特許拒絶査定不服審判
2020-014726
圧延機ポーリングリール
- 審判番号
- 2020-014726
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-536102
- 請求日
- 2020年10月22日
- 審決日
- 2021年07月21日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】プライメタルズ テクノロジーズ ユーエスエー エルエルシー
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 久保田 信也
- 審判官 見目 省二
- 分類
- P18 .121-Z (B21C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-536102「圧延機ポーリングリール」拒絶査定不服審判事件〔平成29年7月20日国際公開、WO2017/123374、平成31年1月31日国内公表、特表2019-502561〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)12月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年(平成28年)1月11日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続きの経緯は以下のとおりである。
平成30年 9月 5日 :翻訳文提出
令和 元年10月15日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月16日 :意見書、手続補正書の提出
同 年 7月 9日付け:拒絶査定
同 年10月22日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和2年10月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年10月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「熱間圧延長尺製品(P)を環状コイルに形成するためのポーリングリール(10)であって、
垂直方向軸線(A)の上に載置されている中央マスト(14)と、
前記中央マストを囲んでいる円筒状タブ(18)であって、環状チャンバ(20)を形成するように前記中央マストと協働する前記円筒状タブ(18)と、
前記環状チャンバの底部を形成しているコイルプレート(22)と、
を備えている前記ポーリングリールにおいて、
前記中央マストと前記円筒状タブと前記コイルプレートとが、一体となって前記垂直方向軸線を中心として回転可能とされ、
前記ポーリングリールが、送達端部を具備する入口ノズルを備えており、前記入口ノズルの前記送達端部が、前記環状コイルを形成する一連の積層されたリングとして前記コイルプレートの上に積み上げるために、前記熱間圧延長尺製品を前記環状チャンバの内部に向かって下方に方向づけるように配置されており、
前記コイルプレートが、前記環状チャンバの内部で形成されつつある前記環状コイルの高さの増大に対応するために、前記垂直方向軸線に沿って下方に且つ前記中央マスト及び前記円筒状タブに対して相対的に移動可能とされ、
前記ポーリングリールが、垂直方向に延在していると共に前記円筒状タブの内面の周囲において周方向に離隔配置されている搬送要素(28)であって、前記コイルプレートと同期して下方に横断可能とされる前記搬送要素(28)を備え、該搬送要素(28)は、前記製品と接触状態になるように正確な方向にこの製品を移動させることを特徴とするポーリングリール(10)。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年1月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「熱間圧延長尺製品(P)を環状コイルに形成するためのポーリングリール(10)であって、
垂直方向軸線(A)の上に載置されている中央マスト(14)と、
前記中央マストを囲んでいる円筒状タブ(18)であって、環状チャンバ(20)を形成するように前記中央マストと協働する前記円筒状タブ(18)と、
前記環状チャンバの底部を形成しているコイルプレート(22)と、
を備えている前記ポーリングリールにおいて、
前記中央マストと前記円筒状タブと前記コイルプレートとが、一体となって前記垂直方向軸線を中心として回転可能とされ、
前記ポーリングリールが、送達端部を具備する入口ノズルを備えており、前記入口ノズルの前記送達端部が、前記環状コイルを形成する一連の積層されたリングとして前記コイルプレートの上に積み上げるために、前記熱間圧延長尺製品を前記環状チャンバの内部に向かって下方に方向づけるように配置されており、
前記コイルプレートが、前記環状チャンバの内部で形成されつつある前記環状コイルの高さの増大に対応するために、前記垂直方向軸線に沿って下方に且つ前記中央マスト及び前記円筒状タブに対して相対的に移動可能とされ、
前記ポーリングリールが、垂直方向に延在していると共に前記円筒状タブの内面の周囲において周方向に離隔配置されている搬送要素(28)であって、前記コイルプレートと同期して下方に横断可能とされる前記搬送要素(28)を備えていることを特徴とするポーリングリール(10)。」
2 補正の適否
本件補正前は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「搬送要素」について、「前記製品と接触状態になるように正確な方向にこの製品を移動させる」ものであるとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開昭50-100464号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は理解の便のため当審にて付与。)
a 第1ページ左欄第18行-右欄第3行
「本発明は、巻き室の半径方向制限部に対して相対的に昇降可能な巻き円板と、この巻き円板を各巻き付け工程時に、上方に調節された出発位置から線材束の増大に応じて下降せしめる制御装置とを有する束丈の大きい線材束用コイラーに関する。」
b 第1ページ右欄第4-5行
「本発明はガレツト式コイラーならびにエーデンボルン式コイラーに適用可能である。」
c 第1ページ右欄第6-12行
「ガレツトならびにエーデンボルン構造の線材コイラーにおいて、巻き円板の下降にさいして線材束の外側巻き付け部が、ガレツト式コイラーのばあいには特に遠心力によつて、巻き室の外側制限部に付着するので、束丈の大きな線材束を巻き付けるのに困難が伴う。したがつて本発明の課題は、上記欠点を避けることにある。」
d 第1ページ右欄第13行-第2ページ左上欄第5行
「巻き円板が、巻き室の半径方向制限部例えば同心円上に配置されたピン列に対して相対的に昇降可能に配置されている公知の線材コイラーから出発して、本発明によれば、巻き室の外側制限部が、周方向で分配されていて垂直方向に運動可能でありしかも可撓性かつ耐熱性の部材を有しており、この部材には形成される線材束の外側巻き部が接しており、かつ該部材が前記昇降可能な巻き円板と結合されているようにした。これによつて、巻き円板の下降にさいして該巻き円板は可撓性の部材を強制的に連行し、ひいては下方に向かつて増大する線材束の外側巻き付け部を連行せしめる。」
e 第2ページ左上欄第6-8行
「前記自由運動可能で可撓性の部材が、市販されている高耐熱性のエンドレス板リンクチエーンであると有利である。」
f 第2ページ左上欄第14行-右上欄第1行
「公知構造の線材コイラーは、2列の同心的なピン4,7を有する基礎円板10、該基礎円板10と相対回動不能に結合された中空軸9用の軸受け8、ならびに巻き円板5から成つており、前記巻き円板はロツド11を介して、巻かれた線材束を持上げるためおよび巻き始めに降下するため、巻き室を取囲むコツプ体12内に昇降可能に配置されている。」
g 第2ページ右上欄第2-8行
「・・・外側のピン4がU字形の細長いフレーム部分として構成されており、このフレーム部分内には、板リンクチエーン1用の上下に丸みのつけられた支持体2が挿入されている。支持体2はピン3によつてU字形フレーム部分4と固定結合されている。」
h 第2ページ右上欄第9-13行
「ヒンジ部分6のところで巻き円板5と結合された可動の板リンクチエーン1は、巻き円板の昇降にさいして強制的に連行せしめられ、下方に向かつて増大する線材束の外側巻き付け部にどんな摩擦抵抗も生じない。」
i 第1図
[図:0001380527000001.jpg]
j 第2図
[図:0001380527000002.jpg]
(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 上記記載事項(ア)a、b及びcからみて、束丈の大きい線材束用コイラーは、線材を線材束に形成するためのものである。
b 上記記載事項(ア)f及びiからみて、ピン7が基礎円板10の垂直方向軸線と平行に載置されている。
c 上記記載事項(ア)a、c、d及びfからみて、ピン4は、ピン7と同心円上の外側に配置され((ア)f)、ピン7とともに半径方向制限部を構成している((ア)d)。また、コツプ体12の内側が巻き室となる((ア)f)ことから、ピン4は、ピン7と協働して巻き室を形成し、ピン4は、巻き室の外側制限部であるといえる((ア)d)。
d 上記記載事項(ア)a、d、f及びiからみて、巻き円板5が巻き室の底部を形成している。
e 上記記載事項(ア)a、f及びiからみて、巻き円板5が、巻き室の内部で形成されつつある線材束の増大に応じて、基礎円板10の垂直方向軸線に沿って下方に且つピン4,7(半径方向制限部)に対して相対的に昇降可能とされている。
f 上記記載事項(ア)d、f、g、h、i及びjからみて、板リンクチエーン1が基礎円板10の垂直方向に延在している((ア)i)とともに、ピン4の内面において周方向に分配されている((ア)d)。また、板リンクチエーン1は巻き円板5に結合されている((ア)h)。
g 上記記載事項(ア)d、e及びhからみて、巻き円板5の下降に際して、巻き円板5に結合された板リンクチエーン1が強制的に連行されることで、板リンクチエーン1は線材束の外側巻き付け部を下方に向かつて連行するものであり((ア)h)、「下方に向かつて増大する線材束の外側巻き付け部にどんな摩擦抵抗も生じない。」((ア)h)こととは、板リンクチエーン1と線材束は一緒に下降するものであることから、一緒に下降する板リンクチエーン1と線材束の外側巻き付け部の間には動摩擦力が生じていないことと解され、板リンクチエーン1は、線材と接触状態になるように下方にこの線材を連行させる((ア)d)。
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「線材を線材束に形成するための束丈の大きい線材コイラーであって、
基礎円板10の垂直方向軸線と平行に載置されているピン7と、
ピン7と同心的なピン4であって、
巻き室を形成するようにピン7と協働するピン4と、
巻き室の底部を形成している巻き円板5と、
を備えている前記線材コイラーにおいて、
巻き円板5が、前記巻き室の内部で形成されつつある線材束の増大に応じて、前記基礎円板10の垂直方向軸線に沿って下方に且つピン4,7に対して相対的に昇降可能とされ、
前記束丈の大きい線材束用コイラーが、基礎円板10の垂直方向に延在していると共に前記ピン4の内面において周方向に分配されている板リンクチエーン1であって、前記巻き円板5に強制的に連行される前記板リンクチエーン1を備え、該板リンクチエーン1は、前記線材と接触状態になるように下方にこの線材を連行させる束丈の大きい線材コイラー。」
(以下、「引用発明」という。)
イ 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、西独国特許出願公開第2057899号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、括弧内に当審での翻訳文を併記する。(下線は理解の便のため当審にて付与。)
a 明細書第1ページ第2-5行
「Die Erfindung betrifft ・・・ den Wickelraum begrenzen.」
(本発明は、その両側で巻取り空間を画定する、直角に配置された巻取りロッドである2つの同軸クラウン部を有する位置固定巻取りロッドプレートからできているワイヤを巻取るための回転ケージウインチに関する。)
b 明細書第4ページ第22-28行
「Mit 1 ist in den Fig. 1 und 2 ・・・ ausgebildet sind.」
(図面1および2ではウインチハウジングに1を付けて示しており、該ハウジングはカラム2を具備しており、該カラムには中空シャフト3が収納部4内に回転式に取り付けられている。該中空シャフト3にはかさ歯車と巻取りロッドディスク6が一体回転式に取り付けられている。巻取りロッドディスク6上には巻取りロッド上に2つのクラウンが固定されており、それらは過剰長の中空管7および8を形作る。)
c 明細書第6ページ第12-15行
「Um den Kranz von Hohlrohren 7 ・・・ mit den Hohlrohren 7 verbunden sind.」
(ウインチの遠心力に対する中空管7のクラウンを強化するために、環状の壁を中空管7の間に配置し、それを中空管7と結合する。)
d 明細書第6ページ第20-30行
「Auf den Hubteller 9 ・・・ ein Zylinder 38 gelenking angeordnet.」
(ハブディスク9には供給管35の出口が、ウインチ内に送り込まれる巻取りワイヤが巻取りロッド8aの内クラウンの局面に接して巻取りロッド7の外クラウンの直前でハブディスク9に当たるように傾けられている。巻取りワイヤは巻取りフレーム36またはドライバから出て供給管35を通りウインチの巻取り空間の中に送られる。リングの高さを上げている間、供給管35を常に同じ入口角度に保つためにスタンド37内にシリンダー38を関節連結する。)
e Fig.2
Fig.2からみて、中空管8を囲んでいる中空管7及び中空管7の間に配置された環状の壁が認められる。
[図:0001380527000003.jpg]
(イ)上記(ア)から、引用文献2には以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「中空管8を囲むように中空管7を配置して巻取り空間を画定し、中空管7の間に環状の壁を配置すること。」
(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)
(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
(ア)引用発明の「線材」は、線材が熱間圧延により製造されることは技術常識であることから、本件補正発明の「熱間圧延長尺製品」に相当する。 また、引用発明の「線材束」は、線材コイラーによりコイル状に形成されるものであることは明らかであるから、本件補正発明の「環状コイル」に相当し、以下同様に、「束丈の大きい線材束用コイラー」は「ポーリングリール」に相当する。
(イ)引用発明の「基礎円板10の垂直方向軸線」は、本件補正発明の「垂直方向軸線」に相当し、以下同様に、「垂直方向軸線と平行に」は、「垂直方向軸線の上に」に、「ピン7」は、「中央マスト」に、(ピンが)「同心的」であることは、「囲んで」いることに相当する。
(ウ)引用発明の「巻き室」は、本件補正発明の「環状チャンバ」に相当する。
また、引用発明の「ピン4」と、本件補正発明の「円筒状タブ」は、いずれも「環状チャンバの外側制限部」である点で共通する。
(エ)引用発明の「巻き板5」は、本件補正発明の「コイルプレート」に相当する。
(オ)引用発明の「線材束の増大に応じて」は、本件補正発明の「環状コイルの高さの増大に対応するために」に相当し、以下同様に、「相対的に昇降可能」は、「相対的に移動可能」に相当する。
(カ)引用発明の「基礎円板10の垂直方向」は、本件補正発明の「垂直方向」に相当し、以下同様に、「板リンクチエーン1」は「搬送要素」に、「巻き円板5に強制的に連行される」は「コイルプレートと同期して下方に横断可能とされる」に、「下方」に「連行させる」は、「正確な方向」に「移動させる」に相当する。
また、引用発明の「ピン4の内面において周方向に分配されている」と、本件補正発明の「円筒状タブの内面の周囲において周方向に離間配置されている」は、いずれも「環状チャンバの外側制限部の内面の周囲において周方向に離間配置されている」点で共通する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「熱間圧延長尺製品を環状コイルに形成するためのポーリングリールであって、
垂直方向軸線の上に載置されている中央マストと、
前記中央マストを囲んでいる環状チャンバの外側制限部であって、環状チャンバを形成するように前記中央マストと協働する前記環状チャンバの外側制限部と、
前記環状チャンバの底部を形成しているコイルプレートと、
を備えている前記ポーリングリールにおいて、
前記コイルプレートが、前記環状チャンバの内部で形成されつつある前記環状コイルの高さの増大に対応するために、前記垂直方向軸線に沿って下方に且つ前記中央マスト及び前記環状チャンバの外側制限部に対して相対的に移動可能とされ、
前記ポーリングリールが、垂直方向に延在していると共に前記環状チャンバの外側制限部の内面の周囲において周方向に離隔配置されている搬送要素であって、前記コイルプレートと同期して下方に横断可能とされる前記搬送要素を備え、該搬送要素は、前記製品と接触状態になるように正確な方向にこの製品を移動させるポーリングリール。」
【相違点1】
本件補正発明では、環状チャンバの外側規制部が、円筒状タブあって、中央マストと環状チャンバの外側規制部である円筒状タブとコイルプレートが一体となって垂直方向軸線を中心として回転可能であるのに対し、引用発明では、環状チャンバの外側規制部が、ピンであって、中央マストと環状チャンバの外側制限部であるピンとコイルプレートが一体となって垂直方向軸線を中心として回転可能であるか明らかでない点。
【相違点2】
本件補正発明では、ポーリングリールが、送達端部を具備する入口ノズルを備えており、前記入口ノズルの前記送達端部が、環状コイルを形成する一連の積層されたリングとしてコイルプレートの上に積み上げるために、熱間圧延長尺製品を環状チャンバの内部に向かって下方に方向づけるように配置されているのに対し、引用発明では、ポーリングリールが送達端部を具備する入り口ノイズを備えているか明らかでない点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明は、ガレット式コイラーならびにエーデンボルン式コイラーに適用可能(第1ページ右欄第4-5行)としつつ、ガレット式コイラーの場合には特に遠心力によって、線材が巻き室の外側制限部に付着するので、束丈の大きな線材束を巻き付けるのに困難が伴うという欠点を避けるもの(第1ページ右欄第8-12行)として、専ら当該欠点を避けるための構成について記載されるものであることから、引用発明は、ガレット式コイラーを前提にしているといえる。
そして、ガレット式コイラーは、環状チャンバを形成する部品が一体となって垂直方向軸線を中心として回転可能に構成されたものであることから、引用発明の環状チャンバを形成する、中央マストと環状チャンバの外側制限部であるピンとコイルプレートが一体となって垂直方向軸線を中心として回転可能であることは当然である。
また、引用文献2には、上記(2)イ(イ)のとおり、「中空管8を囲むように中空管7を配置して巻取り空間を画定し、中空管7の間に環状の壁を配置すること。」という技術的事項が記載されており、引用文献2記載の技術的事項の「環状の壁」は、ウインチの遠心力に対する中空管7のクラウンを強化するため設けられたものである(明細書第6ページ第12-15行)。
引用発明は、上述したように、ガレット式コイラーを前提としており、引用発明の「ピン4」には、ポーリングリールの遠心力が作用することから、引用発明の「ピン4」と、引用文献2に記載された「中空管7」は、環状チャンバの外側制限部であって、ポーリングリールの遠心力が作用する点で機能・作用が共通しており、引用発明に引用文献2記載の技術的事項を適用する動機付けは十分にあると解される。
したがって、引用発明の「ピン4」において、引用文献2に記載された「環状の壁」を採用し、環状チャンバの外側規制部を、ピン4とピン4の間に配置された環状の壁からなる円筒状のタブとし、中央マストやコイルプレートと一体となって回転可能とすることで、相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
ポーリングリールの技術分野において、送達端部を具備する入口ノズルを備えており、前記入口ノズルの前記送達端部が、環状コイルを形成する一連の積層されたリングとしてコイルプレートの上に積み上げるために、熱間圧延長尺製品を環状チャンバの内部に向かって下方に方向づけるように配置されているものは、本願の優先日前に周知技術である(例えば、原査定の拒絶の理由で引用された、上記引用文献2の明細書第6ページ第20-30行(上記(2)イ(ア)d参照。)、図1、3等、及び、原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された特表2011-516272号公報(以下、「引用文献3」という。)の段落【0009】、図1等参照。)。
そして、引用発明は、上記相違点1で述べたように、ガレット式コイラーを前提としており、ガレット式コイラーは、送達端部を具備する入口ノズルを備えているものである。
したがって、引用発明において、上記周知技術を適用し、相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「・・・引用文献1の右上段落第9行から第13行には、「ヒンジ部分6のところで巻き円板5と結合された可能の(当審注:「可動の」の誤記と認める。)板リンクチェーン1は、巻き円板の昇降に際して強制的に連行せしめられ、下方に向かって増大する線材束の外側巻き付け部にどんな摩擦抵抗も生じない」と記載されている。すなわち、引用文献1の板リンクチェーンは、線材の落下を案内するのみであり、本願請求項1に係る発明の搬送要素のように製品を積極的に搬送するものではない。したがって、引用文献1の板リンクチェーンは本願請求項1に係る発明の搬送要素に相当するものではない。」(審判請求書第6ページ下から第2行-第7ページ第6行)と主張する。
しかしながら、上記記載事項(ア)d、e及びhからみて、巻き円板5の下降に際して、巻き円板5に結合された板リンクチエーン1が強制的に連行されることで、板リンクチエーン1は線材束の外側巻き付け部を下方に向かつて連行し、板リンクチエーン1と線材束は一緒に下降するものであることから、請求人が指摘する「下方に向かつて増大する線材束の外側巻き付け部にどんな摩擦抵抗も生じない」という引用文献1の記載は、一緒に下降する板リンクチエーン1と線材束の外側巻き付け部の間には動摩擦力が生じていないことを意味すると解され、引用文献1の第2ページ右上欄第9-13行の「摩擦抵抗」は、「動摩擦抵抗」を表していると解される。
よって、板リンクチエーン1は、線材束を積極的に搬送するものであることから、搬送要素であるといえる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
オ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2記載の技術的事項及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年10月22日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、令和2年1月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対して原査定で通知した拒絶の理由は、本願の優先日前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項、及び、引用文献2-3に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開昭50-100464号公報
引用文献2:西独国特許出願公開第2057899号明細書
引用文献3:特表2011-516272号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1-2の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・検討
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「搬送要素」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、引用文献2記載の技術的事項及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-014726