特許拒絶査定不服審判
2019-003690
光学素子、投影装置および計測装置
- 審判番号
- 2019-003690
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-072105外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年03月19日
- 審決日
- 2020年07月21日
- 公報発行日
- 2020年09月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G02B) / P18 .537-WY (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 72105「光学素子、投影装置および計測装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月10日出願公開、特開2016-191839、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月31日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成30年 5月17日付け :拒絶理由通知書
平成30年 7月19日 :意見書の提出
平成30年 7月19日 :手続補正書の提出
平成31年12月18日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成31年 3月19日 :審判請求書の提出
平成31年 3月19日 :手続補正書の提出
令和 2年 2月13日付け :拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知」という。)
令和 2年 4月14日 :意見書の提出
令和 2年 4月14日 :手続補正書の提出(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、本願の請求項1~10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2014-38314号公報
引用文献4:特開2005-70631号公報
(当合議体注:引用文献1は、主引用例である。引用文献4は、副引用例である。)
第3 当審拒絶理由通知の概要
当審の拒絶の理由は、概略、(理由1)本願は、特許請求の範囲の請求項1~9の記載が不明確であるので、特許法第36条第6項2項に規定する要件を満たしていない、(理由2)本願の請求項1~9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記の引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2014-38314号公報
引用文献2:特開2004-252329号公報
引用文献3:特開平11-242105号公報
(当合議体注:引用文献1は、主引用例であり、拒絶査定時の引用文献1である。引用文献2、3は、副引用例であり、当審において新たに引用した文献である。)
第4 本願発明
本願請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」~「本願発明9」という。)は、本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりの、次のものである。
「【請求項1】
主表面上に、複数の曲面部が隙間なく配置された凹凸構造を備え、
前記複数の曲面部は、頂点の深さが異なる3以上の曲面部を含み、
前記凹凸構造は、隣接する他の曲面部との頂点間距離である隣接頂点間距離として、3以上の値を有し、
前記凹凸構造における前記隣接頂点間距離の分布における、最多頻度の前記隣接頂点間距離または全ての前記隣接頂点間距離の平均に対応する中心域と前記隣接頂点間距離の最大値および最小値に対応する周辺域の頻度の比が1/8以上であり、
前記複数の曲面部の各々は、当該曲面部の頂点から最も近い他の曲面部との境界部までの高さを有する部位の曲面形状が該頂点を通る前記主表面と垂直な軸に対して回転対称であり、
前記凹凸構造における前記隣接頂点間距離は、前記中心域の距離に対して±30%以内に分布する
ことを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記凹凸構造は、所定の深さの水準に、前記複数の曲面部の各々の頂点の深さが略一致する割合が全体の75%未満である
請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記複数の曲面部の各々は、略同一の非球面係数を有する曲面形状である
請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記凹凸構造は、4以上の曲面部からなる単位構造が周期的に配された
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記複数の曲面部の各頂点は、ある1つの曲面部の頂点位置を基準に、平面視において、交差する関係にある2つの単位ベクトルと前記単位ベクトルの各々の方向における距離を表す複数の定数とによって表される位置に配置されている
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記凹凸構造が形成されている側から平行光を入射したときの当該素子からの光の出射角度が7.8°以上である
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記凹凸構造は、前記複数の曲面部の曲率半径の平均をRave、前記複数の曲面部の各々の頂点から隣接する他の曲面部との境界までの距離の平均をraveとした場合の、比rave/Raveが1/4以上である
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項8】
光源からの光を所定の投影面に投影する投影装置であって、
前記請求項1から請求項7のうちのいずれか1項に記載の光学素子を備えた
ことを特徴とする投影装置。
【請求項9】
投影装置から照射される検査光が測定対象物に照射されることによって発生する散乱光を検出する検出部を備えた計測装置であって、
前記投影装置が、請求項8に記載の投影装置である
ことを特徴とする計測装置。」
第5 引用文献、引用発明
1 引用文献1の記載事項
当審拒絶理由通知の拒絶の理由で引用文献1として引用され、本願の特許出願前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2014-38314号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付与したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、出射光束の光量を均一化する光学素子、投影装置および計測装置並びに製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズの屈折作用を利用すると、入射した光をある範囲に広げて照射できる。さらに、レンズアレイを用いることで、入射光束内の光量分布を均一化して出射できる。
【0003】
このような技術の一例が、特許文献1、2に記載されている。例えば、特許文献1には、レーザ照明装置や画像表示装置において、スペックルノイズの除去と、均一照明と、小型化を達成するために、レーザ光源と、複数の微少要素レンズが並べて配置される第1のレンズと、第1のレンズよりも大きな有効径を有し、複数の微少要素レンズによってそれぞれ広げられたレーザ光の広がり角を補償する第2のレンズとを備えることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、マイクロレンズを用いてヘッドアップディスプレイの視野角を広げる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特許第4880746号公報
【特許文献2】 特開2010-145745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載されているように、光量の不均一が問題となっており、マイクロレンズアレイを用いれば入射光束内の光量の均一化が可能である。しかし、マイクロレンズアレイを構成する個々のレンズが球面形状である場合には、照射範囲が広角になった場合に当該素子からの出射光束の光量に不均一が生じる問題があった。
【0007】
すなわち、アレイ構造によって入射光束内の光量を均一化できるが、個々のレンズの出射光束の光量分布に不均一が生じていると、各レンズの出射光束の重ね合わせである素子からの出射光束の光量にも不均一が生じてしまう。この問題は、照射範囲が広角になった場合に顕著に現れる。
【0008】
そこで、本発明は、照射範囲が広角になった場合においても、出射光束の光量を均一化できる光学素子、投影装置および計測装置並びに製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による光学素子は、透明基材の一方の面に複数のレンズが形成されており、各レンズは隣接するレンズと隙間なく配置され、境界部分において互いに接しており、各レンズのレンズ面の形状は放物面形状であり、各レンズの出射光の出射角度が10度以上であることを特徴とする。
【0010】
また、光学素子は、隣接するレンズの境界部分において、互いのレンズのレンズ面が放物面形状でなくなる変曲点を結んだ距離が最大で5μm以下であってもよい。
【0011】
また、光学素子は、隣接するレンズの境界部分において、互いのレンズのレンズ面が放物面形状でなくなる変曲点を結んだ領域である変曲領域の断面形状が曲面であってもよい。
【0012】
また、本発明による光学素子は、透明基材の一方の面に1つのレンズが形成されており、レンズのレンズ面の形状は放物面形状であり、レンズの出射光の出射角度が10度以上であってもよい。
【0013】
また、光学素子は、透明基材の他方の面に、レンズへの入射光を収束または発散させる第2のレンズが形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明による投影装置は、像形成光を出射する投影部を備え、投影部は、当該投影部から出射される像形成光の照射範囲を広げるための光学素子として、上述の光学素子のいずれかを含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明による計測装置は、検査光を出射する投影部と、投影部から出射された検査光が被測定物に照射されることによって生じる散乱光を集光する撮像レンズと、撮像レンズによって集光された光を受光する撮像素子とを備え、投影部は、当該投影部から出射される検査光の照射範囲を広げるための光学素子として、上述の光学素子のいずれかを含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明による製造方法は、光学素子または光学素子の原盤を製造する製造方法であって、
ウェットエッチング後の形状が所定の形状か所定の形状の近似形状となるように、ウェットエッチングの対象とされる基材に多段のザグリ形状または曲面形状となる初期孔を形成する工程と、マスクを形成する工程と、ウェットエッチングを行う工程とを少なくとも含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明による光学素子は、上述の製造方法によって製造されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、照射範囲が広角になった場合においても、出射光束の光量を均一化できる。」
(2)「【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態1.
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態にかかる光学素子10の例を示す模式図である。なお、図1(a)は本実施形態の光学素子10の模式平面図であり、図1(b)は本実施形態の光学素子10の模式断面図である。
【0021】
図1に示す光学素子10は、透明基材12上に、複数のレンズ11がアレイ状に並んで形成されている。以下、透明基材12上に並んで形成された複数のレンズ11を、レンズアレイと呼ぶ場合がある。図1(a)に示すように、レンズアレイを構成する各々のレンズ11の基材面での外周形状は多角形であるのが好ましい。すなわち、各レンズ11が独立して配置されるのではなく、互いに接して境界が多角形となるように配置、形成されているのが好ましい。なお、レンズが接するとは、より具体的には、一方のレンズのレンズ面の一部と他方のレンズのレンズ面の一部とが接合することをいう。
【0022】
図2は、各レンズが独立して配置される例を示す模式断面図である。図2に示すように、レンズが独立して配置されるレンズアレイの場合、透明基材12上に平坦な領域(以下、平坦部という。)が設けられる。この平坦部13は、出射角度を広げる効果がないため、入射光をそのまま直進光として出射させる。このような直進光が生じると、ゴーストなどの迷光の原因となりうる。このため、平坦部13が設けられる場合には平坦部13を遮光することが好ましい。すなわち、平坦部13が設けられた領域には遮光層を設けることが好ましい。ただし、平坦部13に遮光層を設けると投影像に用いる光の利用効率が低下するので、平坦部13を設けないのがより好ましい。
【0023】
また、2以上の大きさの異なるレンズ11を用いる場合や、平坦部を遮光しても利用効率上問題がない場合には、各レンズ11を平面上にランダムに配置してもよい。このようにすることでレンズアレイの周期性を解消し、後述の回折の影響を低減してもよい。
【0024】
図21(a)は、各レンズ11の配置に不規則性を導入した光学素子10の例を示す模式平面図であり、図21(b)は図21(a)に示す光学素子10のL-L’断面図である。図21(a)において、「●」は各レンズ11の頂点位置を示している。図21(a)に示すように、各レンズ11の頂点位置は平面内に不規則に配置されている。また、図21(b)に示すように、各レンズ11の頂点の深さ方向の位置も異なっている。以下、各レンズ11の深さ方向の位置の分布幅をΔhという。なお、図21には、平面上の位置および深さ方向の位置の両方に不規則性を導入した例が示されているが、どちらか一方に不規則性を導入することでも回折の影響を低減できる。
【0025】
また、図22(a)は規則配置を基準に不規則性を導入した光学素子10の例を示す要部平面図であり、図22(b)は図22(a)に示す光学素子10のL-L’断面の一部を示す要部断面図である。各レンズ11の配置の不規則性が大きくなると、各レンズの形状が所望の形状とずれることで所定の投影面以外に照射される光量が大きくなる。このような大きな不規則性を導入することを防ぐ方法として、図22(a)に示すような規則配列を基準とする方法が挙げられる。図22(a)における「×」印は、規則配列の例を示している。なお、規則配列は図22(a)に示すような各軸方向に一定の間隔で点が並ぶものに限られず、配置したいレンズの数に応じた点が2次元平面上に所定の規則に従って並んだものであればよい。このような規則配列を基準として不規則性を導入してもよい。例えば、規則配列のある点からその近隣の点までの距離の1/2の位置に引いた垂線によって囲まれる領域内に頂点を分布させてもよい。なお、規則配列のある点からその近隣の点までの距離の1/4の位置に引いた垂線によって囲まれる領域内に頂点を分布させるとより好ましく、規則配列のある点からその近隣の点までの距離の1/8の位置に引いた垂線によって囲まれる領域内に頂点を分布させるとより好ましい。
【0026】
図22(b)における破線は、同一のレンズ形状を有するレンズアレイが図22(a)に示す位置15aと位置15bに頂点を有する場合のレンズ形状を示している。この場合、2つのレンズの境界は図22(b)に境界16bで示すような位置になる。このとき、境界16bにおける2つのレンズ、具体的には位置15aと位置15bを頂点とする破線で示した2つのレンズの傾斜角度は一致しているため拡散角度も一致する。ここで、レンズの傾斜角度とは曲面の法線方向とレンズの厚み方向のなす角度である。
【0027】
一方、図22(b)に示す例のように、高さ方向で頂点位置が異なるようにレンズを配置する場合、2つのレンズの境界は図22(b)に境界16aで示すような位置になる。このように境界が頂点15aと頂点15bを2等分した位置からずれ、一方のレンズの傾斜角度が所定のレンズの傾斜角度よりも大きく、他方のレンズの傾斜角度が所定のレンズの傾斜角度よりも小さくなる。このことによって所定の投影面以外に照射される光量が大きくなる。したがって、高さ方向の頂点位置の分布幅Δhは小さいことが好ましい。その一方で、回折の影響を低減するためには各頂点位置を透過する各光線によって生じる光路差をある程度大きくすることで干渉を生じさせ光を拡散させる必要がある。
【0028】
一般的な回折格子の場合、凹凸によって生じる光路差によって直進透過する光(0次回折光)以外の光が生じるが、φ=(凹凸によって発生する光路差)/(波長)として、0次回折効率はcos2(πφ)に比例し、φが1/4のときに0次回折効率は50%となる。以上より各レンズ11の屈折率をn1、各レンズ11の周囲の媒質の屈折率をn2、入射する光束の波長をλとすると、1/4≦|(n1-n2)Δh|/λ≦10を満たすと好ましく、上限が5以下であるとより好ましく、2以下であるとより好ましい。
【0029】
また、各レンズ11の頂点の深さ方向の位置の分布として任意の深さに分布させるのではなくいくつかの水準を設け、それらの水準に各レンズ11の頂点の深さ位置が分布するように各レンズ11の頂点の深さ位置を制御してもよい。この場合、2水準以上あれば前述の干渉の効果を得られる。なお、4水準以上あれば、より効率的に干渉の効果を生じさせられるため好ましい。また頂点が特定の深さ位置に多く分布しないことが好ましく、2水準の場合にはある特定の深さ位置に全体の75%より多くの頂点が分布しないことが好ましく、4水準以上の場合にはある特定の深さ位置に全体の50%より多くの頂点が分布しないことが好ましい。
【0030】
本実施形態の光学素子10は、各レンズ11の断面形状を放物面形状としている。このようにすることで、レンズ11からの出射光の光量分布を均一にできる。」
(3)図1
「
」
(4)図21
「
」
(5)図22
「
」
2 引用発明
(1)引用文献1の【0021】、図1(a)、(b)には、第1の実施形態にかかる光学素子10において、透明基材12上に複数のレンズ11がアレイ状に並んで形成され、各レンズ11が互いに接して境界が多角形となるように配置、形成されている例が示されている。
(2)引用文献1の【0024】、図21(a)、(b)、図22(a)、(b)には、第1の実施形態にかかる光学素子10として、各レンズ11の頂点位置の平面上の位置および深さ方向の位置の両方に不規則性を導入した例が示されている。
(3)引用文献1の【0025】、図22(a)、(b)には、大きな不規則性を導入することを防ぐ方法として、各軸方向に一定の間隔で点が並ぶ規則配列を基準として不規則性を導入し、規則配列のある点からその近隣の点までの距離の1/8の位置に引いた垂線によって囲まれる領域内に頂点を分布させることが記載されている(当合議体注:この頂点は、各レンズ11の頂点であることは明らかである。)。
(4)引用文献1の【0030】の記載により、各レンズ11の断面形状は放物面形状である。
(5)そうしてみると、引用文献1には、第1の実施形態において、各レンズの頂点位置の平面上の位置および深さ方向の位置の両方に不規則性を導入した光学素子として、次の発明(「以下「引用発明」という。」)が記載されていると認められる。
「 透明基材上に、複数のレンズがアレイ状に並んで形成され、
各レンズが、互いに接して境界が多角形となるように配置、形成され、
各レンズの断面形状を放物面形状とし、
各レンズの頂点位置は平面内に不規則に配置され、各レンズの頂点の深さ方向の位置も異なっていて、
大きな不規則性を導入することを防ぐ方法として、各軸方向に一定の間隔で点が並ぶ規則配列を基準として不規則性を導入し、規則配列のある点からその近隣の点までの距離の1/8の位置に引いた垂線によって囲まれる領域内に各レンズの頂点を分布させ、
各レンズの頂点の深さ方向の位置の分布として4水準以上である、
光学素子。」
3 引用文献2の記載事項
当審拒絶理由通知の拒絶の理由で引用文献2として引用され、本願の特許出願前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2004-252329号公報(以下、同じく「引用文献2」という。)の【0046】、図5には、「領域内に凹部がランダムに平面配置されたパターンを有する平面視正方形状の凹凸群が、複数配列されて構成されている反射層」(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されている。
4 引用文献3の記載事項
当審拒絶理由通知の拒絶の理由で引用文献3として引用され、本願の特許出願前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開平11-242105号公報(以下、同じく「引用文献3」という。)の【0022】~【0023】、図4~5には、には、「パターンの繰り返しにより構成される反射体」(以下「引用文献3に記載された事項」という。)が記載されている。
5 引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用され、本願の特許出願前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2005-70631号公報(以下「引用文献4」という。)の【0023】、【0029】、図3には、「光軸位置とマイクロレンズ素子の位置との間の距離に応じて、頂点曲率位置を移動させて偏芯させた形状とするマイクロレンズアレイ」(以下「引用文献4に記載された事項」という。)が記載されている。
第6 当審拒絶理由通知の理由1(特許法第36条第6項第2号)について
本件補正により、当審拒絶理由通知の理由1は解消した。
第7 当審拒絶理由通知の理由2(特許法第29条第2号)について
1 本願発明1
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 曲面部、凹凸構造
引用発明の「光学素子」は、「透明基材上に、複数のレンズがアレイ状に並んで形成され」、「各レンズが、互いに接して境界が多角形となるように配置、形成され」、「各レンズの断面形状を放物面形状と」するものである。
上記構成から、引用発明の「レンズ」は、曲面部を備え、また、引用発明は、凹凸構造を備えるといえる。ここで、引用発明の「レンズ」は、透明基材の表面上に備えられたものであるところ、この表面を「主表面」と称することは、当業者の随意である。さらに、引用発明の「各レンズ」は、「互いに接して境界が多角形となるように配置、形成され」るから、隙間なく配置されているといえる。
そうしてみると、引用発明の「レンズ」は本願発明1の「曲面部」に相当する。また、引用発明の「光学素子」は、本願発明1の「光学素子」における、「主表面上に、複数の曲面部が隙間なく配置された凹凸構造を備え」との要件を満たす。
イ 頂点の深さ
引用発明の「各レンズ」は、「断面形状を放物面形状とし」、「頂点の深さ方向の位置の分布として4水準以上である」。
上記構成から、引用発明の「各レンズ」は、本願発明1の「前記複数の曲面部は、頂点の深さが3以上の曲面部を含み」との要件を満たす。
ウ 光学素子
上記ア及びイより、引用発明の「光学素子」は、本願発明1の「光学素子」に相当する。
(2)一致点・相違点
ア 一致点
以上の対比結果を踏まえると、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致する。
「 主表面上に、複数の曲面部が隙間なく配置された凹凸構造を備え、
前記複数の曲面部は、頂点の深さが異なる3以上の曲面部を含む、
光学素子。」
イ 相違点
本願発明1と引用発明は、以下の点で相違する、又は一応相違する。
(相違点1)
「凹凸構造」が、本願発明1は、「隣接する他の曲面部との頂点間距離である隣接頂点間距離として、3以上の値を有」するのに対して、引用発明1は、「各レンズの頂点位置は平面内に不規則に配置され」てはいるものの、「隣接頂点間距離」が3以上の値を有するかが、一応、明らかでない点。
(相違点2)
本願発明1は、「前記凹凸構造における前記隣接頂点間距離の分布における、最多頻度の前記隣接頂点間距離または全ての前記隣接頂点間距離の平均に対応する中心域と前記隣接頂点間距離の最大値および最小値に対応する周辺域の頻度の比が1/8以上であ」るのに対して、引用発明は、このような要件を満たすものとなっているかが、一応、明らかでない点。
(相違点3)
「複数の曲面部の各々」が、本願発明1は、「当該曲面部の頂点から最も近い他の曲面部との境界部までの高さを有する部位の曲面形状が該頂点を通る前記主表面と垂直な軸に対して回転対称であ」るのに対して、引用発明は、「各レンズの断面形状を放物面形状とし」てはいるものの、「該頂点を通る前記主表面と垂直な軸に対して回転対称」となっているかが、一応、明らかでない点。
(相違点4)
「凹凸構造における前記隣接頂点間距離」が、本願発明1の「前記中心域の距離に対して±30%以内に分布」するのに対して、引用発明は、「大きな不規則性を導入することを防ぐ方法として、各軸方向に一定の間隔で点が並ぶ規則配列を基準として不規則性を導入し、規則配列のある点からその近隣の点までの距離の1/8の位置に引いた垂線によって囲まれる領域内に各レンズの頂点を分布させ」ている点。
(3)判断
事案に鑑みて、上記相違点4について検討する。
引用発明の「光学素子」は、「大きな不規則性を導入することを防ぐ方法として、各軸方向に一定の間隔で点が並ぶ規則配列を基準として不規則性を導入し、規則配列のある点からその近隣の点までの距離の1/8の位置に引いた垂線によって囲まれる領域内に各レンズの頂点を分布させ」たものである。
そうしてみると、引用発明における各レンズの頂点間距離は、例えば、以下に例示するとおり、相違点4に係る本願発明1の要件を満たすとは限らない。
すなわち、引用文献1の図22から看取される構成を、引用発明のものとして検討すると、引用発明における「各軸方向に一定の間隔で点が並ぶ規則配列」は、横軸方向の間隔と縦軸報告の間隔が4:3の比率である、×印で示される点が並ぶ規則配列と理解される。そして、各レンズの頂点は、「規則配列のある点からその近隣の点までの距離の1/8の位置に引いた垂線によって囲まれる領域内」に分布する。そうしてみると、規則配列の点の横軸方向の間隔を4L、縦軸方向の間隔を3Lとしたとき、各レンズの頂点間距離は、最大で5.06L、最小で2.25Lとなるから、中心域の距離に対して±30%以内に分布することはない。
(当合議体注:各レンズの頂点間距離の最大は、図22において、横軸方向に隣接する●印が最も離れて配置された場合を想定して計算したものであり、各レンズの頂点間距離の最小は、縦軸方向に隣接する●印が最も近づいて配置された場合を想定して計算したものである。)
そして、引用文献1には、「前記凹凸構造における前記隣接頂点間距離」を「前記中心域の距離に対して±30%以内に分布」させるという技術思想は、記載も示唆もされていない。また、当審拒絶理由通知で引用された引用文献2~3のいずれにも、上記技術思想は記載も示唆もされていない。したがって、これら引用文献は、引用発明において相違点4に係る本願発明の構成を採用することを動機づけるものではない。
そして、本願発明1は、上記相違点4を含む本願発明1の構成により、本願明細書の【0019】に記載された効果を奏するものである。
そうしてみると、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者といえども、引用発明及び引用文献2~3に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2~9
本願発明2~9は、本願発明1の構成のすべてを備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者といえども、引用発明及び引用文献2~3に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたとはいえない。
第8 原査定について
原査定における引用文献1は、当審拒絶理由通知における引用文献1であるから、本願発明1と引用発明とは、上記「第7」「1(2)」で示したのと同じ相違点1~4で相違する。上記相違点4について検討すると、原査定における引用文献4には、上記相違点4に係る本願発明1の構成が記載されていない。そして、本願発明1は、上記相違点4を含む本願発明1の構成により、本願明細書の【0019】に記載された効果を奏するものである。
そうしてみると、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者といえども、引用発明及び引用文献4に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明2~9は、本願発明1の構成のすべてを備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者といえども、引用発明及び引用文献4に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたとはいえない。
以上から、原査定を維持することはできない。
第9 むすび
以上のとおり、原査定及び当審の拒絶の理由によっては、本願を拒絶をすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-003690