特許拒絶査定不服審判
2019-002462
インターロックチューブの製造方法、及び、その製造装置
- 審判番号
- 2019-002462
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-131871外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年02月22日
- 審決日
- 2020年02月25日
- 公報発行日
- 2020年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社昭和螺旋管製作所
- 分類
- P18 .121-WZ (B21C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018-131871「インターロックチューブの製造方法、及び、その製造装置」拒絶査定不服審判事件〔令和2年1月9日出願公開、特開2020-1087〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成30年6月26日に出願された特願2018-131871号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成30年11月 2日付け:拒絶理由通知
平成30年11月27日 :意見書及び手続補正書の提出
平成31年 1月30日付け:拒絶査定
平成31年 2月22日 :審判請求と同時に手続補正書の提出
令和 1年11月14日付け:拒絶理由通知
令和 1年11月26日 :意見書及び手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出
第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6(以下「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、以下のとおりである。なお、下線は請求人により付加されたもので、本件補正で補正された箇所である。
「【請求項1】
一定幅で長尺な金属製帯板が断面S状のような屈曲状を呈し、隣り合う両端部分が互いに噛み合うように巻付け用芯金にて螺旋状に巻き付けられ、上記金属製帯板を順次処理する各部が主演算・制御部の指令に基づいて成形されるインターロックチューブにおいて、上記チューブの断面が円形あるいは断面の角数が円形に近い形状であって、巻き付けられる上記金属製帯板の製品径とピッチと製品長さと設定時間から生産必要時間が割り出され、上記生産必要時間である該値に基づき指令される主演算・制御部と、
上記主演算・制御部の指令に基づいて上記金属製帯板が処理され、巻き付けられた上記金属製帯板のゆるみを阻止するように同期しつつ回転し、かつ上記金属製帯板を解放あるいは緊締自在にチャックする緊締チャック装置と、
上記巻付け用芯金の先端側に配置され、発生されるスラグの吸引と共に、堆積されるスラグの掻き出しが指令される上記主演算・制御部に連動する切断装置と、
上記緊締チャック装置の緊締チャック体近傍の切断芯金に配置され、上記切断装置に協働すると共に、発生されたスラグの吸引および掻き出しの指令の後に、残留するスラグを確認しさらにその吸引および掻き出し除去を指令するチェック機能を有するチェック装置と、
を有して形成されることを特徴とするインターロックチューブの製造方法。
【請求項2】
上記主演算・制御部に連動する前処理装置は、アンコイラーより引き出された平板状の金属製帯板を両側部が屈曲状を呈する金属製帯板に成形する多段ロール成形装置と、その上部側から水と混合された水溶性エマルジョン潤滑剤であるオイル塗布を行うオイル塗布装置とを一体的に備えて形成されることを特徴とする請求項1記載のインターロックチューブの製造方法。
【請求項3】
上記切断装置は、巻き付けられた上記金属製帯板との接触により切断が開始され、その後直ちに上記金属製帯板との所定距離を保つように離され、しかる後切断の停止が図られるように指令され、かつ切断用エアーの噴出が指令されることを特徴とする請求1項または2記載のインターロックチューブの製造方法。
【請求項4】
一定幅で長尺な金属製帯板が断面S状のような屈曲状を呈し、隣り合う両端部分が互いに噛み合うように巻付け用芯金にて螺旋状に巻き付けられ、上記金属帯板を順次処理する各装置が制御装置の指示に基づいて操作され成形されるインターロックチューブにおいて、
上記チューブの断面が円形あるいは断面の角数が円形に近い形状であって、巻き付けられる上記金属製帯板の製品径とピッチと製品長さと設定時間から生産必要時間が割り出され、上記生産必要時間である該値に基づき指示される制御装置と、
上記制御装置の指示に基づいて巻き付けられた上記金属製帯板のゆるみを阻止するように同期しつつ回転し、かつ上記金属製帯板を解放あるいは緊締自在にチャックする緊締チャック装置と、
上記巻付け用芯金の先端側に配置され、発生されるスラグの吸引と共に、堆積されるスラグの掻き出しを行う切断装置と、
上記緊締チャック装置の緊締チャック体近傍の切断芯金に配置され、上記切断装置に協働すると共に、発生されたスラグの吸引および掻き出しの指令の後に、残留するスラグを確認しさらにその吸引および掻き出し除去を指令するチェック機能を有するチェック装置を備えていることを特徴とするインターロックチューブの製造装置。
【請求項5】
上記制御装置に連動する前処理装置は、アンコイラーより引き出された平板状の金属製帯板を両側部が屈曲状を呈する金属製帯板に成形する多段ロール成形装置と、その上部側から水と混合された水溶性エマルジョン潤滑剤であるオイル塗布を行うオイル塗布装置とを一体的に備えることを特徴とする請求項4記載のインターロックチューブの製造装置。
【請求項6】
上記切断装置は、巻き付けられた上記金属製帯板との接触により切断が開始され、その後直ちに上記金属製帯板との所定距離を保つように離され、しかる後切断の停止が図られ、かつ切断用エアーの噴出が行われることを特徴とする請求項4または5記載のインターロックチューブの製造装置。」
第3 拒絶の理由
令和1年11月14日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は、次のとおりのものである。
本願発明1ないし本願発明6は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び周知例1ないし周知例3に示された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2015-174143号公報
周知例1 :特開2016-120589号公報
周知例2 :特開2017-13182号公報
周知例3 :特開昭59-182050号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献について
(1)引用文献1
引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は理解の便のため、当審で付与した。
ア.「【請求項1】
一定幅で長尺な金属製帯板が断面S状のような屈曲状を呈し、隣り合う両端部分が互いに噛み合うように巻付け用芯金にて螺旋状に巻き付けられ、上記金属製帯板を順次処理する各部が主演算・制御部の指令に基づいて成形される断面が円形状あるいは多角形状や楕円形状のインターロックチューブであって、
巻き付けられる上記金属製帯板の製品径(D)とピッチ(P)と製品長さ(L)とに基づいて設定時間(T)が割り出され、割り出された該各値に基づいて各部の動作が制御されると共に、上記該各値が統括される主演算・制御部と、
上記主演算・制御部の指令に基づいて処理され、上記巻付け用芯金の先端側に配置されると共に、巻き付けられた上記金属製帯板のゆるみを阻止するように回転しつつ同期し、かつ上記金属製帯板を解放あるいは緊締自在にチャックする緊締チャック装置と、
を備えて成形されることを特徴とするインターロックチューブの製造方法。」
イ.「【請求項4】
上記主演算・制御部に連動する切断装置は、発生されるスラグの吸引と共に、堆積されたスラグの掻き出しが指令されて成形されることを特徴とする請求項1、2または3記載のインターロックチューブの製造方法。」
ウ.「【0018】
以下、この発明の実施例を図面に基づき説明する。図1は、この発明の概略構成を示す説明用平面図であり、各装置の動作は、同図に示すように各装置の動作を統括し演算を行う制御装置25のもとに行われる。また同様に、システムの動作としては、図8に示すようにシステム本体100の主演算・制御部101のもとに行われる。いずれにせよ、製品1本あたりの生産必要時間から設備運転時間を設定するものであり、そのために製品径[mm]、ピッチ[mm]、製品長[mm]、設定時間(設定生産タクトである製品1個の加工目標時間)に基づいて算出設定される。
【0019】
すなわち、自動車などの排気管として用いられる半製品のインターロックチューブ10を得るものであって、一定幅で長尺な平板状の金属製帯板10aを屈曲状の金属製帯板10bとして成形すると共に、断面が円形状あるいは多角形状や楕円形状であり、かつ螺旋状に巻回された屈曲状の金属製帯板10cとして成形し、この金属製帯板10cを所定長に切断して半製品のインターロックチューブ(チューブとも称する)10に記載する以下のような各装置の構成によって得るものである。」
エ.「【0029】
この巻付け用芯金17は、装置本体11において接続されているモータ24の駆動により回転し、送り込まれてきた屈曲状の金属製帯板10bの両端部分を互いに噛み合うよう巻き付ける。なお、巻付け用芯金17の先端方向の先は切断芯金18とされており、その切断芯金18の所定箇所、すなわち後述するようにプラズマ切断装置21の先端側のカット部21aと対向する箇所には、スラグを回収する切断用開口部18aが穿設されている(図6参照)。
【0030】
また、巻付け用芯金17の先端方向の先には、緊締チャック装置20が備えられている。この緊締チャック装置20は、巻付け用芯金17に巻き付けられた螺旋状の金属製帯板10bをチャックして緊締するもので(図3中B方向)、着脱自在および開閉自在に取り付けられると共に、螺旋状の金属製帯板10bが逆方向(図3中C方向)に回転して生ずるスプリングバックや緩みなどを防止する。なお、緊締チャック装置20の構成は、上記作用をなすものであれば特に限定されず、適宜種々の構成ものを選択することができる。
【0031】
切断芯金18の上部側には、移動可能なプラズマ切断装置21が配置されている。このプラズマ切断装置21は、上記のように切断芯金18の上部側に移動可能にユニットシフト(図示略)に配置されるが、その先端側にプラズマアークを噴出するカット部21aを有しており、このカット部21aの先端開口部のカットノズルからは切断用エアーが噴出され、ステンレス製等の螺旋状の金属製帯体10bを加熱溶融して瞬時に切断する。」
オ.「【0040】
次に、この発明の電気的システムの構成を、図8に基づき説明する。すなわち、このシステム本体100としては、各部の動作を統括しその演算を行って制御する主演算・制御部101(図1中にあっては符号25に相当)の指令に基づくものであり、平板状の金属帯板10aを屈曲状の金属帯板10bとする指令信号が出力される屈曲成形処理制御部102(図1中13),オイル塗布制御部103(図1中14),モータ制御部104(図1中24),巻付け用芯金17を制御して螺旋状の屈曲状の金属帯板10cを得る巻回処理制御部105(図1中11),緊締チャック制御部106(図1中20),切断制御部107(図1中21),スラグ制御部108(図1中22),ワーク搬送制御部109(図1中23),アンコイラ-部110(図1中12),入力・表示部111などにより構成されている。
【0041】
主演算・制御部101は、上記したように装置に接続される各部の動作を統括し演算を行って制御するものであり、動作の演算は製品径、ピッチ、製品長さ、設定時間(設定生産タクト)及び各部の作動位置状態に基づいて算出設定される。」
カ.「【0046】
巻付け用芯金17及び切断芯金18(但し、それ自身は回転しない)の回転が開始されると、同時に緊締チャック装置20が回転作動状態になり、製品径とピッチと製品長さと設定時間(設定生産タクト)から割り出された数値に基づいて主演算・制御部101の指令により屈曲状の金属製帯板10bの先端部に緊締チャック部20の装填指令信号が出力される。
【0047】
螺旋状に巻回された屈曲状の金属製帯板10cは、所定長に達すると主演算・制御部101からの指令によりプラズマ切断装置21からの信号に基づいて主演算・制御部101から切断制御部107へ指令信号が発せられる。この際には、プラズマ切断装置21のカット部21aは、主演算・制御部101からの指令により螺旋状に巻回された屈曲状の金属製帯板10cとは、1回転当たり1ピッチ分巻出し方向に平行に移動追従する。この動作により、螺旋状に巻回された屈曲状の金属製帯板10cには螺旋状ではなく軸線方向に直角な切断を行うこととなる。また、カット部21aは、螺旋状に巻回された屈曲状の金属製帯板10cとの距離を、初期位置・接触・所定間隔保持・初期位置とする動作として指令され、切断状態を良好な状態とする。
【0048】
その後、主演算・制御部101からの指令によりスラグ制御部108が動作され、スラグ回収装置22において切断されたスラグが吸引及び掻き出し指令信号が入力される。
キ.「【0051】
このように、この実施例によれば、断面が円形状あるいは断面が多角形状や楕円形状のチューブをゆるみなく高精度で容易に成形するに際し、巻き付けられる金属製帯板と同期して回転する緊締チャック装置を備えるので、例えば、円形状や楕円形状のインターロックチューブであっても回転してゆるむことがなく、ねじれのないチューブを精度よく容易かつ作業効率性よく成形することができる。しかも、その自動成形装置(自動制御手段)は、製作される所定(所望)の製品1本当たりの設定生産タクト、すなわち生産時間を求めるからに当たり、製品径(D)とピッチ(P)と製品長さ(L)とにより設定時間(T)が算出設定されるので、計画的で安定した生産を確保することができる。さらに、モータ系は回転機能の補正を行うことができるので、チューブである金属製帯板の素材や成形加工のすべりや機械損失であるメカロス等の理由により、必ずしも各軸が同じ速度で回転してもスムーズな搬送ができるとは限らないため、限りなく正常に近い回転速度をとなるように調整を図ることができる。」
ク.上記エ.の段落【0029】及び【0031】の記載から、巻付け用芯金17の先端方向の先は切断芯金18となっており、切断芯金18の上にプラズマ切断装置21が配置されていることから、プラズマ切断装置21は巻付け用芯金17の先端側に配置されていることがわかる。
ケ.上記ウ.の「製品1本あたりの生産必要時間から設備運転時間を設定するものであり、そのために製品径[mm]、ピッチ[mm]、製品長[mm]、設定時間(設定生産タクトである製品1個の加工目標時間)に基づいて算出設定される。」という記載、上記オ.の「主演算・制御部101は、上記したように装置に接続される各部の動作を統括し演算を行って制御するものであり、動作の演算は製品径、ピッチ、製品長さ、設定時間(設定生産タクト)及び各部の作動位置状態に基づいて算出設定される。」という記載、上記カ.の「製品径とピッチと製品長さと設定時間(設定生産タクト)から割り出された数値に基づいて主演算・制御部101の指令により屈曲状の金属製帯板10bの先端部に緊締チャック部20の装填指令信号が出力される。」という記載、上記キ.の「その自動成形装置(自動制御手段)は、製作される所定(所望)の製品1本当たりの設定生産タクト、すなわち生産時間を求めるからに当たり、製品径(D)とピッチ(P)と製品長さ(L)とにより設定時間(T)が算出設定されるので、計画的で安定した生産を確保することができる。」という記載から、製品径、ピッチ、製品長さ及び設定時間から製品1本あたりの生産必要時間が割り出され、割り出された生産必要時間に基づいて各部の動作を主演算・制御部101が制御していることがわかる。
コ.引用発明
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「一定幅で長尺な金属製帯板10cが断面S状のような屈曲状を呈し、隣り合う両端部分が互いに噛み合うように巻付け用芯金17にて螺旋状に巻き付けられ、上記金属製帯板10cを順次処理する各部が主演算・制御部101の指令に基づいて成形されるインターロックチューブ10において、
インターロックチューブ10の断面が円形状あるいは多角形状や楕円形状であって、巻き付けられる上記金属製帯板10cの製品径、ピッチ、製品長及び設定時間から製品1本あたりの生産必要時間が割り出され、割り出された生産必要時間に基づいて各部の動作を制御する主演算・制御部101と、
上記主演算・制御部101の指令に基づいて金属製帯板10cが処理され、巻き付けられた上記金属製帯板10cのゆるみを阻止するように回転しつつ同期し、かつ上記金属製帯板10cを解放あるいは緊締自在にチャックする緊締チャック装置20と、
上記巻付け用芯金17の先端側に配置され、発生されるスラグの吸引と共に、堆積されるスラグの掻き出しが指令される上記主演算・制御部101に連動するプラズマ切断装置21と、
を有して形成されるインターロックチューブの製造方法。」
第5 引用発明との対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「一定幅で長尺な金属製帯板10cが断面S状のような屈曲状を呈し、隣り合う両端部分が互いに噛み合うように巻付け用芯金17にて螺旋状に巻き付けられ、上記金属製帯板10cを順次処理する各部が主演算・制御部101の指令に基づいて成形されるインターロックチューブ10」は、本願発明1の「一定幅で長尺な金属製帯板が断面S状のような屈曲状を呈し、隣り合う両端部分が互いに噛み合うように巻付け用芯金にて螺旋状に巻き付けられ、上記金属製帯板を順次処理する各部が主演算・制御部の指令に基づいて成形されるインターロックチューブ」に相当する。
引用発明の「インターロックチューブ10の断面が円形状あるいは多角形状や楕円形状」は、円形状が、円形あるいは円形に近い形状のものを含み、多角形状も断面の角数が円形に近いものも含まれるし、楕円形状も円形に近い形状のものであるから、本願発明1の「上記チューブの断面が円形あるいは断面の角数が円形に近い形状」に相当する。
引用発明の「巻き付けられる上記金属製帯板10cの製品径、ピッチ、製品長及び設定時間から製品1本あたりの生産必要時間が割り出され、割り出された生産必要時間に基づいて各部の動作を制御する主演算・制御部101」と本願発明1の「巻き付けられる上記金属製帯板の製品径とピッチと製品長さと設定時間から生産必要時間が割り出され、上記生産必要時間である該値に基づき指令される主演算・制御部」とは、いずれも製品径とピッチと製品長さと設定時間等の値から、生産必要時間を割り出し、生産必要時間から主演算・制御部が各部の動作を制御つまり、各部に指令を出すことから、両者は一致している。
引用発明の「緊締チャック装置20」が「回転しつつ同期」することは、本願発明の「緊締チャック装置」が「同期しつつ回転」することに相当する。
引用発明の「プラズマ切断装置21」は、巻付け用芯金17の先端側に配置され、発生されるスラグの吸引と共に、堆積されるスラグの掻き出しが指令される主演算・制御部101に連動するから、本願発明の「切断装置」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「一定幅で長尺な金属製帯板が断面S状のような屈曲状を呈し、隣り合う両端部分が互いに噛み合うように巻付け用芯金にて螺旋状に巻き付けられ、上記金属製帯板を順次処理する各部が主演算・制御部の指令に基づいて成形されるインターロックチューブにおいて、上記チューブの断面が円形あるいは断面の角数が円形に近い形状であって、巻き付けられる上記金属製帯板の製品径とピッチと製品長さと設定時間から生産必要時間が割り出され、上記生産必要時間である該値に基づき指令される主演算・制御部と、
上記主演算・制御部の指令に基づいて上記金属製帯板が処理され、巻き付けられた上記金属製帯板のゆるみを阻止するように同期しつつ回転し、かつ上記金属製帯板を解放あるいは緊締自在にチャックする緊締チャック装置と、
上記巻付け用芯金の先端側に配置され、発生されるスラグの吸引と共に、堆積されるスラグの掻き出しが指令される上記主演算・制御部に連動する切断装置と、
を有して形成されるインターロックチューブの製造方法。」
(相違点)
本願発明1では、「上記緊締チャック装置の緊締チャック体近傍の切断芯金に配置され、上記切断装置に協働すると共に、発生されたスラグの吸引および掻き出しの指令の後に、残留するスラグを確認しさらにその吸引および掻き出し除去を指令するチェック機能を有するチェック装置」を備えるのに対し、引用発明では、発生されるスラグの吸引と共に、堆積されたスラグの掻き出しが指令されるものの、「残留するスラグを確認しさらにその吸引および掻き出し除去を指令するチェック機能を有するチェック装置」を有するか否かが不明であり、それに伴い、「チェック装置が緊締チャック装置の緊締チャック体近傍の切断芯金に配置されている」か否かも不明である点。
第6 相違点についての判断
(1)相違点について
工作機械における加工後に切粉等の清掃を行い、当該清掃が確実に行われて切粉等の清掃されるべきものが残っていないかセンサ等によって判定し、判定結果に応じて再度清掃を行うことは、工作機械分野において周知技術(必要であれば、周知例1の【請求項2】、段落【0020】、図2、周知例2の【請求項1】、段落【0033】、図3、周知例3の特許請求の範囲、第2頁右下欄第10行-第3頁左下欄第17行、第4図、第5図等を参照されたい。)にすぎない。
してみると、引用発明において、発生されるスラグの吸引と共に、堆積されたスラグの掻き出しが指令された後、発生したスラグを全て除去するために、上記周知技術のように、センサ等を設け、スラグが当該センサ等によって検出された場合にスラグの吸引と共に、掻き出しを再度指令するようにすることは当業者であれば容易になし得たことである。
また、センサ等のチェック装置は清掃する箇所に応じて配置されるべきものであって、引用発明の巻付け用芯金17の先端側(切断芯金)内にスラグが生じる構成において、緊締チャック装置の緊締チャック体近傍の切断芯金に配置することも、スラグの除去を確実に実行する必要性に応じて、当業者が適宜選択し得た設計事項である。
(2)したがって、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
(3)請求人の主張について
請求人は、令和1年11月26日付け意見書において、
「審判官殿の分析に基づいて勘案すると、『チェック機能』は主演算・制御部が持つ機能であり、『チェック装置』は主演算・制御部が持つ機能により指令されるセンサやカメラ等の検出器であります。
主演算・制御部が持つ機能である『チェック機能』に指令されつつ『チェック装置』は、緊締チャック装置の緊締チャック体近傍の切断芯金に配置され、切断装置に協働すると共に、発生されたスラグの吸引および掻き出しの指令の後に、残留するスラグを確認しさらにその吸引および掻き出し除去を確実に実行するものです。
このように、『発生されたスラグの吸引および掻き出しの指令の後に、残留するスラグを確認しさらにその吸引および掻き出し除去を指令する』ことは、周知例1、周知例2、周知例3では行うことはできません。
引用文献1に相当する特願2013-165570の特許メモにも『・・・上記チューブを形成する切断装置は、発生されるスラグの吸引と共に、堆積されるスラグの掻き出を備えたインターロックチューブの製造装置が記載も示唆もされていない』と記載されております。周知例1、周知例2、周知例3の段階では、『一旦清掃を行ったが、切粉等の清掃されるべきものが未だに残っていることがセンサ等によって判定された場合に再度清掃するようにすること』はあっても、本願発明のような上記効果は達成することはできません。
本願発明のように『発生されたスラグの吸引および掻き出しの指令の後に、残留するスラグを確認しその除去をさらに指令するチェック機能を有するチェック装置』を設けることは、各周知例の発明の段階時には何ら開示されていないし示唆もされてはおりません。」
と主張する。
しかしながら、上記(1)に述べたとおり周知例1、周知例2及び周知例3から、「工作機械における加工後に切粉等の清掃を行い、当該清掃が確実に行われて切粉等の清掃されるべきものが残っていないかセンサ等によって判定し、判定結果に応じて再度清掃を行うこと」は周知技術である。そして、当該周知技術の存在を踏まえれば、引用発明において、発生されたスラグの吸引および掻き出しの指令の後に、発生したスラグを全て除去するために、センサ等によってスラグが残っていることが判定された場合に再度清掃、つまり吸引及び掻き出しをすることは当業者であれば容易になし得たことである。
なお、上記「引用文献1に相当する特願2013-165570の特許メモにも『・・・上記チューブを形成する切断装置は、発生されるスラグの吸引と共に、堆積されるスラグの掻き出を備えたインターロックチューブの製造装置が記載も示唆もされていない』と記載されております。」との主張は、引用文献1に相当する特願2013-165570号が特許査定された際のポイントが、「発生されるスラグの吸引と共に、堆積されるスラグの掻き出を備えたインターロックチューブの製造装置」ということを示すにすぎず、むしろ、引用文献1や特願2013-165570号は、本願出願前に公知であったのであるから、上記技術的事項が記載されていることは、本願発明1の進歩性が否定される要素となるものである。
したがって、上記請求人の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び周知例1ないし周知例3に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2019-002462