特許拒絶査定不服審判
2019-009880
タッチパネルセット及びイレーサ
- 審判番号
- 2019-009880
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-123191
- 請求日
- 2019年07月25日
- 審決日
- 2020年11月10日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シャープ株式会社
- 【請求人代理人】河野 英仁
- 【請求人代理人】河野 登夫
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼田 耕一
- 審判官 小田 浩
- 審判官 野崎 大進
- 分類
- P18 .121-Z (G06F) / P18 .575-Z (G06F) / P18 .572-Z (G06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-123191「タッチパネルセット及びイレーサ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月12日出願公開、特開2017- 10168〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 出願の経緯
本願は平成27年6月18日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年12月25日付け 拒絶理由通知書
平成31年 2月25日 意見書、補正書の提出
令和 元年 5月20日付け 拒絶査定
令和 元年 7月25日 審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和元年7月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年7月25日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項4の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所である。)
「タッチパネル装置の表示面が表示した画像の内容を消去するために用いられるイレーサであって、
前記表示面に接触するための第1接触面及び第2接触面を備え、
前記第2接触面の面積は、前記第1接触面の面積よりも小さくなっており、
前記第1接触面及び前記第2接触面は、互いに隣接して配置されており、
当該イレーサの内側で前記第1接触面及び前記第2接触面が互いになす角は鈍角であり、
前記第1接触面及び前記第2接触面は、
前記表示面への接触時に接触領域の位置が前記タッチパネル装置に検出されない非検出領域と、
前記第1接触面内及び前記第2接触面内で互いに離隔しており、前記表示面への接触時に接触領域の位置が前記タッチパネル装置に検出される複数の検出領域とを含んでいる
ことを特徴とするイレーサ。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成31年2月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項5の記載は次のとおりである。
「タッチパネル装置の表示面が表示した画像の内容を消去するために用いられるイレーサであって、
前記表示面に接触するための第1接触面及び第2接触面を備え、
前記第2接触面の面積は、前記第1接触面の面積よりも小さくなっており、
前記第1接触面及び前記第2接触面は、
前記表示面への接触時に接触領域の位置が前記タッチパネル装置に検出されない非検出領域と、
前記第1接触面内及び前記第2接触面内で互いに離隔しており、前記表示面への接触時に接触領域の位置が前記タッチパネル装置に検出される複数の検出領域とを含んでいる
ことを特徴とするイレーサ。」
2 補正の適否
本件補正の、補正後の請求項4に記載された発明は、本件補正前の請求項5に対応し、補正前の請求項5に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記表示面に接触するための第1接触面及び第2接触面」について、「前記第1接触面及び前記第2接触面は、互いに隣接して配置されており、当該イレーサの内側で前記第1接触面及び前記第2接触面が互いになす角は鈍角であり、」との限定を付加するものであって、補正前の請求項5に記載された発明と補正後の請求項4に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項4に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載
ア 引用文献A
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2015-79350号公報(以下、「引用文献A」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付加した。以下同じ。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ入力を検出し、検出結果に応じた表示を行う表示装置であって、特に、検出結果に応じて表示画像の消去処理を行う表示装置に関するものである。」
「【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態の表示装置の構成例を説明する図である。
図1の表示装置1は、各種情報を表示する表示部10を備え、該表示部10の前面にセンサシステム11を備える。センサシステム11は、該センサシステム11に対するタッチ入力を複数同時に検出可能な静電容量方式のものである。
【0018】
ユーザが、表示装置1に対して、すなわちセンサシステム11に対して、指T1やペンT2でタッチ入力すると、表示装置1では、センサシステム11でのタッチ入力の検出結果に応じて通常の描画処理を行い、表示部10に表示する。
また、ユーザがセンサシステム11に対して、イレーサT3でタッチ入力すると、表示装置1では、センサシステム11でのタッチ入力の検出結果に応じて、表示部10への表示画像の消去処理を行う。
【0019】
図2は、イレーサT3の構成例を説明する図である。
イレーサT3は、誤検出防止のため特殊形状となっており、具体的には、センサシステム11側の面T31に、円形の導電体から成る入力部T32を2個×3列の計6個有する。入力部T32の数は、6個に限られないが、ユーザの指による入力と確実に区別して識別するために6個以上が好ましい。
このイレーサT3は、パッシブ型であり、電源は不要である。
【0020】
図3(A)は、イレーサT3で表示装置1にタッチ操作したときに該表示装置1で検出される静電容量の変化量の分布を変化量をZ軸方向として3次元的に示す図で、図3(B)は同分布であって静電容量の変化が検出された部分を灰色で示す図である。
図4(A)は、指等で表示装置1にタッチ操作したときに該表示装置1で検出される静電容量の変化量の分布を3次元的に示す図で、図4(B)は同分布であって静電容量の変化が検出された部分を灰色で示す図である。
図3(A)及び図3(A)では、センサシステム11のセンサ面をXY平面、静電容量変化量をZ軸方向としている。
【0021】
図3(A)の分布D1、図3(B)の分布D2、図4(A)の分布D3、図4(B)の分布D4に示すように、イレーサT3によるタッチ入力の場合と、指等によるタッチ入力の場合とで、入力配置検出部13aによって検出される静電容量が変化する位置の個数と位置関係が異なり、言い換えると、検出されるタッチ入力位置のパターンが異なる。
図1の表示装置1では、上述のようにタッチ入力位置のパターンが異なることを利用して、タッチ入力元がイレーサT3であるか否かを判定する。」
「【0030】
図6は、図5の表示装置1における描画処理の一例を示すフローチャートである。
描画処理の際、表示装置1では、まず、入力位置検出部13aがタッチ入力があったか否か判定する(ステップS1)。タッチ入力がないと判定された場合(NOの場合)、ステップS1に戻り、タッチ入力があると判定された場合(YESの場合)、判定部13bは、検出されたタッチ入力位置の数は6点であるか否か判定する(ステップS2)。
タッチ入力位置の数が6点の場合、判定部13bは、検出されたタッチ入力位置のパターンが、記憶部14に記憶されている、イレーサT3によってタッチ入力された場合のタッチ入力位置のパターンと一致するか判定する(ステップS3)。
【0031】
タッチ入力位置の数が6点でない場合(ステップS2、NOの場合)やタッチ入力位置のパターンが一致しない場合(ステップS3、NOの場合)、表示装置1は描画モードを通常描画モードへ移行し(ステップS6)、描画処理部15がタッチ入力に応じた通常描画処理を行い(ステップS7)、ステップS1へ処理が戻される。
【0032】
ステップS3において、タッチ入力位置のパターンが一致すると判定された場合(YESの場合)、表示装置1は描画モードをイレーサモードへ移行し(ステップS4)、描画処理部15が、既に描画した情報のうち、検出されたタッチ入力位置に囲まれた領域にあるものを背景色で上書きし、イレーサ処理を行い(ステップS5)、ステップS1へ処理が戻される。」
【図1】
【図2】
【図3】
上記段落【0019】及び【図2】の記載から、イレーサT3は、センサシステム11側の面T31に、互いに離間し、円形の導電体から成る入力部T32を2個×3列の計6個有していると認められる。
加えて、上記段落【0018】、【0021】、【0030】及び【図1】、【図3】の記載から、イレーサT3のタッチ入力の場合、イレーサT3のセンサシステム11側の面T31がセンサシステム11にタッチしていると認められ、また、その際のセンサシステム11の静電容量が変化する位置は、イレーサT3の面T31がセンサシステム11にタッチした際の、イレーサT3の面T31にある円形の導電体から成る入力部T32の位置であるから、センサシステム11は、イレーサT3の面T31がセンサシステム11にタッチした際に、イレーサT3の面T31にある円形の導電体から成る入力部T32を検出していると認められる。
(イ)そうすると、上記記載から、引用文献Aには、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「センサシステム11を備え、タッチ入力を検出し、検出結果に応じた表示を行う表示装置1の、検出結果に応じて表示画像の消去処理を行うイレーサT3であって、
イレーサT3は、センサシステム11側の面T31に、互いに離間し、円形の導電体から成る入力部T32を2個×3列の計6個有し、
入力部T32は、イレーサT3の面T31がセンサシステム11にタッチした際に、センサシステム11に検出される、
イレーサT3。」
イ 引用文献B
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平8-286830号公報(以下、「引用文献B」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、入力ペンなどの手書き入力デバイスの入力軌跡に対応する軌跡を表示画面上に描画する手書き入力装置に関し、特に手書き入力デバイスの種類を認識するための技術に関する。」
「【0015】図1はこの発明の実施例を示すもので、スクリーンパネル1は、手書き入力画像などの各種表示を行う表示パネル2と、この表示パネル2上に積層されて入力デバイス(入力ペン4、イレーサ5など)によって指示された座標位置を検出する入力座標検出パネル3とを有している。
【0016】この場合、入力デバイスとして、図2に示すように、ペン形状の入力ペン4と、長方形状のイレーサ5とを具備させている。入力ペン4は書き込み型の描画を行うもので、イレーサ5は手書き入力された文字、図形などを消去するためのものである。
【0017】入力座標検出パネル3としては、感圧式、静電容量結合式、超音波式、電磁授受方式等の各種の方式があり、図3に感圧方式のパネルの概念的構成を示す。」
「【0023】入力デバイス識別部9は、入力座標検出パネル3に対する入力デバイスの入力面積または入力形状を検出し、この検出した入力面積または入力形状に基づいて入力操作を行った手書き入力デバイスの種類を識別し、この識別情報を描画処理部10に出力する。入力座標検出パネル3が感圧式パネルの場合は、パネル3に対して同時あるいはほぼ同時にタッチされた領域の面積または形状を検出し、この検出した面積または形状に基づいてタッチした入力デバイスの種類を識別する。図5に、各種入力デバイスによるタッチ領域の例を示す。クロスハッチングを施した領域がタッチ領域である。」
「【0040】また、図2(b)に示した直方体形状のイレーサ5は、その形状および面積からみて、3つの異なる面を有している。したがって、これら3つの面の接触面積を入力ペンによる接触面積と異ならせるようにしておけば、このイレーサ5の各面を用いて、消去面積の異なる消去処理を行うことができる。」
【図2】
(イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項(以下、「引用文献B記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「入力デバイスの入力軌跡に対応する軌跡を表示画面上に描画する手書き入力装置に関し、
手書き入力された文字、図形などを消去するイレーサ5について、
消去面積の異なる消去処理を行うために、直方体形状のイレーサの、その形状および面積からみて、異なる3つの面を使用すること。」
ウ 引用文献C
(ア)本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開昭61-26124号公報(以下、「引用文献C」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「産業上の利用分野
本発明は、既に入力さた文字、図形を入力面上から消去する際に、消去器具の消去面に取り付けられた突起物の座標位置を入力できる文字・図形入力装置において、微小領域の消去が可能な消去器具に関するものである。」(第1頁右下欄1行乃至6行)
「発明の目的
本発明は、この様な従来の問題点を解決するものであり、消去器具の角を用いて微小領域を消去する場合にも消去領域を求めることができる様な文字図形入力装置用消去器具を提供するものである。」(第2頁左上欄1行乃至6行)
「実施例の説明
以下に本発明の一実施例を図面を参照して説明する。第2図に示す様に、消去器具1(本実施例においては黒板消し)の消去面2の角を斜めに削り取った微小消去面4の中央に突起物6を設ける。この様にすれば、第3図に示す様に通常、消去面2を文字図形入力装置(本実施例においては電子黒板)の入力面6に押し描てている間は、微小消去面4に取り付けだ突起物5は入力面6に接触せず、突起物3a、3bの座標値のみが入力される。一方第4図に示す様に、消去器具1の微小消去面4を前記入力面6に押し当てている間は、突起物3a、3bは入力面6に接触せず、突起物5の座標値のみが入力される。これにより、第3図に示す様な消去方法と区別して、第4図に示す様に微小領域を消去することができる。」(第2頁左上欄14行乃至右上欄9行)
第2図
(イ)上記記載から、引用文献Cには、次の技術的事項(以下、「引用文献C記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「文字図形入力装置に既に入力された文字、図面を入力面上から消去する消去器具において、微小領域を消去するために、消去面2とは別に、消去面2の角を斜めに削り取った微小消去面4を設けること。」
エ 周知技術
上記引用文献B記載事項及び引用文献C記載事項から、以下の事項(以下、「周知技術」という。)は周知技術である。
「イレーサにおいて、異なる面積を消去するために、異なる面積を有し、互いに隣接する面を、消去面とすること。」
(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「タッチ入力を検出し、検出結果に応じた表示を行う表示装置1」は、本件補正発明の「タッチパネル装置」に相当する。
そうすると、引用発明の「タッチ入力を検出し、検出結果に応じた表示を行う表示装置1の、検出結果に応じて表示画像の消去処理を行うイレーサT3」は、本件補正発明の「タッチパネル装置の表示面が表示した画像の内容を消去するために用いられるイレーサ」に相当する。
イ 引用発明のイレーサT3のセンサシステム11にタッチする「面T31」と、本件補正発明の「前記表示面に接触するための第1接触面及び第2接触面」は、「前記表示面に接触するための接触面」である点で共通する。
ウ そして、引用発明の「面T31」は、互いに離間し、円形の導電体から成る入力部T32を2個×3列の計6個有し、この入力部T32は、センサシステム11に検出されているから、この6個の入力部T31は、本件補正発明の「互いに離隔しており、前記表示面への接触時に接触領域の位置が前記タッチパネル装置に検出される複数の検出領域」に相当する。
エ 加えて、「面T31」の入力部T32でない部分は、センサシステム11に検出されていないから、この部分は、本件補正発明の「前記表示面への接触時に接触領域の位置が前記タッチパネル装置に検出されない非検出領域」に相当する。
オ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「タッチパネル装置の表示面が表示した画像の内容を消去するために用いられるイレーサであって、
前記表示面に接触するための接触面を備え、
接触面は、
前記表示面への接触時に接触領域の位置が前記タッチパネル装置に検出されない非検出領域と、
接触面内で互いに離隔しており、前記表示面への接触時に接触領域の位置が前記タッチパネル装置に検出される複数の検出領域とを含んでいる
ことを特徴とするイレーサ。」
【相違点1】
「接触面」について、本件補正発明は「第1接触面及び第2接触面」の2つの「接触面」を備えているのに対して、引用発明は、2つの「接触面」を備えていない点。
【相違点2】
本件補正発明は「前記第2接触面の面積は、前記第1接触面の面積よりも小さくなって」いるのに対して、引用発明は2つの「接触面」を備えていないために、対応する関係を備えていない点。
【相違点3】
本件補正発明は「前記第1接触面及び前記第2接触面は、互いに隣接して配置されて」いるのに対して、引用発明は2つの「接触面」を備えていないために、対応する関係を備えていない点。
【相違点4】
本件補正発明は「当該イレーサの内側で前記第1接触面及び前記第2接触面が互いになす角は鈍角であ」るのに対して、引用発明は2つの「接触面」を備えていないために、対応する関係を備えていない点。
【相違点5】
本件補正発明は「前記第1接触面及び前記第2接触面は、前記表示面への接触時に接触領域の位置が前記タッチパネル装置に検出されない非検出領域と、前記第1接触面内及び前記第2接触面内で互いに離隔しており、前記表示面への接触時に接触領域の位置が前記タッチパネル装置に検出される複数の検出領域とを含んでいる」のに対して、引用発明は、「接触面は、前記表示面への接触時に接触領域の位置が前記タッチパネル装置に検出されない非検出領域と、接触面内で互いに離隔しており、前記表示面への接触時に接触領域の位置が前記タッチパネル装置に検出される複数の検出領域とを含んでいる」ものの、2つの「接触面」を備えていないために、対応する構成を備えていない点。
(4)判断
以下、各相違点について検討する。
ア 相違点1ないし3及び5について
事案に鑑み、相違点1ないし3及び5についてまとめて検討する。
引用文献B記載事項及び引用文献C記載事項にあるように、イレーサにおいて、異なる面積を消去するために、異なる面積を有し、互いに隣接する面を、消去面とすることは、周知技術である。
そして、引用発明において、異なる面積を消去することは、当然考慮することである。
そうすると、引用発明に上記周知技術を採用し、相違点1ないし3に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到することである。
その際、引用発明の「入力部T32」は、面積の異なる、互いに隣接した面に配置されるから、引用発明も、相違点5に係る構成と同様の構成を備えると認められる。
イ 相違点4について
引用文献C記載事項にあるように、文字図形入力装置に既に入力された文字、図面を入力面上から消去する消去器具において、微小領域を消去するために、消去面2とは別に、消去面2の角を斜めに削り取った微小消去面4を設けることは公知の技術である。そして、この微小消去面4は、消去面2の角を斜めに削り取った面であることから、消去面2と微小消去面4とのなす角は鈍角となることは明らかである。
画面の内容を消去する際に、微小領域の消去について考慮することは、当業者が容易に想到することである。そして、上記アで検討したように、引用発明に周知技術を採用し、相違点1ないし3及び5に係る構成を採用した際に、併せて微小領域を消去することを考慮し、引用文献C記載事項を採用し、相違点4に係る構成を備えるようにすることに、格別の困難性は認められない。
ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献B、Cに記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ したがって、本件補正発明は、引用発明並びに引用文献B及びCに記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年7月25日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年2月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項5に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由、
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
そして、請求項5については、引用文献1及び5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである、としている。
<引用文献等一覧>
1.特開2015-079350号公報(上記第2の[理由]2(2)の引用文献Aである。)
2.特開2012-168612号公報
5.特開平8-286830号公報(上記第2の[理由]2(2)の引用文献Bである。)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1,5及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)ア,イに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記表示面に接触するための第1接触面及び第2接触面」に係る、「前記第1接触面及び前記第2接触面は、互いに隣接して配置されており、当該イレーサの内側で前記第1接触面及び前記第2接触面が互いになす角は鈍角であり、」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献B,Cに記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献5に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上の通り、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-009880