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特許拒絶査定不服審判

2019-000808

レーザー加工装置

審判番号
2019-000808
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-186235外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年01月22日
審決日
2019年09月30日
公報発行日
2019年11月29日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項
データ出所
審決公報(SGML)

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特願2014-186235「レーザー加工装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月21日出願公開,特開2016- 58684,請求項の数(1)〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 本願は,平成26年9月12日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 3月29日付け:拒絶理由通知書 平成30年 5月31日  :意見書,手続補正書の提出 平成30年10月12日付け:拒絶査定 平成31年 1月22日  :審判請求書,手続補正書の提出 2 原査定の概要 原査定(平成30年10月12日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1に係る発明は,以下の引用文献1,2に記載された発明及び引用文献3に記載された周知技術に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2012-125781号公報 2.実願昭61-146101号(実開昭63-51406号)のマイクロフィルム 3.特開2010-176852号公報(周知技術を示す文献) 3 本件補正について (1) 本件補正の内容 ア 平成31年1月22日提出の手続補正書により補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲の請求項1は,以下のとおりである。 「【請求項1】 複数のデバイスが表面に配列されたウェーハの隣接する該デバイスを隔てる分割予定ラインに該ウェーハを透過する波長のレーザー光線を照射して,ウェーハの内部に所定の長さで連続する改質層を形成するレーザー加工装置であって, ウェーハを保持するチャックテーブルと, 該チャックテーブルに保持されたウェーハに該レーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と, 該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを加工送り方向及び割り出し送り方向に相対移動させる移動手段と, 該チャックテーブルに保持されたウェーハを撮像した撮像画像を表示する表示手段と, ウェーハを加工する加工条件を入力する入力手段と, 該入力手段に入力された該加工条件を記憶する記憶手段と, 制御手段と,を備え, 該表示手段には,該撮像画像に重なる目印部が表示され, 該制御手段は,該撮像画像に重なる該目印部が該表示手段に表示された状態で該目印部により指定される該撮像画像の位置を該レーザー加工装置の座標に変換し,該改質層が形成される分割予定ラインの始点又は終点として該記憶手段に記憶させることを特徴とするレーザー加工装置。」 イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりである。(下線は,補正箇所である。) 「【請求項1】 複数のデバイスが表面に配列されたウェーハの隣接する該デバイスを隔てる分割予定ラインに該ウェーハを透過する波長のレーザー光線を照射して,ウェーハの内部に所定の長さで連続する改質層を形成するレーザー加工装置であって, ウェーハを保持するチャックテーブルと, 該チャックテーブルに保持されたウェーハに該レーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と, 該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを加工送り方向及び割り出し送り方向に相対移動させる移動手段と, 該チャックテーブルに保持されたウェーハを撮像した撮像画像を表示する表示手段と, ウェーハを加工する加工条件を入力する入力手段と, 該入力手段に入力された該加工条件を記憶する記憶手段と, 制御手段と,を備え, 該表示手段には,該撮像画像に重なる目印部が表示され, 該制御手段は,該撮像画像に重なる該目印部が該表示手段に表示された状態で該目印部により指定される該撮像画像の位置を該レーザー加工装置の座標に変換し,該改質層が形成される分割予定ラインの始点又は終点として該記憶手段に記憶させ,全ての分割予定ラインの始点及び終点が設定された後に該始点及び該終点に従い該レーザー光線の照射と非照射とを切り替えて該改質層を形成することを特徴とするレーザー加工装置。」 (2) 補正の適否について 本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である制御手段の動作について,上記のとおり限定を付加するものであって,本件補正前の請求項1に記載された発明と本願発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 したがって,本件補正は適法になされたものである 。 4 引用文献,引用発明等 (1) 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 割り出し方向にそれぞれの位置がばらつき加工方向に平行に延びた複数の被加工領域が断続的に形成されてなるストリートを有するワークを該ストリートに沿って分割加工する加工方法であって, レーザー光線の焦点をワーク内部に合わせ,該ワークとレーザー光線の照射位置とを相対的に加工送り方向に移動させて該被加工領域に沿って改質層を形成する改質層形成工程と, 該改質層形成工程の後に,ワークに外力を与えて該改質層に沿ってワークを分割する分割工程と, を含み 該改質層形成工程は, 該被加工領域の該割り出し方向と該加工方向との座標をレーザー加工装置の記憶手段に記憶する記憶工程と, 該記憶工程の後に,該記憶手段に記憶された該被加工領域の座標に基づいて該被加工領域へレーザー光線の照射を行うレーザー照射工程と, 該ストリートを構成する一本の被加工領域にレーザー光線を照射し終えたら,レーザー光線の照射位置が次の被加工領域が存在する該加工方向の位置の座標に移動するまでの間レーザー光線の照射を停止するレーザー照射停止工程と, 該レーザー照射停止工程の間に,次に加工すべき被加工領域が存在する該割り出し方向の位置の座標にレーザー光線の照射位置を一致させるように補正する補正工程と, を含み, 該レーザー照射工程と該レーザー照射停止工程と該補正工程とを繰り返しながら断続的に該被加工領域へのレーザー光線の照射を行う加工方法。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は,各種被加工物の被加工領域にレーザー光線を照射して被加工領域に沿って内部に改質層を形成し,被加工物に外力を加えることにより改質層に沿って分割加工を行う方法に関する。 【背景技術】 【0002】 ウェーハ状の被加工物(ワーク)を分割して個片化する方法として,レーザー光をワークの内部に集光して切断の起点となる改質層を形成し,改質層に外力を加えることにより個々のチップに分割する方法が実用に供されている(例えば特許文献1参照)。 【0003】 このようなレーザー加工を行うレーザー加工装置においては,ワークの直線上の被加工領域の延長線上にレーザー照射ヘッドの位置をあわせ,ワークとレーザーレーザー照射ヘッドとを加工方向に相対移動させる加工送りをしながら,レーザー照射ヘッドからレーザー光を照射して内部に集光することにより,被加工領域に沿ってワークの内部に改質層を形成する。また,1本の被加工領域を加工した後は,レーザー照射ヘッドの位置を次の加工対象の被加工領域の延長線上にあわせ,同様の加工を行っている。このように,1度の加工送りで1本の被加工領域を加工することとしている。レーザー加工装置においては,レーザー光を断続的に発振することにより,断続的なレーザー加工を行うこともできる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特許第3408805号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかし,ワークの中には,被加工領域が一直線上に形成されていないものもある。このようなワークは,1度の加工送りで加工できる部分が少なく,すべての被加工領域を加工するには,レーザー照射ヘッドの位置を調整しながら何度も加工送りをしなければならないため,加工に多大な時間を要していた。 【0006】 本発明は,このような事実に鑑みてなされたものであって,その技術的課題は,被加工領域が一直線上に形成されていないワークの当該被加工領域に効率よくレーザー加工による改質層を形成できるようにすることにある。」 ウ 「【0010】 図1に示すレーザー加工装置1は,保持手段2に保持された被加工物(ワーク)Wに対して加工手段3からレーザービームを照射してワークWの加工を行う装置である。保持手段2は,加工送り機構4によってX軸方向(加工方向)に送られるとともに,割り出し送り機構5によってY軸方向(割り出し方向)に送られる構成となっている。 【0011】 保持手段2は,ワークWが載置され吸引される保持面20と,保持面20の外周側に複数配置され,テープTを介してワークWと一体化されたフレームFを固定するクランプ部21とを有している。クランプ部21は,水平方向の回転軸を中心として所定角度回動する押さえ部210を備えている。 【0012】 加工手段3は,装置後端部に設けられた壁部10に固定されており,下方に向けてレーザービームを照射するレーザー照射ヘッド30を備えている。 【0013】 加工送り機構4は,X軸方向に延びるボールネジ40と,ボールネジ40と平行に配設されたガイドレール41と,ボールネジ40の一端に連結されボールネジ40を回動させるパルスモータ42と,下部がガイドレール41に摺接するとともにボールネジ40に螺合する図示しないナットを内部に備えたスライド板43とを備え,ボールネジ40の回動にともないスライド板43がガイドレール41にガイドされてX軸方向に移動する構成となっている。スライド板43には,内部にパルスモータを備えた回転駆動部44が固定されており,回転駆動部44は,保持手段2を所定角度回転させることができる。 【0014】 割り出し送り機構5は,Y軸方向に延びるボールネジ50と,ボールネジ50と平行に配設されたガイドレール51と,ボールネジ50の一端に連結されボールネジ50を回動させるパルスモータ52と,下部がガイドレール51に摺接するとともにボールネジ50に螺合する図示しないナットを内部に備えたスライド板53とを備え,ボールネジ50の回動にともないスライド板53がガイドレール51にガイドされてX軸方向に移動する構成となっている。スライド板53には加工送り機構4が配設されており,スライド板53のY軸方向の移動にともない加工送り機構4も同方向に移動する構成となっている。 【0015】 加工送り機構4のパルスモータ42及び割り出し送り機構5のパルスモータ52は,制御手段60から送出されるパルス信号によって制御される。制御手段60は記憶手段61に接続されており,制御手段60は,記憶手段61の記憶内容を参照してパルスモータ42,52を制御することができる。 【0016】 次に,このように構成されるレーザー加工装置1を用いて,図2に示すワークWをレーザー加工する場合について,図3のフローチャートを参照して説明する。なお,ワークWは特に限定はされないが,例えばシリコンウェーハ,ガリウム砒素,シリコンカーバイド等の半導体ウェーハや,チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材,半導体製品のパッケージ,セラミックス,ガラス,サファイア(Al2O3)系の無機材料基板,液晶ディスプレイドライバー等の各種電子部品,さらには,ミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料が挙げられる。図1に示したように,ワークWはテープTに貼着され,テープTの周縁部に貼着されたリング状のフレームFによって支持され,ワークWは保持面20に吸着され,フレームFはクランプ部24に固定される。 【0017】 図2に示すように,ワークWの表面W1には,加工方向に平行に延びる複数の第1の被加工領域7a~7nと,加工方向に対して水平方向に直交する複数の第2の被加工領域8と,第1の被加工領域7a~7nと第2の被加工領域8との交点同士を結ぶ複数の第3の被加工領域9とが形成されている。複数の第1の被加工領域7a~7n,第2の被加工領域8及び第3の被加工領域9は,断続的に形成されている。また,第1の被加工領域7a~7n,第2の被加工領域8及び第3の被加工領域9のそれぞれは,直線上に形成されている。2本の第1の被加工領域と2本の第2の被加工領域8と4本の第3の被加工領域9とによって囲まれた部分が,長方形の四隅を直線状に切り落とした形状のチップCとなっている。 【0018】 複数の第1の被加工領域7a~7nは,それぞれは一直線上に形成されているが,保持手段2に保持された状態において割り出し方向に位置がばらついている。複数の第2の被加工領域8も,それぞれは一直線上に形成されているが,加工方向にそれぞれの位置がばらついている。すなわち,複数の第1の被加工領域7a~7nは,それぞれのY座標が異なり,複数の第2の被加工領域8は,それぞれのX座標が異なる。 【0019】 1 改質層形成工程 このように構成されるワークWについて,最初に,第1の被加工領域7a~7nの位置情報を図1に示した記憶手段61にそれぞれ記憶させる。第1の被加工領域7a~7nの個々の位置情報は,X座標(加工方向の座標)及びY座標(割り出し方向の座標)によって特定される。かかる位置情報の入力及び記憶手段61への記憶は,予め把握されているワークWの仕様に基づき,例えば図示しないキーボード等の入力手段を用いて行うことができる。また,図示しない撮像手段によってワークWを撮像し,第1の被加工領域を認識して記憶手段61に記憶させることもできる。なお,記憶工程では,第2の被加工領域8及び第3の被加工領域9のX座標及びY座標についても記憶手段61に記憶させてもよい。 【0020】 制御手段60は,記憶手段61に位置情報を記憶させた第1の被加工領域7a~7nのうち,そのY座標が比較的近接するもの同士を連結することにより,レーザー照射位置の軌道を想定する。かかる軌道をストリートと称する。図2の例では,3本のストリートS1,S2,S3が想定されており,ストリートS1には第1の被加工領域7a,7b,7c,7dが含まれ,ストリートS2には第1の被加工領域7e,7f,7g,7h,7iが含まれ,ストリートS3には第1の被加工領域7j,7k,7l,7m,7nが含まれている。すなわち,これらのストリートS1,S2,S3は,割り出し方向にそれぞれの位置がばらつき加工方向に平行に延びた複数の被加工領域が断続的に形成されてなるストリートとなる。 【0021】 直線状に形成された個々の第1の被加工領域7a~7nの両端は,レーザー光線照射の開始点となる始点と,レーザー光線照射の停止点となる終点とを有している。例えば,第1の被加工領域7aの両端は,始点7a0と終点7a1であり,第1の被加工領域7bの両端は,始点7b0と終点7b1である。 【0022】 1本のストリートを構成する被加工領域のうち,加工方向に隣り合う2つの被加工領域は,互いにY座標が異なるため,隣り合う第1の被加工領域7aの終点7a1と第2の被加工領域7bの始点7b0とを結ぶ直線は,加工方向に対して平行にはならない。したがって,レーザー光線照射時は,保持手段2のY方向の位置を補正することにより,レーザー照射ヘッド30がストリートS1に沿って相対移動するようにする。かかる補正量は,オペレータが入力手段から入力して記憶手段61に設定する。どのようにして複数の被加工領域をまとめてストリートを形成するかによって補正量が異なってくるが,ここでは,オペレータが予め把握しているワークWの仕様に基づき,オペレータ自身がどのようにして第1の被加工領域をまとめてストリートを想定するかを決定することとする(記憶工程,ステップS1)。 【0023】 記憶工程の後,記憶手段61に記憶された第1の被加工領域7a~7nの座標に基づいて,各被加工領域へのレーザー光線の照射を行い,第1の被加工領域7a~7nに対してレーザー光線を照射し,第1の被加工領域7a~7nに沿ってワークWの内部に改質層を形成する。なお,改質層とは,密度,屈折率,機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。例えば,a)溶融処理領域,b)クラック領域,絶縁破壊領域,c)屈折率変化領域等があり,これらが混在した領域もある。 【0024】 まず,図2に示したストリートS1の延長線上にレーザー照射ヘッド30が位置するようにする。具体的には,図1に示した保持手段2においてワークWを保持し,割り出し送り機構5が保持手段2をY方向に移動させることにより,例えばストリートS1に含まれる被加工領域7aとレーザー照射ヘッド30とのY座標を一致させる。 【0025】 そして,図1に示した加工送り機構4がワークWを保持した保持手段2を加工方向に送り,図4に示すように,被加工領域7aの始点7a0の直下にレーザー照射ヘッド30が位置した時に,レーザー照射ヘッド30からレーザー光線30aの照射を開始し,ワークWの内部にレーザー光線を焦点をあわせて集光する(レーザー照射工程)。そして,レーザー光線を照射したまま,ワークWとレーザー光線の照射位置とを相対的に加工送り方向に移動させる加工送りを続行し,レーザー照射ヘッド30によるレーザー光線の照射位置が第1の被加工領域7aの終点7a1位置するまでレーザー光線の照射を続ける。このようにしてレーザー光線を照射すると,被加工領域7aに沿って改質層300が形成される(レーザー照射工程,ステップS2)。 【0026】 レーザー照射ヘッド30によるレーザー光線の照射位置が第1の被加工領域7aの終点7a1に位置した時点で,レーザー照射ヘッド30からのレーザー光線の照射を停止する。そして,レーザー照射ヘッド30によるレーザー光線の照射位置が,次の照射位置である第1の被加工領域7bの始点7b0に位置するまでの間,レーザー光線の照射を停止する。すなわち,ストリートS1を構成する一本の第1の被加工領域7aにレーザー光線を照射し終えたら,レーザー光線の照射位置が,次の第1の被加工領域7bが存在する加工方向の位置の座標である始点7b0に移動するまでの間,レーザー光線の照射を停止する(レーザー照射停止工程,ステップS3)。 【0027】 レーザー照射停止工程の間に,次に加工すべき第1の被加工領域が存在する割り出し方向の位置の座標にレーザー光線の照射位置を一致させる。すなわち,次に加工する第1の被加工領域7bの始点7b0のY座標と,レーザー照射ヘッド30によるレーザー光線の照射位置のY座標とを一致させる補正を行う。かかる制御は,記憶手段61に記憶されたX座標及びY座標の情報に基づき,制御手段60が割り出し送り機構5を制御することによって行われる。 【0028】 本実施形態では,記憶工程においてオペレータが補正量を入力手段から入力して記憶手段61に設定することとしたが,加工送り機構4による保持手段2の送り速度,隣り合う第1の被加工領域7a,7bの割り出し方向のずれ量,隣り合う第1の被加工領域7a,7bの加工方向の距離に基づき,最適な加工条件を制御手段60が算出してもよい。例えば,レーザー光線の照射を停止している間に保持手段2の送り速度を落として補正量を多くしてでもストリートの本数を減らして加工送りの回数を減らすか,多少はストリートの数が増えて加工送りの回数が増えたとしても,加工送りの速度を優先させるかなど,柔軟に対処することができる(補正工程,ステップS4)。 【0029】 このようにして,改質層形成工程では,レーザー照射工程とレーザー照射停止工程と補正工程とを繰り返しながら,断続的に,ストリートS1を構成する第1の被加工領域7a~7dへのレーザー光線の照射を行う。また,ストリートS2,ストリートS3についても同様に,レーザー照射工程とレーザー照射停止工程と補正工程とを繰り返しながら,断続的に第1の被加工領域7e~7i及び第一の被加工領域7j~7nに対してレーザー加工を行う。そうすると,第一の被加工領域7a~7nに沿って内部に改質層が形成される。 【0030】 次に,図1に示した保持手段2を90度回転させ,第1の被加工領域に対するレーザー照射と同様に,複数のストリートを想定し,レーザー照射工程とレーザー照射停止工程と補正工程とを繰り返しながら,すべての第2の被加工領域8に沿って断続的に内部に改質層を形成する。 【0031】 さらに,保持手段2を所定角度回転させ,第3の被加工領域9に沿って断続的に内部に改質層を形成する。こうして,すべての被加工領域に沿って改質層が形成される。 【0032】 以上のように,改質層形成工程では,複数の被加工領域の間に割り出し方向の位置ずれがある場合でも,加工送りの途中で割り出し方向の補正を行うことにより,一度の加工送りで複数の被加工領域にレーザー照射を行うことができるため,レーザー加工に要する時間を短縮することができる。」 (2) 上記記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されていると認められる。 ア 引用文献1に記載された発明は,各種被加工物の被加工領域にレーザー光線を照射して被加工領域に沿って内部に改質層を形成し,被加工物に外力を加えることにより改質層に沿って分割加工を行う方法に関するものであること。 イ ウェーハ状の被加工物(ワーク)を分割して個片化する方法として,レーザー光をワークの内部に集光して切断の起点となる改質層を形成し,改質層に外力を加えることにより個々のチップに分割する方法が実用に供されていること。 ウ ワークの中には,被加工領域が一直線上に形成されていないものもある。このようなワークは,1度の加工送りで加工できる部分が少なく,すべての被加工領域を加工するには,レーザー照射ヘッドの位置を調整しながら何度も加工送りをしなければならないため,加工に多大な時間を要していること。 エ 引用文献1に記載された技術は,被加工領域が一直線上に形成されていないワークの当該被加工領域に効率よくレーザー加工による改質層を形成できるようにすることを課題としたものであること。 オ 前記課題を解決する発明として,引用文献1の特許請求の範囲には,「割り出し方向にそれぞれの位置がばらつき加工方向に平行に延びた複数の被加工領域が断続的に形成されてなるストリートを有するワークを該ストリートに沿って分割加工する加工方法であって,レーザー光線の焦点をワーク内部に合わせ,該ワークとレーザー光線の照射位置とを相対的に加工送り方向に移動させて該被加工領域に沿って改質層を形成する改質層形成工程と,該改質層形成工程の後に,ワークに外力を与えて該改質層に沿ってワークを分割する分割工程と,を含み該改質層形成工程は,該被加工領域の該割り出し方向と該加工方向との座標をレーザー加工装置の記憶手段に記憶する記憶工程と,該記憶工程の後に,該記憶手段に記憶された該被加工領域の座標に基づいて該被加工領域へレーザー光線の照射を行うレーザー照射工程と,該ストリートを構成する一本の被加工領域にレーザー光線を照射し終えたら,レーザー光線の照射位置が次の被加工領域が存在する該加工方向の位置の座標に移動するまでの間レーザー光線の照射を停止するレーザー照射停止工程と,該レーザー照射停止工程の間に,次に加工すべき被加工領域が存在する該割り出し方向の位置の座標にレーザー光線の照射位置を一致させるように補正する補正工程と,を含み,該レーザー照射工程と該レーザー照射停止工程と該補正工程とを繰り返しながら断続的に該被加工領域へのレーザー光線の照射を行う加工方法。」が記載されていること。 カ レーザー加工装置1は,保持手段2に保持された被加工物(ワーク)Wに対して加工手段3からレーザービームを照射してワークWの加工を行う装置であり,保持手段2は,加工送り機構4によってX軸方向(加工方向)に送られるとともに,割り出し送り機構5によってY軸方向(割り出し方向)に送られる構成となっていること。 キ 加工送り機構4のパルスモータ42および割り出し送り機構5のパルスモータ52は,制御手段60から送出されるパルス信号によって制御され,制御手段60は記憶手段61に接続されており,制御手段60は,記憶手段61の記憶内容を参照してパルスモータ42,52を制御することができること。 ク ワークWの表面W1には,加工方向に平行に延びる複数の第1の被加工領域7a~7nと,加工方向に対して水平方向に直交する複数の第2の被加工領域8と,第1の被加工領域7a~7nと第2の被加工領域8との交点同士を結ぶ複数の第3の被加工領域9とが形成されていて,複数の第1の被加工領域7a~7n,第2の被加工領域8及び第3の被加工領域9は,断続的に形成されていること。 ケ 記憶工程は,X座標(加工方向の座標)およびY座標(割り出し方向の座標)によって特定される第1の被加工領域7a~7nの位置情報を記憶手段61にそれぞれ記憶させものであり,ここでは第2の被加工領域8及び第3の被加工領域9のX座標及びY座標についても記憶手段61に記憶させてもよいこと。 コ 記憶工程における位置情報の入力及び記憶手段61への記憶は,予め把握されているワークWの仕様に基づき,例えば図示しないキーボード等の入力手段を用いて行うことができ,また,図示しない撮像手段によってワークWを撮像し,第1の被加工領域を認識して記憶手段61に記憶させることもできること。 サ 記憶工程の後,記憶手段61に記憶された第1の被加工領域7a~7nの座標に基づいて,各被加工領域へのレーザー光線の照射を行い,第1の被加工領域7a~7nに対してレーザー光線を照射し,第1の被加工領域7a~7nに沿ってワークWの内部に改質層を形成すること。 シ レーザー照射工程において,加工送り機構4がワークWを保持した保持手段2を加工方向に送り,被加工領域7aの始点7a0の直下にレーザー照射ヘッド30が位置した時に,レーザー照射ヘッド30からレーザー光線30aの照射を開始し,ワークWの内部にレーザー光線を焦点をあわせて集光し,ストリートS1を構成する一本の第1の被加工領域7aにレーザー光線を照射し終えたら,レーザー照射停止工程に移行し,レーザー光線の照射位置が,次の第1の被加工領域7bが存在する加工方向の位置の座標である始点7b0に移動するまでの間,レーザー光線の照射を停止すること。 ス レーザー照射工程とレーザー照射停止工程と補正工程とを繰り返しながら第一の被加工領域7a~7nに沿って内部に改質層が形成されたあと,第2の被加工領域8および第3の被加工領域9に沿って断続的に内部に改質層を形成し,こうして,すべての被加工領域に沿って改質層が形成されること。 (3) 上記(2)アないしスから,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ワークの被加工領域にレーザー光線を照射して,ワークの内部に所定の長さで連続する改質層を形成するレーザー加工装置であって, ワークを保持する保持手段と, 該保持手段に保持されたワークに該レーザー光線を照射する加工手段と, 該保持手段と該加工手段とを加工送り方向及び割り出し送り方向に相対移動させる加工送り機構および割り出し送り機構と, ワークを加工する加工条件を入力する入力手段と, 該入力手段に入力された該加工条件を記憶する記憶手段と, 制御手段と,を備え, 該制御手段は,全ての被加工領域の始点及び終点が設定された後に該始点及び該終点に従い該レーザー光線の照射と非照射とを切り替えて該改質層を形成し, 記憶工程における位置情報の入力及び記憶手段への記憶は,予め把握されているワークの仕様に基づき,例えばキーボード等の入力手段を用いて行うことができ,また,撮像手段によってワークを撮像し,被加工領域を認識して記憶手段に記憶させることもできる, レーザー加工装置。」 (4) 引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「2.実用新案登録請求の範囲 被加工基板上のレーザ光の照射位置を可変させる可変手段と,前記可変手段を制御する制御手段とを有するレーザトリミング装置であつて,前記レーザ光の光軸と同軸上に設けられた前記可変手段によるレーザ光の照射位置をモニタ可能なモニタと,前記可変手段により可変された前記レーザ光の照射位置情報と,前記照射位置の軌跡情報とを記憶する記憶回路を設け,レーザトリミング加工前に予め前記モニタによるモニタを行いつつ前記制御手段によりレーザ光の照射位置を可変制御して照射開始位置及び終了位置情報,更には照射軌跡情報を前記記憶回路に格納しておき,前記記憶回路に記憶された前記照射開始位置及び終了位置情報と前記照射軌跡情報とによりレーザトリミング加工を行うようにしたことを特徴とするレーザトリミング装置。」(明細書第1ページ第4行-第2ページ第1行) イ 「第1図は本考案の一実施例を示すブロック図である。図において,レーザ発振器1から出射されたレーザ光は固定ミラー2と,X軸走査ミラー3と,Y軸走査ミラー5と,fθレンズ7とを介して被加工物8上に照射される。被加工物8上のレーザ光の照射位置は,レーザ光の光軸と同軸上に設けられたモニタ光によりビデオカメラ9で撮影され,十字線付加器10を経てモニタテレビ11に映し出される。 また,X軸走査ミラー3とY軸走査ミラー5とは夫々X軸ガルバノメータ4とY軸ガルバノメータ6とによってレーザ照射位置が検出されながら駆動され,レーザ光の照射位置をX軸方向とY軸方向とに移動させる。その移動量は,コンピュータ14からの指示によりコントローラ12がX軸ガルバノメータ4とY軸ガルバノメータ6とを用いて位置制御をして行われるものであり,X軸走査ミラー3とY軸走査ミラー5との角度の変化量に対応している。 コンピュータ14へのデータの入力はコンソール13によって行われ,そのデータの表示はディスプレイ15上に行われる。 第2図はコンソール13上のレーザ照射位置制御用のスイッチの構成を示す構成図である。図において,コンソール13上には位置決定スイッチ16と,X軸方向の方向指定スイッチ17,19と,Y軸方向の方向指定スイッチ18,20とが付加されて設置されている。方向指定スイッチ17,19を押下することにより,X軸走査ミラー3が駆動され,方向指定スイッチ18,20を押下することによりY軸走査ミラー5が駆動され,これによりレーザ照射位置が移動される。そのレーザ照射位置の移動は,ビデオカメラ9を介してモニタテレビ11の画面に表示され直接観察できる。」(第4ページ第17行-第6ページ第11行) ウ 「第3図はディスプレイ15の表示画面を示した図である。図において,ディスプレイ15の表示画面には,被加工物8の全体図21と,レーザ照射位置22と,ビームポジションオフセットの表示(レーザ照射位置のズレを表わす)と,トリミングデータ〔どの位置(スタートポイント)からどの位置(ファーストストップポイント)まで加工するのかを示す座標値を表わす。図において,R(1,1)は何番目のカットかを示し,この場合,レジスタ1の1番目のカットを示している〕とが表示されている。」(第6ページ第19行-第7ページ第9行) エ 「第5図はモニタテレビ11の表示画面を示す図である。図において,モニタテレビ11の表示画面には,ビデオカメラ9からの映像に十字線付加器10で付加されたクロスラインX軸23と,クロスラインY軸24とがビデオカメラ9からの映像とともに表示され,ビデオカメラ9はレーザ光の光軸と同軸上に設けられているので,クロスラインX軸23とクロスラインY軸24との交点がレーザ照射位置22となる。 次に,第1図~第5図を用いて本考案の一実施例の動作について説明する。 新規にトリミングデータを作成する場合,コンソール13によりコンピュータ14にカット形状やカット速度,あるいはレーザ周波数などのデータを入力しておき,図示せぬ載物台上に被加工物8をセットする。被加工物8上のレーザ照射位置22をモニタテレビ11で直接観察しながら,コンソール13に設置された方向指定スイッチ17~20を押下することにより,X軸走査ミラー3とY軸走査ミラー5とを駆動してレーザ照射位置22を適切な位置(正しい加工位置)に移動させる。 このとき,レーザ照射位置22はX軸ガルバノメータ4とY軸ガルバノメータ6とに検出されて,コントローラ12とコンピュータ14とを介してディスプレイ15上に常に座標表示され,被加工物8上におけるレーザ照射位置22を正確に把握できるので,レーザ照射位置22が被加工物8上の適切な位置にきたときに,位置決定スイッチ16を押下することによりコンピュータ14はこのときの座標をデータとして取込む。」(第7ページ第13行-第9ページ第3行) オ 「このように,被加工物8に照射されるレーザ光の光軸と同軸上に設けられたビデオカメラ9の映像をモニタテレビ11で観察しながら,方向指定スイッチ17~20の押下による位置制御を行い,位置決定スイッチ16を押下することによりコンピュータ14にその指定されたレーザ照射位置22の座標をデータとして取込むことによって,新規にトリミングデータを作成する場合には,加工開始点とカット方向,または,第1,第2,第3加工終了点および,カットの長さなどのトリミングデータを一度の処理動作で正確に得ることができる。」(第10ページ第10行-第11ページ第1行) (5) 引用文献3の記載事項 原査定に引用された上記引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は,例えば半導体デバイスの断面観察やTEM(透過電子顕微鏡)用試料の作製等に用いられ,集束イオンビームで試料を断面加工する方法及び断面観察試料の製造方法に関する。」 イ 「【0015】 以下,本発明の実施形態について,図面を参照して説明する。 図1は本発明の実施形態に係る断面加工方法の加工対象となる試料2の構成例を示す断面図である。 試料2は,半導体デバイス4の表面に反射防止層(BARC:Bottom Anti Reflective Coating)6を形成し,反射防止層6の表面に畝状にフォトレジストパターン8を形成した構成を有する。反射防止層6は有機被膜であり,フォトレジストの露光・現像時のパターン精度を向上させる。フォトレジストパターン8は,複数の線状の凸部が互いに離間しつつ平行に並んで構成されている。 又,フォトレジストパターン8より外側における半導体デバイス4の表面には,反射防止層6を貫き半導体デバイス4に一部到達する孔からなるアライメントマーク(位置合わせ部)9が形成されている。 なお,反射防止層6が特許請求の範囲の「有機物の層」に相当し,フォトレジストパターン8が特許請求の範囲の「有機物の構造」に相当する。有機物の層又は構造の他の例としては,Low-k膜等の各種有機被膜や構造が挙げられる。」 ウ 「【0020】 また,試料2に電子ビームやイオンビームを照射すると二次荷電粒子が生じ,二次荷電粒子検出器70で検出される。制御部90は,二次荷電粒子検出器70で検出された二次荷電粒子を輝度信号に変換して試料表面を表す画像データを生成し,この画像データを基に試料画像を生成する。試料画像は,制御部90に接続された表示装置(ディスプレイ)91に出力される。 そして,オペレータが試料画像上の所定の位置(上記したアライメントマーク9)を指定すると,制御部90は指定された座標を取得すると共に,試料2の断面加工位置とアライメントマーク9との位置関係に基づき,断面加工位置を算出する。そして,制御部90は,算出結果に基づいて試料ステージ60を移動させ,試料2の断面加工位置がイオンビームの照射領域内に配置されるようにする。断面加工位置とアライメントマーク9との位置関係は既知の情報として,予め記憶部93に格納されている。このようにして,試料2に電子ビームやイオンビームを照射せずに断面加工位置をイオンビームの照射領域内に移動させることができる。」 5 対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明とを対比すると,以下のとおりとなる。 上記4(2)アないしウの記載に照らして,引用発明はウェーハ状の被加工物(ワーク)の被加工領域に沿って改質層を形成して個々のチップに分割する発明であると解されるから,ワークの表面には複数のデバイスが配列され,チップに対応する領域に形成されたデバイスを隔てるように被加工領域が設定されていると認められる。よって,引用発明の被加工領域は,本願発明の分割予定ラインに相当する。 上記4(2)オおよびシの記載から,引用発明は,ワークの内部にレーザー光線を焦点をあわせて集光し,改質層を形成するものであるので,ワークを透過する波長のレーザー光線を照射していると認められる。 引用発明における「保持手段」,「加工手段」は,それぞれ,本願発明の「チャックテーブル」,「レーザー光線照射手段」に相当する。また,引用発明における「加工送り機構」および「割り出し送り機構」は,本願発明における「移動手段」に相当する。 上記4(2)ケおよびコの記載から,引用発明における「入力手段」は,X座標(加工方向の座標)及びY座標(割り出し方向の座標)によって特定される被加工領域の位置情報の入力および「記憶手段」への記憶を行う手段であるから,本願発明における「加工条件を入力する」「入力手段」に相当する。また,引用発明における「記憶手段」は被加工領域の位置情報を記憶するから,本願発明における「該入力手段に入力された該加工条件を記憶する」「記憶手段」に相当する。 上記4(2)ケの記載から,引用発明において,第1~第3の被加工領域のX座標及びY座標の記憶を行ってからレーザー光線の照射を開始しているから,引用発明においても,全ての被加工領域が設定された後に改質層を形成していると認められる。 上記4(2)キ,サ~スの記載から,引用発明における「制御手段」は,記憶手段の記憶内容を参照して加工送り機構および割り出し送り機構のパルスモータを制御して,レーザー照射工程とレーザー照射停止工程とを実施しており,また,引用発明において,「被加工領域の位置情報」には,その始点と終点の情報も当然含まれると認められるから,本願発明の「全ての分割予定ラインの始点及び終点が設定された後に該始点及び該終点に従い該レーザー光線の照射と非照射とを切り替えて該改質層を形成する」「制御手段」である点で一致する。 したがって,本願発明と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「複数のデバイスが表面に配列されたウェーハの隣接する該デバイスを隔てる分割予定ラインに該ウェーハを透過する波長のレーザー光線を照射して,ウェーハの内部に所定の長さで連続する改質層を形成するレーザー加工装置であって, ウェーハを保持するチャックテーブルと, 該チャックテーブルに保持されたウェーハに該レーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と, 該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを加工送り方向及び割り出し送り方向に相対移動させる移動手段と, ウェーハを加工する加工条件を入力する入力手段と, 該入力手段に入力された該加工条件を記憶する記憶手段と, 制御手段と,を備え, 該制御手段は,全ての分割予定ラインの始点及び終点が設定された後に該始点及び該終点に従い該レーザー光線の照射と非照射とを切り替えて該改質層を形成するレーザー加工装置。」 (相違点) 本願発明は,「チャックテーブルに保持されたウェーハを撮像した撮像画像を表示する表示手段」を備え,「該表示手段には,該撮像画像に重なる目印部が表示され」,「該撮像画像に重なる該目印部が該表示手段に表示された状態で該目印部により指定される該撮像画像の位置を該レーザー加工装置の座標に変換し,該改質層が形成される分割予定ラインの始点又は終点として該記憶手段に記憶させ」るものであるのに対し,引用発明は,記憶工程における位置情報の入力及び記憶手段への記憶は,予め把握されているワークの仕様に基づき,例えばキーボード等の入力手段を用いて行うことができ,また,撮像手段によってワークを撮像し,被加工領域を認識して記憶手段に記憶させることもできるとされている点。 (2)相違点についての判断 引用文献2には,載物台上にセットされた被加工物をビデオカメラで撮影した映像を表示するモニタテレビを備え,該モニタテレビの表示画面には,該ビデオカメラからの映像に十字線付加器で付加されたクロスラインX軸およびクロスラインY軸が,該ビデオカメラからの映像とともに表示されるレーザトリミング装置であって,載物台上に被加工物をセットし,被加工物上のレーザ照射位置をモニタテレビで直接観察しながら,コンソールに設置された方向指定スイッチを押下することにより,X軸走査ミラーとY軸走査ミラーとを駆動してレーザ照射位置を適切な位置(正しい加工位置)に移動させ,レーザ照射位置が被加工物上の適切な位置にきたときに,位置決定スイッチを押下することによりコンピュータがこのときの座標をデータとして取込む装置が記載されている。 しかしながら,引用文献2には,「該撮像画像に重なる該目印部が該表示手段に表示された状態で該目印部により指定される該撮像画像の位置を該レーザー加工装置の座標に変換し,該改質層が形成される分割予定ラインの始点又は終点として該記憶手段に記憶させ」るという構成は記載されていない。 同様に,引用文献3にも,「該撮像画像に重なる該目印部が該表示手段に表示された状態で該目印部により指定される該撮像画像の位置を該レーザー加工装置の座標に変換し,該改質層が形成される分割予定ラインの始点又は終点として該記憶手段に記憶させ」るという構成は記載されていない。 さらに,引用文献1に,記憶工程における位置情報の入力及び記憶手段への記憶は,予め把握されているワークの仕様に基づき,例えばキーボード等の入力手段を用いて行うことができ,また,撮像手段によってワークを撮像し,被加工領域を認識して記憶手段に記憶させることもできると記載されていることに照らして,引用文献1~3の記載事項及び技術常識を参酌しても,引用発明において,引用文献1に記載された前記方法ではなく,ことさら,「該撮像画像に重なる該目印部が該表示手段に表示された状態で該目印部により指定される該撮像画像の位置を該レーザー加工装置の座標に変換し,該改質層が形成される分割予定ラインの始点又は終点として該記憶手段に記憶させ」という構成を採用する動機を見いだすこともできない。 したがって,当業者といえども,引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項から,相違点に係る本願発明の「該撮像画像に重なる該目印部が該表示手段に表示された状態で該目印部により指定される該撮像画像の位置を該レーザー加工装置の座標に変換し,該改質層が形成される分割予定ラインの始点又は終点として該記憶手段に記憶させ」るという構成を容易に想到することはできない。 したがって,本願発明は,当業者であっても,引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。 6 むすび 以上のとおり,本願発明は,当業者が引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものではない。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。

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2019-000808

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