特許拒絶査定不服審判
2019-017771
色合成素子を備える光合波器
- 審判番号
- 2019-017771
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-538046外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年12月27日
- 審決日
- 2020年08月26日
- 公報発行日
- 2021年03月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コーニング インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】柳田 征史
- 分類
- P18 .121-Z (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-538046「色合成素子を備える光合波器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月18日国際公開、WO2015/089157、平成29年 1月19日国内公表、特表2017-502335〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)12月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年12月12日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 9月26日付け:拒絶理由通知書
平成31年 4月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 8月26日付け:拒絶査定(令和元年 9月4日送達)
令和 元年12月27日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成31年4月3日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
光合波システムにおいて、
色合成素子、
第1の表面及び第2の表面を有する第1の固体透明材料素子、
第3の表面及び第4の表面を有する第2の固体透明材料素子、
前記第1の表面上に配された第1のコーティング、
前記第2の表面上または前記第3の表面上に配された第2のコーティング、及び前記第4の表面上に配された第3のコーティング、
を有する色合成素子と、
第1の波長帯を含む第1の光ビームを前記第1のコーティング上に向ける第1の光源を有する第1のカラーチャネルと、
第2の波長帯を含み、前記第1の光ビームに平行である第2の光ビームを前記第1のコーティング上に向ける第2の光源を有する第2のカラーチャネルと、
第3の波長帯を含み、前記第2の光ビームに平行である第3の光ビームを前記第1のコーティング上に向ける第3の光源を有する第3のカラーチャネルと、
を備え、
前記第1の表面および前記第4の表面は、前記色合成素子の外表面に位置し、
前記第1のコーティングは、前記第1の波長帯を反射し、前記第2の波長帯及び前記第3の波長帯を通す、
前記第2のコーティングは、前記第2の波長帯を反射し、前記第3の波長帯を通す、及び
前記第3のコーティングは前記第3の波長帯を反射する、
ことを特徴とする光合波システム。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
引用文献1.特表2007-534987号公報
引用文献2.特開平1-237619号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(1)「(発明の技術分野)
本発明は一般に光学に関するものであり、一層詳細にはカラー分解器、カラー混合器、およびカラー分解器やカラー混合器を利用する発明品に関する。」(第2ページ右下欄15行~19行)
(2)「第4図は光学的に平らで透明な二つの光学支持媒体60と62とを取付けて実質上等間隔な二色性層を設け、空間的およびスペクトル的に分離されている実質上平行な三つの光ビーム8、9、10を作ることができるようにする方法を示す。本発明によれば、投影された線像を空間的、スペクトル的に精密に分離するのは、第4図に示すように、複合二色性ビームスプリッタを通して行われる。光学分解器56は1面または両面に二色性被膜50、52、および54が被覆されている、精密に研削し研磨されたガラス板60と62とから構成されている。各二色性被膜50、52、54で、入射光は波長に応じて反射するか透過するかし、吸収損失は無視できる。二色性被膜50、52、54の組成は帯域ろ波を正確に行うように決めることができる。
二色性被膜については光学の業界において公知である。二色性被膜は代表的には、高い屈折率と低い屈折率との20以上の光学層が、代表的には約1から3ミクロンの堆積厚でガラス面に真空付着されたものから構成される。材料の組成と付着の方法とはスペクトル帯域ろ波を非常に正確に行うように設計されうる。前面が二色性被膜で被覆された1枚のガラス板から成る種々な二色性フィルタを様々な供給元(たとえば、カリフォルニヤ州サンタローザにあるOptical Coating Laboratory社)から市場で入手できる。
第4図に示す板2は二色性被膜50に45°で当たる入射光が青い光(約400~500nm)を反射し、赤い光と縁の光とを透過するように設計されている。
第4図に示す板3は、第1の二色性被膜52を通常45°で打つ入射光が赤のスペクトル帯(たとえば、600~700nm)を反射し、緑の帯域を透過するように両面が二色性被膜52と54とで被覆されている。第2の二色性被膜54を打ち、光軸が二色性被膜から通常45°の方向にある縁の光は反射される。反射された縁の光はガラス板62と別の二色性被膜52と50とを45°の角で通過し戻される。第4図に示すとおり、入射光の各成分8、9、および10は入来ビーム67に対して90°で反射される。反射された赤と緑の成分は、互いに平行で且つガラス板62と二色性被膜との厚さ54、板62、および入射角によって決まる距離だけ離れている。同様に、青と赤との成分9と10とはガラス板60の厚さ、二色性被膜50、板60の屈折率、および入射角で決まる距離だけ離れている。
入射光ビームの三色分解は、第4図に示すように、ビームスプリッタ板2と3とを組み合わせて行うことができる。スペクトル的に特製した三つの二色性被膜50、52、および54の各々はガラス板60、62の厚さだけ離れている。第1の二色性被膜を打つ入射光で入射角が二色性被膜から45°を成すものは青のスペクトル帯域が反射されるようにろ波される。反射されない帯域(赤と縁)はガラス板60と62との間に設置されている第2の二色性被膜52に伝達される。被膜52は赤のスペクトル帯域を反射する。残りの帯域、すなわち、縁のスペクトル帯域は第3の二色性被膜54で反射される。赤と緑のスペクトル成分はガラス板60と62および二色性被膜50と52を通って、実質上乱されずに、複合ビームスプリッタ56を出る。このようにして入射光ビームの分離された赤、緑、および青の成分は主入射ビームに対して90°で反射され、空間的に平行に分離されるが、これは単にガラス板60、62、および二色性被膜50、52、および54の厚さと、それらの屈折率とによって決まる。反射カラー帯域が現れる順序は例として示したに過ぎない。更に、ミラー被膜を第3の二色性被膜54の代わりに使用することができる。第3の残りのカラー成分だけがその被膜境界面に到達するからである。」(第6ページ右上欄11行~第7ページ左上欄最下行)
(3)「第20図は別の方法で構成することができる光学構成要素168を示す。光学構成要素168は第1および第2の二色性層装置170と172とを備えることができ、これらはスペクトル的、空間的に光ビームを混合するか、分解するかに使用することができる。」(第13ページ左上欄12行~17行)
(4)「第21図は二色性層装置186を構成する別の方法示す。再び、第21図は二色性層装置186をビームスプリッタとしてまたはビーム混合器として使用することができることを示している。」(第13ページ左下欄10行~13行)
(5)また、FIG4、FIG20、FIG21はそれぞれ次のとおりである。
FIG4より、二色性被膜50、54は、それぞれ、ガラス板60と62の外側表面に配置されていることが看て取れる。
2 引用発明
上記1(2)には、「第4図に示す板2は・・・」、「第4図に示す板3は・・・」とあるが、「板2」、「板3」は、FIG4も参酌すれば、「ガラス板60」、「ガラス板62」と同じものを指し示していることは明らかである。そして、1(2)の「第4図に示す板2は二色性被膜50に45°で当たる入射光が青い光(約400~500nm)を反射し、赤い光と縁の光とを透過するように設計されている。」との記載からみて、「ガラス板60に二色性被膜50が形成されている」のは明らかであり、また、「第4図に示す板3は、第1の二色性被膜52を通常45°で打つ入射光が赤のスペクトル帯(たとえば、600~700nm)を反射し、緑の帯域を透過するように両面が二色性被膜52と54とで被覆されている。」との記載からみて、「ガラス板62に二色性被膜52、54が形成され」ていることは明らかである。
したがって、上記1(1)~(5)より、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「光学的に平らで透明な二つの光学支持媒体(ガラス板)60と62とを取付けて実質上等間隔な二色性層を設け、空間的およびスペクトル的に分離されている実質上平行な三つの光ビーム8、9、10を作ることができるようにするために、1面または両面に二色性被膜50、52、および54が被覆されているガラス板60と62とから構成され、二色性被膜50は45°で当たる入射光が青い光(約400~500nm)を反射し、赤い光と縁の光とを透過するように、二色性被膜52は45°で当たる入射光が赤のスペクトル帯(たとえば、600~700nm)を反射し、緑の帯域を透過するように、二色性被膜54は45°で当たる緑の入射光を反射するようにし、ガラス板60に二色性被膜50が形成され、ガラス板62に二色性被膜52、54が形成され、二色性被膜50、54は、それぞれ、ガラス板60と62の外側表面に配置されている光学分解器56。」
第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 引用発明の「ガラス板60」、「ガラス板62」、「二色性被膜50」、「二色性被膜52」、「二色性被膜54」は、それぞれ、本願発明の「第1の固体透明材料素子」、「第2の固体透明材料素子」、「第1のコーティング」、「第2のコーティング」「第3のコーティング」に相当する。
2 引用発明の「ガラス板60」、「ガラス板62」は、光が入出射する2つの面を備えていることが、FIG4等からも明らかであり、そうすると、本願発明と同様、「ガラス板60」は「第1の表面及び第2の表面を有する」といえ、「ガラス板62」は「第3の表面及び第4の表面を有する」といえる。
3 引用発明の「二色性被膜50」は、ガラス板60に形成されており、ガラス板60の外側表面に配置されているから、本願発明と同様、「第1の表面上に配され」ているといえる。
4 引用発明の「二色性被膜52」は、ガラス板62に形成されているから、本願発明と同様、「第3の表面上に配され」ているといえ、そうすると、引用発明の「ガラス板62に二色性被膜52が形成され」は、本願発明の「第2の表面上または第3の表面上に配された第2のコーティング」に相当するといえる。
5 引用発明の「二色性被膜54」は、ガラス板62に形成されており、ガラス板62の外側表面に配置されているから、本願発明と同様、「第4の表面上に配され」ているといえる。
6 引用発明の「光学分解器56」と、本願発明の「色合成素子」とは、「光学素子」である点で共通するといえる。
7 引用発明は、「二色性被膜50、54は、それぞれ、ガラス板60と62の外側表面に配置されている」ものであり、「第1の表面および第4の表面は、光学素子の外表面に位置」しているといえる。
8 引用発明の「二色性被膜50」は、「入射光が青い光(約400~500nm)を反射し、赤い光と縁の光とを透過する」から、本願発明と同様、「第1の波長帯を反射し、前記第2の波長帯及び前記第3の波長帯を通す」ものといえる。
9 引用発明の「二色性被膜52」は、「入射光が赤のスペクトル帯(たとえば、600~700nm)を反射し、緑の帯域を透過する」から、本願発明と同様、「第2の波長帯を反射し、前記第3の波長帯を通す」ものといえる。
10 引用発明の「二色性被膜54」は、「緑の入射光を反射する」から、本願発明と同様、「第3の波長帯を反射する」ものといえる。
1~10を踏まえると、本願発明と引用発明は、以下の点において一致する。
「第1の表面及び第2の表面を有する第1の固体透明材料素子、
第3の表面及び第4の表面を有する第2の固体透明材料素子、
前記第1の表面上に配された第1のコーティング、
前記第2の表面上または前記第3の表面上に配された第2のコーティング、及び前記第4の表面上に配された第3のコーティング、
を有する光学素子であって、
前記第1の表面および前記第4の表面は、前記光学素子の外表面に位置し、
前記第1のコーティングは、前記第1の波長帯を反射し、前記第2の波長帯及び前記第3の波長帯を通す、
前記第2のコーティングは、前記第2の波長帯を反射し、前記第3の波長帯を通す、及び
前記第3のコーティングは前記第3の波長帯を反射する、
光学素子。」
一方、本願発明と引用発明は、以下の点で相違する。
相違点
本願発明が、色合成素子を備える光合波システムの発明であり、第1の波長帯を含む第1の光ビームを第1のコーティング上に向ける第1の光源を有する第1のカラーチャネルと、第2の波長帯を含み、第1の光ビームに平行である第2の光ビームを第1のコーティング上に向ける第2の光源を有する第2のカラーチャネルと、第3の波長帯を含み、第2の光ビームに平行である第3の光ビームを第1のコーティング上に向ける第3の光源を有する第3のカラーチャネルと、を備えたのに対し、引用発明がそのようなものではない点。
第6 判断
1 相違点について
引用文献2には、「光学構成要素168は第1および第2の二色性層装置170と172とを備えることができ、これらはスペクトル的、空間的に光ビームを混合するか、分解するかに使用することができる。」(第4 1 (3))「第21図は二色性層装置186をビームスプリッタとしてまたはビーム混合器として使用することができることを示している。」(第4 1 (4))と記載されており、引用文献2に記載されている光学分解器は、ビーム混合器としても使用可能であることが示唆されているといえる。また、一般的に、光線可逆の原理(光の経路を反対向きにしても同じ経路を進む)はよく知られており、光分割器を光合成器としても使用可能であることは、技術常識であるともいえる。
してみれば、光学分解器である引用発明をビーム混合器に転用すること、言い換えると色合成素子を備える光合波システムに転用することは当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用発明を、光合波システムに転用した場合、引用文献2の「空間的およびスペクトル的に分離されている実質上平行な三つの光ビーム8、9、10を作る」(第4 1 (2))との記載やFIG4からみて、三つの平行なそれぞれ波長が異なる光ビームを入射させることになる。そして、光合波システムにおいては、波長の異なる画像の光を合成することは、従来周知である(このことを証左するものとしては、特表2007-534987号公報の【0065】の記載、図8がある)。
そうすると、引用発明において、上記の周知技術も考慮しつつ、色合成素子を備える光合波システムに転用すること、言い換えれば、引用発明において、第1の波長帯を含む第1の光ビームを第1のコーティング上に向ける第1の光源を有する第1のカラーチャネルと、第2の波長帯を含み、第1の光ビームに平行である第2の光ビームを第1のコーティング上に向ける第2の光源を有する第2のカラーチャネルと、第3の波長帯を含み、第2の光ビームに平行である第3の光ビームを第1のコーティング上に向ける第3の光源を有する第3のカラーチャネルと、を備える光合波システムにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び上記周知技術の奏する効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
3 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「引用文献1を主引例とするにせよ、引用文献2を主引例とするにせよ、引用文献1と2との組み合わせには、引用文献1の装置からプリズムを取り除くという変形が必須であり、そのような変形には正当な動機付けがありません。」と主張する。
しかしながら、本審決は、第6 1でも述べたとおり、引用文献2の光学分解器56を光合波システムに転用することが容易であるとするものであり、「引用文献1の装置からプリズムを取り除くという変形が必須」であるとする審判請求人の主張の前提は成り立たず、審判請求人の主張には理由がない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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