特許拒絶査定不服審判
2019-011710
インプリント装置
- 審判番号
- 2019-011710
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-524329外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年09月05日
- 審決日
- 2020年09月30日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 【請求人代理人】江口 昭彦
- 【請求人代理人】内藤 和彦
- 分類
- P18 .121-WZ (G03F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018-524329号「インプリント装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年5月26日国際公開、WO2017/084797号、平成30年11月22日国内公表、特表2018-534623号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)9月30日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年(平成27年)11月20日 欧州特許庁、2016年(平成28年)2月24日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 5月31日 :翻訳文提出
平成30年 5月31日 :上申書、手続補正書提出
平成30年 9月27日付け:拒絶理由通知書
平成31年 3月20日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 4月 2日付け:拒絶査定(謄本送達日 同年5月7日)
令和元年 9月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和2年 4月28日付け:拒絶理由通知書
令和2年 7月31日 :意見書、手続補正書の提出
2.本願発明
本願の請求項に係る発明は、令和2年7月31日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである(なお、本件補正において、請求項1は補正されていない。)
「【請求項1】
インプリントシステム(271)と、
第1の基板(W1)を保持するように構成された第1の基板ステージ(WT1)と、
第2の基板(W2)を保持するように構成された第2の基板ステージ(WT2)と、
クリーニングデバイスを支持するように構成された較正ステージ(CS)と、を備え、
前記インプリントシステム(271)は、
前記第1の基板(W1)の少なくとも一部に樹脂(2711)を供給するように構成された樹脂供給ユニット(2713)と、
パターニングデバイス(276)を保持するように構成されたインプリントヘッド(277)と、を有し、
前記パターニングデバイス(276)は、前記第1の基板(W1)上の前記樹脂にパターンを形成するように構成され、
前記インプリントシステム(271)は、紫外光(2710)を提供して前記樹脂(2711)を硬化させるように構成され、
前記第1の基板ステージ、前記第2の基板ステージ、及び前記較正ステージの各々は、
互いに独立して移動するように構成され、
前記クリーニングデバイスは、前記インプリントヘッド(277)、前記パターニングデバイス(276)及び前記樹脂供給ユニット(2713)のうち少なくとも一つを洗浄するように構成される、
インプリント装置。」
上記本願発明を分説すると下記のとおりとなる。
「【請求項1】
A インプリントシステム(271)と、
B 第1の基板(W1)を保持するように構成された第1の基板ステージ(WT1)と、
C 第2の基板(W2)を保持するように構成された第2の基板ステージ(WT2)と、
D クリーニングデバイスを支持するように構成された較正ステージ(CS)と、を備え、
A 前記インプリントシステム(271)は、
E 前記第1の基板(W1)の少なくとも一部に樹脂(2711)を供給するように構成された樹脂供給ユニット(2713)と、
F パターニングデバイス(276)を保持するように構成されたインプリントヘッド(277)と、を有し、
G 前記パターニングデバイス(276)は、前記第1の基板(W1)上の前記樹脂にパターンを形成するように構成され、
H 前記インプリントシステム(271)は、紫外光(2710)を提供して前記樹脂(2711)を硬化させるように構成され、
I 前記第1の基板ステージ、前記第2の基板ステージ、及び前記較正ステージの各々は、互いに独立して移動するように構成され、
J 前記クリーニングデバイスは、前記インプリントヘッド(277)、前記パターニングデバイス(276)及び前記樹脂供給ユニット(2713)のうち少なくとも一つを洗浄するように構成される、
K インプリント装置。」
3.拒絶の理由
令和2年4月28日付けで当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうちの本願発明に対する理由2は、次のとおりのものである。
本願発明は、本願の最先の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2011-155160号公報
引用文献2:特開2007-194601号公報
引用文献3:特開2014-60385号公報
4.引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1及び引用発明
ア 本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1には、下記各記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、光処理装置および光処理方法に関し、更に詳しくはナノインプリント装置におけるテンプレートの表面をドライ洗浄処理するために好適な光処理装置および光処理方法に関する。
【背景技術】・・・
【0003】
このようなパターン形成方法においては、テンプレートの表面に異物などが存在すると、得られるパターンに欠陥が生じるため、テンプレートの表面を洗浄処理することが必要である。・・・また、硬化樹脂層からテンプレートを剥す際に、当該テンプレートに光硬化性樹脂等の残さが付着する場合には、パターン形成が終了する毎に、テンプレートの洗浄処理を行うことが必要であり、洗浄処理に相当に長い時間を要するため、生産性が著しく低下する、という問題がある。」
(イ)「【0016】
図6は、本発明の光処理装置を搭載したナノインプリント装置の一例における構成の概略を示す説明図である。この図において、1はテンプレート、2は、テンプレート1を保持するテンプレート保持機構、3はチャンバーである。4は可動式のウエハステージであって、このウエハステージ4上には、ウエハWを保持するウエハチャック4aが配置されている。5は、ウエハWの表面にパターン形成用材料(インプリント材料)である液状の光硬化性樹脂を塗布するインクジェット方式の塗布手段、6は加圧機構、7は除振台、8はステージ定盤、9は、ウエハW上に形成された光硬化性樹脂よりなるパターン形成用材料層に紫外線を照射する紫外線光源である。30は、図1および図2に示す構成の光処理装置であり、この光処理装置30は、当該光処理装置30をテンプレート1の下方に搬送する搬送アーム35に固定されている。
【0017】
このようなナノインプリント装置においては、ウエハチャック4aにウエハWが保持されたウエハステージ4を塗布手段5の下方位置に移動させ、当該塗布手段5によってウエハWの表面に液状の光硬化性樹脂を塗布することにより、ウエハW上に光硬化性樹脂よりなるパターン形成用材料層を形成する。次いで、ウエハステージ4をテンプレート1の下方位置に移動させ、 ウエハW上に形成されたパターン形成用材料層に対して、加圧機構6によってテンプレート1を接触させて加圧し、この状態で、パターン形成用材料層に紫外線光源9によってテンプレート1を介して紫外線を照射することにより、パターン形成用材料層を硬化させ、その後、得られた硬化樹脂層からテンプレート1を剥がすことにより、ウエハWに対するパターン形成が達成される。
このようなウエハWに対するパターン形成が1回または複数回終了すると、図7に示すように、ウエハWが載置されたウエハステージ4が、テンプレート1の下方位置からその側方位置に移動されて退避されると共に、光処理装置30がテンプレート1の下方位置に搬送され、その紫外線透過窓11(図3参照)がテンプレート1のパターン面に間隙を介して対向するよう配置される。
ここで、紫外線透過窓11の外面とテンプレート1のパターン面との間の離間距離は、例えば0.3~10.0mmである。
【0018】
そして、光処理装置30においては、冷却用ガス供給機構を作動させ、これにより、冷却用ガスを冷却用ガス流通管17を介してガス流路部材15に供給することによって、図8に示すように、ガス流路部材15に形成されたガス流通口16から排出された冷却用ガスG1が紫外線透過窓11とテンプレート1との間の間隙に流通される。そして、この状態で、エキシマランプ20を点灯させることにより、エキシマランプ20からの紫外線が紫外線透過窓11を介してテンプレート1のパターン面に照射され、以て、テンプレート1の光洗浄処理が達成される。
その後、光処理装置30が搬送されてテンプレート1の下方位置から退避されると共に、ウエハWが載置されたウエハステージ4が、テンプレート1の下方位置に移動され、当該ウエハWに対するパターン形成が実行される。
【0019】
以上において、紫外線透過窓11とテンプレート1との間の間隙に流通される冷却用ガスの流量は、例えば100~1000L/minであり、冷却用ガスの温度は、例えば10~35℃である。 また、テンプレート1に対する紫外線の照射時間は、例えば3~3600秒間である。」
(ウ)図1、6及び7は次のとおりである。
(エ)上記(ア)及び(イ)の記載を踏まえて、上記(ウ)の図1、6及び7を見ると、ウエハステージ4と光処理装置30は互いに独立して移動するように構成されているものであることが見て取れる。
イ 上記アによれば、引用文献1には下記の各事項が記載されていると認められる。
(ア)ナノインプリント装置(【0001】)は、ナノインプリントシステムを備えているといえる。
(イ)ナノインプリント装置の「ウエハステージ4」は、「ウエハステージ4上には、ウエハWを保持するウエハチャック4aが配置されている」(【0016】)から、ナノインプリント装置は、「ウエハWを保持するウエハチャック4aが配置されている」「ウエハステージ4」を備えているといえる。
(ウ)ナノインプリント装置の「光処理装置30」(【図1】)は、「冷却用ガス供給機構を作動させ、これにより、冷却用ガスを冷却用ガス流通管17を介してガス流路部材15に供給することによって、」「ガス流路部材15に形成されたガス流通口16から排出された冷却用ガスG1が紫外線透過窓11とテンプレート1との間の間隙に流通され」、「この状態で、エキシマランプ20を点灯させることにより、エキシマランプ20からの紫外線が紫外線透過窓11を介してテンプレート1のパターン面に照射され、以て、テンプレート1の光洗浄処理が達成」(【0018】)するものであって、「この光処理装置30は、当該光処理装置30をテンプレート1の下方に搬送する搬送アーム35に固定されてい」(【0016】)て、「ウエハWに対するパターン形成が」「終了すると、ウエハWが載置されたウエハステージ4が、テンプレート1の下方位置からその側方位置に移動されて退避されると共に、光処理装置30がテンプレート1の下方位置に搬送され、その紫外線透過窓11」「がテンプレート1のパターン面に間隙を介して対向するよう配置され」(【0017】)、「テンプレート1の光洗浄処理が達成され」た「後、光処理装置30が搬送されてテンプレート1の下方位置から退避される」(【0018】)ものであって、「紫外線透過窓11とテンプレート1との間の間隙に」「冷却用ガス」が「流通される」(【0019】)ものであるから、「ナノインプリント装置」は、「テンプレート1の下方に搬送する搬送アーム35に固定されてい」て、「ウエハWに対するパターン形成が」「終了すると、ウエハWが載置されたウエハステージ4が、テンプレート1の下方位置からその側方位置に移動されて退避されると共に、」「テンプレート1の下方位置に搬送され、その紫外線透過窓11」「がテンプレート1のパターン面に間隙を介して対向するよう配置され」、「テンプレート1の光洗浄処理が達成され」た「後、搬送されてテンプレート1の下方位置から退避される」ものであって、「紫外線透過窓11とテンプレート1との間の間隙に」「冷却用ガス」を「流通」して「テンプレート1の」「光洗浄処理」を行う「光処理装置30」を備えているといえる。
(エ)ナノインプリント装置の「塗布手段5」は、「ウエハWの表面にパターン形成用材料(インプリント材料)である液状の光硬化性樹脂を塗布するインクジェット方式の塗布手段」(【0016】)であるから、ナノインプリント装置のナノインプリントシステムは、「ウエハWの表面に」「液状の光硬化性樹脂を塗布するインクジェット方式の塗布手段」を有するといえる。
(オ)ナノインプリント装置の「テンプレート保持機構2」は、「テンプレート1を保持するテンプレート保持機構」(【0016】)であるから、ナノインプリント装置のナノインプリントシステムは、「テンプレート1を保持するテンプレート保持機構」を有するといえる。
(カ)ナノインプリント装置は、「ウエハステージ4をテンプレート1の下方位置に移動させ、ウエハW上に形成されたパターン形成用材料層に対して、加圧機構6によってテンプレート1を接触させて加圧し、この状態で、パターン形成用材料層に紫外線光源9によってテンプレート1を介して紫外線を照射することにより、パターン形成用材料層を硬化させ、その後、得られた硬化樹脂層からテンプレート1を剥がすことにより、ウエハWに対するパターン形成が達成される」(【0017】)ものであるから、ナノインプリント装置のテンプレート1は、「パターン形成用材料層に」「パターン」を形成するように構成されているとともに、ナノインプリント装置のナノインプリントシステムは、「紫外線を照射することにより、パターン形成用材料層を硬化させ」るように構成されているといえる。
ウ 上記ア及びイによれば、引用文献1には下記の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(aないしkは、構成AないしKに対応させて当審が付した。)。
「a ナノインプリントシステムと(上記「イ」「(ア)」)、
b ウエハを保持するウエハチャックが配置されているウエハステージと(上記「イ」「(イ)」)、
d テンプレートの光洗浄処理を行う光処理装置を備え(上記「イ」「(ウ)」)、
a 前記ナノインプリントシステムは(上記「イ」「(ア)」)、
e ウエハの表面に液状の光硬化性樹脂を塗布するインクジェット方式の塗布手段と(上記「イ」「(エ)」)、
f テンプレートを保持するテンプレート保持機構を有し(上記「イ」「(オ)」)、
g 前記テンプレート、パターン形成用材料層にパターンを形成するように構成され(上記「イ」「(カ)」)、
h 前記ナノインプリントシステムは、紫外線を照射することにより、パターン形成用材料層を硬化させるように構成され(上記「イ」「(カ)」)、
i ウエハステージと光処理装置は互いに独立して移動するように構成され(上記「ア」「(エ)」)、
j 前記光処理装置は、前記テンプレートの下方に搬送する搬送アームに固定されていて、ウエハに対するパターン形成が終了すると、ウエハが載置されたウエハステージが、テンプレートの下方位置からその側方位置に移動されて退避されると共に、テンプレートの下方位置に搬送され、その紫外線透過窓がテンプレートのパターン面に間隙を介して対向するよう配置され、テンプレートの光洗浄処理が達成された後、搬送されてテンプレートの下方位置から退避されるものであって、ガス流通口から排出された冷却ガスが紫外線透過窓とテンプレートとの間の間隙に冷却用ガスを流通してテンプレートの光洗浄処理を行うように構成される(上記「イ」「(ウ)」)、
k ナノインプリント装置(【0001】)。」
(2)引用文献2及び引用文献2に記載された事項
ア 本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である引用文献2には、下記各記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明はインプリントリソグラフィのアライメントに関する。」
(イ)「【0039】
[0046] 図4は、基板テーブル101によって支持された基板100の一部を断面図で概略的に示したものである。例えばポリ(メチルメタクリレート)またはポリスチレンなどからなる平坦化層102が、基板の上面に設けられる。基板100は、非濡れ性材料104の2つの区域と、インプリント可能媒体106の小滴のアレイを備える。インプリント可能媒体106は平坦化層102に対して濡れている。・・・
【0041】
[0048] 非濡れ性材料104のグリッドは、非濡れ性材料の分子を平坦化層102の頂部にグラフトさせることによって設けることができる(分子は、例えば(過)フッ素処理したアクリレートでよい)。これは、例えば基板100を密封されたチャンバに入れ、UV放射を使用して基板上の良好に画定された位置を照明して、これに非濡れ性分子を取り付けることによって達成することができる。例えば、UV放射のスポットは、記憶され、目標領域108の正確な位置を反映するパターンを使用して、基板100の表面上で誘導することができる。その結果、非濡れ性材料104を、100nm、50nm、または10nmより良好な精度で位置決めすることができる。場合によっては、デュアルステージまたはマルチステージシステムを使用することができ、ここでは目標領域108の位置の測定をリソグラフィ装置の第一位置で実行し、基板100のインプリントはリソグラフィ装置内の第二位置で実行することができる。非濡れ性材料104の適用は、例えば第一位置または第二位置で実行するか、これもリソグラフィ装置内にあってよい他の何らかの位置で実行することができる。」
イ 上記アによれば、引用文献2には下記の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「インプリントリソグラフィにおける基板を支持する基板テーブルに、デュアルステージまたはマルチステージシステムを使用すること。」
(3)引用文献3及び引用文献3に記載された事項
ア 本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である引用文献3には、下記各記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、インプリント装置およびインプリント方法、ならびにそれを用いた物品の製造方法に関する。」
(イ)「【0017】
ウエハステージ(基板保持部)4は、ウエハWを保持して移動可能である。このウエハステージ4は、通常のインプリント工程において、被処理基板としてのウエハ(第1基板)W1を保持する第1ステージST1と、後述するモールドMの洗浄工程において、洗浄用ウエハ(第2基板)W2を保持する第2ステージST2とを含む。」
イ 上記アによれば、引用文献3には下記の事項(以下「引用文献3に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「インプリント装置における基板を保持するステージを、ウエハ(第1基板)W1を保持する移動可能である第1ステージST1と、洗浄用ウエハ(第2基板)W2を保持する移動可能である第2ステージST2とで構成すること。」
5.対比・判断
(1)対比
本願発明との対比
ア 引用発明の「ナノインプリントシステム」(構成a)及び「ナノインプリント装置」(k)は、本願発明の「インプリントシステム」(構成A)及び「インプリント装置」(構成K)にそれぞれ相当する。
イ 引用発明の「ウエハを保持するウエハチャックが配置されているウエハステージ」(構成b)は、本願発明の「第1の基板を保持するように構成された第1の基板ステージ」(構成B)に相当する。
ウ 引用発明の「テンプレートの光洗浄処理を行う光処理装置を備え」(構成d)ることは、本願発明の「クリーニングデバイスを支持するように構成された較正ステージと、を備え」(構成D)ることと、「クリーニングデバイスを支持するように構成された装置と、を備え」(構成D´)ることの点で一致する。
エ 引用発明の「ウエハの表面に液状の光硬化性樹脂を塗布するインクジェット方式の塗布手段」(構成e)は、本願発明の「第1の基板の少なくとも一部に樹脂を供給するように構成された樹脂供給ユニット」(構成E)に相当する。
オ 引用発明の「テンプレートを保持するテンプレート保持機構を有」(構成f)することは、本願発明の「パターニングデバイスを保持するように構成されたインプリントヘッドと、を有」(構成F)することに相当する。
カ 引用発明の「テンプレート、パターン形成用材料層にパターンを形成するように構成され」(構成g)ることは、本願発明の「パターニングデバイス)は、前記第1の基板上の前記樹脂にパターンを形成するように構成され」(構成G)ることに相当する。
キ 引用発明の「ナノインプリントシステムは、紫外線を照射することにより、パターン形成用材料層を硬化させるように構成され」(構成h)ることは、本願発明の「インプリントシステムは、紫外光を提供して前記樹脂を硬化させるように構成され」(構成H)ることに相当する。
ク 引用発明の「ウエハステージと光処理装置は互いに独立して移動するように構成され」(構成i)ることは、本願発明の「前記第1の基板ステージ、前記第2の基板ステージ、及び前記較正ステージの各々は、互いに独立して移動するように構成され」(構成I)ることと、「前記第1の基板ステージ及び前記クリーニングデバイスを支持するように構成された装置の各々は、互いに独立して移動するように構成され」(構成I´)ることの点で一致する。
ケ 引用発明の「光処理装置は、前記テンプレートの下方に搬送する搬送アームに固定されていて、ウエハに対するパターン形成が終了すると、ウエハが載置されたウエハステージが、テンプレートの下方位置からその側方位置に移動されて退避されると共に、テンプレートの下方位置に搬送され、その紫外線透過窓がテンプレートのパターン面に間隙を介して対向するよう配置され、テンプレートの光洗浄処理が達成された後、搬送されてテンプレートの下方位置から退避されるものであって、紫外線透過窓とテンプレートとの間の間隙に冷却用ガスを流通してテンプレートの光洗浄処理を行うように構成される」(構成j)ことは、本願発明の「クリーニングデバイスは、前記インプリントヘッド、前記パターニングデバイス及び前記樹脂供給ユニットのうち少なくとも一つを洗浄するように構成される」(構成J)ことと、「クリーニングデバイスは、前記パターニングデバイスを洗浄するように構成される」(構成J´)ことの点で一致する。
コ 以上アないしケによれば、引用発明と本願発明は、
「A インプリントシステムと、
B 第1の基板を保持するように構成された第1の基板ステージと、
D´ クリーニングデバイスを支持するように構成された装置と、を備え、
A 前記インプリントシステムは、
E 前記第1の基板の少なくとも一部に樹脂を供給するように構成された樹脂供給ユニットと、
F パターニングデバイスを保持するように構成されたインプリントヘッドと、を有し、
G 前記パターニングデバイスは、前記第1の基板上の前記樹脂にパターンを形成するように構成され、
H 前記インプリントシステムは、紫外光を提供して前記樹脂を硬化させるように構成され、
I´ 前記第1の基板ステージ及び前記クリーニングデバイスを支持するように構成された装置の各々は、互いに独立して移動するように構成され、
J´ 前記クリーニングデバイスは、前記パターニングデバイスを洗浄するように構成される、
K インプリント装置。」
である点で一致し、下記各点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は、「第2の基板を保持するように構成された第2の基板ステージ」を備え、第2の基板ステージが独立して移動するように構成されると特定されるのに対して、引用発明は、このように特定されない点。
(相違点2)
クリーニングデバイスを支持するように構成された装置が、本願発明1は、「較正ステージ」であるのに対して、引用発明は「光処理装置」である点。
(2)判断
ア 相違点1について
引用発明の「ウエハを保持するウエハチャックが配置されているウエハステージ」は1つ(「第1のウエハを保持するウエハチャックが配置されている第1のウエハステージ」)であるが、引用文献1には、【背景技術】として「洗浄処理に相当に長い時間を要するため、生産性が著しく低下する、という問題がある」(上記「4.」「(1)」「ア」「(ア)」【0003】)ことが記載され、引用発明は、生産性を向上させる発明であることが示唆されている。
ここで、生産性を向上させるために、1つのものを2つとすることは周知の課題解決手法であるところ、「ウエハを保持するウエハチャックが配置されているウエハステージ」を2つ備えるものとなすとともに、互いに独立して移動する構成とすることは、上記引用文献2に記載された事項に見られるとおり従来周知のことであるから、引用発明の「ウエハを保持するウエハチャックが配置されているウエハステージ」を2つ備えるもの(「第1のウエハを保持するウエハチャックが配置されている第1のウエハステージ」及び「第2のウエハを保持するウエハチャックが配置されている第2のウエハステージ」)となすとともに第1のウエハステージ等に対して互いに独立して移動する構成となし、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことにすぎない。
イ 相違点2について
引用発明の「光処理装置30」は、「テンプレートの下方に搬送する搬送アームに固定されていて、ウエハに対するパターン形成が終了すると、ウエハが載置されたウエハステージが、テンプレートの下方位置からその側方位置に移動されて退避されると共に、テンプレートの下方位置に搬送され、その紫外線透過窓がテンプレートのパターン面に間隙を介して対向するよう配置され、テンプレートの光洗浄処理が達成された後、搬送されてテンプレートの下方位置から退避されるものであ」(構成j)るところ、引用文献3には、「洗浄用ウエハ(第2基板)W2」を「移動可能である第2ステージST2」に保持することが記載されているから(引用文献3に記載された事項)、当該洗浄処理を行う手段を移動・搬送する手段としての搬送アームに固定することに代えてステージに保持(固定)する構成を採用することは当業者が容易に想到し得たことであって、引用発明の「光処理装置」をステージに保持(固定)し、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことにすぎない。
ウ したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて当業者であれば容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)請求人の主張
ア 請求人は、令和2年7月31日提出の意見書の「【意見の内容】」「4.進歩性について」において、概略、
「しかしながら、審判長殿の上記認定は、相違点に係る構成が周知技術であるというだけで本願発明が容易に想到し得るという結論を導いており、引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された周知技術を適用して上記相違点に係る構成に到達することが容易であるか否かという立証命題についての検証を省くものです。
この点につき、引用文献1には、『ウエハを保持するウエハチャックが配置されているウエハステージ』を2つ設けることについて記載も示唆もされていません。
むしろ、『ウエハを保持するウエハチャックが配置されているウエハステージ』を2つ設けることは装置に要求される面積や重量の増大化をもたらすものであり、当業者は引用発明に引用文献2等に記載された周知技術(デュアルステージとすること)を適用することを避けようとするはずです。」
と主張する。
イ しかしながら、引用文献1には、引用発明は、生産性を向上させる発明であることが示唆されているとともに、生産性を向上させるために、基板ステージを2つとすることは周知の課題解決手法であり、引用文献2に記載された事項に基づいて、引用発明において、「ウエハを保持するウエハチャックが配置されているウエハステージ」を2つ備えるものとなすとともに、互いに独立して移動する構成とすることは容易に想到し得たことであることは、上記「(2)」「ア」で検討したとおりである。
ここで、インプリント装置の技術分野において、「小型軽量化」と「生産性の向上」とがトレードオフの関係にあることは技術常識である。すなわち、引用発明において、「ウエハを保持するウエハチャックが配置されているウエハステージ」を2つ備えると、装置に要求される面積や重量の増大化をもたらすものの、生産性は向上するし、小型軽量化を優先して、「ウエハを保持するウエハチャックが配置されているウエハステージ」を1つ備えるものとすれば、相対的に生産性は低下することとなる。そうすると、「小型軽量化」と「生産性の向上」のどちらを優先するかは、当業者が適宜選択可能な事項であると認められるところ、上記「(2)」「ア」で検討したとおり、引用文献1には、引用発明は生産性を向上させる発明であることが示唆されている。
したがって、引用発明において、「ウエハを保持するウエハチャックが配置されているウエハステージ」を2つ備えるものとなすことに阻害要因はない。
ウ よって、以上イで検討したとおり、上記アの請求人の主張は採用できない。
6.むすび
以上のとおり、本願発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-011710