特許拒絶査定不服審判
2019-009193
複合容器およびその製造方法、プリフォームならびに複合プリフォーム
- 審判番号
- 2019-009193
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-264979外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年07月09日
- 審決日
- 2020年07月31日
- 公報発行日
- 2020年11月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (B29C) / P18 .575-Z (B29C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-264979「複合容器およびその製造方法、プリフォームならびに複合プリフォーム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月11日出願公開、特開2016-124137〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月26日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 8月30日付け:拒絶理由通知
同年10月31日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月11日付け:拒絶理由通知(最後)
平成31年 2月 8日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月17日付け:補正の却下の決定、拒絶査定
令和 1年 7月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 4月17日 :上申書の提出
第2 令和1年7月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年7月9日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 令和1年7月9日付けの手続補正の内容
令和1年7月9日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正により補正される前の(平成31年4月17日付けの補正却下により、同年2月8日に提出された手続補正書による補正が却下されたため、平成30年10月31日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1の記載である、
「【請求項1】
複合容器において、
プラスチック材料製の容器本体と、
前記容器本体の外面に密着したプラスチック製部材とを備え、
前記容器本体および前記プラスチック製部材は、ブロー成形により一体として膨張され、
前記容器本体は、樹脂材料および着色剤を含んでなる着色層を少なくとも備え、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体から剥離除去可能であり、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体に対し、熱収縮する作用を有することを特徴とする複合容器。」を、
「【請求項1】
複合容器において、
プラスチック材料製の容器本体と、
前記容器本体の外面に密着したプラスチック製部材とを備え、
前記容器本体および前記プラスチック製部材は、ブロー成形により一体として膨張され、
前記容器本体は、樹脂材料および着色剤を含んでなる着色層を少なくとも備え、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体に接着することなく密着しており、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体に対し、熱収縮する作用を有し、
前記プラスチック製部材が、前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線を有することを特徴とする複合容器。」
と補正する事項を含むものである(なお、下線は、補正箇所を示すため当審が付したものである。)。
2 本件補正の目的
請求項1についての本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の、プラスチック製部材において、「容器本体から剥離除去可能」にすることを、「容器本体に接着することなく密着」することとし、明りょうでない記載の釈明をするとともに、「剥離除去するための切断線」を有することを、更に限定するものであって、本件補正の前後で請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号及び第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)及び明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
3 独立特許要件違反の有無について
請求項1についての本件補正は、限定的減縮を目的とする補正を含むものであるといえるとしたときには、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、本件補正が特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するものであるか(いわゆる独立特許要件違反の有無)についての検討がなされるべきところ、以下述べるように、本件補正は当該要件に違反するといえる。
すなわち、本件補正発明は、本願の出願日前に頒布された刊行物である下記引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・引用文献2 特開昭59-91038号公報
(原査定の理由で引用された「引用文献2」)
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1に記載したとおりのものである。
(2)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、「ボトルの製造方法」に関して、おおむね次の記載がある。
なお、下線は当審で付したものである。
ア 「2.特許請求の範囲
(1) ポリエチレンテレフタレートよりなる有底パリソンの少なくとも胴壁部外面に、ガスバリヤー性プラスチックフィルムを装着した後、加熱、2軸延伸-吹込成形を行なうことを特徴とする、少なくとも肩部および胴部外面に該ガスバリヤー性プラスチックフィルムが被着したポリエチレンテレフタレートボトルの製造方法。」(第1ページ左下欄第4ないし11行)
イ 「3.発明の詳細な説明
本発明はボトルの製造方法に関し、さらに詳しくは外面にガスバリヤー性プラスチックフィルムが被着した延伸-吹込成形ポリエチレンテレフタレートボトルの製造方法に関する。
有底パリソンより2軸延伸-吹込成形により形成されたポリエチレンテレフタレートボトル(本明細書においては、エチレンテレフタレートを主成分とするエチレンテレフタレート共重合体、およびポリエチレンテレフタレートを主成分とするブレンドを含めてポリエチレンテレフタレートと呼ぶ)は、ガスバリヤー性、透明性、耐衝撃性等の容器特性に優れており、最近各種の内容物の収納用に実用化されつつある。しかしビールや炭酸飲料等の加圧炭酸ガスを含有する内容物を充填、密封した場合、経時につれて炭酸ガスが、若干であるが薄肉の肩部や胴部の壁部を透過して失われ、一方酸素が、僅かであるが上記壁部を透過して侵入して、内容物のフレーバが損ぜられ易い。」(第1ページ左下欄第12行ないし右下欄第10行)
ウ 「第1図において1はポリエチレンテレフタレートよりなる有底パリソンであって、通常射出成形によって形成される。2はガスバリヤー性プラスチックフィルム(例えば厚さ10~50μmのポリ塩化ビニリデン系フィルム;単位厚さの炭酸ガス、酸素ガス等に対するバリヤー性がポリエチレンテレフタレートの夫より大きいプラスチックのフィルム)よりなるチューブであって、例えばインフレーション法によって形成された継目無しの長尺チューブを、パリソン1の胴壁部1aの高さにほぼ等しい長さに切断したものである。その内径は胴壁部1aの外径より若干大きい。
第1図はチューブ2を倒立したパリソン1の胴壁部1aの外面側に緩挿し、ネックリング1b上に載置した状態を示す。次にこのパリソン1を延伸-吹込成形のため約80~100℃の範囲内の所定温度に、赤外線照射あるいはオーブン通過等によって加熱する。このさいチューブ2は熱収縮して、第2図に示すように、パリソン1の胴壁部1aの外面に密着する。次いで常法により、このチューブ2が密着したパリソン1を2軸延伸-吹込成形を行なって、第3図に示すようなボトル3を形成する。
そのさいチューブ2も同時に変形し、チューブ2を形成するプラスチックフィルム2’が、ボトル3の比較的薄肉の(通常約0.2~0.3mm)胴部3aおよび肩部3bに密着した状態で該部を被覆する。」(第2ページ左上欄第14行ないし左下欄第1行)
エ 「
」
(3) 引用文献2に記載された発明
特に上記(2)ウの記載から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「ガスバリヤー性プラスチックフィルムよりなる、インフレーション法によって形成された継目無しの長尺チューブを、ポリエチレンテレフタレートよりなるパリソン1の胴壁部1aの高さにほぼ等しい長さに切断したチューブ2を倒立したパリソン1の胴壁部1aの外面側に緩挿し、ネックリング1b上に載置し、次にこのパリソン1を延伸-吹込成形のため約80~100℃の範囲内の所定温度に、赤外線照射あるいはオーブン通過等によって加熱し、このさいチューブ2は熱収縮して、パリソン1の胴壁部1aの外面に密着させ、次いで常法により、このチューブ2が密着したパリソン1を2軸延伸-吹込成形を行ない形成した、ボトル3であって、
チューブ2も同時に変形し、チューブ2を形成するプラスチックフィルム2’が、ボトル3の比較的薄肉の胴部3aおよび肩部3bに密着した状態で該部を被覆している、ガスバリヤー性プラスチックフィルムが被着したポリエチレンテレフタレートボトル。」
(4) 対比・判断
ア 本件補正発明と引用発明の対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
引用発明における、「ボトル3」及び「プラスチックフィルム2’」は、それぞれ、材質がポリエチレンテレフタレート及びガスバリヤー性プラスチックフィルムからなるものであり、「プラスチックフィルム2’が、ボトル3の比較的薄肉の胴部3aおよび肩部3bに密着した状態で該部を被覆している」ことから、本件補正発明の「プラスチック材料製の容器本体」及び「プラスチック製部材」に相当し、引用発明の「ガスバリヤー性プラスチックフィルムが被着したポリエチレンテレフタレートボトル」は、本件補正発明の「複合容器」に相当する。
また、引用発明において、「プラスチックフィルム2’」は、「ボトル3」に接着されておらず、また、延伸-吹込成形後においても、熱収縮する作用を有するのは明らかである。
したがって、本件補正発明と引用発明は、
「複合容器において、
プラスチック材料製の容器本体と、
前記容器本体の外面に密着したプラスチック製部材とを備え、
前記容器本体および前記プラスチック製部材は、ブロー成形により一体として膨張され、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体に接着することなく密着しており、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体に対し、熱収縮する作用を有する複合容器。 」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
容器本体について、本件補正発明は、「樹脂材料および着色剤を含んでなる着色層を少なくとも備え」るものであるのに対し、引用発明は、そのような特定がなされない点。
<相違点2>
プラスチック製部材について、本件補正発明は、「プラスチック製部材を剥離除去するための切断線を有する」ものであるのに対し、引用発明は、そのような特定がなされない点。
イ 相違点についての判断
そこで、上記相違点について、以下に検討する。
(ア) 相違点1について
本件補正発明における「樹脂材料および着色剤を含んでなる着色層」は、明細書の段落【0029】の「容器本体10は、単層からなるもの、すなわち、樹脂材料および着色剤を含んでなる着色層のみからなるものであっても、着色層を少なくとも1層備える多層からなるものであってもよい」との記載から、単層のものを包含する。
一方、引用文献2に「最近各種の内容物の収納用に実用化されつつある。しかしビールや炭酸飲料等の加圧炭酸ガスを含有する内容物を充填、密封した場合」(上記(2)イ)と記載されるように、引用発明は、飲料の容器も意図したものであり、飲料容器における意匠性・識別性付与や、上記の、特に「ビール」用の容器のように内容物への遮光性付与は、当業者にとってありふれた課題である。
容器本体に装飾性の観点から着色剤を含有させることは、周知の技術である(例えば、平成30年8月30日付け拒絶理由通知における引用文献2である特開昭52-81377号公報の特許請求の範囲第4項参照。以下、「周知技術1」という。)から、相違点1に係る特定事項の引用発明への適用は、自明な課題に対する周知技術1の単なる付加に過ぎない。
(イ) 相違点2について
本件補正発明におけるブロー成形後の「プラスチック製部材」は、明細書の段落【0061】の「プラスチック製部材40(40a)には、デザイン又は印字が施されていても良い。この場合、ブロー成形後に容器本体10に対して別途ラベル等を付与することなく、複合容器10Aに画像や文字を表示することが可能となる」との記載から、ラベル機能を有したフィルムを包含する。
一方、ポリエチレンテレフタレートボトルなどのプラスチック製容器の分別回収は、本願の出願時において普通に行われていることであり、ラベルに切断線を設けることも技術常識といえるものである(例えば、特開2010-173694号公報の特許請求の範囲参照。以下、「技術常識1」という。)。
そこで、引用発明において、ラベルを有する飲料容器における自明な課題である分別回収の効率性を向上させるべく、「プラスチックフィルム2’」に、剥離除去のための切断線を設けることは、当業者にとって、単なる自明な課題に対する対応手段である技術常識1の単なる付加に過ぎない。
そして、相違点1及び2に係る本件補正発明の特定事項によって奏せられる効果については、当業者が予想し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
ウ 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。
「引用文献2には、ガスバリア性フィルムを外側に備えるPET容器が開示されております。
しかしながら、ガスバリア性フィルムに切断線を設けることについては何ら開示されておりません。そして、引用文献2においては、使用後において、PET容器とガスバリア性フィルムとを別々に回収し、リサイクルすることについて何ら認識しておらず、容器本体へフィルムを、接着剤を介して接着してもよいとの記載もあります。」
しかしながら、ガスバリア性フィルムに切断線を設けることについては、相違点2として、上記イ(イ)で述べたとおりであるし、容器本体とフィルムの接着に関しても、引用発明は、継目無しの長尺チューブを、パリソン1の胴壁部1aの外面側に緩挿するものであり、接着するものではない。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)独立特許要件の検討のまとめ
上述のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
4 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたため、本願の請求項1~6に係る発明は、平成30年10月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲のとおりであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1に記載したとおりである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、概略、次のとおりの理由を含むものである。
理由2(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1乃至6
・引用文献等1または2
引用文献1 省略
引用文献2 特開昭59-91038号公報
3 引用文献2の記載事項等
引用文献2の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]3(2)及び(3)のとおりである。
4 対比・判断
(1) 本願発明と引用発明を対比する。
本願発明の「複合容器」、「容器本体」及び「プラスチック製部材」に係る引用発明との相当関係は、上記第2[理由]3(4)アのとおりである。
また、引用発明は、継目無しの長尺チューブを、パリソン1の胴壁部1aの外面側に緩挿したものを延伸-吹込成形して、「プラスチックフィルム2’」を「ボトル3」に密着させたものであるから、「プラスチックフィルム2’」は、「ボトル3」から剥離除去可能と認められる。
したがって、本願発明と引用発明は、
「【請求項1】
複合容器において、
プラスチック材料製の容器本体と、
前記容器本体の外面に密着したプラスチック製部材とを備え、
前記容器本体および前記プラスチック製部材は、ブロー成形により一体として膨張され、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体から剥離除去可能であり、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体に対し、熱収縮する作用を有することを特徴とする複合容器。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
本願発明の「容器本体」は、「樹脂材料および着色剤を含んでなる着色層を少なくとも備え」るのに対し、引用発明は、そのような特定がなされない点。
(2) 相違点についての判断
そこで、上記相違点3について、以下に検討する。
相違点3は、上記第2[理由]3(4)アで認定した相違点1と同一のものであり、本件補正発明が、上記第2[理由]3のとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明もまた、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 結語
上記第3のとおり、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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