2019-015567
遊技機
- 審判番号
- 2019-015567
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-090105外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年11月20日
- 審決日
- 2021年01月19日
- 公報発行日
- 2021年05月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社藤商事
- 【請求人代理人】特許業務法人創成国際特許事務所
- 分類
- P18 .537-WZ (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 7項目
1 手続の経緯
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本願は、平成26年11月17日に出願された特願2014-233123号の一部を平成29年4月28日に新たな特許出願としたものであって、平成30年8月29日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月5日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年4月1日付けで更に拒絶の理由(最後)が通知され、令和1年6月4日に意見書及び手続補正書が提出され提出されたところ、同年8月9日付けで、同年6月4日付け手続補正書でした補正が却下されるとともに拒絶査定がなされた。これに対し同年11月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対して、令和2年6月23日付けで当審において拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月31日に意見書が提出されたものである。
2 拒絶の理由の概要
当審拒絶理由は、
特許請求の範囲の請求項1には、
「前記設定可能表示の表示中に前記設定可能表示終了条件が成立した後の該設定可能表示の非表示期間中も前記設定の変更を不能とせず、引き続き前記設定の変更を可能とする」
と記載されているが、請求項1の上記記載は発明の詳細な説明に記載したものということができず、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、
との理由を含むものである。
3 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和1年11月20日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A~Gは、本願発明を分説するため当審で付与した。)。
(本願発明)
「【請求項1】A 遊技者が操作可能な操作手段と、B 前記操作手段が操作された場合に遊技に関する設定の変更が可能な遊技設定変更手段と、C 前記操作手段によって前記設定の変更が可能であることを示す設定可能表示を表示可能な表示手段と、D 遊技の進行に関する制御を行う制御手段と、を備えた弾球遊技機であって、E 遊技の進行停止中に設定可能表示開始条件が成立した場合に前記設定可能表示を開始させ、該設定可能表示の表示中に、遊技者による遊技操作が行われた場合に設定可能表示終了条件が成立したとして該設定可能表示を終了させる設定可能表示制御手段を備え、F 前記遊技設定変更手段は、前記設定可能表示の表示中に前記設定可能表示終了条件が成立した後の該設定可能表示の非表示期間中も前記設定の変更を不能とせず、引き続き前記設定の変更を可能とするG ことを特徴とする弾球遊技機。」
4 発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。
(1)
「【発明が解決しようとする課題】【0007】しかしながら、近年は遊技者が遊技球の発射を開始してもすぐには始動入賞せず、図柄の変動が開始しない遊技機が目立ってきた。従って、変動用コマンドを受信したときデモ画面表示が終了するようにしている遊技機では、デモ画面がいつまでも続き、それを不快に感じる遊技者もいる。また、赤外線等を利用して遊技者の着席を確認できるシステムもあるが、高価である上に、その遊技者が遊技を行う意思があるか否かまでは判断することができない。【0008】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、遊技の状況を判断して、遊技に関する準備を行うことが可能な弾球遊技機を提供することを目的とする。」
(2)
「【0136】次に、図7A、7Bを参照してパチンコ遊技機1が通常状態から客待ち状態に移行する場合のタイミングチャートを説明する。【0137】まず、図7Aを参照してタッチセンサ、主制御基板24、演出制御基板25、液晶制御基板26の間の制御コマンドの通信について説明する。主制御基板24は、図柄の変動が停止すると演出制御基板25に向けて「客待ちデモコマンド」を送信する。正確には、特別図柄の変動が停止した時点で、保留球がない状態である。従って、遊技者が遊技球の発射を継続(タッチセンサがオンの「遊技中」)していても、主制御基板24は「客待ちデモコマンド」を送信する。続きを表示(全26行)・・・【0139】遊技停止から60秒が経過したとき、演出制御基板25は、液晶制御基板26に向けて「客待ちデモ表示コマンド」を送信する。これにより、液晶制御基板26は、液晶表示装置36で一連の客待ち演出を実行する。・・・【0141】最初に実行される「B:機種別デモ表示」とは、機種毎に異なる画像及び動画であって、例えば、その機種のタイトルや登場キャラクタを表示するものである。本実施形態では、「B:機種別デモ表示」が40秒間実行される。また、このとき、演出制御基板25が可動体37a、37bを、表示中の演出に合わせて動作させる。【0142】続いて、「C:不正禁止表示」が実行される。これは、「ゴト行為は犯罪です!」や、「悪質な攻略法販売にご注意ください!」といった文字を含む画面が順番に表示される動画である(図7C(a)参照)。本実施形態では、「C:不正禁止表示」は、20秒間実行される。【0143】次に、「D:企業ロゴ表示」が実行される。これは、企業ロゴが徐々に画面中央に現れてくる動画である(図7C(b)参照)。本実施形態では、「D:企業ロゴ表示」は、10秒間実行される。【0144】続いて、「E:待機画面表示(図柄停止表示)」が実行される。これは、特別図柄(装飾図柄)が停止した状態を再度表示するものである。「E:待機画面表示」は、液晶制御基板26が新たな「客待ちデモ表示コマンド」を受信するまで継続される。【0145】「B:機種別デモ表示」が開始してから所定の時間(この例では90秒)が経過したとき、演出制御基板25は、液晶制御基板26に向けて「客待ちデモ表示コマンド」を再度送信する。これにより、液晶表示装置36では、一連の客待ち演出が最初から実行される。【0146】これ以降、90秒毎に客待ち演出、すなわち、「B:機種別デモ表示」、「C:不正禁止表示」、「D:企業ロゴ表示」及び「E:待機画面表示」の一連の表示態様が繰り返される。なお、図7Cでは図示していないが、客待ち演出を構成する各表示の期間には、画面下方に音量調整等の設定変更が可能である旨の報知(設定可能報知)が表示される。【0147】その後、これから遊技を行おうとする者が発射ハンドル10に触れた場合には、タッチセンサがオンして、主制御基板24から演出制御基板25に向けて「客待ち終了コマンド」が送信される。さらに、これを受信した演出制御基板25が液晶制御基板26に向けて「通常画面表示コマンド」を送信するので、通常遊技の画面である「A:客待ち前表示」に復帰する。【0148】通常遊技の画面に復帰する契機は、遊技者が球貸ボタン15aを操作したことや、遊技者が実際に遊技球を打ち出して、最初の遊技球が特定地点通過検出センサ47を通過したことであってもよい。これら通常遊技の画面に復帰する契機を複数備え、状況に応じて使い分けてもよい。【0149】また、遊技球が始動入賞して特別図柄の変動が開始するまでの間や通常遊技の画面に復帰した後、所定期間は、設定可能報知を表示したままとする(図8A参照)。これにより、打出しを開始した直後は音量の調整やキャラクタの選択が行える。」
(3)
「【0150】次に、図7Bを参照して、パチンコ遊技機1が通常状態から客待ち状態に移行するもう1つの例を説明する。主制御基板24は、タッチセンサがオンの状態でも、図柄の変動が停止すると演出制御基板25に向けて「客待ちデモコマンド」を送信する点は上述の例と同じである。しかし、液晶表示装置36で客待ち演出が開始する60秒が経過しても、タッチセンサがオン(「遊技中」)の状態、すなわち、遊技者が遊技球の発射を継続している場合もある。【0151】このような場合には、演出制御基板25は、遊技停止から60秒が経過しても「客待ちデモ表示コマンド」を送信しない。そして、演出制御基板25は、タッチセンサがオフとなってから所定時間(ここでは30秒)が経過した後、液晶制御基板26に向けて「客待ちデモ表示コマンド」を送信する。この間、液晶表示装置36では「A:客待ち前表示(図柄停止表示)」が実行される。続きを表示(全12行)【0152】このような制御とすることで、少なくとも遊技者が遊技球の発射を継続している期間には客待ち状態に移行することがなくなり、遊技者が不満を感じることがなくなる。なお、設定可能報知は、遊技停止から60秒が経過した時点、又はもう少し早い時期から開始してもよい。【0153】液晶制御基板26が「客待ちデモ表示コマンド」を受信すると、「B:機種別デモ表示」、「C:不正禁止表示」、「D:企業ロゴ表示」及び「E:待機画面表示(図柄停止表示)」を実行し、90秒毎にこれらの表示を繰り返す。【0154】その後、これから遊技を行おうとする者が発射ハンドル10に触れた場合には、タッチセンサがオンして、主制御基板24から演出制御基板25に向けて「客待ち終了コマンド」が送信される。さらに、これを受信した演出制御基板25が液晶制御基板26に向けて「通常画面表示コマンド」を送信する。【0155】「A:客待ち前表示」に戻る前に、遊技の開始を示唆する遊技開始示唆演出(図8B参照)を実行してもよい。例えば、タッチセンサがオンした時点で可動体37a、37bを初期位置にセットし、遊技球が遊技領域に到達したとき、遊技開始示唆演出を開始することができる。」
(4)
「【0156】次に、図8Aを参照して機種別デモ表示と遊技開始準備表示の例を説明する。【0157】まず、図8A(a)に機種別デモ表示の例を示す。液晶表示装置36では、機種名である「CR XX物語」の文字表示や、ゲームに登場するキャラクタやストーリーを紹介する動画が実行される(一部、図示省略)。・・・【0158】また、画面下方では設定可能報知が行われる。具体的には、演出ボタンマーク13a’が出現し、「CHANCEボタンを押すことで、設定画面に切替わる」旨が表示される。実際に、遊技者が左演出ボタン13aを押下すると、設定画面(図9B参照)の表示に切替わる。【0159】機種別デモ表示において、これから遊技を行おうとする者が、例えば、発射ハンドル10に接触してタッチセンサがオンすると、機種別デモ表示が終了し、図8A(b)の遊技開始準備表示に切替わる。これは、図7Aの「A+設定可能報知」に相当し、装飾図柄が停止した状態である。」
(5)
「【0161】このように、本実施形態のパチンコ遊技機1では、タッチセンサがオンする等、遊技者が遊技を開始しようとすると、客待ち演出(客待ち状態)が終了する。従って、遊技者が遊技球を打ち出しても客待ち状態が終了せず、遊技者が不満を抱くことがなくなる。さらに、可動体も全て初期位置にセットするので、始動入賞したとき遊技者が予告演出と見間違えたり、可動体が遊技球の落下の妨げとなることがない。【0162】次に、図8Bを参照して、特に遊技開始示唆演出の例を説明する。【0163】図8B(a)は、図8A(a)と同じ機種別デモ表示を示しており、液晶表示装置36では、機種名の「CR XX物語」の文字表示や設定可能報知が行われている。・・・【0164】次に、これから遊技を行おうとする者が、例えば、発射ハンドル10に接触してタッチセンサがオンすると、機種別デモ表示が終了し、図8B(b)の表示に切替わる。今回、直ちに上述の遊技開始準備表示には移行せず、遊技の開始を示唆する遊技開始示唆演出が実行される。具体的には、可動体37bが動作し、これに合わせて炎を吐き出す演出表示が行われる。また、忍者のキャラクタ59が登場して、炎を避けてジャンプする演出が行われる。【0165】このとき、キャラクタ59が「開始!」と発する表示をしたり、実際にスピーカ7からそのような音声を出力してもよい。この遊技開始示唆演出は、タッチセンサがオンした後、特別図柄の変動が開始する前に行われる演出であり、時間にしてわずか数秒で完結する。もちろん、遊技球が始動入賞するタイミングには、可動体37bは初期位置にセットされる。その後、上述の遊技開始準備表示に移行する。」
(6)
「【0169】なお、客待ち状態から復帰した直後も、液晶表示装置36では、図9A(b)の表示となる。客待ち状態(図7A、7BのB~Eの表示中)では、常に設定可能報知が行われ、音量等の設定が可能である。また、客待ち状態から復帰して特別図柄の変動が開始するまでの期間も、設定可能報知を行って設定の変更を許可している。」
(7)
「【0171】次に、図9Bを参照して、設定画面と音量調整画面の例を説明する。【0172】まず、設定可能報知の実行中に演出ボタンマーク13a’が表示され、遊技者が左演出ボタン13aを押下したとき、図9B(a)に示す各種設定画面に切替わる。画面上方には、ロゴマークやパチンコ遊技機1の機種名が表示される。続きを表示(全12行)【0173】画面左側には、「キャラクタ選択」、「BGM選択」、「音量調整」及び「LED調整」の項目が列挙される。また、画面右側には、方向キーマーク14’が表示されるので、遊技者は方向キー部14を使用して、何れかの項目を選択できると認識する。【0174】ここで、遊技者は、方向キー部14の上方向キー及び下方向キーを操作して、矢印60を上下方向に移動させることができる。また、中央の決定ボタンマークに「決定!」との説明があるので、遊技者は、方向キー部14の上方向キー及び下方向キーにより何れかの項目を選択し、決定ボタンで設定する項目を決定する。【0175】例えば、遊技者が「音量調整」を選択、決定した場合、図9B(b)の音量調整画面に切替わる。音量調整画面では、画面上方にチェックマークの付いた「音量調整」の文字と、スピーカマーク61が表示される。また、左端を最小音量である「MIN」、右端を最大音量である「MAX」としたメータ62が表示され、現在の音量が認識できるようになっている。【0176】今回、遊技者は左方向キー及び右方向キーを操作して、音量を調整することができる。ここでも、決定ボタンマークに「決定!」との説明があるので、遊技者は決定ボタンで音量を決定する。このように、画面中に方向キーマーク14’や説明が表示されるので、遊技者は容易に各種設定を行うことができる。」
(8)
「【0238】以下では、図14を参照して、副制御側で行われるメイン処理について説明する。このメイン処理には、副制御手段(演出制御基板25)の起動時に行われる初期化処理が含まれる。【0239】まず、副制御手段は、初期化処理を行う(ステップS101)。これは、主に、副制御手段の各種初期設定を行うものであり、起動時に一度だけ行われる。その後、ステップS102に進む。・・・【0245】ステップS106では、副制御手段は、メインシナリオ更新処理を行う。具体的には、制御コマンドに応じた演出の各種設定を行う処理であるが、これも詳細は後述する(図16A、16B参照)。その後、ステップS107に進む。【0246】ステップS107では、副制御手段は、サウンド出力処理を行う。具体的には、シナリオに応じてスピーカ7からサウンドを出力させる。その後、ステップS108に進み、副制御手段は、ソレノイド更新処理を行う。具体的には、大入賞装置39等に用いられているソレノイドの詳細な動作を設定する。その後、ステップS109に進む。」
(9)
「【0257】また、「客待ち演出」の実行中に遊技者が発射ハンドル10に触れた場合には、副制御手段は、上記シナリオ更新のタイミングで「客待ち演出」を終了し、「客待ち前表示」に戻す。このとき、遊技開始示唆演出を実行してもよい。その後、ステップS123に進む。」
(10)
「【0269】最後に、図17を参照して、タイマ割込み処理について説明する。タイマ割込み処理は、演出制御側メイン処理(図14)に対して、1ms周期で実行される割込み処理である。【0270】まず、副制御手段は、CPUレジスタの初期設定をする(ステップS201)。具体的には、ポートのリフレッシュ初期値の設定を行う。その後、ステップS202に進み、出力処理を行う。具体的には、可動体37a、37bに用いられているソレノイドやモータの出力処理を行う。その後、ステップS203に進む。【0271】ステップS203では、副制御手段は、演出ボタン入力状態更新処理を行う。具体的には、演出ボタン13a、13bの操作がされた場合に、入力状態を更新する。その後、ステップS204に進む。」
(11)
「【0277】上記のように、本実施形態では、タッチセンサの検出情報により現在、遊技中であるか否かが判定される。客待ち演出開始条件が成立した場合には、通常、客待ち演出が実行されるが、遊技中と判定されている期間は客待ち演出を開始せず、遊技に関する設定の変更のみを可能とする。このように、遊技の状況を判断して遊技に関する準備を行うことができるので、遊技中に客待ち演出が開始して、遊技者が不満を抱くことがなくなる。」
(12) 図8B(b)の「遊技開始示唆演出」において、演出ボタンマーク13a’が出現しておらず、「CHANCEボタンを押すことで、設定画面に切替わる」旨が表示されていないことが看取される。
(13) 図8B(b)の「遊技開始示唆演出」において、「可動体37b」が、液晶表示装置36の表示の前側の右から左に向けて大きく被るようにせり出した状態となっていることが看取される。
5 当審の判断
(1) 本願発明の構成Fは、
「前記遊技設定変更手段は、前記設定可能表示の表示中に前記設定可能表示終了条件が成立した後の該設定可能表示の非表示期間中も前記設定の変更を不能とせず、引き続き前記設定の変更を可能とする」
というものである。同構成Fの上記構成によれば、設定可能表示終了条件が成立した後の設定可能表示の非表示期間中も、設定の変更は可能であると解するのが相当である。
一方、本願発明の構成Fに関連する発明の詳細な説明の記載は、上記「4 発明の詳細な説明の記載」にて摘記したとおりである。
発明の詳細な説明の
「図8B(a)は、図8A(a)と同じ機種別デモ表示を示しており、液晶表示装置36では、・・・設定可能報知が行われている。」(【0163】)との記載における「設定可能報知が行われている」「機種別デモ表示」は、本願発明の「設定可能表示の表示の表示中」に対応し、
発明の詳細な説明の
「これから遊技を行おうとする者が発射ハンドル10に触れた場合には、タッチセンサがオンして、主制御基板24から演出制御基板25に向けて「客待ち終了コマンド」が送信される。さらに、これを受信した演出制御基板25が液晶制御基板26に向けて「通常画面表示コマンド」を送信するので、通常遊技の画面である「A:客待ち前表示」に復帰する。」(【0147】)、
「通常遊技の画面に復帰する契機は、遊技者が球貸ボタン15aを操作したことや、遊技者が実際に遊技球を打ち出して、最初の遊技球が特定地点通過検出センサ47を通過したことであってもよい。」(【0148】)、及び
「次に、これから遊技を行おうとする者が、例えば、発射ハンドル10に接触してタッチセンサがオンすると、・・・図8B(b)の表示に切替わる。・・・遊技開始示唆演出が実行される。」(【0164】)
との記載における
「次に、これから遊技を行おうとする者が」「遊技者が実際に遊技球を打ち出して、最初の遊技球が特定地点通過検出センサ47を通過」すること、または「タッチセンサがオン」することが、本願発明の「設定可能表示終了条件が成立した」ことに対応し、
発明の詳細な説明の
「 ・・・設定可能報知が行われる。具体的には、演出ボタンマーク13a’が出現し、「CHANCEボタンを押すことで、設定画面に切替わる」旨が表示される。」(【0158】)との記載、及び図8B(b)の「遊技開始示唆演出」において、演出ボタンマーク13a’が出現しておらず、「CHANCEボタンを押すことで、設定画面に切替わる」旨が表示されていないことからみて、発明の詳細な説明の、「CHANCEボタンを押すことで、設定画面に切替わる」旨が表示されていない「遊技開始示唆演出」が、本願発明の「設定可能表示の非表示期間中」に対応するものということができる。
そうすると、図8B(b)の、演出ボタンマーク13a’が出現しておらず、「CHANCEボタンを押すことで、設定画面に切替わる」旨が表示されていない「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)において、設定の変更を可能とすることが発明の詳細な説明に記載されていれば、本願発明の構成Fは、発明の詳細な説明に記載したものということができる。
しかし、発明の詳細な説明には、図8B(b)の、演出ボタンマーク13a’が出現しておらず、「CHANCEボタンを押すことで、設定画面に切替わる」旨が表示されていない「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)において、設定の変更が可能であることの記載はみられない。
(2)ア そこで、発明の詳細な説明の記載から、図8B(b)の、演出ボタンマーク13a’が出現しておらず、「CHANCEボタンを押すことで、設定画面に切替わる」旨が表示されていない「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)において、設定の変更を可能とすることが、発明の詳細な説明に記載されているに等しい事項ということができるか否かについて、以下に検討する。
発明の詳細な説明の、「設定可能報知を表示したままとする(図8A参照)。これにより、打出しを開始した直後は音量の調整やキャラクタの選択が行える」(【0149】)との記載、「設定可能報知が行われる。具体的には、演出ボタンマーク13a’が出現し、「CHANCEボタンを押すことで、設定画面に切替わる」旨が表示される。」(【0158】)との記載、及び「設定可能報知を行って設定の変更を許可している。」(【0169】)との記載からみると、発明の詳細な説明において、「設定可能報知」が行われていない、「演出ボタンマーク13a’が出現し、「CHANCEボタンを押すことで、設定画面に切替わる旨が表示」されていないとき」(非表示期間中)には、「設定の変更」は許可されていない(「設定の変更を不能」とする)ものとみるのが相当である。
そうすると、発明の詳細な説明の上記記載をふまえると、「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)において、設定の変更を可能とすることは、発明の詳細な説明に記載されているに等しい事項ということができない。
イ また、発明の詳細な説明において、「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)は、「可動体37bが動作し、これに合わせて炎を吐き出す演出表示が行われ」「また、忍者のキャラクタ59が登場して、炎を避けてジャンプする演出が行われる」(【0164】)ものであって、発明の詳細な説明における
「デモ画面がいつまでも続き、それを不快に感じる遊技者もいる。また、・・・その遊技者が遊技を行う意思があるか否かまでは判断することができない。」(【0007】)との記載、
「本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、遊技の状況を判断して、遊技に関する準備を行うことが可能な弾球遊技機を提供することを目的とする。」(【0008】)との記載、及び
「このように、本実施形態のパチンコ遊技機1では、タッチセンサがオンする等、遊技者が遊技を開始しようとすると、客待ち演出(客待ち状態)が終了する。従って、遊技者が遊技球を打ち出しても客待ち状態が終了せず、遊技者が不満を抱くことがなくなる。さらに、可動体も全て初期位置にセットするので、始動入賞したとき遊技者が予告演出と見間違えたり、可動体が遊技球の落下の妨げとなることがない。」(【0161】)
との記載からみて、「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)に、「可動体37bが動作し、これに合わせて炎を吐き出す演出表示が行われ」「また、忍者のキャラクタ59が登場して、炎を避けてジャンプする演出が行われる」技術的意味は、タッチセンサがオンする等により、遊技を開始しようとする遊技の状況を判断して遊技に関する準備を行うことを遊技者に知らせて遊技者に不快に感じさせないようにすることにあるといえる。一方、そのような遊技者に不快に感じさせないようにするために遊技者に注目を求めるための演出中に設定の変更を可能とすれば、演出への注目が低下するのだから、「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)に設定の変更を可能とすることには理由がない。
してみると、「可動体37b」が、液晶表示装置36の表示の前側の右から左に向けて大きく被るようにせり出した状態となっている「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)時において、設定の変更を可能とすることはむしろ不自然というべきであって、発明の詳細な説明の「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)において、設定の変更を可能とすることは、発明の詳細な説明に記載されているに等しい事項ということができない。
ウ また、発明の詳細な説明において、「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)は、「可動体37bが動作し、これに合わせて炎を吐き出す演出表示が行われる」(【0164】)ものであって、「遊技開始示唆演出」を示す図8B(b)によれば、「遊技開始示唆演出」における「可動体37b」は、液晶表示装置36の表示の前側の右から左に向けて大きく被るようにせり出した状態となっている。
そうすると、「可動体37b」が、液晶表示装置36の表示の前側の右から左に向けて大きく被るようにせり出した状態となっている「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)において、設定の変更を可能として、図9B(a)に示す設定画面に切替えてみても、「可動体37b」を元の位置に移動しないことには、設定画面の右から左に向けての部分は「可動体37b」にその画面前方を遮られ、遊技者には見えない部分が発生することが明らかである。
してみると、「可動体37b」が、液晶表示装置36の表示の前側の右から左に向けて大きく被るようにせり出した状態となっている「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)時において、設定の変更を可能とすることはむしろ不自然というべきであって、発明の詳細な説明の「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)において、設定の変更を可能とすることは、発明の詳細な説明に記載されているに等しい事項ということができない。
エ また、 発明の詳細な説明の「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)は、「時間にしてわずか数秒で完結する」(【0165】)ものであり、その直前の「客待ち演出を構成する各表示の期間」(【0146】)及び、「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)の直後の「遊技開始準備表示」(【0165】)において設定の変更が可能であっても、「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)に設定の変更を可能とさせようとすれば、「わずか数秒で完結する」遊技開始示唆演出を終了させて、画面を図9B(a)に示す設定画面に切替えなければならず、わずか数秒で完結する遊技開始示唆演出を終了させてまでそのような切替えを開始することは不自然である。
さらに、「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)は、「これから遊技を行おうとする者が、例えば、発射ハンドル10に接触してタッチセンサがオンすると」「わずか数秒」「実行され」る(【0164】)ものであり、遊技者が発射ハンドル10に接触した後の「数秒」は、遊技者がまさに遊技を行おうとするときであって、設定をしようとするときではないのだから、そのようなタイミングに設定の変更を可能とする必要を見いだすこともできない。
してみると、発明の詳細な説明の「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)において、設定の変更を可能とすることは、発明の詳細な説明に記載されているに等しい事項ということができない。
さらに、発明の詳細な説明の「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)が、「時間にしてわずか数秒で完結する」ものであり、その直前の「客待ち演出を構成する各表示の期間」(【0146】)及び、「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)の直後の「遊技開始準備表示」(【0165】)において設定の変更が可能であることを根拠として、本願発明が発明の詳細な説明に記載されているに等しい事項といえるかさらに検討をすすめても、本願発明の構成Fは、
「F 前記遊技設定変更手段は、前記設定可能表示の表示中に前記設定可能表示終了条件が成立した後の該設定可能表示の非表示期間中も前記設定の変更を不能とせず、引き続き前記設定の変更を可能とする」
というものであって、「設定可能表示終了条件が成立した後の該設定可能表示の非表示期間」が「数秒で完結する」などと特定するものはなく、さらに「設定可能表示の非表示期間」が「遊技開始」を示唆する「示唆演出」の期間であると特定しているわけでもないのだから、本願発明の構成Fには「非表示期間」がどの程度続くのか特定する事項は存在せず、本願発明における「非表示期間」は、数秒の期間にとどまらず長期間にわたって続くことを当然に含むものである。そうすると、仮に、発明の詳細な説明の「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)が、「時間にしてわずか数秒で完結する」ことを根拠として、発明の詳細な説明の「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)を、その前後に倣って設定の変更を可能とすることが、発明の詳細な説明に記載されているに等しい事項といえたとしても、発明の詳細な説明に記載されているに等しい事項といえるのは、「数秒で完結する」「遊技開始示唆演出」(非表示期間中)において設定変更を可能とすることまでであって、「非表示期間」の長さを特定することなく「非表示期間中も前記設定の変更を不能とせず」との事項まで拡張乃至一般化された本願発明の構成Fまで、発明の詳細な説明に記載のものということはできない。
(3) してみると、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
6 審判請求人の主張について
(1) 審判請求人は、令和2年8月31日に提出された意見書の「(3)サポート要件」「(3-1)序」において、
「本願請求項1の「前記設定可能表示の表示中に前記設定可能表示終了条件が成立した後の該設定可能表示の非表示期間中も前記設定の変更を不能とせず、引き続き前記設定の変更を可能とする」の記載(以下、「要検証記載」という。)」
とし、
「(3-3)本願図8B図8B(a)の機種別デモ表示は、要検証記載の「前記設定可能表示の表示中」の表示に相当する(明細書/段落0153)。図8B(b)の遊技開始示唆演出は、要検証記載の「前記設定可能表示終了条件が成立した後の該設定可能表示の非表示期間中」の表示に相当する(明細書/段落0155)。(3-4)本願図7B続きを表示(全20行)本願図7Bの右下の部分には、「客待ちデモ終了」及び「遊技開始示唆演出→A+設定可能報知」の記載がある。また、明細書/0159『機種別デモ表示において、これから遊技を行おうとする者が、例えば、発射ハンドル10に接触してタッチセンサがオンすると、機種別デモ表示が終了し、図8A(b)の遊技開始準備表示に切替わる。これは、図7Aの「A+設定可能報知」に相当し、装飾図柄が停止した状態である。』の記載がある。これらの記載から、本願発明の実施形態では、表示は、図8B(a)→図8B(b)→図8A(b)の順に切り替わっていくことが分かる。このことは、図8B(b)(遊技開始示唆演出)の表示が、時間的に、図8B(a)(客待ち状態の表示)と図8A(b)(A+設定可能報知)との間に挟まれた表示になっていることが理解される。(3-5)表示切替の処理図8B(a)の機種別デモ表示→図8B(b)/遊技開始示唆演出→図8A(b)の遊技開始準備表示の切替は、副制御手段(演出制御基板25)による演出制御メイン処理(図14)の一環として、ステップS105(受信コマンド解析処理)及びステップS106(メインシナリオ更新処理)で行われている(段落0238,0239,0245,0246)。図17は、演出制御側メイン処理(図14)に対して、1ms周期で実行されるタイマ割込み処理について説明している(段落0269)。図17によれば、ステップS203で、副制御手段は、演出ボタン入力状態更新処理を行う。演出ボタンには、演出ボタン13a(遊技設定変更手段)が含まれる(段落0271)。図8B(b)/遊技開始示唆演出は、図7Bに、「遊技開始示唆演出→A+設定可能表示」に記載されているように、客待ち状態のシナリオから通常状態のシナリオに変更した後の最初の表示に相当している。図17のステップS203は、客待ち状態及び通常状態に関係なく、図14の演出制御メイン処理に割り込んで、実施される。したがって、図8B(b)/遊技開始示唆演出の期間(設定可能表示の非表示期間)においても、図8A(b)/遊技開始準備表示(設定可能表示の表示期間)の通常状態のシナリオと同様に、通常状態のシナリオとして設定の変更が可能になっている。(3-6)小括審判官殿の認定及びそこに至る過程(根拠)については十分理解できる。しかしながら、上記した内容をまとめると、(a)図17の割込み処理が図7B(及び図7A)の演出制御状態(客待ち状態又は通常状態)に関係なく実施される点(b)図7Bの液晶表示装置の表示態様を示す欄における「遊技開始示唆演出→A+設定可能報知」が、図7Aと同じく客待ち終了コマンドを受けた後の表示態様として一括りに書かれている点(あくまでも両者は客待ち終了コマンドを受信した場合の表示例の違いに過ぎない点)(c)発明の詳細な説明には、設定可能表示の非表示期間中に設定の変更が不能である旨の記載がない点(段落0169/また、客待ち状態から復帰して特別図柄の変動が開始するまでの期間も、設定可能報知を行って設定の変更を許可している」との記載の後半部分だけを切り取って判断するのは恣意的な解釈と言わざるを得ない。後半の記載は主に図7Aをベースとした説明であるが、前述の通り両者は表示例の違いに過ぎず、少なくとも「客待ち状態から復帰して特別図柄の変動が開始するまでの期間も」と記載されている以上、図7Bと照らし合わせて客待ち終了コマンド受信後、すなわち遊技状態開始示唆演出中も設定の変更が可能であると解するのが自然である)
以上の点が明らかであり、よって要検証記載は、発明の詳細な説明に記載されていると言える。」
と主張している。
(2) 上記主張のうち、「(3-6)小括(a)」について、そもそも図17及びそれに関連する発明の詳細な説明の【0269】~【0271】には、設定の変更を可能とする期間について何も記載されていないのだから、図17の割込み処理が図7B(及び図7A)の演出制御状態(客待ち状態又は通常状態)に関係なく記載されていることを以て、本願発明の構成Fの
「F 前記遊技設定変更手段は、前記設定可能表示の表示中に前記設定可能表示終了条件が成立した後の該設定可能表示の非表示期間中も前記設定の変更を不能とせず、引き続き前記設定の変更を可能とする」
との事項が発明の詳細な説明に記載されているに等しい事項ということはできない。
(3) また、審判請求人の上記主張のうち「(3-6)小括(b)」について、図7Bの「遊技開始示唆演出→A+設定可能報知」との記載は、図7Aと同じく客待ち終了コマンドを受けた後の表示態様として一括りに書かれているとしても、「遊技開始示唆演出→A+設定可能報知」との記載は「遊技開始示唆演出」との記載と「A+設定可能報知」」を「→」でつなぐ記載態様を採るものであって、図7A及び図7B中に、実際に設定が可能であるか否かを示す記載などないのだから、図7A及び図7Bの記載から「遊技開始示唆演出」まで「設定可能報知」のときと同じく設定が可能であるなどとみるべき理由とはならない。
(4) また、上記主張のうち、「(3-6)小括(c)」について、発明の詳細な説明の【0169】には、
「なお、客待ち状態から復帰した直後も、液晶表示装置36では、図9A(b)の表示となる。客待ち状態(図7A、7BのB~Eの表示中)では、常に設定可能報知が行われ、音量等の設定が可能である。また、客待ち状態から復帰して特別図柄の変動が開始するまでの期間も、設定可能報知を行って設定の変更を許可している。」
と記載されており、当該【0169】の前半部分(下線部分)の記載を検討してみても、遊技開始示唆演出(設定可能表示の非表示期間)において設定を可能とする根拠とはならず、本願発明の構成Fを発明の詳細な説明に記載されているに等しい事項とする根拠とはならない。むしろ、発明の詳細な説明の【0169】の前半部分(下線部分)の「常に設定可能報知が行われ、音量等の設定が可能である」との記載は、設定可能報知がされる場合に音量の設定を可能とするものであるから、当該記載は、本願発明の構成Fの「設定可能表示の非表示期間中も前記設定の変更を不能と」しないとの事項を発明の詳細な説明に記載されているに等しい事項とするものでない。
(5) してみると、審判請求人の上記主張を採用して、本願について特許をすべきものとする審決をすることはできない。
7 むすび
以上のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものということができず、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-015567