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特許拒絶査定不服審判

2019-008144

回路モジュールおよびそれを用いたインバータ装置

審判番号
2019-008144
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-024424外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年06月19日
審決日
2020年10月14日
公報発行日
2020年12月25日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H02M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015- 24424「回路モジュールおよびそれを用いたインバータ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月18日出願公開、特開2016-149837、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,平成27年2月10日の出願であって,平成30年8月14日付けで拒絶理由通知がされ,平成30年10月15日に意見書が提出され,平成31年3月12日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和1年6月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和2年6月17日付けで拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,令和2年8月21日付けで手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成31年3月12日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1-6に係る発明は,以下の引用文献A,およびBに基づいて,本願の請求項7-8に係る発明は,以下の引用文献AないしCに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引 用 文 献 等 一 覧 A.国際公開第2015/015721号 B.特開2009-5512号公報 C.特開2011-135671号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 本願の請求項1-8に係る発明は,以下の引用文献1ないし3に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引 用 文 献 等 一 覧 1.国際公開第2015/015721号(拒絶査定時の引用文献A) 2.特開2009-5512号公報(拒絶査定時の引用文献B) 3.特開2010-21188号公報(当審において新たに引用した文献) 第4 本願発明 本願請求項1ないし7に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は,令和2年8月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 回路部と、 前記回路部の一対の入力点に電気的に接続される入力端子部と、 前記回路部の一対の出力点に電気的に接続される出力端子部と、 前記回路部、前記入力端子部、前記出力端子部を支持する支持体とを備え、 前記回路部、前記入力端子部、前記出力端子部、及び前記支持体は、パッケージに収容されており、 前記回路部は、前記一対の入力点の間に入力される直流電圧を交流電圧に変換して前記一対の出力点の間に出力する変換回路と、前記一対の出力点の間に電気的に接続されるスイッチ回路とを有し、 前記出力端子部は、前記一対の出力点にそれぞれ電気的に接続される第1出力端子と第2出力端子とを有し、 前記支持体の一面において、前記出力端子部の配置は、前記回路部の周囲で前記回路部に対して同じ側に前記第1出力端子および前記第2出力端子が位置する配置と、または前記回路部の周囲で前記第1出力端子および前記第2出力端子が隣り合う配置との少なくとも一方の配置であり、 前記入力端子部は、直流電源の正極に電気的に接続される複数の第1入力端子と、前記直流電源の負極に電気的に接続される第2入力端子とを有する ことを特徴とする回路モジュール。 【請求項2】 回路部と、 前記回路部の一対の入力点に電気的に接続される入力端子部と、 前記回路部の一対の出力点に電気的に接続される出力端子部と、 前記回路部、前記入力端子部、前記出力端子部を支持する支持体とを備え、 前記回路部、前記入力端子部、前記出力端子部、及び前記支持体は、パッケージに収容されており、 前記回路部は、前記一対の入力点の間に入力される直流電圧を交流電圧に変換して前記一対の出力点の間に出力する変換回路と、前記一対の出力点の間に電気的に接続されるスイッチ回路とを有し、 前記出力端子部は、前記一対の出力点にそれぞれ電気的に接続される第1出力端子と第2出力端子とを有し、 前記支持体の一面において、前記出力端子部の配置は、前記回路部の周囲で前記回路部に対して同じ側に前記第1出力端子および前記第2出力端子が位置する配置と、または前記回路部の周囲で前記第1出力端子および前記第2出力端子が隣り合う配置との少なくとも一方の配置であり、 前記入力端子部は、直流電源の正極に電気的に接続される第1入力端子と、前記直流電源の負極に電気的に接続される複数の第2入力端子とを有する ことを特徴とする回路モジュール。 【請求項3】 前記支持体の前記一面において、前記回路部は、前記入力端子部と前記出力端子部との間に配置されることを特徴とする請求項1または2記載の回路モジュール。 【請求項4】 前記変換回路および前記スイッチ回路は、それぞれスイッチング素子を有し、 前記変換回路および前記スイッチ回路の各々の前記スイッチング素子を駆動する駆動信号が入力される駆動端子をさらに備え、 前記支持体の前記一面において、前記駆動端子は、前記回路部の周囲で前記入力端子部と前記出力端子部との間に配置されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回路モジュール。 【請求項5】 請求項1乃至4の何れか1項に記載の回路モジュールと、前記回路モジュールが搭載される基板とを備えることを特徴とするインバータ装置。 【請求項6】 前記基板に設けられて前記入力端子部に電気的に接続される入力回路と、 前記基板に設けられて前記出力端子部に電気的に接続される出力回路とをさらに備え、 前記基板の前記一面において、前記入力回路は、前記回路モジュールを挟んだ両側のうち前記入力端子部と同じ側に配置され、 前記基板の前記一面において、前記出力回路は、前記回路モジュールを挟んだ両側のうち前記出力端子部と同じ側に配置されることを特徴とする請求項5記載のインバータ装置。 【請求項7】 前記変換回路および前記スイッチ回路は、それぞれスイッチング素子を有し、 前記基板に設けられて、前記変換回路および前記スイッチ回路の各々の前記スイッチング素子を駆動する駆動信号を前記回路モジュールに与える駆動回路をさらに備え、 前記基板の前記一面において、前記駆動回路は、前記回路モジュールの周囲で前記入力回路と前記出力回路との間に配置されることを特徴とする請求項6記載のインバータ装置。」 第5 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について ア 令和2年6月17日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。) a 「[0016]  (実施形態) 図1は、本実施形態の半導体装置10の回路構成の一例を示す。この半導体装置10は、インバータ回路1と、クランプ回路2と、導電路3a,3bとを備えており、インバータ回路1の後段に導電路3a,3bを介してクランプ回路2が設けられる。さらに、半導体装置10は、直流端子T1,T2、交流端子T3,T4、駆動端子T11~T16を備える。 [0017] そして、半導体装置10は、インバータ回路1およびクランプ回路2を構成する各素子(スイッチング素子、ダイオード等)を基板(図示なし)上に実装して、1つのパッケージ10a内に収めている。すなわち、半導体装置10は、インバータ回路1とクランプ回路2とをモジュール化している。各素子に接続する電気的配線(導電路3a,3bを含む)は、基板上に形成した導体によって構成される。 [0018] インバータ回路1は、4組のスイッチング素子Q1~Q4(第1のスイッチング素子)、4組のダイオードD1~D4(第1のダイオード)を備える。 [0019] スイッチング素子Q1~Q4は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成される。スイッチング素子Q1,Q2の直列回路、およびスイッチング素子Q3,Q4の直列回路は、直流端子T1-T2間に接続している。そして、スイッチング素子Q1のコレクタが直流端子T1に接続し、スイッチング素子Q1のエミッタとスイッチング素子Q2のコレクタとが接続し、スイッチング素子Q2のエミッタが直流端子T2に接続している。さらに、スイッチング素子Q3のコレクタが直流端子T1に接続し、スイッチング素子Q3のエミッタとスイッチング素子Q4のコレクタとが接続し、スイッチング素子Q4のエミッタが直流端子T2に接続している。すなわち、スイッチング素子Q1~Q4は、直流端子T1-T2間においてフルブリッジ接続している。そして、スイッチング素子Q1,Q2の接続点、およびスイッチング素子Q3,Q4の接続点が、インバータ回路1の出力となる。 [0020] ダイオードD1~D4は、スイッチング素子Q1~Q4に1対1に逆並列接続している。 [0021] 導電路3aの一端は、スイッチング素子Q1,Q2の接続点に接続し、導電路3aの他端は、交流端子T3に接続している。また、導電路3bの一端は、スイッチング素子Q3,Q4の接続点に接続し、導電路3bの他端は、交流端子T4に接続している。 [0022] クランプ回路2は、スイッチング素子Q5,Q6(第2のスイッチング素子)、ダイオードD5,D6(第2のダイオード)を備える。スイッチング素子Q5,Q6は、IGBTで構成される。スイッチング素子Q5,Q6の直列回路は、導電路3a-3b間に接続している。スイッチング素子Q5のエミッタが導電路3aに接続し、スイッチング素子Q5のコレクタとスイッチング素子Q6のコレクタとが接続し、スイッチング素子Q6のエミッタが導電路3bに接続している。ダイオードD5,D6は、スイッチング素子Q5,Q6に1対1に逆並列接続している。 [0023] そして、スイッチング素子Q1~Q6の各ゲートは、駆動端子T11~T16に1対1に接続している。スイッチング素子Q1~Q6は、駆動端子T11~T16から入力される各駆動信号によってオン・オフ駆動される。」 b 「図1 」 イ 上記aの段落[0017]には,「半導体装置10は、インバータ回路1およびクランプ回路2を構成する各素子(スイッチング素子、ダイオード等)を基板(図示なし)上に実装して、1つのパッケージ10a内に収めている。すなわち、半導体装置10は、インバータ回路1とクランプ回路2とをモジュール化している。各素子に接続する電気的配線(導電路3a,3bを含む)は、基板上に形成した導体によって構成される」ことが,また,段落[0016]には,「半導体装置10は、直流端子T1,T2、交流端子T3,T4、駆動端子T11~T16を備える」ことが記載されている。 してみると,引用文献1には“インバータ回路1およびクランプ回路2を構成する各素子を基板上に実装して,1つのパッケージ10a内に収めてモジュール化し,各素子に接続する電気的配線は,基板上に形成した導体によって構成され,さらに,直流端子T1,T2,交流端子T3,T4,駆動端子T11~T16を備える半導体装置10”が記載されているといえる。 ウ 上記aの段落[0018]には,「インバータ回路1は、4組のスイッチング素子Q1~Q4(第1のスイッチング素子)」「を備える」こと,さらに,段落[0019]には,「スイッチング素子Q1,Q2の直列回路、およびスイッチング素子Q3,Q4の直列回路は、直流端子T1-T2間に接続している」こと,および「スイッチング素子Q1,Q2の接続点、およびスイッチング素子Q3,Q4の接続点が、インバータ回路1の出力となる」ことが記載されている。 してみると,引用文献1には“インバータ回路1は,4組のスイッチング素子Q1~Q4を備え,スイッチング素子Q1,Q2の直列回路,およびスイッチング素子Q3,Q4の直列回路が直流端子T1-T2間に接続しており,スイッチング素子Q1,Q2の接続点,およびスイッチング素子Q3,Q4の接続点が,インバータ回路1の出力となる”ことが記載されているといえる。 エ 上記aの段落[0021]には,「導電路3aの一端は、スイッチング素子Q1,Q2の接続点に接続し、導電路3aの他端は、交流端子T3に接続している。また、導電路3bの一端は、スイッチング素子Q3,Q4の接続点に接続し、導電路3bの他端は、交流端子T4に接続している」ことが記載されている。 オ 上記aの段落[0022]には,「クランプ回路2は、スイッチング素子Q5,Q6」「を備える」こと,および「スイッチング素子Q5,Q6の直列回路は、導電路3a-3b間に接続している」ことが記載されている。 してみると,引用文献1には“クランプ回路2は,スイッチング素子Q5,Q6の直列回路を備え,導電路3a-3b間に接続している”ことが記載されているといえる。 したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。 「インバータ回路1およびクランプ回路2を構成する各素子を基板上に実装して,1つのパッケージ10a内に収めてモジュール化し,各素子に接続する電気的配線は,基板上に形成した導体によって構成され,さらに,直流端子T1,T2,交流端子T3,T4,駆動端子T11~T16を備える半導体装置10であって, 前記インバータ回路1は,4組のスイッチング素子Q1~Q4を備え,スイッチング素子Q1,Q2の直列回路,およびスイッチング素子Q3,Q4の直列回路が直流端子T1-T2間に接続しており,スイッチング素子Q1,Q2の接続点,およびスイッチング素子Q3,Q4の接続点が,インバータ回路1の出力となり. 導電路3aの一端は,スイッチング素子Q1,Q2の接続点に接続し,導電路3aの他端は,交流端子T3に接続しており,また,導電路3bの一端は,スイッチング素子Q3,Q4の接続点に接続し,導電路3bの他端は,交流端子T4に接続しており, 前記クランプ回路2は,スイッチング素子Q5,Q6の直列回路を備え,導電路3a-3b間に接続している, 半導体装置10。」 2 引用文献2について 令和2年6月17日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。 a 「【0054】 図1において、該パワーモジュール102は、ベース201とこのベース201に取り付けられるケース202とで筐体を構成している。 【0055】 前記ベース201のケース202と対向する面には、前記IGBTQ1~Q6およびダイオードD1~D6によって構成されるインバータが内蔵されている。 【0056】 そして、前記ケース202の一つの側面には、前記正極ライン105に接続される正極側主電極105T、負極ライン106に接続される負極側主電極106Tが突出されて形成されている。」 b 「【0061】 また、前記ケース202の正極側主電極105Tおよび負極側主電極106Tが突出された側と反対側の側面からは、前記インバータのU相アームの中間接続点と接続された交流側主電極107u、V相アームの中間接続点と接続された交流側主電極107v、W相アームの中間接続点と接続された交流側主電極107wがそれぞれ突出して配置されている。 【0062】 交流側主電極107u、107v、および107wのそれぞれは、ベース102に対してほぼ同じ高さに設けられ、並設されて形成されている。 【0063】 そして、交流側主電極107u、107v、および107wのそれぞれにおいて、それらのほぼ中央部に図中上方に突出する雄ネジ210が植設されて形成されている。 【0064】 このように交流側主電極107u、107v、107wを構成することにより、それぞれ、交流導体126u、126v、126wとの接続において、該交流導体126u、126v、126wの位置決めを容易にできるとともに、該接続に信頼性を持たせることができるようになる。このことについてはさらに後述する。 【0065】 なお、前記ケース202の上面には複数個のピン状の電極116が植設されて形成されている。前記制御回路基板115と電気的に接続させるための電極となるものであり、図2に示したの接続部117に相当するものである。」 c 「図1 」 2 引用文献3について 令和2年6月17日付けの拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。 a 「【0025】 図2は、図1の回路を実際にモジュール化する際の本実施の形態の半導体電力変換モジュールの基板モジュール4と、第2の直流ラインNを構成する銅の成形品からなる第2の直流ライン構成部22とを組み合わせた斜視図を示している。また図3は、基板モジュール4の断面構造を概略的に示している。図4(A)及び(B)は、後に説明する第1の導電体9と第2の導電体10の斜視図を示している。また図5は、基板モジュール4に用いる実装回路基板8の平面図を示している。更に図6(A)乃至(C)は、それぞれ図5のA-A線断面図、B-B線断面図及びC-C線断面図である。これらの図において、基板モジュール4は、6個の半導体スイッチ素子1A~1Fと伝熱可能に結合されて半導体スイッチ素子が発生する熱を放熱する放熱板6と、放熱板6の上に形成された熱伝導性を有する電気絶縁材料から形成された絶縁層7と、絶縁層7の上に設けられて3個のアーム回路3A~3Cに含まれる6個の半導体スイッチ素子1A~1Fが実装される実装回路基板8とを備えている。放熱板6は、アルミニウムやアルミニウム合金により形成されている。アルミニウムやアルミニウム合金は、加工性が良い、価格が易く、錆びず、そして熱伝導率が高いという利点から放熱板として非常に適している。」 b 「【0033】 実装回路基板8は、銅、銅合金、SUS等からなる第1の導電体9と、銅、銅合金またはSUSからなる3個の第2の導電体10~12を含む導電体列とを備えている。特に銅は、熱伝導率が394W/m・Kと大きく、放熱特性を向上できるので好ましい。第1の導電体9及び第2の導電体10~12を構成する銅板の厚みは放熱板6の厚みの20%以上にするのが好ましい。このようにすると熱応力の緩和と放熱特性を向上できる。なお第1の導電体9及び第2の導電体10~12を構成する銅板の厚みを、放熱板6の厚みよりも厚くすると、さらに放熱特性を向上できる。第1の導電体9は、図2及び図4(A)に示すように、3個の素子接合部分13~15と第1の直流ライン構成部16とが一体に形成された立体構造を有している。3個の素子接合部分13~15は、絶縁層7の上に列をなすように並んで配置され且つ第1の直流ラインPに電気的に接続される3個の半導体スイッチ素子1A,1C及び1Eの一方の入出力電極(コレクタ)が接続されるものである。・・・(後略)・・・ 」 c 「【0036】 また第1の直流ライン構成部16は、3個の素子接合部分13~15が並ぶ方向に延びて第1の直流ラインPを構成している。第1の直流ライン構成部16の端部には、直流端子部16Eが一体に形成されている。 ・・・(中略)・・・ 【0037】 絶縁層7の上に第1の導電体9の第1の直流ライン構成部16に沿って第2の導電体10~12が3個配置されて導体列が構成されている。図4(B)には、代表的に1つの導電体10の斜視図を示してある。第2の導電体10~12は、素子接合部分10A~12Aと、交流ライン構成部10B~12Bと、延長導体部10C~12Cとを一体に備えている。第2の導電体10~12においても、素子接合部分10A~12Aの上には金属導電層20が積層されており、素子接合部分10A~12Aと金属導電層20とにより多層構造の素子接合部が構成されている。 【0038】 素子接合部分10A~12Aは金属導電層20を介して、第2の直流ラインNに電気的に接続される半導体スイッチ素子1B,1D及び1Fの一方の入出力電極(コレクタ)とダイオード2B,2D及び2Fの一方の端子電極(カソード)が接続されるものである。交流ライン構成部10B~12Bは、素子接合部分10A~12Aと一体に形成されて一方の方向に延びる交流ラインを構成する。なお交流ライン構成部10B~12Bは、その端部に交流端子10D~12Dを備えている。・・・(後略)・・・」 d 「【0042】 ハウジング23は、第1の導電体9の3個の素子接合部分13~15が入る第1の開口部24と、3個の第2の導電体10~12の素子接合部分10A~12Aが入る第2の開口部25と、第1の直流ライン構成部16の上に位置して第1の開口部24と第2の開口部25とを仕切る仕切部26とを備えている。そしてハウジング23の仕切部26には、第2の直流ラインNを構成する導電体からなる第2の直流ライン構成部22が埋設されている。第2の直流ライン構成部22は、第1の直流ライン構成部16と電気的に絶縁された状態で第1の直流ライン構成部16に沿って延び且つ第2の開口部25内に収容される3個の半導体スイッチ素子1B,1D及び1Fの他方の入出力電極(エミッタ)及びダイオード2B,2D及び2Fの他方の端子電極(アノード)と接続線L4~L6を介して電気的に接続される被接続部22A~22Cを露出させるように埋設されている。そして第2の直流ライン構成部22の一方の端部には、ハウジング23から突出する端子22Dが一体に設けられている。なおハウジング23には、第1及び第2の開口部24及び25内の縁部に、ハウジング23の対向する一対のフレーム部23A及び23Bに隣接してそれぞれ制御用回路基板接続用のコネクタの端子群26が所定の間隔をあけて固定されている。1つの端子群26は5本の端子によって構成されている。これら端子群26の端子は、ハウジング23の開口部24及び25を塞ぐようにして配置される図示しない制御用回路基板との電気的な接続に利用される。」 e 「図2 」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「インバータ回路1」,「クランプ回路2」,および,これらの回路の「各素子に接続される電気的配線」は,本願発明1の「回路部」に相当する。 イ 本願明細書【0023】の記載によれば,本願発明1の「一対の入力点」「一対の出力点」は,端子であってもよく,配線として形成された導体の一部であってもよい。 したがって,引用発明の「直流端子T1」と「スイッチング素子Q1,Q3」との間を接続する配線の一部と,「直流端子T2」と「スイッチング素子Q2,Q4」との間を接続する配線の一部とが,本願発明1の「一対の入力点」に相当し,引用発明の「直流端子T1,T2」が,本願発明1の「前記回路部の一対の入力点に電気的に接続される入力端子部」に相当する。 また,引用発明の「スイッチング素子Q5」と「交流端子T3」との間の「導電路3a」の一部と,「スイッチング素子Q6」と「交流端子T4」との間の「導電路3b」の一部とが,本願発明1の「一対の出力点」に相当し,引用発明の「交流端子T3,T4」が,本願発明1の「前記回路部の一対の出力点に電気的に接続される出力端子部」に相当する。 ウ 本願明細書【0019】には「支持体21は、たとえば基板であって」と記載されている。したがって,引用発明の「基板」は,本願発明1の「前記回路部を支持する支持体」に相当する。 エ 引用発明の「インバータ回路1およびクランプ回路2を構成する各素子を基板上に実装して,1つのパッケージ10a内に収めてモジュール化し,各素子に接続する電気的配線は,基板上に形成した導体によって構成され」と,本願発明1の「前記回路部、前記入力端子部、前記出力端子部、及び前記支持体は、パッケージに収容され」は,後述する点で相違するものの“前記回路部,及び前記支持体は,パッケージに収容され”の点で共通する。 オ 引用発明の「インバータ回路1」は,「直流端子T1-T2間に接続しており」,「インバータ回路1の出力」は「導電路3a」及び「導電路3b」を介して「交流端子T3」及び「交流端子T4」に接続されるものであり,「インバータ回路1」は直流電圧を交流電圧に変換しているものと認められることから,本願発明1の「インバータ回路1」は,本願発明1の「前記一対の入力点の間に入力される直流電圧を交流電圧に変換して前記一対の出力点の間に出力する変換回路」に相当する。 また,引用発明の「クランプ回路2」は,「スイッチング素子Q5,Q6」からなり,「交流端子T3」及び「交流端子T4」に接続される「導電路3a」及び「導電路3b」の間に接続されることから,本願発明1の「前記一対の出力点の間に電気的に接続されるスイッチ回路」に相当する。 してみると,引用発明の「インバータ回路1は,4組のスイッチング素子Q1~Q4を備え,スイッチング素子Q1,Q2の直列回路,およびスイッチング素子Q3,Q4の直列回路が直流端子T1-T2間に接続しており,スイッチング素子Q1,Q2の接続点,およびスイッチング素子Q3,Q4の接続点が,インバータ回路1の出力となり,導電路3aの一端は,スイッチング素子Q1,Q2の接続点に接続し,導電路3aの他端は,交流端子T3に接続しており,また,導電路3bの一端は,スイッチング素子Q3,Q4の接続点に接続し,導電路3bの他端は,交流端子T4に接続しており,クランプ回路2は,スイッチング素子Q5,Q6の直列回路を備え,導電路3a-3b間に接続している」は,本願発明1の「前記回路部は、前記一対の入力点の間に入力される直流電圧を交流電圧に変換して前記一対の出力点の間に出力する変換回路と、前記一対の出力点の間に電気的に接続されるスイッチ回路とを有し」に相当する。 カ 引用発明の「交流端子T3,T4」は,本願発明1の「前記出力端子部は、前記一対の出力点にそれぞれ電気的に接続される第1出力端子と第2出力端子」に相当する。 キ 引用発明の「半導体装置10」は,「インバータ回路1およびクランプ回路2を構成する各素子を基板上に実装して,1つのパッケージ10a内に収めてモジュール化」したものであるから,本願発明1の「回路モジュール」に相当する。 したがって,本願発明1と引用発明との間には,以下の一致点と相違点とがある。 〈一致点〉 「回路部と, 前記回路部の一対の入力点に電気的に接続される入力端子部と, 前記回路部の一対の出力点に電気的に接続される出力端子部と, 前記回路部を支持する支持体とを備え, 前記回路部,及び前記支持体は,パッケージに収容されており, 前記回路部は,前記一対の入力点の間に入力される直流電圧を交流電圧に変換して前記一対の出力点の間に出力する変換回路と,前記一対の出力点の間に電気的に接続されるスイッチ回路とを有し, 前記出力端子部は,前記一対の出力点にそれぞれ電気的に接続される第1出力端子と第2出力端子とを有する, 回路モジュール。」 〈相違点1〉 支持体が,本願発明1では入力端子部,出力端子部を支持するのに対し,引用発明では,入力端子部,出力端子部を支持しているかどうか不明な点。 〈相違点2〉 本願発明1では,入力端子部,出力端子部がパッケージに収容されているのに対し,引用発明では,入力端子部,出力端子部がパッケージに収容されているかどうか不明な点。 〈相違点3〉 本願発明1は「前記支持体の一面において、前記出力端子部の配置は、前記回路部の周囲で前記回路部に対して同じ側に前記第1出力端子および前記第2出力端子が位置する配置と、または前記回路部の周囲で前記第1出力端子および前記第2出力端子が隣り合う配置との少なくとも一方の配置である」のに対し,引用発明は,出力端子部が支持体に配置されているかどうか不明な点。 〈相違点4〉 本願発明1では,「前記入力端子部は、直流電源の正極に電気的に接続される複数の第1入力端子と、前記直流電源の負極に電気的に接続される第2入力端子とを有する」のに対し,引用発明は,入力端子部にそのような特定がされていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて,上記相違点4について先に検討する。 入力端子部を,複数の端子で構成することは,周知の技術と認められるが,入力端子部を,「直流電源の正極に電気的に接続される複数の第1入力端子と、前記直流電源の負極に電気的に接続される第2入力端子」で構成することまでも周知の技術であるとはいえない。 また,引用文献2には,出力端子である交流端子をケースの一側面に並設することが,さらに,引用文献3には,基板が,直流端子T1,T2,交流端子T3,T4を支持することは記載されているが,「前記入力端子部は、直流電源の正極に電気的に接続される複数の第1入力端子と、前記直流電源の負極に電気的に接続される第2入力端子とを有する」ことまでは記載されていない。 さらに,該相違点4の構成によって,本願発明1は「この構成では、2つの第1入力端子51のうち一方の第1入力端子51と第2入力端子52との間、および他方の第1入力端子51と第2入力端子52との間の各々にスナバコンデンサ323,324を電気的に接続することができる。つまり、2つのスナバコンデンサ323,324の並列回路を、直流電源200の正極201と負極202との間に電気的に接続することができる。このため、1つの大容量のスナバコンデンサの代わりに、小容量のスナバコンデンサ323,324を2つ用いることで、基板3の大型化、さらにはインバータ装置1の大型化を避けることができる。」(段落【0088】)との効果を奏するものである。 したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2について 本願発明2は,本願発明1における「前記入力端子部は、直流電源の正極に電気的に接続される複数の第1入力端子と、前記直流電源の負極に電気的に接続される第2入力端子とを有する」ことに代えて,「前記入力端子部は、直流電源の正極に電気的に接続される第1入力端子と、前記直流電源の負極に電気的に接続される複数の第2入力端子とを有する」こととしたものである。 したがって,上記〈相違点1〉~〈相違点3〉に加え,以下の〈相違点5〉で相違する。 〈相違点5〉 本願発明2では,「前記入力端子部は、直流電源の正極に電気的に接続される第1入力端子と、前記直流電源の負極に電気的に接続される複数の第2入力端子とを有する」のに対し,引用発明は,入力端子部にそのような特定がされていない点。 事案に鑑みて,相違点5について先に検討すると,上記相違点4と同様に,「前記入力端子部は、直流電源の正極に電気的に接続される第1入力端子と、前記直流電源の負極に電気的に接続される複数の第2入力端子とを有する」ことが,上記引用文献1-3には記載されておらず,周知技術であったともいえない。 したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明2は,当業者であっても引用発明,引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 3 本願発明3ないし7について 本願発明3ないし7は,本願発明1,または2を更に限定したものであるので,同様に,当業者であっても引用発明1,及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第7 原査定について 令和2年8月21日付けの補正により,補正後の請求項1は,「前記入力端子部は、直流電源の正極に電気的に接続される複数の第1入力端子と、前記直流電源の負極に電気的に接続される第2入力端子とを有する」という技術的事項を有し,また,請求項2は「前記入力端子部は、直流電源の正極に電気的に接続される第1入力端子と、前記直流電源の負極に電気的に接続される複数の第2入力端子とを有する」という技術的事項を有するものとなった。当該「前記入力端子部は、直流電源の正極に電気的に接続される複数の第1入力端子と、前記直流電源の負極に電気的に接続される第2入力端子とを有する」又は「前記入力端子部は、直流電源の正極に電気的に接続される第1入力端子と、前記直流電源の負極に電気的に接続される複数の第2入力端子とを有する」は,原査定における引用文献A-C(当審拒絶理由における引用文献1,2)には記載されておらず,本願出願日前における周知技術でもないので,本願発明1-7は,当業者であっても,原査定における引用文献A-Cに基づいて容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。

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2019-008144

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