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特許異議申立

2016-701000

巻紙印刷機

審判番号
2016-701000
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2010-087552
登録番号
特許第5909039号(P5909039)
請求日
2016年10月20日
審決日
2017年06月14日
公報発行日
2017年09月29日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】株式会社小森コーポレーション
  • 【権利者代理人】山川 政樹
  • 【権利者代理人】山川 茂樹
  • 【異議申立人】鈴木 幸代
審判長/審判官
  • 審判長 吉村 尚
  • 審判官 黒瀬 雅一
  • 審判官 藤本 義仁
分類
P1651.121-Z (B41F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5909039号発明「巻紙印刷機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5909039号の請求項1、及び2に係る特許を取り消す。

理由

【理 由】 第1.手続の経緯 特許第5909039号の請求項1、及び2に係る特許についての出願は、平成22年4月6日に特許出願され、平成28年4月1日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人鈴木幸代により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年1月20日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である同年3月7日付けで意見書の提出がなされ、さらに当審において同年4月5日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、その指定期間内である同年6月2日付けで意見書の提出がなされたものである。 第2.本件発明 特許第5909039号の請求項1、及び2に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1、及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明2」という。)。 「【請求項1】 ウェブに対して印刷を施す巻紙印刷機において、 ウェブの両面に対してオゾン発生領域の波長の光を必要とせずに硬化する高反応型インキまたは高反応型ニスを転写する転写装置と、 ウェブの一方の面に光照射エネルギーが小さい低出力でありオゾンレスランプによるオゾン発生領域の波長を含まない270nmの波長範囲の下限から熱発生領域の波長を除いた400nmの波長範囲の上限までの全波長領域にわたる広範囲の波長の光を照射してウェブの一方の面に転写された前記高反応型インキまたは高反応型ニスを硬化させる一方面用の光照射装置と、 ウェブの他方の面に光照射エネルギーが小さい低出力でありオゾンレスランプによるオゾン発生領域の波長を含まない270nmの波長範囲の下限から熱発生領域の波長を除いた400nmの波長範囲の上限までの全波長領域にわたる広範囲の波長の光を照射してウェブの他方の面に転写された前記高反応型インキまたは高反応型ニスを硬化させる他方面用の光照射装置とを備え、 前記高反応型インキまたは高反応型ニスは、前記一方面用の光照射装置および前記他方面用の光照射装置から照射される270nmから400nmまでの全波長領域にわたる広範囲の波長の範囲内の特定の波長で硬化し、 加熱乾燥型の乾燥装置を備えないことを特徴とする巻紙印刷機。 【請求項2】 前記一方面用の光照射装置および前記他方面用の光照射装置は、 照射口に設けられ前記オゾンレスランプから照射される光のうち熱発生領域の波長を吸収するカットフィルタとを備えることを特徴とする請求項1記載の巻紙印刷機。」 第3.甲各号証の記載 (1)甲1号証 取消理由で通知した甲1号証(特開2004-351757号公報)には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。) ア.「平版オフセット方式の新聞輪転印刷機において、印刷ユニットの胴間及び又は印刷ユニット後のガイドローラーの前に紫外線硬化型インキを硬化するための紫外線照射部を有する新聞輪転印刷機。」(【請求項1】) イ.「本発明の新聞輪転印刷機の一例について、その概略構成図を図1に示した。図1は一般的な4層式新聞印刷用オフセット輪転機の印刷ユニットの一つを表しており、4つある版胴の中間部と印刷ユニットの出口に紫外線照射装置が付いている。紫外線硬化型インキを用いる場合は、走行紙は給紙部から印刷ユニットを経て、印刷ユニット内および又はその直後の部位で紫外線の照射を受ける。その後複数のガイドローラー及びターンバー等を経て折り機へと送られる。」(段落【0014】) ウ.「新聞輪転印刷機に設置する紫外線照射装置の一例について、その模式図を図2に示した。紫外線を発生するUVランプの他、紫外線を効率よく集光する反射板、ランプより発生する熱を除去する冷却装置、排風装置等から成り、枚葉印刷機等で実用されているものとほとんど同じである。ランプ3本を内蔵する紫外線照射装置の場合でも寸法は、長さ1メートル×横幅2メートル×高さ0.5メートル程度である。用紙の走行方向には1メートルあれば設置できるので、印刷ユニットの胴間にランプを内蔵することも可能である。」(段落【0015】) エ.上記「イ.」、「ウ.」、及び図1の記載から、以下の事項が示されているといえる。 ・走行紙の両面に対して紫外線硬化型インキを転写する版胴を有している。 ・走行紙の一方の面に紫外線を発生するUVランプによる光を照射して走行紙の一方の面に転写された紫外線硬化型インキを硬化させる一方面用の紫外線照射部と、走行紙の他方の面に紫外線を発生するUVランプによる光を照射して走行紙の他方の面に転写された紫外線硬化型インキを硬化させる他方面用の紫外線照射部とを備えている。 ・新聞輪転印刷機は、加熱乾燥型の乾燥装置を備えない。 これらの記載を総合すると、甲1号証には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「平版オフセット方式の新聞輪転印刷機において、印刷ユニットの胴間及び又は印刷ユニット後のガイドローラーの前に紫外線硬化型インキを硬化するための紫外線照射部を有し、 紫外線硬化型インキを用いる場合は、走行紙は給紙部から印刷ユニットを経て、印刷ユニット内および又はその直後の部位で紫外線の照射を受け、 走行紙の両面に対して紫外線硬化型インキを転写する版胴を有しており、 走行紙の一方の面に紫外線を発生するUVランプによる光を照射して走行紙の一方の面に転写された紫外線硬化型インキを硬化させる一方面用の紫外線照射部と、 走行紙の他方の面に紫外線を発生するUVランプによる光を照射して走行紙の他方の面に転写された紫外線硬化型インキを硬化させる他方面用の紫外線照射部とを備え、 加熱乾燥型の乾燥装置を備えない新聞輪転印刷機。」 (2)甲2号証 取消理由で通知した甲2号証(特開平9-184903号公報)には、次の事項が記載されている。 ア.「石英ガラスを代表とするSiO2含有率の高いガラスは、高耐熱性と高透過性を併せ持つ優れた光学材料として多岐にわたって利用されている。特に高出力ランプでは石英ガラスが管材として多用されている。しかし、そのランプの用途によって、その石英ガラスの短波長UV高透過性で却って支障を来すことがあり、その解決のために、ある特定波長から短波長のUV域を遮蔽する必要が生じる場合がある。例えば、250nm付近の透過率を下げないで、オゾン発生の原因となる200nm以下の光を極力遮蔽する必要がある場合;オゾンの発生とオゾン分解による有害な活性酸素の発生を両方抑制するために260nm以下を極力遮蔽した上で、必要な300nm以上の透過性を確保する必要がある場合などである。」(段落【0001】) イ.「本発明者は、相当数の金属元素の有機化合物等を単一状態で、もしくは複合された状態で合成石英ガラスにコーティングして、分光透過特性、耐熱性、耐熱衝撃性などを詳細に調べた。・・・また、Nb酸化物を50WT%添加して1回コーティングした場合、250nm以下をほぼ完全に遮蔽し、かつ50%カット波長も長波長になることなく300nmであり、その上、350nmで85%の透過率を確保できる(図6参照)。しかも、可視域も全体的に透過性が高い。・・・本発明になるコーティングを施した通常の石英ガラスを管材として用いれば、高価なオゾンレス石英ガラスを用いた場合と比較して、低コストで、性能的に安定したオゾンレスHIDランプが実現することになる。」(段落【0004】) (3)甲3号証 取消理由で通知した甲3号証(特開平5-116489号公報)には、次の事項が記載されている。 ア.「ここで、オゾンは100nm~210nmの波長で生成されるので、365nmを主波長とし、250nm以下の波長をほとんど有さず、230nm以下の波長を測定できない程の紫外線を発光する高圧水銀ランプ等のオゾンレスランプを使用すれば、オゾンの発生を0.009ppm程度に抑制することができる。」(段落【0006】) (4)甲4号証 取消理由で通知した甲4号証(特開2004-9359号公報)には、次の事項が記載されている。 ア.「ところで画像の硬化には一般に高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等、大出力の紫外線照射ランプが用いられるが、これらは200nm以下の短波の紫外線も放射するためオゾンを発生することが知られている。オゾンは作業環境に有害なガスであるため、排気設備を設け作業環境が汚染しないようにする必要がある。」(段落【0004】) (5)甲5号証 取消理由で通知した甲5号証(麻田隆志、UV照射装置の現状、印刷雑誌2007年10月号、株式会社印刷学会出版部、平成19年10月15日発行、21~25頁)には、次の事項が記載されている。 ア.「印刷におけるUVの利用」(21頁左欄2行) イ.「メタルハライドランプ ・・・また、発光管の材質によりオゾンタイプとオゾンレスタイプに分けられる。・・・しかし、オゾンレスタイプではランプ発光管に特殊な石英を用いて230nm以下の短波長をカットするのでオゾンの発生を抑制できる。」(21頁右欄9~26行) ウ.「反射板の種類 ・・・コールドフィルター方式 ガラス上に金属薄膜を多層蒸着し、赤外線および可視光をカットし、UVを透過するフィルター照射器具下面に搭載し被照射物の温度上昇を抑える方式。」(24頁左欄1~21行) エ.図2から、「250nmの波長範囲から400nmの波長範囲までの全波長領域にわたる広範囲の波長の光を照射するオゾンレスタイプのメタルハライドランプ」が看取できる。(22頁左欄) (6)甲6号証 取消理由で通知した甲6号証(松原陽一、UV硬化技術と印刷分野への応用、印刷雑誌2006年6月号、株式会社印刷学会出版部、平成18年6月15日発行、17~23頁)には、次の事項が記載されている。 ア.「UV硬化技術と印刷分野への応用」(17頁2行) イ.「UVランプに与えられる電力を100とすると実際にUVに変換されるのは約30%、可視光が10%、赤外線(IR)が40%、ロス分が20%となる。ここで問題となるのがIR成分でそのまま照射されると被照射体の温度上昇の原因となるので、できるだけ取り除きたい。」(19頁左欄4~9行) ウ.「IR成分の除去に用いられているのが・・・IRカットフィルターである。」(19頁左欄22~23行) (7)甲7号証 取消理由で通知した甲7号証(折笠輝雄、UVインクジェット用光源の技術動向、日本印刷学会誌第45巻第6号、社団法人日本印刷学会、平成20年12月31日発行、9~17頁)には、次の事項が記載されている。 ア.「UV硬化技術とインクジェット(以下IJと表す)技術の特性を組み合わせたUVIJ技術は、ドロップオンデマンド(DOD)技術の理想形として注目を浴びている。」(9頁左欄2~4行) イ.「UV光源を分類する上で、その分類のしかたは様々である。本稿では、光開始剤励起種を生成させる観点からUV光源をポリクロマチック発光光源とモノクロマチック発光光源に大別し、それぞれについて概説する。」(13頁左欄2~5行) ウ.「ポリクロマチック光源の発光スペクトルはUV領域のみならず、可視から赤外線領域まで含まれるため、楕円形集光リフレクターで2次焦点に集まるエネルギーは、UVスペクトル領域だけでなく、赤外線領域まで照射され、熱による基材のダメージが生じる場合がある。 非照射物への熱の影響を防ぐ場合、・・・発光バルブから直接のIR光をカットするために、UVランプと非照射物の間にIRカットフィルターを配す工夫がなされている。」(15頁左欄1~11行) (8)甲8号証 取消理由で通知した甲8号証(木下忍、UV/EB硬化装置、日本印刷学会誌第40巻第3号、社団法人日本印刷学会、平成15年6月30日発行、7~16頁)には、次の事項が記載されている。 ア.「表1に示したとおり、UV硬化技術は利用しやすいなどの特長も多く、表2に挙げたとおり身近なところの印刷に使用されている。 それに使用されるUV硬化装置はランプ、照射器、電源および冷却装置で構成される。特に装置選定には、・・・UV以外に可視光線や赤外線(IR)も同時に発光されるので、基材の温度上昇による基材変化も十分注意する必要がある。」(8頁左欄3行~右欄2行) イ.「コールドミラーと熱線カットフィルター(必要な紫外線を透過させ可視光線及び赤外線を反射する。)を併用し、さらに低温化が必要なワークに使用する。」(11頁表4) ウ.表3から、「約230nmの波長範囲から400nmの波長範囲までの全波長領域にわたる広範囲の波長の光を照射するオゾンレスタイプのメタルハライドランプ」が看取できる。(9頁) (9)甲9号証 取消理由で通知した甲9号証(特開昭61-158451号公報)には、次の事項が記載されている。 ア.「プリント合板、プリント配線基板あるいは新聞印刷などの印刷工程において、紫外線硬化性の塗料、インク等を塗布した基体に紫外線を照射してこの塗料、インク等を硬化させる方法がある。しかし、このような方法において、紫外線を照射する例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどの高圧放電ランプは、紫外線とともに可視光線および赤外線も照射するため、塗料、インク等や基体に熱を加えることになり、時によっては、その紫外線硬化の光化学反応を阻害したり、基体を熱損させたりすることがあり、そのため、一般に被照射面の加熱作用を除く手段が採用されている。」(1頁右欄1~13行) (10)甲15号証 取消理由で通知した甲15号証(中村裕一、UV印刷の今後、印刷雑誌2010年1月号、株式会社印刷学会出版部、平成22年1月15日発行、9~11頁)には、次の事項が記載されている。 ア.「UV印刷の今後」(9頁2行) イ.「LED-UV方式と比較した場合、低出力UVシステムは熱とオゾンが出てしまうため、給排気ダクト設備が必要となり、イメージ面で劣ってしまう。そこで、UVランプメーカーのアイグラフィックスとランプを共同開発し、熱およびオゾンを出さない方式を商品化した。これは、光電管で使用されているガラスの技術とフィルターの技術を組み合わせたもので、結果として、印刷紙面温度は印刷室プラス4~5℃、オゾン測定でもオゾンは検出されなかった。」(10頁右欄15~24行) (11)甲17号証 取消理由で通知した甲17号証(田中治夫、LED硬化型インキの原理と特徴、印刷雑誌2008年10月号、株式会社印刷学会出版部、平成20年10月15日発行、11~15頁)には、次の事項が記載されている。 ア.「LED硬化型インキの原理と特徴」(11頁2行) イ.「UV印刷システムでは、照射装置の能力(高出力化、多灯化など)に依存するものの、周速約300m/分での高速印刷も実用となっている。」(13頁左欄16行~右欄3行) ウ.「また、メタルハライドランプは、・・・254nmから436nmまで連続した発光スペクトル分布となり、」(13頁右欄13~17行) 第4.判断 (1)本件特許発明1について ア.対比 本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、 後者における「走行紙」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「ウェブ」に相当し、以下同様に、「新聞輪転印刷機」は「巻紙印刷機」に、「版胴」は「転写装置」に、「紫外線照射部」は「光照射装置」に、それぞれ相当する。 また、後者における「紫外線硬化型インキ」と前者における「高反応型インキ」とは、「紫外線硬化型インキ」との概念で共通する。 また、後者における「UVランプ」と前者における「オゾンレスランプ」とは、「紫外線照射ランプ」との概念で共通する。 したがって、両者は、 「ウェブに対して印刷を施す巻紙印刷機において、 ウェブの両面に対して紫外線硬化型インキまたは高反応型ニスを転写する転写装置と、 ウェブの一方の面に紫外線照射ランプによる光を照射してウェブの一方の面に転写された前記紫外線硬化型インキまたは高反応型ニスを硬化させる一方面用の光照射装置と、 ウェブの他方の面に紫外線照射ランプによる光を照射してウェブの他方の面に転写された前記紫外線硬化型インキまたは高反応型ニスを硬化させる他方面用の光照射装置とを備え、 前記紫外線硬化型インキまたは高反応型ニスは、前記一方面用の光照射装置および前記他方面用の光照射装置から照射されて硬化し、 加熱乾燥型の乾燥装置を備えない巻紙印刷機。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 紫外線硬化型インキが、本件特許発明1においては、「オゾン発生領域の波長の光を必要とせずに硬化する高反応型インキ」であるのに対し、引用発明1においては、紫外線硬化型インキではあるが、そのようなものか明からでない点。 [相違点2] 本件特許発明1においては、光照射装置は、「光照射エネルギーが小さい低出力でありオゾンレスランプによるオゾン発生領域の波長を含まない270nmの波長範囲の下限から熱発生領域の波長を除いた400nmの波長範囲の上限までの全波長領域にわたる広範囲の波長の光を照射」するのに対し、引用発明1においては、紫外線照射部がそのようなものか明からでない点。 [相違点3] 本件特許発明1においては、「高反応型インキは、270nmから400nmまでの全波長領域にわたる広範囲の波長の範囲内の特定の波長で硬化する」のに対し、引用発明1においては、その点を備えていない点。 イ.判断 上記相違点について、以下検討する。 (ア)相違点2について 紫外線照射ランプを有する光照射装置を備える印刷機において、250nm程度以下の波長で有害なオゾンが発生するため、オゾンの発生を防止するという課題を解決するために、オゾン発生領域の波長をほぼ含まない250nm程度以上の波長で発光するオゾンレスタイプのメタルハライドランプは、周知の技術事項(例えば、上記「第3.(2)~(5)、(10)」参照。以下「周知の技術事項1」という。)である。 そして、上記周知の技術事項1に示されているオゾンレスタイプのメタルハライドランプは、オゾンを発生しないから、光照射エネルギーが小さい低出力のものといえる。 してみると、上記周知の技術事項1には、上記相違点2に係る本件特許発明1の「光照射エネルギーが小さい低出力でありオゾンレスランプによるオゾン発生領域の波長を含まない波長範囲の下限から波長の光を照射」するとの発明特定事項を備える。 また、紫外線照射ランプを有する光照射装置を備える印刷機において、紫外線照射ランプによる赤外線の照射によって、被照射体が赤外線の熱によりダメージを生じることを防止するという課題を解決するために、光照射装置に赤外線、すなわち熱発生領域の波長をカットするカットフィルタを備えることは、周知の技術事項(例えば、上記「第3.(5)~(10)」参照。以下「周知の技術事項2」という。)である。 してみると、上記周知の技術事項2には、上記相違点2に係る本件特許発明1の「熱発生領域の波長を除いた上限までの波長の光を照射」するとの発明特定事項を備える。 また、紫外線照射ランプを有する光照射装置を備える印刷機において、250nm程度の波長範囲から400nm程度の波長範囲までの全波長領域にわたる広範囲の波長の光を照射するオゾンレスタイプのメタルハライドランプは、周知の技術事項(例えば、上記「第3.(5)、(8)、(11)」参照。以下「周知の技術事項3」という。)である。 してみると、上記周知の技術事項3には、上記相違点2に係る本件特許発明1の「270nmの波長範囲から400nmの波長範囲までの全波長領域にわたる広範囲の波長の光を照射」するとの発明特定事項を備える。 そうしてみると、上記周知の技術事項1のとおり、紫外線照射ランプを有する光照射装置を備える印刷機において、250nm程度以下の波長で有害なオゾンが発生するため、オゾンの発生を防止を防止するという課題は、周知であり、また、上記周知の技術事項2のとおり、紫外線照射ランプによる赤外線の照射によって、被照射体が赤外線の熱によりダメージを生じることを防止するという課題は、周知であることを踏まえれば、本件特許発明1において、これらの課題は内在する自明の課題といえる。 したがって、本件特許発明1と周知の技術事項1、及び2とは、共に液滴射出器という技術分野に属し、上記のとおり、共通の課題を有するものであるから、本件特許発明1において、引用発明1に周知の技術事項1、及び2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本件特許発明1において、オゾンの発生を防止するため、及び被照射体が赤外線の熱によりダメージを生じることを防止するために、オゾンレスランプの光の波長の下限、及び上限をどの程度とするかは、当業者が本件特許発明1を実施する際に適宜定めるべき設計的事項であるところ、本件特許明細書をみても、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項である「270nmの波長範囲の下限」、及び「400nmの波長範囲の上限」とした点に格別の臨界的意義があるものではない。 よって、本件特許発明1において、引用発明1に上記周知の技術事項3を踏まえて上記周知の技術事項1、及び2を適用して、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 (イ)相違点1、及び3について 上記周知の技術事項1~3のとおりであるから、上記周知の技術事項1、および2の印刷機に使用する紫外線硬化型インキは、当然、オゾン発生領域の波長の光を必要とせずに硬化する高反応型インキということになるし、また270nmから400nmまでの全波長領域にわたる広範囲の波長の範囲内の特定の波長で硬化するといえる。 したがって、本件特許発明1において、引用発明1に上記周知の技術事項3を踏まえて上記周知の技術事項1、及び2を適用して、上記相違点1、及び3に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本件特許発明1の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1、及び上記周知の技術事項1~3から当業者が予測し得る範囲内のものである。 ウ.小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、引用発明1、及び上記周知の技術事項1~3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件特許発明2について ア.対比 本件特許発明2と甲第1号証発明とを対比すると、上記「(1)ア.」での検討を踏まえるに、両者は、上記「(1)ア.」において示した一致点があり、上記相違点1~3に加え、以下の点で相違している。 [相違点4] 本件特許発明2においては、光照射装置は、「照射口に設けられオゾンレスランプから照射される光のうち熱発生領域の波長を吸収するカットフィルタとを備える」のに対し、引用発明1においては、紫外線照射部がそのようなものか明からでない点。 イ.判断 上記相違点4について以下検討する。 上記「(1)イ.」のとおり、紫外線照射ランプを有する光照射装置を備える印刷機において、紫外線照射ランプによる赤外線の照射によって、被照射体が赤外線の熱によりダメージを生じることを防止するという課題を解決するために、光照射装置に赤外線、すなわち熱発生領域の波長をカットするカットフィルタを備えることは、周知の技術事項2であり、また引用発明1に周知の技術事項2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。 したがって、本件特許発明1において、引用発明1に上記周知の技術事項2を適用して、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本件特許発明2の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1、及び上記周知の技術事項1~3から当業者が予測し得る範囲内のものである。 ウ.小括 以上のとおりであるから、本件特許発明2は、引用発明1、及び上記周知の技術事項1~3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5.むすび 以上のとおり、本件特許発明1、及び2に係る発明は、引用発明1、及び上記周知の技術事項1~3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1、及び2に係る発明係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-701000

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