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特許拒絶査定不服審判

2019-012946

アフターコロージョン抑制処理方法

審判番号
2019-012946
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-107485外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年09月30日
審決日
2020年12月14日
公報発行日
2021年02月26日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-107485「アフターコロージョン抑制処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月28日出願公開、特開2016-225350、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は平成27年5月27日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年12月14日付け :拒絶理由通知書 平成31年 2月12日   :意見書,手続補正書の提出 令和 元年 7月11日付け :拒絶査定 令和 元年 9月30日   :審判請求書の提出 令和 2年 6月 3日付け :拒絶理由通知書(当審) 令和 2年 8月 6日   :意見書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和元年7月11日付け拒絶査定)の概要は,本願の請求項1~5に係る発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 引用文献1.特開平06-151389号公報 引用文献2.特開2005-353972号公報 引用文献3.特開2007-250942号公報 引用文献4.特表2003-518768号公報 第3 当審拒絶理由通知の概要 当審拒絶理由通知(令和2年6月3日付け拒絶理由通知)の概要は,本願の請求項1~5に係る発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 引用例1.特開平6-151389号公報 引用例2.特開2005-353972号公報 引用例3.特開2007-250942号公報 引用例4.特表2003-518768号公報 なお,上記引用例1~4は,原査定における引用文献1~4と同一である。 第4 本願発明 本願の請求項1~5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」~「本願発明5」という。)は,平成31年2月12日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される発明であり,そのうちの本願発明1は次のとおりである。 「【請求項1】 アルミ配線半導体基板のH2Oプラズマによるアフターコロージョン抑制処理方法であって, a) エッチング処理後のアルミ配線半導体基板を収容した処理室内にアルゴンガスを導入してアルゴンプラズマを生成する工程と, b) 前記アルゴンプラズマが安定した以後に,該アルゴンプラズマ中にH2Oを導入することによりAr-H2Oプラズマとする工程と, を含み,前記アルゴンプラズマ中にH2Oを導入した後でありかつH2Oの導入を停止する前に,前記処理室内へのアルゴンガスの導入を停止する,アフターコロージョン抑制処理方法。」 本願発明2~5は,本願発明1を減縮した発明である。 第5 引用例の記載と引用発明 1.引用例1について (1)引用例1の記載事項 当審拒絶理由通知で引用された引用例1には,図5とともに次の記載がある。(下線は当審による。以下同じ。) 「【0002】 【従来の技術】LSI等の半導体装置の配線材料として,例えばシリコン(Si)や銅(Cu)等を含むアルミニウム系合金膜が多く用いられている。このようなアルミニウム系合金膜で微細パターンを形成するには,塩素系のエッチングガスを用いたドライエッチングが行われる。塩素を含むエッチングガスを用いてドライエッチングを行った場合には,塩素がアルミニウム系合金膜の表面等に残留して,アルミニウム系合金膜を腐食する(いわゆる,コロージョンまたは虫食い)。このため,通常,塩素系のエッチングガスによるドライエッチング後には,フッ素系ガスを用いたプラズマ処理を行って,残留している塩素をフッ素で置換することにより,アルミニウム系合金膜の腐食を防いでいる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来のフッ素系ガスによる後処理だけでは,コロージョンを十分に防止することができない。またレジスト剥離とフッ素系ガスによる後処理とを併用してもまだ不十分である。さらに上記方法に熱処理を併用した場合には,下地の絶縁膜とのエッチング選択比が取れなくなる。 【0004】そこでドライエッチング終了後に,H2Oを添加したガス系で後処理を行う方法が提案されている。この方法では,塩素系のエッチングガスを用いてドライエッチングした後,酸素(O2 )とH2Oとの混合ガスを用いてダウンフローを行うことにより,残留塩素を低減してアフターコロージョンを抑制しようとしている。ところが,アフターコロージョンは残留塩素とH2Oとにより生成される塩酸によってアルミニウムが溶け出す反応であるため,残留塩素が多く存在しているウエハをH2 Oを含む雰囲気にさらすことは,アフターコロージョンを抑制する観点から好ましくない。このように残留塩素が存在するウエハをH2Oを含む雰囲気にさらすとアフターコロージョンは発生し,アルミニウム系金属で形成されている配線の信頼性は著しく低下する。また後処理を行った後にも,H2Oがウエハ上に残留するので,アフターコロージョンを誘発する可能性が大きい。」 「【0008】本発明は,コロージョンの発生を抑えるのに優れたドライエッチングの後処理方法を提供することを目的とする。」 「【0045】次に第2の実施例の別の具体例として,酸素と水素とより組成されるガスを含まないガスに希ガスのアルゴン(Ar)ガスを用いた事例を説明する。前記図2で説明したと同様にして,塩素を含むエッチングガスを用いて,Al-Si合金膜等をエッチングして,配線パターン(18)を形成する。 【0046】次いで,上記処理を行ったウエハ(11)をアッシング装置のチェンバー(図示せず)に移す。そしてチェンバー内に,アンモニアを含まないガスとして,例えばアルゴン(Ar)ガスを供給し,放電を開始する。上記アルゴンガスは,例えば200sccmの流量で供給する。また放電条件としては,例えば,チェンバー内圧力を133Paに設定し,マイクロ波電力を400mAに設定する。アルゴンガスの放電ではレジストパターン(17)はエッチングされない。 【0047】その後,放電が安定してから,アルゴンガスによる放電を継続した状態で,チェンバー内にH2Oガスと酸素(O2 )ガスとを供給する。このときの条件としては,例えば,酸素の流量を500sccm,アルゴンの流量を200sccm,H2 Oの流量を30sccmに設定し,チェンバー内圧力を133Pa,マイクロ波電力を400mAに設定する。この状態では,図7の(1)に示すように,酸素プラズマによって,レジストパターン17の2点鎖線で示す部分が徐々にアッシングされるとともに,H2Oの放電分解によって,水素ラジカル31とOHラジカル(図示せず)とが発生する。そしてこの水素ラジカル31(またはOHラジカル)と残留塩素19とが反応して塩化水素(HCl)32を生成する。塩化水素32は蒸気圧が高いので蒸発する。したがって,ウエハ11上より残留塩素19は除去される。 【0048】さらに放電は継続される。この状態でH2Oガスの供給を停止する。その後のガス供給条件としては,例えば流量が500sccmの酸素(O2 )ガスと流量が200sccmのアルゴンガスとを供給し,放電条件としては,例えば,チェンバー内圧力を133Paに設定し,マイクロ波電力を400mAに設定する。この状態では,図7の(2)に示すように,酸素プラズマによって,レジストパターン17(2点鎖線で示す部分)は除去される。またチェンバー内に吸着しているH2 Oガスは酸素プラズマによって離脱させられ,チェンバー内より完全に除去される。その後放電を停止する。 【0049】放電を停止した状態では,チェンバー内にH2Oは残留していないので,次にウエハを処理する場合に,たとえ残留塩素を多く付着したウエハが搬送されてきても,チェンバー内で残留塩素が反応して塩酸を生成することはない。したがって,アフターコロージョンは発生しない。またアルゴンガスを導入したことにより,安定した放電が行える。さらに,H2Oガスを供給する前の放電では,アルゴンガスしか供給していないので,レジスト層は除去されない。したがって,レジスト層が薄い場合でも,アンモニアガスを供給するまでレジスト層は残っている。このため,レジスト層が除去されて残留塩素が拡散することなく,レジスト層に付着している残留塩素をH2 Oガスによって完全に除去することが可能になる。 【0050】上記説明では,H2Oガスを含まないガスにアルゴンガスを用いたが,例えば,他の希ガスとして,例えばヘリウム(He)やネオン(Ne)等を用いることも可能である。また2種以上の希ガスを混合して用いることも可能である。 【0051】また上記各実施例では,予めアンモニアを含まないガスまたは酸素と水素とより組成されるガスを含まないガスで放電を発生させるため,ウエハは放電によって加熱される。このため,残留塩素の除去反応は促進される。また残留塩素の除去反応で生成された反応生成物がウエハ上より蒸発されやすくなる。」 引用例1の図5として,以下の図面が示されている。 (2)摘記事項の整理 以上によれば,引用例1には以下の事項が記載されているものと理解できる。 ア 引用例1には,「第2の実施例の別の具体例」として,以下の(a)~(e)の工程を順に行うことが記載されている。 (a)塩素を含むエッチングガスを用いて,Al-Si合金膜等をエッチングして,配線パターン(18)を形成すること。その後,当該配線パターン(18)を形成したウエハ(11)をアッシング装置のチェンバーに移すこと。(段落[0045]~[0046]) (b)チェンバー内にアルゴン(Ar)ガスを供給し,放電を開始すること。その際,アルゴンガスの流量は200sccm,チェンバー内圧力を133Pa,マイクロ波電力を400mAとすること。(段落[0046]) (c)放電が安定してから,アルゴンガスによる放電を継続した状態で,チェンバー内にH2Oガスと酸素(O2)ガスとを供給すること。その際,酸素の流量を500sccm,アルゴンの流量を200sccm,H2Oの流量を30sccm,チェンバー内圧力を133Pa,マイクロ波電力を400mAとすること。これにより,酸素プラズマと,H2Oの放電分解による水素ラジカル31とOHラジカルを発生させること。(段落[0047]) (d)放電を継続した状態でH2Oガスの供給を停止し,酸素(O2)ガス500sccmとアルゴンガス200sccmとを供給すること。その際,チャンバー内圧力133Pa,マイクロ波電力400mAとすること。これにより,レジストパターン及びチェンバー内に吸着しているH2Oガスが除去されること。(段落[0048]) (e)放電を停止すること。(段落[0048]) イ 引用例1の段落[0004],[0008],[0047]~[0048]の記載から,引用例1には,ウエハ上に残留する塩素やH2Oによるアフターコロージョンの発生を抑える処理方法が開示されていると理解できる。 ウ 引用例1の段落[0047]には,上記H2Oの放電分解による水素ラジカル31(またはOHラジカル)と,残留塩素が反応して塩化水素32を生成することで,ウエハ上より残留塩素が除去されることが記載されている。当該記載と上記ア(a)及びイから,引用例1には,Al-Si合金膜等をエッチングした配線パターンが形成されたウエハのH2Oの放電分解による水素ラジカルまたはOHラジカルによるアフターコロージョンの発生を抑える処理方法が開示されていると理解できる。 エ 上記ア(b)~(d)において,チェンバー内圧力及びマイクロ波電力が一定であること,及び,引用例1の第2の実施例のタイミング図(図5)から,上記第2の実施例の別の具体例において,放電は上記ア(b)で開始され,上記ア(e)で停止するものと理解できる。 (3)引用発明1 上記ア~エによれば,引用例1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「Al-Si合金膜等をエッチングした配線パターンが形成されたウエハのH2Oの放電分解による水素ラジカルまたはOHラジカルによるアフターコロージョンの発生を抑える処理方法であって, 1)前記Al-Si合金膜等のエッチング処理後の前記ウエハをアッシング装置のチェンバーに移すこと, 2)前記チェンバー内にアルゴンガスを供給し,放電を開始すること, 3)前記放電が安定してから,アルゴンガスによる放電を継続した状態で,前記チェンバー内にH2Oガスと酸素ガスとを供給し,酸素プラズマと,H2Oの放電分解による水素ラジカルとOHラジカルを発生させること 4)前記3)の後,前記放電を継続した状態でH2Oガスの供給を停止し,さらに,酸素ガスとアルゴンガスとを供給すること 5)前記4)の後,前記放電を停止すること を含む,アフターコロージョンの発生を抑える処理方法。」 2.引用例2の記載 ア 当審拒絶理由通知で引用された引用例2には,次の記載がある。 「【0036】 (第3の実施例) 本発明の第3実施例に係る発明の効果を示す測定の結果を図9に示す。図9は本発明に係る希ガスを含む気体のプラズマを図4に示すプラズマ処理装置を用いて発生させ,その後にプラズマの発生用に用いた希ガスを含む気体をプラズマ処理に適した気体に置換してプラズマ処理を行った場合の一例であって,アルゴン(Ar)に対してマイクロ波導入することによりプラズマを発生させた後にアルゴンを酸素に置換して処理を行った場合に,被処理物30へ照射されるマイクロ波の強度を示している。図9に示されるように,Arを用いて被処理物へのマイクロ波の照射を抑制しながらプラズマを発生して表面波プラズマを生成した後に供給するガスを酸素に切替えることで,被処理物へのマイクロ波の照射は発生しないままに酸素によるプラズマ処理を行うことが可能である。 【0037】 上記のような,希ガスを用いてプラズマを発生させた後に,処理の目的に応じたそれ以外のガスに置換してプラズマ処理を行う場合の処理手順を図1に示す。図1に示すように,所定流量の処理の目的に応じたガスと希ガスとの混合気体を真空容器21に処理用ガスの供給手段28により導入し,真空容器21内を処理の目的に適した所定圧力に保持した状態でマイクロ波をマイクロ波発生源26からマイクロ波導波経路23を通じて導入し,プラズマを発生させる。その後,マイクロ波発生源26の出力が安定し,生成した表面波プラズマが安定した時点で,導入するガスを希ガスから処理の目的に応じたガスに変更して,所定の時間だけ,又はプラズマの発光状態等により検知された処理の終点に応じた時間だけ,プラズマを保持することにより被処理物30のプラズマ処理を行った後,マイクロ波の導入を停止することでプラズマ処理を完了する。 【0038】 この際,自動動作のインピーダンス調整器24を用いている場合には,希ガスと処理の目的に応じた処理用ガスとで整合点が一般には異なるため,処理用ガスの種類によってはその整合点に至る以前に表面波プラズマの状態が崩れて被処理物にマイクロ波が照射される場合がある。そのような場合には,予めインピーダンス整合器を処理用ガスに適した整合点に固定して置き,ガスの切替え後に自動動作に切替えることで,着火時とガスの切替え時のいずれにも被処理物へのマイクロ波の照射が生じることなく切替えることが可能である。 【0039】 希ガスを用いて被処理物へのマイクロ波の照射を抑制しながらプラズマを着火した後,処理の目的の応じた処理用のガスに切替えることで,希ガスを混合したままで処理を行う場合と比較して,処理ガスの分圧が増加するためにプラズマ処理の効率を向上することが可能となる。 【0040】 また,着火に用いるガスとして,希ガスと処理用ガスの混合気体を使用しても同様の効果を得ることが可能である。 【0041】 半導体装置の製造工程においてRIEエッチングのマスクに用いたフォトレジストのアッシングを表面波プラズマ装置により行うにあたり,図1に示した手順に従い,図9に示したものと同様に,アルゴンを用いてプラズマを発生させ,約1秒後に酸素に切替えて処理を行ったところ,通常の酸素でのプラズマ・アッシングと比較して同等のアッシングレートが得られると共に,一連の製造工程後の製品歩留まりと製品寿命において一定の向上がみられ,希ガスであるアルゴンを使用したプラズマの発生によるマイクロ波の抑制の効果が確認された。」 イ 上記によれば,引用例2には次の技術的事項が記載されているものと理解できる。 ・アルゴンに対してマイクロ波を導入してプラズマを発生させ,プラズマが安定した時点で導入するガスをアルゴンから酸素に切り替えて,フォトレジストのアッシング処理を行うこと。それにより,希ガスを混合したまま処理を行う場合と比較してプラズマ処理の効率を向上することが可能となること。 3.引用例3の記載 ア 当審拒絶理由通知で引用された引用例3には,次の記載がある。 「【0016】 第2の実施の形態として,Arガスにてプラズマを安定させ,しかる後に,ArガスとCH4ガスとの混合ガス,および,Cl2とBCl3との混合ガスをチャンバー内に導入する場合について説明する。具体的な工程は,以下の(2-1)から(2-7)の順とした。 (2-1)試料をマイクロ波プラズマエッチング装置のチャンバー内に入れた後,先ず通常条件で,ArガスとCH4ガスとの混合ガス,および,Cl2とBCl3との混合ガスによるプラズマを発生させる。 (2-2)上記(2-1)のプラズマが安定した後,30秒間プラズマエッチングを行う。 (2-3)次に,一旦プラズマを停止させ,プラズマエッチング工程を中断させる。 (2-4)中断後,直ちに,Cl2およびBCl3の混合ガスを停止すると共に,Arガスをチャンバー内に導入し,その流量が安定するまで待つ。 (2-5)Arガスの流量が安定したら,プラズマを発生させる。 (2-6)プラズマが発生したら,ArガスとCH4ガスとの混合ガス,および,Cl2とBCl3との混合ガスを再びチャンバー内に流して,プラズマエッチング工程を再開すると共に,プラズマ着火に用いたArガスを停止する。 (2-7)上記(2-2)と(2-6)におけるエッチング時間の合計が所定時間に達したら,当該プラズマエッチング工程を終了させる。 【0017】 上記プラズマエッチング工程においては,120sccmのCl2,30sccmのBCl3,および,150sccmのArとCH4との混合ガスを流し,処理室ガス圧力は1.0Paで試料をエッチングした。さらに,工程再開の際のプラズマ発生においては,150sccmのArを流し,処理室ガス圧力は1.0Paでプラズマを着火した。また,試料としては,層間絶縁膜上に形成したTiN(25nm)/Al-Cu(500nm)の積層構造上にレジストマスクを形成させたものを用いた。」 イ 上記によれば,引用例3には次の技術的事項が記載されているものと理解できる。 ・Arガスをチャンバー内に導入して流量が安定するまで待ち,Arガスの流量が安定したところでプラズマを発生させ,その後,プラズマエッチングに用いる混合ガスをチャンバー内に流してプラズマエッチングを再開するとともに,プラズマ着火に用いたArガスを停止すること。 4.引用例4の記載 当審拒絶理由通知で引用された引用例4には,次の記載がある。 「【0030】 剥離ガスによって生成されたプラズマは,この例においてはフォトレジストマスクであるエッチングマスク(ステップ426)と,ほとんど又はすべての残留側壁パッシベーション(ステップ428)とを剥離させ取り去る。エッチングチャンバのプラズマソースにより生成された励起酸素ラジカルは,有機フォトレジスト層の剥離において主要なコンポーネントとなる。酸素プラズマは,炭素ベースの残留物をエッチングチャンバ34の壁から取り除くことが分かっている(ステップ430)。その結果,エッチングチャンバ34内のウエハからフォトレジストを剥離させる間に,エッチングチャンバ34はエッチングチャンバ自体をクリーニングする。このクリーニングにより,追加のクリーニングを行う必要性が減少する。剥離ガスの流入は,その後,中断される(ステップ432)。」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点 本願発明1と引用発明1を比較する。 ア 引用発明1における「Al-Si合金膜等をエッチングした配線パターンが形成されたウエハ」及び「アッシング装置のチェンバー」が,本願発明1の「アルミ配線半導体基板」及び「処理室」に相当する。また,引用発明1における「H2Oの放電分解による水素ラジカルまたはOHラジカル」が,本願発明1における「H2Oプラズマ」に相当する。 イ 上記アから,引用発明1における「Al-Si合金膜等をエッチングした配線パターンが形成されたウエハのH2Oの放電分解による水素ラジカルまたはOHラジカルによるアフターコロージョンの発生を抑える処理方法」が,本願発明1における「アルミ配線半導体基板のH2Oプラズマによるアフターコロージョン抑制処理方法」に相当する。 ウ 引用発明1における「1)前記Al-Si合金膜等のエッチング処理後の前記ウエハをアッシング装置のチェンバーに移すこと」及び「2)前記チェンバー内にアルゴンガスを供給し,放電を開始すること」が,本願発明1における「a) エッチング処理後のアルミ配線半導体基板を収容した処理室内にアルゴンガスを導入してアルゴンプラズマを生成する工程」に相当する。 エ 引用発明1における「3)前記放電が安定してから,前記チェンバー内にH2Oガスと酸素ガスとを供給し,酸素プラズマと,H2Oの放電分解による水素ラジカルとOHラジカルを発生させること」は,本願発明1における「b) 前記アルゴンプラズマが安定した以後に,該アルゴンプラズマ中にH2Oを導入することによりAr-H2Oプラズマとする工程」に相当する。 上記ア~エから,本願発明1と引用発明1の一致点,相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「アルミ配線半導体基板のH2Oプラズマによるアフターコロージョン抑制処理方法であって, a) エッチング処理後のアルミ配線半導体基板を収容した処理室内にアルゴンガスを導入してアルゴンプラズマを生成する工程と, b) 前記アルゴンプラズマが安定した以後に,該アルゴンプラズマ中にH2Oを導入することによりAr-H2Oプラズマとする工程と, を含む,アフターコロージョン抑制処理方法。」である点。 (相違点) 本願発明1では,「前記アルゴンプラズマ中にH2Oを導入した後でありかつH2Oの導入を停止する前に,前記処理室内へのアルゴンガスの導入を停止する」のに対し,引用発明1では,H2Oガスの供給停止後もアルゴンガスを供給している点。 (2)相違点に対する判断 引用例2及び引用例3に記載された技術的事項(第5の2.イ及び3.イ参照)や下記の周知例1の記載によれば,プラズマ処理において,アルゴンガスをチャンバー内に供給してプラズマを着火させ,当該プラズマ中に処理ガスを供給した後,処理ガスの供給を停止するより前にプラズマ着火に用いたアルゴンガスの供給を停止する技術は,当業者の周知技術であったと認められる。 周知例1:国際公開第2011/030721号 上記周知例1には次の記載がある。 「[0014]次いでプラズマ着火工程として,ガス供給部81から真空槽89内に希ガスを供給する。 希ガスは,ここではArガスを使用する。本発明の希ガスは,価格や入手しやすさ等の理由からArガスが望ましいが,これに限定されずHe,Ne,Kr,Xe等のガスを使用してもよい。 調圧バルブ82aの排気コンダクタンスは制御装置98により制御され,真空層89内は所定の圧力に調圧されている。このときの圧力は,RFアンテナ83の構造や真空槽89の容積,希ガスの供給流量等により変わるが,生成直後のプラズマが最も安定する3Pa~10Paの範囲であることが望ましい(A~BはA以上B以下を示す)。 真空槽89内の圧力が安定したのち,プラズマ用交流電源84を起動し,RFアンテナ83に交流電流を流し,RFアンテナ83からRF導入窓93を透過して真空槽89内に電波を放射させ,希ガスのプラズマを生成させる。」 「[0017]真空槽89内の圧力が安定したのち,プラズマ処理工程として,ここでは真空槽89内への希ガスの供給流量を減少させ,反応ガスの供給を開始し,反応ガスを希ガスのプラズマと接触させて,反応ガスをプラズマ化し,反応ガスのイオンやラジカル等の活性種を生成して,基板のIr薄膜に接触させる。 反応ガスは,ここではCl2ガスとO2ガスとの混合ガスを使用する。 本発明の反応ガスはこれに限定されず,フッ素と,塩素と,臭素と,ヨウ素とからなる群より選択されるいずれか1種類のハロゲン元素を化学構造中に含むハロゲン系ガス等の,基板をエッチングできるガスを含有してもよい。 ここでは希ガスの供給流量を減少させたのち,反応ガスの供給を開始したが,反応ガスの供給を開始したのち,希ガスの供給流量を減少させてもよい。 エッチングに希ガスが不要の場合には,希ガスの供給流量をゼロにしてもよい。 また,希ガスの供給流量は減少させずに,調圧バルブ82aの排気コンダクタンスを増加させることにより,反応ガスの供給開始後も真空槽89内が所定の圧力になるように制御してもよい。」 一方,引用例1の段落[0048]の記載に照らすと,引用発明1は,H2Oガスの供給を停止した後も酸素ガスとアルゴンガスを供給することで,レジストパターン及び残留するH2Oの除去を行うものであると認められる。そして,H2O供給停止後に酸素ガスとアルゴンガスを供給して処理を行うことが一連の過程として特定された引用発明1において,当該過程から離れて,H2Oの供給停止よりも前においてアルゴンガスの供給を停止する動機を,引用例1の記載全体から読み取ることはできない。また,引用例2~3及び周知例1からも,引用発明1で特定される一連の過程のうち,H2Oの供給停止よりも前にアルゴンガスの供給を停止することの示唆を見いだすことはできない。 そうすると,上述のとおりアルゴンガスと処理ガスを用いたプラズマ処理において,プラズマ処理ガスの供給停止より前にアルゴンガスの供給を停止する技術が周知であったとしても,引用発明1においてH2O供給停止よりも前にアルゴンガスの供給を停止すること,すなわち上記相違点に係る構成を想到することが,上記周知技術に照らし当業者にとって容易であったとはいえない。また,上記引用例4にも,上記相違点に係る構成とすることについての記載や示唆は見当たらない。 したがって,本願発明1は,引用発明1及び引用例2~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 2.本願発明2~5について 本願発明2~5も,上記相違点に係る構成,すなわち,本願発明1の「前記アルゴンプラズマ中にH2Oを導入した後でありかつH2Oの導入を停止する前に,前記処理室内へのアルゴンガスの導入を停止する」との構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,引用発明1及び引用例2~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定についての判断 原査定における引用文献1~4は当審拒絶理由通知における引用例1~4と同一であるから,上記第6の2.及び3.で検討のとおり,本願発明1~5は引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。 第8 結言 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。

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2019-012946

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