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特許拒絶査定不服審判

2019-003581

加飾物品の製造方法及び製造装置、並びに加飾物品

審判番号
2019-003581
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-048512外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年03月15日
審決日
2019年12月10日
公報発行日
2020年02月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (E04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015- 48512「加飾物品の製造方法及び製造装置、並びに加飾物品」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 9日出願公開、特開2015-127504、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成26年9月29日(優先権主張 平成25年11月29日)に出願した特願2014-198206号の一部を、平成27年3月11日に新たな特許出願としたものであって、平成30年6月20日付け(起案日)で拒絶理由通知がされ、平成30年8月22日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成31年1月4日付け(起案日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成31年3月15日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 1 原査定(平成31年1月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-15に係る発明は、下記引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献: 1.特開2011-26871号公報 2.国際公開第02/100652号公報 第3 本願発明 本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、平成30年8月22日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-15は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 調湿機能を有する多孔質基材の表面に、水、水分散性樹脂、及び色材を少なくとも含む水性インクジェットインクを用いてインクジェット印刷する工程を備える、加飾物品の製造方法であって、 前記インクジェット印刷工程の前に、水、水分散性樹脂、及び平均1次粒子径が300nm以下の無機微粒子を少なくとも含む前処理液を、前記多孔質基材の表面に塗布する前処理工程を含む、加飾物品の製造方法。 【請求項2】 調湿機能を有する多孔質基材の表面に、水、水分散性樹脂、及び色材を少なくとも含む水性インクジェットインク(ただし、エネルギー反応硬化型インクを除く。)を用いてインクジェット印刷する工程を備える、加飾物品の製造方法であって、 前記インクジェット印刷工程の前に、水、水分散性樹脂、及び平均1次粒子径が300nm以下の無機微粒子を少なくとも含む前処理液を、前記多孔質基材の表面に塗布する前処理工程を含む、加飾物品の製造方法。 【請求項3】 前記多孔質基材は、JIS A 1470-1(2002)に従って測定される3時間後の吸湿量が15g/m2より多いものである、請求項1又は2に記載の製造方法。 【請求項4】 前記水性インクジェットインク中に含まれる水の量が60重量%以上であり、且つ、色材の量が0.01~20重量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項5】 前記インクジェット印刷による印刷面積が前記多孔質基材の表面積の1/3以下である場合を除く、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。 【請求項6】 調湿機能を有する多孔質基材を載置するための載置部と、前記多孔質基材の表面にインクを吐出してインクジェット印刷するように配置されたインクジェット記録ヘッドと、前記インクジェット印刷の前に、前記多孔質基材の表面に前処理液を塗布するための前処理液塗布部と、を少なくとも備えてなる加飾物品の製造装置であって、水、水分散性樹脂、及び色材を少なくとも含む水性インクジェットインクを用い、且つ、水、水分散性樹脂、及び平均1次粒子径が300nm以下の無機微粒子を少なくとも含む前処理液を用いる、加飾物品の製造装置。 【請求項7】 調湿機能を有する多孔質基材を載置するための載置部と、前記多孔質基材の表面にインクを吐出してインクジェット印刷するように配置されたインクジェット記録ヘッドと、前記インクジェット印刷の前に、前記多孔質基材の表面に前処理液を塗布するための前処理液塗布部と、を少なくとも備えてなる加飾物品の製造装置であって、水、水分散性樹脂、及び色材を少なくとも含む水性インクジェットインク(ただし、エネルギー反応硬化型インクを除く。)を用い、且つ、水、水分散性樹脂、及び平均1次粒子径が300nm以下の無機微粒子を少なくとも含む前処理液を用いる、加飾物品の製造装置。 【請求項8】 前記多孔質基材は、JIS A 1470-1(2002)に従って測定される3時間後の吸湿量が15g/m2より多いものである、請求項6又は7に記載の製造装置。 【請求項9】 前記水性インクジェットインク中に含まれる水の量が60重量%以上であり、且つ、色材の量が0.01~20重量%である、請求項6~8のいずれか1項に記載の製造装置。 【請求項10】 前記インクジェット印刷による印刷面積が前記多孔質基材の表面積の1/3以下である場合を除く、請求項6~9のいずれか1項に記載の製造装置。 【請求項11】 水、水分散性樹脂、及び平均1次粒子径が300nm以下の無機微粒子を少なくとも含む前処理液が塗布された、調湿機能を有する多孔質基材の表面に、インクジェット印刷により形成された画像を備えた加飾物品であって、該画像は水、水分散性樹脂、及び色材を含む水性インクジェットインクを用いて形成されたものである、加飾物品。 【請求項12】 水、水分散性樹脂、及び平均1次粒子径が300nm以下の無機微粒子を少なくとも含む前処理液が塗布された、調湿機能を有する多孔質基材の表面に、インクジェット印刷により形成された画像を備えた加飾物品であって、該画像は水、水分散性樹脂、及び色材を含む水性インクジェットインク(ただし、エネルギー反応硬化型インクを除く。)を用いて形成されたものである、加飾物品。 【請求項13】 JIS A 1470-1(2002)に従って測定される3時間後の吸湿量が15g/m2より多いものである、請求項11又は12に記載の加飾物品。 【請求項14】 前記水性インクジェットインク中に含まれる色材の量が0.01~20重量%である、請求項11~13のいずれか1項に記載の加飾物品。 【請求項15】 前記画像の面積が前記多孔質基材の表面積の1/3以下であるものを除く、請求項11~14のいずれか1項に記載の加飾物品。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。(下線は、当審決で付した。) (1) 「【請求項4】 調湿機能を有する基材の表面にエネルギー反応硬化型インクを用いてインクジェット記録手段により画像を記録する調湿建材の記録方法であって、前記画像の記録面積が前記基材の表面積の1/3以下であることを特徴とする調湿建材の記録方法。」(第2頁18~21行) (2) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、インクにより表面に直接画像記録された調湿建材及びその記録方法に関する。 【背景技術】 【0002】 調湿建材とは、一般に住宅用建材として用いられているので、室内の湿度を調整することができる機能を備えている。例えば、室内の内壁に用いた場合、室内の湿度が高くなると湿気を吸収して湿度を下げるように作用し、室内が乾燥して湿度が低くなると湿気を放出して湿度を上げるように作用して、室内が快適な湿度に保たれるようになる。 【0003】 調湿建材は、こうした調湿機能を発揮するために多孔質材料が使用されている。多孔質材料は、1~数十ナノメートルのサイズの微細な細孔が表面全体に多数形成されており、形成された細孔の内部に空気中の水分子が吸収され又は内部から水分子が放出されることで、空気中の湿度の調整を行うことができるようになっている。そして、調湿建材の調湿機能は、形成された細孔の大きさや量及び細孔の連続性等によりその性能がどの程度か決まってくる。 【0004】 調湿建材の調湿機能は、例えば、社団法人日本建材・住宅設備産業協会において調湿建材判定基準の中で規定されている。調湿建材判定基準では、調湿建材の調湿性として、吸放湿量(JIS A 1470-1;2002に準拠した方法で測定)及び平衡含水率(JIS A 1475;2004に準拠した方法で測定)が規定されている。 【0005】 こうした調湿建材を内装材として用いる場合、調湿建材に対して柄模様や色彩等の意匠を施すことが求められている。しかしながら、調湿建材の表面全体に塗装や印刷を行うと調湿機能が大きく低下するため、調湿機能を確保しつつ意匠性を持たせた調湿建材の開発が要請されている。」(第2頁34~第3頁10行) (3) 「【0010】 そこで、本発明は、調湿機能を維持しつつエネルギー反応硬化型インクを用いた画像記録を行うことで意匠性に富んだ調湿建材を提供することを目的とするものである。」(第3頁36~38行) (4) 「【発明の効果】 【0016】 本発明は、上記の構成を有することで、調湿機能を有する基材の表面にエネルギー反応硬化型インクを用いた画像を記録するようにしたので、基材表面に付着したインクにエネルギーを付与することでインクが短時間で硬化して調湿機能に与える影響を抑えることができる。 【0017】 調湿機能を有する基材の表面には、多数の微小な細孔が形成されており、これらの細孔により調湿作用が行われているが、表面にインクを付着させることで細孔にインクが浸透して調湿作用が損なわれてしまう。エネルギー反応硬化型インクを用いる場合、インクが速乾性であることから、基材表面にインクが留まった状態で硬化して細孔に対するインクの浸透を最小限に抑えることができ、インクが付着した表面部分の細孔は調湿作用が失われるものの表面部分より下方にはインクが浸透せずに調湿作用が失われることがない。 【0018】 そして、エネルギー反応硬化型インクによる記録面積を基材の表面積の1/3以下とすることで、調湿建材としての調湿機能を維持しつつ様々な色彩や柄模様の意匠性に富んだ画像を記録することができる。」(第4頁24~40行) (5) 「【0021】 図1は、本発明に係る実施形態に関する概略断面図である。調湿建材は、調湿機能を有する基材1の表面にエネルギー反応硬化型インクによる画像2が記録されている。 【0022】 基材1としては、室内の湿度が高くなると湿気を吸収して湿度を下げるように作用し、室内が乾燥して湿度が低くなると湿気を放出して湿度を上げるように作用する吸放湿機能を有する無機粉体を含む成形体が画像記録を行う上で好ましく、無機粉体としては、ケイ酸質粉体、シリカゲル、珪藻土、活性白土、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、セピオライト等が挙げられる。こうした無機粉体は、1~数十ナノメートルのサイズの微小な細孔が表面全体に多数形成されており、細孔内に空気中の水分子を取り込んだり、細孔内から水分子を空気中に放出することで吸放湿作用が行われる。 【0023】 エネルギー反応硬化型インクとしては、紫外線硬化型インク、電子線硬化型インクといったものが挙げられる。これらのインクは、基材表面に付着した直後にエネルギーを照射することで速やかに硬化させることができ、付着箇所からの滲みや基材1内への浸透を小さくすることが可能となる。 【0024】 そのため、インクが付着した基材表面では細孔の吸放湿作用が失われるものの、基材内部へのインクの浸透が小さいため内部の細孔による吸放湿作用は保持される。したがって、画像2の記録面積を基材表面の1/3以下に設定しておけば、基材の調湿機能を維持しつつ意匠性に富んだ画像記録を行うことができる。 【0025】 例えば、石目、木目、幾何模様を含む絵柄の意匠を記録しようとした場合、様々な色柄について実際に記録してみたところ、調湿性を有する平均的な調湿建材に対して記録面積率が1/3以下になるように柄模様を設定してエネルギー反応硬化型インクを付着させれば、調湿機能を維持しつつ意匠性に富んだ画像記録ができることを見出した。 【0026】 紫外線硬化型インクは、顔料、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマー、光重合開始剤、さらに必要に応じて添加剤等を含む。電子線硬化型インクは、顔料、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマー、さらに必要に応じて添加剤等を含む。顔料濃度は、インク100重量部中に0.5~20重量部であることが好ましい。インクの顔料濃度が0.5重量部未満の場合には、着色が不十分となり、画像記録が困難になるおそれがあり、また、顔料濃度が20重量部を超える場合には、インクの粘度が高くなって画像記録を行う際の取扱いが難しくなる。」(第5頁10~43行) (6) 「【0038】 エネルギー反応硬化型インクは、液体状態で記録を行うことから、公知のインクジェット記録装置、公知の印刷機等の液状インクを扱う装置により記録することができ、基材表面にインクを付着させた直後に紫外線等のエネルギーを照射する装置を併設しておけばよい。 【0039】 図2は、基材1の表面に画像を記録するインクジェット記録装置の一例に関する概略構成図である。インクジェット記録装置は、基材1の表面に紫外線硬化型インクを吐出して画像を記録する記録ヘッド部10、記録ヘッド部10の下面に形成された吐出ノズルと対向する位置に基材1を搬送する搬送部20、及び、基材1の表面に記録されたインクに紫外線を照射してインクを硬化させる紫外線照射部30を備えている。」(第7頁33~43行) 以上を総合すると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「調湿機能を有する基材の表面にエネルギー反応硬化型インクを用いた画像を記録する、 調湿建材の記録方法であって、 エネルギー反応硬化型インクによる記録面積を基材の表面積の1/3以下とすることで、調湿建材としての調湿機能を維持しつつ様々な色彩や柄模様の意匠性に富んだ画像を記録し、 基材としては、吸放湿機能を有する無機粉体を含む成形体が好ましく、無機粉体は、1~数十ナノメートルのサイズの微小な細孔が表面全体に多数形成されており、 紫外線硬化型インクは、顔料、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマー、光重合開始剤、さらに必要に応じて添加剤等を含み、 エネルギー反応硬化型インクは、液体状態で記録を行うことから、公知のインクジェット記録装置により記録し、基材表面にインクを付着させた直後に紫外線等のエネルギーを照射する、 調湿建材の記録方法。」 2 引用文献2について 原査定に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。(下線は、当審決で付した。原文にある下線は省略した。) (1)「技術分野 本発明はインクジェット印刷に関し、より詳しくは、建築物壁面、屋外看板、道路標識、車体など屋外用途に好適な、好みの図柄を有し且つ耐候性に優れたインクジェット印刷物の製造方法、及びそれによって得られるインクジェット印刷物に関する。」(明細書第1頁3~7行) (2)「本発明者らは、上記の如き問題を解決すべく鋭意検討した結果、今回、基材面上に、特定の白色系塗料を用いて下地塗膜層を形成した後、その上に水性インク組成物を用いてインクジェット方式により印刷層を形成し、さらにその上にクリヤー塗料を用いてクリヤーコート層を形成することにより、発色性、仕上り外観に優れた印刷層を形成することができ、しかも、耐候性、耐スリキズ性、耐酸性等に優れた印刷物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」(明細書第2頁5~11行) (3)「基材 : 本発明に従いその上に印刷物を形成することができる基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、紙、木材、金属、プラスチックスなどの材質からなる基材、モルタル、スレートなどの基材、これらの基材に表面処理及び/又は塗膜形成を施したものなどが挙げられる。また、これら基材は、必要に応じて、その印刷層が形成される面と反対側の面に接着層を設けて粘着シートの形態にすることも可能である。 白色系下地塗膜層 (I)の形成: 本発明に従えば、上記の如き基材の表面上に印刷層を形成するに先立ち、基材面に、吸油量が10~400ml/100gのシリカ微粒子を含有し且つ顔料体積濃度が5~90%である白色系塗料を用いて白色系下地塗膜層(I)が形成される。 上記白色系塗料の塗膜層は、上層となる印刷層のインクの滲みなどが生じないようにインクの受容層としての役割を果たすものであり、吸油量が10~400ml/100g、好ましくは150~350ml/100g、さらに好ましくは200~320ml/100gの範囲内にあるシリカ微粒子を含有するものである。本明細書において、「吸油量」は、JIS K5101 21(1991)に記載の方法に準じて測定される値である。 また、該シリカ微粒子としては、通常、100nm~10,000nm、特に500nm~7,000nmの範囲内の平均粒径を有するものが適している。」 (明細書第2頁25~19行) (4)「印刷層(II)の形成: 本発明に従えば、上記の如くして形成される白色系下地塗膜層(I)の上に水性インク組成物を用いてインクジェット方式により印刷層(II)が形成される。 上記水性インク組成物としては、インクジェット方式により、文字、図形、模様、記号など又はこれらの組み合わせを印刷することがでるものであれば、特に制限なく使用することができるが、顔料の濡れ性や分散安定性、さらには発色性などの観点から、特に、(A)3級アミノ基、4級アンモニウム塩基及びスルホン酸基から選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマー、(B)ポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマー及び(C)その他のエチレン性不飽和モノマーの共重合体である顔料分散用樹脂、顔料及び水性媒体を含有する水性インク組成物が好適である。」(明細書第5頁14~26行) 以上を総合すると、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「建築物壁面に好適な、好みの図柄を有し且つ耐候性に優れたインクジェット印刷物の製造方法であって、 紙、木材などの材質からなる基材面上に、特定の白色系塗料を用いて下地塗膜層を形成した後、 その上に水性インク組成物を用いてインクジェット方式により印刷層を形成し、 さらにその上にクリヤー塗料を用いてクリヤーコート層を形成するものであって、 シリカ微粒子を含有する白色系塗料を用いて白色系下地塗膜層が形成され、 該シリカ微粒子としては、通常、100nm~10,000nm、特に500nm~7,000nmの範囲内の平均粒径を有する、 インクジェット印刷物の製造方法。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。 ア. 引用発明1における「調湿建材」は、「様々な色彩や柄模様の意匠性に富んだ画像」が、「インクジェット記録装置により記録」されることから、本願発明1における「加飾物品」に相当し、当該引用発明1における「調湿建材の記録方法」は、本願発明1における「加飾物品の製造方法」に相当する。 イ. 引用発明1における「基材」は、「調湿建材」の「基材」であって、「吸放湿機能を有する無機粉体を含む成形体」が使用され、「無機粉体は、1~数十ナノメートルのサイズの微小な細孔が表面全体に多数形成されて」いることから、「多孔質」であると認められるから、本願発明1における「多孔質基材」に相当する。 ウ. 引用発明1における「エネルギー反応硬化型インク」は、「顔料」を含み、「インクジェット記録装置により記録」されることから、「エネルギー反応硬化型インク」は、本願発明1における「水性インクジェットインク」と、「インクジェット印刷」に用いられる「インク」という点で共通し、引用発明1における「顔料」は、本願発明1における「水性インクジェットインク」の「色材」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「調湿機能を有する多孔質基材の表面に、色材を少なくとも含むインクを用いてインクジェット印刷する工程を備える、加飾物品の製造方法」 <相違点> (相違点1)インクジェット印刷に用いられるインクについて、本願発明1は、「水、水分散性樹脂、及び色材を少なくとも含む水性インクジェットインク」であるのに対し、引用発明1は、「顔料、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマー、光重合開始剤、さらに必要に応じて添加剤等を含むエネルギー反応硬化型インク」であって、引用発明1が、水、及び、水分散性樹脂を含む水性インクジェットインクであるか否か明らかでない点。 (相違点2)本願発明1は、「インクジェット印刷工程の前に、水、水分散性樹脂、及び平均1次粒子径が300nm以下の無機微粒子を少なくとも含む前処理液を、前記多孔質基材の表面に塗布する前処理工程を含む」のに対し、引用発明1は、そのような前処理工程を有していない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点2について検討する。 引用発明2は、「紙、木材などの材質からなる基材面上に、100nm~10,000nmの平均粒径であるシリカ微粒子を含有する白色系塗料を用いて白色系下地塗膜層が形成され、その上に水性インク組成物を用いてインクジェット方式により印刷層を形成する」ことを含む「インクジェット印刷物の製造方法」である。ここで、引用発明2の白色系塗料の塗膜層は、上層となる印刷層のインクの滲みなどが生じないようにインクの受容層としての役割を果たすものであり、基材が多孔質か否かとは関係なく、印刷対象である基材面上全体に形成される。また、引用発明2の基材は、多孔質基材を想定しておらず、シリカ微粒子の平均粒径を、基材の多孔質部分の条件によって定める技術的思想は開示されておらず、また、「平均1次粒子径が300nm以下」とする点も開示されていない。 そうすると、引用発明1は、「エネルギー反応硬化型インクによる記録面積を、多孔質材料からなる基材の表面積の1/3以下とすることで、調湿建材としての調湿機能を維持しつつ様々な色彩や柄模様の意匠性に富んだ画像を記録」するものであり、多孔質材料からなる基材表面積の1/3以下に記録を行うものであるから、基材が多孔質か否かとは関係なく、印刷対象である基材面上全体に白色系下地塗膜層が形成される、上記引用発明2の構成を採用することの動機付けを見出すことができない。さらに、「平均1次粒子径が300nm以下」とする点は、上記引用文献1及び2の全体をみても記載されていない。 また本願発明は、平均1次粒子径が300nm以下の無機微粒子を少なくとも含む前処理液を、前記多孔質基材の表面に塗布する前処理工程を含むことにより、本願明細書に記載された、調湿性を低下させず、光沢性を良好に発現させる(段落【0027】参照)という効果を奏するものと認められるところ、このような効果は、引用発明1及び2からは当業者が予測することができないものである。 したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は当業者であっても引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 そうすると、原査定を維持することはできない。 2 本願発明2-15について 本願発明2は、本願発明1の全ての発明特定事項を有したうえで、「水性インクジェットインク」から「エネルギー反応硬化型インクを除く」ことが限定されたものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 本願発明3-5は、本願発明1又は2の全ての発明特定事項を含むものであるから、本願発明1又は2と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 本願発明6-10は、本願発明1又は2の全ての発明特定事項を実質的に含む「加飾物品の製造装置」であるから、本願発明1又は2と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 本願発明11-15は、本願発明1又は2の全ての発明特定事項を実質的に含む「加飾物品」であるから、本願発明1又は2と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-003581

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