特許拒絶査定不服審判
2019-001564
データ処理装置を用いたリソグラフィ装置
- 審判番号
- 2019-001564
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-552539外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年02月05日
- 審決日
- 2020年03月10日
- 公報発行日
- 2020年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 【請求人代理人】江口 昭彦
- 【請求人代理人】内藤 和彦
- 分類
- P18 .121-Z (G03F)
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-552539「データ処理装置を用いたリソグラフィ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月11日国際公開、WO2015/131969、平成29年 3月30日国内公表、特表2017-509016〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014年12月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年3月4日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成28年10月 7日 :国際出願翻訳文提出書、手続補正書、出願
審査請求書及び上申書の提出
平成29年 8月25日付け:拒絶理由通知(同年8月29日発送)
同年11月24日 :手続補正書・意見書の提出
平成30年 3月 2日付け:拒絶理由通知(同年3月6日発送)
同年 5月29日 :手続補正書・意見書の提出
同年10月 2日付け:拒絶査定(同年10月9日送達。
以下「原査定」という。)
平成31年 2月 5日 :審判請求書・手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成31年2月5日付けの手続補正により補正された請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
光学投影システムを用いて基板上にパターンを適用するためのリソグラフィ装置であって、
前記パターン適用の前に動作可能であり、前記基板における複数の位置で前記基板の表面の高さに関連した測定信号を得る光学レベルセンサと、
前記複数の位置について前記測定信号を局所高さ値に変換することで前記基板の高さマップを導出するプロセッサと、
前記パターンを適用する場合に前記高さマップを用いて前記投影システムの合焦を制御するコントローラと、を含み、
前記プロセッサ及びコントローラが、前記基板に適用された処理に関する情報を用いて前記基板の少なくとも第1及び第2の領域を画定すると共に、前記測定信号を用いて前記投影システムの合焦を制御する方法を領域間で変動させ、
前記基板に適用された処理に関する前記情報が、1つ以上の以前にパターニングが行われた層のレイアウト情報を含み、前記第1及び第2の領域の境界を画定するために用いられ、
前記レイアウト情報が、前記境界の位置を画定するために用いられる、リソグラフィ装置。」(なお、下線は、当審で付したものである。以下同じ。)
第3 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由において、引用文献1として引用された特開2009-239274号公報(以下「引用文献1」という。)には、図とともに以下の記載がある。
ア 「【請求項9】
放射ビームの断面にパターンを与えて、パターン付き放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持するように構成された支持体と、
基板を保持するように構成された基板テーブルと、
前記パターン付き放射ビームを前記基板のターゲット部分に投影するように構成された投影システムと、
前記基板の少なくとも一部の高さ測定を実行して、前記投影システムの焦点面に対する前記基板のターゲット部分の配置に使用する高さデータを生成するように構成されたレベルセンサと、
前記投影システムに対して前記基板テーブルを配置するアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御して、補正した高さ測定値に従って前記投影システムの前記焦点面に前記基板の前記ターゲット部分を配置するように構成された制御装置と、を備え、
前記制御装置が、前記高さ測定値をメモリからの予め割り出された補正高さで補正する処理装置を備え、前記メモリが、プロセススタックデータに少なくとも部分的に基づく補正高さを含む、リソグラフィ投影装置。
【請求項10】
前記メモリが、前記プロセススタックデータを表す命令を含み、前記処理装置が、前記メモリ内の前記プロセススタックデータに少なくとも部分的に基づいて前記予め割り出された補正高さを計算するように構成される、請求項9に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項11】
……
【請求項12】
基板の位置を制御するシステムであって、前記システムが処理装置及びメモリを備え、前記メモリが、前記処理装置が高さデータを使用して、投影システムの焦点面に対して前記基板のターゲット部分を配置する方法を実行することによって実行可能な命令を含むコンピュータプログラムでコード化され、前記方法が、
前記基板の少なくとも一部の高さ測定を実行して、高さデータを生成すること、
予め割り出された補正高さを使用して、前記高さデータの補正された高さデータを計算すること、及び、
前記補正された高さデータに少なくとも部分的に基づいて前記投影システムの前記焦点面に対して前記基板の前記ターゲット部分を配置することを含み、前記予め割り出された補正高さがプロセススタックデータに少なくとも部分的に基づいて計算される、システム。
【請求項13】
前記システムが、レベルセンサからの高さ測定値を処理するような構成である、請求項12に記載のシステム。」
イ 「【0027】
[00027] 図4は、基板表面の断面図を概略的に示す。断面図はy軸に沿って、又は図2に示すようなストロークによるスキャン方向に沿って切り取られている。レベルセンサの概略的に図示された放射源101からの入射放射100が、「段階的」表面構造を有する基板Wに投影される。この表面構造は、以前の製造段階で、基板上の層を次々に結像することによって形成されている。層は、層スタックデータに対応して形成され、これは特定のトポロジを有する最終プロダクトの層を形成することに対応する。最終層は、プロセス層データに従って最上層に結像される。「プロセス層データ」という用語は、本明細書では、基板上に基板表面の一部である少なくとも最終層を形成するために使用されるデータを指す。プロセス層データは、以前の/より古い層で、その後に覆われている層のデータを備えてよい。
【0028】
……
【0031】
[00031] 図4は、基板W上にデバイスを製造するために基板/レジストを照明する場合に、リソグラフィ装置の投影システムの焦点面の望ましい高さを点線120でさらに示す。望ましい高さ120は、ターゲット区域における基板表面の平均高さである。
【0032】
[00032] プロセスの依存度を考慮しないと、反射した放射から望ましい高さ120の近似値を提供することは不可能である。実際の高さ読み取り値の誤差(実際の高さからの見かけの高さの差になる)は、レベルセンサの光スペクトル、偏光及びハードウェアの特性にさらに依存する。」
ウ 「【発明を実施するための形態】
【0047】
[00053] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示したものである。
この装置は、…
【0048】
……
【0050】
[00056] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに与えられるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに与えられるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特別な機能層に相当する。
【0051】
……
【0056】
[00062] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDの助けにより、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の事例では、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源がリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
【0057】
[00063] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調節するアジャスタADを備えていてもよい。通常、イルミネータILの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。また、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを備えていてもよい。また、イルミネータを用いて放射ビームを調整し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
【0058】
[00064] 放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブルMT)上に保持されたパターニングデバイス(例えばマスクMA)に入射し、パターニングデバイスによってパターンが与えられる。放射ビームBはマスクMAを通り抜けて、基板Wのターゲット部分C上にビームを集束する投影システムPSを通過する。第二位置決め装置PW及び位置センサIF(例えば干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)の助けにより、基板テーブルWTを、例えば放射ビームBの経路において様々なターゲット部分Cに位置決めするように正確に移動できる。同様に、第一位置決め装置PM及び別の位置センサ(図1には明示されていない)を使用して、例えばマスクライブラリから機械的に検索した後に、又はスキャン中に、放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めすることができる。一般的に、マスクテーブルMTの移動は、第一位置決め装置PMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けにより実現できる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第二位置決め装置PWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、固定してもよい。マスクMA及び基板Wは、マスクアラインメントマークM1、M2及び基板アラインメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アラインメントマークは、専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分の間の空間に配置してもよい(スクライブレーンアラインメントマークとして知られる)。同様に、マスクMA上に複数のダイを設ける状況では、マスクアラインメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0059】
[00065] 図示のリソグラフィ装置は以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
【0060】
[00066] 1.ステップモードにおいては、マスクテーブルMT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに与えたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち1回の静止露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光ターゲット部分の最大サイズによって、1回の静止露光で像が形成されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
【0061】
[00067] 2.スキャンモードにおいては、マスクテーブルMT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する(つまり1回の動的露光)。マスクテーブルMTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光ターゲット部分の最大サイズによって、1回の動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分の(スキャン方向における)高さが決まる。
【0062】
[00068] 3.別のモードでは、マスクテーブルMTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWTを移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に利用できる。
【0063】
[00069] 上述した使用モードの組合せ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。」
エ 「【0070】
[00076] レベル感知方法は、レベルセンサスポットLSSと呼ばれる少なくとも1つの感知区域を使用する。方法は、その区域の平均高さを測定するものである。実施形態では、5個、7個又は9個のスポットをまとめて使用する。
【0071】
[00077] 実施形態によれば、レベルセンサは、幾つかの測定放射ビームを同時に適用し、基板Wの表面に幾つかのレベルセンサスポットLSSを生成することができる。図1に示すように、レベルセンサは例えば列状の5つのレベルセンサスポットLSSを生成することができる。レベルセンサスポットLSSを生成は、矢印A(操作方向)で示されたように基板Wとレベルセンサを相互に対して相対的に移動させることにより、測定される基板Wの区域(例えばターゲット部分C)をスキャンする。
【0072】
[00078] 基板W上のレベルセンサスポットLSSの位置に応じて、選択機構が1つ又は複数のレベルセンサスポットLSSを選択し、これは測定ターゲット区域Cの高さデータを導き出すために適用可能である。選択されたレベルセンサスポットLSSに基づき、レベルプロフィールを計算することができる。
【0073】
[00079] 図示された装置は、様々な方法で使用することができる。例えばステップモードでは、マスクテーブルMT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに与えたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち1回の静止露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、1回の静止露光で像が形成されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
【0074】
……
【0083】
[00089] レベルセンサLSは概ね、基板Wの例えば5mm2(例えば2.8×2.5mm)など、1~10mm2という1つ又は複数の小さい区域(レベルセンサスポットLSS)の垂直位置を測定する。図2に示すレベルセンサLSは、放射ビーム16を生成する放射源、光ビーム16を基板Wに投影する投影光学系(図示せず)、検出光学系(図示せず)及びセンサ又は検出器を備える。レベルセンサは、投影部分2及び検出部分15を備える。
【0084】
[00090] LSSを生成はLSSグリッドを規定する。LSSを生成グリッドは区域の別個のセットであり、区域毎に高さ測定を実行する。高さ測定値は、グリッド位置に従って収集及び/又は記憶することができる。例示的なLSSを生成グリッドが図5に図示されている。
【0085】
[00091] 検出部分15は高さに依存する信号を生成し、これは処理装置8に供給される。処理装置8は、高さ情報を処理して、測定高さマップを構築するように構成される。測定された高さのマップは、LSSグリッドに対応する分解能を有する。このような高さマップは、処理装置8によってメモリ10に記憶し、露光中に使用することができる。
【0086】
……
【0099】
[00105] プロセススタックデータは、実施形態によると基板表面上又はその付近に形成された層の位置及び厚さ、例えば図4の層105、106の層厚さに関するデータを含む。プロセススタックデータによって、図4に示すような効果を計算するためにシミュレーションソフトウェアが計算することができる。」
オ 図1は、以下のものである。
カ 図2は、以下のものである。
キ 図4は、以下のものである。
(2)引用文献1に記載された発明
ア 上記(1)アの記載から、以下のことが理解できる。
(ア)「予め割り出された補正高さ」とは、メモリ内に格納された「プロセススタックデータ」に基いて計算した値(以下、単に、「補正高さ」という。)であること。
(イ)「レベルセンサ」は、「高さ測定値」を生成すること(請求項13を参照。)。
(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、
引用文献1には、以下の「リソグラフィ投影装置」(請求項9-10)が記載されているものと認められる。
「リソグラフィ投影装置であって、
パターン付き放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持するように構成された支持体と、
基板を保持するように構成された基板テーブルと、
前記パターン付き放射ビームを前記基板のターゲット部分に投影するように構成された投影システムと、
前記基板の少なくとも一部の高さ測定を実行して、前記投影システムの焦点面に対する前記基板のターゲット部分の配置に使用する高さ測定値を生成するレベルセンサと、
前記投影システムに対して前記基板テーブルを配置するアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御して、補正した高さ測定値に従って前記投影システムの前記焦点面に前記基板の前記ターゲット部分を配置するように構成された制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記高さ測定値を補正高さで補正する処理装置を備え、
前記補正高さは、
メモリ内のプロセススタックデータに基いて計算した値である、リソグラフィ投影装置。」
イ 上記(1)イの記載を踏まえて、図4を見ると、以下のことが理解できる。
(ア)基板上には、複数の界面や凹凸があり、製造プロセスを考慮しないと、反射光から望ましい高さ120の近似値を提供することができないこと。
(イ)上記ア(ウ)の「プロセススタックデータ」とは、レジスト層だけではなく、酸化膜や電極層等を含むスタックデータであってもよいこと。
なお、基板上に形成される層について、必要ならば、下記の文献を参照。
特開平11-233432号公報(図3)
特開平11-191522号公報(図20)
特開平3-89511号公報(第3頁右上欄)
ちなみに、特開平11-191522号公報の図20は、以下のものである。
ウ 上記(1)ウの記載から、以下のことが理解できる。
(ア)上記ア(ウ)の「パターニングデバイス」とは「集積回路パターン付き放射ビームを形成することができるマスク」であり、同様に、「支持構造」とは「マスクテーブル」であること。
(イ)上記ア(ウ)の「リソグラフィ装置」は、スキャンモードで使用してもよいこと。
なお、「スキャンモード」について、必要ならば、下記の文献を参照。
特開2011-187930号公報(図2を参照。)
ちなみに、図2は、以下のものである。
エ 上記(1)エの記載を踏まえて、図1及び図2を見ると、以下のことが理解できる。
(ア)上記ア(ウ)の「レベルセンサ」は、投影部分と検出部分を備え、検出部分は高さに依存する信号(高さ測定値)を生成すること。
(イ)上記ア(ウ)の「レベルセンサ」は、複数のレベルセンサスポットを生成し、基板上のレベルセンサスポットの位置に応じて、選択機構が1つ又は複数のレベルセンサスポットを選択して、ターゲット部分の高さ測定値を導き出すこと。
なお、「レベルセンサ」の動作について、必要ならば、下記の文献を参照。
特開2008-160110号公報(図3a及び図3bを参照。)
ちなみに、図3は、以下のものである。
(ウ)上記ア(ウ)の「処理装置」は、測定高さマップを構築すること。
オ 上記ウ及びエからして、
上記ア(ウ)の「リソグラフィ投影装置」は、
(ア)「複数のレベルセンサスポットを生成し、基板上のレベルセンサスポットの位置に応じて、選択機構が1つ又は複数のレベルセンサスポットを選択して、ターゲット部分の高さ測定値を導き出すレベルセンサ」と、
(イ)「アクチュエータを制御して、『測定高さマップ』に従って投影システムの焦点面に基板のターゲット部分を配置するように構成された制御装置」と、
(ウ)「『高さ測定値』を『補正高さ』で補正して『測定高さマップ』を構築する処理装置」と、を備えているものと認められる。
カ 上記アないしオからして、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「スキャンモードで使用されるリソグラフィ投影装置であって、
集積回路パターン付き放射ビームを形成することができるマスクを支持するように構成されたマスクテーブルと、
基板を保持するように構成された基板テーブルと、
前記パターン付き放射ビームを前記基板のターゲット部分に投影するように構成された投影システムと、
複数のレベルセンサスポットを生成し、基板上のレベルセンサスポットの位置に応じて、選択機構が1つ又は複数のレベルセンサスポットを選択して、ターゲット部分の高さ測定値を導き出すレベルセンサと、
前記投影システムに対して前記基板テーブルを配置するアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御して、測定高さマップに従って前記投影システムの前記焦点面に前記基板の前記ターゲット部分を配置するように構成された制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記高さ測定値を補正高さで補正して前記測定高さマップを構築する処理装置を備え、
前記補正高さは、
メモリ内のプロセススタックデータに基いて計算した値である、リソグラフィ投影装置。」
2 引用文献2
(1)同じく、査定の拒絶の理由において、引用文献2として引用された特開平9-45608号公報(以下「引用文献2」という。)には、図とともに以下の記載がある。
ア 「【0009】
またレジスト表面を確実にとらえる様にセンサーを構成したとしても次のような場合その表面に沿って補正を行った場合かえってデフォーカスが発生する場合がある。即ち、メモリーなどの露光域内の構成は大きく分けるとメモリーセルの部分と周辺回路の部分とからなり一般的にクリティカルな解像性能を要求される露光領域はメモリーセルの部分に集中している。256Mのチップを例にとるとクリティカルな線幅転写が要求されるメモリーセル領域とメモリーセル領域を分割する様にたて・よこに走るルールの緩い周辺回路部分からなっている。この境界領域を拡大したのが図4(a),(b)である。セル部分と周辺回路部分はCMP(chemical mechanical polishing)やリセスアレイ形成法などにより平坦化が進められているが1um程度の段差が残ってしまう。今図4(a)に示す様にこの領域をスキャンしながらZ方向の補正を計測値どうり行う場合、即ちスリットの露光像面をレジスト表面に常にトラッキングさせる場合、スリットのスキャン方向の幅即ち短辺が5mmに対して周辺回路部分が2mmあるとすると段差がある周辺回路の両脇にあるメモリーセルの各々2mmの領域(図4(a)のハッチング部分)で1um程度のデフォーカスが発生することになる。周辺回路の線幅管理はメモリーセルのそれに比べ緩くなっているためフォーカス深度もそれに応じて拡大している。この点を考慮すれば実段差(パターン構造)に露光像面を追従させることは好ましくなく段差データを補正量として管理する方が精度的に有利であると考えられるが現状ではオフセット管理および補正の方法が確立されていない。」
イ 「【0032】
次に、本発明の面位置検出方法によりウエハー4の被露光領域の位置を検出する方法をのべる。
【0033】ウエハー4の被露光領域のZ方向の位置即ち像面位置に対する位置(Z)および傾き(α,β)のずれを検出するためにはウエハー4の表面を正確に計測するとともに照明領域形状と被露光領域のパターン構造(実際の段差)との関係も考慮しなければならない。前者の表面を正確に計測するという目的に対して光学方式の検出系を用いた場合次のような検出誤差の要因が考えられる。即ちウエハー4のレジスト表面で反射した光とウエハー4の基板面で反射した光との干渉の影響である。その影響は広い意味でのパターン構造である基板面の材質により変化しAlなどの高反射の配線材料では無視できない量となる。また静電容量センサーをウエハー面位置検出センサーとして使用した場合においては、高速素子や発光ダイオードの基板として使用するGaAsウエハーでは誘電体であるがためSiウエハーとは異なり大きな計測オフセットを持つことが知られている。また計測誤差の他の例として被露光領域のパターン構造(実際の段差)の考慮をあげたが、これは先にも述べたとうり実段差に露光像面を追従させることは好ましくなく、図4(b)に示すように段差データを補正量として管理する方が精度的に有利である。」
ウ 図4は、以下のものである。
(2)引用文献2に記載された技術事項
ア 上記(1)アの記載を踏まえて、図4(a)を見ると、以下のことが理解できる。
(ア)メモリーなどの露光域内の構成は大きく分けると「メモリーセル部分」と「周辺回路の部分」とからなること。
以下、「セル領域」及び「周辺領域」という。
(イ)「セル領域」には、クリティカルな線幅転写が要求されること。
つまり、「セル領域」に、微細な配線パターンを形成する必要のあることが理解できる。
(ウ)「周辺領域」は、「セル領域」と比べて、クリティカルな線幅転写は要求されないこと。
(エ)「周辺領域」に対して、スリットの露光像面を追随させると、配線材料に起因する段差により、スリットの大きさ(つまり、スキャン方向の、開口部の長さ)によっては、「セル領域」においてデフォーカスが発生すること。
イ 上記(1)イの記載を踏まえて、図4(b)を見ると、以下のことが理解できる。
「周辺領域」に対して、スリットの露光像面を追従させないことにより、デフォーカスの発生を防止し、「セル領域」に対する露光が適切になされること。
ウ 上記ア及びイの検討からして、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2に記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「セル領域及び周辺領域のレジスト層に対して、スリットの露光像面をスキャンさせる際に、
配線材料の段差により、スリットの大きさによっては、
クリティカルな線幅転写が要求されるセル領域にデフォーカスが発生することから、
クリティカルな線幅転写が要求されない周辺領域のレジスト層に対して、スリットの露光像面を追随させないこと。」
第4 対比・判断
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「投影システム」は、本願発明の「光学投影システム」に相当する。
(2)引用発明の「スキャンモードで使用されるリソグラフィ投影装置」は、「投影システム」を備えているから、本願発明の「光学投影システムを用いて基板上にパターンを適用するためのリソグラフィ装置」に相当する。
(3)引用発明の「複数のレベルセンサスポットを生成し、…高さ測定値を導き出すレベルセンサ」は、本願発明の「基板における複数の位置で基板の表面の高さに関連した測定信号を得る光学レベルセンサ」に相当する。
(4)引用発明の「制御装置」は、「高さ測定値を補正高さで補正して測定高さマップを構築する処理装置」を備えているから、本願発明と引用発明とは、「複数の位置について測定信号を局所高さ値に変換することで基板の高さマップを導出するプロセッサを含む」点で一致する。
(5)引用発明の「アクチュエータを制御して、測定高さマップに従って投影システムの焦点面に基板のターゲット部分を配置するように構成された制御装置」は、本願発明の「高さマップを用いて投影システムの合焦を制御するコントローラ」に相当する。
(6)以上のことから、本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。
<一致点>
「光学投影システムを用いて基板上にパターンを適用するためのリソグラフィ装置であって、
前記パターン適用の前に動作可能であり、前記基板における複数の位置で前記基板の表面の高さに関連した測定信号を得る光学レベルセンサと、
前記複数の位置について前記測定信号を局所高さ値に変換することで前記基板の高さマップを導出するプロセッサと、
前記パターンを適用する場合に前記高さマップを用いて前記投影システムの合焦を制御するコントローラと、を含む、リソグラフィ装置。」
(8)一方で、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点>
本願発明は、
ア 「プロセッサ及びコントローラが、基板に適用された処理に関する情報を用いて前記基板の少なくとも第1及び第2の領域を画定すると共に、測定信号を用いて前記投影システムの合焦を制御する方法を領域間で変動させ」、
イ 「前記基板に適用された処理に関する前記情報が、1つ以上の以前にパターニングが行われた層のレイアウト情報を含み、前記第1及び第2の領域の境界を画定するために用いられ、
前記レイアウト情報が、前記境界の位置を画定するために用いられる」のに対して、
引用発明は、そのようなものであるか否か不明である点。
2 判断
(1)上記<相違点>について検討する。
ア 引用発明の「リソグラフィ投影装置」は、スキャンモードで使用されるから、スリットの露光像面が「ターゲット部分」を連続的に照射するものであるところ、
引用文献2には、下記の「引用文献2に記載の技術事項」が記載されている。
「セル領域及び周辺領域のレジスト層に対して、スリットの露光像面をスキャンさせる際に、
配線材料の段差により、スリットの大きさによっては、
クリティカルな線幅転写が要求されるセル領域にデフォーカスが発生することから、
クリティカルな線幅転写が要求されない周辺領域のレジスト層に対して、スリットの露光像面を追随させないこと。」
イ 引用発明と上記「引用文献2に記載の技術事項」とは、「回路パターン」を形成するためのレジスト層に対して、スキャンモードで露光する際の合焦制御技術に関するものである点で共通する。
ウ してみると、引用発明の「ターゲット部分」においても、「クリティカルな線幅転写が要求される領域」においてデフォーカスが発生することは十分に予測されることから、「周辺領域」のレジスト層に対してスリットの露光像面を追随させないようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、引用文献1の「【0099】…プロセススタックデータは、実施形態によると基板表面上又はその付近に形成された層の位置及び厚さ、例えば図4の層105、106の層厚さに関するデータを含む。」との記載からして、引用発明の「プロセススタックデータ」には、「ターゲット部分」の各層の配置に関するデータが含まれているものと解され、このデータに基づいて、「レイアウト情報」を構築し、「クリティカルな線幅転写が要求される領域」を画定することは、適宜なし得る設計事項である(相違点のアを充足する。)。
エ 上記ウのようにした引用発明においては、
「プロセススタックデータ」は、「クリティカルな線幅転写が要求され領域」と「クリティカルな線幅転写が要求されない領域」の境界を画定するために用いられ、及び境界の位置を画定するために用いられることになる(相違点のイを充足する。)。
オ 以上の検討によれば、引用発明において、上記<相違点>に係る本願発明の構成を備えることは、当業者が上記「引用文献2に記載の技術事項」に基いて容易になし得たことである。
(2)効果
本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び上記「引用文献2に記載の技術事項」から予測し得る範囲内のものである。
3 審判請求書における主張
(1)請求人は、審判請求書において、以下のように主張するので、この点について検討する。
「実際に、引用文献2には、メモリーセル領域と周辺回路部分とが記載されておりますが、メモリーセル領域と周辺回路部分との境界の位置を画定することについて全く記載されておりません。」(第8頁後段)
しかしながら、「メモリーセル領域」と「周辺回路部分」を区別するためには、両者の境界を画定する必要のあることは明らかである。
そして、引用発明の「プロセススタックデータ」を利用することは、上記「2 判断」で検討したように、当業者が容易になし得たことである。
(2)よって、請求人の主張は、上記「2 判断」の判断を左右するものではない。
4 まとめ
本願発明は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-001564