特許拒絶査定不服審判
2019-011392
フィッシング詐欺防止のための検証装置、検証方法及びプログラム
- 審判番号
- 2019-011392
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-055821
- 請求日
- 2019年08月30日
- 審決日
- 2021年02月09日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社日本総合研究所
- 【請求人代理人】坂本 智弘
- 審判長/審判官
- 審判長 角田 慎治
- 審判官 富澤 哲生
- 審判官 小田 浩
- 分類
- P18 .537-WY (G06F) / P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017- 55821「フィッシング詐欺防止のための検証装置、検証方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月11日出願公開、特開2018-160015、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月22日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 3月20日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 5月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 5月30日付け:拒絶査定
令和 元年 8月30日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提
出
令和 2年 9月29日付け:拒絶理由通知書
令和 2年10月14日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明6」という。)は、令和2年10月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
ユーザ端末にネットワークを介して接続され、メールが正規の機関から送信されたことを前記メールを受信したユーザ自らが検証することを可能とするための検証装置であって、
前記ユーザの複数のメールアドレスが予め登録された記憶手段から前記ユーザの前記複数のメールアドレスを抽出するメールアドレス抽出手段と、
前記抽出された複数のメールアドレスに、同時刻に別々のステップで、同内容のメールを送信するように制御する手段とを、
備えることを特徴とする検証装置。
【請求項2】
前記同内容のメールに、前記ユーザと前記メールの送信元の間で定めた合言葉を挿入する合言葉挿入手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の検証装置。
【請求項3】
前記メールアドレス抽出手段は、前記ユーザの複数のメールアドレスを別々の記憶手段から抽出することを特徴とする請求項1又は2に記載の検証装置。
【請求項4】
前記複数のメールは、宛先、CC又はBCCに前記複数のメールアドレスを記入した同報メールでないこと、を条件とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の検証装置。
【請求項5】
ユーザ端末にネットワークを介して接続され、メールが正規の機関から送信されたことを前記メールを受信したユーザ自らが検証することを可能とする検証方法であって、
前記ユーザの複数のメールアドレスが予め登録された記憶手段から前記ユーザの前記複数のメールアドレスを抽出するステップと、
前記抽出された複数のメールアドレスに、同時刻に別々のステップで、同内容のメールを送信するように制御するステップと、
をコンピュータが実行することを特徴とする検証方法。
【請求項6】
請求項5に記載の各ステップを、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。」
第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1、引用発明1
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2015-14835号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。
ア 「【0014】
この発明によれば、送信された電子メールを再送する場合の再送情報として、その電子メールが送信されたときに用いられた送信アドレスと異なるメールアドレスを、再送アドレスとして設定したものを用い、同一送信相手先ユーザの異なるメールアドレスに再送メールを送信するので、電子メールの内容を相手先ユーザに伝達できる可能性を高めることができる。」
イ 「【0016】
以下、図面を使用して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の実施例の記載によって、この発明が限定されるものではない。
<この発明の情報通信装置の構成>
図1に、この発明の情報通信装置の一実施例の構成ブロック図を示す。
この情報通信装置は、主として、入力部1、表示部2、送信部3、受信部4、送信メール解析部5、受信メール解析部6、再送信制御部7、再送タイマー8、記憶部20から構成される。
この情報通信装置は、専用の通信装置としても提供することができるが、現在利用されているパソコン、携帯電話、スマートフォン等の通信機能を有する情報通信機器の一つの機能としても実現することができる。
【0017】
入力部1は、ユーザが所望の情報の入力、機能の選択や指示を入力する部分であり、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネルなどの種々の入力デバイスを利用することができる。
この発明では、入力部1は、送信メールの作成、アドレス情報の登録などに利用される。
表示部2は、文字、画像等の情報を表示する部分であり、たとえば、LCD、有機ELディスプレイなどが利用される。
送信部3は、電子メールなどの情報を、外部ネットワークに送信する部分であり、受信部4は、外部ネットワークを介して送信されてきた自己あての受信メールなどの情報を受信する部分である。
【0018】
送信部3および受信部4によって送受信される情報としては特に限定されないが、この発明では、送信者情報(送信元アドレス)、宛先情報(送信先アドレス)を含む情報、たとえば電子メールを送受信するものである。以下の実施例では、送受信される情報として、電子メールの場合を示し、特に、日付情報が含まれる内容を有する電子メールを送信する場合について説明する。
また、送受信される情報の通信形態も特に限定されるものではなく、有線通信あるいは無線通信のどちらでもよく、通信回線、通信プロトコルも、現在利用されているあらゆるものを利用することができる。
【0019】
送信メール解析部5は、送信された電子メールの内容を解析する部分である。この解析は、主として、後述するように、送信された電子メールが再送対象メールであるか否かを判定するために行う。
再送対象メールとは、送信相手先のユーザに対して回答(返信)を要求することを内容とするメールであり、たとえば、日付情報として回答期限を有する催促メールである。
解析では、送信メールの中の件名と、本文と、送信日時と、送信先アドレスを取得し、さらに、取得した情報に対して、所定のキーワードによる検索を行う。たとえば、後述するように、送信メール中に、日付情報と催促に関係する所定のキーワードが含まれている場合に、その送信メールを、再送対象メールであると判定する。
【0020】
送信されたメールが再送対象メールであると判定された場合は、その送信メールを再送信が必要な再送メールとするために、その送信メールに対する再送情報を生成し、記憶部20の再送用情報22に記憶する。
再送情報としては、後述する図4に示すように、送信アドレスから再送順序までの情報が記憶される。
この発明では、送信メールの送信相手先ユーザが複数のメールアドレスを所有している場合には、その複数のメールアドレスを予め記憶部20に登録しておき、送信メールの再送アドレスとして、その相手先ユーザが所有するアドレスであって、かつその送信メールを送信したときに使用した相手先のメールアドレス(送信アドレス)と異なる別のメールアドレスを設定する。」
ウ 「【0039】
<この発明のメール送信処理>
図5に、この発明のメール送信処理の一実施例のフローチャートを示す。
ここでは、主として、この発明に関係するメール送信後の再送メールおよび再送タイマーの設定について説明する。
・・・(中略)・・・
【0042】
ステップS7において、アドレス情報21から別の登録アドレス(AD2)を取得し、再送用情報22の中に、新たな再送メールの項目を追加し、その項目の再送アドレスに、上記別の登録アドレス(AD2)を記憶する。
このとき、追加した項目の中の送信アドレスには、送信メールに設定していた送信先アドレス(AD1)を記憶しておく。
さらに、送信メールから取得した件名、送信日時、日時キーワードに一致した部分は、それぞれ、追加した項目の件名、送信日時、メール記載日時に記憶しておく。
ステップS8において、追加した再送メールの項目の再送日時Sを決定し、記憶する。
ここで、再送日時Sは、送信メールの送信日時と、メール記載日時とから決定する。」
エ 「【0055】
<他の実施形態>
以上が、この発明の情報通信装置として最も好ましいと考えられる実施の形態である。
ただし、上記の実施形態に限るものではなく、たとえば、次のような実施形態も考えられる。
・・・(中略)・・・
【0057】
(3)再送日時の設定は、自動的に予め設定された日時を用いるのではなく、自動的に設定した日時を表示部に表示させてユーザにその日時の確認入力を求め、ユーザが認めない入力をした場合は、ユーザが独自の再送日時を直接入力するようにしてもよい。
また、上記実施例では、送信日時の24時間後を再送日時に設定していたが、この24時間という時間も、ユーザが変更できるようにしてもよい。
さらに、メール記載日時の1時間前に設定する場合もあったが、この1時間という時間も、ユーザが変更できるようにしてもよい。」
(2)上記(1)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「電子メールの内容を相手先ユーザに伝達できる可能性を高めることができる情報通信装置であって(【0014】、【0016】)、
入力部1、表示部2、送信部3、受信部4、送信メール解析部5、受信メール解析部6、再送信制御部7、再送タイマー8、記憶部20から構成され(【0016】)、
送信部3は、電子メールなどの情報を、外部ネットワークに送信する部分であり、受信部4は、外部ネットワークを介して送信されてきた自己あての受信メールなどの情報を受信する部分であり(【0017】)、
送信メール解析部5は、送信された電子メールの内容を解析する部分であり、この解析は、送信された電子メールが再送対象メールであるか否かを判定するために行うものであり(【0019】)、
送信されたメールが再送対象メールであると判定された場合は、その送信メールを再送信が必要な再送メールとするために、その送信メールに対する再送情報を生成し、記憶部20の再送用情報22に記憶し、
送信メールの送信相手先ユーザが複数のメールアドレスを所有している場合には、その複数のメールアドレスを予め記憶部20に登録しておき、送信メールの再送アドレスとして、その相手先ユーザが所有するアドレスであって、かつその送信メールを送信したときに使用した相手先のメールアドレス(送信アドレス)と異なる別のメールアドレスを設定し(【0020】)、
メール送信処理において(【0039】、
再送メールの項目の再送日時Sを決定し(【0042】)、
再送日時は、ユーザが変更できる(【0057】)、
情報通信装置。」
2 引用文献2、引用発明2
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2005-84747号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0019】
同図に示すように、このWebシステムは、インターネットなどのネットワーク1と、会員登録制の所定のサービスをネットワーク1を通じて提供するサーバ装置2と、このサーバ装置2が提供するサービスをネットワーク1を通じて享受するクライアント装置としてのユーザ端末3とで構成される。」
イ 「【0023】
上記のサーバ装置2においては、図2に示すように、図示しないOS(Operating System)による管理の下で、Webサーバ21、アプリケーションサーバ22、そして会員情報登録データベース23が常時稼動している。これらの機能を実現するための各プログラムは、たとえばROMやストレージ装置などに格納されており、CPUはROMやストレージ装置からそれらのプログラムをRAMにロードし、各プログラムの命令を順次解釈実行する。
【0024】
Webサーバ21は、ユーザ端末3との間でHTTPによる通信を行う。より具体的には、ユーザ端末3からのリクエストに応じてHTML(Hyper Text Markup Language)で記述されたドキュメントであるWebページを応答として送信するためのサーバ機能である。
【0025】
アプリケーションサーバ22は、Webサーバ21と通信してWebページをベースとした所定の会員制サービスをユーザ端末3に提供するためのロジック(図示せず)を有する。また、アプリケーションサーバ22は、当該会員制サービスの利用を希望している会員登録申込者の本人認証を行うための手段として、会員登録情報取得手段221、パスフレーズ生成手段222、パスフレーズHTML送信手段223、パスフレーズメール送信手段224、入力パスフレーズ取得手段225、およびパスフレーズ照合手段226を有している。
【0026】
会員登録情報取得手段221は、ユーザ端末3のWebブラウザから送信されてきた会員登録に必要なユーザ情報をWebサーバ21を介して取得し、会員情報登録データベース23に登録する処理を行う機能である。
【0027】
パスフレーズ生成手段222は、会員登録に必要なユーザ情報を提供したユーザ(会員登録希望者)に対して発行する2つの異なるパスフレーズA,Bを自動生成し、これら2つのパスフレーズA,Bのうちの一方のパスフレーズAをパスフレーズHTML送信手段223に、他方のパスフレーズBをパスフレーズメール送信手段224にそれぞれ渡すとともに、2つのパスフレーズA,Bを会員情報登録データベース23に登録する機能である。
【0028】
パスフレーズHTML送信手段223は、パスフレーズ生成手段222によって生成されたパスフレーズAを含むHTMLドキュメントを作成してWebサーバ21を通じてユーザ端末3に送信する機能である。
【0029】
パスフレーズメール送信手段224は、パスフレーズ生成手段222によって生成されたパスフレーズBを含む電子メールの本文を作成するとともに、会員情報登録データベース23に登録済みの会員登録希望者の電子メールアドレス宛てに電子メールを送信する機能である。」
ウ 「【0055】
以上説明した本実施形態の本人認証方式を用いたWebシステムでは、会員登録の申込み後にサーバ装置2から本人認証用の2つのパスフレーズA,Bがユーザ端末3のユーザに提供され、ユーザはこれら本人認証用の2つのパスフレーズA,Bをサーバ装置2に送信しなければ、本人認証を経て会員登録を完了させることができない。また、サーバ装置2からユーザ端末3のユーザに本人認証用の2つのパスフレーズA,Bを提供する際、その一方のパスフレーズAはユーザ端末3のユーザにWebブラウザ41を通して提供され、他方のパスフレーズBはそのユーザの電子メールアドレス宛てに電子メールで送信される。このように2つのパスフレーズA,Bを異なる通信手段を使って別個にユーザに通知することによって、2つのパスフレーズA,Bが第三者によっていっぺんに盗まれることは困難であるから、セキュリティの向上を図れる。」
エ 「【0061】
さらに、変形例として、ユーザ端末3のユーザが所有している複数の電子メールアドレス宛てに2つのパスフレーズA,Bを別々に送信する方法もある。この場合の一方の電子メールアドレスは有料/無料のいずれでも構わない。さらには、パスフレーズAを郵便でユーザに通知する方法もある。」
(2)上記(1)から、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「インターネットなどのネットワーク1と、会員登録制の所定のサービスをネットワーク1を通じて提供するサーバ装置2と、このサーバ装置2が提供するサービスをネットワーク1を通じて享受するクライアント装置としてのユーザ端末3とで構成されるWebシステムであって(【0019】)、
サーバ装置2においては、Webサーバ21、アプリケーションサーバ22、そして会員情報登録データベース23が常時稼動し(【0023】)、
アプリケーションサーバ22は、当該会員制サービスの利用を希望している会員登録申込者の本人認証を行うための手段として、会員登録情報取得手段221、パスフレーズ生成手段222、パスフレーズHTML送信手段223、パスフレーズメール送信手段224、入力パスフレーズ取得手段225、およびパスフレーズ照合手段226を有しており(【0025】)、
パスフレーズ生成手段222は、会員登録に必要なユーザ情報を提供したユーザ(会員登録希望者)に対して発行する2つの異なるパスフレーズA,Bを自動生成するものであり(【0027】)、
パスフレーズHTML送信手段223は、パスフレーズ生成手段222によって生成されたパスフレーズAを含むHTMLドキュメントを作成してWebサーバ21を通じてユーザ端末3に送信するものであり(【0028】)、
パスフレーズメール送信手段224は、パスフレーズ生成手段222によって生成されたパスフレーズBを含む電子メールの本文を作成するとともに、会員情報登録データベース23に登録済みの会員登録希望者の電子メールアドレス宛てに電子メールを送信するものであり(【0029】)、
2つのパスフレーズA,Bを異なる通信手段を使って別個にユーザに通知することによって、2つのパスフレーズA,Bが第三者によっていっぺんに盗まれることは困難であるから、セキュリティの向上を図れ(【0055】)、
変形例として、ユーザ端末3のユーザが所有している複数の電子メールアドレス宛てに2つのパスフレーズA,Bを別々に送信する(【0061】)、
Webシステム。」
3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2001-325372号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0025】さらにデータをデータセンターで保管することにより、災害時のデータ保護、盗難防止等が行え、セキュリティと安全性を高めることができる。また、健康医療情報データを個人情報データと別のデータベースにして管理することで、万一健康医療情報データが漏洩したとしても、誰の健康医療情報であるかを特定することができないため、情報の価値が無くなり、セキュリティと安全性を高めることができる。」
第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1との対比
ア 本願発明1と引用発明1とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明1の「情報通信装置」は、「電子メールの内容を相手先ユーザに伝達できる」ものであり、「情報通信装置」の「送信部3」は、「電子メールなどの情報を、外部ネットワークに送信する部分」であるから、引用発明1の「情報通信装置」は、「相手先ユーザ」の端末に「外部ネットワークを介して接続され」たものである。
そして、引用発明1の「相手先ユーザ」の端末、「外部ネットワーク」は、それぞれ、本願発明1の「ユーザ端末」、「ネットワーク」に相当する。
また、引用発明1の「情報通信装置」と、本願発明1の「検証装置」とは、「装置」である点で共通する。
(イ)引用発明1は、「情報通信装置」の「記憶部20」において、「送信メールの送信相手先ユーザが複数のメールアドレスを所有している場合には、その複数のメールアドレスを予め記憶部20に登録してお」くことが行われ、また、「送信メールの再送アドレスとして、その相手先ユーザが所有するアドレスであって、かつその送信メールを送信したときに使用した相手先のメールアドレス(送信アドレス)と異なる別のメールアドレスを設定」するものであるところ、「別のメールアドレスを設定」する際に、「記憶部20」から「別のメールアドレス」を「抽出する」ことが明らかである。
つまり、引用発明1の「情報通信装置」はその抽出手段を備えており、当該手段は本願発明1の「メールアドレス抽出手段」に相当する。
また、引用発明1の「記憶部20」は、本願発明1の「記憶手段」に相当する。
以上のことから、本願発明1と引用発明1とは、「前記ユーザの複数のメールアドレスが予め登録された記憶手段から前記ユーザの前記メールアドレスを抽出するメールアドレス抽出手段」を備える点で共通する。
なお、引用発明1の「送信メールを送信したときに使用した相手先のメールアドレス」が、上記抽出手段により抽出されたものであるか否かは、引用文献1の記載からは明らかでないことから、抽出するメールアドレスが「複数」である点でも共通するとまではいえない。
(ウ)引用発明1は、「情報通信装置」の「送信メール解析部5」が「送信された電子メールが再送対象メールであるか否かを判定」して、「送信されたメールが再送対象メールであると判定された場合は、その送信メールを再送信が必要な再送メールとする」ことを経て、「送信メールの再送アドレスとして、その相手先ユーザが所有するアドレスであって、かつその送信メールを送信したときに使用した相手先のメールアドレス(送信アドレス)と異なる別のメールアドレスを設定」するものであるから、「複数の」メールアドレスに、「別々のステップで」、メールを送信するものであり、その送信を行うように「制御する手段」を備えている。
また、「再送メール」は、「再送」である以上、「送信された電子メール」と(メールアドレスを除き)「同内容」であることが明らかである。
以上のことから、本願発明1と引用発明1とは、「前記複数のメールアドレスに、別々のステップで、同内容のメールを送信するように制御する手段」を備える点で共通する。
なお、引用発明1は、「再送日時は、ユーザが変更できる」ものであるものの、「再送メール」の送信は、少なくとも「送信された電子メールが再送対象メールであるか否かを判定」する処理の後であるから、「同内容のメール」の送信が「同時刻」である点でも共通するとまではいえない。
イ したがって、本願発明1と引用発明1とは以下の点で一致する。
(一致点)
「ユーザ端末にネットワークを介して接続された、装置であって、
前記ユーザの複数のメールアドレスが予め登録された記憶手段から前記ユーザの前記メールアドレスを抽出するメールアドレス抽出手段と、
前記複数のメールアドレスに、別々のステップで、同内容のメールを送信するように制御する手段とを、
備える装置。」
ウ また、本願発明1と引用発明1とは以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は、「検証装置」であるとともに、「メールが正規の機関から送信されたことを前記メールを受信したユーザ自らが検証することを可能とするための」ものであるのに対し、引用発明1は、「情報通信装置」であって、当該装置の機能や役割に関して「検証装置」であるとの特定はなく、その目的に関して「メールが正規の機関から送信されたことを前記メールを受信したユーザ自らが検証することを可能とするための」ものであるとの特定もない点。
(相違点2)
本願発明1では、「前記ユーザの複数のメールアドレスが予め登録された記憶手段」から「抽出する」、「同内容のメールを送信する」対象の「メールアドレス」が「複数」であるのに対し、引用発明1では、「記憶部20」から「別のメールアドレス」を「抽出する」(上記ア(ウ))ものの、これに加えて「送信メールを送信したときに使用した相手先のメールアドレス」を「抽出する」ものと特定されるものではない、つまり、引用発明1は「抽出する」「メールアドレス」が「複数」であると特定されるものではない点。
(相違点3)
本願発明1では、「同内容のメールを送信する」ことが、「同時刻に」行われるのに対し、引用発明1では、「送信メール」と「再送メール」の送信が「同時刻に」行われるものではない点。
(2)引用発明1との相違点についての判断
そこで、まず相違点1について検討する。
引用発明1の「情報通信装置」は、「電子メールの内容を相手先ユーザに伝達できる可能性を高めることができる」ことを目的とするものである一方、引用文献1には、引用発明1の構成を何らかの他の目的のために用いることに関して記載も示唆もされていない。
そして、引用発明2や、引用文献3の記載事項(上記第3の3、以下同様。)は、それらの内容からすれば、いずれも、引用発明1の構成が「検証」の目的に転用可能であることを示すものではないことが明らかであり、また、当該構成が当該目的に転用可能であることが本願出願時前に周知であったとも認められない。
したがって、「検証」の具体的な内容が「メールが正規の機関から送信されたことを前記メールを受信したユーザ自らが検証する」というものであることについてみるまでもなく、引用発明1の「情報通信装置」を、「検証装置」としての機能や役割を有するものとすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(3)引用発明2との対比
ア 本願発明1と引用発明2とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明2では、「ユーザ端末3」が「サーバ装置2が提供するサービスをネットワーク1を通じて享受する」から、「サーバ装置2」は、「ユーザ端末3」の端末に「ネットワーク1を介して接続され」たものである。
また、引用発明2の「サーバ装置2」において、「当該会員制サービスの利用を希望している会員登録申込者の本人認証を行うための手段」を有する「アプリケーションサーバ22」が「常時稼動」するところ、ここで、「本人認証」とは本人であるか否かの「検証」であるといえる。そうすると、引用発明2の「サーバ装置2」は、「メールが正規の機関から送信されたことを前記メールを受信したユーザ自らが検証することを可能とするための」ものであるか否かは別として、本願発明1の「検証装置」に相当する。
(イ)引用発明2の「アプリケーションサーバ22」が有する「パスフレーズ生成手段222」は、「会員登録に必要なユーザ情報を提供したユーザ(会員登録希望者)に対して発行する2つの異なるパスフレーズA,Bを自動生成」し、同じく「パスフレーズメール送信手段224」は、「パスフレーズ生成手段222によって生成されたパスフレーズBを含む電子メールの本文を作成するとともに、会員情報登録データベース23に登録済みの会員登録希望者の電子メールアドレス宛てに電子メールを送信する」ところ、「電子メールを送信」するために、「ユーザ(会員登録希望者)」の「電子メールアドレス」を「会員情報登録データベース23」から「抽出」することが明らかである。
つまり、引用発明2の「サーバ装置2」はその抽出手段を備えており、当該手段は本願発明1の「メールアドレス抽出手段」に相当する。
そして、引用発明2の「会員情報登録データベース23」は、本願発明1の「記憶手段」に相当する。
また、引用発明2は、「パスフレーズHTML送信手段223」が、「パスフレーズ生成手段222によって生成されたパスフレーズAを含むHTMLドキュメントを作成してWebサーバ21を通じてユーザ端末3に送信する」ものの、「変形例として、ユーザ端末3のユーザが所有している複数の電子メールアドレス宛てに2つのパスフレーズA,Bを別々に送信する」ものとした場合は、「パスフレーズHTML送信手段223」による「フレーズAを含むHTMLドキュメント」の送信に代えて、「パスフレーズメール送信手段224」が、「パスフレーズB」のみならず「パスフレーズA」についても「電子メールを送信する」ものとなり、その結果「複数の電子メールアドレス」が「登録済み」の「会員情報登録データベース23」から、「複数の電子メールアドレス」を「抽出」するものとなることが明らかである。
以上のことから、引用発明2は、「前記ユーザの複数のメールアドレスが予め登録された記憶手段から前記ユーザの前記複数のメールアドレスを抽出するメールアドレス抽出手段」を実質的に備える。
(ウ)引用発明2は、「複数の電子メールアドレス宛てに2つのパスフレーズA,Bを別々に送信する」ものであり、また、当該「送信」は、上記(イ)のとおり「パスフレーズメール送信手段224」が行うものである。
したがって、本願発明1と引用発明2とは、「前記抽出された複数のメールアドレスに、別々のステップで、メールを送信するように制御する手段」を備える点で共通する。
イ したがって、本願発明1と引用発明2とは以下の点で一致する。
(一致点)
「ユーザ端末にネットワークを介して接続された、検証装置であって、
前記ユーザの複数のメールアドレスが予め登録された記憶手段から前記ユーザの前記複数のメールアドレスを抽出するメールアドレス抽出手段と、
前記抽出された複数のメールアドレスに、別々のステップで、メールを送信するように制御する手段とを、
備える検証装置。
ウ また、本願発明1と引用発明2とは以下の点で相違する。
(相違点4)
「検証装置」が、本願発明1では、「メールが正規の機関から送信されたことを前記メールを受信したユーザ自らが検証することを可能とするための」ものであるのに対し、引用発明2では、(サーバ装置2が、)「当該会員制サービスの利用を希望している会員登録申込者の本人認証を行うため」のものであって、「検証」の内容が異なる点。
(相違点5)
本願発明1では、「複数のメールアドレス」に「メールを送信する」のが、「同時刻に」行われるのに対し、引用発明2では、「複数の電子メールアドレス宛てに2つのパスフレーズA,Bを別々に送信する」ことについて「同時刻に」行われると特定されるものではない点。
(相違点6)
本願発明1では、「複数のメールアドレス」に送信する「メール」の内容が、「同内容」であるのに対し、引用発明2では、「複数の電子メールアドレス宛て」への「送信」が「2つのパスフレーズA,Bを別々に送信する」ものであって内容が異なる点。
(4)引用発明2との相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点6について先に検討する。
引用発明2は、「2つのパスフレーズA,Bが第三者によっていっぺんに盗まれることは困難であるから、セキュリティの向上を図れ」るものであるところ、この点は、「2つのパスフレーズA,B」のうちの一方が盗まれた場合でも、他方が盗まれない限りセキュリティが確保できるという趣旨であることが明らかである。
そうすると、引用発明2において「2つのパスフレーズ」を同じ内容とすることは、「複数の電子メールアドレス宛て」の一方について盗まれるだけでセキュリティが確保できなくなる点で、阻害要因があるといえ、引用発明1や引用文献3の記載事項にかかわらず、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
2 本願発明2~6について
本願発明5は、実質的に本願発明1とカテゴリが相違するのみであり、本願発明2~4、本願発明6は、それぞれ、本願発明1、本願発明5を減縮した発明である。
そうすると、本願発明2~6も本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1、5、6に係る発明は、上記引用文献1に記載された発明に基づいて、請求項1、2、5、6に係る発明は、上記引用文献2に記載された発明に基づいて、請求項3、4に係る発明は、上記引用文献1~3に記載された発明に基づいて、それぞれ、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、上記第4のとおり、本願発明1~6は、上記引用文献1~3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
1 令和2年9月29日付けの拒絶理由通知書により通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
この出願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項2に、「前記同内容のメールに、前記ユーザと前記メールの送信元の間で定めた合言葉を含ませる」と記載されているが、請求項2が引用する請求項1には「同内容のメールを送信する」と記載されているところ、「同内容」の複数のメールに異なる「合言葉を含ませる」結果、「送信」される複数のメールは「同内容」ではなくなるから、請求項2の上記記載は請求項1と矛盾しており、明確でない。
また、請求項4に記載されている「同胞メール」とはどのようなメールか不明である。
2 これに対し、令和2年10月14日に提出された手続補正書による補正により、請求項2の「合言葉を含ませる」との記載が、(「挿入」後は複数のメールが完全同一にならないことを意味する)「合言葉を挿入する」との記載に補正されて、請求項1と矛盾しない記載となった。
また、同補正により、誤記である「同胞」が正しい「同報」に補正された。
以上のことから、当審拒絶理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1~6は、当業者が引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-011392