特許拒絶査定不服審判
2019-004665
精製コラゲナーゼを使用した子宮類線維腫の治療方法および製品
- 審判番号
- 2019-004665
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-503099
- 請求日
- 2019年04月08日
- 審決日
- 2021年01月25日
- 公報発行日
- 2021年07月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】バイオスペシフィクス テクノロジーズ コーポレーション
- 【請求人代理人】奥山 尚一
- 【請求人代理人】有原 幸一
- 【請求人代理人】松島 鉄男
- 【請求人代理人】中村 綾子
- 【請求人代理人】森本 聡二
- 【請求人】デューク・ユニヴァーシティ
- 【請求人代理人】奥山 尚一
- 【請求人代理人】有原 幸一
- 【請求人代理人】松島 鉄男
- 【請求人代理人】中村 綾子
- 【請求人代理人】森本 聡二
- 審判長/審判官
- 審判長 岡崎 美穂
- 審判官 齋藤 恵
- 審判官 佐々木 秀次
- 分類
- P18 .121-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-503099「精製コラゲナーゼを使用した子宮類線維腫の治療方法および製品」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月18日国際公開、WO2014/144859、平成28年 5月30日国内公表、特表2016-515521〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月14日(パリ条約による優先権主張 平成25年3月15日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年12月26日付け 拒絶理由通知書
平成30年 7月 5日 意見書・手続補正書
平成30年11月29日付け 拒絶査定
平成30年12月 7日 同謄本送達
平成31年 4月 8日 審判請求・手続補正書
令和 2年 3月16日付け 拒絶理由通知書
令和 2年 9月18日 意見書・手続補正書
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年9月18日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
クロストリジウム・ヒストリチクムから得られるコラゲナーゼを含む、患者の子宮類線維腫を治療するための注射可能な製剤であって、子宮類線維腫組織の1cm3当たり約0.06mg~約1mgのコラゲナーゼを注射により類線維腫に与える製剤。
第3 当審が通知した拒絶理由
当審が令和2年3月16日付けで通知した拒絶理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、引用文献1、3、4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである(理由 1.(進歩性))。
引用文献
1.Fertility and Sterility,2012 年 , Vol.98,No.3,Suppl.,S232,P-405
3.Drug Discovery Today: Therapeutic Strategies,2012 年 ,Vol.9,No.1,e41-e49
4.豪州特許出願公開第2012200863号明細書
第4 当審の判断
当審は、上記第3の当審が通知した拒絶理由のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、引用文献1及び3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。
その理由を以下に示す。
1 引用文献及び引用文献の記載
本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1及び3には、それぞれ以下の記載がある。なお、これらの文献は、外国語で記載されているので、その記載事項は、合議体の翻訳文により記載する。
(1)引用文献1:Fertility and Sterility,2012 年 , Vol.98,No.3,Suppl.,S232,P-405
ア (P-405の表題)
高度に精製されたクロストリジウムコラゲナーゼによる子宮類線維腫の治療。
イ (P-405の本文)
目的:変性コラーゲンの蓄積は、子宮類線維腫の形成と病的状態の重要なプレイヤーである。これらの腫瘍は非常に剛性で硬い。クロストリジウムヒストリチクムから高度に精製された、バクテリアコラゲナーゼが、ヒト類線維腫組織を分解して、一部の女性のための潜在的な治療オプションとなるかをテストした。
設計:生体外での原理実証実験。
材料と方法:手術で同意した患者達(6)から、類線維腫組織のサンプルを複数入手し、1cm3の立方体にカットした。それから、該立方体の中央に精製クロストリジウムコラゲナーゼ(0-0.2mg/100μl)を注射し、DMEM/F12に浸して、37Cでインキュベートした。24-96時間後に立方体を半分にカットし、写真を撮り、硬さを記録し、そしてホルマリンで固定した。ピクロシリウスレッドとマッソントリクローム染色のスライドを偏光及び光学顕 微鏡で検査して、コラーゲンの量、質及び分解を評価した。
結果:コラーゲン分解は24-48時間以内に起こり、注射された類線維腫組織は軟化、液化及び崩壊した。注射後24時間という早い時期に、0.03mgという低用量においても、類線維腫組織の中心に液化が観察された。0.2mgを注射した子宮筋層組織は、24時間後に軟化したが液化はしなかった。96時間のビヒクルによる治療は組織に影響しなかった。マッソンの染色では、コントロールにコラーゲンの大きな領域が見られたが、コラゲナーゼ処理された類線維腫組織ではより小さかった。偏光下でのピクロシリウスレッド染色画像は、コラゲナーゼ処理組織においてコントロール組織よりも、コラーゲン線維が低密度で短いことを示した。
結論:この高度に精製されたクロストリジウムコラゲナーゼの注射後に、ヒト子宮類線維腫組織は軟化及び分解し、これは類線維腫体積の減少につながる可能性がある。組織の軟化は、細胞の圧縮/機械的シグナル伝達も減少させ、コラーゲンの分泌の減少及び類線維腫の成長の抑制につながる。前臨床試験で、子宮類線維腫の潜在的な治療としての、この精製コラゲナーゼの実現可能性をテストするつもりだ。
(2)引用文献3:Drug Discovery Today: Therapeutic Strategies,2012 年 ,Vol.9,No.1,e41-e49
ア (e41 表題)
子宮筋腫の治療:効果的な薬物療法の探索
イ (e46 左欄3段落~e47左欄3段落)
抗線維化薬
子宮筋腫は、コラーゲン原線維の変化、線維症および組織の硬直を特徴とし[37;38]、I型およびV型コラーゲンの量の増加を伴う[39]。コラーゲン産生細胞の選択的除去またはそれらの活性化状態の低下は、現在、実験的試験に限定されている。コラーゲン形成を妨げる医学的戦略(例えば、抗線維化薬)は、子宮筋腫の治療に効果的であろう。ハイスループットスクリーニングアッセイは、抗線維化活性を示す薬剤候補を特定するために開発された[40]。 2つの有望な抗線維化候補を以下に取り上げるが、一般に、このクラスの医薬品は全身投与すると望ましくない副作用を示す。
ピルフェニドン
・・・
ハロフジノン
・・・
精製コラゲナーゼ
クロストリジウムヒストリチクムコラゲナーゼは、拘縮索を持つ成人のデュピュイトラン拘縮を標的とするFDA承認薬である。この薬は、2つのクラスの精製コラゲナーゼの固定比率混合物で構成されている。クロストリジウムI型およびII型コラゲナーゼ。I型酵素は114KDaの1000アミノ酸の単一ポリペプチド鎖であり、II型コラゲナーゼは約1000アミノ酸の長さで、分子量は113KDaである。両方とも、完全な活性のために亜鉛とカルシウムを必要とするメタロプロテイナーゼであり、コラーゲンに対して選択的な活性を持っている。これらの2つのクラスの酵素は免疫学的に交差反応性ではなく、ドメイン構造の基質親和性と触媒効率が互いに異なる。組み合わせると、相乗的なコラーゲン分解活性を示す。クラスIコラゲナーゼ酵素は成熟した三重らせんコラーゲンのC末端とN末端に付着し、クラスII酵素はコラーゲン分子内の結合に付着する。触媒活性には亜鉛が必要であり、コラーゲン結合部位のコンフォメーションを酵素が三重らせん状コラーゲン原線維に結合できる状態に維持するためにカルシウムが必要である。どちらのクラスも、小さなコラーゲン断片を分解することができる。コラーゲン分子の特定の結合のみを分解し、コラーゲンを完全には分解しない、哺乳類のマトリックスメタロプロテイナーゼとは対照的に、両方の酵素の協調した活性は、コラーゲン三重らせん全体を分解する。インビボでは、クロストリジウムヒストリチクムコラゲナーゼにIV型コラーゲンを分解する効果はない。したがって、臨床研究では、精製したヒクロストリジウム菌のコラゲナーゼは、大きな血管壁や神経を分解しなかった。
ヒトを含む哺乳動物では、ヒクロストリジウム菌のコラゲナーゼはコラゲナーゼと複合体を形成する血清タンパク質によって血流中で急速に阻害される。次に、不活性酵素を含むこれらの複合体は、肝臓の循環から除去される。精製されたクロストリジウムコラゲナーゼは生殖毒性ではない。
デュピュイトラン拘縮関節の治療に使用される用量は0.58mgである。拘縮索への直接注入ごと、影響を受けた関節ごとに、最大3回の注射を行うことができる。この薬は、拘縮索が存在する成人の手のデュピュイトラン拘縮の治療のためにFDAによって承認されており、子宮筋腫の臨床試験ではまだ使用されていない。当研究室では、原理実証研究を行っている。
2 引用文献1に記載された発明
引用文献1の「材料と方法」(1(1)イ)に、手術で同意した患者達(6)から、類線維腫組織のサンプルを複数入手し、1cm3の立方体にカットしてから、該立方体の中央に精製クロストリジウムコラゲナーゼ(0-0.2mg/100μl)を注射したとの記載があることから、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。
(引用文献1に記載された発明)
クロストリジウムヒストリチクムから高度に精製されたコラゲナーゼを含み、子宮類線維腫組織に注射される組成物。(以下、「引用発明」という。)
3 対比
引用発明の「クロストリジウムヒストリチクムから高度に精製されたコラゲナーゼ」は、本願請求項1に係る発明の「クロストリジウム・ヒストリチクムから得られるコラゲナーゼ」に相当する。
そうすると、本願請求項1に係る発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。
(一致点)
クロストリジウム・ヒストリチクムから得られるコラゲナーゼを含む組成物。
(相違点)
本願発明では、上記のコラゲナーゼを含む組成物が、患者の子宮類線維腫を治療するための注射可能な製剤であって、子宮類線維腫組織の1cm3当たり約0.06mg~約1mgのコラゲナーゼを注射により類線維腫に与える製剤であるのに対し、引用発明は、類線維腫組織サンプルにコラゲナーゼを注射する実験に用いるための組成物である点。
4 判断
ア 相違点についての検討
引用文献1には、1cm3の立方体にカットした類線維腫組織の中央に精製クロストリジウムコラゲナーゼを0-0.2mg注射したことが記載されている。引用文献1には、コラーゲン分解は24-48時間以内に起こり、注射された類線維腫組織は軟化、液化及び崩壊し、注射後24時間という早い時期に、0.03mgという低用量においても、類線維腫組織の中心に液化が観察されたと記載されていることから(1(1)イ)、それよりも大きい0.2mgの用量においても、1cm3の子宮類線維腫組織を軟化及び分解したことが理解できる。
そして、引用文献1は、「高度に精製されたクロストリジウムコラゲナーゼによる子宮類線維腫の治療」(1(1)ア)との表題のもと、生体外での原理実証実験として設計された実験を記載したものであって、実験結果をふまえた「結論」(1(1)イ)において、クロストリジウムコラゲナーゼの注射後に、ヒト子宮類線維腫組織は軟化及び分解し、これは類線維腫体積の減少につながる可能性があること、組織の軟化は、細胞の圧縮/機械的シグナル伝達も減少させ、コラーゲンの分泌の減少及び類線維腫の成長の抑制につながると記載されており、引用文献1のこれらの記載は、クロストリジウムコラゲナーゼを類線維腫組織の病巣組織に注射する治療薬とすることを示唆するものと認められる。
また、引用文献3にも、子宮筋腫、すなわち、子宮類線維腫は、コラーゲン原線維の変化、線維症および組織の硬直を特徴とし、コラーゲン形成を妨げる医学的戦略が検討されていることが記載され、そのような戦略に基づく治療薬候補のひとつであるコラゲナーゼに関しては、クロストリジウムヒストリチクムコラゲナーゼを有効成分とする医薬品が、拘縮索を持つ成人のデュピュイトラン拘縮を標的とするFDA承認薬として既に存在していることが記載されており(1(2)ア、イ)、クロストリジウムコラゲナーゼを注射用の医薬品として製剤化することに、格別の困難性はないと認められる。
そうすると、引用発明の組成物を、引用文献1に記載された子宮類線維腫組織を軟化及び分解を確認する実験の結果及びクロストリジウムコラゲナーゼを類線維腫の治療薬とすることに対する上記示唆に基いて、子宮類線維腫組織の1cm3当たり0.2mgのコラゲナーゼを注射により類線維腫に与える、患者の子宮類線維腫を治療するための注射可能な製剤とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 効果について
本願発明の効果について、明細書には、以下の記載があると認められる。
(i) 実施例5(【0097】~【0099】)には、摘出された子宮から得た類線維腫組織試料を1cm3立方体に切断し、血清に溶解した精製コラゲナーゼ100μL中に0.06または0.2mgを注射し、その後、37℃で、24、48、72、または96時間インキュベートした実験において、処置した類線維腫標本は、全体的により柔軟であり、部分的に液化した中心部を有しており、これら組織のマッソン三色染色およびピクロシリウスレッド染色は、媒体を注射した類線維腫組織と比較して、コラーゲン含有量の劇的な主観的減少を示したことが記載されている。
(ii) 実施例6(【0100】~【0104】)には、子宮摘出標本から、1.5cmの周囲隣接子宮筋層と共に、1~4cmの完全な類線維腫(粘膜下(子宮内膜と当接)、壁内(子宮筋層内)類線維腫、および漿膜下(子宮漿膜と当接)類線維腫、またはもし存在すれば有茎性類線維腫、および子宮内膜の0.5cm切片を、標本から切り離し(【0100】)、精製クロストリジウム・ヒストリチクムコラゲナーゼ(PCHC)(0.1mg/100μl/cm3)を注射し、37℃で24時間、培地中でインキュベートしたこと(【0101】)、及び、類線維腫から類線維腫の中心に、子宮筋層から類線維腫の中心に、または子宮内膜から類線維腫の中心に注射を行って、in vivo注射経路を模倣したことが記載され、類線維腫は液化されたことが記載されている(【0109】)。
(iii) 実施例7(【0110】~【0114】)には、1cm3の類線維腫組織の立方体の中央に、100μLの精製コラゲナーゼ0、0.25、0.5、1.0、2.0mg/mLを注射し、37℃で24、48、または96時間インキュベートした後、組織剛性を定量化したところ、精製クロストリジウムコラゲナーゼによる処置が、組織の動的剛性及びねじれ剛性を著しく減少させたことが記載され(【0112】~【0114】、図17)、48時間インキュベーションした後の類線維腫組織でのマッソン染色は、コラーゲンが減少していることを示し、偏光下で明白に視覚化されたピクロシリウスレッド染色は、底部右側でコラーゲン線維が分解されていることを明らかに示していたことが記載されている(【0114】)。
明細書に記載された実施例5~7についての上記の記載から、本願発明について、生体外での試験において、類線維腫への注射後、24時間から96時間で、類線維腫が部分的に液化し、類線維腫組織のコラーゲンが減少するとともに、剛性を低下させる効果が得られることが認められる。
しかしながら、引用文献1の「結果」(1(1)イ)にも、コラーゲン分解は24-48時間以内に起こり、注射された類線維腫組織は軟化、液化及び崩壊し、注射後24時間で、0.03mgという低用量においても、類線維腫組織の中心に液化が観察されたことが記載され、マッソンの染色では、コントロールにコラーゲンの大きな領域が見られたが、コラゲナーゼ処理された類線維腫組織ではより小さく、ピクロシリウスレッド染色画像は、コラゲナーゼ処理組織においてコントロール組織よりも、コラーゲン線維が低密度で短いことを示したことが記載されているから、明細書に記載された本願発明の上記の効果は、引用文献1の記載から当業者が予測し得る。
ウ 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和2年9月18日に提出した意見書において、以下の主張をしている。
「本願発明にあたって、類線維腫には、「類線維腫の中心は、より線維性であり、末梢よりも小さな毛細血管床を含むため、および類線維腫腫瘍を取り囲む血管被膜が高密度であるため、全身療法では、治療的組織内レベルの薬物が類線維腫中心にもたらされない可能性が高い(明細書段落0020)」といった本技術分野における特有の課題が存在しました。すなわち、生体内に存在する子宮類線維腫は、硬い高密度の被膜に包まれた、インタクトな高密度コラーゲン組織であり、治療においては当該課題を解決する必要がありました。
しかし、引用文献1は、治療における当該課題に対する解決手段や何らかの示唆を与えるものでもありません。引用文献1は、被膜に包まれた子宮類線維腫に対する課題を開示も示唆もしていないため、当該課題に鑑みて、投与方法や投与用量をどのようにすべきかの指針は引用文献1からは得られません。引用文献1の実験では、切開して得られた、単離された類線維腫組織のキューブに直接、コラゲナーゼを注射することによって、キューブを軟化・分解したことを示すにすぎません。
引用文献1では、インタクトな被包された子宮類線維腫に対する治療の有効性を開示もしていないし、実現もできていません。そのことをサポートする事実として、引用文献1では、以下のように記しています。「Preclinical studies will test the feasibility of this purified collagenase as a potential therapy for uterine fibroids」
すなわち、引用文献1の時点では、さらなる前臨床実験が成功する見込みがあったとはいえず、引用文献1において得られた実験的事実をどのような方向性に導くべきかについて予測ができたとはいえません。
このように、本願請求項1に係る発明は、引用文献1の開示に基づいたとしても想到し得なかったものであり、引用文献1に対して進歩性を備えています。」
請求人の上記主張について検討する。
確かに、引用文献1には、類線維腫の治療において、全身療法では、治療的組織内レベルの薬物が類線維腫中心にもたらされない可能性が高いという特有の解決すべき課題があることについての直接的な記載はない。
しかしながら、引用文献1の「目的」(1(1)イ)に、変性コラーゲンの蓄積は、子宮類線維腫の形成と病的状態の重要なプレイヤーであり、これらの腫瘍は非常に剛性で硬いことが記載され、当該文献に記載された研究は、クロストリジウムヒストリチクムから高度に精製された、バクテリアコラゲナーゼが、ヒト類線維腫組織を分解して、治療オプションとなるかをテストするものであることが記載されたうえで、実験においても、単に類線維腫組織をコラゲナーゼを含む培地に浸す等の条件ではなく、類線維腫組織内に注射するという方法を採用しているのは、単に組織がコラゲナーゼを含有する液体に接触しているだけでは、類線維腫組織内にコラゲナーゼが十分に到達しないことを予測して、積極的に組織内へ注射する方法を採用したものであると理解できる。すなわち、引用文献1に接した当業者は、類線維腫の治療において、全身療法では、治療的組織内レベルの薬物が類線維腫中心にもたらされない可能性が高いという特有の解決すべき課題があり、当該課題が、コラゲナーゼを類線維腫組織内へ注射することによって解決できることを理解するものといえる。
したがって、請求人の主張によっては、相違点について、当業者が容易に想到することができなかったとすることはできない。
5 小 括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献1及び3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
上記のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献1及び3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、上記結論のとおり、審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-004665