のみを停止させる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の段ボールシート給紙装置。」と記載されているのを、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、 「積層された段ボールシートを1枚ずつ送り出すための段ボールシート給紙装置であって、 段ボールシートの送り出し方向に沿って回転して、積層された段ボールシートのうちの最下層の段ボールシートを送り出す複数の給紙ローラと、 段ボールシートが載置されるよう板状に形成されると共に、上記複数の給紙ローラのそれぞれを受け入れる複数の開口部が形成され、給紙ローラに対して昇降して、給紙ローラと最下層の段ボールシートとの接触状態と非接触状態とを切り替える昇降部材と、 上記複数の給紙ローラ及び上記昇降部材が上部に設けられ、これらによって上面の一部分が形成された筐体であって、この筐体には吸引装置が更に取り付けられ、この吸引装置による吸引によって、上記給紙ローラと上記昇降部材の開口部との隙間を介して最下層の段ボールシートを下方に吸引する、上記筐体と、 を有し、 上記段ボールシート給紙装置は、 上記給紙ローラと上記昇降部材の開口部との隙間寸法が10mm以下に形成され、 更に、 段ボールシートを送り出している間に、上記給紙ローラ及び上記昇降部材を含む給紙部での作業を行うためのエリアへの人の進入を検知する人検知装置と、 上記人検知装置が人の進入を検知したときに、上記給紙ローラ及び上記昇降部材の少なくとも一方の動作を停止させる制御装置と、 を有し、 上記制御装置は、上記給紙ローラの動作を停止させずに、上記昇降部材の動作のみを停止させる、ことを特徴とする段ボールシート給紙装置。」 に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1乃至5のいずれか一項に記載の段ボールシート給紙装置。」と記載されているのを、「請求項2乃至5のいずれか一項に記載の段ボールシート給紙装置。」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1乃至6のいずれか一項に記載の段ボールシート給紙装置。」と記載されているのを、「請求項2乃至6のいずれか一項に記載の段ボールシート給紙装置。」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1乃至7のいずれか一項に記載の段ボールシート給紙装置。」と記載されているのを、「請求項2乃至7のいずれか一項に記載の段ボールシート給紙装置。」に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項5に「上記制御装置は、上記給紙ローラの動作を停止させずに、上記昇降部材の動作のみを停止させる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の段ボールシート給紙装置。」とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、「上記制御装置は、上記給紙ローラの動作を停止させずに、上記昇降部材の動作のみを停止させる、請求項2又は3に記載の段ボールシート給紙装置。」に訂正し、新たな請求項9とする。 2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び一群の請求項について (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項1を引用する請求項2を、独立形式の請求項にするものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項3が本件訂正前の請求項1又は2を引用するものであったところ、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、引用する請求項を削除するものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、本件訂正前の請求項4が本件訂正前の請求項1乃至3のいずれか一項を引用するものであったところ、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、引用する請求項を削除するものであるから、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、本件訂正前の請求項5が本件訂正前の請求項1乃至3のいずれか一項を引用するものであったところ、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式の請求項にするものであるから、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項6について 訂正事項6は、本件訂正前の請求項6が本件訂正前の請求項1乃至5のいずれか一項を引用するものであったところ、上記訂正事項1及び5に係る訂正に伴い、引用する請求項を削除するものであるとともに、請求項6と請求項6が引用する他の請求項との関係を整理するものであるから、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同法同条同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (7)訂正事項7について 訂正事項7は、本件訂正前の請求項7が本件訂正前の請求項1乃至6のいずれか一項を引用するものであったところ、上記訂正事項1及び5に係る訂正に伴い、引用する請求項を削除するものであるとともに、請求項7と請求項7が引用する他の請求項との関係を整理するものであるから、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同法同条同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (8)訂正事項8について 訂正事項8は、本件訂正前の請求項8が本件訂正前の請求項1乃至7のいずれか一項を引用するものであったところ、上記訂正事項1及び5に係る訂正に伴い、引用する請求項を削除するものであるとともに、請求項8と請求項8が引用する他の請求項との関係を整理するものであるから、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同法同条同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (9)訂正事項9について 訂正事項9は、本件訂正前の請求項5が本件訂正前の請求項1乃至3のいずれか一項を引用するものであったところ、上記訂正事項5に係る訂正に伴い、引用する他の請求項との関係を整理するものであるから、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (10)一群の請求項についての適否 訂正事項に係る訂正前の請求項1乃至8について、請求項2乃至8は、すべて直接的又は間接的に「請求項1」を引用しているものであって、訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1乃至請求項8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものである。 よって、訂正事項による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項ごとに」適法に請求されたものである。 また、訂正後の請求項1乃至請求項9は、一群の請求項である。 3 まとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1-9〕について訂正を認める。 第3 訂正後の本件特許発明 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 積層された段ボールシートを1枚ずつ送り出すための段ボールシート給紙装置であって、 段ボールシートの送り出し方向に沿って回転して、積層された段ボールシートのうちの最下層の段ボールシートを送り出す複数の給紙ローラと、 段ボールシートが載置されるよう板状に形成されると共に、上記複数の給紙ローラのそれぞれを受け入れる複数の開口部が形成され、給紙ローラに対して昇降して、給紙ローラと最下層の段ボールシートとの接触状態と非接触状態とを切り替える昇降部材と、 上記複数の給紙ローラ及び上記昇降部材が上部に設けられ、これらによって上面の一部分が形成された筐体であって、この筐体には吸引装置が更に取り付けられ、この吸引装置による吸引によって、上記給紙ローラと上記昇降部材の開口部との隙間を介して最下層の段ボールシートを下方に吸引する、上記筐体と、 を有し、 上記段ボールシート給紙装置は、 上記給紙ローラと上記昇降部材の開口部との隙間寸法が10mm以下に形成され、 更に、 段ボールシートを送り出している間に、上記給紙ローラ及び上記昇降部材を含む給紙部での作業を行うためのエリアへの人の進入を検知する人検知装置と、 上記人検知装置が人の進入を検知したときに、上記給紙ローラ及び上記昇降部材の少なくとも一方の動作を停止させる制御装置と、 を有し、 上記制御装置は、最下層の1枚の段ボールシートを送り出すための上記給紙ローラ及び上記昇降部材の1サイクルの動作が完了したタイミングで、上記給紙ローラ及び上記昇降部材の少なくとも一方の動作を停止させる、ことを特徴とする段ボールシート給紙装置。 【請求項3】 上記制御装置による上記給紙ローラ及び上記昇降部材の少なくとも一方の停止状態を解除するための解除ボタンを更に有し、 上記制御装置は、上記人検知装置が人を検知しなくなり、且つ、上記解除ボタンがオンになったときに、上記給紙ローラ及び上記昇降部材の少なくとも一方の停止状態を解除し て、その動作を開始させる、請求項2に記載の段ボールシート給紙装置。 【請求項4】 上記制御装置は、上記給紙ローラ及び上記昇降部材の両方の動作を停止させる、請求項2又は3のいずれか一項に記載の段ボールシート給紙装置。 【請求項5】 積層された段ボールシートを1枚ずつ送り出すための段ボールシート給紙装置であって、 段ボールシートの送り出し方向に沿って回転して、積層された段ボールシートのうちの最下層の段ボールシートを送り出す複数の給紙ローラと、 段ボールシートが載置されるよう板状に形成されると共に、上記複数の給紙ローラのそれぞれを受け入れる複数の開口部が形成され、給紙ローラに対して昇降して、給紙ローラと最下層の段ボールシートとの接触状態と非接触状態とを切り替える昇降部材と、 上記複数の給紙ローラ及び上記昇降部材が上部に設けられ、これらによって上面の一部分が形成された筐体であって、この筐体には吸引装置が更に取り付けられ、この吸引装置による吸引によって、上記給紙ローラと上記昇降部材の開口部との隙間を介して最下層の段ボールシートを下方に吸引する、上記筐体と、 を有し、 上記段ボールシート給紙装置は、 上記給紙ローラと上記昇降部材の開口部との隙間寸法が10mm以下に形成され、 更に、 段ボールシートを送り出している間に、上記給紙ローラ及び上記昇降部材を含む給紙部での作業を行うためのエリアへの人の進入を検知する人検知装置と、 上記人検知装置が人の進入を検知したときに、上記給紙ローラ及び上記昇降部材の少なくとも一方の動作を停止させる制御装置と、 を有し、 上記制御装置は、上記給紙ローラの動作を停止させずに、上記昇降部材の動作のみを停止させる、ことを特徴とする段ボールシート給紙装置。 【請求項6】 上記給紙ローラと上記昇降部材の開口部との隙間寸法が5mm以下に形成されている、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の段ボールシート給紙装置。 【請求項7】 上記人検知装置は、上記給紙部での作業を行うためのエリアの床面に設けられたマットスイッチである、請求項2乃至6のいずれか一項に記載の段ボールシート給紙装置。 【請求項8】 上記給紙ローラ及び上記昇降部材は、上記段ボールシート給紙装置が送り出した段ボールシートに対する処理を行う下流側の装置と独立して駆動されるように構成されている、請求項2乃至7のいずれか一項に記載の段ボールシート給紙装置。 【請求項9】 上記制御装置は、上記給紙ローラの動作を停止させずに、上記昇降部材の動作のみを停止させる、請求項2又は3に記載の段ボールシート給紙装置。 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件特許の訂正前の請求項1乃至8に係る特許に対して、令和2年1月24日付けで特許権者に対して通知した取消理由の概要は次のとおりである。 (1)理由1(進歩性) 本件特許の請求項1、3、4、6乃至8に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の各甲号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3、4、6乃至8に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)理由2(サポート要件) 請求項1乃至8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 本件特許発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書の【0009】を参酌すると、「安全性を適切に確保しつつ、吸引により筐体において発生する負圧の変動を小さくして、段ボールシートの送り出し時における給紙ずれを抑制することができる段ボールシート給紙装置を提供すること」であると認められる。 これに対し、本件特許発明1は、「給紙ローラと昇降部材の開口部との隙間寸法」に関して、「10mm以下に形成され」と特定され、請求項1を引用する本件特許発明6は、「給紙ローラと昇降部材の開口部との隙間寸法」に関して、「5mm以下に形成されている」と特定されている。 そして、本件特許発明1~8の隙間寸法とは、本件特許明細書の【0042】を参酌すると、段ボールシート送り方向における、昇降部材の開口部の縁端と、給紙ローラの端縁との距離であることが理解できる。 ここで、給紙ローラと昇降部材の開口部との隙間からの空気の流入により、筐体で発生する負圧は変動し、筐体の上面の一部をなす昇降部材の総面積に対する隙間の総面積の比率、筐体の大きさ、吸引部材の吸引力等の様々な条件に依存するものである。 さらに、昇降部材の総面積に対する隙間部分の総面積の比率は、昇降部材の開口部との送り方向の隙間寸法並びに幅方向の隙間寸法に依存するものである。 そうすると、「給紙ローラと昇降部材の開口部との隙間寸法」以外の筐体の上面の一部をなす昇降部材の総面積に対する隙間の総面積の比率、筐体の大きさ、吸引部材の吸引力等が特定されていない、本件特許発明1~8は、発明の課題を解決する手段が反映されているとはいえない。 よって、本件特許発明1~8は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 2 各甲号証の記載 (1)甲第1号証 (1)甲第1号証 本件特許の出願前の平成8年10月15日に頒布された特開平8-268583号公報(甲第1号証)には、次の事項が記載されている。 ア.「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、給紙装置における送りコロの回転制御方法および装置に関し、更に詳細には、給紙テーブル上に多数積載したシート状材を、その最下層から一枚ずつ下流側に送り出し供給する送りコロを備える給紙装置において、下流側に配置した紙工機械に、常に正確なタイミングでシート状材を給紙し得るようにした給紙装置における送りコロの回転制御方法および装置に関するものである。 【0002】 【従来技術】段ボールシートを連続的に製造するコルゲータラインの下流側には、プリンタスロッタ(多色輪転印刷機と溝切り機の複合装置)やプリンタスコアラ(多色輪転印刷機と罫線機の複合装置)の如きシート加工装置が配設される。例えばプリンタスロッタは、段ボールシートを1枚づつ繰出し供給する給紙装置と、該シートに印刷を施すプリンタユニットと、所要の多色印刷がなされた該シートにクリーズィング(罫線入れ)を施すクリーザユニットと、罫線入れがなされた該シートにスロッティングを施すスロッタユニットとの直列配置により構成されている。…」 イ.「【0011】図1に示す給紙装置10は、多数の段ボールシート12を積層載置可能な給紙テーブル14と、該テーブル14に積載した段ボールシート12を、その最下層から一枚ずつ下流側に送り出し供給する複数の送りコロ16とを備えている。すなわち、段ボールシート12を水平に送り出すパスラインより下方に、図2に示す如く、シート給送方向に複数(実施例では3本)の回転軸18が平行に枢支され、各回転軸18には、その軸方向に所要間隔で複数の送りコロ16が一体回転可能に配設されている。各回転軸18の一端はギヤボックス20の内部に配設され、該ギヤボックス20に配設した可変速制御可能なモータ22とギヤ列(図示せず)を介して連結されて、モータ22の駆動により各回転軸18が同期的に回転されるようになっている。このモータ22は、後述する制御装置24により駆動制御されて、送りコロ16を停止状態から予め定められた速度(ライン速度)まで所要の加速率で加速し、次いで所要の減速率で減速して停止させる不等速で回転させるよう設定されている(図6参照)。またモータ22は、送りコロ16を所要時間に亘って停止状態に保持するよう制御される。… 【0012】多数の段ボールシート12が積載される給紙テーブル14の下方には、テーブル面に開設した開口14aに連通する空気室28が配設されている。この空気室28には、図示しないブロワ等の吸引手段に連通するダクト(何れも図示せず)が接続される。そして吸引手段を作動させることにより、空気室28内を負圧状態に設定し、テーブル面に載置されたシート群の内、最下層の段ボールシート12を水平状態で吸着保持するようになっている。また給紙テーブル14には、前記開口14aに対応する受板30が昇降自在に配設され、該受板30の各送りコロ16と対応する部位に形成した切欠30aや孔30bを介して、該コロ16の外周面との相対的高さ位置が可変できるよう構成してある。 【0013】前記受板30の長手方向両側には、図3に示す如く、下方に延出する側板32,32が形成されており、各側板32の下端に、シート給送方向に離間してフォロワ34が夫々回転自在に枢支されている。また側板32,32の下方には、前記回転軸18と平行な一対の作動軸36,36が回転自在に臨み、該作動軸36,36は前記モータ22により回転駆動される。各作動軸36のフォロワ34,34と対応する位置に、該フォロワ34と当接するカム38が夫々一体回転可能に配設され、該カム38の回転により受板30を昇降させるようになっている。すなわち受板30は、その表面がパスラインより下方に位置して各切欠30aや孔30bから上方に送りコロ16の外周面が突出する下降位置(図1参照)と、その表面がパスラインより上昇して送りコロ16の外周面が切欠30aや孔30b内に没入した上昇位置(図4参照)との間を移動される。そして、受板30が上昇位置から下降位置に移動することにより、該受板30に積載されている最下層シートの下面を送りコロ16に当接させて送り力を付与し、受板30が下降位置から上昇位置に移動することにより、最下層シートを送りコロ16から離間して送り力の解除を行なうものである。なお、受板30の各切欠30aや孔30bは空気室28と連通し、該受板30が下降位置に臨んだ際に、最下層シートを送りコロ16に吸引力を介して圧接して該コロ16の送り力がシートに確実に伝わるよう構成している。また作動軸36,36は、前記送りコロ16が停止するタイミングで、受板30を下降位置に移動させるようクラッチ等を介して回転が制御されるようになっている。【0014】…またフィードロール40,40は、下流側に配置した紙工機械の駆動源により共通的に駆動されてライン速度で回転される。」 ウ.「【0019】…これにより、図1に示すように最下層の段ボールシート12が送りコロ16の回転に伴って送り出され、該シート12はフロントゲート42を通ってフィードロール40,40に供給される。…」 エ.「【0025】…給紙装置10と紙工機械との間にフィードロールを配設しないものにおいては、紙工機械や該機械のメインモータに接続する回転検出器から出力されるパルス数に応じてモータ22を制御することができる。」 これらの記載を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「多数の段ボールシート12を積層載置可能な給紙テーブル14と、該テーブル14に積載した段ボールシート12を、その最下層から一枚ずつ下流側に送り出し供給するモータ22の駆動により回転される複数の送りコロ16とを備えている給紙装置10であって、 多数の段ボールシート12が積載される給紙テーブル14の下方には、テーブル面に開設した開口14aに連通する空気室28が配設され、この空気室28には、ブロワ等の吸引手段に連通するダクトが接続され、吸引手段を作動させることにより、空気室28内を負圧状態に設定し、テーブル面に載置されたシート群の内、最下層の段ボールシート12を水平状態で吸着保持するようになっており、また給紙テーブル14には、前記開口14aに対応する受板30が昇降自在に配設され、該受板30の各送りコロ16と対応する部位に形成した切欠30aや孔30bを介して、該コロ16の外周面との相対的高さ位置が可変できるよう構成してあり、 受板30は、その表面がパスラインより下方に位置して各切欠30aや孔30bから上方に送りコロ16の外周面が突出する下降位置と、その表面がパスラインより上昇して送りコロ16の外周面が切欠30aや孔30b内に没入した上昇位置との間を移動し、 受板30の各切欠30aや孔30bは空気室28と連通し、該受板30が下降位置に臨んだ際に、最下層シートを送りコロ16に吸引力を介して圧接して該コロ16の送り力がシートに確実に伝わるよう構成し、下流側に配置した紙工機械は、メイインモータにより駆動される、給紙装置10。」 (2-1)甲第2号証-1 本件特許の出願前の平成11年4月20日に頒布された特開平11-106072号公報(甲第2号証-1)には、次の事項が記載されている。 ア.「【0009】…しかるに、基準姿勢の段ボールシートにおける前端縁と傾斜姿勢の段ボールシートにおける前端縁とではその位置が異なるため、給紙テーブルの開口における傾斜姿勢の段ボールシートの前端縁近傍に臨む部位は該シートで覆われずに開放したままとなる。このため、空気室に所要の負圧を形成し得なくなって吸引力が弱くなり、送りコロの送り力を段ボールシートに効率的に付与し得なくなって、確実な送り出しに支障を来たすおそれがある。」 (2-2)甲第2号証-2 本件特許の出願前の平成11年11月16日に頒布された特開平11-314785号公報(甲第2号証-2)には、次の事項が記載されている。 ア.「【0013】図9に示すように、段ボールシート1の長さが短い場合、段ボールシート1aの後端が受板10が上昇して送り出しロール5aによる搬送力がなくなっても、まだ段ボールシート1aの先端が上流側のフィードロール11aに少ししか掛からない。これでは、下流側のフィードロール11bとテーブル板18との間の隙間、段ボールシート1aの下側面とテーブル板18との間の隙間、上流側のフィードロール11aとテーブル板18との間の隙間等を介して、サクションボックス12が大気開放されてしまい、サクションボックス12内に大気中から空気が流れ込み、サクションボックス12内の真空度が十分に高まらないことになる。」 (3-1)甲第3号証-1 本件特許の出願前に頒布された「月刊カートン・ボックス」、日本、(株)日報アイ・ビーVisionVitalityVictory、平成19年9月1日、2007年9月号、Vol.26、NO.307、p.62-65(甲第3号証-1)には、次の事項が記載されている。 (3-2)甲第3号証-2 本件特許の出願前に頒布された「月刊カートン・ボックス」、日本、(株)日報アイ・ビーVisionVitalityVictory、平成21年12月1日、2009年12月号、Vol.28、NO.334、p.40-41(甲第3号証-2)には、次の事項が記載されている。 (3-3)甲第3号証-3 本件特許の出願前に頒布された「月刊カートン・ボックス」、日本、(株)日報アイ・ビーVisionVitalityVictory、平成21年1月1日、2009年1月号、Vol.28、NO.323、p.44-49(甲第3号証-3)には、次の事項が記載されている。 (4-1)甲第4号証-1 「機械安全規格を活用して災害防止を進めるためのガイドブック」、日本、中央労働災害防止協会、平成27年3月、p.30(甲第4号証-1)には、次の事項が記載されている。 そして、“「機械安全規格を活用して災害防止を進めるためのガイドブック」書誌詳細”,[online],国立国会図書館オンライン,[2020年2月25日検索],インターネット<URL:https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-1026386527-00>(甲第4号証-1-2)から、甲第4号証-1が本件特許の出願前の2015年3月に頒布されたと認められる。 (4-2)甲第4号証-2 本件特許の出願前の平成9年1月16日に頒布された国際公開第97/01773号(甲第4号証-2)には、次の事項が記載されている。 ア.「〔技術分野〕 本発明は、機械と人が協働して作業を行うような危険な場所において、作業者の存在を検出した時に機械の作業を停止させて作業者の安全を確保するためのマツトセンサに関する。 〔背景技術〕 例えば、ロボットを用いた作業システムでは、作業者の安全対策としてロボット周囲の危険領域(ロボットの作業領域)に作業者が存在する場合には、ロボット可動部を駆動させないような安全制御が組み込まれる。 このような安全制御のマットセンサとしては、機械可動部周囲に敷設するマットセンサが用いられ、かかるマットセンサは、例えば、統一欧州規格案prEN1760(機械の安全性-圧力感知式保護装置-part1:圧力感知式マットとフロア)でも示されている。」(14頁3~14行) (4-3)甲第4号証-3 本件特許の出願前に頒布された「JIS 機械類の安全性―設計のための一般原則―リスクアセスメント及びリスク低減 JIS B 9700:2013 (ISO 12100:2010) (JMF)」、日本、日本規格協会、平成25年6月1日、p.35-36(甲第4号証-3)には、次の事項が記載されている。 (4-4)甲第4号証-4 本件特許の出願前に頒布された「JIS 印刷関連機器及びシステムに対する安全要求事項-第1部:一般要求事項 JIS B 9631-1:2010 (JPMA/JSA)」、日本、日本規格協会、平成22年3月23日、p.22-23(甲第4号証-1)には、次の事項が記載されている。 3 当審の判断 (1)理由1(進歩性)について 上記「第4 1 (1)理由1(進歩性)」の対象となる請求項に、請求項2及び5,並びに、請求項2及び5を引用する請求項が含まれていないことは明らかなところ、上記「第3」のとおり、本件訂正により、取消理由通知の理由1の対象の請求項1が削除され、訂正後の本件特許発明2乃至4、9は、取消理由通知の理由1の対象とされていない本件訂正前の請求項2の全てを発明特定事項として含むものとなり、また、訂正後の本件特許発明5は、取消理由通知の理由1の対象とされていない本件訂正前の請求項5のうち請求項1を引用するものとなり、さらに、訂正後の本件特許発明6乃至8は、取消理由通知の理由1の対象とされていない本件訂正前の請求項2または5の全てを発明特定事項として含むものとなったから、上記取消理由の理由1には理由がない。 (2)理由2(サポート要件)について 令和2年3月26日付けの特許権者が提出した意見書の4頁19行~5頁4行における釈明、及び本件特許明細書の【0008】を参酌すると、従来より、サクションボックスにおいて発生する負圧の変動を小さくすべく、給紙ローラとグレイトの開口部との隙間の大きさの寸法を試行錯誤して調整してきたことが認められる。 そして、給紙ローラとグレイトの開口部との隙間の大きさとともに、給紙ローラと昇降部材の開口部の隙間寸法以外の調整対象である筐体の上面の一部をなす昇降部材の総面積に対する隙間の総面積の比率、筐体の大きさ、吸引部材の吸引力等については、負圧の変動が小さくなるような最適な範囲となるよう、従来から、当然、調整するものであると認められる。 そうすると、給紙ローラと昇降部材の開口部の隙間寸法以外の調整対象である筐体の上面の一部をなす昇降部材の総面積に対する隙間の総面積の比率、筐体の大きさ、吸引部材の吸引力等については、当業者が最適なものとなるよう、適宜、設定すべき程度のものであって、当該事項を具体的に特定しなければ、本願発明の課題を解決できないとするほどのものとはいえない。 よって、本件特許発明2乃至9が、発明の詳細な説明に記載されたものでないとすることはできない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由 請求項1乃至8に係る特許は、その発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 当審の判断 上記「第4 3 (2)」に説示したとおり、従来より、サクションボックスにおいて発生する負圧の変動を小さくすべく、給紙ローラとグレイトの開口部との隙間の大きさの寸法を試行錯誤して調整してきたことが認められ、給紙ローラとグレイトの開口部との隙間の大きさとともに、給紙ローラと昇降部材の開口部の隙間寸法以外の調整対象である筐体の上面の一部をなす昇降部材の総面積に対する隙間の総面積の比率、筐体の大きさ、吸引部材の吸引力等については、負圧の変動が小さくなるような最適な範囲となるよう、従来から、当然、調整するものであると認められる。 そうすると、段ボールシート給紙装置の製造条件を事細かに規定しなくても、従来より、最適解を求めてきた当業者であれば、容易に実施可能とであると認められる。 よって、本件特許発明2乃至9が、実施可能でないとすることはできない。 第6 むすび 上記第2のとおり、本件訂正請求は認められるから、特許第6524503号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正後の請求項[1-9]について訂正することを認める。 そして、本件訂正請求により、本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、削除されたから、本件特許異議申立のうち、本件特許請求の範囲の請求項1に係る特許についての申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 そして、上記第4及び第5のとおり、本件特許の訂正請求書による取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項2乃至9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項2乃至9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、上記結論のとおり決定する。

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2019-700981

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