特許拒絶査定不服審判
2019-015406
ボンディングヘッドおよび実装装置
- 審判番号
- 2019-015406
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-204941
- 請求日
- 2019年11月18日
- 審決日
- 2021年01月06日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】東レエンジニアリング株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 辻本 泰隆
- 審判官 恩田 春香
- 審判官 小川 将之
- 分類
- P18 .121-WY (H01L) / P18 .113-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-204941「ボンディングヘッドおよび実装装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月20日出願公開、特開2017- 76757、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年10月16日の出願であって、令和1年6月13日付けで拒絶理由通知がされ、令和1年8月7日に手続補正がされるとともに意見書が提出され、令和1年8月21日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和1年11月18日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和2年7月22日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、令和2年9月18日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和1年8月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.(新規性)本願の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献Aに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)本願の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献Aに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
A.特開2014-22629号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由通知の拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
1.(進歩性)本願の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.引用文献1:特開2014-22629号公報(原査定の拒絶の理由で引用された引用文献A)
第4 本願発明
本願請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ順に「本願発明1」~「本願発明4」という。)は、令和2年9月18日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1~4は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
電子部品の加熱圧着に用いるボンディングヘッドであって、
下面に電子部品を保持するアタッチメントツールと、
前記アタッチメントツールの上部に配置されるヒータと、
前記ヒータの上部に配置される断熱ブロックとを備え、
前記ヒータの上面に複数の溝が形成され、
前記ヒータの上面と前記断熱ブロックの下面との界面に、前記溝が設けられた領域を包括する範囲で、隙間を設け、
加熱圧着時の昇温過程および冷却過程において、前記ヒータと前記断熱ブロックが熱変形しても、前記溝に挟まれた板状の壁部が前記断熱ブロックと接触することがないように前記隙間の間隔を設定したボンディングヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のボンディングヘッドであって、
前記隙間の間隔が、前記溝の深さの0.3%以上で40%以下であることを特徴とするボンディングヘッド。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のボンディングヘッドであって、
前記断熱ブロックの下面に凹みを設けることで、前記隙間を形成することを特徴とするボンディングヘッド。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載のボンディングヘッドを備えていることを特徴とする実装装置。」
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載
当審拒絶理由(令和2年7月22日付けの拒絶の理由)に引用された引用文献1(特開2014-22629号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディング装置用ヒータの構造及びその冷却方法に関する。」
「【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態におけるボンディング装置用ヒータの構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態におけるボンディング装置用ヒータの平面図と断面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるボンディング装置用ヒータの毛細スリットの詳細を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態におけるボンディング装置用ヒータの毛細冷却流路を示す斜視図である。
【図5】従来技術によるボンディング装置用ヒータの冷却溝の詳細を示す断面図である。
・・・(略)・・・」
「【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態のボンディング装置用ヒータについて説明する。図1に示すように、本実施形態のボンディング装置用ヒータ30は、平板形の本体31と、ボンディングツール40が取り付けられる第一の面である下面31bと、断熱材20が取り付けられる第二の面である上面31aとを備えている。上面31aの中央近傍には略直方体の窪み34が設けられ、本体31には窪み34から側面33に延びる多数の毛細スリット35が設けられている。この窪み34と上面31aに合わせられる断熱材20の合わせ面21とは、冷却空気が流入するキャビティ36を形成し、多数の毛細スリット35と上面31aに取り付けられる断熱材20の合わせ面21とは、キャビティ36から側面33に延びる多数の毛細冷却流路37を形成している。
【0015】
断熱材20の上部には、ステンレス製のベース部材10が取り付けられており、このベース部材10は、図示しないボンディング装置のボンディングヘッドに取り付けられ、ボンディングヘッドに内蔵されている上下方向の駆動装置によりベース部材10と断熱材20とボンディング装置用ヒータ30とボンディングツール40とが一体となって上下方向に移動する。
【0016】
ボンディング装置用ヒータ30は、例えば、窒化アルミなどのセラミックスの内部に白金あるいはタングステンなどにより構成された発熱抵抗体を埋め込んだものである。また、断熱材20は、ボンディング装置用ヒータ30の熱をベース部材10に伝えないようにするもので、例えば、アドセラム(登録商標)等のセラミックス製である。
【0017】
図2を参照しながらボンディング装置用ヒータ30と断熱材20の構造について詳細に説明する。図2(a)は、ボンディング装置用ヒータ30の上面31aを示す平面図であり、図2(b)は図2(a)に示すA-Aの断面図であり、図2(c)は図2(a)に示すB-Bの断面図である。
【0018】
図2(a)に示すように、ボンディング装置用ヒータ30の上面31aの上下方向の中央部には、2つの窪み34が設けられており、各窪み34の上下方向の壁面から各側面33に向かって本体31の中に多数の毛細スリット35が延びている。本実施形態のボンディング装置用ヒータ30では、各窪み34の各上下方向の壁から本体31の上下方向の各側面33に向かってそれぞれ63本の毛細スリット35が延びている。従って、図2(a)に示す上面31aには、合計63×2×2=252本の毛細スリット35が形成されている。また、各毛細スリット35の長さはL1である。毛細スリット35は、例えば、ダイシング装置によって切削することによって形成してもよい。
【0019】
図3に示すように各毛細スリット35の幅W1は0.05mm、毛細スリット35の間の壁38の厚さD1は0.1mm、毛細スリット35の深さH1は、0.3mmである。このように、毛細スリット35は、幅W1が深さH1よりも小さく、本実施形態では、幅W1に対する深さH1の比率(深さH1/幅W1)=(0.3/0.05)=6.0となっている。また、窪み34の深さは毛細スリット35と同様の0.3mmの深さとなっている。
【0020】
図2(b)、図2(c)に示すように、本体31の上面31aには断熱材20が重ねあわされている。断熱材20の合わせ面21は平面であり、上面31aに設けられた窪み34、毛細スリット35の周囲の面と密着している。このため、図2(b)に示すように、本体31の上面31aに断熱材20の合わせ面21が重ねあわされると、略直方体の窪み34の上側の解放面及び毛細スリット35の上側の解放面が閉じられ、各窪み34と合わせ面21とは略直方体の各キャビティ36を形成する。同様に図2(c)に示すように、多数の毛細スリット35と合わせ面21は、上下方向に細長い多数の毛細冷却流路37を形成する。また、図2(b)に示すように、断熱材20には、各キャビティ36にそれぞれ連通する2つの冷却空気孔25が設けられている。そして、各冷却空気孔25に供給された冷却空気は、図2(b)の下向き矢印で示すように、冷却空気孔25からキャビティ36に流入した後、各キャビティ36から多数の毛細冷却流路37に流入し、図2(a)に示す上下方向の矢印ように、各側面33側から外部に流出し、ボンディング装置用ヒータ30を冷却する。
【0021】
図4に示すように、本実施形態のボンディング装置用ヒータ30の毛細冷却流路37は、幅W1、深さH1、長さL1の矩形断面の流路であり、冷却空気は、キャビティ36に連通している入口371から流路に入り、側面33の上にある出口372から流出する。毛細冷却流路37の幅W1は0.05mmと非常に狭くなっている一方、その深さH1は0.3mmと幅W1の6倍にもなっていることから、毛細冷却流路37の中を流れる空気の流れは狭い平行平板間の流れとなり、ボンディング装置用ヒータ30の本体31と空気との熱交換は毛細冷却流路37の両側面37aを構成する毛細スリット35の両側面35aが支配的で毛細冷却流路37の底面37bを構成する毛細スリット35の底面35bはほとんど熱交換に寄与しなくなる。本実施形態のボンディング装置用ヒータ30では毛細冷却流路37の数は252であることから、有効熱交換面積は、次のようになる。
【0022】
有効熱交換面積
=毛細スリット35の両側面35aの面積=H1×L1×2×毛細冷却流路37の数
=H1×L1×504
となる。
【0023】
また、毛細冷却流路37の全流路断面積は、
全流路断面積
=W1×H1×毛細冷却流路37の数=W1×H1×504
となる。
【0024】
一方、図5に示すように、断熱材20の合わせ面21に本実施形態の毛細冷却流路37の全流路断面積と同様の断面積を持つ冷却空気流路26を形成した場合を考える。図5に示す例では、冷却空気流路26は、図中の横方向には仕切りが無い流路として形成されている。この場合、2つの毛細冷却流路37の幅W1と壁38の厚さD1の合計長さ、すなわち毛細冷却流路37の2ピッチ分の幅W2は、(0.05+0.1)×2=0.3mmで毛細冷却流路37の深さH1と同様であることから、冷却空気流路26の高さH2を毛細冷却流路37の幅W1の2倍の0.1mmとすれば、両者の流路断面積は同一となる。そして、図5に示す幅W2の冷却空気流路26の有効熱交換領域は冷却空気流路26の上面31aに面する底面26bのみであり、側面26aはほとんど熱交換に寄与しないから、有効熱交換面積は、W2×L1であるのに対し、幅W2の部分の毛細冷却流路37の有効熱交換面積は、H1×L1×2(両面)×2(2流路)となる。ここで、W2=H1であることから、幅W2の部分の毛細冷却流路37の有効熱交換面積は、幅W2の冷却空気流路26の有効熱交換面積の4倍となることとなる。
【0025】
また、毛細冷却流路37を構成する毛細スリット35の両側面35aの各表面から冷却空気への熱伝達は、流れに垂直な方向の熱伝導が支配的で、乱流のような物資移動を伴う熱移動は非常に小さくなる。このため、図6に示すように、熱移動の際の熱抵抗は毛細スリット35の幅Wの大きさが大きくなると増大する。
【0026】
従って、図1から図4を参照して説明した本実施形態のボンディング装置用ヒータ30の毛細冷却流路37は、図5を参照して説明した従来技術による冷却空気流路26の4倍の有効熱交換面積を有し、冷却空気流路26よりも熱抵抗が少ないことから、より大きな熱交換を行うことができ、より効果的にボンディング装置用ヒータ30を冷却することができる。」
図1、2、4、5は、以下のとおりのものである。
(2)引用発明
したがって、上記引用文献1には、図1に示されるボンディング装置用ヒータ30のボンディングヘッドとして、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電子部品の加熱圧着に用いるボンディングヘッドであって、
下面に電子部品を保持するボンディングツール40と、
ボンディング装置用ヒータ30と、
断熱材20とを備え、
ボンディング装置用ヒータ30は、平板形の本体31と、ボンディングツール40が取り付けられる第一の面である下面31bと、断熱材20が取り付けられる第二の面である上面31aとを備え、上面31aの中央近傍には略直方体の窪み34が設けられ、本体31には窪み34から側面33に延びる多数の毛細スリット35が設けられており、窪み34と上面31aに合わせられる断熱材20の合わせ面21とは、キャビティ36を形成し、多数の毛細スリット35と断熱材20の合わせ面21とは、キャビティ36から側面33に延びる多数の毛細冷却流路37を形成し、
毛細冷却流路37は、幅W1、深さH1、長さL1の矩形断面の流路であり、
本体31の上面31aには断熱材20が重ねあわされており、
冷却空気が、各キャビティ36から多数の毛細冷却流路37に流入し、各側面33側から外部に流出し、ボンディング装置用ヒータ30を冷却する、ボンディングヘッド。」
(3)引用文献1に記載された技術的事項
ア 引用文献1の段落【0024】に照らすと、図5から、仕切りが無い流路としての冷却空気流路26が、その合わせ面21に形成された断熱材20を、ボンディング装置用ヒータ30の本体31の上面31aに重ね合わせた構成が見てとれる。また、図5から、両側面35aと底面35bとを備えた多数の毛細スリットが、本体31の上部に形成されたボンディング装置用ヒータ30が見てとれる。
また、図5から、本体31上部の最右端の毛細スリットの右側面は、断熱材20の冷却空気流路26の側面26aと一致していることが見てとれる。
イ 引用文献1の段落【0013】、【0024】に照らすと、図5に示された「従来技術によるボンディング装置用ヒータの冷却溝の詳細を示す断面図」において、本実施形態の毛細冷却流路37の全流路断面積と同様の断面積を持つ冷却空気流路26が形成された断熱材20が、ボンディング装置用ヒータ30の本体31の上面31aに重ね合わせられ、幅W2の冷却空気流路26の有効熱交換面積は、W2×L1であることが開示されている。
したがって、引用文献1には、「本実施形態の毛細冷却流路37の全流路断面積と同様の断面積を持ち、長さL1で、仕切りが無い流路としての冷却空気流路26が、その合わせ面21に形成された断熱材20を、ボンディング装置用ヒータ30の本体31の上面31aに重ね合わせられた構成」(
以下、「引用文献1に記載された技術的事項」という。)との従来技術が開示されていると認められる。
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「ボンディングツール40」、「ボンディング装置用ヒータ30」、「断熱材20」、「(ボンディング装置用ヒータ30の)本体31の上面31a」、「毛細スリット35」、「断熱材20の合わせ面21」は、それぞれ、本願発明1の「アタッチメントツール」、「ヒータ」、「断熱ブロック」、「ヒータの上面」、「溝」、「断熱ブロックの下面」に相当する。
イ そうすると、本願発明1と引用発明との一致点と相違点は、以下のとおりと認められる。
<一致点>
「電子部品の加熱圧着に用いるボンディングヘッドであって、
下面に電子部品を保持するアタッチメントツールと、
前記アタッチメントツールの上部に配置されるヒータと、
前記ヒータの上部に配置される断熱ブロックとを備え、
前記ヒータの上面に複数の溝が形成されたボンディングヘッド。」
<相違点>
<相違点1>
本願発明1は、「前記ヒータの上面と前記断熱ブロックの下面との界面に、前記溝が設けられた領域を包括する範囲で、隙間を設け」たものであるのに対し、引用発明では、そのような特定はなされていない点。
<相違点2>
本願発明1では、「加熱圧着時の昇温過程および冷却過程において、前記ヒータと前記断熱ブロックが熱変形しても、前記溝に挟まれた板状の壁部が前記断熱ブロックと接触することがないように前記隙間の間隔を設定した」ものであるのに対し、引用発明では、「毛細スリット35」に挟まれた壁部について、そのような特定はなされていない点。
(2)判断
上記相違点1、2について、まとめて検討する。
引用文献1には、上記第5の1.(3)に記載のとおり、従来技術として、「本実施形態の毛細冷却流路37の全流路断面積と同様の断面積を持ち、長さL1で、仕切りが無い流路としての冷却空気流路26が、その合わせ面21に形成された断熱材20を、ボンディング装置用ヒータ30の本体31の上面31aに重ね合わせられた構成」(引用文献1に記載された技術的事項)、すなわち、断熱材20の底面に、断熱材20がボンディング装置用ヒータ30の本体面の上面31aに重ね合わせられた際に、冷却空気流路26を形成するための「隙間」を設けた構成が開示されているので、仮に、引用発明において、当該引用文献1に記載された技術的事項を採用するならば、ボンディング装置用ヒータ30の本体31の上面31aと断熱材20の下面との界面に隙間が設けられることとなる。
一方、引用発明は、「本体31の上面31aには断熱材20が重ねあわされており、冷却空気が、各キャビティ36から多数の毛細冷却流路37に流入し、各側面33側から外部に流出し、ボンディング装置用ヒータ30を冷却する」ものであり、また、引用文献1の段落【0016】には、「断熱材20は、ボンディング装置用ヒータ30の熱をベース部材10に伝えないようにするもの」と記載されている。
したがって、引用発明において、断熱材20はボンディング装置用ヒータ30に熱を伝えないよう、ボンディング装置用ヒータ30との間の隙間がないように設けるべきであるから、ボンディング装置用ヒータ30の上面31aと断熱材20の下面との界面に、毛細スリット35が設けられた領域を包括する範囲に、隙間を設けることで、断熱材20と、ボンディング装置用ヒータ30に設けられた毛細スリット35に挟まれた板状の壁部とが接触しないように構成することは、当業者が適宜なし得たこととはいえない。
更に、引用発明の「ボンディングヘッド」は、「電子部品の加熱圧着に用いる」ものであり、「断熱材20」は、「ボンディング装置用ヒータ30」の上面31aに取り付けられ、ボンディング時には、電子部品に対して均一な面圧を加えるべく、「ボンディング装置用ヒータ30」と「断熱材20」に圧力が加わるものである。
したがって、引用発明において、上記のように、毛細スリット35が設けられた領域を包括する範囲に隙間を設けるに際し、その隙間の間隔を、加熱圧着時の昇温過程および冷却過程で、ボンディング装置用ヒータ30に設けられた毛細スリット35に挟まれた板状の壁部が、断熱材20と接触しないように構成することは、当業者が適宜なし得たこととはいえない。
したがって、引用発明において、当該引用文献1に記載された技術的事項を採用することが、当業者が容易になし得たということはできない。
よって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2~4について
本願発明2~4も、本願発明1の「前記ヒータの上面と前記断熱ブロックの下面との界面に、前記溝が設けられた領域を包括する範囲で、隙間を設け」、「加熱圧着時の昇温過程および冷却過程において、前記ヒータと前記断熱ブロックが熱変形しても、前記溝に挟まれた板状の壁部が前記断熱ブロックと接触することがないように前記隙間の間隔を設定した」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第7 原査定についての判断
令和2年9月18日付けの手続補正により、補正後の請求項1~4は、「加熱圧着時の昇温過程および冷却過程において、前記ヒータと前記断熱ブロックが熱変形しても、前記溝に挟まれた板状の壁部が前記断熱ブロックと接触することがないように前記隙間の間隔を設定した」という構成を有するものとなった。
当該「加熱圧着時の昇温過程および冷却過程において、前記ヒータと前記断熱ブロックが熱変形しても、前記溝に挟まれた板状の壁部が前記断熱ブロックと接触することがないように前記隙間の間隔を設定した」との構成は、原査定における引用文献A(当審拒絶理由における引用文献1)には記載されておらず、本願の出願前における周知技術でもない。
したがって、本願発明1-4は、原査定における引用文献Aに記載された発明ではなく、また、当業者であっても、引用文献Aに基づいて容易に発明できたものでもない。よって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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