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特許拒絶査定不服審判

2019-008349

局所的に偏光解消領域を有する偏光板の製造方法およびそれを用いて製造された偏光板

審判番号
2019-008349
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-538496外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年06月24日
審決日
2020年08月17日
公報発行日
2021年02月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016-538496「局所的に偏光解消領域を有する偏光板の製造方法およびそれを用いて製造された偏光板」拒絶査定不服審判事件〔平成28年1月7日国際公開,WO2016/003105,平成29年1月26日国内公表,特表2017-503193〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は,成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特願2016-538496号(以下「本件出願」という。)は,2015年(平成27年)6月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年6月30日及び同年9月26日 韓国)を国際出願日とする特許出願であって,その手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。 平成29年 5月31日付け:拒絶理由通知書 平成29年11月 1日付け:意見書 平成29年11月 1日付け:手続補正書 平成30年 4月20日付け:拒絶理由通知書 平成30年 9月20日付け:意見書 平成30年 9月20日付け:手続補正書 平成31年 2月15日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和 元年 6月24日付け:審判請求書 令和 元年 6月24日付け:手続補正書 令和 元年12月 2日付け:上申書 令和 2年 4月 3日付け:審尋 令和 2年 7月 6日付け:回答書 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年6月24日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 (1) 本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前(平成30年9月20日にされた手続補正後の)特許請求の範囲の請求項13の記載は,次のとおりである。 「【請求項13】 ヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上が染着されたポリビニルアルコール系偏光子,および 前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一面に積層された保護フィルムを含む偏光板であって, 局所的に400nm~800nm波長帯域での単体透過度が80%以上である少なくとも1つの偏光解消領域を有し,前記偏光解消領域は算術平均粗さ(Ra)が100nm以下である偏光板。」 (2) 本件補正後の特許請求の範囲 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。なお,下線は補正箇所を示す。 「【請求項1】 ヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上が染着されたポリビニルアルコール系偏光子,および 前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一面に積層された保護フィルムを含む偏光板であって, 局所的に400nm~800nm波長帯域での単体透過度が80%以上である少なくとも1つの偏光解消領域を有し,前記偏光解消領域は算術平均粗さ(Ra)が100nm以下であり, 前記偏光解消領域は二乗平均平方根粗さ(Rq)が100nm以下であり, 前記偏光板の偏光解消領域はヘイズが3%以下であり, 少なくとも1つの前記偏光解消領域の面積は0.5mm2以上500mm2以下であり, 前記偏光解消領域は偏光子のカメラモジュールが位置する領域であることを特徴とする偏光板。」 (3) 本件補正の内容 本件補正は,[A]本件補正前の請求項13に記載された発明(以下「本願発明」という。)の,発明を特定するために必要な事項である「偏光解消領域」を,「二乗平均平方根粗さ(Rq)が100nm以下であり」,「ヘイズが3%以下であり」,「少なくとも1つの」「面積は0.5mm2以上500mm2以下であり」,「偏光子のカメラモジュールが位置する領域である」ものに限定するとともに,[B]本件補正前の請求項1~請求項12,請求項14,請求項15及び請求項18を削除する補正である。ここで,上記[A]の補正は,本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0113】,【0115】,【0116】及び【0123】の記載に基づくものである。また,本願発明と,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)の産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題は,同一である(【0002】及び【0009】)。 したがって,本件補正は特許法17条の2第3項の規定に適合するとともに,同条5項1号及び2号に掲げる事項を目的とするものである。 そこで,本件補正後発明が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するかについて,以下,検討する。 2 独立特許要件についての判断 (1) 引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由において引用された,特開昭58-168020号公報(以下「引用文献1」という。)は,本件出願の最先の優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ,そこには,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。 ア 1頁左下欄11~13行 「 本発明は液晶表示装置などに用いられる部分偏光板用の部分偏光フィルムの製法に関するものである。」 イ 2頁左上欄4行~3頁左上欄5行 「 本発明はかかる従来技術の欠点を解決した新規な部分偏光フィルムの製法を提供するもので,その要旨とするところは,偏光フィルムの一方の面に担持体を形成し,他方の面に,脱色剤と該脱色剤が拡散移動しうる物質との混合物を所定領域に部分的に形成し,高温高湿処理をすることである。 本発明の製法をより具体的に説明すると,一方の表面を担持体で保持された偏光フィルムの他方の面に,脱色剤と該脱色剤が拡散移動しうる物質とからなる混合物を所定領域に部分的に塗布或いは転写などの手段により形成し,次いで高温高湿処理を施すことによって,混合物中の脱色剤をフィルム界面に移動させると共に高温高湿処理によって脱色剤の吸収能力が高められた偏光フィルムに吸収させ,混合物形成部分全体を非偏光性とするものである。 本発明を実施するに当って用いられる偏光フィルムは,ポリビニルアルコール系フィルム,部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム,エチレン-酢酸ビニル共重合物ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムに沃素を吸着配向せしめてなる沃素系偏光フィルム,ポリビニルアルコール系フィルムを脱水処理するか或いはポリ塩化ビニル系フィルムを脱塩酸処理してポリエンを形成し,配向してなるポリエン系偏光フィルムなどが挙げられる。 このように形成してなる偏光フィルムの一方の表面には,該フィルムを高温高湿処理したときに収縮するのを防止する目的で,ポリエステルフィルム,ポリアクリル系フィルム,アセテート系フィルムの如き耐湿熱性と透明性にすぐれるプラスチックフィルム又はシート(厚さ25~500μm)からなる担持体が形成される。担持体をそのまま部分偏光フィルムの表面保護層として用いる場合は,両者は剥離不可の状態で貼着されるが,単に偏光フィルムの収縮防止のみの目的で貼着する場合は剥離しうるように接着力又は接着方法を設計しておくことが必要である。 本発明の実施に当って用いられる脱色剤は,偏光フィルムが沃素系であるか,あるいはポリエン系であるかによって区別されるものであり,沃素系には沃素分子を還元する作用を有する,例えば水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,チオ硫酸ナトリウムなどが,またポリエン系にはポリエンを酸化させる作用を有する,例えば次亜塩素酸ナトリウム,次亜塩素酸カリウムなどがある。 かかる脱色剤を担持する物質は,水溶性又は水膨潤性で,前記脱色剤が拡散移動しうる物質で,しかも皮膜形成能を有するものであり,例えばデンプン,カルボキシメチルセルロース類,アルギン酸ソーダの如き水溶性高分子物質がある。 前記脱色剤と物質とは1~4:9~6(重量比)で混合されて水溶性とされるものであるが,脱色剤が1以下では偏光フィルムを充分に非偏光性とすることができず,4以上では経済的でないうえに,脱色剤が塗布部分から拡がり美麗な偏光部分と非偏光部分との界面が得られないので好ましくないものである。 このように構成してなる混合物は,前記偏光フィルムの露出面(担持体が形成されていない面)に,所定領域の目的するパターン状に部分的に塗布(固形分で0.1~20g/m2)され,40~95℃×70~98%R.H.×1~60分間,好ましくは60~80℃×90~98%R.H.×1~60分間の範囲で高温高湿処理することによって,混合物塗布部分の沃素分子を還元させるか或いはポリエンを酸化させ,この部分の偏光性を除去し,水洗い乾燥して部分偏光フィルムを得るものである。 処理条件が40℃×70%R.H.以下では処理時間が長くなるために実用性に劣り,95℃×~98%R.H.以上では偏光フィルムの偏光能が阻害されるので好ましくないものである。なお高温高湿処理は上記雰囲気下に偏光フィルムを曝す以外に,熱水蒸気を直接偏光フィルムに当て処理することもできる。 このようにして得られた部分偏光フィルムの片面又は両面には,表面保護層として,光学的透明性を有するプラスチックフィルムなどが接着され,部分偏光板とされる。なお前述の担持体が表面保護層として用いられる場合は,そのまま,或いは非形成面にさらに表面保護層を形成して,部分偏光板とするものである。」 ウ 3頁左上欄14行~右上欄6行 実施例1 40%の光線透過率を有する沃素偏光フィルム(25μm)の片面に50μmのトリアセテート系フィルムを貼り合わせ,他面にチオ硫酸ナトリウム1%とアルギン酸ソーダ5%を均一に溶解した混合水溶液をパターン状に塗布乾燥し,次いで60℃×95%R.H.の雰囲気下に15分間曝した後,水洗いしてアルギン酸ソーダを除去し,70℃で10分間乾燥して,部分偏光フィルムを得た。 この部分偏光フィルムの処理部分は,光線透過率が92%と極めて高い非偏光性を示し,また偏光部分と非偏光部分との境界は略々直線状であった。」 (2) 引用発明 本件優先日前の当業者において最も一般的な偏光フィルムは,ポリビニルアルコール系フィルムに沃素を吸着配向せしめてなる沃素系偏光フィルムである。また,沃素系偏光フィルムは,通常,その両面に保護フィルムが貼り合わせられて偏光板とされる。 そうしてみると,引用文献1の2頁右上欄10行~3頁左上欄5行には,次の「部分偏光板」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「 ポリビニルアルコール系フィルムに沃素を吸着配向せしめてなる沃素系偏光フィルムの一方の表面に,沃素系偏光フィルムを高温高湿処理したときに収縮するのを防止する目的で,耐湿熱性と透明性に優れるプラスチックフィルムからなる担持体が形成され, 脱色剤及び脱色剤を担持する物質の混合物が,沃素系偏光フィルムの露出面に,所定領域の目的とするパターン状に部分的に塗布され,40~95℃×70~98%R.H.×1~60分間の範囲で高温高湿処理することによって,混合物塗布部分の沃素分子を還元させ,この部分の偏光性を除去し,水洗い乾燥して部分偏光フィルムを得, 得られた部分偏光フィルムの両面に,表面保護層として,光学的透明性を有するプラスチックフィルムが接着されてなる, 部分偏光板。」 (3) 対比 本件補正後発明と引用発明を対比する。 ア ポリビニルアルコール系偏光子 引用発明の「沃素系偏光フィルム」は,「ポリビニルアルコール系フィルムに沃素を吸着配向せしめてなる」。 上記構成からみて,引用発明の「沃素系偏光フィルム」は,沃素が染着された,ポリビニルアルコール系のものである。また,引用発明の「沃素系偏光フィルム」は,その文言が意味するとおり,偏光子として機能するフィルムである。 そうしてみると,引用発明の「沃素系偏光フィルム」は,本件補正後発明の「ポリビニルアルコール系偏光子」に相当する。また,引用発明の「沃素系偏光フィルム」は,本件補正後発明の「ポリビニルアルコール系偏光子」における,「ヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上が染着された」という構成を具備する。 イ 保護フィルム 引用発明の「部分偏光板」は,「脱色剤及び脱色剤を担持する物質の混合物が,沃素系偏光フィルムの露出面に,所定領域の目的するパターン状に部分的に塗布され,40~95℃×70~98%R.H.×1~60分間の範囲で高温高湿処理することによって,混合物塗布部分の沃素分子を還元させ,この部分の偏光性を除去し,水洗い乾燥して部分偏光フィルムを得」,「部分偏光フィルムの両面に,表面保護層として,光学的透明性を有するプラスチックフィルムが接着されてなる」。 上記構成からみて,引用発明の「プラスチックフィルム」は,保護フィルムとして機能するものである。また,引用発明の「プラスチックフィルム」は,「部分偏光フィルム」とされた「沃素系偏光フィルム」の両面に積層されたものである。 そうしてみると,引用発明の「プラスチックフィルム」は,本件補正後発明の「保護フィルム」に相当する。また,引用発明の「プラスチックフィルム」は,本件補正後発明の「保護フィルム」における,「前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一面に積層された」という構成を具備する。 ウ 偏光解消領域 前記イで述べた構成からみて,引用発明の「部分偏光板」は,「混合物塗布部分」として,「偏光性を除去し」た領域を有する。また,この領域は,「所定領域の目的とするパターン状に部分的に塗布され」た領域であるから,少なくとも1つの領域といえる。 そうしてみると,引用発明の「混合物塗布部分」は,本件補正後発明の,「少なくとも1つの」とされる「偏光解消領域」に相当する。 エ 偏光板 引用発明の「部分偏光板」の文言の意味からみて,引用発明の「部分偏光板」は,本件補正後発明の「偏光板」に相当する。そうすると,上記ア~ウの対比結果から,引用発明の「部分偏光板」は,本件補正後発明の「偏光板」における,「ポリビニルアルコール系偏光子,および」「保護フィルムを含む」という要件を満たすとともに,「偏光解消領域を有し」という要件も満たす。 (4) 一致点及び相違点 ア 一致点 本件補正後発明と引用発明は,次の構成で一致する。 「 ヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上が染着されたポリビニルアルコール系偏光子,および 前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一面に積層された保護フィルムを含む偏光板であって, 少なくとも1つの偏光解消領域を有する, 偏光板。」 イ 相違点 本件補正後発明と引用発明は,以下の点で相違する,又は一応相違する。 (相違点1) 「偏光解消領域」が,本件補正後発明は,「局所的に400nm~800nm波長帯域での単体透過度が80%以上である」とともに,「面積は0.5mm2以上500mm2以下であり」,「偏光子のカメラモジュールが位置する領域である」のに対して,引用発明は,単体透過度が一応明らかではなく,また,「所定領域の目的とするパターン状」のものである点。 (相違点2) 「偏光解消領域」が,本件補正後発明は,「算術平均粗さ(Ra)が100nm以下であり」,「二乗平均平方根粗さ(Rq)が100nm以下であり」,「ヘイズが3%以下であり」という構成を具備するのに対して,引用発明は,一応,これが明らかではない点。 (5) 判断 ア 相違点1について 引用発明の「混合物塗布部分」は,「脱色剤及び脱色剤を担持する物質の混合物」により「沃素分子を還元させ,この部分の偏光性を除去し」た部分であるから,本件補正後発明の,「局所的に400nm~800nm波長帯域での単体透過度が80%以上である」という要件を満たす蓋然性が極めて高いと認められる。また,その面積及び配置は設計的事項である。 あるいは,以下のとおり考えることもできる。 本件優先日前には既に,カメラ窓として,偏光子に無偏光窓を設けるという課題が認識されていた。例えば,原査定の拒絶の理由において引用された特開2012-137738号公報(以下「引用文献3」という。)の【0009】には,「上部偏光子は,無偏光窓を有してもよい。無偏光窓は,偏光子中の偏光子材料をブリーチすることによって形成されてもよい。偏光子材料は,化学的にブリーチされてもよいし,或いは,偏光子材料を紫外線光で露光することによってブリーチされてもよい。カメラ窓は,不透明マスク層の開口部と位置合わせされてもよい。カメラは,画像光を受光するために,偏光子の無偏光窓及び不透明マスク層の開口部と位置合わせされてもよい。」と記載されている。 そうしてみると,当業者が,カメラ窓として偏光子に無偏光窓を設けるために,引用発明を,相違点1に係る本件補正後発明の構成を具備したものとすることは,容易に想到し得たものといえる。 (当合議体注:カメラ窓として偏光子に無偏光窓を設けるならば,その無偏光窓は,「局所的に400nm~800nm波長帯域での単体透過度が80%以上である」ものとすべきであり,また,その「面積は0.5mm2以上500mm2以下であり」の範囲に確実に入るよう設計すると考えられる。) イ 相違点2について 引用発明の「偏光板」は,製造に際して,「沃素系偏光フィルムを高温高湿処理したときに収縮するのを防止する目的で,耐湿熱性と透明性に優れるプラスチックフィルムからなる担持体が形成され」る。そして,引用発明の「偏光板」は,「得られた部分偏光フィルムの両面に,表面保護層として,光学的透明性を有するプラスチックフィルムが接着されてなる」。 このようにしてなる引用発明の「混合物塗布部分」は,十分に平坦であって、光を散乱するものではないことを勘案すると,そのヘイズも3%を下回ると理解される(当合議体注:偏光子の内部ヘイズが十分に小さいことは技術常識である。)。 したがって,相違点2は,相違点ではない。 あるいは,以下のとおり考えることもできる。 「算術平均粗さ(Ra)」や「二乗平均平方根粗さ(Rq)」が「100nm」の凹凸は,可視光を干渉させるのに十分な大きさであり,また,「3%」というヘイズも,視認可能なものである。 光学的透明性や見栄え等に配慮する当業者ならば,「算術平均粗さ(Ra)」,「二乗平均平方根粗さ(Rq)」及び「ヘイズ」を極力抑制すると考えられる。 (6) 請求人の主張について 請求人は,令和2年7月6日付け回答書において,[A]本願発明はディスペンサーを使用し,また,酸溶液を用いて洗浄しているが,引用発明はこれら手段を採用していない,[B]引用発明は,高温高湿処理により,沃素系偏光フィルムの表面が膨潤し,凹凸になっている,と主張する。 しかしながら,[A]で述べたような製造工程に差異があり,また,仮に,[B]高温高湿処理において表面が膨潤するとしても,当業者ならば,前記(5)イで述べたとおり創意工夫するものであり,例えば,「水洗い」の後,表面が平坦なニップロール等で残った水分を除去した後,乾燥し,十分に平坦なプラスチックフィルムと接着すると考えられる。 したがって,請求人の主張は採用できない。 なお,本件補正後発明は,偏光板とした後における,偏光解消領域の表面粗さ等を特定した発明である。 (7) 発明の効果について 物としてみたときの本件補正後発明の効果は,「偏光解消領域の表面粗さおよびヘイズに優れた偏光板を提供することができる。」(【0024】)点にあると認められる。 しかしながら,このような効果は,引用発明も具備する効果であるか,少なくとも,前記(5)イで述べたとおり創意工夫する当業者が期待する範囲内のものである。 (8) 小括 本件補正後発明は,引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 補正の却下の決定のむすび 本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって,前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 以上のとおり,本件補正は却下されたので,本件出願の請求項13に係る発明(以下「本願発明」という。)は,前記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 本願発明に対する原査定の拒絶の理由は,本願発明は,本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開昭58-168020号公報(引用文献1)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものを含む。 3 引用文献及び引用発明 引用文献1の記載及び引用発明は,前記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。 4 対比及び判断 本願発明は,前記前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から,「偏光解消領域」に関する「二乗平均平方根粗さ(Rq)が100nm以下であり」,「ヘイズが3%以下であり」,「少なくとも1つの」「面積は0.5mm2以上500mm2以下であり」,「偏光子のカメラモジュールが位置する領域である」という限定を除いたものである。また,本願発明の構成を全て具備し,これにさらに限定を付したものに相当する本件補正後発明は,前記「第2」[理由]2で述べたとおり,引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。加えて,本願発明については,「偏光子のカメラモジュールが位置する領域である」という構成を具備しない。 そうしてみると,本願発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

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2019-008349

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