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特許拒絶査定不服審判

2019-013092

建材用熱膨張性多層パッキン

審判番号
2019-013092
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-110712外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年10月01日
審決日
2020年06月01日
公報発行日
2020年09月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (E06B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-110712「建材用熱膨張性多層パッキン」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月28日出願公開、特開2016-223168〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
【理 由】

第1 手続の経緯

本願は、平成27年5月29日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年12月26日付け: 拒絶理由通知書

(平成31年 1月 8日発送)

平成31年 2月18日  : 意見書、手続補正書の提出
令和 1年 6月26日付け: 拒絶査定

(令和 1年 7月 2日発送)

令和 1年10月 1日  : 審判請求書の提出

第2 本願発明

本願において、審判請求時の補正はなされておらず、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成31年2月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の、請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものである。

そのうち、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状に突起部と本体部とを含む建材用熱膨張性多層パッキンであって、
前記突起部は樹脂組成物を含み、前記本体部は熱膨張性樹脂組成物を含み、
前記突起部は非熱膨張性であり、
熱膨張性樹脂組成物が、樹脂成分100重量部、熱膨張性黒鉛3~300重量部、無機充填材3~200重量部および可塑剤20~200重量部を含み、
前記突起部の前記本体部との対向面には、当該対向面から突出する突出部が設けられ、
前記本体部の前記突起部との対向面には、前記突出部と嵌合する凹部が設けられている、建材用熱膨張性多層パッキン。」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、及び引用文献2ないし3に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1 国際公開第2013/080562号

引用文献2 特開2000-102960号公報

引用文献3 特公昭48-4629号公報

第4 引用文献の記載

1 引用文献1

(1)記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

原査定の理由で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、引用文献1(国際公開第2013/080562号、2013年6月6日国際公開)には、図面とともに次の記載がある(下線は、当審決で付した。以下、同様。なお、引用文献1の段落番号と各段落の本文との間には改行を挿入した。また、表1及び表2の向きは、引用文献1中では文字が90度左回転しているところ、当審で90度右回転した。)。

ア 技術分野

「[0001]
本発明は建材用熱膨張性多層パッキンに関する。」

イ 背景技術

「[0002]
熱膨張性樹脂組成物を含む成形体は、火災等の熱にさらされた場合に膨張して不燃性の膨張残渣を形成する。この膨張残渣を利用して火災の延焼、煙の拡散を防止することができることから、熱膨張性樹脂組成物を含む成形体は広く建材の用途に使用されている。
熱膨張性樹脂組成物を含む成形体として、熱膨張性黒鉛を含むポリ塩化ビニル樹脂組成物を押出成形して得られる配管材が提案されている。
ポリ塩化ビニルの応用例の一つとして、塩素含有量60~71重量%の塩素化ポリ塩化ビニル100重量部に対して、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量が20~200重量部の範囲であり、無機充填材が30~500重量部、リン化合物の重量と中和処理された熱膨張性黒鉛の重量との比が、9:1~1:9の範囲である塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物が提案されている(特許文献1、2)。
続きを表示(全20行)
これらの先行技術文献によれば、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物を押出成形に使用できることが開示されている。
[0003]
またポリ塩化ビニルの他の応用例の一つとして、熱膨張性黒鉛を含むポリ塩化ビニル樹脂組成物を押出成形して得られる配管材が提案されている。
具体的な先行技術の一つとしてポリ塩化ビニル100重量部に対して熱膨張性黒鉛を1~15重量部の割合で含む樹脂組成物により形成される耐火膨張層と、熱膨張性成分を含まないポリ塩化ビニル樹脂組成物により形成される被覆層とを備えた複層耐火配管材が提案されている(特許文献3、4)。
これらの先行技術によれば耐火膨張層、耐火膨張層の内側の被覆層、および耐火膨張層の外側の被覆層からなる三層構造が、三層共押出成形により得られる点について開示されている。
[0004]
一般に加熱された場合に膨張を開始する熱膨張性樹脂組成物を用いて押出成形を実施することは困難である。
先の先行技術に開示されている多層構造の成形体の形状は円筒である。成形体の断面形状が押出方向の中心軸を基準として対称的な形状の場合には成形体に対して均等に熱がかかるため成形が可能である。
しかし円筒以外の形状に対して、熱膨張性樹脂組成物を用いて押出成形を実施した場合に製品として使用することのできる形状の成形体が得られるかどうかは先に示された先行技術では不明である。
先行技術文献
特許文献
[0005]
特許文献1:特開平9-227747号公報
特許文献2:特開平10-95887号公報
特許文献3:特開2008-180367号公報
特許文献4:特開2008-180068号公報」

ウ 発明が解決しようとする課題

「[0006]
熱膨張性黒鉛を含むポリ塩化ビニル樹脂組成物の押出成形について本発明者らが検討したところ、押出成形により得られる成形品の断面形状が、中心軸を持つ対称的な形状と異なるに従って前記成形品の外観の低下が大きくなる問題点を発見した。
前記成形品の外観が低下する問題は組成の異なる二以上の樹脂組成物のうち、少なくとも一方に熱膨張性黒鉛が含まれる二以上の樹脂組成物を同時に押し出して多層の成形物を成形した場合に大きくなる。
[0007]
一方近年の耐火技術の進展に伴い、熱膨張性樹脂組成物を含む成形体に対し、高水密、高気密、高強度等の、耐火性とは異なる性質を付与することが要求されている。
[0008]
本発明の目的は、外観、耐火性に優れることに加えて、水密、気密、機械強度等の機能を自由に制御することのできる建材用熱膨張性多層パッキンを提供することにある。」

エ 課題を解決するための手段

「[0009]
上記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状に突起部と本体部とを含む建材用熱膨張性多層パッキンであって、
塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物およびEPDM含有熱膨張性樹脂組成物の少なくとも一方からなる熱膨張性樹脂組成物層と、熱可塑性樹脂組成物層とが同時共押出により成形された建材用熱膨張性多層パッキンが本発明の目的に適うことを見出し、本発明者らは本発明を完成するに至った。
[0010]
続きを表示(全25行)
すなわち本発明は、
[1]長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状に突起部と本体部とを含む建材用熱膨張性多層パッキンであって、
前記建材用熱膨張性多層パッキンが、熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層とを少なくとも含む二以上の樹脂組成物層からなり、
前記熱膨張性樹脂組成物層を形成する熱膨張性樹脂組成物が、樹脂成分100重量部、熱膨張性黒鉛3~300重量部、無機充填材3~200重量部および可塑剤20~200重量部からなり、
前記熱膨張性樹脂組成物に含まれる樹脂成分が、塩素含有量が60~72重量%の範囲である塩素化ポリ塩化ビニル樹脂およびEPDMの少なくとも一方からなり、
前記熱膨張性樹脂組成物層と前記熱可塑性樹脂組成物層とが、それぞれ前記熱膨張性樹脂組成物と熱可塑性樹脂組成物とを用いた同時共押出により成形されてなる、建材用熱膨張性多層パッキンを提供するものである。
[0011]
また本発明の一つは、
[2]前記同時共押出方向に対する垂直面を基準とした前記建材用熱膨張性多層パッキンの断面における熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との境界線が、曲線および折線の少なくとも一方を含む、上記[1]に記載の建材用熱膨張性多層パッキンを提供するものである。
[0012]
また本発明の一つは、
[3]前記建材用熱膨張性多層パッキンに含まれる本体部の一部または全部が、熱膨張性樹脂組成物層からなる、上記[1]または[2]に記載の建材用熱膨張性多層パッキンを提供するものである。
[0013]
また本発明の一つは、
[4]前記熱可塑性樹脂組成物層が、ポリ塩化ビニル樹脂組成物、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂組成物およびEPDM樹脂組成物からなる群より選ばれる少なくとも一つからなる、上記[1]~[3]のいずれかに記載の建材用熱膨張性多層パッキンを提供するものである。
[0014]
また本発明の一つは、
[5]前記熱膨張性樹脂組成物が、熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤および架橋促進剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の建材用熱膨張性多層パッキンを提供するものである。
[0015]
また本発明の一つは、
[6]前記建材用熱膨張性多層パッキンが、グレージングチャンネル、タイト材、ガスケットまたはグレージングビードのいずれかである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の建材用熱膨張性多層パッキンを提供するものである。」

オ 発明の効果

「[0016]
本発明によれば、同時共押出により組成の異なる二以上の樹脂組成物層を含む、外観に優れる建材用熱膨張性多層パッキンを提供することができる。
本発明の建材用熱膨張性多層パッキンは熱膨張性樹脂組成物層を有する。このため本発明の建材用熱膨張性多層パッキンが火災等の熱にさらされた場合にはこの熱膨張性樹脂組成物層が膨張して膨張残渣を形成する。
前記膨張残渣は不燃性であり、前記建材用熱膨張性多層パッキンが設置された建材の隙間を閉塞させることができる。この膨張残渣により火災等により生じた炎や煙が建材の隙間を通って広がることを防止できることから、本発明の建材用熱膨張性多層パッキンは耐火性に優れる。
続きを表示(全12行)
[0017]
また本発明の建材用熱膨張性多層パッキンは熱可塑性樹脂組成物層を有する。前記建材用熱膨張性多層パッキンの用途に応じて熱可塑性樹脂組成物層を選択することにより、前記建材用熱膨張性多層パッキンに対して多様な機能を付与することができる。
例えば、前記熱可塑性樹脂組成物層を形成する樹脂として疎水性があり柔軟性のある合成樹脂を採用することにより、前記建材用熱膨張性多層パッキンに対して高水密性を付与することができる。
また例えば、前記熱可塑性樹脂組成物層を形成する樹脂として隙間の閉塞性に優れる合成樹脂を採用することにより、前記建材用熱膨張性多層パッキンに対して高気密性を付与することができる。
また例えば、前記熱可塑性樹脂組成物層を形成する樹脂として剛性に優れる合成樹脂を採用することにより、前記建材用熱膨張性多層パッキンに対して高強度の性質を付与することができる。
この様に本発明によれば、耐火性に加えて、水密、気密、機械強度等の機能を自由に制御することのできる建材用熱膨張性多層パッキンを提供することができる。
[0018]
また本発明の建材用熱膨張性多層パッキンは、前記同時共押出方向に対する垂直面を基準とした前記建材用熱膨張性多層パッキンの断面における熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との境界線が、曲線および折線の少なくとも一方を含む。このため、前記断面における熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との境界線が直線の場合と比較して前記熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との接触面積が大きくなることから、成形後に前記熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層とが分離することを軽減することができる。」

カ 熱膨張性樹脂組成物について

「[0020]
最初に本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物について説明する。
本発明に使用する膨張性樹脂組成物は、樹脂成分100重量部、熱膨張性黒鉛3~300重量部、無機充填材3~200重量部および可塑剤20~200重量部からなる。
[0021]
続きを表示(全70行)
本発明に使用する膨張性樹脂組成物に含まれる樹脂成分は、塩素化ポリ塩化ビニルおよびEPDMの少なくとも一方である。
[0022]
前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂の塩素化物である。前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂の塩素含有量は少なくなると耐熱性が低下し、多くなると溶融押出成形が困難となるので60~72重量%の範囲であることが好ましい。
・・・・・(中略)・・・・・
[0030]
前記熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とにより処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。生成された熱膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
[0031]
本発明に使用される熱膨張性黒鉛は、酸処理して得られた熱膨張性黒鉛がアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和されたものを使用することもできる。
前記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
前記アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
熱膨張性黒鉛の具体例としては、例えば、日本化成社製「CA-60S」等が挙げられる。
[0032]
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、細かくなりすぎると黒鉛の膨張度が小さく、発泡性が低下する傾向がある。また大きくなりすぎると膨張度が大きいという点では効果があるが、樹脂と混練する際に、分散性が悪く成形性が低下し、得られた押出成形体の機械的物性が低下する傾向がある。
このため前記熱膨張性黒鉛の粒度は20~200メッシュの範囲のものが好ましい。
[0033]
前記熱膨張性黒鉛の添加量は、少なくなると耐火性能及び発泡性が低下する傾向がある。また多くなると押出成形しにくくなり、得られた成形体の表面性が悪くなり、機械的物性が低下する傾向がある。このため前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対する前記熱膨張性黒鉛の添加量は、3~300重量部の範囲である。前記熱膨張性黒鉛の添加量の範囲は、10~200重量部の範囲であれば好ましい。
[0034]
前記無機充填材は、一般にポリ塩化ビニル樹脂成形体を製造する際に使用されている無機充填材であれば、特に限定はない。具体的には、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイ力、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコニア鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。
[0035]
中でも炭酸カルシウムおよび加熱時に脱水し、吸熱効果のある水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の含水無機物が好ましい。
また酸化アンチモンは難燃性向上の効果があるので好ましい。
前記無機充填材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
[0036]
前記無機充填材の添加量は、少なくなると耐火性能が低下する傾向があり、多くなると押出成形しにくくなり、得られた成形体の表面性が悪くなり、機械的物性が低下する傾向がある。このため前記無機充填材の添加量は、前記塩素化ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、3~200重量部の範囲である。
前記無機充填材の添加量は、10~150重量部の範囲であれば好ましい。
[0037]
前記可塑剤は、一般にポリ塩化ビニル樹脂成形体を製造する際に使用されている可塑剤であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ジ‐2‐エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、
ジ‐2‐エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤、
エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、
アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル可塑剤、
トリ-2- エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、
トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等の燐酸エステル可塑剤、
鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。
前記可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
・・・・・(中略)・・・・・
[0045]
また本発明に使用する前記熱膨張性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、必要に応じて、一般に使用されている、リン化合物以外の熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤、架橋促進剤等が添加されてもよい。
[0046]
前記熱安定剤としては、例えば、三塩基性硫酸鉛、三塩基性亜硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛等の鉛熱安定剤、
有機錫メルカプト、有機錫マレート、有機錫ラウレート、ジブチル錫マレート等の有機錫熱安定剤、
ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸熱安定剤等が挙げられる。
前記熱安定剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
[0047]
前記滑剤としては、例えば、ポリエチレン、パラフィン、モンタン酸等のワックス類、
各種エステルワックス類、
ステアリン酸、リシノール酸等の有機酸類、
ステアリルアルコール等の有機アルコール類、
ジメチルビスアミド等のアミド化合物類等が挙げられる。
前記滑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
[0048]
前記加工助剤としては、例えば、塩素化ポリエチレン、メチルメタクリレートーエチルアクリレート共重合体、高分子量のポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
[0049]
前記熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p,p-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。
[0050]
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール化合物等が挙げられる。
[0051]
前記帯電防止剤としては、例えば、アミノ化合物等が挙げられる。
[0052]
前記顔料としては、例えば、アゾ類、フタロシアニン類、スレン類、染料レーキ類等の有機顔料、酸化物類、クロム酸モリブデン類、硫化物・セレン化物類、フェロシアニン化物類などの無機顔料等が挙げられる。
[0053]
前記架橋剤としては、例えば、硫黄等が挙げられる。また前記架橋促進剤としては、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、N,N,N’,N’-テトラエチルチウラムジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸ベンジル等が挙げられる。
[0054]
[熱膨張性樹脂組成物の具体例]
本発明に使用される熱膨張性樹脂組成物の具体例は次の通りである。
(a)樹脂成分、熱膨張性黒鉛部、無機充填材部および可塑剤からなる樹脂組成物
(b)上記(a)の樹脂組成物に対し、熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤および架橋促進剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを添加してなる樹脂組成物」

キ 熱可塑性樹脂組成物について

「[0055]
次に本発明に使用する熱可塑性樹脂組成物について説明する。
本発明に使用する熱可塑性樹脂組成物としては押出成形ができるものであれば特に限定はないが、前記熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂成分としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル /エチレン-プロピレン-ジエン/ スチレン共重合体(AES)等が挙げらる。
前記樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン-架橋用ジエンモノマー共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)等が好ましい。
続きを表示(全34行)
・・・・・(中略)・・・・・
[0062]
前記熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂成分に対し、先に説明した無機充填材、前記可塑剤を添加することにより、本発明に使用する熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
[0063]
本発明に使用する熱可塑性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、必要に応じて、押出成形の際に一般に使用されている、熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料等が添加されてもよい。
これらの具体例については先に例示したものと同様である。
[0064]
[熱可塑性樹脂組成物の具体例]
本発明に使用される熱可塑性樹脂組成物の具体例は次の通りである。
(c)樹脂成分、および無機充填材からなる樹脂組成物
(d)樹脂成分、可塑剤および無機充填材からなる樹脂組成物
(e)上記(c)の樹脂組成物に対し、熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤および架橋促進剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを添加してなる樹脂組成物
(f)上記(d)の樹脂組成物に対し、熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤および架橋促進剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを添加してなる樹脂組成物
[0065]
前記熱可塑性樹脂組成物に使用する樹脂成分を選択することにより、本発明の建材用熱膨張性多層パッキンに多様な機能を付与することができる。
本発明に使用する熱可塑性樹脂組成物は、樹脂成分として塩化ビニル樹脂、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、EPDM等の一種もしくは二種以上を選択することが好ましい。
樹脂成分として塩化ビニル樹脂、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、EPDM等の一種もしくは二種以上を選択した場合には、得られる建材用熱膨張性多層パッキンが柔軟性、気密性、水密性、強度に優れる。
[0066]
前記熱可塑性樹脂組成物に使用するポリ塩化ビニル樹脂組成物は従来公知であり、例えば日本工業規格(JIS)に規定されるものを使用することができる。
前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物には、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物と硬質ポリ塩化ビニル樹脂組成物がある。
通常軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物は可塑剤を含むものであり、硬質ポリ塩化ビニル樹脂組成物は可塑剤を含まないものである。前記可塑剤としては、先に説明した可塑剤と同じものを使用することができる。
また前記軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物としては、例えば日本工業規格に定める軟質ポリ塩化ビニルコンパウンド(JIS K6723)等を使用することができる。
前記硬質ポリ塩化ビニル樹脂組成物としては、例えば日本工業規格に定める無可塑ポリ塩化ビニルー成形用及び押出用材料(JIS K6740-1~2)等を使用することができる。
[0067]
本発明に使用する樹脂組成物は、押出成形用に好ましく使用することができる。前記樹脂組成物を使用して、常法に従い、一軸押出機、二軸押出機等の押出機で130~170℃で溶融させて同時共押出することにより熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層とを少なくとも含む多層構造の長尺の建材用熱膨張性多層パッキンを得ることができる。
前記長尺の建材用熱膨張性多層パッキンを用途に応じて適切な長さに切断することにより、本発明の建材用熱膨張性多層パッキンが得られる。
[0068]
本発明の建材用熱膨張性多層パッキンとしては、例えば、窓、扉等の建材に使用されるものが挙げられる。前記建材用熱膨張性多層パッキンの具体例としては、例えば、グレージングチャンネル等が挙げられる。
[0069]
以下に図面を参照しつつ実施例により本発明を詳細に説明する。なお本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。」

ク 実施例1 グレージングチャンネル100

「[0070]
[グレージングチャンネル100の構造]
図1は実施例1に係るグレージングチャンネルを説明するための模式断面図であり、実施例1に係るグレージングチャンネルの長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。図2は実施例1に係るグレージングチャンネルを説明するための模式部分斜視図である。また図3は実施例1に係るグレージングチャンネルがガラスパネルに装着された状態を説明するための模式部分断面図である。
実施例1に係るグレージングチャンネル100は、二以上のガラス板を重ねて形成されるガラスパネル600の周縁部610に装着される。前記グレージングチャンネル100は、前記ガラスパネル600の端面601に対向する底壁部1と、前記底壁部1の両側に設けられて前記ガラスパネル端面601の長手方向に沿ってガラスパネル周縁部610を覆う側壁部2とを有する。前記底壁部1と前記側壁部2とは、前記グレージングチャンネル100の本体部10を形成する。
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[0071]
前記グレージングチャンネル100に含まれる前記底壁部1および側壁部2は、硬質塩化ビニル樹脂組成物により形成されている。
前記側壁部2の上部には突起部20が設けられている。前記突起部20は、内側、すなわちガラスパネル600側に向かって突き出た外ヒレ部21a,21aおよび内ヒレ部21b,21bを有する。
また前記突起部20は、外側、すなわちガラスパネル600側とは反対側に、溝部21c,21cを有する。サッシ620の端部を前記溝部21c,21cに挿入することにより、サッシ620に前記グレージングチャンネル100を固定することができる。
前記突起部20は、表1に示す配合比を有する塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物により形成されている。前記塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物は可塑剤が含まれていることから柔軟性を有する。
[0072]
[グレージングチャンネル100の製造例]
表1に示した所定量の塩素化塩化ビニル樹脂(徳山積水社製、「HA-53K」重合度1000、塩素含有量67.3重量%、以下「CPVC-1」と言う。)、塩化ビニル樹脂(徳山積水社製「TS-1000R」、重合度1000、以下「PVC」と言う。)、中和処理された熱膨張性黒鉛(東ソ一社製「GREP-EG」)、炭酸カルシウム(白石カウシウム社製「ホワイトンBF300」)、ジイソデシルフタレート(ジェイ・プラス社製「DID P」、以下「DIDP」と言う。)、Ca-Zn複合安定剤(水沢化学社製「NT-231」)、ステアリン酸カルシウム(堺化学社製「SC-100」)、塩素化ポリエチレン(威海金弘社製「135A」)およびポリメチルメタクリレート(三菱レーヨン社製「P-530A」)からなる塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物、ならびに、
PVC、炭酸カルシウム(白石カウシウム社製「ホワイトンBF300」)、ジイソデシルフタレート(「DIDP」)、Ca-Zn複合安定剤(水沢化学社製「NT-231」)、ステアリン酸カルシウム(堺化学社製「SC-100」)、塩素化ポリエチレン(威海金弘社製「135A」)およびポリメチルメタクリレート(三菱レーヨン社製「P-530A」)からなるポリ塩化ビニル樹脂組成物を一軸押出機(池貝機販社製、65mm押出機)に供給し、150tで同時共押出を行うことにより、図1に示される断面形状の長尺異型成形体を1m/hrの速度で同時共押出成形することができる。
前記押出機および金型を観察し、樹脂組成物の付着が観察された場合を×、樹脂組成物の付着が観察されなかった場合を○として表1に結果を記載した。
得られる長尺異型成形体を、前記長尺異型成形体の長手方向に対して垂直方向に切断することにより、実施例1に係るグレージングチャンネル100が得られる。このグレージングチャンネル100は外観に優れる。
[0073]
[グレージングチャンネル100の作用]
図1に示すグレージングチャンネル100は、熱膨張性樹脂組成物層からなる突起部20と、熱可塑性樹脂組成物層からなる本体部10とを有する。
前記熱膨張性樹脂組成物層は火災等の熱により膨張することから耐火性の機能を担う。
一方、前記熱可塑性樹脂組成物層は、ガラスパネル600を外部からの衝撃から守る保護層の機能を担う。
この様に実施例1に係るグレージングチャンネル100は機能の異なる樹脂組成物層を二以上有することから一つのグレージングチャンネル100に対し全く異なる複数の機能を付与することが可能となる。
[0074]
図3に示すグレージングチャンネル100およびガラスパネル600を備えたサッシ620が火災等の熱にさらされた場合、前記熱膨張性樹脂組成物層からなる突起部20は膨張する。この膨張により生じた膨張残渣が、ガラスパネル600とサッシ620との隙間を閉塞する。
この膨張残渣により、火災により生じた炎、煙等がガラスパネル600とサッシ620との隙間を通って、火災の生じていない側に侵入することを遅延させることができる。
上述の通り、実施例1に係るグレージングチャンネル100を備えたサッシ620は耐火性に優れる。」

ケ 実施例2 グレージングチャンネル110

「[0075]
[グレージングチャンネル110の構造]
図4は実施例2に係るグレージングチャンネルを説明するための模式断面図である。
実施例1に係るグレージングチャンネル100は、前記突起部20が熱膨張性樹脂組成物層であり、前記本体部10がポリ塩化ビニル樹脂組成物層であった。
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これに対し実施例2に係るグレージングチャンネル110は、前記突起部20がポリ塩化ビニル樹脂組成物層であり、前記本体部10が熱膨張性樹脂組成物層である点が異なる。
実施例2のポリ塩化ビニル樹脂組成物層に使用したポリ塩化ビニル樹脂組成物は、軟質ポリ塩化ビニルを含む。
具体的にはPVC、炭酸カルシウム(白石カウシウム社製「ホワイトンBF300」)、ジイソデシルフタレート(「DIDP」)、Ca-Zn複合安定剤(水沢化学社製「NT-231」)、ステアリン酸カルシウム(堺化学社製「SC-100」)、塩素化ポリエチレン(威海金弘社製「135A」)およびポリメチルメタクリレート(三菱レーヨン社製「P-530A」)からなる。
[0076]
[グレージングチャンネル110の製造例]
実施例2に係るグレージングチャンネル110は、前記突起部20の成形にポリ塩化ビニル樹脂を使用し、前記本体部10の成形に実施例1に用いた塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物を使用して、実施例1の場合と同様の同時共押出成形により製造することができる。具体的な配合例は表1に示す通りである。
前記同時共押出成形により得られた前記グレージングチャンネル110は外観に優れる。
[0077]
[グレージングチャンネル110の作用]
図4に示すグレージングチャンネル110は、熱可塑性樹脂組成物層からなる突起部20と、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10とを有する。
前記熱膨張性樹脂組成物層は火災等の熱により膨張することから耐火性の機能を担う。
一方、前記熱可塑性樹脂組成物層は、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物から形成されているため、前記グレージングチャンネル110の突起部20は柔軟性を有し、前記ガラスパネル600と密着させることができる。
このため前記突起部20はガラスパネル600に結露した水等がサッシの内部等に浸入することを防止できることから水密の機能を担う。
この様に実施例2に係るグレージングチャンネル110は機能の異なる樹脂組成物層を二以上有することから一つのグレージングチャンネル110に対し全く異なる複数の機能を付与することが可能となる。
[0078]
また実施例2に係るグレージングチャンネル110は、図3におけるグレージングチャンネル100に代えてグレージング110を使用した場合でも、塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物からなる前記グレージングチャンネル110の本体部10が火災等の熱により膨張する。
この膨張残渣によりガラスパネル600とサッシ620との隙間を閉塞することができる。」

コ 実施例10 グレージングチャンネル190

「[0095]
[グレージングチャンネル190の構造]
図12は実施例10に係るグレージングチャンネルを説明するための模式断面図である。
実施例10に係るグレージングチャンネル190は、先の実施例2に係るグレージングチャンネル110の変形例である。
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先の実施例2に係るグレージングチャンネル110の場合は、製造の際の同時共押出方向に対する垂直面を基準とした前記グレージングチャンネル110の断面における熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との境界線14が直線になっている(図4参照)。
これに対し、実施例10に係るグレージングチャンネル190の断面における熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との境界線15は曲線になっている(図12参照)。
前記境界線15を曲線とすることにより、前記グレージングチャンネル190断面における熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との接触面積を先の実施例2の場合と比較して大きくすることができる。
この様に前記グレージングチャンネル190断面における熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との接触面積を大きくすることにより、熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との界面の剥離を軽減することができる。
[0096]
実施例2の場合と同様、前記同時共押出成形により前記グレージングチャンネル190を得ることができる。
前記同時共押出成形により得られた前記グレージングチャンネル190は外観に優れる。
また実施例2の場合と同様、一つのグレージングチャンネル190に対し全く異なる複数の機能を付与することが可能となる。
特に実施例10の場合は、前記グレージングチャンネル190に対して衝撃等が加わった場合でも、熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層の界面の剥離を軽減することができるから信頼性に優れる。」

サ 実施例11 グレージングチャンネル200

「[0097]
[グレージングチャンネル200の構造]
図13は実施例11に係るグレージングチャンネルを説明するための模式断面図である。
実施例11に係るグレージングチャンネル200は、先の実施例10に係るグレージングチャンネル190の変形例である。
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先の実施例10に係るグレージングチャンネル190の場合は、製造の際の同時共押出方向に対する垂直面を基準とした前記グレージングチャンネル190の断面における熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との境界線15が曲線であった。
これに対し、前記グレージングチャンネル200の断面における熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との境界線16は折線になっている。
前記折線を形成する折り返し点の数に限定はないが、1~100の範囲であれば好ましく、1~20の範囲であればさらに好ましく、1~10の範囲であればさらに好ましい。
[0098]
前記境界線16を折線とすることにより、前記グレージングチャンネル190の断面における熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との接触面積を先の実施例2の場合と比較して大きくすることができる。
この様に前記グレージングチャンネル200断面における熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との接触面積を大きくすることにより、熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層の界面の剥離を軽減することができる。
[0099]
実施例10の場合と同様、前記同時共押出成形により前記グレージングチャンネル200を得ることができる。
前記同時共押出成形により得られた前記グレージングチャンネル200は外観に優れる。
また実施例10の場合と同様、一つのグレージングチャンネル200に対し全く異なる複数の機能を付与することが可能となる。
特に実施例11の場合は、前記グレージングチャンネル200に対して衝撃等が加わった場合でも、熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層の界面の剥離を軽減することができるから信頼性に優れる。
[0100]
なお、以下の実施例の場合においても、断面における熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との境界線の形状を曲線および折線の少なくとも一方とすることができる。」

シ 実施例12 タイト材210

「[0101]
[タイト材210の構造]
図14は実施例12に係るタイト材を説明するための模式断面図であり、実施例12に係るタイト材の長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。図15は実施例12に係るタイト材を説明するための模式部分斜視図である。また図16および図17は実施例12に係るタイト材と扉との関係を説明するための模式部分断面図である。
実施例12に係るタイト材210は、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10と軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層からなる突起部20とを有する。
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前記本体部10は、固定部22および筒部23を有する。また前記突起部20は、湾曲部24を有する。
前記突起部20の内部には、前記湾曲部24および筒部23により囲まれる空間25が形成されている。
[0102]
図16および図17に示す扉700は、枠体710に対して開閉することができる。前記扉700を枠体710に接触させると、前記扉700は前記タイト材210の突起部20の湾曲部24に接触する。
また前記タイト材210の本体部10の固定部22は、枠体710の溝部711の内部に挿入されている。前記固定部22が前記溝部711に挿入されることにより、前記タイト材210を枠体710に固定することができる。
前記タイト材210の突起部20は柔軟性を有する。このため前記扉700を枠体710に接触させると、前記タイト材210の空間25が変形して、前記扉700と前記枠体710との隙間を閉塞することができる。
[0103]
[タイト材210の製造例]
実施例12に係るタイト材210の製造方法は実施例1の場合と同様である。同時共押出成形に使用する樹脂組成物の配合を表1に示す。
前記突起部20の成形に実施例1に用いた軟質ポリ塩化ビニルを含むポリ塩化樹脂組成物を使用し、前記本体部10の成形に、実施例1に用いた塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物を使用して、実施例1の場合と同様の同時共押出成形により前記タイト材210を製造することができる。
得られるタイト材210は外観に優れる。
[0104]
[タイト材210の作用]
図16および図17に示すタイト材210は、熱可塑性樹脂組成物層からなる突起部20と、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10とを有する。
前記熱膨張性樹脂組成物層は火災等の熱により膨張することから耐火性の機能を担う。また前記熱可塑性樹脂組成物層は柔軟性を有することから、扉700と枠体710との隙間を閉塞する気密の機能も担う。
一方、前記熱膨張性樹脂組成物層は、前記扉700が閉じた状態でも前記突起部20を支えることのできる強度を有する。
このため前記本体部10はタイト材210全体の強度の機能を担う。
この様に実施例12に係るタイト材210は機能の異なる樹脂組成物層を二以上有することから一つのタイト材210に対し全く異なる複数の機能を付与することが可能となる。
[0105]
また図16および図17に示すタイト材210を備えた枠体710および扉700が火災等の熱にさらされた場合、前記熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10は膨張する。この膨張により生じた膨張残渣が、扉700と枠体710との隙間を閉塞する。
この膨張残渣により、火災により生じた炎、煙等が扉700と枠体710との隙間を通って、火災の生じていない側に侵入することを遅延させることができる。
上述の通り、実施例12に係るタイト材210を備えた枠体710および扉700は耐火性に優れる。」

ス 比較例1及び2並びに表1及び表2

「[0187]
[比較例1および2]
表1に示す配合により、実施例1の場合と同様に成形を試みた。ポリリン酸アンモニウムはクラリアントジャパン社製「AP422」を使用した。
比較例1および2のいずれの場合も押出機のスクリューおよび金型に樹脂組成物の付着が観察された。
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[0188]
[表1]
[0189]
なお表1~表5の場合で膨張層とは熱膨張性樹脂組成物層の略であり、樹脂層とは熱可塑性樹脂組成物層の略である。硬質塩ビとは硬質塩化ビニルの略であり、可塑剤の量が0以上40重量部未満のものが好ましい。また軟質塩ビとは軟質塩化ビニルの略であり、可塑剤の量が40重量部以上のものが好ましい。
[0190]
[表2]
」

セ 実施例1に関し、図1及び図2には、次の図示がある。

ソ 実施例2に関し、図4には次の図示がある。

タ 実施例10に関し、図12には、次の図示がある。

チ 実施例11に関し、図13には次の図示がある。

ツ 実施例12に関し、図14及び図15には、次の図示がある。

(2)記載された発明

ア 実施例11のグレージングチャンネル200に着目して

上記(1)サに示される実施例11のグレージングチャンネル200は、上記(1)ケが示す実施例2のグレージングチャンネル110における熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との境界線を曲線とした、上記(1)コに示される実施例10のグレージングチャンネル190の変形であり、熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との境界線16を折線としたものである。

そして、上記(1)サが示す実施例11のグレージングチャンネル200は、熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との境界線16を折線とした以外の構成は、上記(1)ケが示す実施例2のグレージングチャンネル110と共通であり、熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層における樹脂組成物の配合は、上記(1)スの表2中に「実施例11」として示されるとおりである。なお、上記(1)スの「表1」及び「表2」中において、各成分の数値の単位は明記されていないが、可塑剤である「DIPP」の配合量が、「硬質塩ビ」で「20」、「軟質塩ビ」で「80」であること、並びに、段落[0189]の記載から、表1及び表2に示される配合比の単位は、「重量部」であることが理解できる。また、同表2より、実施例11において、「軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層」には「熱膨張性黒鉛」が含まれていないことも看てとれる。

さらに、建材用熱膨張性多層パッキンとしての基本構成、及び、樹脂組成物中で用いられている各成分の名称並びに性質について、上記(1)ア~ケの「実施例2」までにおいてなされる説明は、上記(1)サの実施例11においても共通すると解される。

これらのことをふまえて、実施例11のグレージングチャンネル200に着目して整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1A」という。)が記載されていると認められる。

・引用発明1A(グレージングチャンネル200)

「製造の際の同時共押出方向である長手方向に対する垂直面を基準とした断面に、突起部20と本体部10とを含む、建材用熱膨張性多層パッキンであるグレージングチャンネル200であり、
突起部20は、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層から形成される熱可塑性樹脂組成物層であり、
軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層は、樹脂成分であるポリ塩化ビニル樹脂(PVC)100重量部、無機充填剤である炭酸カルシウム24重量部、可塑剤であるジイソデシルフタレート(DIPP)80重量部、Ca-Zn複合安定剤3重量部、熱安定剤であるステアリン酸カルシウム4.5重量部、加工助剤である塩素化ポリエチレン10重量部及びポリメチルメタクリレート20重量部からなり、熱膨張性黒鉛を含んでおらず、
本体部10は、熱膨張性樹脂組成物層であり、
熱膨張性樹脂組成物層は、樹脂成分である塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC-1)100重量部、熱膨張性黒鉛48重量部、無機充填剤である炭酸カルシウム24重量部、可塑剤であるジイソデシルフタレート(DIPP)80重量部、Ca-Zn複合安定剤3重量部、熱安定剤であるステアリン酸カルシウム4.5重量部、加工助剤である塩素化ポリエチレン10重量部及びポリメチルメタクリレート20重量部からなり、ここで熱膨張性黒鉛の添加量は、少なくなると耐火性能及び発泡性が低下する傾向があり、また多くなると押出成形しにくくなり、得られた成形体の表面性が悪くなり、機械的物性が低下する傾向があることから、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対する前記熱膨張性黒鉛の添加量は、3~300重量部の範囲としており、
熱膨張性樹脂組成物層は火災等の熱により膨張することから耐火性の機能を担い、熱可塑性樹脂組成物層は、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物から形成されているため、突起部20は柔軟性を有し、機能の異なる樹脂組成物層を二以上有することから、全く異なる複数の機能を付与することが可能となり、
突起部20を形成する熱可塑性樹脂組成物層と本体部10を形成する熱膨張性樹脂組成物層との境界線16を折線として、接触面積を大きくすることにより、衝撃等が加わった場合でも、熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層の界面の剥離を軽減することができる、
グレージングチャンネル200。」

イ 実施例12のタイト材210に着目して

上記(1)シには、実施例12のタイト材210が示されている。また、上記(1)サの段落[0100]には、実施例11において熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層との境界線を折線とした形状を、実施例12以降にも採用できる旨が記載されている。

そして、実施例12における熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層における樹脂組成物の配合は、上記(1)スの表2中に「実施例12」として示されるとおりであり、同表2から、実施例12の「軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層」には「熱膨張性黒鉛」が含まれていないことも看てとれる。また、表1及び表2に示される配合比の数値の単位が、「重量部」であると理解できること、上記(1)ア~ケの「実施例2」までにおいてなされる建材用熱膨張性多層パッキンとしての基本構成、及び、樹脂組成物中で用いられている各成分に関する説明が、実施例12においても共通すると解されることは、上記アにおいて実施例11について述べたとおりである。

これらのことをふまえて、実施例12のタイト材210に着目して整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1B」という。)が記載されていると認められる。

・引用発明1B(タイト材210)

「製造の際の同時共押出方向である長手方向に対する垂直面を基準とした断面に、突起部20と本体部10とを含む、建材用熱膨張性多層パッキンであるタイト材210であり、
突起部20は、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層から形成される熱可塑性樹脂組成物層であり、
軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層は、樹脂成分であるポリ塩化ビニル樹脂(PVC)100重量部、無機充填剤である炭酸カルシウム24重量部、可塑剤であるジイソデシルフタレート(DIPP)80重量部、Ca-Zn複合安定剤3重量部、熱安定剤であるステアリン酸カルシウム4.5重量部、加工助剤である塩素化ポリエチレン10重量部及びポリメチルメタクリレート20重量部からなり、熱膨張性黒鉛を含んでおらず、
本体部10は、熱膨張性樹脂組成物層であり、
熱膨張性樹脂組成物層は、樹脂成分である塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC-1)100重量部、熱膨張性黒鉛48重量部、無機充填剤である炭酸カルシウム24重量部、可塑剤であるジイソデシルフタレート(DIPP)80重量部、Ca-Zn複合安定剤3重量部、熱安定剤であるステアリン酸カルシウム4.5重量部、加工助剤である塩素化ポリエチレン10重量部及びポリメチルメタクリレート20重量部からなり、ここで熱膨張性黒鉛の添加量は、少なくなると耐火性能及び発泡性が低下する傾向があり、また多くなると押出成形しにくくなり、得られた成形体の表面性が悪くなり、機械的物性が低下する傾向があることから、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対する前記熱膨張性黒鉛の添加量は、3~300重量部の範囲としており、
熱膨張性樹脂組成物層は火災等の熱により膨張することから耐火性の機能を担い、熱可塑性樹脂組成物層は、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物から形成されているため、突起部20は柔軟性を有し、機能の異なる樹脂組成物層を二以上有することから、全く異なる複数の機能を付与することが可能となるタイト材210であって、
衝撃等が加わった場合でも、熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層の界面の剥離を軽減するために、突起部20を形成する熱可塑性樹脂組成物層と本体部10を形成する熱膨張性樹脂組成物層との境界線を折線として、接触面積を大きくしてもよい、
タイト材210。」

2 引用文献2

(1)記載事項

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原査定の理由で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、引用文献2(特開2000-102960号公報、2000年4月11日公開)には、図面とともに次の記載がある。

ア 発明の属する技術分野、従来技術及び発明が解決しようとする課題

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用ウエザストリップ等に使用される熱可塑性エラストマー(以下、単に「TPE」という場合もある。)や熱可塑性樹脂の複合押出し成形品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】最近、自動車用ウエザストリップ等では、素材としてゴムに代わり、コストダウン及びリサイクルが可能なTPEや熱可塑性樹脂の押出し成形品が使用され始めている。このような熱可塑性ウエザストリップは、車体などのボディフランジに取り付ける取付部と、ドア等と弾接するシール部とから構成されているが、取付部ではボディフランジを挟圧するための強度が要求される一方、シール部ではドア等に弾接可能な柔軟性が要求される。これらの要求を満足するため、従来のTPE等からなるウエザストリップでは、取付部に非発泡(ソリッド)又は低発泡の熱可塑材が、また、シール部には発泡性の熱可塑材が使用されていた。
続きを表示(全12行)
【0003】図8に示す従来例1のウエザストリップ100は、非発泡のソリッド材からなる断面逆U字状の取付部101の頂部平面101aに、発泡体からなる断面逆U字状のシール部103を一体化したものである。
【0004】図9に示す従来例2のウエザストリップ104は、非発泡のソリッド材からなる断面U字状の取付部105の上端首部105aに、発泡体からなる中空円筒形のシール部106を一体化すると共に、取付部105の外側に発泡体からなる装飾リップ107を一体化したものである。
【0005】図10に示す従来例3のウエザストリップ108は、低発泡体からなる略T字形の取付部109の上端109aに高発泡体からなるシール部110を一体化したものである。
【0006】上記従来例1、2及び3では、いずれの取付部もTPE又は熱可塑性樹脂の低発泡体又は非発泡体(ソリッド)の押出し成形材が使用され、シール部103、106、110や装飾リップ107は、TPE又は熱可塑性樹脂の発泡体又は高発泡体の押出し成形材が使用されている。
【0007】これらTPE等の熱可塑材同士の一体化は、加硫ゴムの場合と異なり、一つの押出し機の口金部分から一体的に押出し成形することは困難である。そのため、取付部を構成する第1の押出し成形材とシール部を構成する第2の押出し成形材とを熱融着により一体化していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、本発明者らは、TPE等の熱可塑材を用いて従来例1、2及び3のようなウエザストリップの制作を試みたところ、発泡体からなる押出し成形材では、非発泡体の押出し成形材に比べて、押出し成形時の寸法安定性が悪く、発泡体からなるシール部と非発泡体からなる取付部とを接合するとき、両者の位置が定まらず、所望の形状のウエザストリップが得られない場合があることを発見した。特に、従来例1、2、3のウエザストリップでは、シール部と取付部との接合面や取付部と装飾リップとの接合面が平面合わせとなっていたため、接合位置が定まらず、製品形状が安定しなかった。
【0009】さらに、これらウエザストリップにおけるシール部あるいは装飾リップと取付部との接合部は、幅1~2mm程度しかなく、その接合断面積も小さいので、接着力も弱いことも発見した。」

イ 課題を解決するための手段

「【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、別々に押出し成形した成形材の熱融着部(接合部)の位置精度を良好にするために鋭意研究した結果、第1の押出し成形材及び第2の押出し成形材のうちの一方の接合面に凹部を形成し、他方の接合面に凸部を形成して、これらの凹凸部を嵌合して互いに熱融着一体化すれば、両押出し成形材の位置決めが容易となり、安定した製品形状が得られることを見い出した。
【0011】これらの押出し成形材の素材としては、熱可塑性エラストー(TPE)又は熱可塑性樹脂を素材とする2つの押出し成形材の接合ならば、どのような素材の組み合わせであってもよく、例えば、TPE同士、熱可塑性樹脂同士、あるいはTPEと熱可塑性樹脂との組み合わせに適用できる。
【0012】TPEは、常温では加硫ゴム状のゴム弾性を示すが、高温では容易に可塑化されて成形可能となる高分子材料であり、その構成成分によって、スチレン系(SBC)、オレフィン系(TPO)、ウレタン系(TPU)、塩ビ系(TPVC)等の種類があるが、これらのうちのいずれのTPEであってもよい。
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【0013】熱可塑性樹脂としては、炭化水素系樹脂(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂)、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、含ハロゲン系樹脂(塩化ビニル樹脂(PVC)等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂が例示できるが、これらのうちのいずれの樹脂であってもよい。
【0014】これら熱可塑材の複合成形品は、発泡材料であるか否かを問わず適用できる。例えば、一方の押出し成形材が発泡体であって、他方が非発泡体である組み合わせ、両方ともに発泡体である組み合わせ、さらには非発泡体同士の組み合わせのいずれにも適用できる。しかしながら、寸法安定性が問題となる発泡体と非発泡体との接合、あるいは比重の異なる発泡体同士の接合に本発明を適用すれば好適である。
【0015】複合押出し成形品の用途としては、自動車用ウエザストリップに限らず、家具などのトリム材、あるいは建築用シーリング材を含むあらゆる分野に適用可能であるが、車体のボディフランジ等に止着する取付部と、ドア等に弾接可能なシール部との間で高い寸法精度が要求される自動車用ウエザストリップに適用すれば好適である。
【0016】凹凸部の断面形状としては、三角形、四角形、台形などの角形や、円弧形等、種々の形状を採用できるが、製造ライン上で両押出し成形材の凹凸部がスムーズに嵌合するには、凹部はその開口面が底面部よりも幅広の形状の方が好ましい。
【0017】また、ウエザストリップの取付部とリップとの接合部分や、取付部とシール部とが幅狭の首部で接合されている場合等のように、第1押出し成形材と第2の押出し成形材との接合断面積が少ない場合、接合力が弱くなる。このような場合、両者の接合面のうちの一方に微小凸部又は微小凹部を形成し、熱融着接合時に、他方の押出し成形材の材料が微小凹凸部に入り込むようにすれば、接合断面積が増大してアンカー効果を発揮するので好適である。
【0018】微小凹部又は凸部は、上述の位置決め用凹凸部の有無を問わず、適用可能であるが、接合面の凹部又は凸部の壁面のうちの一方に形成する方が、複合押出し成形品の位置決めと接合面積の増大が同時に可能となる点で有効となる。この場合、微小凹部又は凸部は、嵌合位置決め用の凹部又は凸部のうちのいずれか一方の壁面に形成すればよい。すなわち、位置決め用の凹部に微小凹部又は凸部を形成するか、位置決め用の凸部に微小凹部又は凸部を形成すればよい。さらに、この微小凹凸部は、熱融着接合後に外れ方向に抵抗となるように、外れ方向と異なる方向に突設又は凹設した構成とするのが有効である。
【0019】嵌合位置決め用の凹凸部及び微小凹凸部の形成は、各押出し成形材の成形時に行えばよい。すなわち、熱可塑性エラストマー又は熱可塑性樹脂の第1の押出し成形材及び第2の押出し成形材を別々に押出し成形し、両者の接合面を互いに熱融着して一体化する場合、第1の押出し成形材及び第2の押出し成形材の押出し成形時に、一方の接合面に嵌合位置決め用の凹部を形成し、他方の接合面に同じく嵌合位置決め用の凸部を形成するようにする。微小凹凸部を形成する場合、上記凹部の形成時及び凸部の形成時に同時に形成するようにすればよい。」

ウ 発明の実施の形態

「【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は第1の実施の形態であるウエザストリップの製造工程を示す説明図、図2は同じくウエザストリップの断面図である。
【0021】図示のごとく、第1の実施の形態のウエザストリップ1の製造装置2は、TPEの非発泡体用の第1の押出し機3、同じくTPEの水発泡用の第2の押出し機4、冷却槽5、及び引取機6が順次配列されており、TPEソリッド用の押出し機3から取付部10を構成する第1の押出し成形材(ソリッド材)を押出し成形し、この取付部10の頂部10aに相当する位置に第2の押出し機2から中空シール部11を構成する第2の押出し成形材(スポンジ材)を押出し成形し、両者の接合面を熱融着一体化して複合した押出し成形品を得、これを冷却槽5で冷却して製品を完成させる。
【0022】取付部10は、断面逆U字状に形成され、そのU字状の溝部12の壁面にボディフランジ(図示略)に弾接する係止リップ13が一体形成されている。この係止リップ13は、取付部10の押出し成形時に同時に成形される。取付部10は、その押出し成形時において、当初から断面逆U字形形態で押出し成形することも可能であるが、本実施の形態では、帯板状に押出し成形し、シール部と熱融着して複合押出し成形品を完成後に、曲げ加工機の曲げロールを通過させてU字状に曲げ加工して得るようにしている。
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【0023】この取付部10には、金属製又は硬質樹脂製の帯状の芯部材15が埋設されているが、この芯部材15は、第1の押出し機3に供給してシリンダ先端の口金からTPEと一体的に押出し成形すればよい。一方、シール部11は、断面が略逆U字状に押出し成形されたもので、その両端脚部11aが取付部10の頂部10aに熱融着される。
【0024】これら取付部10とシール部11との接合部には、両者の嵌合位置決め手段が講じられている。この位置決め手段としては、取付部10の頂部10aに、左右一対の断面三角形で開口面が底面よりも幅広の凹部16が形成され、この凹部に対応してシール部11の脚下端には、断面三角形の凸部17が形成されている。これらの位置決め用の凹凸部16、17は、取付部10及びシール部11の押出し成形時に同時に成形され、取付部10とシール部11の積層時に凹凸部16、17が互いに嵌合位置決めされ、両者が熱融着一体化されている。従って、取付部10に対するシール部11の位置決めも容易となり、安定した製品形状が得られる。
【0025】図3に示す第2の実施の形態のウエザストリップ1においては、非発泡体からなる逆U字状のTPE製取付部10の頂部10aに幅広の断面逆台形の凹部16が形成され、発泡体からなるTPE製シール部11は、中空筒状に形成されるとともに、その底部に断面矩形の凸部17が一体形成され、これら凹凸部16、17が互いに嵌合熱融着されている。取付部10及びシール部11の成形方法及び積層組み合わせ方法は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0026】図4に示す第3の実施の形態のウエザストリップ1においては、非発泡体からなるTPE製の取付部10の頂部10a中程に断面三角形の位置決め用凹部16が形成され、発泡体からなるTPE製シール部11は、円筒状に形成されると共に、その底部に下方へ突出する脚部11bが一体形成されている。そして、この脚部11bの下端に取付部10側の凹部16に嵌合位置決めされる断面三角形の凸部17が形成され、これら凹凸部16、17が互いに熱融着されている。
【0027】さらに、取付部10の脚部10bの外側のソリッド状の凸条片18の先端にスポンジ状の装飾リップ19が熱融着されている。凸条片18の先端には鉤形の凸部20が形成され、この凸部20に対応して装飾リップ19の基端に鉤形の凹部21が形成され、これら凹凸部20、21が互いに嵌合するよう位置決めされた後、熱融着一体化されている。
【0028】凸条片18及び凸部20は、取付部10の押出し成形時に一体的に押出し成形される。また、装飾リップ19及び凹部21は、図1に示す製造装置2において、シール部成形用の第2の押出し機4の後段に、リップ成形用の第3の押出し機(図示略)を付加して配列すれば、簡単に複合押出し成形品を成形することができる。
【0029】図5に示す第4の実施の形態のウエザストリップ1においては、取付部10が低発泡のTPEから構成され、シール部11が高発泡のTPEから構成されたもので、逆T字形の取付部10の中央上端10cに断面三角形の凸部17が形成され、く字形のシール部11の下端に、開口面が底面よりも幅広の断面三角形の凹部16が形成され、両者16、17が嵌合位置決めされた後、熱融着により一体化されたものである。
【0030】図6に示す第5の実施の形態のウエザストリップ1においては、取付部10とシール部11の嵌合位置決め用の凹凸部16、17の壁面のうち、断面三角形の凹部16の壁面に垂直方向に突出する複列の微小凸部23が形成され、シール部11の凸部17との熱融着時に、シール部11側の材料が微小凸部23間に入り込んで一体化されたもので、微小凸部23によりシール部11側の接合面積が増大し、アンカー効果を持たせることができる。この微小凸部23は、凹部16の傾斜壁面16aに対して垂直方向に突出しているので、シール部11側に上方への抜け出し外力が作用したとしても、微小凸部16が抵抗となり、接合力が高くなる。」

エ 図2及び図6には、次の図示がある。

上記図6より、取付部10の微小凸部が、シール部11側の材料の中に入り込んで一体化している様子が、看てとれる。

(2)記載された発明

上記(1)より、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

・引用発明2

「車体などのボディフランジに取り付ける、強度が要求される取付部10と、ドア等に弾接可能な、柔軟性が要求されるシール部11とから構成される、熱可塑材の複合押出し成形品であるウェザストリップ1であって、
シール部11と取付部10との接合部の接合断面積が少なく、接合力が弱くなる場合、
取付部10の壁面に突出する複列の微小凸部23を形成し、シール部11側の材料の中に微小凸部23が入り込んで一体化することで、接合面積を増大させてアンカー効果を持たせ、強い接着力とした、ウェザストリップ1であり、
微小凹凸部の形成は、各押出し成形材の成形時に行えばよく、
熱可塑材の複合成形品は、発泡材料であるか否かを問わず適用でき、複合押出し成形品の用途としては、自動車用ウエザストリップに限らず、建築用シーリング材を含むあらゆる分野に適用可能である、
ウェザストリップ1。」

3 引用文献3

(1)記載事項

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原査定の理由で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、引用文献3(特公昭48-4629号公報、1973年2月9日公告)には、図面とともに次の記載がある。

ア 第2欄第13行~第32行

「本発明は、発泡体成形部材を相互に、或は発泡体成形部材と非発泡体成形部材とを接合して複合構造材を製造するに際して、部材に用いる合成樹脂材料の種類や組合せについての制限を大幅に緩和し、構成部材間の接合力を強大なものとし、かつ、工程の簡素化された製造方法を提供することを目的としたものである。
本発明における第一の発明は発泡合成樹脂板(以下、A板と称す)と、互いに平行で押出方向に連続した多数の突起物を面上に成形した発泡又は非発泡の合成樹脂板(以下、B板と称す)とを、B板上に成形された突起物をアンカーとして接合した構造を有する。合成樹脂発泡体を部材として含む複合構造材である。また第二の発明は、A板並びにB板をひとつの樹脂案内板より連続的に同時に押し出した後、A板とB板とを、そのダイ内部の樹脂案内板の直後でB板の有する突起物をアンカーとして直ちに接合し、合成樹脂発泡体を部材として含む複合構造材を一工程で製造することである。」

イ 第4欄第2行~第26行

「A板となる、発泡剤を含んだ溶融樹脂は、押出装置1より押し出され、ダイケーシング6と樹脂案内板7よりなる間隙8を未発泡の状態で通過する。他方押出装置2より押し出された発泡剤を含む又は含まない溶融樹脂は、ダイケーシング6’と樹脂案内板7よりなる間隙9を通過し樹脂案内板より吐出され、B板を形成する。この工程の直後、間隙10に於いて、A板となる樹脂が徐々に発泡し乍らB板に接し、B板上に既に成形された突起物をアンカーとしてA板とB板が互いに接合され、吐出口11より第9図に示すような形状の、合成樹脂発泡体を部材として含む複合構造材が一工程で製造されるものである。
本発明に使用する樹脂材料については、熱可塑性樹脂から選んだ、ほとんどあらゆる同種又は異種の樹脂の組合せが可能である。概して、A板となる樹脂の軟化点よりも稍々高い軟化点を有する樹脂をB板となる樹脂として選べば、製造操作が容易となり良好な製品が得られるが、このような材料の組合せは本発明の範囲を限定するものではない。
又、B板上に成形される突起物の形状としては、A板とB板とをひきはがす力に抵抗することができる任意の形状を選ぶことができる。」

ウ 第3図及び第9図には、次の図示がある。

上記イの記載を参照すると、上記第3図の図番9の間隙が、B板を形成すること、及び第9図の図示より、第9図において下側にあるのがB板であり、B板上の突起物がA板の材料中に入り込んだ様子が、看てとれる。

(2)記載された発明

上記(1)より、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

・引用発明3

「発泡剤を含んだ溶融樹脂を押出装置1より押し出して形成するA板と、発泡剤を含む又は含まない溶融樹脂を押出装置2より押し出して形成するB板とを、同時に押し出し、B板の有する突起物をアンカーとして直ちに接合し、B板上の突起物がA板の材料中に入り込んだ複合構造材であり、
B板上に形成する突起物の形状としては、A板とB板とをひきはがす力に抵抗することができる任意の形状を選ぶことができ、
使用する樹脂材料については、熱可塑性樹脂から選んだ、ほとんどあらゆる同種又は異種の樹脂の組合せが可能である、
部材に用いる合成樹脂材料の種類や組合せについての制限を大幅に緩和し、構成部材間の接合力を強大なものとした、複合構造材。」

第5 対比・判断

1 引用発明1Aを主たる引用発明として

(1)対比

本願発明と引用発明1Aとを対比する。

引用発明1Aにおける「建材用熱膨張性多層パッキンであるグレージングチャンネル200」は、本願発明における「建材用熱膨張性多層パッキン」に相当し、引用発明1Aの「グレージングチャンネル200」が「製造の際の同時共押出方向である長手方向に対する垂直面を基準とした断面に、突起部20と本体部10とを含む」構成は、本願発明の「建材用熱膨張性多層パッキン」が「長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状に突起部と本体部とを含む」構成に相当する。

引用発明1Aにおいて、「突起部20」が「軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層から形成される熱可塑性樹脂組成物層」である構成は、本願発明において、「突起部」が「樹脂組成物」を含む構成に相当する。

引用発明1Aにおいて、「本体部10」が「熱膨張性樹脂組成物層」である構成は、本願発明において、「本体部」が「熱膨張性樹脂組成物」を含む構成に相当する。

引用発明1Aにおいて、「突起部20」を形成する「熱可塑性樹脂組成物層」である「軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層」が、「樹脂成分であるポリ塩化ビニル樹脂(PVC)100重量部、無機充填剤である炭酸カルシウム24重量部、可塑剤であるジイソデシルフタレート(DIPP)80重量部、Ca-Zn複合安定剤3重量部、熱安定剤であるステアリン酸カルシウム4.5重量部、加工助剤である塩素化ポリエチレン10重量部及びポリメチルメタクリレート20重量部」からなり、「熱膨張性黒鉛」を含んでいない構成は、引用発明1Aにおける「軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層」の配合比が、本願発明の「突起部」を構成する実施例1等の「樹脂層」の「軟質塩ビ」の配合比(特には本願明細書の段落【0166】における【表1】参照)と完全に同一であることからしても、本願発明において、「突起部」が「非熱膨張性」である構成に相当する。

引用発明1Aにおいて、「熱膨張性樹脂組成物層」が、「樹脂成分である塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC-1)100重量部」、「熱膨張性黒鉛48重量部」、「無機充填剤である炭酸カルシウム24重量部」、「可塑剤であるジイソデシルフタレート(DIPP)80重量部」と、その他に「Ca-Zn複合安定剤3重量部、熱安定剤であるステアリン酸カルシウム4.5重量部、加工助剤である塩素化ポリエチレン10重量部及びポリメチルメタクリレート20重量部」からなる構成は、本願発明において、「熱膨張性樹脂組成物」が、「樹脂成分100重量部、熱膨張性黒鉛3~300重量部、無機充填材3~200重量部および可塑剤20~200重量部を含」む構成に相当する。

整理すると、本願発明と引用発明1Aとは、

「長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状に突起部と本体部とを含む建材用熱膨張性多層パッキンであって、
前記突起部は樹脂組成物を含み、前記本体部は熱膨張性樹脂組成物を含み、
前記突起部は非熱膨張性であり、
熱膨張性樹脂組成物が、樹脂成分100重量部、熱膨張性黒鉛3~300重量部、無機充填材3~200重量部および可塑剤20~200重量部を含む、
建材用熱膨張性多層パッキン。」

である点で一致するといえる。

そして、本願発明と引用発明1Aとは、以下の点で相違する。

<相違点1>

突起部と本体部との対向面に関し、

本願発明では、「前記突起部の前記本体部との対向面には、当該対向面から突出する突出部が設けられ、前記本体部の前記突起部との対向面には、前記突出部と嵌合する凹部が設けられている」と特定されているのに対し、

引用発明1Aでは、「突起部20」と「本体部10」との「境界線16」を「折線として、接触面積を大きくする」ことにより、「衝撃等が加わった場合でも、熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層の界面の剥離を軽減することができる」ようにしているものの、突起部20の側に「突出部」を、本体部10の側に「突出部と嵌合する凹部」を設けてはいない点。

(2)判断

上記相違点1について判断する。

引用発明1Aは、突起部20を形成する熱可塑性樹脂組成物層と本体部10を形成する熱膨張性樹脂組成物層との界面の剥離を、衝撃等が加わった場合にも軽減することができるよう、境界線16を折線として接触面積を大きくする構成を有しており、突起部20と本体部10との間の接合を強化すること、そのために本体部10と突起部20との界面の形状を工夫することについて、動機付けがある。

ここで、上記第4の2(2)に認定した引用発明2は、熱可塑材の複合押出し成形品であるウェザストリップ1において、シール部11と取付部10との接合部の接合断面積が少なく、接合力が弱くなる場合に、取付部10の壁面に突出する複列の微小凸部23を形成し、シール部11側の材料の中に微小凸部23が入り込んで一体化することで、接合面積を増大させてアンカー効果を持たせ、強い接着力とする構成を有しており、引用発明2の当該構成は、熱可塑材の複合成形品が発泡材料であるか否かを問わず適用でき、複合押出し成形品の用途としては、自動車用ウエザストリップに限らず、建築用シーリング材を含むあらゆる分野に適用可能なものである。

また、上記第4の3(2)に認定した引用発明3は、押し出し形成される複合構造材において、B板上に形成する突起物をアンカーとしてA板とB板とを接合し、B板上の突起物がA板中に入り込んだ形状として、構成部材間の接合力を強大なものとする構成を有しており、引用発明3の当該構成は、使用する樹脂材料について、熱可塑性樹脂から選んだ、ほとんどあらゆる同種又は異種の樹脂の組合せが可能なものである。

引用発明2が有する上述の構成、並びに、引用発明3が有する上述の構成にも示されるとおり、押し出し形成される複合材の接合力を高めるために、一方の部材に微小凸部又は突起物を形成し、該微小凸部又は突起物が他方の部材中に入り込んで、アンカー効果を奏する形状とすることは、周知技術であるところ、引用発明1Aにおいては、同時共押出により形成する突起部20と本体部10との界面の形状を工夫することにより接合を強化する動機付けがあるのだから、引用発明1Aにおいて引用文献2及び引用文献3にも示される上記周知技術を適用し、突起部20と本体部10との界面の一方に微小凸部又は突起物を形成し、該微小凸部又は突起物が他方の部材中に入り込んで、アンカー効果を奏する形状とし、もって上記相違点1に係る本願発明の構成のうち、突起部と本体部との「対向面」のうち一方から「突出する突出部」を設け、他方には当該「突出部と嵌合する凹部」を設けた構成に相当する構成とすることは、当業者であれば容易に想到できた事項である。

その際、引用文献1では熱膨張性樹脂組成物層に関して、「一般に加熱された場合に膨張を開始する熱膨張性樹脂組成物を用いて押出成形を実施することは困難である。」(段落[0004])、「熱膨張性黒鉛を含むポリ塩化ビニル樹脂組成物の押出成形について本発明者らが検討したところ、押出成形により得られる成形品の断面形状が、中心軸を持つ対称的な形状と異なるに従って前記成形品の外観の低下が大きくなる問題点を発見した。」(段落[0006])、「前記熱膨張性黒鉛の添加量は、少なくなると耐火性能及び発泡性が低下する傾向がある。また多くなると押出成形しにくくなり、得られた成形体の表面性が悪くなり、機械的物性が低下する傾向がある。」(段落[0033])と記載され、複雑な形状への成形や機械的強度についての留保が付されている一方、熱可塑性樹脂組成物層については、「本発明の建材用熱膨張性多層パッキンは熱可塑性樹脂組成物層を有する。前記建材用熱膨張性多層パッキンの用途に応じて熱可塑性樹脂組成物層を選択することにより、前記建材用熱膨張性多層パッキンに対して多様な機能を付与することができる。」(段落[0017])と記載されるように、選択的に好適な機能を適宜付与可能な位置づけであることを勘案すると、引用発明1Aにおける「本体部10」と「突起部20」のうち、「軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層から形成される熱可塑性樹脂組成物層」であり複雑な形状への成形や機械的強度に関する制約の少ない「突起部20」の側を、微小凸部又は突起物を形成する側と選択することは、当業者が適宜になし得た設計事項程度である。

そして、引用発明1Aにおいて、上記相違点1に係る本願発明の構成を採用したことによる効果も、引用文献1に示される熱可塑性樹脂組成物層と熱膨張性樹脂組成物層との界面の剥離を防止するという課題、引用文献2ないし3にも示されるアンカー効果を奏する形状という周知技術、並びに、引用文献1において熱膨張性樹脂組成物層に付された複雑な形状への成形や機械的強度に関する留保に照らして、事前に予測された範囲を超えるものではない。

したがって、引用発明1Aにおいて、上記相違点1に係る本願発明の構成に至ることは、引用文献2ないし3にも示される周知技術、並びに引用文献1中の示唆に基いて、当業者が容易に想到できた事項である。

2 引用発明1Bを主たる引用発明として

(1)対比

本願発明と引用発明1Bとを対比する。

引用発明1Bにおける「建材用熱膨張性多層パッキンであるタイト材210」は、本願発明における「建材用熱膨張性多層パッキン」に相当し、引用発明1Bの「タイト材210」が「製造の際の同時共押出方向である長手方向に対する垂直面を基準とした断面に、突起部20と本体部10とを含む」構成は、本願発明の「建材用熱膨張性多層パッキン」が「長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状に突起部と本体部とを含む」構成に相当する。

引用発明1Bにおいて、「突起部20」が「軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層から形成される熱可塑性樹脂組成物層」である構成は、本願発明において、「突起部」が「樹脂組成物」を含む構成に相当する。

引用発明1Bにおいて、「本体部10」が「熱膨張性樹脂組成物層」である構成は、本願発明において、「本体部」が「熱膨張性樹脂組成物」を含む構成に相当する。

引用発明1Bにおいて、「突起部20」を形成する「熱可塑性樹脂組成物層」である「軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層」が、「樹脂成分であるポリ塩化ビニル樹脂(PVC)100重量部、無機充填剤である炭酸カルシウム24重量部、可塑剤であるジイソデシルフタレート(DIPP)80重量部、Ca-Zn複合安定剤3重量部、熱安定剤であるステアリン酸カルシウム4.5重量部、加工助剤である塩素化ポリエチレン10重量部及びポリメチルメタクリレート20重量部」からなり、「熱膨張性黒鉛」を含んでいない構成は、引用発明1Bにおける「軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層」の配合比が、本願発明の「突起部」を構成する実施例1等の「樹脂層」の「軟質塩ビ」の配合比(特には本願明細書の段落【0166】における【表1】参照)と完全に同一であることからしても、本願発明において、「突起部」が「非熱膨張性」である構成に相当する。

引用発明1Bにおいて、「熱膨張性樹脂組成物層」が、「樹脂成分である塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC-1)100重量部」、「熱膨張性黒鉛48重量部」、「無機充填剤である炭酸カルシウム24重量部」、「可塑剤であるジイソデシルフタレート(DIPP)80重量部」と、その他に「Ca-Zn複合安定剤3重量部、熱安定剤であるステアリン酸カルシウム4.5重量部、加工助剤である塩素化ポリエチレン10重量部及びポリメチルメタクリレート20重量部」からなる構成は、本願発明において、「熱膨張性樹脂組成物」が、「樹脂成分100重量部、熱膨張性黒鉛3~300重量部、無機充填材3~200重量部および可塑剤20~200重量部を含」む構成に相当する。

整理すると、本願発明と引用発明1Bとは、

「長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状に突起部と本体部とを含む建材用熱膨張性多層パッキンであって、
前記突起部は樹脂組成物を含み、前記本体部は熱膨張性樹脂組成物を含み、
前記突起部は非熱膨張性であり、
熱膨張性樹脂組成物が、樹脂成分100重量部、熱膨張性黒鉛3~300重量部、無機充填材3~200重量部および可塑剤20~200重量部を含む、
建材用熱膨張性多層パッキン。」

である点で一致するといえる。

そして、本願発明と引用発明1Bとは、以下の点で相違する。

<相違点2>

突起部と本体部との対向面に関し、

本願発明では、「前記突起部の前記本体部との対向面には、当該対向面から突出する突出部が設けられ、前記本体部の前記突起部との対向面には、前記突出部と嵌合する凹部が設けられている」と特定されているのに対し、

引用発明1Bでは、「突起部20」と「本体部10」との「境界線16」を「折線として、接触面積を大きくする」ことにより、「衝撃等が加わった場合でも、熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層の界面の剥離を軽減する」ために、「突起部20」と「本体部10」との「境界線」を「折線として、接触面積を大きくしてもよい」ものの、突起部20の側に「突出部」を、本体部10の側に「突出部と嵌合する凹部」を設けてはいない点。

(2)判断

上記相違点2について判断する。

引用発明1Bは、突起部20を形成する熱可塑性樹脂組成物層と本体部10を形成する熱膨張性樹脂組成物層との界面の剥離を、衝撃等が加わった場合にも軽減することができるよう、境界線を折線として接触面積を大きくする選択肢を有しており、突起部20と本体部10との間の接合を強化すること、そのために本体部10と突起部20との界面の形状を工夫することについて、動機付けがある。

このことをふまえて検討すると、本願発明と引用発明1Bとの間の相違点2については、上記1(2)において本願発明と引用発明1Aとの間の相違点1について判断したとおりのことが言える。

したがって、引用発明1Bにおいて、上記相違点2に係る本願発明の構成に至ることは、引用文献2ないし3にも示される周知技術、並びに引用文献1中の示唆に基いて、当業者が容易に想到できた事項である。

3 請求人の主張について

請求人は審判請求書において、本願明細書の段落【0035】にも「熱膨張性黒鉛の添加量は、少なくなると耐火性能および発泡性が低下する傾向がある。また多くなると押出成形しにくくなり、得られた成形体の表面性が悪くなり、機械的物性が低下する傾向がある。」と記載するとおり、熱膨張性黒鉛を含む樹脂は、熱膨張性黒鉛を含まない樹脂に比べると、強度が劣ることが知られており、熱膨張性黒鉛を含む樹脂の場合、組成の異なる樹脂同士の接合面の接合強度が低いという問題のみならず、熱膨張性黒鉛を含む樹脂自体の強度が低下しているという、二重の課題が生じると主張している。そして請求人は、本願発明は、この二重の課題を、非熱膨張性の樹脂組成物を含む部材側に突出部を、熱膨張性樹脂組成物を含む部材側に凹部を設けることにより解決したものであり、逆の場合(非熱膨張性の樹脂組成物を含む部材側に凹部を、熱膨張性樹脂組成物を含む部材側に突出部を設ける)には本願発明のように強固にはならない旨を主張している(審判請求書「3.本願発明が特許されるべき理由」「(a)本願発明の説明」参照)。

そのうえで、請求人は、引用文献1には突起部と本体部のそれぞれに突出部と凹部を設け、それらを嵌合する構造については記載されておらず、また接続強度を向上させる構造が周知技術であることを示すために挙げられた引用文献2,3は、いずれも熱膨張性黒鉛を含有するものではないから、本願発明におけるように突起部を非熱膨張性、本体部を熱膨張性とした上で、突起部側に突出部を設け、本体部側に凹部を設ける構成は、引用文献1に当該周知技術を適用しても導くことはできない旨を主張している(審判請求書「3.本願発明が特許されるべき理由」「(c)本願発明と引用発明との対比」参照)。

しかしながら、本願明細書の記載を検討すると、実施例6においては「熱膨張性樹脂組成物層からなる突起部20」の側に「突出部225」を、「樹脂組成物層からなる本体部10」の側に「凹部215」を設けているとともに(段落【0136】、【0138】及び【図10】参照)、段落【0165】には「○実施例1~8において、本体部10に突出部25,125,225,325が設けられ、突起部20に凹部15,115,215,315が設けられてもよい。」とも記載されており、特に熱膨張性樹脂組成物層の物性との関係に着目して、突出部を設ける場所を選択する記載はない。請求人が審判請求書で参照する、段落【0035】の記載も、熱膨張性黒鉛の添加量の範囲を説明するうえで、機械的物性に言及したにとどまるものであり、「熱膨張性樹脂組成物層からなる突起部20」の側に「突出部225」を設けた実施例6の欠点を示したり、本願明細書が、請求人が主張するところの「二重の課題」を出発点としたものであることを示すものということはできない。そのため、本願明細書の記載を検討したうえで本願発明の技術的意義に戻れば、本願発明は、引用文献1に記載された発明に対して、熱膨張性樹脂組成物層と樹脂組成物層との接着性をさらに高めるために、一方の表面に突出部を設け、他方の表面に突出部と嵌合する凹部を設けたもののうち(特には段落【0004】-【0008】、実施例1-8及び段落【0165】参照)、選択肢の一つであった、本体部が熱膨張性樹脂組成物を含み、突起部が非熱膨張性であり、突起部の側に突出部を設けた、という構成(特には実施例1及び平成31年2月18日付け手続補正後の請求項1を参照)を選択したものであって、当該選択した構成に付随する範囲の効果を奏するものと理解することができる。

そして、本願発明と引用発明1A若しくは引用発明1Bとの対比は、上記1(1)及び上記2(1)に示したとおりであり、引用発明1A若しくは引用発明1Bとの相違点に係る本願発明の構成は、上記1(2)及び上記2(2)に判断したとおり、請求人が主張する選択も含めて、引用文献2ないし3にも示される周知技術、並びに引用文献1中の示唆に基いて、当業者が容易に想到できた事項である。さらに、当該相違点に係る本願発明の構成を選択したことによる効果も、引用文献1ないし3の記載から事前に予測される範囲を超えるものということはできない。

したがって、請求人の主張を考慮しても、上記1(2)及び2(2)の判断を覆すべき事情は見いだせない。

4 まとめ

よって、本願発明は、原査定の理由のとおり、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2ないし3に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2ないし3に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2019-013092

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