特許拒絶査定不服審判
2019-003474
気泡ポリマー材料
- 審判番号
- 2019-003474
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-501945外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年03月13日
- 審決日
- 2020年07月28日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ベリー グローバル,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】瀧野 文雄
- 【請求人代理人】津田 俊明
- 【請求人代理人】福田 康弘
- 分類
- P18 .575-Z (B29C) / P18 .121-Z (B29C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-501945「気泡ポリマー材料」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 2日国際公開、WO2014/160044、平成28年 4月14日国内公表、特表2016-511179〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014(平成26)年3月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年3月13日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成30年1月15日付けで拒絶理由が通知され、同年11月9日付けで拒絶査定がされ、平成31年3月13日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、同年4月25日に手続補正書(方式)が提出され、令和1年7月1日に上申書が提出されたものである。
第2 平成31年3月13日に提出された手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年3月13日に提出された手続補正書による手続補正を却下する。
[理由]
1 平成31年3月13日に提出された手続補正書による手続補正の内容
平成31年3月13日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の記載について、以下に示すとおり、本件補正前の請求項13を本件補正後の請求項9へ補正する内容を含むものである。なお、下線は、補正箇所を示すため当審において付したものである。
・本件補正前の請求項13
「【請求項13】
i)少なくとも1種の高溶融強度ポリプロピレンホモポリマーを含む第一ポリマー材料、並びに
ii)結晶性ポリプロピレンホモポリマー、インパクトポリプロピレンコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む第二ポリマー材料
を含み、防しわ性又は防折り目性である、断熱気泡ポリプロピレン系材料。」
・本件補正後の請求項9
「【請求項9】
押出機ダイリップを通して押し出された断熱気泡ポリプロピレン系材料であって、
i)少なくとも1種のポリプロピレンホモポリマーを含む第一ポリマー材料、並びに
ii)結晶性ポリプロピレンホモポリマー、インパクトポリプロピレンコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む第二ポリマー材料
を含み、防しわ性又は防折り目性であり、
ダイはサーキュラーダイであり、
2.75未満の縦方向の気泡アスペクト比を有し、
前記縦方向は断熱気泡ポリプロピレン系材料の流れに平行な方向である、
断熱気泡ポリプロピレン系材料。」
2 本件補正の適否
(1)本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項9については、本件補正前の特許請求の範囲の請求項13に係る発明の発明特定事項である「断熱気泡ポリプロピレン系材料」について、それを製造する装置及びそれに含まれる気泡のアスペクト比を特定することによって限定するものであり、しかも、本件補正前の特許請求の範囲の請求項13に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項9に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
(2)独立特許要件の検討
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項9に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、検討する。
ア 引用文献に記載された事項等
(ア)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用され、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である米国特許出願公開第2013/0052385号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、「POLYMERIC MATERIAL FOR AN INSULATED CONTAINER」(訳:断熱容器用のポリマー材料)に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。なお、図面を除き、原文の摘記は省略し、該当する箇所の訳文のみを記載する。下線は当審において付したものである。
・「【請求項1】 断熱発泡非芳香族ポリマー構造を形成するための配合物であって、
長鎖分枝を有する少なくとも1つの高溶融強度ポリプロピレンを含む第1のポリマー材料と、
ポリプロピレン、ポリエチレン、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む第2のポリマー材料と、
少なくとも1つの成核剤と、
少なくとも1つのスリップ剤と
を含む配合物。」(第13ページ左欄第43ないし51行)
・「【請求項25】 前記構造が、約1.0~約2.0の範囲の少なくとも1つの方向における平均気泡アスペクト比を有する気泡を有する、請求項1に記載の配合物。」(第14ページ左欄第24ないし26行)
・「【0011】 図1は、本開示に係る材料形成プロセスの概略的な斜視図であり、この図は、材料形成プロセスが、左から右へと、断熱発泡非芳香族ポリマー材料の配合物が、ホッパーに入れられ、それが、第1の押出機の第1の押出領域中に送られ、第1の押出領域において、熱および圧力が加えられて、溶融樹脂が形成されることを含むことを示し、発泡剤が、溶融樹脂中に注入されて、押出樹脂混合物が形成され、それが、第2の押出機の第2の押出領域中に送られ、第2の押出領域において、押出樹脂混合物が出て、広がって、押出物が形成され、それが細長く切断されて、断熱発泡非芳香族ポリマー材料のストリップが形成されることを示す。」
・「【0022】 図2~9に示されるように、本開示にしたがって製造される断熱発泡非芳香族ポリマー材料は、断熱カップ10を製造するように形成され得る。一例として、断熱発泡非芳香族ポリマー材料は、高溶融強度を有するポリプロピレン系樹脂と、ポリプロピレンコポリマーまたはホモポリマー(あるいはその両方)と、少なくとも1つの成核剤および発泡剤(二酸化炭素など)を含む気泡形成剤とを含む。さらなる例として、断熱発泡非芳香族ポリマー材料は、スリップ剤をさらに含む。ポリプロピレン系樹脂は、広く分散された単峰性(双峰性ではない)分子量分布を有する。
【0023】図1に示されるように、材料形成プロセス100は、本開示に係るポリプロピレン系配合物121を用いて、断熱発泡非芳香族ポリマー材料のストリップ82を製造する。例えば、図1に示されるように、配合物121は、加熱され、管状の押出物124を製造するように2段階で押し出され、この管状の押出物124は、薄く切断されて、断熱発泡非芳香族ポリマー材料のストリップ82が得られる。液化不活性ガスの形態の発泡剤が、第1の押出領域において溶融樹脂122中に導入される。」
・「【0027】 例示的実施形態において、配合物は、少なくとも1つのポリマー材料を含む。例示的一実施形態において、主要なポリマーまたはベースポリマーは、長鎖分枝を有する高溶融強度ポリプロピレンを含む。長鎖分枝は、該当するポリマーの別の共有結合された鎖によって、または、グラフトコポリマーの場合、別のタイプの鎖によって、モノマーサブユニットにおける置換基、例えば、水素原子の置換によって生じる。例えば、重合中の連鎖移動反応は、ポリマーの分枝を生じさせ得る。長鎖分枝は、ポリマー直鎖の平均臨界絡み合い距離より長いポリマー側鎖長さを有する分枝である。長鎖分枝は、一般に、重合に使用される特定のモノマー構造に応じて、少なくとも20個の炭素原子を有するポリマー鎖を含むことが理解される。分枝の別の例は、重合が完了した後のポリマーの架橋によるものである。長鎖分枝鎖状ポリマーによっては、架橋なしで形成されるものもある。ポリマー鎖分枝は、材料特性に大きな影響を与え得る。ポリプロピレン材料の最終的な選択は、最終的な材料の特性、配合中に必要とされる追加の材料、ならびに押出プロセス中の条件を考慮に入れ得る。例示的実施形態において、高溶融強度ポリプロピレンは、(後述されるように)ガスを保持し、望ましい気泡サイズを生じ、望ましい表面平滑度を有し、(臭気がある場合)許容可能な臭気レベルを有し得る材料であり得る。
【0028】 好適なポリプロピレン系樹脂の1つの説明的な例は、DAPLOY(商標)WB140ホモポリマー(Borealis A/Sから入手可能)、高溶融強度の構造異性体変性ポリプロピレンホモポリマー(参照により本明細書に援用されるISO 16790にしたがって試験した際、溶融強度=36、参照により本明細書に援用されるISO 11357を用いて、溶融温度=325.4°F(163℃))である。」
・「【0031】 特定の例示的実施形態において、二次的なポリマーが、ベースポリマーとともに使用され得る。二次的なポリマーは、例えば、十分な結晶化度を有するポリマーであり得る。例示的実施形態において、二次的なポリマーは、少なくとも1つの結晶性ポリプロピレンホモポリマー、耐衝撃性コポリマー、それらの混合物などであり得る。1つの説明的な例は、BraskemからF020HCとして入手可能な高結晶性ポリプロピレンホモポリマーである。別の説明的な例は、PRO-FAX SC204(商標)として市販されているポリマー(LyndellBasell Industries Holdings,B.V.から入手可能)である。別の説明的な例としては、Braskemから入手可能なHomo PP-INSPIRE 222が挙げられる。一態様において、ポリプロピレンは、高い結晶化度、すなわち、10℃/分の冷却速度で(示差走査熱量測定を用いて試験した際に)51%を超える結晶相の含量を有し得る。例示的実施形態において、いくつかの異なる二次的なポリマーが、使用され、一緒に混合されてもよい。」
・「【0033】 1つまたは複数の成核剤が、押出プロセス中に、溶融樹脂における気泡、泡、または間隙の形成を促進するように、核形成部位を形成し、それを制御するのに使用される。成核剤は、溶融樹脂混合物中に気泡が生じるための場所を形成する化学的または物理的材料を意味する。成核剤は、物理的剤または化学的剤であり得る。好適な物理的成核剤は、望ましい粒度、アスペクト比、およびトップカット特性を有する。例としては、以下に限定はされないが、タルク、CaCO3、マイカ、および上記のものの少なくとも2つの混合物が挙げられる。成核剤は、ポリマー樹脂配合物と混合されてもよく、それが、ホッパー中に導入される。あるいは、成核剤は、押出機において溶融樹脂混合物に加えられてもよい。化学反応温度に達すると、成核剤は、溶融樹脂中に気泡を生成する泡の形成を可能にするように作用する。化学的発泡剤の説明的な例は、クエン酸またはクエン酸ベースの材料である。分解後、化学的発泡剤は、小さい気泡を形成し、それが、物理的発泡剤または他のタイプの発泡剤からのより大きい気泡成長のための核形成部位としてさらに働く。1つの代表例は、クエン酸および結晶成核剤を含有するHydrocerol(商標)CF-40E(商標)(Clariant Corporationから入手可能)である。例示的実施形態において、1つまたは複数の触媒または他の反応剤が、気泡の形成を加速または促進するために加えられてもよい。」
・「【0039】 本開示の一態様において、少なくとも1つのスリップ剤が、製造速度の上昇を助けるために樹脂混合物に組み込まれ得る。スリップ剤(加工助剤としても知られている)は、樹脂混合物に加えられ、転化中および転化後にポリマーに表面潤滑を与える一般的な種類の材料を表すのに使用される用語である。スリップ剤はまた、ダイの垂れ落ちを減少させるかまたはなくし得る。スリップ剤材料の代表例としては、以下に限定はされないが、エルカ酸アミドおよびオレイン酸アミドなどの脂肪または脂肪酸のアミドが挙げられる。例示的な一態様において、オレイルアミド(単価不飽和C-18)からエルシルアミド(C-22単価不飽和)が使用され得る。スリップ剤材料の他の代表例としては、低分子量アミドおよびフルオロエラストマーが挙げられる。2つ以上のスリップ剤の組合せが使用され得る。スリップ剤は、マスターバッチペレット形態で提供され、樹脂配合物と混合され得る。」
・「【0042】 表面トポグラフィーおよびモルホロジーに加えて、折り目のない高品質の断熱カップを得るのに有益であることが分かっている別の要因は、断熱発泡非芳香族ポリマーストリップの異方性であった。アスペクト比は、気泡の主軸対短軸の比率である。顕微鏡検査によって確認した際、例示的一実施形態において、断熱発泡非芳香族ポリマー材料の押し出されたストリップ82の縦方向67(縦方向またはウェブ方向に沿った方向)における平均気泡寸法は、約0.0362インチ(0.92mm)の幅×約0.0106インチ(0.27mm)の高さであった。結果として、縦方向の気泡サイズアスペクト比は約3.5である。横方向(クロスウェブ方向または横断方向)における平均気泡寸法は、約0.0205インチ(0.52mm)の幅および約0.0106インチ(0.27mm)の高さであった。結果として、横方向のアスペクト比は1.94である。例示的一実施形態において、ストリップがカップ形成の際の圧縮力に耐えることが分かり、気泡の1つの望ましい平均アスペクト比は、約1.0~約3.0であった。例示的一実施形態において、気泡の1つの望ましい平均アスペクト比は、約1.0~約2.0であった。」
・「実施例1
配合及び押出
【0083】 DAPLOY(商標)WB140ポリプロピレンホモポリマー(Borealis A/Sから入手可能)を、ポリプロピレン系樹脂として使用した。Braskemから入手可能なF020HC、ポリプロピレンホモポリマー樹脂を、二次的な樹脂として使用した。2つの樹脂を、主要な核形成剤としてのHydrocerol(商標)CF-40E(商標)、二次的な核形成剤としてのタルク、発泡剤としてのCO2、スリップ剤、および着色剤としての二酸化チタンと混合した。パーセンテージは以下のとおりであった。
【0084】 79.9%の主要な樹脂:高溶融強度ポリプロピレンBorealis WB140
【0085】 HMS15%の二次的な樹脂:F020HC(Braskem)
【0086】 0.1%の主要な成核剤:Clariant Hyrocerol CF-40E(商標)
【0087】 2%の二次的な成核剤:タルク
【0088】 1%の着色剤:TiO2 PE(あるいは、PPが使用され得る)
【0089】 2%のスリップ剤:Ampacet Corporationから入手可能なAmpacet(商標)102823 LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)。
【0090】 配合物を押出機ホッパーに加えた。押出機により、配合物を加熱して、溶融樹脂混合物を形成した。この混合物に以下のものを加えた。
【0091】 1.1ポンド/時のCO2
【0092】 0.7ポンド/時のR134a。
【0093】 R134aとともに二酸化炭素を、樹脂ブレンドに注入して、樹脂を発泡させ、密度を減少させた。このように形成された混合物を、ダイヘッドに通して押し出してシートにした。次に、シートを切断し、カップへと形成した。」
・「
」
(イ)引用発明
引用文献2に記載された事項を、特に請求項1及び25に関して整理すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「長鎖分枝を有する少なくとも1つの高溶融強度ポリプロピレンを含む第1のポリマー材料と、
ポリプロピレン、ポリエチレン、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む第2のポリマー材料と、
少なくとも1つの成核剤と、
少なくとも1つのスリップ剤と
を含む配合物により形成され、約1.0~約2.0の範囲の少なくとも1つの方向における平均気泡アスペクト比を有する気泡を有する断熱発泡非芳香族ポリマー構造。」
イ 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明における「長鎖分枝を有する少なくとも1つの高溶融強度ポリプロピレンを含む第1のポリマー材料」は、本願補正発明における「i)少なくとも1種のポリプロピレンホモポリマーを含む第一ポリマー材料」に相当する。
引用発明における「ポリプロピレン、ポリエチレン、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む第2のポリマー材料」は、本願補正発明における「ii)結晶性ポリプロピレンホモポリマー、インパクトポリプロピレンコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む第二ポリマー材料」に対応するものである。
引用発明における「約1.0~約2.0の範囲の少なくとも1つの方向における平均気泡アスペクト比を有する気泡」は、本願補正発明が特定する「2.75未満の縦方向の気泡アスペクト比を有し、前記縦方向は断熱気泡ポリプロピレン系材料の流れに平行な方向である」との条件を満足する。
引用発明における「配合物により形成され」た「断熱発泡非芳香族ポリマー構造」は、本願補正発明における「断熱気泡ポリプロピレン系材料」に相当する。
引用発明は、「少なくとも1つの成核剤」及び「少なくとも1つのスリップ剤」を含むものであるが、本願補正発明はこれらを含むことを排除していないので、両者の対比に際し、この点は相違点とはならない。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「i)少なくとも1種のポリプロピレンホモポリマーを含む第一ポリマー材料、並びに
ii)第二ポリマー材料
を含み、
2.75未満の縦方向の気泡アスペクト比を有し、
前記縦方向は断熱気泡ポリプロピレン系材料の流れに平行な方向である、
断熱気泡ポリプロピレン系材料。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
断熱気泡ポリプロピレン系材料(断熱発泡非芳香族ポリマー構造)について、本願補正発明は、「サーキュラーダイ」である「押出機ダイリップを通して押し出された」ものであると特定されているのに対し、引用発明は、そのような特定はされていない点。
<相違点2>
「第二ポリマー材料」に関して、本願補正発明においては、「結晶性ポリプロピレンホモポリマー、インパクトポリプロピレンコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む」と特定されているのに対し、引用発明においては、「ポリプロピレン、ポリエチレン、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む」と特定されている点。
<相違点3>
本願補正発明においては、「防しわ性又は防折り目性であり」と特定されているのに対し、引用発明においては、そのようには特定されていない点。
ウ 判断
そこで、相違点1ないし3について、検討する。
(ア)相違点1について
引用文献2の【0011】、【0022】、【0023】及び図1によると、引用文献2に記載された断熱発泡非芳香族ポリマー材料は図1に記載された装置によって管状に押し出されるものであるから、引用発明も「ダイはサーキュラーダイ」である「押出機」の「ダイリップを通して押し出された」ものであるといえる。
したがって、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
仮に、相違点1が実質的な相違点であるとしても、引用発明において、引用文献2に記載された上記の技術事項を適用することは、本願補正発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に想到し得たことである。
(イ)相違点2について
引用文献2の【0031】によると、引用文献2に記載された断熱発泡非芳香族ポリマー材料は、少なくとも1つの結晶性ポリプロピレンホモポリマー、耐衝撃性コポリマー、それらの混合物などであり得る二次的なポリマーが使用されるものであるから、引用発明も、少なくとも1つの結晶性ポリプロピレンホモポリマー、耐衝撃性コポリマー、それらの混合物などであり得る二次的なポリマ-を含むものといえる。
したがって、相違点2は実質的な相違点とはいえない。
仮に、相違点2が実質的な相違点であるとしても、引用発明の「第2のポリマー材料」について、これを少なくとも1つの結晶性ポリプロピレンホモポリマー、耐衝撃性コポリマー、それらの混合物などであり得る二次的なポリマーとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ)相違点3について
引用文献2の【0042】によると、引用文献2に記載された断熱発泡非芳香族ポリマー材料は、折り目のない高品質の断熱カップを得るのに有益であるものであるから、引用発明も折り目のない高品質の断熱カップを得るのに有益であるといえる。
したがって、相違点3は実質的な相違点とはいえない。
仮に、相違点3が実質的な相違点であるとしても、引用発明において、引用文献2に記載された上記の技術事項を適用して、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(エ)効果について
そして、本願補正発明を全体としてみても、本願補正発明は、引用発明からみて格別顕著な効果を奏するものであるとはいえない。
エ まとめ
したがって、本願補正発明と引用発明、すなわち引用文献2に記載された発明との間に実質的な相違点は認められないから、本願補正発明は引用文献2に記載された発明であり特許法第29条第1項第3号に該当し特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるか、又は、本願補正発明は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるといえる。
(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成31年3月13日に提出された手続補正書による手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし45に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし45に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項13に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1の【請求項13】に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項13に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3項に該当し特許を受けることができないものであるか又は上記引用文献2に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
3 引用文献2に記載された事項等
引用文献2に記載された事項及び引用発明、すなわち引用文献2に記載された発明は、上記第2[理由]2(2)ア(ア)及び(イ)のとおりである。
4 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明における「長鎖分枝を有する少なくとも1つの高溶融強度ポリプロピレンを含む第1のポリマー材料」は、本願発明における「i)少なくとも1種の高溶融強度ポリプロピレンホモポリマーを含む第一ポリマー材料」に相当する。
引用発明における「ポリプロピレン、ポリエチレン、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む第2のポリマー材料」は、本願発明における「ii)結晶性ポリプロピレンホモポリマー、インパクトポリプロピレンコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む第二ポリマー材料」に対応するものである。
引用発明における「配合物により形成され」た「断熱発泡非芳香族ポリマー構造」は、本願発明における「断熱気泡ポリプロピレン系材料」に相当する。
引用発明は、「約1.0~約2.0の範囲の少なくとも1つの方向における平均気泡アスペクト比を有する気泡」を有するものであるが、本願発明はこれらを含むことを排除していないので、両者の対比に際し、この点は相違点とはならない。
引用発明は、「少なくとも1つの成核剤」及び「少なくとも1つのスリップ剤」を含むものであるが、本願発明はこれらを含むことを排除していないので、両者の対比に際し、この点は相違点とはならない。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「i)少なくとも1種の高溶融強度ポリプロピレンホモポリマーを含む第一ポリマー材料、並びに
ii)第二ポリマー材料
を含む断熱気泡ポリプロピレン系材料。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2’>
「第二ポリマー材料」に関して、本願発明においては、「結晶性ポリプロピレンホモポリマー、インパクトポリプロピレンコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む」と特定されているのに対し、引用発明においては、「ポリプロピレン、ポリエチレン、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む」と特定されている点。
<相違点3’>
本願発明においては、「防しわ性又は防折り目性である」と特定されているのに対し、引用発明においては、そのようには特定されていない点。
(2)判断
そこで、相違点2’及び3’について、検討する。
ア 相違点2’について
相違点2’は相違点2と同じである。
したがって、相違点2と同様に、相違点2’は実質的な相違点とはいえないし、仮に、相違点2’が実質的な相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点3’について
相違点3’は相違点3と同じである。
したがって、相違点3と同様に、相違点3’は実質的な相違点とはいえないし、仮に、相違点3’が実質的な相違点であるとしても、当業者が容易に想到し得たことである。
(3)まとめ
したがって、本願発明は引用発明、すなわち引用文献2に記載された発明であるか又は引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
したがって、本願発明は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか又は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
第4 結語
上記第3のとおり、本願発明、すなわち請求項13に係る発明は、特許法第29条の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-003474