特許拒絶査定不服審判
2019-004433
保守管理システム、保守管理方法および保守管理プログラム
- 審判番号
- 2019-004433
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-237451外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年04月04日
- 審決日
- 2020年09月16日
- 公報発行日
- 2020年11月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .113-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-237451「保守管理システム、保守管理方法および保守管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月30日出願公開、特開2016- 99859、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続きの経緯
本願は,平成26年11月25日の出願であって,平成30年6月26日付けで拒絶理由通知がされ,同年7月24日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年11月16日付けで最後の拒絶理由通知がされ,平成31年1月15日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものの,同年1月29日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年4月4日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和2年4月22日付けで拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,同年7月10日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成31年1月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.理由2(特許法第29条第1項第3号)について
本願請求項10に係る発明は,以下の引用文献Aに記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.理由3(特許法第29条第2項)について
本願請求項1-10に係る発明は,以下の引用文献A,B,Cに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[引用文献等一覧]
A.特開2008-171231号公報
B.特開平7-200365号公報
C.特開2012-108783号公報
第3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。
本願請求項1-10に係る発明は,以下の引用文献1-3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[引用文献等一覧]
1.特開2003-271422号公報 (当審において新たに引用した文献)
2.特開2009-170034号公報 (当審において新たに引用した文献)
3.特開2008-171231号公報 (拒絶査定時の引用文献A)
第4 本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は,令和2年7月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
ある保守対象からそのログ情報を受信し、そのログ情報を汎用通信回線を通じて送信する保守手段と、
前記ログ情報を、汎用通信回線を通じて受信し、処置を行うまでに前記保守対象のある個別の構成要素について発生する異常の発生の許容値を、その個別の構成要素についてのある期間内に前記異常が発生した回数及び前記期間内に前記異常が発生する回数の予測値のうちのいずれかである対象発生回数と、予め設定した基準値との比較結果に応じて更新する管理手段と、
前記許容値を出力する出力手段と、
を備え、
前記管理手段は前記保守対象の保守を行う者により管理される保守センタに設置され、
前記保守手段及び前記出力手段は顧客が管理する領域に置かれる、
保守管理システム。」
本願発明2-8は,本願発明1を減縮した発明である。
本願発明9は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明10は,本願発明1のうち,「保守手段」を省いたものに対応するプログラムの発明である。
第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
ア 当審による令和2年4月22日付けの拒絶の理由(以下,「当審拒絶理由」という。)に引用された引用文献1(特開2003-271422号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)
A「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンピュータ端末の保守の必要性を判定する予防保守判定処理方法に関する。特に、ネットワークを用いて端末のシステムの復旧処理を行なう保守管理システムにおいて、端末のハードウェア保守推奨の有無を判定する予防保守判定処理方法と、その処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムと、予防保守判定処理の結果をもとにシステムの復旧処理を行なう保守管理方法とに関する。」
B「【0011】さらに、保守管理システムが複数の顧客端末の保守を管理している場合に、例えばセクタ異常が所定の回数以上となれば直ちにHDD交換を行なうなど、保守推奨を判定する閾値を一定にしてしまうと、各顧客端末の環境や固有の稼動状態に則した判定を行うことができず、かえって予防保守によってHDDなどの資源が無駄になったり、保守作業が非効率になったりすることになる。」
C「【0026】
【発明の実施の形態】図1に、本発明の実施の形態におけるシステム構成例を示す。本発明にかかる予防保守判定処理装置1は、顧客端末2および保守管理者端末3と接続しデータ通信を行なうことができる。予防保守判定処理装置1は、ログ情報入力部11と、ログ情報解析部12と、予防保守判定処理部13と、判定結果表示処理部14と、閾値変更処理部15と、データベース群16からなる。」
D「【0030】予防保守判定処理部13は、数値ログDB161の数値ログ情報を、規定閾値DB162で記憶する顧客端末2ごともしくはハードウェアの種別ごとに規定した閾値と比較し、所定の対処方法に該当するか否かを判定する手段である。ここで、対処方法は、例えば「再構築」、「再構築、保守推奨」、「待機、保守派遣」などがある。
【0031】「再構築」は、顧客端末2の数値ログ情報の解析結果が所定の閾値に達しない状態、すなわち顧客端末2のハードウェアが異常状態ではないため、ソフトウェアの再構築のみを行なうように顧客端末2に指示する対処方法である。
【0032】「再構築、保守推奨」は、顧客端末2の数値ログ情報の解析結果(値)が所定の閾値を超えてはいないが閾値との差が少ない状態、すなわち、顧客端末2のハードウェアが異常状態ではないが近い将来には交換保守が必要となるような状態であるため、現時点ではソフトウェアの再構築処理と保守推奨とを指示する対処方法である。
【0033】「待機、派遣」は、顧客端末2の数値ログ情報の解析結果(値)が所定の閾値を超えている状態、すなわち顧客端末2のハードウェアが異常状態にあり、直ちに交換や修理などの保守が必要な状態であるため、顧客端末2へ待機する旨を通知し、保守管理者端末3へ保守派遣依頼を通知する対処方法である。」
E「【0043】図2に顧客端末2の構成例を示す。顧客端末2は、ログ情報生成部21と、ログ情報記憶部22と、ログ情報送信部23と、メッセージ表示部24と、再構築処理部25とを備える。」
F「【0050】顧客端末2に何らかの異常が生じたときに、ユーザがリカバリ起動メディア20を顧客端末2へセットすることにより、処理プログラムであるこれらの各処理部が直接起動して所定の処理を行なう。
【0051】すなわち、ユーザがリカバリ起動メディア20を顧客端末2へセットすると、ログ情報送信部23は、基本OSを起動し、ログ情報記憶部22に記憶されているログ情報を収集して、予防保守判定処理装置1にネットワーク9を通じて接続し、対処方法の問い合わせと収集したログ情報を送信する。」
G「【0053】図3に、本発明にかかる予防保守判定処理装置1を適用する保守管理センタ100の構成例を示す。
【0054】保守管理センタ100はネットワーク9を通じてアクセスが可能なサーバであり、例えば、予防保守判定処理装置1の他、認証サーバ4と、顧客情報マスタデータベース(DB)5と、ソフトウェア復旧サーバ6と、固有設定情報マスタデータベース(DB)7とを備える。」
H「【0063】予防保守判定処理装置1のログ情報入力部11は、送信されたログ情報を入力して(ステップS11)、通常、図5に示すようなテキストデータ形式であるログ情報を数値化し(ステップS12)、数値化したログ情報を数値ログDB161へ反映させる(ステップS13)。」
J「【0066】例えば、ログ情報解析部12は、PC00001で登録されている顧客端末2のHDD(型名:HDD0010)についての数値ログ情報を数値ログDB161から抽出し、ハードウェア・エラーが発生しているかどうかを調べる。具体的には、ログ情報解析部12は、数値ログDB161から顧客端末と型名/OSをキーに数値ログ情報を抽出し、図7に示すような解析情報を生成する。
【0067】また、ログ情報解析部12は、解析情報からエラー番号をキーにしてエラーを抽出し、図8(A)に示すようなエラーカウント情報を生成する。エラーカウント情報は、ハードウェアの型名、エラー番号、発生回数、発生台数、およびこれまでの保守回数からなる。
【0068】また、ログ情報解析部12は、解析情報から、エラー番号についてメッセージの種別ごとの発生件数を抽出し、図8(A)に示すようなエラーメッセージ種別カウント情報を生成する。エラーメッセージ種別カウント情報は、エラー種別(エラー番号)ごとに警告的状況メッセージ(Warning)、破壊的状況メッセージ(Fatal)などのメッセージ件数を記憶し管理する。エラーメッセージ種別カウント情報はエラーDB163に反映させる。
【0069】ログ情報解析部12は、さらに、図7の解析情報からHDDの交替セクタ状況に関するデータを抽出し、図9に示すような交替セクタ監視テーブルを生成し、規定閾値DB162から該当するハードウェアの交替セクタについて設定されている規定閾値を抽出し、図10に示すような交替セクタ規定閾値テーブルを生成する。
【0070】図9の交替セクタ監視テーブルには、該当するHDD(型名HD0010)について、週、月および年の各単位で集計した交替セクタの使用回数、HDDの仕様情報をもとに算出した交替可能な残りのセクタ数が格納される。また、図10の交替セクタ規定閾値テーブルには、該当するHDDの使用可能な交替セクタ数が、週、月、年の各単位および合計について設定され格納される。
【0071】そして、ログ情報解析部12は、交替セクタ監視テーブルと交替セクタ規定閾値テーブルとをもとに、HDDでハードエラーが発生しているか否かを判定する(ステップS15)。すなわち、ログ情報解析部12は、交替セクタの使用状況を週単位、月単位、年単位にまとめた交替セクタ監視テーブルと交替セクタ規定閾値テーブルとを比較して、交替セクタの枯渇が生じているか否かを確認する。そして、交替セクタが、週、月、年のいずれかの単位で交替セクタが枯渇していれば、ハードエラーに該当すると判定する。ここで、図9に示すように、交替セクタ監視テーブルの交替可能なセクタの残りが「0」である場合には(下線で示す)、既に交替可能なセクタがない枯渇状態であるためハードエラーが発生したと判定する。
【0072】HDDにハードエラーが発生したと判定した場合には(ステップS15)、さらに、閾値変更処理部15は、以降はハードエラーが発生する前に保守推奨(この場合にはHDD交換)を行なえるように、交替セクタ監視テーブルの各単位の交替セクタの使用数をもとに、所定の規則にしたがって、交替セクタ規定閾値テーブルの閾値を変更する必要があるかどうかを判定する(ステップS16)。規定閾値の変更の有無を判定する所定の規則としては、以下のようなものを用いる。
【0073】(a)交替セクタ監視テーブルの各単位の値のいずれかが、交替セクタ規定閾値テーブルの値に達した場合もしくは超えた場合、または、(b)交替セクタ監視テーブルおよび交替セクタ規定閾値テーブルの対応する値の差が所定の範囲内の場合。
【0074】閾値変更処理部15は、規定閾値の変更が必要と判定した場合に、交替セクタ規定閾値テーブルの閾値を変更する(ステップS17)。
【0075】例えば、図9の交替セクタ監視テーブルと図10の交替セクタ規定閾値テーブルとをもとに判定する場合に、交替セクタ監視テーブルの交替セクタの使用数が年10回であり、交替セクタ規定閾値テーブルの対応する規定閾値に達し、交替セクタが枯渇してハードエラーが発生する可能性があることを意味している。
【0076】閾値変更処理部15は、前記の(a)の規則に従って閾値変更を決定し、変更処理を行う。閾値変更処理部15は、交替セクタ規定閾値テーブルの年の設定を1減算して10から9に変更し、併せて合計を29から30に変更する。図11に、変更後の交替セクタ規定閾値テーブルを示す。
【0077】なお、閾値変更処理部15は、規定閾値を年→月→週の順に1項目ずつ変更していくようにして変更を行ってもよい。また、「出荷台数当たりに対する障害取扱い件数×数%」で規定閾値を調整して変更を行ってもよい。また、エラーDB163のエラーの発生回数などを統計処理し規定閾値を調整して変更を行ってもよい。
【0078】このように、本発明では、顧客端末2の実際の稼動状況を反映したログ情報を解析し、その解析結果をもとにハードエラーや保守推奨を判定する規定閾値を設定し自動的に変更することができる。
【0079】そして、以降の保守推奨判定の処理においては、交替セクタ数がより厳格に設定された規定閾値を用いて保守推奨の必要性を判定することができるため、交替セクタの残りが0になってハードエラーとなる前に、交替セクタの枯渇となりやすい状況を早期に発見して予防保守を行なうことができる。
【0080】その後、予防保守判定処理部13は、ログ情報解析部12の解析結果にもとづいて対処方法を判定する。ここでは、交替セクタの枯渇が生じてハードウェア・エラーとなっていてHDD交換が必要である。そこで、対処方法として「待機、派遣」指示を選択して判定結果表示処理部14へ通知する(ステップS18)。」
K「【0094】予防保守判定処理装置1の閾値変更処理部15は、入力装置(図1に図示しない)から入力された任意の値をもとに規定閾値DB162の値を変更する。これにより、権限を有する管理者は、意図的に規定閾値DB162の規定閾値を任意の値に変更して、具体的なエラー発生にかかわらず、顧客端末2に搭載されている特定のハードの確認したり回収場所の特定したりするなど、潜在的な障害を回避するための作業、例えばリコール対象装置回収の作業で用いる情報を自動的に取得することができ、かかる作業負担を軽減することができる。」
L「【0110】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、保守管理の対象となる顧客端末のログ情報を取得し解析し、所定の規定閾値を用いてハードウェアが異常ではないが潜在する危機的状況であって保守推奨をするか否かを判定し、顧客端末もしくは保守管理者端末へ「保守推奨」を通知する予防保守判定処理を実現することができる。これにより、ソフトウェア復旧の前提となるハードウェアについて将来のハードウェア・エラーにつながる障害を早期に認識することができる。また、従来では正常に動作可能なハードウェアについても障害の原因を追求することなく交換保守していた経費などが削減でき、効率的な保守管理を実現することができる。
【0111】特に、保守対象が複数の顧客端末である場合に、「待機、派遣」、「保守推奨、再構築」、「再構築」などの対処方法を判定する規定閾値を各顧客端末ごとに設定でき、顧客端末2のログ情報の解析結果をもとに変更することができる。これにより、顧客端末ごとに対応した保守管理が可能となり有効的な保守管理を実現することができる。」
イ 上記A,CないしF,及びHないしLの記載内容からすると,引用文献1には,次のとおりの発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ネットワークを用いて端末のシステムの復旧処理を行う保守管理システムであって,
顧客端末は,ログ情報記憶部と,ログ情報送信部とを備え,
ログ情報送信部は,ログ情報記憶部に記憶されているログ情報を収集して,予防保守判定処理装置にネットワークを通じて接続し,収集したログ情報を送信し,
予防保守判定処理装置は,ログ情報入力部と,ログ情報解析部と,予防保守判定処理部と,判定結果表示処理部と,閾値変更処理部と,データベース群からなるものであり,保守管理センタは,予防保守判定処理装置を備え,
ログ情報入力部は,送信されたログ情報を数値化し,数値化したログ情報を数値ログDBへ反映させ,
ログ情報解析部は,顧客端末のHDDについての数値ログ情報を数値ログDBから抽出し,解析情報を生成し,解析情報からHDDの交替セクタ状況に関するデータを抽出し,交替セクタ監視テーブルを生成し,規定閾値DBから該当するハードウェアの交替セクタについて設定されている規定閾値を抽出し,交替セクタ規定閾値テーブルを生成し,交替セクタの使用状況を週単位,月単位,年単位にまとめた交替セクタ監視テーブルと交替セクタ規定閾値テーブルとを比較して,交替セクタの枯渇が生じているか否かを確認し,週,月,年のいずれかの単位で交替セクタが枯渇していれば,ハードエラーに該当すると判定し,
HDDにハードエラーが発生したと判定した場合には,閾値変更処理部は,以降はハードエラーが発生する前に保守推奨を行なえるように,所定の規則にしたがって,交替セクタ規定閾値テーブルの閾値を変更する必要があるかどうかを判定し,規定閾値の変更が必要と判定した場合に,交替セクタ規定閾値テーブルの閾値を変更し,
規定閾値の変更の有無を判定する所定の規則としては,(a)交替セクタ監視テーブルの各単位の値のいずれかが,交替セクタ規定閾値テーブルの値に達した場合もしくは超えた場合,のようなものを用い,
閾値変更処理部は,前記の(a)の規則に従って閾値変更を決定し,交替セクタ規定閾値テーブルの年の設定を1減算して10から9に変更し,
予防保守判定処理部は,ログ情報解析部の解析結果にもとづいて対処方法を判定し,対処方法として「待機,派遣」指示を選択し,「待機,派遣」は,顧客端末の数値ログ情報の解析結果が所定の閾値を超えている状態,すなわち顧客端末2のハードウェアが異常状態にあり,直ちに交換や修理などの保守が必要な状態であり,
保守対象が複数の顧客端末である場合に規定閾値を各顧客端末ごとに設定でき,顧客端末のログ情報の解析結果をもとに変更することができ,閾値変更処理部は,入力装置から入力された任意の値をもとに規定閾値DBの値を変更する,
ことを特徴とする保守管理システム。」
2 引用文献2について
ア 当審拒絶理由に引用された引用文献2(特開2009-170034号公報)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)
M「【0036】
次に、本実施の形態のデータ記録装置1内にコマンドが供給されることで、行われるデータの書き込み及び読み出しの処理構造であるプロセス構造を、図5を参照して説明する。この図5に示したプロセス構造は、図3及び図4に示した内部制御部11-2の制御で実行される場合のプロセス構造を示したものであり、内部制御部11-2が制御機能を備える。
【0037】
デジタルシネマサーバから高速ネットワークのドライバであるFCドライバにコマンドが供給されると、コマンド待機処理が行われ、コマンドで指示された処理内容を、コマンド処理に伝える。
コマンド処理は、コマンドの処理内容を実際に処理する部分であり、テーブル検索、リソースの確保などを行い、高速ネットワーク側と通信を行う。
また、再構築設定に合わせて、再構築用のコマンドを発行し、設定と状況に合わせて再構築を実行する。
LBAマネージャでは、例えば、HDDにデータが書き込み出来ない状況が発生した場合に、そのことが通知されて、管理を行う。
モードページマネージャでは、HDDのエラーを集計して、各HDDの不良判断を行う。後述する不良判断処理は、ここで実行されることになる。ここでは、具体的にはエラー発生の頻度値と積算値とを集計する。頻度値は、各HDDに対して一定数のコマンドが発行される毎のエラー数であり、積算値は、該当するHDDを使用開始してからの累積のエラー数である。また、不良判断は、現在の頻度値と設定された閾値とを比較して、現在の頻度値が閾値を越えた場合に、不良であると判断する。但し後述するように本例の場合には、この閾値を可変設定するようにしてある。また、不良と判断された場合には、該当する不良HDDを、管理者に対して伝える処理が実行される。例えば表示などで不良と判断されたHDDを知らせる処理が行われる。
【0038】
リソースマネージャでは、コマンドテーブルやキャッシュの割当てを行う。
HDDマネージャでは、コマンドテーブルの監視、空いているHDDコントローラへの指令、HDDステータスの管理を行う。
HDDコントローラは、HDD実行部へのコマンドの発行を行う。コマンドに基づいた処理が、規定された時間内に行われているかを監視するタイムアウト監視についても行う。正常に終了した場合は、終了を返答して次のコマンド待ちになる。規定された時間内に処理が終了しないタイムアウトした場合には、タイムアウトを返送し、HDDステータスをRADIコントローラに返し、タイムアウトしたドライバの終了を待つ。さらにタイムアウトした場合はリセット処理に入り、終了時点でステータスを返し、次の待ちに入る。さらにだめな場合には、不良としてステータスを返し、次の待ちに入る。
実行部は、HDDドライバを呼び出す処理を実行する。
ステータスデーモンは、HDDの状態を監視する。ここでは、主として物理層の状態を監視する。HDDの着脱、物理層のエラーによる切断も反映させる。
【0039】
次に、本実施の形態によるHDDの故障診断処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。
この故障診断処理は、データ記録装置1が備える複数台のHDD1台ごとに行われるものである。
まず、HDDに対するデータの書き込み及び読み出しのコマンドが供給されると、そのコマンドが正常に処理されたか否か判断して、正常に処理されない場合に、エラーとする。正常に処理されない状態としては、データの読み出しや書き込みができない場合だけでなく、規定された時間内に処理されないタイムアウト時も含まれる。
エラー発生があると(ステップS11)、そのエラー発生の頻度値と積算値とをカウントアップさせる(ステップS12)。頻度値は、ここでは100アクセス当りのエラーの発生数である。そして、そのエラー発生回数の積算値が10000の倍数に達したか否か判断する(ステップS13)。
【0040】
エラー発生回数の積算値が、10000の倍数に達した場合には、頻度値を比較する閾値の設定値を、現在の設定値の約半分の値とする(ステップS14)。但し、閾値の下限値を予め決めておく。ここでは、初期状態での閾値を10とし、10→5→2と変化させる。この2を下限値とし、以後は閾値2が設定された状態を継続させる。
そして、ステップS13で積算値が10000の倍数に達してない場合と、ステップS14で閾値を変更した場合のいずれの場合でも、現在設定されている閾値とエラー発生回数の積算値とを比較して、故障判定を行う(ステップS15)。閾値を越えた場合、該当するHDDが故障と判断する。故障と判断すると、そのHDDの交換を告知する処理が行われる。
【0041】
このように処理されることで、例えば1台のHDDが使用開始されると、当初はエラー頻度値と比較する閾値が10であり、100アクセス当りのエラー数が10を越える場合に、不良であると判断される。そして、エラーの発生回数の累計値が10000になったとき、閾値が5に変化し、100アクセス当りのエラー数が5を越える場合に、不良であると判断される。さらに、エラーの発生回数の累計値が20000になったとき、閾値が2に変化し、100アクセス当りのエラー数が2を越える場合に、不良であると判断される。それ以後は、エラーの発生回数の累計値が30000になっても、閾値は2のままである。」
N「【0045】
従って本実施の形態によると、HDDのエラーの発生頻度についてはそれ程変化がない場合であっても、不良と判断できるようになり、適正にエラー発生回数に基づいた不良管理が可能となる。例えば、比較的エラーの発生状況が多い状況で安定しているようなハードディスクドライブを、比較的短い使用期間で不良品として検出できるようになり、ハードディスクドライブを使用したデータ記録装置の信頼性向上に貢献する。」
3 引用文献3(原査定における引用文献A)について
ア 原査定における拒絶の理由,及び当審拒絶理由に引用された引用文献3(特開2008-171231号公報)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)
P「【0029】
図5は、アレイディスク群の保守管理装置によるリカバリエラーの発生回数の閾値の更新処理の例を説明する図である。この例では、アレイディスク群の保守管理装置1が備える閾値更新部14が、図4を参照して前述したAFRの算出例に従って故障率算出部13が算出したアレイディスクの世代毎のAFRと、予め定められた該AFRの閾値の情報とを比較し、該比較結果に基づいて、各世代のリカバリエラーの発生回数の閾値を更新する。
【0030】
より具体的には、閾値更新部14は、AFRが該AFRの閾値未満であると判断した場合には、該AFRに対応する世代のアレイディスク101についてのリカバリエラーの発生回数の閾値を更新せず、AFRが該AFRの閾値以上であると判断した場合には、該AFRに対応する世代のアレイディスク101についてのリカバリエラーの発生回数の閾値を、該AFRが該AFRの閾値を超える程度に応じた値に設定して減らす。閾値更新部14は、例えば、AFRが該AFRの閾値を超える程度が大きいほど、設定するリカバリエラーの発生回数の閾値を小さくする。
【0031】
図5中に示すグラフの横軸はアレイディスク101の世代、縦軸はアレイディスク101の各世代に対応するAFRである。EtはAFRの閾値、Eaはa世代のアレイディスク101のAFR、Ebはb世代のアレイディスク101のAFR、Ecはc世代のアレイディスク101のAFRである。
【0032】
閾値更新部14は、EaとEtとを比較し、EaがEt未満であると判断する。従って、閾値更新部14は、a世代のアレイディスクについてのリカバリエラーの発生回数の閾値を更新しない。
また、閾値更新部14は、EbとEtとを比較し、EbがEt以上であると判断する。従って、閾値更新部14は、b世代のアレイディスクについてのリカバリエラーの発生回数の閾値を、例えばEbからEtを減じた結果得られる値に応じた値に設定して減らす。また、閾値更新部14は、EcとEtとを比較し、EcがEt以上であると判断する。従って、閾値更新部14は、c世代のアレイディスクについてのリカバリエラーの発生回数の閾値を、EcからEtを減じた結果得られる値に応じた値に設定して減らす。
【0033】
本発明におけるリカバリエラーの発生回数の閾値の更新処理は、上述した処理に限定されない。本発明の一実施例によれば、閾値更新部14が、例えば、AFRが該AFRの閾値未満であると判断した場合には、該AFRに対応する世代のアレイディスク101についてのリカバリエラーの発生回数の閾値を増やし、AFRが該AFRの閾値と等しいと判断した場合には、該AFRに対応する世代のアレイディスク101についてのリカバリエラーの発生回数の閾値を更新せず、AFRが該AFRの閾値より大きいと判断した場合には、該AFRに対応する世代のアレイディスク101についてのリカバリエラーの発生回数の閾値を減らすようにしてもよい。」
4 原査定における引用文献Bについて
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献B(特開平7-200365号公報)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)
Q「【0019】次に図4を用いて、本発明におけるホストコンピュータ1の処理動作について説明する。
【0020】端末3からログ情報が送信されてくると、ログ情報受信手段15が起動され、該ログ情報は、ログ情報受信手段15で受信処理を施された後(ステップ104)、発信元ID付加手段16が起動される。
【0021】該ログ情報がどの端末3から送信されたものであるかを識別するための発信元IDが発信元ID付加手段16で付加されてログ情報蓄積手段11が起動される(ステップ105)。
【0022】この発信元IDを付加されたログ情報は、ホストコンピュータ1のログ情報ファイル10にログ情報蓄積手段11によって蓄積される(ステップ106) こうして複数の端末3から送信されたログ情報は、ホストコンピュータ1で一元管理され、システム側で設定した条件に従って随時または定期的にログ情報出力手段17が起動されて、ログ情報出力手段17がログ情報ファイル10の内容を編集して出力装置に一覧表を出力する(ステップ107)。
【0023】このホストコンピュータ1に蓄積されたログ情報は、システム側で設定した条件に従って随時または定期的にログ情報送信手段13で送信処理が施され、通信回線4を介して保守センタ2に送信される(ステップ108)。」
5 原査定における引用文献Cについて
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献C(特開2012-108783号公報)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)
R「【0017】
ユーザ端末100は、障害発生通知部11、ログ情報作成部16、ログ情報記憶部12、ログ情報自動収集部13、ログ情報暗号化部14、電力供給部15を含む。ユーザ端末100は、障害検出時にはネットワークから切り離し、制御部200、障害記録中継装置300にのみ接続するものとする。」
S「【0025】
ログ情報暗号化部14は、保守センタ400で設定されている暗号化方式に合わせて、保守センタ400で復号化できるように、ログ情報の暗号化を行なう。また、ログ情報暗号化部14は、暗号化の後、障害記録中継装置300に暗号化したログ情報(以降、暗号化ログと呼ぶ)を送信する。障害記録中継装置300のログ情報送受信部32はこれを受信し、ログ情報退避部33に格納する。ログ情報暗号化部14は、ログ情報退避部33に関する、場所、容量等の情報を格納する、図示しない退避先情報記憶部を有している。ログ情報暗号化部14は、送信に必要な情報を、この退避先情報記憶部から得る。ログ情報暗号化部14は、ログ情報送受信部32から暗号化ログの退避完了の通知を受けると、障害発生通知部11に退避が完了したことを通知する。」
T「【0028】
障害記録中継装置300は、ログ情報送信指示部31、ログ情報送受信部32、ログ情報退避部33、ログ情報消去部34、電力供給判断部35、充電池36を含む。障害記録中継装置300は、ネットワークへの接続が可能である。」
U「【0032】
ログ情報送受信部32は、ログ情報暗号化部14から受信した暗号化ログをログ情報退避部33に格納し、格納完了後にログ情報暗号化部14に退避の完了を通知する。また、ログ情報送受信部32は、ログ情報送信指示部31からの指示を受けて、ログ情報退避部33から暗号化ログを取得し、これを保守センタ400に送信する。また、ログ情報送受信部32は、保守センタ400から暗号化ログ受信通知を受けて、ログ情報消去部34に、ログ情報退避部33の中の暗号化ログの消去を指示する。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「保守管理システム」は,本願発明1の「保守管理システム」に相当する。
(イ)引用発明の「顧客端末」及び「ログ情報」は,それぞれ,本願発明1の「保守対象」及び「ログ情報」に相当する。また,引用発明の「ネットワーク」と本願発明1の「汎用通信回線」とは,「通信回線」である点で共通する。そして,引用発明の「顧客端末は,ログ情報記憶部と,ログ情報送信部とを備え」との記載,及び,「ログ情報送信部は,ログ情報記憶部に記憶されているログ情報を収集して,予防保守判定処理装置にネットワークを通じて接続し,収集したログ情報を送信」との記載から,引用発明の保守管理システムは,顧客端末が備えるログ情報記憶部からログ情報を受信し,そのログ情報をネットワークを通じて送信する,保守手段を備えるものであるといえる。
してみると,引用発明と本願発明1とは,後記する点で相違するものの,“ある保守対象からそのログ情報を受信し,そのログ情報を通信回線を通じて送信する保守手段”を備える点で共通する。
(ウ)引用発明の「交換や修理などの保守」及び「顧客端末のHDD」は,それぞれ,本願発明1の「処置」及び「保守対象のある個別の構成要素」に相当する。また,引用発明の「顧客端末のHDDについての数値ログ情報数値ログDBから抽出し,解析情報を生成し,解析情報からHDDの交替セクタ状況に関するデータを抽出し」との記載,「交替セクタの使用状況を週単位,月単位,年単位にまとめた交替セクタ監視テーブルと交替セクタ規定閾値テーブルとを比較して」との記載,及び「顧客端末の数値ログ情報の解析結果が所定の閾値を超えている状態,すなわち顧客端末のハードウェアが異常状態にあり,直ちに交換や修理などの保守が必要な状態」との記載からすると,引用発明の「該当するハードウェアの交替セクタについて設定されている規定閾値」は,交換や修理などの保守を行うまでにHDDについて発生する交替セクタの使用状況についての閾値といえるものである。そして,引用文献1の上記Bの段落【0011】に,「保守管理システムが複数の顧客端末の保守を管理している場合に、例えばセクタ異常が所定の回数以上となれば直ちにHDD交換を行なうなど・・・閾値を一定にしてしまうと・・・保守作業が非効率になったりすることになる」と記載されるように,引用発明のHDDにおいても,交替セクタは,セクタ異常の発生に伴い使用されるものであるといえる。さらに,引用発明では,「保守管理センタは,予防保守判定処理装置を備え」ることから,引用発明の「予防保守判定処理装置」は,保守センタに設置される保守管理のための手段であるといえる,加えて,引用発明の「予防保守判定処理装置は,ログ情報入力部と,ログ情報解析部と,予防保守判定処理部と,判定結果表示処理部と,閾値変更処理部と,データベース群からなる」との記載,「閾値変更処理部は」「ハードエラーが発生する前に保守推奨を行なえるように」「交替セクタ規定閾値テーブルの閾値を変更」との記載,及び上記(イ)の検討内容を踏まえると,引用発明の保守管理システムは,ログ情報を通信回線を通じて受信し,交換や修理などの保守を行うまでに顧客端末のHDDについて発生するセクタ異常の発生の許容値を更新する,保守管理手段を備えるものであるといえる。
してみると,引用発明と本願発明1とは,後記する点で相違するものの,“前記ログ情報を,通信回線を通じて受信し,処置を行うまでに前記保守対象のある個別の構成要素について発生する異常の発生の許容値を,更新する管理手段”を備える点,及び“前記管理手段は保守センタに設置される”点で共通する。
イ 以上から,本願発明1と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。
(一致点)
ある保守対象からそのログ情報を受信し,そのログ情報を通信回線を通じて送信する保守手段と,
前記ログ情報を,通信回線を通じて受信し,処置を行うまでに前記保守対象のある個別の構成要素について発生する異常の発生の許容値を,更新する管理手段と,
を備え,
前記管理手段は保守センタに設置される,
保守管理システム。
(相違点1)
本願発明1が,「汎用通信回線」を通じて「ログ情報」を「送信」及び「受信」するものであるのに対し,引用発明の「ネットワーク」は,「通信回線」ではあるが,「汎用通信回線」であることについてまでは明記されていない点。
(相違点2)
本願発明1が,「異常の発生の許容値」を,「その個別の構成要素についてのある期間内に前記異常が発生した回数及び前記期間内に前記異常が発生する回数の予測値のうちのいずれかである対象発生回数と,予め設定した基準値との比較結果に応じて」「更新する」のに対し,引用発明は,そのような比較結果に応じて許容値を更新するものではない点。
(相違点3)
本願発明1が,「許容値を出力する出力手段」を備えるのに対し,引用発明は,「入力装置から入力された任意の値をもとに規定閾値DBの値を変更する」手段を備えるものであるが,「許容値を出力する出力手段」を備えることについて明記されていない点。
(相違点4)
本願発明1が,「保守センタ」は「保守対象の保守を行う者により管理される」ものであり,「保守手段」は「顧客が管理する領域に置かれる」ものであるのに対し,引用発明の「保守管理システム」は,そのような特定がなされていない点。
(相違点5)
本願発明1が,「出力手段は顧客が管理する領域に置かれる」ものであるのに対し,引用発明の「保守管理システム」は,そのような特定がなされていない点。
(2)判断
事案に鑑みて,上記相違点5について先に検討する。相違点5に係る本願発明1の「出力手段は顧客が管理する領域に置かれる」という構成は,上記引用文献1-3,B,Cには記載されておらず,本願の出願日前において周知技術であるともいえない。また,引用発明では,「入力装置から入力された任意の値をもとに規定閾値DBの値を変更する」ものであるところ,仮に,データベースの値を入力装置から変更する上で,その時点での値を画面といった出力手段に出力して確認可能とする技術思想が,本願の出願日前における周知技術であったとしても,引用発明の「入力装置」は,上記引用文献1の上記Kの段落【0094】に,「閾値変更処理部は、入力装置・・・から入力された任意の値をもとに規定閾値DBの値を変更する。これにより、権限を有する管理者は、意図的に規定閾値DBの規定閾値を任意の値に変更し」とあるように,保守センタの管理者によって操作されることを前提とするものであって,この「入力装置」を顧客が管理する領域に設置するべきであるとする課題について何ら言及されておらず,この点において引用発明に対して上記相違点5に係る構成を採用する動機付けを認めることはできない。そして,他に引用発明に対し上記相違点5に係る構成を採用する動機づけも見出すことはできない。
したがって,引用発明に基づいて,相違点5に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得ることであるとはいえない。
(3)小括
したがって,本願発明1は,他の相違点を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明,引用文献2-3,B,Cに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2-8について
本願発明2-8は,直接・間接に本願発明1を引用するものであり,本願発明1の「出力手段は顧客が管理する領域に置かれる」ことと同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2-3,B,Cに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
3 本願発明9について
本願発明9は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1の「出力手段は顧客が管理する領域に置かれる」ことに対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても引用発明,引用文献2-3,B,Cに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
4 本願発明10について
本願発明10は,本願発明1のうち,「保守手段」を省いたものに対応するプログラムの発明であり,本願発明1の「出力手段は顧客が管理する領域に置かれる」ことに対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても引用発明,引用文献2-3,B,Cに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第7 原査定についての判断
令和2年7月10日付けの補正により,補正後の請求項1-8は,「出力手段は顧客が管理する領域に置かれる」という技術的事項を有するものとなり,補正後の請求項9-10は,当該技術的事項に対応する技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は,引用文献A(当審拒絶理由における引用文献3)には記載されていないので,本願発明1-10は,原査定における引用文献Aに記載された発明ではない。また,当該技術的事項は,引用文献B,Cにも記載されておらず,本願出願日前における周知技術でもないので,本願発明1-10は,当業者であっても,原査定における引用文献A,B,Cに基づいて,容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2019-004433