特許拒絶査定不服審判
2024-015722
クランクシャフトとトーショナルダンパーとの固定構造
- 審判番号
- 2024-015722
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-500953
- 請求日
- 2024年10月01日
- 審決日
- 2025年10月03日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】NOK株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人秀和特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 孝明
- 審判官 中屋 裕一郎
- 審判官 鎌田 哲生
- 分類
- P18 .121-Z (F16D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2023-500953「クランクシャフトとトーショナルダンパーとの固定構造」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 8月25日国際公開、WO2022/177001〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2022年(令和4年)2月21日(優先権主張 令和3年2月22日)を国際出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和6年 3月25日付け:拒絶理由通知
同 年 5月31日 :意見書、及び手続補正書の提出
同 年 6月28日付け:拒絶査定
同 年10月 1日 :審判請求
第2 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明は、令和6年5月31日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項2】
クランクシャフトと、前記クランクシャフトの先端部分が挿通される挿通孔を有するトーショナルダンパーとの固定構造であって、
前記クランクシャフトの先端部分の外周面には、前記クランクシャフトの回転中心軸線に対して平行に伸びる嵌合溝が設けられ、
前記挿通孔の内周面には、前記回転中心軸線に対して平行に、前記挿通孔のうち前記回転中心軸線方向に対して一部の領域に、前記嵌合溝に嵌合する嵌合突起が設けられており、前記挿通孔の内径の寸法公差は0.03mm未満であることを特徴とするクランクシャフトとトーショナルダンパーとの固定構造。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由2のうち、本願の請求項2に係る理由は、概略、次のとおりのものである。
本願の請求項2に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2009-236300号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1の段落【0029】~【0044】には、図面とともに以下の記載がある(下線は、当審合議体が付した。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、軸体に取り付けた部品をその筒状の部品取付け面の軸方向一端側の突当て部に突き当てるとともに凹凸係合により周方向の特定位置に位置決めするようにしたトルク伝達部品の取付け構造に関する。」
「【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係るトルク伝達部品の取付け構造を示すその断面図で、本発明をクランク軸へのクランクスプロケットおよびクランクプーリの取付け構造に適用した場合を例示している。図2は、そのクランクプーリの要部拡大斜視図であり、図3は、そのクランク軸の部品取付け面付近の拡大斜視図である。」
「【0031】
図1に示すように、本実施形態のトルク伝達部品の取付け構造は、軸体であるクランク軸11と、そのクランク軸11に取り付けられるトルク伝達部品であるクランクスプロケット12およびクランクプーリ13と、それらクランクスプロケット12およびクランクプーリ13をクランク軸11に締結固定するための締結部材14と、を備えている。」
【0032】
クランク軸11は、図1に示す軸端部の近傍(図1中の右側)および反対側の端部近傍で図示しない車両用内燃機関のエンジンブロックに回転自在に支持されており、図1中に示す端部側に、円筒状の部品取付け面11aと、その部品取付け面11a上に取り付けられたクランクスプロケット12に対して部品取付け面11aの軸方向一方側(図1中の右側)から突き当たる突当て部11bを有している。また、クランク軸11の突当て部11bと円筒状の部品取付け面11aとの間には、クランク軸11の回転中心軸線CLと直交する段付面11cが形成されている。」
「【0034】
クランクプーリ13は、内燃機関の補機類、例えば、オルタネータ、オイルポンプ、エアコン用コンプレッサ、パワーステアリング用オイルポンプ等をベルト伝動により駆動するもので、部品取付け面11aの軸方向他方側(図1中の左側)からクランクスプロケット12に突き当たるようクランク軸11の部品取付け面11a上に取り付けられた第2のトルク伝達部品となっている。このクランクプーリ13は、エンジンブロックの外方で図示しないVリブドベルト16(無端の回転伝動要素)が巻き掛けられた)プーリ部13pと、クランク軸11の部品取付け面11aに嵌合する円筒状のハブ部13hと、プーリ部13pとハブ部13hの間に介装されたゴム弾性体13mと、をそれぞれ有している。詳細を図示しないが、このVリブドベルト16は補機類の駆動用プーリにそれぞれ巻き掛けられている。すなわち、クランクプーリ13は、クランク軸11の回転をVリブドベルト16の一定軌道に沿った回動のための動力としてVリブドベルト16に伝達する動力伝達用のプーリとなっている。」
「【0038】
一方、クランク軸11は、部品取付け面11aの図中右端側(軸方向一方側)には、クランクスプロケット12に凹凸係合してクランクスプロケット12を回転方向に位置決めする第1の位置決め部21を有し、部品取付け面11aの図中左端側(軸方向他方側)には、クランクプーリ13に凹凸係合してクランクプーリ13を回転方向に位置決めする第2の位置決め部22を有している。」
「【0041】
クランクプーリ13と第2の位置決め部22とは、互いに部品取付け面11aの径方向に凹凸をなして係合しており、具体的には、第2の位置決め部22は、部品取付け面11aの半径方向の内側に位置する凹状をなし、クランクプーリ13は、凹状の第2の位置決め部22に嵌合する凸部24を有している。
【0042】
本実施形態では、第2の位置決め部22は、部品取付け面11aの半径方向の外側に向かって開放された凹状をなし、クランクプーリ13の凸部24は、凹状の第2の位置決め部22に嵌合するよう、クランクプーリ13の内周面から半径方向の内方に向かって突出している。
【0043】
また、部品取付け面11aの軸方向におけるクランクスプロケット12と第1の位置決め部21との係合深さe1は、部品取付け面11aの軸方向におけるクランクプーリ13と第2の位置決め部22との係合深さe2よりも大きく(e1>e2)、クランクスプロケット12が第1の位置決め部21から離脱した状態でクランクプーリ13が部品取付け面11aに取り付けられるとき、クランクプーリ13がクランクスプロケット12に突き当たることによって、クランクプーリ13が第2の位置決め部22に係合可能な位置まで軸方向移動することが規制されるようになっている。
【0044】
すなわち、クランクスプロケット12が第1の位置決め部21から離脱した状態でクランクプーリ13が部品取付け面11aに取り付けられるとき、クランクプーリ13がクランクスプロケット12に突き当たって第2の位置決め部22への係合を規制されるようになっている。」
以上の記載及び図面から、クランクプーリ13のクランク軸11への取付けに関する構造(以下「取付け構造」という。)について、次のことがいえる。
(1)「クランクプーリ13は」「部品取付け面11aの軸方向他方側(図1中の左側)からクランクスプロケット12に突き当たるようクランク軸11の部品取付け面11a上に取り付けられた第2のトルク伝達部品となって」おり(段落【0034】)、「このクランクプーリ13は」「クランク軸11の部品取付け面11aに嵌合する円筒状のハブ部13h」を有している(段落【0034】)ところ、図1~3から、クランクプーリ13の円筒状のハブ部13hは、その円筒状部分に中空部分を有し、その円筒状部分の中空部分にクランク軸11の部品取付け面11aが嵌合される点が看て取れる。そして、そのクランク軸11の部品取付け面11aは、クランク軸がその先端部に有するものである(段落【0032】、図1、図3)。
また、クランクプーリ13は、プーリ部13pと、前記ハブ部13hと、前記プーリ部13pと前記ハブ部13hの間に介装されたゴム弾性体13mとで構成されている(段落【0034】)。
そして、クランク軸11は回転中心軸線CLを有する(段落【0032】)。
(2)前記クランク軸11の前記部品取付け面11aには、凹状の第2の位置決め部22が設けられている(段落【0038】、【0041】、【0042】)。また、図1、図3から、前記凹状の第2の位置決め部22は、前記部品取付け面11aの外周面に設けられる点が看てとれる。
(3)前記クランクプーリ13は、前記ハブ部13hの前記円筒状部分の中空部分の内周面から突出し、前記凹状の第2の位置決め部22に嵌合する凸部24を有している(段落【0041】、【0042】、図1、図2)。
(4)「また、部品取付け面11aの軸方向におけるクランクスプロケット12と第1の位置決め部21との係合深さe1は、部品取付け面11aの軸方向におけるクランクプーリ13と第2の位置決め部22との係合深さe2よりも大きく(e1>e2)、クランクスプロケット12が第1の位置決め部21から離脱した状態でクランクプーリ13が部品取付け面11aに取り付けられるとき、クランクプーリ13がクランクスプロケット12に突き当たることによって、クランクプーリ13が第2の位置決め部22に係合可能な位置まで軸方向移動することが規制されるようになっている。」(段落【0043】)との記載から、次の事項がいえる。
ア 前記凸部24と前記凹状の第2の位置決め部22は前記部品取付け面11aの軸方向に係合深さe2を有する。
イ 前記クランクプーリ13が前記部品取付け面11aに取り付けられ、軸方向に移動することにより、前記クランクプーリ13の前記凸部24と前記凹状の第2の位置決め部22とが係合するものである。
ウ クランクスプロケット12が第1の位置決め部21から離脱した状態で前記クランクプーリ13が前記部品取付け面11aに取り付けられるとき、前記クランクプーリ13が前記クランクスプロケット12に突き当たることによって、前記クランクプーリ13が前記第2の位置決め部22に係合可能な位置までクランク軸の軸方向に移動することが規制される。
ここで、上記イ及びウに関し、“ランクプーリ13が部品取付け面11aに取り付けられる”ことは、上記(1)に鑑みれば、クランクプーリ13が、“そのハブ部13hの円筒状部分の中空部分を部品取付け面11aに嵌合させる”ことといえる。
2 引用文献1に記載された発明
上記(1)~(4)を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
[引用発明]
クランクプーリ13のクランク軸11への取付け構造であって、
前記クランクプーリ13の円筒状のハブ部13hは、その円筒状部分の中空部分に、クランク軸11がその先端部に有する部品取付け面11aが嵌合され、
前記クランクプーリ13は、プーリ部13pと、前記ハブ部13hと、前記プーリ部13pと前記ハブ部13hの間に介装されたゴム弾性体13mとで構成され、
前記クランク軸11は回転中心軸線CLを有し、
前記クランク軸11の前記部品取付け面11aの外周面には凹状の第2の位置決め部22が設けられ、
前記クランクプーリ13は、前記ハブ部13hの前記円筒状部分の中空部分の内周面から突出し、前記凹状の第2の位置決め部22に嵌合する凸部24を有し、
前記凸部24と前記凹状の第2の位置決め部22は前記部品取付け面11aの軸方向に係合深さe2を有し、
前記クランクプーリ13を、その前記ハブ部13hの前記円筒状部分の中空部分を前記部品取付け面11aに嵌合させ、軸方向に移動させることにより、前記クランクプーリ13の前記凸部24と前記凹状の第2の位置決め部22とが係合するものであり、
クランクスプロケット12が第1の位置決め部21から離脱した状態で、前記クランクプーリ13が、その前記ハブ部13hの前記円筒状部分の中空部分を前記部品取付け面11aに嵌合させるとき、前記クランクプーリ13が前記クランクスプロケット12に突き当たることによって、前記クランクプーリ13が第2の位置決め部22に係合可能な位置まで前記軸方向に移動することが規制される、
前記クランクプーリ13の前記クランク軸11への取付け構造。
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
1 後者の「クランク軸11」は、前者の「クランクシャフト」に相当する。
また、後者の「クランク軸11」の「部品取付け面11a」が設けられた部分は“クランク軸11の先端部”に当たるから、後者の「クランク軸11がその先端部に有する円筒状の部品取付け面11aが嵌合され」ることは、前者の「前記クランクシャフトの先端部分が挿通される」ことに相当し、後者の「円筒状のハブ部13h」の「円筒状部分の中空部分」が前者の「挿通孔」に相当する。
そして、後者の「クランクプーリ13」は「プーリ部13pと、前記ハブ部13hと、前記プーリ部13pと前記ハブ部13hの間に介装されたゴム弾性体13mとで構成され」るものであるところ、プーリ部13pとハブ部13hの間に介装されたゴム弾性体13mにより回転方向の振動を減衰する機能が果たされることは明らかだから、後者の「クランクプーリ13」は、前者の「トーショナルダンパー」に相当し、後者において、クランクプーリ13の「円筒状のハブ部13h」に「円筒状部分の中空部分」があることは、前者において、トーショナルダンパーが「挿通孔」を「有する」ことに相当する。
そうすると、後者の「クランクプーリ13のクランク軸11への取付け構造」は、前者の「クランクシャフトと」、「トーショナルダンパーとの固定構造」に相当する。
2 後者の「前記クランク軸11の前記部品取付け面11aの外周面」は、前者の「前記クランクシャフトの先端部分の外周面」に相当し、後者の「凹状の第2の位置決め部22」は前者の「嵌合溝」に相当する。
3 後者の「前記ハブ部13hの前記円筒状部分の中空部分の内周面」は、前者の「前記挿通孔の内周面」に相当し、後者の「凸部24」は前者の「嵌合突起」に相当する。また、後者の「クランクプーリ13」が「前記ハブ部13hの前記円筒状部分の中空部分の内周面から突出」する「凸部24を有する」ことは、前者の「前記挿通孔の内周面には」「嵌合突起が設けられて」いることに相当する。
4 後者は「前記凸部24と前記凹状の第2の位置決め部22は軸方向に係合深さe2を有し」、「前記クランクプーリ13を、その前記ハブ部13hの前記円筒状部分の中空部分を前記部品取付け面11に嵌合させ、軸方向に移動させることにより、前記クランクプーリ13の前記凸部24と前記凹状の第2の位置決め部22とが係合するもの」であるが、「クランクスプロケット12が第1の位置決め部21から離脱した状態で、前記クランクプーリ13が、その前記ハブ部13hの前記円筒状部分の中空部分を前記部品取付け面11に嵌合させるとき、前記クランクプーリ13が前記クランクスプロケット12に突き当たることによって、前記クランクプーリ13が第2の位置決め部22に係合可能な位置まで前記軸方向に移動することが規制される」という構成を有する。
そして、当該構成に関し、「前記クランクプーリ13が第2の位置決め部22に係合可能な位置まで前記軸方向に移動することが規制され」たとき、すなわち「凸部24」と「凹状の第2の位置決め部22」との係合が規制されたときは、クランクプーリ13はすでに“軸方向に所定の長さ”を移動して、そのハブ部13hの円筒状部分の中空部分が部品取付け面11aに対して“所定の嵌合方向長さ”に亘り嵌合した状態にあるが、このような状態においてもなお「凸部24」と「凹状の第2の位置決め部22」との係合が規制されることから、ハブ部13hの円筒状部分の中空部分において、“所定の嵌合方向長さ”に亘る部分には凸部24が設けられていないこと、すなわち、ハブ部13hの円筒状部分の中空部分において、全嵌合方向長さに亘る部分には凸部24が設けられていないことが理解できる。
そして、後者において、クランクプーリ13のハブ部13hの円筒状部分の中空部分が部品取付け面11a嵌合する際には、その嵌合方向は、「軸方向」、すなわち「クランク軸11」の「回転中心軸線CL」に一致し、後者の「クランク軸11」の「回転中心軸線CL」は、前者の「クランクシャフト」の「回転中心軸線方向」に相当する。
そうすると、後者において「クランクスプロケット12が第1の位置決め部21から離脱した状態で、前記クランクプーリ13が、その前記ハブ部13hの前記円筒状部分の中空部分を前記部品取付け面11に嵌合させるとき、前記クランクプーリ13が前記クランクスプロケット12に突き当たることによって、前記クランクプーリ13が第2の位置決め部22に係合可能な位置まで軸方向移動することが規制される」という構成は、前者の「前記挿通孔のうち前記回転中心軸線方向に対して一部の領域に」、「嵌合突起が設けられ」るという構成に相当するといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「クランクシャフトと、前記クランクシャフトの先端部分が挿通される挿通孔を有するトーショナルダンパーとの固定構造であって、
前記クランクシャフトの先端部分の外周面には、嵌合溝が設けられ、
前記挿通孔の内周面には、前記挿通孔のうち前記クランクシャフトの回転中心軸線方向に対して一部の領域に、前記嵌合溝に嵌合する嵌合突起が設けられている、クランクシャフトとトーショナルダンパーとの固定構造。」
<相違点1>
本願発明は、「嵌合溝」が「前記クランクシャフトの回転中心軸線に対して平行に伸びる」ものであるのに対し、引用発明は、凹状の第2の位置決め部22がクランク軸11の回転中心軸線CLに対して平行に伸びるものであるのか、明らかではない点。
<相違点2>
本願発明は、「嵌合突起」が、「前記回転中心軸線に対して平行」であるのに対し、引用発明は、凸部24がクランク軸11の回転中心軸線CLに対して平行であるのか、明らかではない点。
<相違点3>
本願発明は、「前記挿通孔の内径の寸法公差は0.03mm未満である」のに対し、引用発明は、クランクプーリ13のハブ部13hが有する孔の内径の寸法公差が明らかでない点。
第6 判断
上記相違点について、判断する。
1 相違点1及び2について
相違点1及び2は、「凹状の第2の位置決め部22」とそれに嵌合する「凸部24」に関するものであり、両者は相互に関連するから、合わせて検討する。
引用発明は、「前記凸部24と前記凹状の第2の位置決め部22は前記部品取付け面11aの軸方向に係合深さe2を有し」ており、「前記クランクプーリ13を」「軸方向に移動させることにより、前記クランクプーリ13の前記凸部24と前記凹状の第2の位置決め部22とが係合するもの」である。
ここで、「軸」とは、機械工学分野の技術用語として「中心軸のまわりに回転する棒状の部材。シャフト。」を、また、数学分野の技術用語として「回転対称・線対称において、基準となる直線。」を、物理分野の技術用語として「物体が回転運動をする時、空間的位置を変えず物体に固定したものとみなされる直線。」を意味するから(以上、広辞苑第7版から引用。)、引用発明における「軸方向」は「クランク軸11の回転中心軸線CL」の方向であり、これを前提とすれば、引用発明における「係合深さ」及び「移動」に係る「軸方向」とは、いずれも「クランク軸11の回転中心軸線CL」に平行である直線の方向と理解できる。
そうすると、引用発明において、「前記クランクプーリ13を」「軸方向に移動させることにより」、それぞれ「前記部品取付け面11aの軸方向に係合深さe2を有」する「前記クランクプーリ13の前記凸部24と前記凹状の第2の位置決め部22とが係合するもの」であることは、「凸部24」及び「凹状の第2の位置決め部22」が「クランク軸11の回転中心軸線CL」に平行に伸びることを意味するものと理解できる。
そうすると、上記相違点1及び2は、実質的な相違点ではない。
また、仮に、上記相違点1及び2が実質的な相違点であるとしても、引用発明において、クランクプーリ13が第2の位置決め部22に係合可能な位置まで軸方向移動することが予定されていることからすれば、「凸部24」及び「第2の位置決め部22」の伸びる方向を、移動方向である軸方向に沿ったものとすること、すなわち「クランク軸11の回転中心軸線CL」に平行な方向とすることは、当業者が引用発明を具体化する際に採用し得る構成の一つとして自然なものであるから、引用発明を上記相違点1及び2に係る本願発明のように構成することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
すなわち、仮に、上記相違点1及び2が実質的相違点であるとしても、引用発明において、上記相違点1及び2に係る本願発明の構成に想到することは、当業者にとって容易である。
2 相違点3について
機械設計において「寸法公差」とは設計事項にほかならないから、引用発明を具体化する際のクランクプーリ13の円筒状のハブ部13hが有する孔の内径の寸法公差も設計事項である。
そして、本願発明の「寸法公差」について、本願明細書には、「なお、ハブ210における挿通孔(第1円筒部の内周面)の内径の寸法公差を0.03mm未満とすることができる場合には、本実施例の構成を採用するのが望ましい。一方、上記の寸法公差が0.03mm以上となる場合には、上記実施例1の構成を採用するのが望ましい。」(段落【0028】)と記載されているにとどまり、「0.03mm」という境界値について具体的なことは記載されていないから、本願発明の「挿通孔の内径の寸法公差は0.03mm未満であること」について臨界的意義を認めることもできない。
以上によれば、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
したがって、引用発明において、本願発明の相違点3の構成に想到することは、当業者にとって容易である。
3 請求人の主張について
「請求人は審判請求書において「引用文献1には、凸部24及び凹部22がクランク軸11の回転中心軸線に対して平行に延びる(設けられる)ことは記載されていない。引用文献1の図1~図4のいずれにおいても凸部24及び凹部22は回転中心軸線に対して平行に延びているとは言えない。 そのため、引用文献1は、請求項1、2における「前記クランクシャフトの先端部分の外周面には、前記クランクシャフトの回転中心軸線に対して平行に伸びる嵌合溝が設けられ、前記挿通孔の内周面には、前記回転中心軸線に対して平行に・・・前記嵌合溝に嵌合する嵌合突起が設けられ」という要件を充足しない。」と主張する。
しかし、請求人が主張する上記要件については、上記1で説示したとおりであるから、出願人の主張は採用できない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-015722