特許拒絶査定不服審判
2019-006665
スタッファー/フィラーポリヌクレオチド配列を含むベクターおよびその使用方法
- 審判番号
- 2019-006665
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-502935外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年05月22日
- 審決日
- 2021年06月23日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィア
- 【請求人代理人】村越 智史
- 分類
- P18 .113-WZ (C12N) / P18 .121-WZ (C12N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2016-502935「スタッファー/フィラーポリヌクレオチド配列を含むベクターおよびその使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月18日国際公開、WO2014/144486、平成28年 6月16日国内公表、特表2016-517278〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、2014年(平成26年)3月14日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 2013年3月15日 米国)とする特許出願であって、その手続の主な経緯は次のとおりである。
平成31年 1月17日付け:拒絶査定
平成31年 5月22日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 9月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 3月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 3月 4日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~50に係る発明は、令和3年3月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~50に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1及び30に係る発明は、その請求項1及び30に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
異種ポリヌクレオチド配列を含むベクターゲノムと、
第1の不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列を含んでなり、
前記異種ポリヌクレオチド配列が4.7Kbを下回る長さを有し、かつアデノ随伴ウイルス(AAV)の二つのITR配列の内側に位置し、前記不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列はアデノ随伴ウイルス(AAV)の二つのITR配列の外側に位置し、該第1の不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列が7.0ないし10.0Kbの長さを有する組換えベクタープラスミド。」
「【請求項30】
請求項1ないし27のいずれかの組換えベクタープラスミドのベクターゲノムを含んでなるAAV粒子。」
第3 当審による拒絶理由の概要
令和2年9月2日付けで当審が通知した拒絶理由には、理由1及び2として、次の理由が含まれている。
本願請求項30に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「本願優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の引用例1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができず、また、下記の引用例1に記載された発明に基いて、本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用例1:Molecular Therapy. (2009) vol.17, no.1, p.144-152
第4 認定事実
1 引用例1に記載された事項
引用例1には、以下の事項が記載されている(英文であるため当審により和訳したものを摘記する。また、下線は当審により付した。)。
(1-1)「DNA不純物レベルに対するベクタープラスミドのバックボーンサイズの影響
これまでの研究で、キャプシド化されたプラスミドDNA不純物は、主に、ITR含有ベクター(シス)生産プラスミドのバックボーンに由来することが報告されている。組換えAAV2及びAAV6における残留プラスミドDNA不純物量に対するベクタープラスミドのバックボーンサイズの影響を評価した。残留プラスミドDNAのレベルは、ベクター調製に使用した3つの生産プラスミドの全てに共通する配列であるAmpRに特異的なプライマー及びプローブを用いたQ-PCRにより測定した(表1)。この実験で比較したベクターは、それぞれ、共通の方法(グラジエント クロマトグラフィー)…を用いて調製及び精製された。オーバーサイズ(6980bp)のバックボーンを有するベクタープラスミドを用いて調製された5つのロット(ロット 06002、003A、NHP、0802、0803)で測定された平均残留プラスミドDNAレベルは14.2±2.6pg/109vgであり、より小さいサイズ(2620又は2638bp)のバックボーンを有するベクタープラスミドを用いて調製された5つのロット(ロット N0701、0701、0702、0703、0801)で測定した平均値107.6±27.6pg/109vgよりも7.6倍低かった(P<0.001)。したがって、ベクター生産プラスミドにおけるオーバーサイズのバックボーンの使用は、プラスミド由来のDNA不純物の有意な減少を達成した。」(146頁右欄17~40行)
(1-2)「
[図:0001395537000001.jpg]
」(147頁表1)
(1-3)「材料及び方法
AAVの調製及び精製:ベクターの調製は、改変を加えた(18)、3つのプラスミドを用いた、HEK293細胞のヘルパーウイルスフリーなトランスフェクション(30)によって行われた。臨床AAV2-hFIXベクター(ロット1053)は、二重CsCl勾配超遠心(勾配のみの方法)によって精製された。本研究において、14個の追加のAAVベクターロットを調製し、分析した。ヒト凝固第IX因子を発現する8つのAAV2と2つのAAV6ベクターロット(AAV-hFIX)は、AAVの~4700ntパッケージング限界を超える6980bpのバックボーンを含むベクタープラスミドを使用して調製された。1つのAAV2と4つのAAV6ベクターロットは、2620bp又は2638bpのバックボーンを有するベクタープラスミドを用いて調製された。」(150頁左欄下から11~1行)
2 引用発明
摘記事項(1-1)からみて、引用例1には、キャプシド化されたプラスミドDNA不純物は主にITR含有ベクター(シス)生産プラスミドのバックボーンに由来することがこれまでの研究で報告されていること、並びに組換えAAV2及びAAV6における残留プラスミドDNA不純物量に対するベクタープラスミドのバックボーンサイズの影響を評価したところ、オーバーサイズ(6980bp)のバックボーンを有するベクタープラスミドを用いて調製された5つのロット(ロット 06002、003A、NHP、0802、0803)で測定された平均残留プラスミドDNAレベルは14.2±2.6pg/109vgであり、より小さいサイズ(2620又は2638bp)のバックボーンを有するベクタープラスミドを用いて調製された5つのロットで測定した平均値よりも7.6倍低かったことが記載されている。
そして、摘記事項(1-3)からみて、引用例1には、ヒト凝固第IX因子を発現するAAV(AAV-hFIX)が、AAVの~4700ntパッケージング限界を超える6980bpのバックボーンを含むベクタープラスミドを、HEK293細胞にトランスフェクションすることにより調製されたことが記載されている。
以上からみて、引用例1には、AAVのパッケージング限界を超える6980bpのバックボーンを含むITR含有ベクタープラスミドを、HEK293細胞にトランスフェクションすることにより調製された組換えAAVの5つのロット(ロット 06002、003A、NHP、0802、0803)で測定された平均残留プラスミドDNAレベルが14.2±2.6pg/109vgであったことが記載されているといえる。
また、摘記事項(1-1)からみて、引用例1には、残留プラスミドDNAのレベルを「AmpR」すなわちアンピシリン耐性遺伝子に特異的なプライマー及びプローブを用いたQ-PCRにより測定したことが記載されているから、引用例1に記載されたベクタープラスミドのバックボーンにはアンピシリン耐性遺伝子が含まれているといえる。
さらに、摘記事項(1-2)からみて、引用例1には、組換えAAVの5ロット(06002、003A、NHP、0802、0803)を調製するために用いたベクタープラスミドが、ヒト凝固第IX因子(hFIX)をコードする4297ntの導入遺伝子を有することが記載されているといえる。
以上からみて、引用例1には、ITR含有ベクタープラスミドにオーバーサイズのバックボーンを使用することにより、当該ITR含有ベクタープラスミド由来のDNA不純物が有意に減少した組換えAAVである、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「アンピシリン耐性遺伝子を含む6980bpのバックボーン、及びヒト凝固第IX因子をコードする4297ntの導入遺伝子を有するITR含有ベクタープラスミドをHEK293細胞にトランスフェクションして調製された、当該ITR含有ベクタープラスミド由来のDNA不純物が有意に減少した組換えAAV。」
第5 対比、判断
1 対比
(1)本願発明30について
本願の請求項30は、本願の請求項1~27を引用する形式で記載されているところ、そのうちの請求項1を引用する部分に係る発明(以下「本願発明30」という。)は、以下のとおりであると認める(分説は当審による。)。
「a 異種ポリヌクレオチド配列を含むベクターゲノムと、
b 第1の不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列を含んでなり、
a-1 前記異種ポリヌクレオチド配列が4.7Kbを下回る長さを有し、かつアデノ随伴ウイルス(AAV)の二つのITR配列の内側に位置し、
b-1 前記不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列はアデノ随伴ウイルス(AAV)の二つのITR配列の外側に位置し、該第1の不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列が7.0ないし10.0Kbの長さを有する
組換えベクタープラスミドの
ベクターゲノムを含んでなるAAV粒子。」
ここで、本願発明30に係る「AAV粒子」は、本願発明30における「組換えベクタープラスミド」の「ベクターゲノムを含んでなる」ものと特定されている。そして、本願発明30において、当該「ベクターゲノム」は「異種ポリヌクレオチド配列を含む」ものと特定されているから、当該「ベクターゲノム」には、少なくとも「異種ポリヌクレオチド配列」が含まれていることになる。そこで、当該「ベクターゲノム」に含まれる他の成分について、本願明細書の記載も参酌しつつ検討する。
まず、「ベクターゲノム」という文言について、本願明細書の【0050】に「…AAVベクターゲノムは、複製およびパッケージングのために同一分子上(in cis)に必要な配列(例えばITR配列)を含む」と記載され、【0080】に「…ベクターゲノムは、ウイルス(例えばAAV)によってパッケージまたはカプシド化され、異種ポリヌクレオチド配列を含むベクタープラスミドの一部を指す。組換えベクタープラスミドのプラスミド部位は、…バックボーン配列を含むが、それ自体はウイルス(例えばAAV)によってパッケージ/カプシド化されない」(下線は当審による。)と記載されている。
そうすると、本願明細書の記載からみて、本願発明30でいう「ベクターゲノム」は、本願発明30における「組換えベクタープラスミド」に由来し、本願発明30に係る「AAV粒子」にパッケージ(カプシド化)される領域のことであるといえる。そして、本願優先日当時のAAVに関する技術常識を考慮すれば、AAV粒子にパッケージ(カプシド化)される領域は、通常、AAVの二つのITR配列と、その内側に位置する領域であるといえるから、本願発明30における「組換えベクタープラスミド」からAAV粒子にパッケージ(カプシド化)される領域は、AAVの二つのITR配列と、その内側に位置し、異種ポリヌクレオチド配列を含む領域であるといえる。
一方、本願明細書の図6に関し、本願明細書の【0177】に「図6に示される12の定量結果で得られた残存プラスミドDNA不純物レベルにおいては、サイズ超過バックボーンを含まない(欠く)ベクタープラスミドを用いて調製されたベクター中の109ベクターゲノム当たりのプラスミドDNA不純物の平均は301pgで、これはサイズ超過バックボーンを用いて調製されたベクターで測定された109vg当たりのプラスミドDNA不純物の平均である60pgと比較して、5倍高い値であった。従って、ベクタープラスミド内のサイズ超過バックボーンは、ウイルスベクターの調製において不純物の低減に使用することができる」(下線は当審による。)と記載され、また、本願明細書の図5に「サイズ超過のバックボーンを用いると残存プラスミドDNAは約40分の1(0.1~1.0%)に減少する」(下線は当審による。)と記載されていることからみて、サイズ超過のバックボーンを用いることにより、AAV粒子のベクターゲノムに含まれる残存プラスミドDNAは大幅に減少するといえるものの、一方で、たとえサイズ超過のバックボーンを有する組換えベクタープラスミドを用いたとしても、AAV粒子のベクターゲノムには、ごく少量の残存プラスミドDNAが含まれるといえる。そして、本願発明30における「組換えベクタープラスミド」は、AAVの二つのITR配列の外側に位置する領域に、「7.0ないし10.0Kbの長さを有する」「第1の不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列」を有しているから、サイズ超過のバックボーンを有しているといえるものの、上述のとおり、たとえサイズ超過のバックボーンを有する「組換えベクタープラスミド」を用いたとしても、AAV粒子のベクターゲノムには、60pg/109vg程度のごく少量の残存プラスミドDNAが含まれるといえる。
以上からみて、本願発明30に係る「AAV粒子」は、本願発明30における「組換えベクタープラスミド」の、AAVの二つのITR配列と、その内側に位置し、4.7Kbを下回る長さを有する異種ポリヌクレオチド配列を含む領域と、当該領域の外側、すなわちAAVの二つのITR配列の外側に位置する領域に由来する残存プラスミドDNAをごく少量(60pg/109vg程度)含む「ベクターゲノム」を含んでなるものであると換言できる。
(2)本願発明30と引用発明との対比
ア 引用発明について
引用発明に係る「アンピシリン耐性遺伝子を含む6980bpのバックボーン、及びヒト凝固第IX因子をコードする4297ntの導入遺伝子を有するITR含有ベクタープラスミドをHEK293細胞にトランスフェクションして調製された」ものであるところ、引用発明の「ヒト凝固第IX因子をコードする4297ntの導入遺伝子」は、引用発明の組換えAAVに「導入」すなわちパッケージ(カプシド化)されるべきものであるから、本願優先日当時のAAVに関する技術常識からみて、当該「ヒト凝固第IX因子をコードする4297ntの導入遺伝子」は、引用発明における「ITR含有ベクタープラスミド」において、AAVの二つのITR配列の内側に位置しているといえる。
また、引用発明の「アンピシリン耐性遺伝子を含む6980bpのバックボーン」は、本願優先日当時のAAVに関する技術常識からみて、引用発明における「ITR含有ベクタープラスミド」において、AAVの二つのITR配列の外側に位置しているといえる。
以上からみて、引用発明に係る「組換えAAV」は、「アンピシリン耐性遺伝子を含む6980bpのバックボーン」が、AAVの二つのITR配列の外側に位置し、「ヒト凝固第IX因子をコードする4297ntの遺伝子」が、AAVの二つのITR配列の内側に位置する「ITR含有ベクタープラスミド」をHEK293細胞にトランスフェクションして調製されるものであり、そのように調製された、引用発明に係る「組換えAAV」は、引用発明における「ITR含有ベクタープラスミド」の、AAVの二つのITR配列と、その内側に位置し、「ヒト凝固第IX因子をコードする4297ntの遺伝子」を含む領域と、当該二つのITR配列の外側に位置する6980bpの領域に由来するDNA不純物を少量含む「ベクターゲノム」を含んでなるものであると換言できる。
イ 対比
本願発明30に係る「AAV粒子」と、引用発明に係る「組換えAAV」とを対比する。
前記(1)で検討したとおり、本願発明30に係る「AAV粒子」は、本願発明30における「組換えベクタープラスミド」の、AAVの二つのITR配列と、その内側に位置し、4.7Kbを下回る長さを有する異種ポリヌクレオチド配列を含む領域と、当該領域の外側、すなわちAAVの二つのITR配列の外側に位置する領域に由来する残存プラスミドDNAをごく少量(60pg/109vg程度)含む「ベクターゲノム」を含んでなるものである。
そして、前記アで検討したとおり、引用発明に係る「組換えAAV」は、引用発明における「ITR含有ベクタープラスミド」の、AAVの二つのITR配列と、その内側に位置し、「ヒト凝固第IX因子をコードする4297ntの遺伝子」を含む領域と、当該二つのITR配列の外側に位置する6980bpの領域に由来するDNA不純物を少量含む「ベクターゲノム」を含んでなるものである。
ここで、引用発明における「ヒト凝固第IX因子をコードする4297ntの遺伝子」が、AAVにとって異種のものであることは明らかであるから、当該「ヒト凝固第IX因子をコードする4297ntの導入遺伝子」は、本願発明30における、4.7Kbを下回る長さを有する異種ポリヌクレオチド配列に相当する。
また、引用発明における「DNA不純物」は、引用発明における「ITR含有ベクタープラスミド」の、二つのITR配列の外側に位置する6980bpの領域に由来するものであるから、本願発明30における「残存プラスミドDNA」に相当する。そして、摘記事項(1-1)及び(1-2)からみて、引用例1に記載された、「オーバーサイズ(6980bp)のバックボーンを有するベクタープラスミドを用いて調製された5つのロット(ロット06002、003A、NHP、0802、0803)」は、ITR含有ベクタープラスミド由来のDNA不純物を11~17.7pg/109vg(平均14.2±2.6pg/109vg)含んでいるところ、この数値は、本願明細書で示されている残存プラスミドDNAの量(60pg/109vg程度)と同等であるから、引用発明に係る「組換えAAV」のベクターゲノムに含まれている「DNA不純物」すなわち「残存プラスミドDNA」は、本願発明30と同程度にごく少量であるといえる。
そうすると、本願発明30に係る「AAV粒子」に含まれている「ベクターゲノム」と、引用発明に係る「組換えAAV」に含まれている「ベクターゲノム」とは、いずれも、AAVの二つのITR配列と、その内側に位置し、4.7Kbを下回る長さを有する異種ポリヌクレオチド配列を含む領域と、当該二つのITR配列の外側に位置する領域に由来する残存プラスミドDNAをごく少量含む点で相違ないから、そのような「ベクターゲノム」を含むAAVである、本願発明30に係る「AAV粒子」と引用発明に係る「組換えAAV」との間にも相違はないことになる。
また、仮に、本願発明30に係る「AAV粒子」と、引用発明に係る「組換えAAV」との間に差異があったとしても、そのような差異はわずかであるといえ、本願発明30は、引用発明、引用例1の記載、及び本願優先日当時のAAVに関する周知技術に基づいて、当業者が容易になし得た発明であって、本願明細書の記載を参酌しても、本願発明30が奏する効果に顕著な点があるとはいえない。
したがって、本願発明30は、引用例1に記載された発明である。また、本願発明30は、引用発明、引用例1の記載、及び本願優先日当時のAAVに関する周知技術に基づいて、当業者が容易になし得た発明である。
2 請求人の主張について
(1)令和3年3月4日提出の意見書における請求人の主張について
請求人は上記意見書において、要するに、引用例1に記載されている組換えベクタープラスミドを用いて調製された引用発明は、AAVの二つのITR配列の外側に7.0ないし10.0Kbの長さを有する不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列を有する本願発明1の組換えベクタープラスミドのベクターゲノムを含んでなる本願発明30のウイルス粒子とは異なるものであり、また、引用例1に記載された発明から容易に想到できたものでもないと主張する。
上記請求人の主張について検討する。
確かに、本願発明30における「組換えベクタープラスミド」と、引用発明における「ITR含有ベクタープラスミド」との間には、AAVの二つのITR配列の外側に位置する配列について、本願発明30では「7.0ないし10.0Kbの長さを有する」、「第1の不活性のフィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列を含」むものであると特定されているのに対し、引用発明は、「アンピシリン耐性遺伝子を含む6980bpのバックボーン」であると特定されている点で相違しているといえる。
しかし、この相違点は、AAVの二つのITR配列の外側に位置しており、本来、AAVにパッケージ(カプシド化)されない領域に関するものであり、しかも、本願発明30及び引用発明において、当該領域は、いずれも、AAVにパッケージ(カプシド化)される量が大幅に減少するサイズ超過のバックボーンである点で共通している。そして、前記1(2)イで検討したとおり、そのようなサイズ超過のバックボーンを有する、本願発明30における「組換えベクタープラスミド」に由来するベクターゲノムと、引用発明における「ITR含有ベクタープラスミド」に由来するベクターゲノムとは、いずれも、AAVの二つのITR配列と、その内側に位置し、4.7Kbを下回る長さを有する異種ポリヌクレオチド配列を含む領域と、当該二つのITR配列の外側に位置する領域に由来する残存プラスミドDNAをごく少量含む点で相違がないというべきである。
そして、本願明細書の記載や、本願優先日当時の技術常識を勘案しても、AAVの二つのITR配列の外側に位置する配列が、本願発明30における「組換えベクタープラスミド」のように「7.0ないし10.0Kbの長さを有する」場合と、引用発明における「ITR含有ベクタープラスミド」のように「6980bp」の場合とで、AAV粒子にパッケージ(カプシド化)される「ベクターゲノム」に差異が生じるとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
3 小括
以上のとおりであるから、本願発明30は、引用発明と相違なく、したがって、引用例1に記載された発明である。また、本願発明30は、引用発明、引用例1の記載、及び本願優先日当時のAAVに関する周知技術に基づいて、当業者が容易になし得た発明である。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明30は、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができず、また、引用例1に記載された発明に基いて本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-006665