特許拒絶査定不服審判
2019-003154
モータ制御装置
- 審判番号
- 2019-003154
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-232183外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年03月06日
- 審決日
- 2020年04月24日
- 公報発行日
- 2020年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三菱電機株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人きさ特許商標事務所
- 分類
- P18 .536-WZ (H02P) / P18 .537-WZ (H02P)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-232183「モータ制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月20日出願公開、特開2017- 77170〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成24年9月19日に出願した特願2012-205142号の一部を平成28年11月30日に新たな出願としたものであって、平成30年12月27日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成31年1月8日)、これに対し、平成31年3月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、当審により令和元年12月24日付で拒絶の理由が通知され(発送日:令和2年1月7日)、これに対し、令和2年3月2日付で意見書が提出されたものである。
2.特許請求の範囲
平成31年3月6日の手続補正で特許請求の範囲は以下のように補正された。
「【請求項1】
センサと、前記センサの検知に応じて外部のモータの運転を制御する制御回路と、を備えたモータ制御装置であって、
前記制御回路は、外部から入力された交流電源を高圧直流電源に変換する整流平滑回路と、
前記整流平滑回路で変換された高圧直流電源を第一の低圧直流電源に変換するスイッチングレギュレータと、
モータを作動させるモータ駆動回路と、
前記センサの検知状態に応じて前記モータ駆動回路に前記モータの作動または停止の指令を出力するマイコンと、
を備え、
前記第一の低圧直流電源を前記モータ駆動回路の電源として利用し、前記第一の低圧直流電源から生成される第二の低圧直流電源を前記センサおよび前記マイコンの電源として利用することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記モータ駆動回路は送風機のモータを駆動することを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。」
3.拒絶の理由
令和元年12月24日付の当審の拒絶の理由は以下のとおりである。
「この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。
記
(1)請求項1に「交流電源を高圧直流電源に変換する整流平滑回路」とあり、具体的には【0022】に「整流平滑回路102はダイオードブリッジ(図示せず)と電解コンデンサ(図示せず)で構成され、AC230Vの交流電源をダイオードブリッジ(図示せず)で全波整流して直流に変換し、その後に電解コンデンサ(図示せず)で平滑してDC322Vの高圧直流電源を生成する。」とあり、図面にも整流平滑回路が示されているが、230Vの交流電源を単にダイオードブリッジで整流し、平滑しただけにもかかわらず、何故直流322Vの高圧直流電源となるのか不明(日本は交流100Vであるが、これをダイオードブリッジで整流し、平滑しただけでは、単に直流100Vになる。)である。
更に、【0004】に従来技術の問題点として「通電を切り替えるトランジスタ整流子とトランジスタ整流子を制御するコントロールICが必要で、使用者が手を入れたら直ぐに直流モータを駆動して空気吹出口から空気を吹出すことができるようコントロールICは常に通電されたスタンバイ状態であるため、直流モータの停止時においても常に電力を消費しているという問題があった。」とあり、待機時の省エネを目的とするが、第一の低圧直流電源をモータ駆動回路の電源、第一の低圧直流電源から生成される第二の低圧直流電源をセンサおよびマイコンの電源としているから、使用者が手を入れたら直ぐに直流モータを駆動して空気吹出口から空気を吹出すためには、センサ・マイコンの電源である第二の低圧直流電源をスタンバイとする必要があり、第二の低圧直流電源に給電する第一の低圧直流電源(実施例では絶縁型のスイッチングレギュレータ)を常に第二の低圧直流電源がスタンバイ状態である様に給電する必要があり、何等課題を解決しておらず、どの様な点を改良したのか不明である。
更に、請求項1に「前記第一の低圧直流電源を前記モータ駆動回路の電源として利用し、前記第一の低圧直流電源から生成される第二の低圧直流電源を前記センサおよび前記マイコンの電源として利用する」とあり、当該構成の作用効果として平成30年7月9日付意見書で「本願発明は、モータ駆動用電源とセンサ駆動用電源とを分離した構成、すなわち第一の低圧直流電源をモータ駆動回路の電源として利用し、第一の低圧直流電源から生成される第二の低圧直流電源をセンサの電源として利用しているので、モータ駆動時の電源変動の影響を低減し、さらに安定化した低圧直流電源をセンサに供給することができ、それによって、センサの検出誤差を極力減らし、より高精度の検出を実現することができるという効果が得られます。また、交流電源から第一の低圧直流電源と第二の低圧直流電源とを経てセンサが接続されるため、モータの運転により交流電源に発生したノイズがセンサまで伝わりにくい構成であり、ノイズの影響も低減可能となっています。」と主張するが、モータ駆動回路とはどの様な回路を意味するのか不明(【0023】の「DC12Vはモータ駆動回路110のフォトトライアック(図示せず)およびヒータ駆動回路109のフォトトライアック(図示せず)の電源に使用される。」、【0024】の「交流モータ9aは商用交流電源100のAC230Vを通電することで駆動し、モータ駆動回路110は、トライアック(図示せず)とフォトトライアック(図示せず)を主要部品として構成され」に基づけば、第一の低圧直流電源である12V電源はフォトトライアックの発光素子に供給され、モータ自体に供給されていない。)であり、第一の低圧直流電源がモータ自体に供給されなければ、意見書で主張する様なモータ駆動によるノイズが電源に影響を及ぼすことはなく(通常モータによるノイズを避けるためにフォトトライアックを用いている)、何故意見書主張の様な作用効果を奏するのか不明である。」
4.拒絶の理由に対する当審の判断
(1)請求項1に「交流電源を高圧直流電源に変換する整流平滑回路」とあり、具体的には【0022】に「整流平滑回路102はダイオードブリッジ(図示せず)と電解コンデンサ(図示せず)で構成され、AC230Vの交流電源をダイオードブリッジ(図示せず)で全波整流して直流に変換し、その後に電解コンデンサ(図示せず)で平滑してDC322Vの高圧直流電源を生成する。」とあり、図面にも整流平滑回路が示されているが、「AC230Vの交流電源」とは通常交流電源であって実効値が230Vのものを意味し、交流電源を整流平滑すれば実効値に相当する直流出力が得られることとなるが、この230Vの交流電源を、単にダイオードブリッジで整流し平滑しただけであって、平滑コンデンサが昇圧機能を有していないにもかかわらず、何故波高値に相当する直流322Vの高圧直流電源を得ることができるのか不明である。
請求人は、令和2年3月2日付意見書において「また、交流電圧をダイオードブリッジで全波整流し、コンデンサで平滑することによって、ほぼ交流電圧のピーク値に近い電圧の直流電圧を得られることは、当業者であれば明らかであると思料いたします。」と主張するが、交流電源がサインカーブであるとすると、例えば0≦θ<90°の期間は交流電圧は322Vより小さいので、その低い電圧を整流平滑回路でどの様にして322Vにするのか何等開示が無いから、請求人の上記主張は採用できない。
したがって、発明の詳細な説明は、整流平滑回路によって交流電源をどの様にして高圧直流電源にするのか当業者が実施できる程度に明確且つ十分に記載したものではなく、特許請求の範囲は、発明が明確となるよう記載したものではない。
(2)【0004】に従来技術の問題点として「通電を切り替えるトランジスタ整流子とトランジスタ整流子を制御するコントロールICが必要で、使用者が手を入れたら直ぐに直流モータを駆動して空気吹出口から空気を吹出すことができるようコントロールICは常に通電されたスタンバイ状態であるため、直流モータの停止時においても常に電力を消費しているという問題があった。」とあり、【0007】に「本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、待機時の消費電力が小さいモータ制御装置を提供することを目的としている。」とあり、待機時の省エネを目的とするが、第一の低圧直流電源をモータ駆動回路の電源とし、第一の低圧直流電源から生成される第二の低圧直流電源をセンサおよびマイコンの電源としているから、使用者が手を入れたら直ぐにモータを駆動して空気吹出口から空気を吹出すためには、センサ・マイコンの電源である第二の低圧直流電源をスタンバイとする必要があり、そのためには第二の低圧直流電源に給電する第一の低圧直流電源を常に第二の低圧直流電源がスタンバイ状態である様に給電する必要があり、何等課題を解決しておらず、どの様な点を改良したのか不明であり、しかも、常に動作させる必要があるスイッチングレギュレータは絶縁型スイッチングレギュレータ、即ちトランスを用いるものを想定しており、【0004】の「電源回路でトランスを用いて降圧しているためトランスで常に大きく電力を消費しているという問題があった。」との問題点を何等解決しておらず、どの様な点を改良したのか不明である。
請求人は、令和2年3月2日付意見書において「当該構成において、「モータのON/OFF、回転数などの運転状態によって、モータ駆動回路の駆動電流が変動し、それによってモータ駆動回路用電源の電圧に変動をもたらし得るため、モータ駆動回路、センサ、およびマイコンで電源を共有している場合には、センサおよびマイコンの動作にこの電源変動が影響を及ぼし得る」という課題が存在することは、出願時において当業者にとっては明らかな技術常識であると思料いたします。」と主張するが、そもそもこの様な課題は明細書には一切記載されておらず、又、請求項1記載のものは交流電源を整流平滑した後スイッチングレギュレータで安定した直流電源を生成しているからノイズは除去され、しかも請求項1、2にはモータがモータ駆動回路が用いる交流電源と同じ交流電源を用いることが記載されていないから、請求人が主張する課題は請求項の記載に基づかない課題であり、請求人の上記主張は採用できない。
したがって、本願請求項1、2に記載された発明は課題解決のための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(3)請求項1に「前記第一の低圧直流電源を前記モータ駆動回路の電源として利用し、前記第一の低圧直流電源から生成される第二の低圧直流電源を前記センサおよび前記マイコンの電源として利用する」とあり、当該構成の作用効果として平成30年7月9日付意見書で「本願発明は、モータ駆動用電源とセンサ駆動用電源とを分離した構成、すなわち第一の低圧直流電源をモータ駆動回路の電源として利用し、第一の低圧直流電源から生成される第二の低圧直流電源をセンサの電源として利用しているので、モータ駆動時の電源変動の影響を低減し、さらに安定化した低圧直流電源をセンサに供給することができ、それによって、センサの検出誤差を極力減らし、より高精度の検出を実現することができるという効果が得られます。また、交流電源から第一の低圧直流電源と第二の低圧直流電源とを経てセンサが接続されるため、モータの運転により交流電源に発生したノイズがセンサまで伝わりにくい構成であり、ノイズの影響も低減可能となっています。」と主張するが、モータ駆動回路に供給される電源は交流電源を整流平滑した後スイッチングレギュレータで安定した直流電源を生成しているからノイズは除去され、しかも、【0023】の「DC12Vはモータ駆動回路110のフォトトライアック(図示せず)およびヒータ駆動回路109のフォトトライアック(図示せず)の電源に使用される。」、【0024】の「交流モータ9aは商用交流電源100のAC230Vを通電することで駆動し、モータ駆動回路110は、トライアック(図示せず)とフォトトライアック(図示せず)を主要部品として構成され」に基づけば、第一の低圧直流電源である12V電源はフォトトライアックの発光素子に供給され、モータ自体に供給されていないから、第一の低圧直流電源がモータ自体に供給されなければ、意見書で主張する様なモータ駆動によるノイズが電源に影響を及ぼすことはなく、何故意見書主張の様な作用効果を奏するのか不明である。
請求人は、令和2年3月2日付意見書において「モータ駆動によるノイズ(モータ駆動回路あるいはモータで発生)が電源を介して制御部であるマイコンあるいはセンサに伝搬されるルートとしては、(a)モータ駆動回路→低圧直流電源回路→マイコン及びセンサへのルート(b)モータ→交流電源ライン→整流平滑回路→低圧直流電源回路→マイコン及びセンサへのルート等が考えられます。モータ駆動回路として実施の形態に示したフォトトライアックを用いる構成を採用した場合には、審判長殿のご指摘通り、上記(a)のモータ駆動回路→低圧直流電源へのノイズの伝搬は回避できるものと思料いたします。一方で、当該構成を採用した場合であっても、上記(b)に示す、交流電源ラインから電源回路を経由してマイコン及びセンサに伝搬するノイズは回避することができません。」と主張するが、請求項1記載のものは交流電源を整流平滑した後スイッチングレギュレータで安定した直流電源を生成しているからノイズは除去され、しかも請求項1、2にはモータがモータ駆動回路が用いる交流電源と同じ交流電源を用いることが記載されていないから、請求人が主張する作用効果は請求項の記載に基づかない課題であり、請求人の上記主張は採用できない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は請求項1、2に係る発明の技術上の意義を理解できるように記載されたものではない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、経済産業省令が定めるところにより当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1-2の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1-2の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
5.むすび
したがって、発明の詳細な説明の記載は、経済産業省令が定めるところにより当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1-2の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1-2の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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