特許拒絶査定不服審判
2019-017296
乾式吹付け装置
- 審判番号
- 2019-017296
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-192292外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年12月21日
- 審決日
- 2020年11月30日
- 公報発行日
- 2021年03月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東和耐火工業株式会社
- 【請求人代理人】増田 守
- 分類
- P18 .121-Z (B05B) / P18 .575-Z (B05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-192292「乾式吹付け装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月25日出願公開、特開2019- 63735〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成29年10月 1日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 1月15日付け:拒絶理由通知
平成31年 4月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 9月19日付け:拒絶査定
令和 1年12月21日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和 1年12月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 1年12月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「普通ポルトランドセンメントよりも粒度の細かい微粉材よりなる材料3が空気によって搬送される材料供給管路1と、該材料3に添加される水2の噴射孔4を内腔に有するリング状の水供給筒5と、前記材料3と水2が混錬される吹流し状混錬助勢筒6と、該吹流し状混錬助勢筒6を内側に支持する混錬移送管7と、混錬移送管7の下流側に吹付けノズルが接続される乾式吹付け装置9において、
吹流し状混錬助勢筒6の基端筒部8の入口側の開口端の直径と、吹流し状混錬筒6に接続されるリング状の水供給筒5の出口側の開口端の直径とが合致しているか、ほぼ合致していることを特徴とする乾式吹付け装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成31年4月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「材料3が空気によって搬送される材料供給管路1と,水2が材料3に添加される水噴射孔4を内腔に有するリング状の水供給装置5と,材料3と水が混練される吹流し状混練装置6と,該吹流し状混練装置6を内側に支持する混練移送管7と,混練移送管7の下流側に吹付ノズルが接続される乾式吹付け装置9において,吹流し状混練装置6の基端筒部8の入口側の開口端の直径と、吹流し状混練装置6に接続される水供給装置5の出口側の開口端の直径とが合致しているか、ほぼ合致していることを特徴とする乾式吹付け装置。」
2 補正の適否
(1)新規事項の追加について
本件補正が新たな技術的事項を導入するものであるか否かを判断する。
上記1のとおり、本件補正は、材料3が「普通ポルトランドセンメント(「普通ポルトランドセメント」の誤記と認められる。以下、同様。)よりも粒度の細かい微粉材よりなる」と特定する事項を含む。
しかしながら、普通ポルトランドセメントと微粉材の記載について、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「・・・材料の組成として普通ポルトランドセメントの使用が容認されているときは、問題なく乾式吹付けが実行されていたが、微粉材の使用を求められる状況では、滞留ペーストによる作業中断の問題が指摘されている。」(段落【0006】)、「本発明の効果を確認するために、次の比較実験を実施した。
材料の組成
普通ポルトランドセメント: 30.0 %
骨材 : 66.5 %
増粘剤等 : 3.5 %
・・・<略>・・・
材料の組成を変えた別の比較実験では、下記に示すように差があった。
材料の組成
微粉材 : 37.0 %
細骨材 : 58.0 %
添加剤等 : 5.0 %
実施例: 連続吹付け6時間以上 (8時間作業。6時間経過の時点において滞留ペースによるトラブルなし)
材料使用量: 15000Kℊ/日 滞留ペーストによるトラブルなし
比較例(従来装置使用):連続吹付け15分 (吹付け開始後15分の時点において滞留ペーストによるトラブル発生し、作業中断して水供給装置清掃)
材料使用量: 材料使用量625ℊの段階で滞留ペーストによるトラブル発生。作業中断して水供給装置の清掃作業。ロスタイム20分。」(段落【0016】、【0017】)との記載がある(ただし、下線については当審において付与したものである。)ものの、当初明細書等には、「微粉材」なるものが、具体的にどのような物質であるのか、さらに、微粉材と普通ポルトランドセンメントの粒度の関係性について、何ら記載されていない。また、当業者の技術常識を参酌しても、「微粉材」なるものが、普通ポルトランドセンメントの粒度よりも細かいものを意味するとも認められない。
そうすると、材料3が「普通ポルトランドセンメントよりも粒度の細かい微粉材よりなる」という事項を加入する補正は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
(2)独立特許要件について
仮に、上記補正が新たな技術的事項を導入するものでなく、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとした場合に、いわゆる独立特許要件を満たすものであるかについても検討する。
ア 本件補正発明について
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
イ 引用文献の記載事項等
(ア) 引用文献1の記載事項等
a 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、実願昭60-030132号(実開昭61-149097号)のマイクロフィルム(昭和61年9月13日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線については当審において付与したものである。以下、同様。)。
(a)「従来、たとえば、溶融金属収納容器の内張の吹付施工は、吹付パイプ中を給送される不定形耐火物等の不定形材料に添加水を単独または空気と混合して注入、混合し、その後、被施工壁面に吹付けることによって行われている。
かかる吹付施工に用いる添加水注入構造の一例を第3図に示す。
同図において、1は吹付パイプであり、同吹付パイプ1はその中途に添加水注入機構2を有している。
この添加水注入機構2は吹付パイプ1の周面に注水孔3を穿設し、この注水孔3周りにセラミックス等の素材からなる耐摩耗用ライニング4を施した筒状体5によって添加水が外部から流入する環状水空間6を形成することによって構成している。
また7は混合後の材料の付着防止機構であり、同機構7は吹付パイプ1内に設けた振動ゴム8、同振動ゴム8の周りの周壁に設けた環状加圧流体空間9および環状加圧流体空間9を形成する筒状体10とからなる。
かかる構成によって、環状水空間6内に流入した添加水は、注水孔3を経て、吹付パイプ1内を給送される不定形材料A中に注入され、混合される。また、混合後の不定形材料Aは、付着防止機構7の作動によって、混合を助長されるとともに、壁面への付着を妨げられ、噴出開口11より被吹付施工体に向かって吹付られる。」(第1ページ下から第5行~第3ページ第3行)
(b)「第2図に上記添加物注入構造の変容例を示しており、同変容例は、注水孔3の形状を変更したことに特徴を有する。
即ち、第1図において、注水孔3は筒状体5の全周にわたって環状スリットを設けることによって形成したが、第2図においては、複数の透孔を円周方向に所定の間隔を開けて設けることによって形成している。」(第6ページ下から第4行~第7ページ第4行)
(c)「
」
(d)「
」
b 引用文献1に記載された発明
上記aの記載事項(a)の下線部、及び記載事項(c)、(d)から、引用文献1には、次の引用発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「添加水注入機構2と付着防止機構7とを有する、不定形耐火物等の不定形材料を被施工壁面に吹付ける吹付パイプ1であって、この添加水注入機構2は、吹付パイプ1の周面に注水孔3を穿設した筒状体5によって添加水が外部から流入する環状水空間6を形成することによって構成され、また同機構7は、吹付パイプ1内に設けた振動ゴム8、同振動ゴム8の周りの周壁に設けた環状加圧流体空間9、環状加圧流体空間9を形成する筒状体10と噴出開口11とからなる、吹付パイプ1。」
(イ) 引用文献2の記載事項等
a 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、実願昭59-076307号(実開昭60-189363号)のマイクロフィルム(昭和60年12月14日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
(a)「本考案は不定形耐火物等を空気や窒素ガスで圧送してきた吹付材料を補修箇所に吹付けることができる吹付ノズル構造に関する。」(第1ページ第10~12行)
(b)「第1図は、本考案の実施例にかかる吹付ノズル構造の断面正面図である。
第1図において、(1)はノズルであり、同ノズル(1)は、注水部(2)に基端を連結している。
図示するごとく、ノズル(1)は内部に材料流通路Aを形成するテーパ状筒体からなり、その先端に噴出口(3)を有するとともに、その内部に圧搾エアによって振動する振動部材(4)を配設している。かかる振動部材(4)はその基端をノズル本体(1)の基端側端面に連結するとともに先端をノズル本体(1)の先端まで伸延したゴム製の筒状体として示されている。
・・・<略>・・・
また、注水部本体(2)は、本実施例では、外側筒体(10)内に内側筒体(11)を嵌装し、外側筒体(10)の内周面と内側筒体(11)の外周面に水環流空間(12)を形成し、さらに内側筒体(9)の嵌装端に注水用頭部(13)を設け、同注水用頭部(13)の内部に所要円周ピッチで上記水環流空間(12)と材料流通路Aとを連通する複数の注水孔(14)を設けることによって構成している。」(第2ページ第16行~第4ページ第7行)
(c)「
」(第1図)
b 引用文献2に記載された発明
上記aの記載事項(a)及び(b)の下線部、記載事項(c)から、引用文献2には、次の引用発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「不定形耐火物等を空気や窒素ガスで圧送してきた吹付材料を補修箇所に吹付けることができる吹付ノズル構造であって、ノズル(1)は、内部に材料流通路Aを形成するテーパ状筒体からなり、その先端に噴出口(3)を有するとともに、その内部に圧搾エアによって振動する振動部材(4)を配設し、かかる振動部材(4)はその基端をノズル本体(1)の基端側端面に連結するとともに先端をノズル本体(1)の先端まで伸延したゴム製の筒状体であり、また、注水部本体(2)は、外側筒体(10)内に内側筒体(11)を嵌装し、外側筒体(10)の内周面と内側筒体(11)の外周面に水環流空間(12)を形成し、さらに内側筒体(9)の嵌装端に注水用頭部(13)を設け、同注水用頭部(13)の内側に所要円周ピッチで上記水環流空間(12)と材料流通路Aとを連通する複数の注水孔(14)が設けられている、吹付ノズル構造。」
(ウ) 引用文献5の記載事項
本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開昭59-088526号公報(昭和59年5月22日出願公開。以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
「ところがこのセメントグラウトとして用いられる普通ポルトランドセメントはその粒分布が略5~90μm、平均粒径D50が約20μmのものであつて、斯かる普通セメントグラウトを実際に注入施工した場合にはその微細間隙地盤に対して粒径的に注入限界があつて微細間隙に充分な注入を図ることができず、又注入取扱い中に分離が生じ、沈殿や脱水が生じ易いのでその管理については相当に困難を来すことは一般に知られているところである。そこでこのような普通ポルトランドセメントをそのままでグラウト剤として注入することに代え、一部にこのグラウト目的において微粒子セメントが製造され、このものは平均粒径D50が6~8μm、プレーン比表面積が6300~8200cm2/g程度のものであつて、それによつて調整されたグラウトは上述したような地盤細隙に対する注入特性がそれなりに改善されることは勿論である。」(第1ページ右欄第9行~第2ページ左上欄第8行)
(エ) 引用文献7の記載事項
本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、国際公開2013/147080号(2013年10月3日出願公開。以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。
a「請求の範囲
[請求項1] 耐火性骨材、耐火性粉末、結合剤及び分散剤を含む不定形耐火材料に、気流搬送直前に、粉体急結剤を添加、混合して不定形耐火組成物とする混合工程と、
前記不定形耐火組成物を、粉末の状態のまま気流に乗せて搬送管の一端側から前記搬送管内に送り込み他端側へ搬送する気流搬送工程と、
前記気流搬送工程で搬送中の前記不定形耐火組成物に施工水を添加する施工水添加工程と、
前記施工水が添加された不定形耐火組成物を、吹付けノズルから施工対象物に吹付ける吹付け工程と、
を有することを特徴とする不定形耐火物の気流搬送式吹付け施工法。
・・・<略>・・・
[請求項3] 前記耐火性粉末が平均粒子直径が10μm以下の耐火性超微粉であり、前記結合剤がアルミナセメントであり、前記分散剤が縮合リン酸塩、カルボン酸塩又はスルホン酸塩であり、かつ前記粉体急結剤がアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のケイ酸塩、アルミン酸塩、炭酸塩又は硫酸塩である請求項1または2に記載の不定形耐火物の気流搬送式吹付け施工法。」
b「[0048] また、不定形耐火材料20に含まれる耐火性粉末は、耐火性骨材の隙間を埋めて耐火性骨材を結合する結合部を形成するもので、平均粒子直径が150μm以下のものが用いられ、平均粒子直径が10μm以下が好ましく、5μm以下の耐火性超微粉がより好ましく使用される。耐火性超微粉としては、アルミナやヒュームドシリカなどが好ましい。かかるアルミナやヒュームドシリカは、粉末だけでなく、その一部は、アルミナゾル、シリカゾルやコロイダルシリカなどの形態で使用してもよい。耐火性粉末は、耐火性骨材100質量部に対して、好ましくは30~60質量部、特には40~50質量部含まれるのが好適である。」
ウ 対比・判断
(ア)本件補正発明と引用発明1との対比・判断
a 対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「注水孔3」は、本件補正発明の「水2の噴射孔4」に相当する。引用発明1の「添加水注入機構2」は、筒状体5を備え、その周面に注水孔3が穿設されているものであるから、本件補正発明の「水2の噴射孔4を内腔に有するリング状の水供給筒5」に相当する。また、引用発明1の「振動ゴム8」は、その作動によって、材料と水の混合が助長されるものであるから、本件補正発明の「吹流し状混錬助勢筒6」に相当する。さらに、引用発明1の「付着防止機構7」を構成する「筒状体10」と「噴出開口11」は、振動ゴム8を内部に有するものであるから、本件補正発明の「吹流し状混錬助勢筒6を内側に支持する混錬移送管7」に相当する。
そして、引用発明1の「吹付パイプ1」は、環状水空間6内に流入した添加水が、注水孔3を経て、吹付パイプ1内を給水される不定形材料A中に注入され、混合され、また、付着防止機構7の作動によって、混合を助長されて、噴出開口11より被吹付施工体に向かって吹付けられるものであるから、本件補正発明の「乾式吹付け装置」に相当する。
b 一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
材料3に添加される水2の噴射孔4を内腔に有するリング状の水供給筒5と、前記材料3と水2が混錬される吹流し状混錬助勢筒6と、該吹流し状混錬助勢筒6を内側に支持する混錬移送管7とを備える乾式吹付け装置9。
<相違点1>
本件補正発明が「吹流し状混錬助勢筒6の基端筒部8の入口側の開口端の直径と、吹流し状混錬筒6に接続されるリング状の水供給筒5の出口側の開口端の直径とが合致しているか、ほぼ合致している」と特定しているのに対し、引用発明1はそのような特定がされていない点。
<相違点2>
本件補正発明が「混錬移送管7の下流側に吹付けノズルが接続され」ているのに対し、引用発明1は、本件補正発明の「混錬移送管7」に相当する「付着防止機構7」が、噴出開口11を備えている点。
<相違点3>
本件補正発明が「材料3が空気によって搬送される材料供給管路1」を備えているのに対し、引用発明1はそのような特定がされていない点。
<相違点4>
材料3について、本件補正発明が「普通ポルトランドセンメントよりも粒度の細かい微粉材よりなる」と特定しているのに対し、引用発明1は「不定形耐火物等の不定形材料」である点。
c 相違点についての検討
<相違点1について>
引用文献1の上記記載事項イ(ア)a(b)、(c)の図面から見るに、振動ゴム8の入口側の開口端の直径と、水供給筒5の出口側の開口端の直径とが合致しているか、ほぼ合致しているものと認められる。
よって、この点は実質的な相違点ではない。
仮に、この点が実質的に相違するにしても、材料が搬送される管の接続部は、材料の滞留や流動抵抗等の不具合が生じないよう、特段の事情がない限り、段差が生じないように径の大きさを合致させることは、当業者の技術常識である。
してみると、引用発明1において、材料の滞留や流動抵抗等の不具合が生じないよう、振動ゴム8の入口側の開口端の直径と、水供給筒5の出口側の開口端の直径とを合致させるか、ほぼ合致させることは、当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点2について>
吹付装置において、被施工壁面の面積や材料の種類に応じて噴出開口の径を変えられるよう、別途、吹付けノズルを接続することは当業者が適宜行うことである。
よって、引用発明1の噴出開口11の下流側に、さらに吹付けノズルを接続することは、当業者が容易になし得たことである。
<相違点3について>
引用発明1において、材料が空気によって吹付パイプ1に搬送される必要があるから、施工の際には、筒状体5に「材料が空気によって搬送される材料供給管路」を接続するものと認められる。
よって、この点は実質的な相違点ではない。
<相違点4について>
上記引用文献5の記載事項イ(ウ)に記載されるように、普通ポルトランドセメントの平均粒径は20μm程度である。そして、不定形耐火材料として、普通ポルトランドセメントの平均粒径である20μmよりも小さい平均粒径を有する粉材(すなわち、本件補正発明の「普通ポルトランドセメントよりも粒度の細かい微粉材」なる要件を満たすもの。)も、例えば引用文献7の記載事項a、bに示されるように周知のものである。
そうすると、引用発明1における不定形耐火物等の不定形材料について、普通ポルトランドセンメントよりも粒度の細かい微粉材よりなるものを用いることは、当業者が容易になし得たことである。
d 効果の検討
本件補正発明の効果は、本願明細書の段落【0010】等からみて、段差空間への材料3の滞留がないか、殆ど存在しないため、水供給装置5から送り込まれる水2が滞留した材料3に浸み入ることによる材料ペーストの生成や混在は、的確に排除されるか、殆ど排除され、かくして、材料3の過度のペースト化がないか、殆ど抑制されるので、材料3の吹き付けが長時間にわたって適正になされる、というものである。
しかしながら、材料が搬送される管の接続部において、段差がないと材料の滞留が生じにくくなることは当業者の技術常識であるから、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明1及び当業者の技術常識から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
e 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明1と周知技術、及び/又は当業者の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)本件補正発明と引用発明2との対比・判断
a 対比
本件補正発明と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「注水孔(14)」は、本件補正発明の「水2の噴射孔4」に相当する。
引用発明2の、外側筒体(10)内に内側筒体(11)を嵌装し、その内部に所要円周ピッチで複数の注水孔(14)を設けた「注水部本体(2)」は、本件補正発明の「水2の噴射孔4を内腔に有するリング状の水供給筒5」に相当する。
また、引用発明2の、基端をノズル本体(1)の基端側端面に連結するとともに先端をノズル本体(1)の先端まで伸延したゴム製の筒状体である「振動部材(4)」は、振動により材料と水の混連を助勢するものであるから、本件補正発明の「吹流し状混錬助勢筒6」に相当する。さらに、引用発明2の「ノズル(1)」は、内部に材料流通路Aを形成するテーパ状筒体からなり、その内部に振動部材(4)を配設するものであるから、本件補正発明の「吹流し状混錬助勢筒6を内側に支持する混錬移送管7」に相当する。
そして、引用発明2の「吹付ノズル構造」は、不定形耐火物等を空気や窒素ガスで圧送してきた吹付材料を、ノズル内で供給された水と混連して補修箇所に吹付けるものであるから、本件補正発明の「乾式吹付け装置」に相当する。
b 一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
材料3に添加される水2の噴射孔4を内腔に有するリング状の水供給筒5と、前記材料3と水2が混錬される吹流し状混錬助勢筒6と、該吹流し状混錬助勢筒6を内側に支持する混錬移送管7とを備える乾式吹付け装置9。
<相違点5>
本件補正発明が「吹流し状混錬助勢筒6の基端筒部8の入口側の開口端の直径と、吹流し状混錬筒6に接続されるリング状の水供給筒5の出口側の開口端の直径とが合致しているか、ほぼ合致している」と特定しているのに対し、引用発明2はそのような特定がされていない点。
<相違点6>
本件補正発明が「混錬移送管7の下流側に吹付けノズルが接続され」ているのに対し、引用発明2は、本件補正発明の「混錬移送管7」に相当する「ノズル(1)」が、噴出口(3)を備えている点。
<相違点7>
本件補正発明が「材料3が空気によって搬送される材料供給管路1」を備えているのに対し、引用発明2はそのような特定がされていない点。
<相違点8>
材料3について、本件補正発明が「普通ポルトランドセンメントよりも粒度の細かい微粉材よりなる」と特定しているのに対し、引用発明2は、「不定形耐火物等」である点。
c 相違点についての検討
<相違点5について>
引用文献2の上記記載事項イ(イ)a(c)の図面から見るに、振動部材(4)の入口側の開口端の直径と、注水部本体(2)の外側筒体(10)の出口側の開口端の直径とが合致しているか、ほぼ合致しているものと認められる。
よって、この点は実質的な相違点ではない。
仮に、この点が実質的に相違するにしても、材料が搬送される管の接続部は、材料の滞留や流動抵抗等の不具合が生じないよう、特段の事情がない限り、段差が生じないように径の大きさを合致させることは、当業者の技術常識である。
してみると、引用発明2において、振動部材(4)の入口側の開口端の直径と、注水部本体(2)の外側筒体(10)の出口側の開口端の直径とを合致させるか、ほぼ合致させることは当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点6について>
吹付装置において、被施工壁面の面積や材料の種類に応じて噴出口の径を変えられるよう、別途、吹付けノズルを接続することは当業者が適宜行うことである。
よって、引用発明2の「ノズル(1)」の下流側に、さらに吹付けノズルを接続することは当業者が容易になし得たことである。
<相違点7について>
引用発明2において、材料が空気によって「吹付ノズル構造」に搬送される必要があるから、施工の際には、注水部本体(2)の内側筒体(11)に「材料が空気によって搬送される材料供給管路」を接続するものと認められる。
よって、この点は実質的な相違点ではない。
<相違点8について>
上記引用文献5の記載事項イ(ウ)に記載されるように、普通ポルトランドセメントの平均粒径は20μm程度である。そして、不定形耐火材料として、普通ポルトランドセメントの平均粒径である20μmよりも小さい平均粒径を有する粉材(すなわち、本件補正発明の「普通ポルトランドセメントよりも粒度の細かい微粉材」なる要件を満たすもの。)も、例えば引用文献7の記載事項a、bに示されるように周知のものである。
そうすると、引用発明2における不定形耐火物について、普通ポルトランドセンメントよりも粒度の細かい微粉材よりなるものを用いることは、当業者が容易になし得ることである。
d 効果の検討
上記(ア)dで検討したとおり、材料が搬送される管の接続部において、段差がないと材料の滞留が生じにくくなることは当業者の技術常識であるから、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明2及び当業者の技術常識から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
e 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明2と周知技術、及び/又は当業者の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由 (3)本願発明と引用文献1~4の発明との対比」において、「引用文献1~4には,普通ポルトランドセンメントよりも粒度の細かい微粉材よりなる材料に適用するとき、吹流し状混錬助勢筒の基端筒部の入口側の開て口(「開口」の誤記と認められる。)端の直径と、吹流し状混錬助勢筒に接続されるリング状の水供給筒の出口側の開口端の直径とを合致させるか、ほぼ合致させることについては、一切触れられておらず、何らの示唆もない。図面上の偶然の表示は本願発明の上記技術的思想の存在を具体的に示唆するものではない。」と主張している。
しかしながら、上記で検討したように、流動性の材料が搬送される管について、管と管を接続部させる場合、特段の事情がない限り、材料の滞留や流動抵抗等の不具合が生じないよう、段差が生じないように径の大きさを合致させることは、当業者の技術常識であるから、「吹流し状混錬助勢筒6の基端筒部8の入口側の開口端の直径と、吹流し状混錬筒6に接続されるリング状の水供給筒5の出口側の開口端の直径とが合致しているか、ほぼ合致している」ことは、引用文献1又は引用文献2に記載されているか、あるいは引用発明1又は引用発明2において当業者が容易に想到し得たことである。
よって、請求人の上記主張を採用することができない。
エ まとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明1又は引用発明2と周知技術、及び/又は当業者の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上の検討のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるか、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和 1年12月21日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成31年4月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1又は引用文献2に記載された発明及び周知技術(引用文献3、4)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:実願昭60-030132号(実開昭61-149097号) のマイクロフィルム
引用文献2:実願昭59-076307号(実開昭60-189363号) のマイクロフィルム
引用文献3:特開2004-255370号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2003-144981号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び引用文献2の記載事項、及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)イ(ア)、(イ)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2(2)で検討した本件補正発明から、材料3について、「普通ポルトランドセンメントよりも粒度の細かい微粉材よりなる」に係る限定事項を削除したものであるとともに、水供給「筒」5、吹流し状混練助勢「筒」6について、それぞれ、水供給「装置」5、吹流し状混練「装置」6に上位概念化したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加するとともに、下位概念化したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおり、引用発明1又は引用発明2と周知技術、及び/又は当業者の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1又は引用発明2、及び/又は当業者の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-017296