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特許拒絶査定不服審判

2021-009769

高圧管の製造方法

審判番号
2021-009769
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-532130
請求日
2021年07月21日
審決日
2022年09月07日
公報発行日
2023年02月24日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】サンドヴィック マテリアルズ テクノロジー ドイチュラント ゲーエムベーハー
  • 【請求人代理人】園田・小林特許業務法人
審判長/審判官
  • 審判長 刈間 宏信
  • 審判官 鈴木 貴雄
  • 審判官 大山 健
分類
P18 .121-WZ (B21C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-532130「高圧管の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月22日国際公開、WO2017/103189、平成31年 2月14日国内公表、特表2019-503868〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)12月16日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2015年12月18日 (DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする特願2018-532130号の出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和 2年 9月23日付け:拒絶理由通知 令和 3年 2月24日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 3月11日付け:拒絶査定 令和 3年 7月21日 :審判請求書と同時に手続補正書の提出 令和 4年 3月 3日付け:当審拒絶理由通知 令和 4年 6月 3日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)の提出 第2 本願発明 本件補正によって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下の事項により特定されるとおりのものとなった。 「【請求項1】 以下のステップ、すなわち 第1の内径(D1)および第1の外径(D2)を有する金属製の内管(2)を提供することと、 第2の内径(D3)および第2の外径(D4)を有する金属製の外管(3)を提供することであって、前記第1の外径(D2)は前記第2の内径(D3)より小さい、提供することと、 前記内管(2)を前記外管(3)に挿入することであって、それにより前記内管(2)が前記外管(3)の内部で延びているようにする、挿入することと、 前記内管(2)および前記外管(3)を一緒に第1の引抜きダイ(4a)に通して引抜き加工することであって、前記第2の内径(D3)が、前記外管(3)と前記内管(2)の摩擦結合(6)が引き起こされるように減少する、引抜き加工することと を有する管(1)の製造方法であって、 前記第1の引抜きダイ(4a)の成形用の内面の金型直径(D5)、前記外管(3)の前記第2の外径(D4)、前記外管(3)の前記第2の内径(D3)、前記内管(2)の前記第1の外径(D2)、および前記内管(2)の前記第1の内径(D1)が、外管(3)および前記外管(3)の中に延びている内管(2)を一緒に前記第1の引抜きダイ(4a)に通して引抜き加工する際の前記内管(2)の前記第1の内径(D1)の減少が高くとも5%であるように選択されることと、 外管(3)および前記外管(3)の中に延びている内管(2)を一緒に前記第1の引抜きダイ(4a)に通して引抜き加工した後には、前記内管(2)が冷間硬化しており、かつ少なくとも900Nの引張強度を有することと、 前記内管(2)が、金属製のルッペを第2の引抜きダイ(4b)に通すことおよび引抜き内金型(5)の表面に沿って引抜き加工することによって製造されるか、または金属製のルッペを圧延マンドレルの表面に沿って圧延することによって製造されることと、 前記圧延マンドレルが、表面を研磨された鋼から成っており、したがって前記内管(2)の内側面が、前記内管(2)を前記圧延マンドレルの表面に沿って圧延する際にバニシングされることと、 前記内管(2)および前記外管(3)が同じ素材から成ることと を特徴とする、管(1)の製造方法。」(下線は当審にて付した。) ここで、本願発明は、上記下線部の内管(2)の製造工程に関し、引抜き加工することによって内管が製造されるのか、又は圧延することによって内管が製造されるのかという選択的な記載がされているところ、圧延することを選択する場合には、圧延に関連する事項として、圧延マンドレルによるバニシングが特定されているのに対して、引抜き加工を選択する場合には、引抜き加工に関連する特定はされていないことを理解できる。 なお、本件補正前の請求項1には、引抜き加工に関連する事項として、引抜き内金型によるバニシングが特定されていたが、本件補正により削除された。 第3 当審拒絶理由 当審が、令和4年3月3日付けで、本件補正前の請求項1に係る発明に対して通知した拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)のうち、理由2(進歩性)の概要は、本件補正前の請求項1に係る発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2012-192450号公報 引用文献2:特開昭58-104363号公報 第4 引用文献1の記載、技術的事項及び引用発明 1 記載事項 当審拒絶理由で引用された引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 (1)発明の詳細な説明 「【技術分野】 【0001】 本発明は、テーパーダイスを用いた空引きの冷間引抜きによる金属二重管の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、得られる金属二重管の外管と内管の界面に面圧を発生させ、密着性を確保できるとともに、金属二重管の生産性を向上できる金属二重管の製造方法に関する。 【0002】 なお、別に記載がない限り、本明細書における用語の定義は次のとおりである。 「面圧」: 外管と内管の界面に発生する圧力であって、後述する算出式を用いた方法により測定することができる。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0011】 本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、得られる金属二重管の外管と内管の界面に面圧を発生させ、密着性を確保できるとともに、金属二重管の生産性を向上できる金属二重管の製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0012】 本発明者らは、上記問題を解決するため、加工用ダイスとしてテーパーダイスを用いた冷間引抜きであって、プラグを用いない空引きにより、得られる二重管の外管と内管の界面に面圧を発生させる方法について検討した。 【0013】 図1は、テーパーダイスを用いた空引きによる金属二重管の冷間引抜きの一例を示す模式図である。同図には、被加工材である外管11および内管12と、加工用ダイスであるテーパーダイス2とを示し、ハッチングを施した矢印で被加工材の引抜き方向を示す。テーパーダイス2は、外管11および内管12をダイスの入側から出側に案内するため、入側のアプローチ部2aと、一定の内径を有し管材の加工形状を決定するベアリング部2bと、出側の逃げ部2cとを備える。テーパーダイス2のアプローチ部2aの形状は、内径が縮小するテーパー状であり、両角で規定される。アプローチ部2aの両角は、アプローチ部2aの角度α(°)により、2αで表すことができる。 【0014】 このようなテーパーダイスを用いた空引きの冷間引抜きにより、得られる二重管の外管と内管の界面に面圧を発生させるため、本発明者らは、冷間引抜き前の外管と内管とのクリアランスzに注目した。ここで、外管と内管とのクリアランスzは、図1に示すように、冷間引抜き前の外管内面と内管外面との間隔であり、冷間引抜き前の外管内径do2と、冷間引抜き前の内管外径di1とから、下記(3)式により求めることができる。 z=(do2-di1)/2 ・・・(3) 【0015】 本発明者らは、後述する実施例の表2の試験番号1~7に示すように外管と内管とのクリアランスzを変更し、アプローチ部の両角(2α)が30°であるテーパーダイスを用いた空引きの冷間引抜きにより二重管を得る試験を行った。 【0016】 図2は、冷間引抜き前の外管と内管とのクリアランスと冷間引抜きにより得られた二重管に発生した面圧との関係を示す図である。同図から、クリアランスが0.5mm未満と小さい場合は得られた二重管に発生した面圧がいずれも20MPaを超え、クリアランスを0.5~0.7mmと中程度の場合は得られた二重管に発生した面圧がいずれも30MPaを超え、クリアランスが0.7mmを超えた場合は得られた二重管に発生した面圧はいずれも5MPa以下であった。 【0017】 このように、本発明者らは、クリアランスを変更することにより得られた二重管に発生する面圧が変化し、クリアランスには最適値が存在することを明らかにした。本発明者らは、クリアランスを変更することにより得られる二重管の面圧が変化する現象を解明するため、テーパーダイスのアプローチ部およびベアリング部で外管および内管が変形するメカニズムを調査した。変形メカニズムの調査は、冷間引抜きを途中で中止し、この冷間引抜き途中の二重管を長手方向に平行な断面で切断し、切断面の形状を観察することにより行った。 【0018】 図3は、長手方向に平行な断面で切断した冷間引抜き途中の二重管の切断面を示す模式図であり、同図(a)はクリアランスが小さい場合、同図(b)はクリアランスが中程度の場合、同図(c)はクリアランスが大きい場合をそれぞれ示す。同図には冷間引抜き途中の二重管1の外管11および内管12を示し、冷間引抜きを途中で中止した際にテーパーダイスのアプローチ部とベアリング部の境界と接触していた外管外面の位置を破線矢印で指し示す。同図では、左側がテーパーダイスの入側、右側がテーパーダイスの出側であり、冷間引抜きを途中で中止した際に破線矢印の左側の外管外面はアプローチ部と、破線矢印の右側の外管外面はベアリング部とそれぞれ接触していた。 【0019】 変形メカニズムの調査では、テーパーダイスのアプローチ部およびベアリング部で外管および内管が変形する際のクリアランスの変化に着目し、クリアランスが0(ゼロ)となって外管内面と内管外面とが接触する位置1aを確認した。その結果、クリアランスが小さい場合は、同図(a)に示すように、外管と内管の接触位置1aは、アプローチ部とベアリング部の境界の前(左側)であり、アプローチ部による加工途中であった。また、クリアランスが小さい場合、内管の変形が大きいことが確認される。 【0020】 また、クリアランスが中程度の場合、同図(b)に示すように、外管と内管の接触位置1aは、アプローチ部とベアリング部の境界の直前であり、アプローチ部とベアリング部の境界とほぼ同位置となった。クリアランスが大きい場合、同図(c)に示すように、外管と内管の接触位置1aは、アプローチ部とベアリング部の境界の後(右側)であり、アプローチ部による加工の際には外管と内管とは接触することがなかった。また、クリアランスが大きい場合、内管の変形はほとんど認められなかった。 【0021】 このようにクリアランスを変更することにより、テーパーダイスのアプローチ部およびベアリング部で外管および内管が変形する際に外管と内管とが接触する位置が移動し、得られる二重管に発生する面圧が増減することが明らかとなった。そこで、本発明者らは、外管と内管の接触位置の移動を、テーパーダイスのアプローチ部で外管と内管とが接触する長さ(以下、単に「接触長さ」ともいう)により評価することを試みた。 ・・・ 【0027】 本発明は、これらの知見に基づいて完成したものであり、下記の(1)および(2)に示す金属二重管の製造方法を要旨とする: 【0028】 (1)加工用ダイスとしてテーパーダイスを用いる冷間引抜きによって、外管の内面に内管の外面が接してなる金属二重管を製造する方法であって、 下記(1)式により算出され、テーパーダイスのアプローチ部で外管と内管とが接触する長さL(mm) が、下記(2)式を満たす条件とし、空引きすることを特徴とする金属二重管の製造方法。 L=(do1-d1-2z)/2sinα ・・・(1) 1.35≦1/L≦10 ・・・(2) ただし、do1は冷間引抜き前の外管外径(mm)、zは冷間引抜き前における外管と内管とのクリアランス(mm)、d1は冷間引抜きにより得られた金属二重管の外径(mm)、αはテーパーダイスのアプローチ部の角度(°)である。 【0029】 (2)前記外管および前記内管の材質を9Cr-1Mo鋼とすることを特徴とする上記(1)に記載の金属二重管の製造方法。 【発明の効果】 【0030】 本発明の金属二重管の製造方法は、下記の顕著な効果を有する。 (1)テーパーダイスを用いた空引きの冷間引抜きにおいて、前記(1)式により算出される接触長さの逆数を適正化することにより、得られる二重管に面圧を発生させて密着性を確保できる。 (2)接触長さの逆数を調整することにより、得られる二重管に発生する面圧を所望の値に制御できる。 (3)プラグを用いない空引きにより、得られる二重管の外管と内管に面圧を発生させることから、別工程による拡径加工や内管内面に潤滑処理が不要であり、生産性を向上できる。 【図面の簡単な説明】 【0031】 【図1】テーパーダイスを用いた空引きによる金属二重管の冷間引抜きの一例を示す模式図である。 【図2】冷間引抜き前の外管と内管とのクリアランスと冷間引抜きにより得られた二重管に発生した面圧との関係を示す図である。 【図3】長手方向に平行な断面で切断した冷間引抜き途中の二重管の切断面を示す模式図であり、同図(a)はクリアランスが小さい場合、同図(b)はクリアランスが中程度の場合、同図(c)はクリアランスが大きい場合をそれぞれ示す。 ・・・ 【発明を実施するための形態】 【0032】 上述のとおり、本発明の金属二重管の製造方法は、加工用ダイスとしてテーパーダイスを用いる冷間引抜きによって、外管の内面に内管の外面が接してなる金属二重管を製造する方法であって、前記(1)式により算出され、テーパーダイスのアプローチ部で外管と内管とが接触する長さL(mm)が、前記(2)式を満たす条件とし、空引きすることを特徴とする。以下に、本発明の金属二重管の製造方法を、上記のように規定した理由および好ましい範囲について説明する。 【0033】 前記図3を用いて説明したとおり、テーパーダイスを用いた空引きの冷間引抜きでは、クリアランスを変更することによって、外管と内管との接触位置が移動する。すなわち、クリアランスを変更することによって、テーパーダイスのアプローチ部で外管と内管とが接触する長さが変化する。このような外管と内管とが接触する長さLは、クリアランスzやテーパーダイスのアプローチ部の角度αを用い、近似式である前記(1)式により簡易に算出することができる。 【0034】 この外管と内管とが接触する長さLは、前記図1に示すように、テーパーダイス2のアプローチ部2aでの接触長さである。接触長さL(mm)は、冷間引抜き前の内管外径di1(mm)と、冷間引抜き後の内管外径di1'(mm)と、テーパーダイスのアプローチ部の角度α(°)とを用いて下記(4)式により表すことができる。 L=(di1-di1')/2sinα ・・・(4) 【0035】 ここで、冷間引抜き前の内管外径di1は、冷間引抜き前の外管外径do1(mm)、外管肉厚to(mm)およびクリアランスzを用いて表すことができる。また、冷間引抜き後の内管外径di1'は、冷間引抜き後の外管外径d1、外管肉厚to'(mm)を用いて表すことができる。したがって、上記式(4)は下記式(5)に変形できる。 L=[(do1-2to-2z)-(d1-2to')]/2sinα ・・・(5) この上記(5) 式において、to≒to'とすることにより、近似式として前記(1)式を導き出すことができる。 【0036】 本発明の金属二重管の製造方法は、前記(1)式により外管と内管との接触長さを算出し、前記(2)式を満たす条件、すなわち、接触長さの逆数を1.35以上10以下とする。後述する図5に示すとおり、接触長さの逆数が大きいほど、すなわち、接触長さが短いほど得られる二重管に発生する面圧が向上することから、得られる二重管に30MPa以上の面圧を発生させることができる。これは、テーパーダイスのアプローチ部で外管と内管が接触する長さが短いと、外管との接触により内管が変形する量が減少し、冷間引抜き後の内管に生じる拡径方向の残留応力が増大することによるものと推測される。 【0037】 あるいは、引抜加工中のせん断変形により、未接触領域において外管の軸方向伸びが先行し、加工後に外管が内管よりも伸びていた分、より縮もうとするが、界面の摩擦抵抗拘束のため、軸方向応力が解放されず、外管に引張方向、内管に圧縮方向の残留応力が残り面圧が発生すると考えられる。このとき、外管と内管の接触領域が長いと内外管の間の相対すべりが起こりやすくなり、その前の未接触領域で発生した内外管の伸び量の差が縮まるため、面圧が低くなると推測される。 ・・・ 【0043】 本発明の金属二重管の製造方法は、外管および内管の材質を9Cr-1Mo鋼とするのが好ましい。9Cr-1Mo鋼に相当する鋼として、例えば、発電用火力設備の技術基準の解釈に記載される火STBA28やASME SA-213Gr.T91を採用するのが一般的である。9Cr-1Mo鋼の具体的な化学組成例として、火STBA28の化学組成を示すと、次のとおりである。すなわち、質量%で、C:0.08~0.12%、Si:0.20~0.50%、Mn:0.30~0.60%、P≦0.020%、S≦0.010%、Ni≦0.40%、Cr:8.00~9.50%、Mo:0.85~1.05%、V:0.10~0.25%を含有(残部はFe)する鋼である。 【0044】 9Cr-1Mo鋼は、高温特性(降伏点、クリープ強度)に優れていることから、ボイラ・熱交換器用合金鋼鋼管として広範囲に用いられており、金属二重管の内管および外管の材質がこの9Cr-1Mo鋼の場合には、本発明の製造方法の特徴が最大限に発揮される。 【実施例】 【0045】 加工用ダイスとしてテーパーダイスを用いた空引きの冷間引抜きにより二重管を作製し、その際に前記(1) 式により接触長さを算出するとともに、得られた二重管の面圧を測定する試験を行い、本発明の効果を検証した。 【0046】 [試験方法] 本試験では、以下の手順により、外管または内管として用いる素管を作製した。 (1)熱間製管により中空素管を得た。 (2)得られた中空素管に冷間引抜き加工を施して所定寸法の素管に仕上げた。 (3)所望寸法に仕上げた素管に、焼ならし後焼戻しの熱処理を施した。 上記(2)の冷間引抜き加工の条件を変更することにより、外径および肉厚を調整して寸法が異なる素管を作製した。 【0047】 上記の手順および条件により得られた素管を外管として用いる場合は、二重管とする際に合わせ面となる内面を一定の研磨量で研磨することにより表面スケールを除去した。また、素管を内管として用いる場合は、二重管とする際に合わせ面となる外面を一定の研磨量で研磨することにより表面スケールを除去した。本試験では、内管として用いる素管は、作業性が悪化することから内面に研磨を施すことなく用いた。このようにして寸法が異なる外管および内管を3種類ずつ準備した。 【0048】 準備した外管と内管とを管あわせした後、前記図1に示すように、加工用ダイスとしてテーパーダイスを用いた空引きの冷間引抜きを行い、外径19.00mmの二重管を得た。この際、それぞれ3種類を準備した外管および内管の組み合わせを変更し、外管と内管のクリアランスを調整した。表1に、試験条件として、テーパーダイスの寸法ならびに外管および内管とした素管の材質を示す。 【0049】 【表1】 [図:0001393569000001.jpg] 【0050】 また、表2に、試験区分、外管および内管の種類および寸法、冷間引抜きの際に用いたテーパーダイスのアプローチ部の角度α、外管と内管とのクリアランスz、前記(1)式により算出した接触長さLならびに接触長さの逆数(1/L)をそれぞれ示す。表2に示すクリアランスz、接触長さLおよび接触長さの逆数(1/L)は、冷間引抜き前に測定した外管および内管の外径および内径を用いてそれぞれ算出した。 【0051】 【表2】 [図:0001393569000002.jpg] ・・・ 【0055】 図5は、接触長さの逆数と二重管に発生した面圧との関係を示す図である。同図から、テーパーダイスのアプローチ部の角度にかかわらず、接触する長さの逆数と二重管の面圧とが相関関係を有することが確認でき、接触長さの逆数が増加するとともに二重管の面圧が向上した。また、接触長さの逆数を1.35以上とすることにより、得られる二重管に発生する面圧を30MPa以上にできることが明らかになった。 ・・・ 【符号の説明】 【0059】 1:金属二重管、 11:外管、 12:内管、 1a:外管と内管の接触位置、 2:テーパーダイス、 2a:アプローチ部、 2b:ベアリング部、 2c:逃げ部、 L:外管と内管との接触長さ、 z:外管と内管とのクリアランス、 α:テーパーダイスのアプローチ部の角度」」 (2)図面 「【図1】 [図:0001393569000003.jpg] 」 「【図2】 [図:0001393569000004.jpg] 」 「【図3】 [図:0001393569000005.jpg] 」 (3)引用文献1記載の技術的事項 上記(1)及び(2)の記載事項からみて、引用文献1には以下の技術的事項が記載されていると認められる。 ア 段落【0013】-【0014】、【0034】、【0043】及び【0051】の【表2】、並びに、図1の記載からみて、引用文献1記載の金属二重管1の製造方法における冷間引抜き前の「内管12」は、「金属製」であって、「内管外径di1」を有する。また、図1とともに段落【0051】の【表2】の記載を併せてみれば、所定の「内管内径」(すなわち、内管外径di1-2×内管肉厚)を有する。 イ 段落【0013】-【0014】、【0035】、【0043】及び【0051】の【表2】、並びに、図1の記載からみて、引用文献1記載の金属二重管1の製造方法における冷間引抜き前の「外管11」は、「金属製」であって、「外管内径do2および外管外径do1」を有する。また、段落【0014】、図1の記載から、内管外径di1は外管内径do2よりクリアランスzの2倍の分だけ小さい。 ウ 段落【0048】の「準備した外管と内管とを管あわせした後」との記載、及び、図1の記載からみて、引用文献1記載の金属二重管1の製造方法においては、「内管12が外管11の内部で延びているように」、「内管12を外管11に挿入」している。 エ 段落【0001】-【0002】、【0013】-【0014】、【0037】および【0048】、並びに、図1の記載からみて、引用文献1記載の金属二重管1の製造方法においては、「内管12および外管11を一緒にテーパーダイス2に通して空引きの冷間引抜きする」工程を有し、空引きの冷間引抜きにより、「外管内径do2」が、外管11と内管12の界面に面圧を発生させるように減少する。また、界面の摩擦抵抗拘束のため面圧が発生すると推認される。 オ 段落【0013】、【0048】-【0049】の【表1】、図1の記載からみて、引用文献1記載の金属二重管1の製造方法におけるテーパーダイス2には「ベアリング部2bの内径」の寸法が選択され、また上記ア及びイのとおり、外管11には、「外管外径do1」および「外管内径do2」の各寸法が選択され、内管12には、「内管外径di1」および「内管内径」の各寸法が選択されている。そして、当該各寸法は、外管11および前記外管11の中に延びている内管12を一緒に前記テーパーダイス2に通して引抜き加工する際の金属二重管1の外管11と内管12との界面に発生する面圧Pが30MPa以上となるように選択されている。なお、段落【0036】には、30MPa以上の面圧が発生する原理として「内管が変形する量が減少する」ことに起因している点が記載されている。 カ 上記ウ及びエ、及び、段落【0036】、【0048】の記載からみて、引用文献1記載の金属二重管1の製造方法においては、「外管11および外管11の中に延びている内管12を一緒にテーパーダイス2に通して空引きの冷間引抜き」がなされる。また、当該空引きの冷間引抜き後に、内管2が冷間硬化することは自明の事項である。 キ 段落【0046】の記載からみて、引用文献1記載の金属二重管1の製造方法における「内管12」は、中空素管に冷間引抜き加工を施して所定寸法の素管に仕上げる手順を経て作製される。 ク 段落【0043】の記載からみて、引用文献1記載の金属二重管1の製造方法における「内管12および外管11」は、ともに9Cr-1Mo鋼に相当する鋼である「火STBA28」等であって、同じ素材から成る。 2 引用発明 上記1(1)-(3)より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が、記載されている。 「冷間引抜き前の内管内径および冷間引抜き前の内管外径di1を有する金属製の内管12を提供することと、 冷間引抜き前の外管内径do2および冷間引抜き前の外管外径do1を有する金属製の外管13を提供することであって、前記冷間引抜き前の内管外径di1は前記冷間引抜き前の外管内径do2より小さい、提供することと、 前記内管12を前記外管11に挿入することであって、それにより前記内管12が前記外管11の内部で延びているようにする、挿入することと、 前記内管12および前記外管11を一緒にテーパーダイス2に通して空引きの冷間引抜きすることであって、前記冷間引抜き前の外管内径do2が、前記外管11と前記内管12の界面に摩擦抵抗拘束による面圧を発生させるように減少する、引抜き加工することと を有する金属二重管1の製造方法であって、 前記テーパーダイス2のベアリング部2bの内径、前記冷間引抜き前の外管外径do1、前記冷間引抜き前の外管内径do2、前記冷間引抜き前の内管外径di1、および前記冷間引抜き前の内管内径が、外管11および前記外管11の中に延びている内管12を一緒に前記テーパーダイス2に通して空引きの冷間引抜きする際、内管が変形する量が減少して金属二重管1の外管11と内管12との界面に発生する面圧Pが30MPa以上となるように、選択されることと、 外管11および前記外管11の中に延びている内管12を一緒に前記テーパーダイス2に通して空引きの冷間引抜きした後には、前記内管12が冷間硬化していることと、 前記内管12が、中空素管に冷間引抜き加工を施して所定寸法の素管に仕上げる手順を経て作製されることと、 前記内管12および前記外管11が同じ素材から成ることと、 を有する金属二重管1の製造方法。」 第5 本願発明と引用発明の対比 1 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 (1)引用発明の「冷間引抜き前の内管内径」は、その構造からみて、本願発明の「第1の内径(D1)」に相当し、 以下同様に、「冷間引抜き前の内管外径di1」は「第1の外径(D2)」に相当し、 「金属製の内管12」は「金属製の内管(2)」に相当し、 「冷間引抜き前の外管内径do2」は「第2の内径(D3)」に相当し、 「冷間引抜き前の外管外径do1」は「第2の外径(D4)」に相当し、 「金属製の外管13」は「金属製の外管(3)」に相当する。 また、引用発明の「テーパーダイス2」は、その構造及び作用機能からみて、本願発明の「第1の引抜きダイ(4a)」に相当し、 以下同様に、「空引きの冷間引抜き」は「引抜き加工」に相当し、 「金属二重管1」は「管(1)」に相当し、 「テーパーダイス2のベアリング部2bの内径」は「第1の引抜きダイ(4a)の成形用の内面の金型直径(D5)」に相当する。 (2)引用発明の「前記冷間引抜き前の外管内径do2が、前記外管11と前記内管12の界面に摩擦抵抗拘束による面圧を発生させるように減少する」との点は、 外管内径が減少することにより、外管と内管が接触するとともに、摩擦抵抗拘束等による残留応力により、外管と内管との界面に面圧が発生するものである(段落【0037】)ことから、 本願発明における「前記第2の内径が、前記外管と前記内管の摩擦結合が引き起こされるように減少する」点に相当する。 (3)引用発明の「前記テーパーダイス2のベアリング部2bの内径、前記冷間引抜き前の外管外径do1、前記冷間引抜き前の外管内径do2、前記冷間引抜き前の内管外径di1、および前記冷間引抜き前の内管内径が、外管11および前記外管11の中に延びている内管12を一緒に前記テーパーダイス2に通して空引きの冷間引抜きする際、内管が変形する量が減少して金属二重管1の外管11と内管12との界面に発生する面圧Pが30MPa以上となるように、選択される」との点は、 引用発明がテーパーダイス並びに内管及び外管の寸法を最適化することにより、内管が変形する量を減少させて冷間引抜後の内管に生じる拡径方向の残留応力が増大することで高い面圧を発生させる(段落【0036】)ものであることから、 「前記第1の引抜きダイの成形用の内面の金型直径、前記外管の前記第2の外径、前記外管の前記第2の内径、前記内管の前記第1の外径、および前記内管の前記第1の内径が、外管および前記外管の中に延びている内管を一緒に前記第1の引抜きダイに通して引抜き加工する際の前記内管の変形する量が減少するように選択される」限りにおいて、 本願発明の「前記第1の引抜きダイ(4a)の成形用の内面の金型直径(D5)、前記外管(3)の前記第2の外径(D4)、前記外管(3)の前記第2の内径(D3)、前記内管(2)の前記第1の外径(D2)、および前記内管(2)の前記第1の内径(D1)が、外管(3)および前記外管(3)の中に延びている内管(2)を一緒に前記第1の引抜きダイ(4a)に通して引抜き加工する際の前記内管(2)の前記第1の内径(D1)の減少が高くとも5%であるように選択される」点に相当する。 (4)引用発明の「中空素管」は、本件出願の翻訳文として提出された明細書の段落【0031】の「ここで、ルッペと言うのは、製造すべき管の未加工品のことである」との記載や、その構造及び作用機能からみて、本願発明の「金属製のルッペ」に相当し、以下同様に、「冷間引抜き加工」は、「引抜き加工」に相当し、「作製」は「製造」に相当する。 してみると、引用発明の「前記内管12が、中空素管に冷間引抜き加工を施して所定寸法の素管に仕上げる手順を経て作製される」点は、 「前記内管が、金属製のルッペを引抜き加工することによって製造される」との限りにおいて、 本願発明の「前記内管(2)が、金属製のルッペを第2の引抜きダイ(4b)に通すことおよび引抜き内金型(5)の表面に沿って引抜き加工することによって製造される」点に相当する。 2 一致点 したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。 「以下のステップ、すなわち 第1の内径および第1の外径を有する金属製の内管を提供することと、 第2の内径および第2の外径を有する金属製の外管を提供することであって、前記第1の外径は前記第2の内径より小さい、提供することと、 前記内管を前記外管に挿入することであって、それにより前記内管が前記外管の内部で延びているようにする、挿入することと、 前記内管および前記外管を一緒に第1の引抜きダイに通して引抜き加工することであって、前記第2の内径が、前記外管と前記内管の摩擦結合が引き起こされるように減少する、引抜き加工することと を有する管の製造方法であって、 前記第1の引抜きダイの成形用の内面の金型直径、前記外管の前記第2の外径、前記外管の前記第2の内径、前記内管の前記第1の外径、および前記内管の前記第1の内径が、外管および前記外管の中に延びている内管を一緒に前記第1の引抜きダイに通して引抜き加工する際の前記内管の変形する量が減少するように選択されることと、 外管および前記外管の中に延びている内管を一緒に前記第1の引抜きダイに通して引抜き加工した後には、前記内管が冷間硬化することと、 前記内管が、金属製のルッペを引抜き加工することによって製造されることと、 前記内管および前記外管が同じ素材から成ることと を有する、管の製造方法。」 3 相違点 そして、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。 (1)相違点1 「引抜き加工する際の内管の変形する量が減少する」ことに関して、本願発明では「内管の第1の内径の減少が高くとも5%である」であるのに対し、引用発明では「内管が変形する量が減少して金属二重管1の外管11と内管12との界面に発生する面圧Pが30MPa以上となるように」選択されるものであり、「内管内径」の変形量がどの程度抑えられているのか、明らかでない点。 (2)相違点2 「引抜き加工した後には、内管が冷間硬化する」ことに関して、本願発明では「かつ少なくとも900Nの引張強度を有する」のに対し、引用発明は、どの程度の引張強度を有するのか、明らかでない点。 (3)相違点3 「内管が、金属製のルッペを引抜き加工することによって製造されること」に関して、本願発明では「金属製のルッペを第2の引抜きダイに通すことおよび引抜き内金型の表面に沿って引抜き加工する」のに対し、引用発明では、「中空素管に冷間引抜き加工を施す」ものの、「第2の引抜きダイ」及び「引抜き内金型」に相当する引抜きダイや内金型を用いているか、明らかでない点。 第6 相違点の検討 1 相違点1 ア 引用文献1によれば、段落【0034】の式(4)及び段落【0051】の【表2】から「冷間引抜き後の内管外径di1'」が算出可能である。(式(4)から、di1'=di1-L×2sinαとなり、例えば【表2】の試験番号1の各寸法では、di1'=15.6-0.38×2sin15°=15.40となる。) イ また、段落【0035】に、冷間引抜き前の外管肉厚toと冷間引抜き後の外管肉厚to’を同程度と近似可能である点が記載されている。そして、引用文献1のように、外管と内管とを管合わせした後、テーパーダイスを用いた空引きの冷間引抜きを行うと、外管に比べて内管は変形しづらい(段落【0019】-【0020】、【0036】-【0037】)ことから、冷間引抜き後の内管肉厚も、冷間引抜き前の内管肉厚と同程度であると認められる。 ウ すると、冷間引抜き前の内管外径di1と冷間引抜き前の内管肉厚から冷間引抜き前の内管内径が算出可能であり、冷間引抜き後の内管外径di1'と冷間引抜き後の内管肉厚から冷間引抜き後の内管内径が算出可能である。 エ そして、【表2】の試験番号1の各寸法に基づき、冷間引抜き前の内管内径及び冷間引抜き後の内管内径を算出すると、冷間引抜き前の内管内径は、12.60mm(15.60(冷間引抜き前の内管外径di1)-3.00(内管肉厚×2)=12.60)であり、 【表2】の試験番号1の各寸法及び上記式(4)によると、冷間引抜き後の内管内径は、12.40mm(15.40(上記アの冷間引抜き後の内管外径di1')-3.00(内管肉厚×2)=12.40)であることから、冷間引抜き後の内管内径の減少は1.59%((冷間引抜き前の内管内径-冷間引抜き後の内管内径)/冷間引抜き前の内管内径×100=(12.6-12.4)/12.6×100=1.59%)である。 また、【表2】の他の「区分:本発明例」(試験番号5、7、9、12、14)の冷間引抜き後の内管内径の減少についても、いずれも5%未満であるところ、これらの「本発明例」の面圧が30MPa以上であることは明らかである。 オ してみると、引用発明の「テーパーダイス2のベアリング部2aの内径、前記冷間引抜き前の外管外径do1、前記冷間引抜き前の外管内径do2、前記冷間引抜き前の内管外径di1、および前記冷間引抜き前の内管内径」は、「内管が変形する量が減少して金属二重管1の外管11と内管12との界面に発生する面圧Pが30MPa以上となるように」選択された結果として、本願発明と同様に、「内管の第1の内径の減少が高くとも5%である」ように選択されている、と認められる。 したがって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。 2 相違点2 引用文献1の段落【0043】には、内管の材質として「火STBA28」を採用する点が記載されている。 ここで、「火STBA28」の引張強さは590N/mm2以上であることが知られており(必要であれば、経済産業省,”発電用火力設備の技術基準の解釈”,119ページ・132ページ,[online],平成25年5月17日,[令和4年2月18日検索],インターネット <URL: https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/law/files/kagikaisyaku.pdf>を参照)、引用文献1記載の内管は引抜き加工による冷間硬化のため引張強さが上昇すると考えられることから、内管の引張強さは当然590N/mm2以上であると認められる。 また、式(4)及び【表2】から算出した冷間引抜き後の「内管外径di1'」と、上記相違点1で示した方法から算出した冷間引抜き後の「内管内径」とから、冷間引抜き後の内管の断面積が算出可能である。 そして、当該引張強さ(N/mm2)と断面積(mm2)の積から、引用発明の内管の引張強度(N)を算出すると、【表2】の「区分:本発明例」で挙げられた試験番号1,5,7,9,12,14の冷間引抜き後の内管の引張強度は、いずれも900Nを超えるものである。 してみると、引用発明の冷間引抜き後の内管は、「少なくとも900Nの引張強度を有する」と認められる。 したがって、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。 3 相違点3 (1)引用文献2の記載、技術的事項 ア 当審拒絶理由で引用された引用文献2の第2ページ左上欄第3-9行には、第2図に関して、以下の事項が記載されている。 「第2図(機械工学便覧17-39第5版)は、第1図に示すチユーブ1の製造方法の一工程を示すもので、素材管1Aの管孔5Aにシヤフト6に取付けたフロート7を挿入し、ダイス8を用いてこの素材管1Aを矢印方向に引抜くことにより、内面をバニシング加工しつつ絞り加工されたチユーブ1が得られる。」 イ 第2図 「 [図:0001393569000006.jpg] 」 ウ 引用文献2記載の技術的事項 上記ア及びイの記載事項からみて、引用文献2には以下の技術的事項が記載されていると認められる。(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。) 「管が、素材管1Aをダイス8に通すことおよびフロート7の表面に沿って引抜くことによって製造されること。」 エ 本願発明と引用文献2記載の技術的事項との相当関係 上記引用文献2記載の技術的事項における「素材管1A」は、製造しようとする管の未加工品といえるから、本願発明の「金属製のルッペ」に相当し、以下、作用機能を考慮すると、 「ダイス8」は、「第2の引抜きダイ(4b)」に相当し、 「フロート7」は、「引抜き内金型(5)」に相当する。 また、「チユーブ1」は、「管」である限りにおいて、本願発明における「内管」に相当する。 そうすると、引用文献2記載の技術的事項は、本願発明の発明特定事項を用いて次のように表現することができる。 「管が、金属製のルッペを第2の引抜きダイに通すことおよび引抜き内金型の表面に沿って引抜くことによって製造されること。」 (2)引用発明に引用文献2記載の技術的事項を適用することの容易想到性 引用発明の中空素管は、引抜き加工で構成される(段落【0046】)から、チユーブ(管)の引抜き加工に関して機械工学便覧で説明される程度に普通に知られている引用文献2記載の技術的事項を適用することは、当業者が容易に想到し得た事項である。 4 小括 本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 第7 請求人の主張について 1 請求人の主張の概要 請求人は、当審拒絶理由に対する令和4年6月3日提出の意見書で、理由2について、概ね以下の主張をしている。 「はじめに、本意見書と同日付で提出の手続補正書により、旧請求項に係る発明を、前記圧延マンドレルが、表面を研磨された鋼から成っており、したがって前記内管(2)の内側面が、前記内管(2)を前記圧延マンドレルの表面に沿って圧延する際にバニシングされる、管(1)の製造方法へと補正致しました。 引用文献1及び2は、「前記圧延マンドレルが、表面を研磨された鋼から成っており、したがって前記内管(2)の内側面が、前記内管(2)を前記圧延マンドレルの表面に沿って圧延する際にバニシングされる」との技術的特徴を開示するものではありません。 当業者であっても、引用文献1及び2に係る発明から新請求項に係る発明に容易に想到しないものと思料致します。 新請求項に係る発明は、当該拒絶理由に該当しないものと思料致します。」 すなわち、請求人は、本願発明は、内管(2)が圧延マンドレルの表面に沿って圧延することによって製造されること、圧延マンドレルの表面が研磨された鋼からなること、内管(2)を圧延マンドレルの表面に沿って圧延する際にバニシングされることを特定しているから、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項から容易に想到し得ない旨の主張をしていると解される。 2 請求人の主張に対する検討 しかしながら、上記「第2 本願発明」にて記載したように、補正後の請求項1には、発明を特定するための以下の事項が、記載されている。 「・・・前記内管(2)が、金属製のルッペを第2の引抜きダイ(4b)に通すことおよび引抜き内金型(5)の表面に沿って引抜き加工することによって製造されるか、または・・・」 してみると、上記第2で説示したとおり、本願発明は、内管(2)の製造工程に関し、引抜き加工することによって内管が製造されるのか、又は圧延することによって内管が製造されるのかという選択的な記載がされており、圧延することを選択する場合には、圧延に関連する事項として、圧延マンドレルによるバニシングが特定されているのに対して、引抜き加工を選択する場合には、引抜き加工に関連する特定はされていないことを理解できるところ、引抜き加工が選択される場合には、上記第6に示したとおり、依然として、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項から容易に想到し得たものであり、当審拒絶理由の理由2を解消したものであるとはいえない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、請求項2-4について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-009769

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