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特許無効審判

2018-800131

プログラマブル・コントローラにおける異常発生時にラダー回路を表示する装置

審判番号
2018-800131
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2000-097206外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
3700528
請求日
2018年11月22日
審決日
2020年03月30日
公報発行日
2022年01月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P1113.537-YAA(G05B) / P1113.841-YAA(G05B) / P1113.121-YAA(G05B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第1項、特許法第36条、特許法第126条、特許法第29条、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第3700528号発明「プログラマブル・コントローラにおける異常発生時にラダー回路を表示する装置」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第3700528号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり,訂正後の請求項1について訂正することを認める。 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第3700528号(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は,おおむね次のとおりである。 平成12年 3月31日 本件特許に係る出願 (特願2000-97206号) 平成17年 7月22日 設定登録(特許第3700528号) 平成27年 9月25日 本件特許に係る特許権侵害差止等請求事件 (大阪地方裁判所平成27年(ワ) 第8974号 原告・株式会社ジェイテクト 被告・三菱電機株式会社)の訴状送達 平成28年 7月29日 訂正審判請求書提出 (訂正2016-390101号) 同 年10月18日付け 審決(請求書に添付された訂正明細書の とおりに訂正することを認める。) 平成30年11月22日 本件無効審判請求書 (以下「請求書」という。)提出 同 年12月13日 特許権侵害差止等請求事件判決言渡 (被告は,別紙・・・の製品を生産し, 譲渡してはならない。・・・) 平成31年 2月12日 審判事件答弁書 (以下「答弁書」という。)提出 同 年 3月 8日付け 審理事項通知 同 年 4月 5日 [無効審判請求人]口頭審理陳述要領書 (以下「請求人要領書」という。)提出 同 年 4月19日 [無効審判被請求人]口頭審理陳述要領書 (以下「被請求人要領書」という。)提出 令和 元年 5月10日 口頭審理 同 年 7月 9日付け 審決の予告 同 年 9月17日 訂正請求書及び意見書(以下「意見書1」 という。)提出 同 年10月25日 弁駁書提出 同 年11月13日付け 訂正拒絶理由通知及び審尋 同 年12月18日 [無効審判請求人]回答書 (以下「請求人回答書」という。)提出 同 年12月19日 [無効審判被請求人]回答書 (以下「被請求人回答書」という。)及び 意見書提出 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 令和元年9月17日に提出された訂正請求書に係る訂正(以下「本件訂正」という。)は,本件特許の明細書を訂正請求書に添付した明細書のとおりに訂正することを求めるものであり,その内容は,次のとおりのものである(なお,下線は,訂正箇所を明確にするために当審で付した。)。 (1)訂正事項1 明細書の特許請求の範囲の請求項1に 「・・・ 前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムと, ・・・」 と記載されているのを, 「・・・ 前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムであって,当該異常現象が発生したのに対応して,前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラムと, ・・・」 に訂正する。 (2)訂正事項2 明細書の段落【0012】に 「・・・制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムと,・・・」 と記載されているのを, 「・・・制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムであって,当該異常現象が発生したのに対応して,前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラムと,・・・」 に訂正する。 2.訂正についての当審の判断 (1)願書に添付した明細書又は図面に記載された事項 (なお,下線は,理解を容易にするために当審で付した。以下同じ。) 「【0019】 【実施例】 図3は,プログラマブル・コントローラ20本体と操作盤10とで生産設備の一種である工作機械MTを意図したように動作させるシステムを示している。工作機械MTは,プログラマブル・コントローラ本体20と操作盤10とで制御されるために,プログラマブル・コントローラ本体20と操作盤10とでプログラマブル・コントローラが構成されていることになる。 【0020】 プログラマブル・コントローラ本体20はRAM23を有し,そのRAM23には図1に関連して説明した工作機械の制御用ラダープログラムと,異常モニタ用ラダープログラムが記憶されている。またRAM23の特定アドレスは,工作機械MTに内蔵されている入力要素群27と出力要素群28に対応して割当てられており,対応するアドレスに対応する入力要素群27と出力要素群28の状態を示すデータが記憶されるようになっている。プログラマブル・コントローラ本体20には,RAM23の他に,CPU21と,ROM22と,CPU21と工作機械MTを接続するI/O制御回路24と,CPU21と操作盤10を接続する通信I/F25が設けられている。CPU21がROM22に記憶されているシステムプログラムに従って動作することで,工作機械MTが工作機械制御用のラダープログラムに従って動作し,工作機械MTに内蔵されている入力要素群27と出力要素群28の状態を示すデータがRAM23の対応するアドレスに記憶される。」 「【0027】 工作機械MTがラダープログラムに従って制御されている間,プログラマブル・コントローラ本体20はRAM23に記憶されている異常モニタ用ラダープログラムを所定のタイムインターバル(例えば10ミリ秒間隔)で繰り返し実行しつづける。 【0028】 プログラマブル・コントローラ本体20が動作制御用のラダープログラムに従って工作機械MTを制御している間に,異常現象が発生することがある。例えば油圧回路や空圧回路のフィルタの目詰まり,電磁弁のソレノイドコイルの焼付き,スプールの作動不良,ポンプユニットの油量の減少,潤滑油の圧力低下,リミットスイッチの故障,パレット割出用の位置決めピンの挿入不良といった各種の異常現象が生じ得る。 【0029】 異常モニタ用ラダープログラムには,上記の異常現象が起こったときに,その異常現象の発生によって信号の状態を切換えるものを入力要素とし,異常の種類毎に予め割当てられている出力要素の作動状態を切換えるラダー回路が用意されており,このラダー回路によって,異常現象がおこると,おこった異常現象の種類に対応する出力要素の動作状態を切換える。これらの出力要素の動作状態が切換えられるのに対応して,その出力要素に対して予め割当てられているRAM23内のアドレスに記憶されているデータが書き換えられる。上記したように,異常モニタ用ラダープログラムは所定のタイムインターバルで繰り返し実行されていることから,異常が起こったときに上記の処理が行なわれる。 【0030】 図9は異常現象の種別に応じて割当てられているRAM23内の記憶内容を示している。出力要素EM600をオンさせる異常現象がおきると,その出力要素EM600に対応するアドレスに異常フラグ1を立てる。この出力要素EM600をオンさせる異常現象は,総合異常のうちのパレット異常である。同様の異常データテーブルが異常の種類ごとに用意されている。 【0031】 操作盤10は,所定のタイムインターバル(例えば100ミリ秒間隔)で,プログラマブル・コントローラ本体20の,異常時に動作状態が切換えられる電磁リレー等に対応するRAM23のアドレスの内容を読み込むようにプログラムされており,異常現象が発生したのに対応して対応するアドレスのデータが変化したことを認識する。すなわち,図9に示したのと同様の異常データテーブルが,RAM13にも記憶される。図3ではこれが異常表示データとして示されている。このデータテーブルから操作盤10は発生した異常現象の種類を認識する。 【0032】 図10と11はRAM13内の上記の異常データテーブルを更新する処理手順を示す。ステップS10では変数iをゼロとする。ステップS11は後で説明する図5の右下に示される異常データクリアの領域にタッチされたときにイエスとなり,この場合には,ステップS21で,すべてのフラグをゼロとして異常がおこっていない状態のテーブルに戻す。異常データクリアの領域にタッチされない場合には,テーブルのi番目のアドレスをセットする(ステップS12)。ステップS13では,テーブルから異常要素のアドレスを読み出してプログラマブル・コントローラ本体20に出力する。ステップS14では,プログラマブル・コントローラ本体20から回答があるまで待機する。ステップS15からS17では,プログラマブル・コントローラ本体20のRAM23内の異常データテーブルを操作盤10のRAM13の異常表示テーブルに転写する。これを変数iに1を加えて繰返すことによって,すべての異常種類についてRAM23内のテーブルをRAM13のテーブルに転写する。すべての異常種類についての転写が終了すると,ステップS19で異常画面の表示処理を実行する。」 「図3 [図:0001380178000001.jpg] 」 「図9 [図:0001380178000002.jpg] 」 「図10 [図:0001380178000003.jpg] 」 (2)異常現象の発生に関して明細書等に記載された技術的事項 上記(1)の記載事項からみて,明細書等には,異常現象の発生に関して,次の技術的事項が記載されているということができる。 ア.プログラマブル・コントローラ本体20のRAM23には,異常モニタ用ラダープログラムが記憶されており(【0020】),当該異常モニタ用ラダープログラムは,工作機械MTが制御されている間,例えば10ミリ秒間隔で繰り返し実行されること(【0027】)。 イ.異常モニタ用ラダープログラムには,異常現象の発生によって信号の状態を切換える入力要素と,異常の種類毎に作動状態を切換える出力要素を有するラダー回路が用意され,このラダー回路の出力要素の動作状態が切換えられるのに対応して,RAM23内のアドレスに記憶されているデータが書き換えられるものであること(【0029】)。 また,RAM23内の記憶内容を示す図9では,出力要素EM600をオンさせる異常現象がおきると,その出力要素EM600に対応するアドレスに異常フラグ1が立つように書き換えられること(【0030】)。 ウ.操作盤10は,例えば100ミリ秒間隔で,プログラマブル・コントローラ本体20の,異常時に動作状態が切換えられる電磁リレー等に対応するRAM23のアドレスの内容を読み込むようにプログラムされており,当該プログラムは,異常現象が発生したのに対応して対応するアドレスのデータが変化したことを認識するものであること(【0031】)。 また,図9に示したのと同様の異常データテーブルが,操作盤10のRAM13にも記憶され,このデータテーブルから操作盤10は発生した異常現象の種類を認識すること(【0031】)。 エ.操作盤10のRAM13内の異常データテーブルを更新する処理手順を示す図10において,ステップS13で,RAM13内の異常データテーブルから異常要素のアドレスを読み出してプログラマブル・コントローラ本体20に出力し,ステップS14では,プログラマブル・コントローラ本体20から回答があるまで待機し,ステップS15からS17では,プログラマブル・コントローラ本体20のRAM23内の異常データテーブルの「1」又は「0」を操作盤10のRAM13の異常表示テーブルに転写し,すべての異常種類についての転写が終了すると,ステップS19で異常画面の表示処理を実行すること(【0032】及び図10)。 (3)訂正の目的の適否について ア.訂正事項1の訂正の目的 訂正事項1は,訂正前の「前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラム」について,そのプログラムが,さらに「当該異常現象が発生したのに対応して,前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラム」であることを限定するものであるから,訂正事項1の目的は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。 イ.訂正事項2の訂正の目的 訂正事項2は,訂正事項1により特許請求の範囲の記載が訂正されることを前提に,明細書の記載を訂正事項1と同様に訂正するものであるから,訂正事項2の目的は,特許法134条の2第1項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当する。 (4)本件訂正が明細書等に記載した事項の範囲内のものか否かについて ア.訂正事項1のうち,「当該異常現象が発生したのに対応して,前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したこと」は,具体的には,プログラマブル・コントローラ本体20のRAM23内の図9に係る異常データテーブルについて,出力要素EM600をオンさせる異常現象がおきると,その出力要素EM600に対応するアドレスに異常フラグ1が立つこと(上記(2)イ.)に対応するから,明細書等に記載した事項の範囲内のものといえる。 イ.また,訂正事項1のうち,「前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムであって,・・・アドレスのデータが変化したことを認識するプログラム」は,具体的には,操作盤10のRAM13内の異常データテーブルを更新する処理手順を含む図10のプログラム(上記(2)ウ.及びエ.)に対応し,当該プログラムのステップS15からS17で,プログラマブル・コントローラ本体20のRAM23内の異常データテーブルの「1」又は「0」のデータを,操作盤10のRAM13の異常表示テーブルに転写することで,上記ア.の異常フラグの変化を認識し,異常現象の発生をモニタできるから,訂正事項1に係るプログラムは,明細書等に記載した事項の範囲内のものといえる。 ウ.訂正事項2は,明細書の記載を訂正事項1と同様に訂正するものであるから,上記ア.及びイ.に示す理由と同様の理由により,訂正事項2は,明細書等に記載した事項の範囲内のものといえる。 エ.したがって,本件訂正は,明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 (5)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について 本件訂正は,訂正前に記載されていた,制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムを限定するものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないことは明らかである。 (6)本件訂正に対する無効審判請求人の主張について ア.無効審判請求人(以下「請求人」という。)の主張の概要は,訂正事項1のうちの「異常現象をモニタするプログラム」は,具体的には,プログラマブル・コントローラのRAM23に記憶された,異常モニタ用ラダープログラムであるのに対して,訂正事項1のうちの「前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラム」は,具体的には,RAM23のアドレスの内容を読み込むための操作盤10のプログラムであり,両プログラムは別のものであるから,訂正事項1は,特許請求の範囲の減縮には該当せず,別のプログラムを特許請求の範囲に追加するものであり,本件訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張,又は変更するものであって,認められるべきでない(弁駁書2ページ15行ないし7ページ19行),というものである。 イ.しかし,本件訂正に係る「異常現象をモニタするプログラム」は,上記(4)イ.に説示するとおり,具体的には,操作盤10のRAM13内の異常データテーブルを更新する処理手順を含む図10のプログラムに対応するものであり,請求人が主張する,プログラマブル・コントローラのRAM23に記憶された異常モニタ用ラダープログラムではないから,請求人の上記ア.の主張は採用できない。 3.むすび 以上のとおり,本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号又は3号に掲げる事項を目的とし,同法同条9項で準用する同法126条5及び6項に適合するから,適法な訂正と認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり,本件訂正は認められるから,本件特許の特許請求の範囲に記載された発明は,訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,請求人が訂正前の発明に対して分説したAないしGの符号に合わせて記載すると,以下のとおりである。 「A 機械・装置・設備等の制御対象を制御するプログラマブル・コントローラにおいて用いられる表示装置であって, B 前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムであって,当該異常現象が発生したのに対応して,前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラムと, C そのプログラムで異常現象の発生がモニタされたときにモニタされた異常現象に対応する異常種類を表示する手段と, D 表示された1又は複数の異常種類から1の異常種類に係る異常名称をタッチして指定するタッチパネルと, E 異常種類が当該タッチにより指定されたときにその指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段と,を有し, F 前記ラダー回路を表示する手段は,表示されたラダー回路の入出力要素のいずれかをタッチして指定する前記タッチパネルと,表示されたラダー回路の入力要素が当該タッチにより指定されたときにその入力要素を出力要素とするラダー回路を検索して表示し,表示されたラダー回路の出力要素が当該タッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する手段を含む G ことを特徴とする表示装置。」(以下「本件発明」といい,AないしGの分説を「構成要件A」などという。) 第4 請求の趣旨,無効理由,答弁の趣旨及び証拠方法 1.請求の趣旨 請求人は,本件特許を無効とする,との審決を求めており,その無効理由の概要は,以下の無効理由1ないし3のとおりである。 (1)無効理由1(明確性) 本件発明の「当該タッチにより指定されたとき」という記載の意味が明確でないから,本件特許は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,同法123条1項4号に該当し,無効とすべきものである。 (2)無効理由2(新規事項) 平成28年7月29日の訂正請求により,本件発明の「当該タッチにより指定されたとき」という記載が訂正されたが,この訂正は,願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内においてしたものでないから,本件特許の特許請求の範囲の訂正は,特許法126条5項の規定に違反してされたものであり,その特許は同法123条1項8号に該当し,無効とすべきものである。 (3)無効理由3(進歩性) 本件発明は,甲第1ないし3号証に記載された発明に周知技術を適用することによって当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。 2.答弁の趣旨 無効審判被請求人(以下「被請求人」という。)は,本件無効審判の請求は成り立たない,との審決を求めている。 3.証拠方法 (1)請求人が提出した証拠方法 請求人は,証拠方法として,請求書と共に,以下の甲第1ないし9号証を提出し,請求人要領書と共に,以下の甲第10ないし14号証を提出し,弁駁書と共に,以下の甲第15ないし17号証を提出した(以下,各甲号証を「甲1」などという。)。 甲 1:「三菱グラフィックオペレーションターミナル MELSEC- GOT Graphic Operation Terminal 900 series」という 表題のカタログ(98/11版,1998年11月作成) 甲 2:「SW1D5C-GOTR-PACK 形 オペレーティングマニュアル」 甲 3:「GOT-A900 シリーズ オペレーティングマニュアル (拡張機能・オプション機能編)」 甲 4:特開平9-198190号公報 甲 5:「三菱汎用シーケンサ さらに高次元のユーザベネフィットを 実現。ソフトウェア開発に変革をもたらす力が,今ここに。 MELSEC QnA」という表題のカタログ (1996年12月作成) 甲 6:実験報告書(作成者・兼子貴弘,平成29年12月14日作成) 甲 7:「液晶コントロールターミナル ZM-42/52/72/82 ユーザーズマニュアル(ラダーモニタ編)」 (初版,2000年2月作成) 甲 8:シャープ株式会社のホームページ (http://www.sharp.co.jp/sms/support/topics/topic.html ) 甲 9:平成29年6月6日付けの原告準備書面(12) (大阪地裁平成27年(ワ)第8974号) 甲10:特開平11-327610号公報 甲11:特開2000-357003号公報 甲12:特開平6-195111号公報 甲13:特願平11-168055号(甲11の公報に係る出願)の 平成17年2月1日付けの拒絶理由通知書 甲14:特願2000-97206号(本件特許に係る出願)の 平成17年5月9日付けの意見書 甲15:特開平6-161517号公報 甲16:特開平7-49705号公報 甲17:特開平8-36405号公報 (2)被請求人が提出した証拠方法 被請求人は,証拠方法として,意見書1と共に,以下の乙第1号証(以下「乙1」という。)を提出した。 乙 1:大阪地方裁判所平成27年(ワ)第8974号 平成30年12月13日判決 第5 当事者の主張 上記無効理由1ないし3について,請求人及び被請求人は,おおむね以下のように主張している。 1.無効理由1(明確性) [請求人] ア.特許請求の範囲において,「当該タッチにより指定されたとき」という記載は,構成要件Eの「異常種類が当該タッチにより指定されたときにその指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段」という記載と,構成要件Fの「前記ラダー回路を表示する手段は,表示されたラダー回路の入出力要素のいずれかをタッチして指定する前記タッチパネルと,表示されたラダー回路の入力要素が当該タッチにより指定されたときにその入力要素を出力要素とするラダー回路を検索して表示し,表示されたラダー回路の出力要素が当該タッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する手段を含む」という記載に用いられている。(請求書4ページ16ないし最終行) イ.構成要件Eについて,明細書の発明の詳細な説明をみると,ラダー回路が表示される前に「作業者が『はい』の場所にタッチする」ことが必要である(【0038】)ことから,「当該タッチにより指定されたとき」は具体的なタイミングではなく,単なる条件を意味していることが読み取れる。(請求書5ページ1ないし10行) ウ.しかし,構成要件Fについては,「操作者が入力要素(この場合M001)か出力要素(EM600)のいずれかにタッチする」(【0040】),こと以外に操作者の行為がなく,ラダー回路が検索されて表示されることから,ラダー回路の表示はプログラムによって自動的に行われる。したがって,構成要件Fの「当該タッチにより指定されたとき」は単なる条件ではなく,具体的なタイミングを意味していると解釈せざるを得ない。(請求書5ページ11行ないし6ページ8行) エ.特許請求の範囲において用いられている用語の意味は一貫して同じ意味でなければならないが,構成要件Eと構成要件Fでは異なる意味に使われているから,「当該タッチにより指定されたとき」の記載は明確性を欠く。(請求書6ページ9ないし15行) オ.最高裁判決(平成27年6月5日)によれば,特許法36条6項2号は,「第三者の利益が不当に害されることが生じかね」ないようにすることであるが,特許請求の範囲の記載が明確性を欠くために,請求人と被請求人間の特許権侵害差止等請求事件(大阪地方裁判所平成27年(ワ)8974号)において,被請求人は,構成要件Fの「当該タッチにより指定されたとき」は,「入出力要素のいずれかをタッチして出現したエンターキーのタッチにより指定されたとき」が含まれると主張しており(甲9),このような主張をすること自体,「第三者の利益が不当に害されること」にほかならないから,特許請求の範囲の記載は明確性を欠いている。(請求書6ページ16行ないし7ページ4行) カ.さらに,構成要件Eのみに着目してみても「当該タッチにより指定されたとき」の意味を一義的に理解することができない。明細書の段落【0038】では,「図6は,作業者が個別異常名称をタッチしたときに現れる画面を示し,ここで作業者が『はい』の場所にタッチすると,図7の画面に切り換わる・・・」と記載しているが,被請求人は,平成28年7月29日の訂正審判請求書において「異常名称をタッチパネル上において『ワンタッチで』操作する」と主張し,出願人でさえも「当該タッチにより指定されたとき」という用語の解釈に関する主張に矛盾が生じており,「当該タッチにより指定されたとき」が何を意味するのかを一義的に理解することができない。(請求書7ページ5ないし23行) キ.被請求人は,「当該タッチにより指定されたとき」には具体的タイミングも条件も含むものとして明確であると主張している(下記[被請求人]イ.)が,被請求人は,平成28年7月29日の訂正審判請求書の21ページにおいて,「異常名称をタッチパネル上において『ワンタッチで』操作することで,・・・」と主張しており,平成28年10月18日付けの審決でも,「そして,訂正発明は,上記異常名称を直接タッチすることでラダー回路の表示まで行う構成を採用したことにより,明細書の段落【0038】に記載された・・・という効果を奏するものである。」と「当該タッチにより指定されたとき」が具体的タイミングを示すものであることを認定している。(請求人要領書10ページ下から7行ないし11ページ12行) [被請求人] ア.用語「とき」の普通の意味として,「(連体修飾語をうけ,接続助詞的に)次に述べることの条件を示すのに使う」ことが含まれる(広辞苑第五版)から,構成要件Eの「指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する」ことも,構成要件Fの「その入力要素を出力要素とするラダー回路を検索して表示」し,「その出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示」することも,いずれも異常種類や入出力要素がタッチされたことを条件として行われる「次に述べること」であり,当業者であれば,本件特許請求の範囲の記載から直ちに理解できる。(答弁書2ページ下から5行ないし3ページ7行) イ.請求人の主張は,「タッチにより指定されたとき」が具体的なタイミングを指すのか条件を指すのかで意味が異なるというものであるが,異常種類や入出力要素がタッチにより指定された「タイミング」をきっかけ(条件)としてラダー回路を検索して表示することを,本件特許請求の範囲が排除しているとは当業者は理解しない。すなわち,請求人がいう「具体的タイミング」とは,上記広辞苑の説明における「次に述べること」(ラダー回路の検索表示等)のきっかけとなる「条件」の一つと解してよいし,本件特許請求の範囲の記載を解釈するに当たっては,同義と解してもよく,「具体的タイミング」と「単なる条件」とが二律背反となるものではない。(答弁書3ページ9ないし21行) ウ.請求人は,段落【0038】と,同【0040】,【0041】とで「タッチにより指定されたとき」の意味が異なると主張するが,上記のとおり本件特許請求の範囲の記載に不明確な点はなく,リパーゼ判決の趣旨に照らしても,その意味を把握するために本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌する必要はない。(答弁書3ページ下から5行ないし4ページ14行) エ.請求人は,訂正審決における「直接タッチすることでラダー回路の表示まで行う構成を採用したこと」との認定が具体的タイミングの認定であると断じる(上記[請求人]キ.)が,その根拠が不明である。 被請求人の訂正審判請求書での主張はデバイス指定ウィンドウでの誤入力のリスクがないことを述べているものである。(被請求人要領書12ページ1ないし7行) 2.無効理由2(新規事項) [請求人] 構成要件E及びFの「当該タッチにより」の部分は,平成28年7月29日の訂正請求により訂正されたものであるが,「当該タッチにより指定されたとき」の意味が明確であり,条件を意味するものであれば,構成要件Fについては,訂正根拠がないことになる。反対に,「当該タッチにより指定されたとき」の意味が明確であり,具体的なタイミングを意味するものであれば,構成要件Eについては,訂正根拠がないことになる。(請求書4ページ下から5ないし最終行及び7ページ下から5行ないし8ページ2行) [被請求人] 請求人による訂正要件違反の主張は,構成要件Eと構成要件Fとで「タッチにより指定されたとき」の意味内容が二律背反の異なるものであることを前提としているが,当該前提に誤りがあることは,上記1.[被請求人]イ.で説明したとおりである。(答弁書4ページ15ないし20行) 3.無効理由3(進歩性) [請求人] (1)引用発明 甲1ないし3は,いずれも,プログラマブル・コントローラーにおいて用いられる表示装置である請求人製造のグラフィック・オペレーション・ターミナルA900シリーズの機能・仕様に関する刊行物であるから,これらの刊行物の記載を総合して,以下の引用発明を把握することができる。 「A シーケンサにおいて用いられる表示装置であって, B デバイスのエラー発生をモニタするソフトウェアと, C そのソフトウェアでエラー発生がモニタされたときにモニタされたエラー内容を表示するアラーム履歴機能と, D 履歴表に表示された複数のエラー内容から1のエラー内容をタッチして反転表示させて指定するタッチパネルと, E 指定されたエラー内容に対応するデバイスの該当デバイスを検索した状態で回路モニタ機能に切り替える手段と,を有し, F 回路モニタ機能は,表示されたラダー回路の接点・コイルをデバイス指定用キーウィンドウで入力して指定する前記タッチパネルと,表示されたラダー回路の接点が当該指定により指定されたときにその接点を出力要素とするラダー回路を検索して表示し(コイル検索),表示されたラダー回路のコイルが当該指定により指定されたときにそのコイルを入力要素とするラダー回路を検索して表示する(接点検索)手段を含む G 表示装置。」(請求書9ページ2行ないし12ページ11行) (2)訂正前の本件発明と引用発明の対比 訂正前の本件発明と引用発明は,構成要件AないしD及びGで一致し,構成要件Eで実質的に一致する。 また,構成要件Fは,「タッチパネルで指定した入出力要素に対応する入出力要素を検索して表示する」という点で一致するが,指定方法が,本件発明は入出力要素のタッチであるのに対し,引用発明はデバイス指定用キーウィンドウによる入力である点で相違する。(請求書12ページ12行ないし14ページ7行) (3)構成要件Fの容易想到性 ア.入出力要素の指定方法を,本件発明のように入出力要素を直接タッチする方法とするか,引用発明のようにデバイス指定用キーウィンドウによる入力とするかは,当業者が任意に選択すべき設計事項にすぎない。 本件特許に係る出願前から,コンピュータ装置のディスプレイ画面上にタッチ入力装置を使用することも,これとソフトウェアキーボードを併用することも周知である(甲4)。 また,本件特許に係る出願前から,接点やコイルを直接指定して検索を行う表示装置が販売されている(甲5及び6)。 このように,本件特許に係る出願以前から,コンピュータ装置のディスプレイ画面上にタッチ入力装置を使用すること及びこれとソフトウェアキーボードを併用することは周知であり,接点・コイルを直接指定して検索を開始する製品も販売されているから,入出力要素の指定方法が入出力要素を直接タッチする方法であるか(本件発明),デバイス指定用キーウィンドウによる入力であるか(引用発明)という相違は,単なる設計事項に過ぎない。 実際,本件特許に係る出願前に,接点を直接タッチすることでコイル検索を実行する構成を備えた表示装置が販売されている(甲7及び8)。 したがって,引用発明において,「表示されたラダー回路の接点・コイルをデバイス指定用キーウィンドウで入力して指定する」ことに代えて,タッチパネル上に表示されたラダー図上の接点・コイルにタッチして指定することは,当業者が設計事項として極めて容易になし得たことである。(請求書14ページ8行ないし16ページ下から8行) イ.上記ア.のとおり,構成要件Fは容易想到である。 また,甲11には,引用発明のコイル検索に相当する検索において,ラダー回路図における接点シンボルをタッチして当該接点を指定することが記載されており,コイルについてコメントを表示する際に,コイルのシンボルをタッチしてコイルを指定することは記載されている。このように,接点及びコイルを直接タッチにより指定するという指定方法は,本件特許出願日時点すでに周知技術となっていた。 さらに,甲11に係る特許出願に対して,甲12に記載された発明に基づいて拒絶理由通知がなされており,その際に審査官は,表示されている表示シンボルへのタッチによって指定する方法とすることは容易であると判断している(甲13)。 したがって,検索対象の指定方法を入出力要素のタッチとするか,デバイス名又はデバイス番号の入力とするかということは,当業者が適宜選択すべき設計事項にすぎず,構成要件Fは容易想到である。(請求人要領書7ページ18行ないし8ページ下から2行) (4)構成要件Eが一致点であること ア.甲2の6-17ページには,アラーム履歴表示機能の拡張機能およびその他行える機能の説明として,「・ON状態,指定範囲内となったデバイスの該当デバイスを検索した状態で回路モニタ機能を起動することができます。」と記載されているから,当業者は,甲1ないし3に記載される引用発明には,アラーム履歴表示機能でタッチにより反転表示して指定した1つのエラー内容に対応するデバイスを検索した状態で回路モニタ機能を起動させる機能が備えられていることを読み取る。さらに,甲3の6-6ページには「*3 回路モニタ時に,デバイス検索,接点検索,コイル検索を行った場合,読み出した検索デバイスを含む回路ブロックのみを表示します。」と記載されているのであるから,「ON状態,指定範囲内となったデバイスの該当デバイスを検索した状態」が,「検索デバイスを含む回路ブロックのみを表示」するものであることも明らかである。したがって,構成要件Eは,相違点ではない。(請求人要領書2ページ12行ないし3ページ下から3行) イ.上記ア.のとおり構成要件Eは相違点ではない。 なお,甲7には,異常現象が発生した場合に点灯するランプをタッチすることによってランプメモリのコイル番号が含まれる1ネットワークのラダー回路を検索し,オーバーラップ画面上にラダーモニタを表示する構成が記載されている。 さらに,甲10には,アラームが発生した場合にアラームに関する動作履歴表示を選択し,回路検索キーを操作することにより,アラームの該当デバイスを検索した状態で回路モニタ機能を起動させることが開示されている。 以上のとおり,異常現象が発生した場合に,デバイス名又はデバイス番号を入力することなくデバイスを指定してラダー回路を表示させることは,本件特許の出願前に当業者の技術常識となっていた。したがって,当業者が構成要件Eに対応する引用発明の構成を理解できないことはあり得ない。(請求人要領書5ページ下から4行ないし7ページ17行) ウ.被請求人は,構成要件Eについて,「回路モニタを起動する条件が『表示された複数種類のメッセージを指で反転表示』させることなど,開示も示唆も存在しない」(上記[被請求人](1)イ.)と主張するが,構成要件Eの「異常種類が当該タッチにより指定されたとき」は,「異常種類に対応する異常現象をモニタしたラダー回路を表示する」ことの条件ではあるが,ラダー回路を起動する条件(画面表示がラダー回路に移行する条件)ではない。本件発明においても,「指定」と「起動」は2段階に行われるのであるから,被請求人の上記の主張は失当である。(請求人回答書2ページ18行ないし3ページ最終行) (5)構成要件Fに係る引用発明の認定 ア.甲3の6-4ないし6-6ページの記載から,接点検索及びコイル検索が,接点またはコイルを指定してプログラムの検索を行い,その回路ブロックを表示するものであることが読み取れる。 アラーム履歴表示機能から回路モニタ機能を起動することは,エラーの発生原因を追究するための機能であり,エラーの発生を示す回路ブロックから発生原因をさらに遡及するために,回路ブロックを検索する必要がある。「コイル検索」は,デバイス番号を指定して該当するコイルを含む回路ブロックを探す検索であるから,利用者は,発生原因を遡及するべく,「コイル検索」を用いて,接点のデバイス番号を入力してコイル検索を行うことで,当該接点をコイルとするラダー回路を検索して表示することができる。また,「接点検索」は,デバイス番号を指定して接点を探す検索であるから,接点検索を利用すれば,表示されたラダー回路のコイルを検索対象の接点として指定し,当該コイルを接点とする回路ブロックを検索して表示することができる。したがって,引用発明において,表示されたラダー回路の接点が検索対象のコイルとして指定されたときにその接点を出力要素とするラダー回路を検索して表示するものがコイル検索であり,表示されたラダー回路のコイルが検索対象の接点として指定されたときにそのコイルを入力要素とするラダー回路を検索して表示するものが接点検索であることは明らかである。(請求人要領書3ページ下から2行ないし5ページ3行) イ.上記ア.のとおり,引用発明のコイル検索は表示されたラダー回路の接点が検索対象のコイルとして指定されたときにその接点を出力要素とするラダー回路を検索して表示するものであり,接点検索は表示されたラダー回路のコイルが検索対象の接点として指定されたときにそのコイルを入力要素とするラダー回路を検索して表示するものであるから,特許発明と引用発明の相違点は,検索対象の指定方法が入出力要素のタッチであるか,デバイス名又はデバイス番号の入力であるかという点である。(請求人要領書5ページ4ないし23行) ウ.被請求人は,「甲3の『デバイス検索』『コイル検索』『接点検索』という文字からは,当該コイルを接点とするラダー回路を検索して表示したり,当該接点をコイルとするラダー回路を検索して表示することは導き出せない」(下記[被請求人(3)ウ.)と主張するが,甲3の6-4ページに図示されているとおり,デバイス検索,接点検索,コイル検索のいずれの検索を行う場合にもデバイスを指定し,接点検索は当該デバイスを接点とするラダー回路を表示させるものであり,コイル検索は当該デバイスをコイルとするラダー回路を検索するものであり,この構成は構成要件Fに相当する。(請求人回答書4ページ1ないし23行) (6)構成要件Fを分断して相違点を認定し判断すること ア.被請求人は,構成要件Fを分断して相違点を認定し,判断することが誤りである旨を主張する(下記[被請求人](5))が,構成要件Fが「入力要素又は出力要素の直接指定による検索」と「タッチパネルを用いた入力要素又は出力要素の直接指定」という2つの異なる技術から構成されていること自体は争っておらず,容易想到性を判断するにあたって分節された構成要件を一まとまりの技術として捉えなければならない理由はない。(請求人回答書4ページ24行ないし5ページ7行) イ.被請求人のいう,構成要件Fの有機的一体性(下記[被請求人](5)ア.)とは,入力要素を指定した場合には,コイル検索であることを指定しなくても,コイル検索が行われ,出力要素を指定した場合には,接点検索であることを指定しなくても,接点検索が行われることかもしれないが,その効果は,作業者の入力負担を軽減する程度のものであり,当業者が容易に行い得る設計事項にすぎない。(請求人回答書5ページ8行ないし7ページ下から3行) ウ.被請求人は,構成要件Fを分断した相違点2の判断に対して,甲5と本件発明の技術分野が異なることを主張している(下記[被請求人](5)イ.)が,本件発明はプログラマブル・コントローラ(=PLC)に接続して用いられる表示器であり,本件発明はプログラマブル・コントローラ内のラダー回路を表示することに関する発明であるから,甲5の回路モニタと同一の技術分野に属する。(請求人回答書7ページ最終行ないし8ページ12行) (7)本件発明の作用効果 ア.本件特許の明細書には,「因果関係の連鎖を遡及しすぎた場合には,出力要素をタッチする。すると,・・・ラダー回路に戻すことができる。・・」(【0041】)と記載されており,特許発明が「戻るシンボル」がなくても,「[元の]図7のラダー回路に戻る」という作用効果を奏すると誤解するが,通常のラダー回路において,1つの接点(入力要素)に対応するコイル(出力要素)を含むラダー回路は複数あるから,出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する手段では元のラダー回路へ戻ることはできない。それゆえ,本件特許の明細書の段落【0041】に記載されている作用効果は実現不能であるから,本件発明の進歩性を判断するにあたって考慮できない。(請求人要領書8ページ最終行ないし10ページ2行) イ.本件発明は,「出力要素が指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索」するから,上流側に遡及した検索に対して下流側に戻る検索を行うものの,遡及経路を戻るとは限らず,元のラダー回路に戻るという作用効果を実現し得ない。(請求人回答書6ページ5ないし20行) (8)甲7の発行日 ア.審理事項通知書の指摘のとおり,甲7の正確な発行日は不明であり,改めて調査を行っているが,請求人は,甲7を当業者の技術レベルの立証を目的として提出しているから,必ずしも,正確な発行日を必要としない。(請求人要領書10ページ3ないし20行) イ.甲7の公知日は現時点では不明(第1回口頭審理調書の陳述の要領の請求人の4) (9)訂正によっても無効理由が解消されないこと ア.甲2に記載されているアラーム履歴表示機能は,プログラマブル・コントローラの指定したビットデバイスのON状態時に発生時刻,コメントなどを履歴データとして表示する機能であり,当該機能を実現するために,プログラマブル・コントローラの指定されたビットデバイスの状態を常に監視する必要があることは当業者にとって自明であるから,甲2には訂正後の構成要件Bに相当する事項が記載されており,本件訂正によっても無効理由を解消することはできない。(弁駁書7ページ20行ないし10ページ2行) イ.訂正後の構成要件Bは,甲15ないし17に示すように当業者の周知技術にすぎないから,周知技術を追加する訂正を行っても進歩性欠如の無効理由を解消することはできない。(弁駁書10ページ3行ないし21ページ3行) (10)本件訂正が認められない場合の相違点 本件訂正が認められない場合には,本件発明は,表示器がモニタプログラムを備えているのに対し,引用発明は,PLCがモニタプログラムを備えていて,表示器はモニタプログラムを備えていない点が相違点となるが,当該相違点は設計事項にすぎない。(請求人回答書8ページ13行ないし11ページ下から4行) [被請求人] (1)構成要件Eの非開示 ア.請求人は,甲1ないし3の開示から,構成要件Eにおいて本件発明と引用発明は実質的に一致していると主張する(上記[請求人](2))。 また,審決予告では,引用発明が,「異常種類が当該タッチにより指定されたときにその指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段」(構成要件E)を有すると認定したが,証拠に基づかない誤ったものである。 甲2又は3には,「ON状態(エラー発生)になった異常種類をタッチにより指定すること」と「エラー内容に対応するデバイスの該当デバイスを検索した状態で回路モニタ機能を起動する」ことが別々に記載されているだけであり,それだけでは本件発明の構成要件Eの開示があるとはいえない。 したがって,構成要件Eは引用発明と本件発明との相違点である。(答弁書5ページ下から9行ないし7ページ14行,被請求人要領書2ページ5行ないし5ページ6行,被請求人要領書5ページ13行ないし6ページ18行及び意見書1の2ページ10ないし14行) イ.甲2には,回路モニタを起動する条件が「表示された複数種類のメッセージを指で反転表示」させることなど,開示も示唆も存在しない。また,甲2の6-16ページの「エラー内容の詳細表示」と甲3の6-6ページの「*3回路モニタ時に,デバイス検索,接点検索,コイル検索を行った場合,読み出した検索デバイスを含む回路のみを表示します。」とされている画面への移行を結びつける記載は両甲号証のどこにも存在しない。(意見書1の3ページ10行ないし7ページ1行) ウ.乙1に係る判決も「GOT900において,・・・エラー内容欄をタッチして指定すると当該エラーの原因となった回路ブロックが自動的に検索表示されるものであるとは認められない」という認定がなされている。(意見書1の7ページ2ないし17行) (2)構成要件Eの想到非容易 ア.甲4,5及び7には,プログラマブル・コントローラに用いられる表示装置において,構成要件Eに相当する手段は開示も示唆もされていない。 甲4及び5は,プログラマブル・コントローラに用いられる表示器に関する技術を開示するものではないし,甲7の6・1ページの記載は,異常種類のタッチにより指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段に関する記載ではないから,甲4,5及び7から構成要件Eに到達することはできない。(答弁書7ページ15行ないし8ページ6行) イ.甲7は,頒布時期が本件出願前か疑義があるが,その点を措くとしても,甲7の1・1ページの記載や6・1ページの「ラダーモニタ表示の表示指令」の記載は異常種類のタッチにより指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段に関する記載ではない。 また,甲10の段落【0034】において,回路モニタ機能を起動させるのは,異常表示のタッチではなく「回路検索キーの操作」であるから,異常表示をモニタしたラダー回路を表示する起点である方法(異常表示のタッチ)において甲10は本件発明と異なるから,構成要件Eは,甲7又は10に基づいて,容易想到ではない。(被請求人要領書8ページ1行ないし10ページ5行) ウ.審決予告では,「仮に,甲1ないし3に構成要件Eに相当する技術的事項が記載されていないとしても,構成要件Eは,甲12記載の技術的事項1に基づいて容易に想到できた事項である」と認定しているが,甲12記載の技術的事項1は,「押出しインターロック確認」という項目をタッチするものであり,当該項目は「異常名称」ではないし,警報・異常警告灯などにより押出し装置の故障を確認したオペレーターが,メニュー画面1の複数の選択肢の中から,自らの判断で,No2「押出しインターロック確認」の項目を選択するから,「異常名称をタッチして指定し」,「当該タッチにより」「異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する」という構成要件Eは甲12に開示されておらず,甲12記載の技術的事項1に基づいても,構成要件Eは想到容易ではない。(意見書1の7ページ18行ないし8ページ4行,意見書1の24ページ21行ないし29ページ7行及び被請求人回答書5ページ2行ないし6ページ1行) エ.本件発明と引用発明との相違点は,「本件発明は構成要件Eを有するのに対して,引用発明は,異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段を有するけれども,当該表示手段が発動する契機が不明である点」とされるべきであり,表示手段を発動する契機として,「異常名称をタッチして指定」して行うことは,甲5にも甲12にも他の甲号各証にも開示も示唆もされていないから,構成要件Eは,容易想到ではない。(意見書1の10ページ21行ないし12ページ20行) (3)構成要件Fに係る引用発明の認定の誤り ア.請求人は,引用発明の構成要件Fとして「表示されたラダー回路の接点が当該指定により指定されたときにその接点を出力要素とするラダー回路を検索して表示し(コイル検索)」や,「表示されたラダー回路のコイルが当該指定により指定されたときにそのコイルを入力要素とするラダー回路を検索して表示する(接点検索)」ことを主張している(上記[請求人](1))が,甲3の6-4及び6-5ページには,「接点検索」,「コイル検索」の文言が存在するだけであり,それらの検索の具体的な内容については開示も示唆もされていないから,それらの検索が請求人の主張する内容であると解釈できない。(答弁書8ページ7行ないし9ページ最終行) イ.請求人は,引用発明のコイル検索は表示されたラダー回路の接点が検索対象のコイルとして指定されたときにその接点を出力要素とするラダー回路を検索して表示するものであり,接点検索は表示されたラダー回路のコイルが検索対象の接点として指定されたときにそのコイルを入力要素とするラダー回路を検索して表示するものであることを前提に,本件発明と引用発明の相違点は,検索対象の指定方法が入出力要素のタッチであるか,デバイス名又はデバイス番号の入力であるかという点であると主張している(上記[請求人](5)ア.及びイ.)が,甲3の6-6ページには,デバイス名「Y0025」とのコイルを指定して,当該コイルを接点とするラダー回路を検索して表示することは記載も示唆もされていないから,引用発明として,指定された入力要素を出力要素とするラダー回路を検索して表示し,同出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する構成は認定できない。(被請求人要領書6ページ19行ないし7ページ最終行) ウ.甲3の「デバイス検索」「コイル検索」「接点検索」という文字からは,当該コイルを接点とするラダー回路を検索して表示したり,当該接点をコイルとするラダー回路を検索して表示することは導き出せない。(意見書1の8ページ5ないし13行) エ.甲3の「要因検索」は,コイルがON/OFFしている原因を,回路をさかのぼって検索する機能であるが,「要因検索」のスタート時の入力負担は「コイル検索/接点検索」と同じであるから,「要因検索」は作業者の入力負担を軽減する技術ではない。(意見書1の8ページ14ないし26行) (4)構成要件Fの想到非容易 ア.甲4は,プログラマブル・コントローラに用いられる表示器とは無関係であり,甲5は,接点又はコイルをカーソルで指定するものであるから,接点又はコイルをタッチで指定する本件特許発明とは無縁のものである。 また,甲7は,本件特許発明の構成要件Fの全てを開示や示唆するものでないから,当業者が甲4,5及び7を参照しても,引用発明を本件発明の構成要件Fのように改変することには到達できない。(答弁書10ページ1行ないし11ページ12行) イ.甲11は,本件出願後の平成12年12月26日公開の文献であり,出願時公知技術ではないから,本件発明の進歩性を弾劾する証拠たり得ない。また,甲12は,「リレーシンボルにタッチすることにより,画面は『押出安全確認』画面4に移行する。画面4を見ると,バリカムエラーのリレーシンボルがONしていない。そこでバリカムエラーのリレーシンボルにタッチすると画面5に移行し,『押出のバリカムにエラーが発生しました。』というように故障原因を表示するとともに,『保全電気に連絡して下さい。』というようにその対応を表示する」(段落【0015】)というものであり,入出力要素をタッチしてラダー回路を検索表示する本件発明の技術とは無関係であるから,甲11又は甲12に基づいて,構成要件Fは相違想到ではない。(被請求人要領書10ページ6行ないし11ページ2行) (5)構成要件Fを分断して相違点を認定し判断した誤り ア.審決予告は,構成要件Fに係る相違点を「遡及検索」(ラダー回路を上流側に遡及する検索)と「戻り検索」(ラダー回路を下流側に戻る検索)とからなる「回路図の要素を検索する手段に係る相違点」(相違点2)と,「ラダー回路の入出力要素をタッチして指定」する手段の有無という「タッチパネルの構成に係る相違点」(相違点1)に分断し,各相違点を個別に判断した。 しかし,構成要件Fは,タッチパネルにタッチしただけで複雑な異常現象の原因探索を可能にするという特有の効果を奏し,有機的一体性を有しているから,一体で想到容易性を検討すべきである。(意見書1の2ページ15行ないし3ページ8行及び意見書1の12ページ21行ないし17ページ1行) イ.甲5は,シーケンサ(PLC)に係るカタログであり,本件発明のようなプログラマブル表示器と同一の技術分野とはいえない。 また,甲5は,刊行物に記載された発明の証拠資料であり,公然実施された発明の証拠資料ではないから,甲5に係るシーケンサを実証した甲6により,甲5の記載を補充することはできないし,仮に甲6を参照したとしても,甲5のシーケンスでのデバイスの指定手段は,デバイスにカーソルを合わせてファンクションキーを押下するというものであり,本件発明のように,入出力要素を直接タッチするものではない。 そして,甲5の12頁の「●接点,コイルの検索」の項には,「Y74圧力不足」のコイルにカーソルを移動して何らかの操作をすると当該コイルを接点とするラダー回路が検索表示されることしか記載がないから,甲5に基づいて,構成要件Fを分断した相違点2が容易想到とはいえない。(意見書1の8ページ最終行ないし10ページ18行及び意見書1の17ページ3行ないし21ページ8行) ウ.甲12には,「前記制御対象の異常現象をモニタするプログラム」(構成要件B)や「指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段」(構成要件E)が開示も示唆もされておらず,構成要件Eは,引用発明にも甲5にも開示がないから,構成要件Fを分断した相違点1が甲12に基づいて容易想到とすることは,いわゆる「容易の容易」というべきものであり,想到困難である。(意見書1の21ページ9行ないし24ページ20行) (6)本件発明の作用効果 ア.本件発明は,「作業者はこの機能を使って真の原因を探求する為にラダー回路を上流に遡行していくことができ,因果関係の連鎖をシステムによってガイドされながら的確に原因を追求することができる」(段落【0040】),「遡及しすぎた場合には戻ることができるために,この操作盤は極めて使いやすく,異常時の復旧処理を効果的に実施することを可能とする」(段落【0042】)との作用効果を奏するが,甲1ないし7から,かかる作用効果を予見することはできない。(答弁書11ページ14ないし25行) イ.本件発明は,その構成により,本件特許に係る明細書の段落【0016】及び【0045】に記載された作用効果を奏するが,当該作用効果を開示ないし示唆する先行技術は甲号証中において皆無である。(被請求人要領書11ページ3ないし18行) (7)甲7の頒布時期 甲7の頒布時期が本件出願前であることに合理的な疑いがあるとの審判合議体の見解は正当と考え,これが真偽不明である以上,甲7を引例として特許発明の進歩性の弾劾に用いることはできない。(被請求人要領書11ページ19ないし最終行) (8)訂正による無効理由の解消 ア.訂正後の構成要件Bについて,引用発明や,その他の各甲号証に開示も示唆もない。(意見書1の29ページ9行ないし30ページ10行) イ.甲2には,構成要件Bの「前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムであって,当該異常現象が発生したのに対応して,前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラム」は記載も示唆もされていない。(被請求人回答書2ページ14ないし23行) ウ.構成要件Bが甲15ないし17により周知技術であるという請求人の主張(上記[請求人](9)イ.)は理由がない。(被請求人回答書2ページ24行ないし5ページ1行) 第6 無効理由1(明確性)についての当審の判断 1.本件発明の課題及び技術的意義 (1)本件特許に係る明細書及び図面の記載 本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明及び図面には,以下の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は,入力要素から入力される信号の状態が所定の状態になったときに出力要素に信号を出力して,機械,装置,設備等の制御対象に意図した動作を行なわせるプログラマブル・コントローラにおける表示装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 装置類の制御の為にプログラマブル・コントローラがよく用いられる。このプログラマブル・コントローラは,入力要素から入力される信号の状態が所定の状態になったときに出力要素に信号を出力して,装置類に意図した動作を行なわせる。 ・・・ 【0005】 図1にこの様子が模式的に示され,プログラマブル・コントローラには,どの入力要素からどの信号が入力されたときに,どの出力要素にどの信号を出力するかを決めるラダープログラムが記憶されている。 【0006】 ラダープログラムは,一つの出力要素に信号を送る処理を単位に記述されており,複雑な装置類をコントロールする場合には,極めて多数の単位を備えている。以下ラダープログラムの一つ一つの単位で記述されている内容を図式化したものをラダー回路という。 【0007】 図1ではプログラマブル・コントローラで制御されるものを総称して設備としているが,これは機械,装置を含むものである。これらは,プログラマブル・コントローラと直接関係する部分のみを示している為に,入力要素と出力要素を内蔵する特徴で図示されている。出力要素のうちのあるものは同時に入力要素となることがある。 【0008】 プログラマブル・コントローラで設備を制御している間に,異常現象が発生することがある。例えば油圧回路や空圧回路のフィルタの目詰まり,電磁弁のソレノイドコイルの焼付き,スプールの作動不良,ポンプユニットの油量の減少,潤滑油の圧力低下,リミットスイッチの故障等の各種原因によって異常現象が生じる。 【0009】 プログラマブル・コントローラには,前記した種々の異常現象の発生をモニタするモニタ用のラダープログラムが用意されている。この異常モニタ用のラダープログラムは所定のタイムインターバルで繰り返し実行される。プログラマブル・コントローラがこの異常モニタ用のラダープログラムを実行して異常現象の発生を検出すると,各種異常現象に割当てられている異常表示ランプ類を点灯させる。図1の場合,Aという名称の異常現象がおこったために,Aという名称の異常現象の発生をモニタするラダー回路によってA異常ランプを点灯させるAリレー(出力要素)がオンした様子を図示している。 【0010】 従来のプログラマブル・コントローラでは,異常がおきたときにその異常の種類に対応する異常表示が行なわれるために,作業者は異常がおきた事実とおきた異常現象の種類を知ることができるが,それがなぜおきたかは表示されない。 そこで,従来のプログラマブル・コントローラでは,異常がおきた場合に,システムの保守担当者が予め用意されているラダー回路図面集を参照しながら,異常表示を点灯させたラダー回路を発見し,そのラダー回路にしたがって異常をもたらした原因を探求していく。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】 一般にラダー回路図面集は100頁以上に及ぶ分厚いものであり,異常表示をもたらしたラダー回路を探すのに多大の時間を要する。 しかも,真の異常原因を特定するまでにいくつかのラダー回路を探さなければならないことが多く,ラダー回路図面集から必要なラダー回路を探し出すまでに長い時間を浪費しやすい。 そこで,本発明は,異常現象の発生時に,その異常をもたらしたラダー回路を表示するようにして,上記の不具合を解消し,もって速やかに復旧処理できるようにすることを目的とする。 ・・・ 【0013】 この表示装置は,制御対象に異常現象が発生すると,発生した異常現象に対応する異常種類を表示する。異常種類が表示されると,作業者は表示された1又は複数の異常種類から1の異常種類を指定する。作業者によって異常種類が指定されると,その指定された異常種類に対応するラダー回路を表示する。この表示装置は,制御対象に異常現象が発生したときに,異常表示をもたらしたラダー回路を表示するために,作業者は異常がおきた事実とおきた異常の種類を知るだけでなく,その異常表示をもたらした入力要素をも知ることができ,速やかに復旧処理に取り組むことができる。分厚いラダー回路図面集から問題のラダー回路を探すのに時間を浪費することが避けられる。 ・・・ 【0015】 異常表示されたときにその異常表示をもたらしたラダー回路が表示されると,その異常に至った入力要素が直ちに特定されることから,復旧処理がやりやすくなる。ここで,ある入力要素は同時に出力要素であり得ることから,その異常をもたらした入力要素が真の原因でなく,その入力要素を出力要素とする別の入力要素が真の異常原因であることがある。例えば,入力要素1が異常表示をもたらした場合に,その入力要素1(同時に出力要素1でもある)の動作状態を切換える入力要素2が真の異常原因であることがある。しかもその連鎖がさらに遡ることがある。 【0016】 このような事態があり得る場合に,前記の表示装置は,表示されたラダー回路の入出力要素をタッチパネルを利用して指定することができる。表示されたラダー回路の入力要素が指定されたときは,その指定された入力要素を出力要素とするラダー回路が検索されて表示される。また,表示されたラダー回路の出力要素が指定されたときは,その指定された出力要素を入力要素とするラダー回路が検索されて表示される。このため,真の原因を特定できるまで次々にラダー回路を読み出していくことができる。しかもその操作は,タッチパネルに手を触れるだけですみ,極めて簡単である。」 「【0033】 ステップS19の詳細手順が図11に示されている。ステップS22では変数iをゼロとし,変数nを1とする。ステップS23では,RAM13内のテーブルのi番目のフラグを判別し,ゼロ(正常)ならノーとなるので,ステップS32でiを1増やしてステップS23を繰返す。ステップS23でi番目の異常が判別されると,変数Senにそのときの変数nの値を書き込む。この処理の内容は後で説明する。 【0034】 次にステップS25で総合異常画面が表示されているか否かを判別し,表示されていなければステップS26で総合異常画面に切換える。この処理によって何らかの異常が生じると総合異常画面に切換えられることになる。ステップS27では異常名称が総合異常名称以外か否か判別し,総合異常内の異常名称ならステップS28で個別異常名称を点灯させる。ステップS29では総合異常グループ以外の異常グループであるときにそれが点灯しているか否かを判断し,点灯していなければステップS30でその異常グループ名称に点灯させる。以上の処理を全部の種類について実行する。 ステップS32で変数nにも1加えられる為に,ステップS24では異常が看視されたとき繰り返しの回数がSenに記憶される。 【0035】 ステップS33は,何らかの異常現象が発生し,総合異常画面が表示されているときに実行される。ステップS33では,ステップS26,28,30で表示されている画面にタッチ入力されたか否かを判別する。タッチ入力されたときには,ステップS34でタッチされたキーを判別する。異常グループ名称がタッチされればステップS39でその為の画面に切換える。総合異常内の個別異常名称がタッチされればステップS35で,後で説明する図6の画面を出力する。ここで「いいえ」が操作されればステップS26に戻って総合異常画面に戻し,「はい」がタッチされれば変数Addにテーブルの出力要素アドレス,例えば,図9のEM600の異常がおこっていれればEM600に対応するフラグを記憶するROM23内のアドレスを記憶する。次に,詳細が図12に示される回路モニタの表示処理が実行される(ステップS38)。これについては後記する。」 「【0038】 この実施例では,作業者が異常表示をもたらした入力要素を知りたい場合には,点灯している個別異常名称をタッチすることでその異常表示をもたらしたラダー回路を表示させることができる。図6は,作業者が個別異常名称をタッチしたときに現れる画面を示し,ここで作業者が「はい」の場所にタッチすると,図7の画面に切り換わる。図7の画面は,M001の入力要素が変化したために,EM600の出力要素が切換えられ,その結果,図5の示すパレット異常が表示されたことを意味するラダー回路を示している。このラダー回路が表示される為に,作業者には復旧作業のためにはM001の状態をチェックすればよいことが直ちに理解される。 【0039】 この図7の画面は,図12の処理によって表示される。この処理では,ステップS50で,変数Addの値がゼロか否かみる。異常が発生して入れば,その異常の種類に対応するフラグのアドレスが記憶されているので,ステップS50でイエスとなる。このときには,出力要素に対応するフラグを変数Addの値のアドレスに出力するラダー回路が検索される(ステップS51)。図7の場合,出力要素をEM600とする異常が生じているために,図12のステップS51の実行時には出力要素EM600に対応するアドレスがAddに記憶されており,従って,ステップS51の実行によって,要素EM600を出力要素とするラダー回路が検索され,これが表示されることになる。この操作盤10では,表示パネル30に,異常が起こったときにはその異常を出力要素とするラダー回路が表示されるようになっている。 【0040】 さらに,この操作盤10では,ラダー回路を切換えていくことができる。このためには,操作者が入力要素(この場合M001)か出力要素EM600のいずれかにタッチする。 入力要素にタッチすると,図12のステップS54がイエスとなり,ステップS55ではその入力要素に対応するアドレスを変数Addに記憶する。この状態で次にステップS51が実施されるために,このとき実施されるステップS51ではそれまで入力要素(M001)を出力要素とするラダー回路が検索されて表示される。図8はそれを例示しており,いままでの入力要素を出力要素とするラダー回路に置き換わる。 作業者はこの機能を使って真の原因を探求する為にラダー回路を上流に遡行していくことができ,因果関係の連鎖をシステムによってガイドされながら的確に原因を追求することができる。 【0041】 因果関係の連鎖を遡及しすぎた場合には,出力要素をタッチする。すると,今度はステップS57とS58が実行され,今度はそれまでの出力要素を入力要素とするラダー回路に戻すことができる。例えば,図8の状態で出力要素M001にタッチすると,今度は,出力要素M001を入力要素とするラダー回路,すなわち,図7のラダー回路に戻るのである。 【0042】 図12のステップS55とS51によってラダー回路を遡及側へ追求することができ,ステップS57とS58によって遡及しすぎた場合には戻ることができるために,この操作盤は極めて使いやすく,異常時の復旧処理を効果的に実施することを可能とする。」 「図11 [図:0001380178000004.jpg] 」 「図12 [図:0001380178000005.jpg] 」 (2)本件発明の課題 上記(1)の記載事項から,本件発明が解決しようとする課題に関する以下の事項を理解できる。 ア.プログラマブル・コントローラは,入力要素から入力される信号の状態が所定の状態になったときに出力要素に信号を出力することで,装置類の制御を行う(【0002】)ものであり,入力要素の入力信号と出力要素の出力信号の関係を決めるラダープログラムが記憶されている(【0005】)ところ,当該ラダープログラムは,一つの出力要素に信号を送る処理を単位に図式化して記述され,その一つ一つの単位をラダー回路といい(【0006】),ラダー回路の出力要素は,他のラダー回路の入力要素となり得る(【0007】)。 イ.従来のプログラマブル・コントローラは,制御対象である装置類の異常の発生をモニタするモニタ用のラダープログラムを有しており,異常が発生すると,異常表示ランプ類を点灯させる(【0009】)ため,作業者は異常の発生やその異常現象の種類を認識できるが,異常の原因は認識できなかった(【0010】)。そこで,異常の原因を探求するために,作業者は,100ページ以上に及ぶラダー回路図面集から,異常表示を点灯させたラダー回路を探し,さらに,真の異常原因を特定するまでにいくつかのラダー回路を探さなければならならず,必要なラダー回路を探し出すまでに長い時間を浪費しやすかった(【0010】,【0011】)。 ウ.本件発明は,異常現象の発生時に,その異常をもたらしたラダー回路を表示して,速やかに復旧処理できるようにすることを目的とする(【0011】)。 (3)本件発明の技術的な意義 ア.本件発明は,上記第3に示すとおりであり,そのうちの特に構成要件CないしEにより,制御対象に異常現象が発生すると,発生した異常現象に対応する異常種類が表示装置に表示され,作業者は表示された異常種類をタッチにより指定することで,その指定された異常種類に対応するラダー回路が表示される(【0013】,【0035】)という機能が生じる。 イ.また,ラダー回路の入力要素は,他のラダー回路の出力要素であり得るという連鎖的な関係があるから,異常表示をもたらした入力要素が真の原因でなく,その入力要素を出力要素とする別の入力要素が真の異常原因であることもある(【0015】)が,本件発明の特に構成要件Fにより,表示されたラダー回路の入力要素をタッチにより指定すれば,その指定された入力要素を出力要素とするラダー回路が検索されて表示されるというように,入出力の連鎖的な関係を遡及して,真の原因である入力要素を特定できるまで次々にラダー回路を読み出すことができる(【0016】,【0040】)という機能が生じる。 ウ.さらに,入出力の連鎖的な関係を遡及しすぎて戻る場合には,本件発明の特に構成要件Fにより,ラダー回路の出力要素をタッチにより指定すれば,その出力要素を入力要素とするラダー回路に戻すことができる(【0016】,【0041】)という機能が生じる。 エ.そして,上記のア.ないしウ.に示す機能により,作業者は,タッチパネルに手を触れるという簡単な操作で,異常表示をもたらした真の原因である入力要素を知ることができるため,速やかに復旧処理を行うことができ(【0016】,【0042】),本件発明の課題を解決できるという技術的な意義を理解できる。 2.本件発明の構成要件E及びFの「とき」の記載 本件発明の構成要件E及びFには,それぞれ以下の記載がある。 (構成要件E) 「異常種類が当該タッチにより指定されたときにその指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する」(以下「記載1」という。) (構成要件F) 「表示されたラダー回路の入力要素が当該タッチにより指定されたときにその入力要素を出力要素とするラダー回路を検索して表示し」(以下「記載2」という。) 「表示されたラダー回路の出力要素が当該タッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する」(以下「記載3」という。) 3.本件発明の「とき」の字義について 上記の記載について,請求人は,記載1の「とき」は単なる条件を意味するのに対して,記載2及び3の「とき」は具体的なタイミングを意味していると主張している。 「とき」という文言は,「○5特定の時期。」[株式会社岩波書店 広辞苑第五版](なお,「○5」は数字の5を○で囲む文字を意味する。以下同じ。)という意味のほか,「○10(連体修飾語をうけ,接続助詞的に)次に述べることの条件を示すのに使う。・・・の場合。『知事に事故がある―は,副知事がこれを行う』」[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]という意味など,多数の意味を有する文言であり,請求人のいう「単なる条件」が上記の○10の意味に相当し,「具体的なタイミング」が上記の○5の意味に相当するといえる。 記載1ないし3は,いずれも「・・・が当該タッチにより指定されたときに・・・表示」するという文章構造である点で共通するから,「とき」の意味についても記載1ないし3で共通している蓋然性は高いが,特許請求の範囲の記載のみでは,単なる条件の意味なのか,それとも具体的なタイミングの意味なのかは明らかでない。 そのため,本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明及び図面を参酌して,記載1ないし3の「とき」を解釈する。 4.発明の詳細な説明及び図面を参酌した「とき」の解釈 (1)記載1の「とき」について 記載1は,図11のステップS33において総合異常画面にタッチ入力されたか否かを判別し,さらに,ステップS34でタッチされたキーを判別して,個別異常名称がタッチされている場合に,ステップS35ないし37を経て,ステップS38において回路モニタの表示が行われる(【0035】)ことを記載したものであり,ステップS38で回路モニタを表示することが,記載1の「その指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する」ことに対応する。 そうすると,記載1の「異常種類が当該タッチにより指定された」に対応するのは,ステップS33において総合異常画面にタッチ入力されたか否かを判別し,さらに,ステップS34でタッチされたキーが,個別異常名称であると判別することである。そして,ステップS33及び34の判別は,タッチ入力の有無やタッチされたキーの種類を判別するものであり,特定の時期を判別するものではないから,記載1の「とき」は,具体的なタイミングを意味するものではなく,単なる条件を意味すると解するべきである。 (2)記載2の「とき」について 記載2は,図12のステップS53においてラダー回路画面にタッチ入力されたか否かを判別し,さらにステップS54でタッチされたのが入力要素か否かを判別し,入力要素がタッチされている場合に,ステップS55及び50を経て,ステップS51において入力要素を出力要素とするラダー回路の表示が行われる(【0040】)ことを記載したものであり,ステップS51で入力要素を出力要素とするラダー回路を表示することが,記載2の「その入力要素を出力要素とするラダー回路を検索して表示」することに対応する。 そうすると,記載2の「表示されたラダー回路の入力要素が当該タッチにより指定された」に対応するのは,ステップS53においてラダー回路画面にタッチ入力されたか否かを判別し,さらにステップS54でタッチされたのが入力要素か否かを判別することである。そして,ステップS53及び54の判別は,タッチ入力の有無やタッチされた入出力要素の種類を判別するものであり,特定の時期を判別するものではないから,記載2の「とき」も,具体的なタイミングを意味するものではなく,単なる条件を意味すると解するべきである。 (3)記載3の「とき」について 記載3は,図12のステップS53においてラダー回路画面にタッチ入力されたか否かを判別し,次にステップS54でタッチされたのが入力要素か否かを判別し,入力要素でない場合に,さらにステップS56でタッチされたのが出力要素か否かを判別し,出力要素がタッチされている場合に,ステップS57を経て,ステップS58において出力要素を入力要素とするラダー回路の表示が行われる(【0041】)ことを記載したものであり,ステップS58で出力要素を入力要素とするラダー回路を表示することが,記載3の「その出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示」することに対応する。 そうすると,記載3の「表示されたラダー回路の出力要素が当該タッチにより指定された」に対応するのは,ステップS53においてラダー回路画面にタッチ入力されたか否かを判別し,次にステップS54でタッチされたのが入力要素か否かを判別し,入力要素でない場合に,さらにステップS56でタッチされたのが出力要素か否かを判別することである。そして,ステップS53,54及び56の判別は,タッチ入力の有無やタッチされた入出力要素の種類を判別するものであり,特定の時期を判別するものではないから,記載3の「とき」も,具体的なタイミングを意味するものではなく,単なる条件を意味すると解するべきである。 (4)小括 上記(1)ないし(3)に示すとおり,記載1ないし3の「とき」は,願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載及び図面を考慮することで,いずれも,単なる条件を意味すると解することができるから,本件発明の「当該タッチにより指定されたとき」という記載の意味は明確である。 5.請求人の主張について ア.請求人は,構成要件Eの記載1に対応する図11の処理(ステップS33ないし38の処理)では,ステップS33でタッチ入力の判別が行われた後に,ステップS38でラダー回路が表示されるまでの間に,ステップS35で確認画面が表示され,ステップS36で「はい」か「いいえ」かの判別が行われるのに対して,構成要件Fの記載2に対応する図12の処理(ステップS53ないし55,50及び51の処理)や,構成要件Fの記載3に対応する処理(ステップS53及び54並びに56ないし58の処理)では,ステップS53でタッチ入力の判別が行われた後に,ステップS51又は58でラダー回路が表示されるまでの間に,確認画面が表示されないことを根拠に,構成要件Eの「とき」は単なる条件を意味するが,構成要件Fの記載2及び3の「とき」は具体的なタイミングを意味していると主張している。(上記第5の1.[請求人]イ.及びウ.) イ.しかし,構成要件E及びFの「・・・が当該タッチにより指定されたとき」の意味は,「当該タッチにより指定された」ことが,具体的にどのように認識され,処理されているかにより解釈されるべきであり,タッチにより指定された後に,ラダー回路が表示されるまでの間に,確認画面が表示されるか否かや,確認画面で「はい」か「いいえ」を入力する必要があるか否かとは関係がないというべきである。 そして,上記4.(1)ないし(3)に説示するとおり,構成要件Eの記載1に対応するステップS33及び34の判別や,構成要件Fの記載2及び3に対応するステップS53,54及び56の判別は,特定の時期を判別するものではないから,構成要件E及びFの「とき」を具体的なタイミングと解することはできない。 したがって,請求人の当該主張は採用できない。 ウ.また,請求人は,構成要件E及びFでは「とき」が異なる意味に使われているから明確でないこと(上記第5の1.[請求人]エ.)や,構成要件Fの記載が明確でなく,第三者の利益が不当に害されていること(上記第5の1.[請求人]オ.),訂正審判請求において,被請求人自身が構成要件Eについて「ワンタッチで」操作すると主張しており,「当該タッチにより指定されたとき」が何を意味するのかを一義的に理解することができないこと(上記第5の1.[請求人]カ.)を主張している。 しかし,上記4.(4)に説示するとおり,構成要件E及びFの「とき」は,発明の詳細な説明の記載及び図面を考慮することで,いずれも条件を意味するものであると理解できるから,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 また,上記イ.に説示するとおり,「・・・が当該タッチにより指定されたとき」の意味は,確認画面が表示されるか否かや,確認画面で「はい」か「いいえ」を入力する必要があるか否かとは関係がないから,請求人のこれらの主張も採用できない。 エ.さらに,請求人は,平成28年10月18日付けの審決で,「当該タッチにより指定されたとき」が具体的タイミングを示すものであることを認定している旨を主張している(上記第5の1.[請求人]キ.)が,当該審決において請求人が指摘する記載が,請求人の主張するような認定をしているものとは解されないから,請求人の当該主張は失当である。 6.無効理由1(明確性)についてのむすび したがって,本件発明の「当該タッチにより指定されたとき」という記載の意味は明確であり,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件特許は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。 第7 無効理由2(新規事項)についての当審の判断 1.新規事項の有無について 構成要件E及びFの「当該タッチにより」という事項は,平成28年7月29日の訂正審判請求により訂正されたものである。 そこで,当該事項が,当該訂正審判請求による訂正前の願書に添付した明細書及び図面に記載した範囲内のものであるかどうかを検討する(なお,当該訂正審判請求による訂正において,明細書の段落【0012】の記載が訂正されたので,それ以外の明細書及び図面の記載は,上記第6の1.(1)で摘示した記載に基づいて検討する。)。 構成要件Eの記載1に対応する具体的な処理は,図11のステップS33ないし38,並びに明細書の段落【0035】に記載されており(上記第6の4.(1)),構成要件Fの記載2に対応する具体的な処理は,図12のステップS53ないし55,50及び51,並びに明細書の段落【0040】に記載されており(上記第6の4.(2)),構成要件Fの記載3に対応する具体的な処理は,図12のステップS53,54,56,57及び58,並びに明細書の段落【0041】に記載されている(上記第6の4.(3))。 したがって,構成要件E及びFの「当該タッチにより」という事項は,願書に添付した明細書及び図面に記載した範囲内のものである。 2.請求人の主張について 請求人は,構成要件E及びFの「当該タッチにより指定されたとき」の意味が条件を意味するものであれば,構成要件Fについては訂正根拠がなく,「当該タッチにより指定されたとき」の意味が具体的なタイミングを意味するものであれば,構成要件Eについては訂正根拠がないと主張しているが(上記第5の2.[請求人]),上記1.に説示するとおり,構成要件E及びFの「当該タッチにより」という事項に係る訂正は,いずれも願書に添付した明細書及び図面に記載されているから,請求人の主張は採用できない。 3.無効理由2(新規事項)についてのむすび したがって,構成要件E及びFの「当該タッチにより」という事項に係る訂正は,いずれも願書に添付した明細書及び図面に記載した範囲内においてしたものであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件特許の明細書の特許請求の範囲の訂正が,特許法126条5項の規定に違反してされたものであるということはできない。 第8 無効理由3(進歩性)についての当審の判断 1.本件発明 本件発明は,上記第3に記載したとおりであり,本件発明が解決しようとする課題や技術的意義は,上記第6の1.(2)及び(3)に記載したとおりである。 2.甲号証の記載事項,甲号証記載の技術的事項及び引用発明 (1)甲1の記載事項 甲1は,平成10年11月頃に頒布されたものと推認され,以下の事項が記載されている。 4及び5ページの表 「ラインアップ GOT900シリーズの機種構成 製品形名 A975GOT-TBA A975GOT-TBD A970GOT-TBA A970GOT-TBD A970GOT-SBA A970GOT-SBD A960GOT-EBA A960GOT-EBD F940GOT-SWD F940GOT-LWD ・・・(以下省略)」 (2)甲2の記載事項 甲2は,平成10年11月頃に頒布されたものと推認され,以下の事項が記載されている。 ア.甲2の表紙を1枚目とした場合の5枚目の8ないし12行 「本マニュアルの位置づけと利用方法 GOT900シリーズに関するマニュアルは,下記の種類があります。 各マニュアルは目的別に分類されておりますので,目的にあったマニュアルをお読みいただき,GOT本体およびSW1D5C-GOTR-PACKの取扱い,操作,機能についてご理解ください。」 イ.甲2の表紙を1枚目とした場合の7枚目の1ないし8行 「【SW1D5C-GOTR-PACK形オペレーティングマニュアル】 ・パソコンにソフトウェアをインストールする。 ・各ソフトウェアを起動する。 ・パソコンとGOTの接続方法を知る。 ・ソフトウェアの画面構成を知る。 ・各種モニタ機能の概要を把握する。 ・モニタ画面を表示するまでの手順を知る。 ・ヘルプ機能の使用方法を知る。」 ウ.甲2の表紙を1枚目とした場合の7枚目の14ないし19行 「【GOT-A900シリーズオペレーティングマニュアル(拡張機能・オプション機能編)】 ・ユーティリティ機能を行う。 ・システムモニタ機能を行う。 ・回路モニタ機能を行う。 ・特殊機能ユニットモニタ機能を行う。 ・ネットワークモニタ機能を行う。」 エ.6-16ページの(1)の項目 「(1)エラー内容の履歴表示 条件成立(エラー発生)した日時とコメントの履歴表を表示します。 ・・・(以下省略))」 オ.6-16ページの(2)の項目 アラーム履歴表示機能に関して,「発生日付時刻」,「メッセージ」,「復旧」,「確認」という欄に,エラーに対応する表示が3種類表示されており,「ライン2異常」という「メッセージ」を指で反転表示させ,「詳細表示」のタッチスイッチを指で選択すると,詳細表示画面が表示されることの図示がある。 「 [図:0001380178000006.jpg] 」 カ.6-17ページの「拡張機能およびその他行える機能」という表 「拡張機能およびその他行える機能」という表の右欄の4及び5行には, 「・ON状態,指定範囲内となったデバイスの該当デバイスを検索した状態で回路モニタ機能を起動することができます。」との記載がある。 「 [図:0001380178000007.jpg] 」 キ.甲2の表紙を1枚目とした場合の8枚目の表の1ないし7行 「略称/総称/用語 内容 ・・・(中略)・・・ 「GOT900シリーズ A975GOT,A970GOT, A960GOT,F940GOTの総称」 (3)甲3の記載事項 甲3は,平成10年11月頃に頒布されたものと推認され,以下の事項が記載されている。 ア.6-4ページ 図面及び文字により,シーケンサCPUからシーケンスプログラムを読み出し,回路モニタ画面に表示させる操作について,回路モニタ画面の「メニュー」をタッチすると,回路読み出し画面が表示され,当該画面には,「デバイス検索」,「接点検索」,「コイル検索」,「要因検索」のボタンが存在し,接点又はコイルを指定して読み出す場合に,「接点検索」又は「コイル検索」をタッチし,入力画面においてデバイス名又はデバイス番号を入力し,リターンキーをタッチして入力を確定すると,回路モニタ画面に遷移することが示されている。 「 [図:0001380178000008.jpg] 」 イ.6-6ページ 「*3 回路モニタ時に,デバイス検索,接点検索,コイル検索を行った場合,読出した検索デバイスを含む回路ブロックのみを表示します。」と記載されている。 また,回路モニタ画面に検索したデバイスを含む回路が表示されることが図示されている。 「 [図:0001380178000009.jpg] 」 ウ.甲3の表紙を1枚目とした場合の7枚目の表の1ないし7行 「略称/総称/用語 内容 ・・・(中略)・・・ 「GOT900シリーズ A975GOT,A970GOT, A960GOT,F940GOTの総称」 (4)甲1ないし3の技術的な関係について 甲1は,三菱グラフィックオペレーションターミナル(以下「GOT」という。)のカタログで,製品形名 A975GOT-TBA,A975GOT-TBD,A970GOT-TBA,A970GOT-TBD,A970GOT-SBA,A970GOT-SBD,A960GOT-EBA,A960GOT-EBD,F940GOT-SWD,F940GOT-LWDの10種類の製品が存在し(上記(1)),これらの製品は,甲2及び3におて,「GOT900シリーズ」と総称されることを理解できる(上記(2)キ.及び上記(3)ウ.)。 そして,GOT900シリーズのマニュアルは,目的別に分類されており(上記(2)ア.),甲2は,GOTとパソコンを接続して,パソコンにソフトウェアをインストールしたり,GOTの各種モニタ機能の概要を把握するといった,基本的な機能を説明するマニュアルであること(上記(2)イ.),甲3は,GOT900シリーズのうち,記号Aで始まるGOT-A900シリーズ,具体的には,A975GOT,A970GOT及びA960GOTに係る製品に関する拡張機能・オプション機能を説明するマニュアルであること(上記(2)ウ.)を理解できる。 そして,当業者は,分類された各マニュアルを全て通読することで,GOT本体の取扱いや操作,機能を完全に理解できるから,これらの各マニュアルは一体の刊行物として評価できるものである。近年,技術が複雑になり情報が膨大となるため,マニュアルを分冊化することが一般的に行われており,甲2及び3は,GOT-A900シリーズに関するマニュアルが単に形式的に分冊とされた程度であると当業者は理解するものであり,甲2及び3を一体として認識することは当然に行われることにすぎない。 したがって,甲2及び3に記載された事項を総合して,A975GOT,A970GOT及びA960GOTに係る製品の発明を認定することができるといえる。 なお,上記のとおり,甲2及び3は,目的別に分類されたマニュアルであり,相互に参照することを前提に作成されているといえるのに対して,甲1は,カタログであり,甲2及び3のように相互に参照することを前提に作成されているとはいえないから,甲1ないし3に記載された事項を総合して,「刊行物に記載された発明」を認定することはできない。 (5)甲2及び3に記載された技術的事項 甲2及び3の記載事項を総合すると,以下の技術的事項が記載されているということができる。 ア.A975GOT,A970GOT及びA960GOTに係る製品は,モニタ(上記(3)ア.ないしウ.)として機能し,シーケンサと接続して用いられる(上記(3)ア.)こと。 イ.エラー発生の日時やコメントを表示する(上記(2)エ.)ことから,エラー発生をモニタするプログラムを有しているといえること。 ウ.エラーの発生がモニタされたときにモニタされたエラーに対応するメッセージが表示される(上記(2)オ.)こと。 エ.タッチキーを有しており,基本的な機能であるアラーム履歴表示機能について,表示された複数種類のメッセージから1のメッセージを指で反転表示させ,「詳細表示」のタッチキーを指で選択すると,詳細表示画面が表示される(上記(2)オ.)こと。 オ.(ア)上記エ.に示す基本的な機能であるアラーム履歴表示機能に対して,拡張機能・オプション機能として,ON状態,指定範囲内となったデバイスの該当デバイスを検索した状態で回路モニタ機能を起動することができる(上記(2)カ.)ところ,ON状態とはエラーの発生を意味すること(上記(2)オ.)。 (イ)拡張機能・オプション機能として,回路モニタ時にデバイス検索を行った場合に,読み出したデバイスを含む回路ブロックのみを表示させる(上記(3)イ.)こと。 (ウ)拡張機能・オプション機能において,上記(ア)のようにエラーが発生したデバイスを検索するためには,エラーを特定する必要があることから,基本的な機能であるアラーム履歴表示機能と同様に,表示された複数種類のメッセージから1のメッセージを指で反転表示させることを推認できること。 (エ)拡張機能・オプション機能において,仮に,表示された複数種類のメッセージから1のメッセージを指で反転表示させることだけで回路モニタ機能が起動すれば,基本的な機能であるアラーム履歴表示機能による詳細表示画面を表示できなくなることから,拡張機能・オプション機能において回路モニタ機能を起動するためには,アラーム履歴表示機能と同様に,何らかのタッチキーを選択すると推認できること。 (オ)上記の(ウ)及び(エ)から,拡張機能・オプション機能として,表示された複数種類のメッセージから1のメッセージを指で反転表示させ,何らかのタッチキーを選択すると,エラーが発生したデバイスを検索した状態で回路モニタ機能が起動され,検索されたデバイスを含む回路ブロックのみが表示されるということができること。 カ.(ア)回路モニタ機能は,デバイス検索,接点検索,コイル検索及び要因検索を行うことができる(上記(3)ア.及びウ.)こと。 (イ)コイル検索は,「コイル検索」のタッチキーをタッチにより指定し,入力画面においてデバイス名又はデバイス番号を入力することにより指定し,タッチにより入力を確定すると(上記(3)ア.),読み出した検索デバイスを含む回路ブロックのみが表示される(上記(3)イ.)こと。 (ウ)接点検索は,「接点検索」のタッチキーをタッチにより指定し,入力画面においてデバイス名又はデバイス番号を入力することにより指定し,タッチにより入力を確定すると(上記(3)ア.),読み出した検索デバイスを含む回路ブロックのみが表示される(上記(3)イ.)こと。 (6)引用発明 上記の(5)に示す技術的事項を,本件発明の構成要件AないしGに対応するようにA’ないしG’としてまとめると,甲2及び3には,以下の発明が記載されているということができる。 「A’ シーケンサと接続して用いられ,モニタとして機能するA975GOT,A970GOT及びA960GOTに係る製品であって, B’ エラー発生をモニタするプログラムと, C’ エラーの発生がモニタされたときにモニタされたエラーに対応するメッセージが表示され, D’ 表示された複数種類のメッセージから1のメッセージを指で反転表示させることができるタッチキーと, E’ 拡張機能・オプション機能として,表示された複数種類のメッセージから1のメッセージを指で反転表示させ,何らかのタッチキーを選択すると,エラーが発生したデバイスを検索した状態で回路モニタ機能が起動され,検索されたデバイスを含む回路ブロックのみが表示される回路モニタ機能を有し, F’ 回路モニタ機能は, タッチキーと, 「コイル検索」のタッチキーをタッチにより指定し,入力画面においてデバイス名又はデバイス番号を入力することにより指定し,タッチにより入力を確定すると,読み出した検索デバイスを含む回路ブロックのみが表示されるコイル検索と, 「接点検索」のタッチキーをタッチにより指定し,入力画面においてデバイス名又はデバイス番号を入力することにより指定し,タッチにより入力を確定すると,読み出した検索デバイスを含む回路ブロックのみが表示される接点検索と,を含む G’ A975GOT,A970GOT及びA960GOTに係る製品。」 (7)甲5の記載事項 甲5は,平成8年(1996年)12月頃に頒布されたものと推認され,以下の事項が記載されている。 ア.表紙を1枚目とした場合の2及び3枚目 「新登場<MELSEC-QnA> 一歩先を見据えたその思想が,技術が, ソフトウェア開発の革命となる。 FAシステムの中核として,ますます重要性をますシーケンサ。 システムの大規模化・複雑化にともない,適応範囲は拡大,制御プログラムは急速に肥大化しています。 その結果,シーケンサを利用した制御システムにおけるソフトウェアコストが増加。 ・・・(中略)・・・ すなわち,肥大化するプログラムを効率よく開発,かつマンマシンインタフェースの充実したソフトウェアツール,およびそれらの基盤となるシーケンサが必要とされているのです。 これらの観点から三菱電機が開発した,次世代シーケンサ<MELSEC-QnA>は,さらに効率的なソフトウェア開発を支援していきます。 ・・・(以下省略)」 イ.12ページ中欄 「●接点,コイルの検索 回路図上のコイル,接点にカーソルを移動して指定するだけで,使用されているデバイスの接点,コイルの位置にカーソルを移動します。」 「 [図:0001380178000010.jpg] 」 (8)甲12の記載事項及び甲12記載の技術的事項 ア.甲12は,平成6年7月15日に公開されたものと認められ,以下の事項が記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は,多岐に及ぶ設備異常を発生する可能性を有した設備において,設備の異常を専門知識をもたないオペレーターでも簡単に判断でき,その異常に対する復旧が速やかに行えるようにした設備状態監視装置に関する。」 「【0014】以下,前記故障状態監視装置の操作方法について説明する。たとえば操業中に設備の押出し装置が故障し停止した場合を例に採り,順を追いながら具体的に詳述する。図2の上段に示されるタッチキー付き表示器13のメニュー画面1において,No2「押出しインターロック確認」の項目を選択しタッチする。すると,画面は「押出しインターロック確認」の画面2へ移行する。画面中でリレーシンボルがONしていないところを探す。この時,ディーゼルクラッチのリレーがONしていないとすると,そのシンボルの所をタッチする。そうすると,画面は次の画面4へ移行し,「ディーゼルクラッチのLSが動作しています。」というように故障の原因を表示するとともに,「現場を点検して下さい。」というように,その対応のコメントを表示する。 【0015】次に,図3に示される「押出しインターロック確認」画面3で,押出安全のリレーシンボルがONしていない場合を追ってみる。リレーシンボルにタッチすることにより,画面は「押出安全確認」画面4に移行する。画面4を見ると,バリカムエラーのリレーシンボルがONしていない。そこでバリカムエラーのリレーシンボルにタッチすると画面5に移行し,「押出のバリカムにエラーが発生しました。」というように故障原因を表示するとともに,「保全電気に連絡して下さい。」というようにその対応を表示する。 【0016】このように,オペレーターは故障発生時に,その故障状態を迅速に把握することができるとともに,表示されるコメントによって自分が対応できる故障か否かを判断することができ,全ての故障を保守員に任せる場合と比較すると,無駄な時間を少なくすることができるようになる。」 「図2 [図:0001380178000011.jpg] 」 「図3 [図:0001380178000012.jpg] 」 イ.上記ア.の記載事項からみて,甲12には,以下の技術的事項が記載されているということができる。 「押出しインターロック確認」の画面3のラダー回路の『押出安全』のリレーシンボルをタッチすることにより,『押出安全』をコイルとするラダー回路が表示され,バリカムエラーのリレーシンボルがONしていないことを確認できること(【0015】並びに図3の画面3及び4)。 (9)甲16の記載事項及び甲16記載の技術的事項 ア.甲16は,平成7年2月21日に公開されたものと認められ,以下の事項が記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は,シーケンシャルファンクションチャート(以下,SFCという)プログラムの各ステップ,トランジションに使用されているデバイスを記憶するか,あるいはシーケンスプログラムにより関連するデバイスをグループ化し,対応するON/OFF状態を記憶することにより,プログラマブルコントローラにおいて制御されている装置の故障を検出するプログラマブルコントローラの故障診断システムに関する。」 「【0028】 【実施例】 〔実施例1〕以下,この発明に係るプログラマブルコントローラの故障診断システムの実施例を図面に基づいて説明する。図1は,この発明に係るプログラマブルコントローラにおける故障診断システムの概略構成を示すブロック図である。図において,1はプログラマブルコントローラ,2はプログラマブルコントローラ1の周辺装置,3はプログラマブルコントローラ1により制御される制御対象,4は入出力信号である。 【0029】また,プログラマブルコントローラ1は,入出力信号を制御する制御実行部5と,SFCプログラムの現在実行中であるステップ番号を格納する実行ステップテーブル5Aと,プログラマブルコントローラ1を制御するためのプログラムを格納する制御プログラム記憶部6と,故障が発生したことを判断する故障モニタ部7と,故障を判断するためのデバイス条件を格納するデバイス条件記憶部9と,周辺装置2と通信を行う通信部10と,デバイスの状態を格納する故障デバイス記憶部16とから構成されている。 【0030】また,周辺装置2は,プログラマブルコントローラ1と通信を行う通信部11と,プログラマブルコントローラ1を制御するプログラムを作成するプログラム編集部12と,プログラマブルコントローラ1内部の状態を表示するモニタ部13と,故障を判断するデバイス条件を作成するデバイス条件作成部14と,画面/キー入力部15とから構成されている。」 「【0038】プログラマブルコントローラ1が,上記処理を実行した後,制御実行部5および制御プログラムの内容に基いた処理が実行される。このとき,外部機器の故障によりステップが一定時間移行しないとき,制御実行部5は故障モニタ部7を起動する。この場合,故障モニタ部7は,図4に示すフローチャートに基づいて処理を実行する。まず,起動されると,実行ステップテーブル5Aより実行中のステップ番号を取り出す(S70)。このステップが停止ステップである。次に,デバイス条件テーブル50より,取り出したステップ番号の位置の関連デバイスを取り出し(S71),さらに,デバイスの状態を調べて(S72),該デバイスの状態を故障デバイス記憶部16に格納する(S73)。 【0039】したがって,周辺装置2のモニタ部13により,通信部11を介して故障デバイス記憶部16のデータを読み出すことにより,停止したステップに関連するデバイスを確認することができる。例えば,LS0が故障してONのままの状態になったとき,SFCプログラム30において,S5(加工開始フラグ)の移行T4はLS0が移行条件であるので,S5を実行するときは既に成立しており,直ちにS6(ドリル左)に移行する。このため,M0はOFFになる。S1の移行T1(加工開始フラグ)において,移行条件M0はOFFであるので,移行条件が成立せず,SFCプログラム30はS1から移行しない。」 「図1 [図:0001380178000013.jpg] 」 イ.上記ア.の記載事項からみて,甲16には,以下の(ア)及び(イ)が記載されているということができる。 (ア)プログラマブルコントローラ1の故障モニタ部7は,外部機器の故障によりプログラムのステップが一定時間移行しないときに起動し,停止したステップの位置の関連デバイスの状態を調べて,その状態を故障デバイス記憶部16に格納すること(【0029】及び【0038】)。 (イ)プログラマブルコントローラ1の周辺装置2のモニタ部13は,故障デバイス記憶部16のデータを読み出すことにより,停止したステップに関連するデバイスを確認すること(【0039】)。 ウ.上記イ.(ア)及び(イ)をまとめると,甲16には,以下の技術的事項が記載されているということができる。 「プログラマブルコントローラ1の周辺装置2のモニタ部13が,ステップが一定時間移行しないことにより,前記プログラマブルコントローラ1の故障デバイス記憶部16に格納されたデバイスの状態のデータを読み出して停止したステップに関連するデバイスを確認すること。」 3.本件発明と引用発明の対比 本件発明と引用発明を構成要件ごとに対比すると,以下のとおりである。 (1)構成要件A及びA’について 引用発明の「シーケンサ」は,各種装置を制御するための制御装置であるから,本件発明の「プログラマブル・コントローラ」に相当するということができ,シーケンサは当然に制御対象を制御しているといえるから,引用発明において「シーケンサと接続して用」いられることは,本件発明において「機械・装置・設備等の制御対象を制御するプログラマブル・コントローラにおいて用」いられることに相当する。 また,引用発明の「モニタとして機能するA975GOT,A970GOT及びA960GOTに係る製品」は,モニタ,すなわち表示装置として機能するから,本件発明の「表示装置」に相当する。 (2)構成要件B及びB’について 引用発明の「エラー発生」は,シーケンサの制御対象に異常現象が発生することであるから,引用発明の「エラー発生をモニタするプログラム」と本件発明の「前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムであって,当該異常現象が発生したのに対応して,前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラム」は,「前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラム」という点で一致する。 (3)構成要件C及びC’について 引用発明の「エラーの発生がモニタされたとき」が本件発明の「そのプログラムで異常現象の発生がモニタされたとき」に相当し,引用発明の「モニタされたエラーに対応するメッセージ」が本件発明の「モニタされた異常現象に対応する異常種類」に相当することは明らかである。 (4)構成要件D及びD’について 引用発明の「複数種類のメッセージ」が本件発明の「1又は複数の異常種類」に相当することや,「1のメッセージを指で反転表示させる」ことが「1の異常種類に係る異常名称をタッチして指定する」ことに相当することは明らかであり,引用発明の「反転表示させることができるタッチキー」は,そのようなタッチキーを備えた表示画面,すなわちタッチパネルが当然に存在するといえるから,本件発明の「タッチして指定するタッチパネル」に相当する。 (5)構成要件E及びE’について ア.引用発明の「回路ブロック」が本件発明の「ラダー回路」に相当することは明らかである。 イ.引用発明の「回路モニタ機能」は,その機能を実現する手段をともなうことが明らかだから,本件発明の「ラダー回路を表示する手段」に相当する。 ウ.引用発明の「検索されたデバイスを含む回路ブロック」における「検索されたデバイス」は,「表示された複数種類のメッセージから1のメッセージを指で反転表示」させることによりエラーが指定され,その「エラーが発生したデバイス」が検索されたものであるから,引用発明の「検索されたデバイスを含む回路ブロック」は,本件発明の「その指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路」に相当する。 エ.引用発明の「表示された複数種類のメッセージから1のメッセージを指で反転表示」させることは,回路ブロックを表示させるために,異常名称をタッチするという条件を意味するところ,上記第6の4.(1)に説示するとおり,本件発明の「異常種類が当該タッチにより指定されたとき」という記載は,画面にタッチ入力がされたか否かや,タッチされたキーが異常名称であるか否かという条件を意味するものであり,上記第6の5.イに説示するとおり,ラダー回路が表示されるまでの間に,他のタッチキーの入力が必要か否かとは関係がないから,引用発明の「表示された複数種類のメッセージから1のメッセージを指で反転表示」させることは,本件発明の「異常種類が当該タッチにより指定されたとき」に相当する。 オ.上記ア.ないしエ.から,引用発明の「拡張機能・オプション機能として,表示された複数種類のメッセージから1のメッセージを指で反転表示させ,何らかのタッチキーを選択すると,エラーが発生したデバイスを検索した状態で回路モニタ機能が起動され,検索されたデバイスを含む回路ブロックのみが表示される回路モニタ機能」は,本件発明の「異常種類が当該タッチにより指定されたときにその指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段」に相当する。 (6)構成要件F及びF’について ア.引用発明の「回路モニタ機能」は,回路ブロック,すなわちラダー回路を表示する機能であり,その機能を実現するための手段をともなうことは明らかだから,本件発明の「ラダー回路を表示する手段」に相当する。 イ.引用発明の「タッチキー」は,当然にタッチパネルが存在することを前提とするから,本件発明の「表示されたラダー回路の入出力要素のいずれかをタッチして指定する前記タッチパネル」と対比すると,「タッチパネル」という点で一致する。 ウ.引用発明の「『コイル検索』のタッチキーをタッチにより指定し,入力画面においてデバイス名又はデバイス番号を入力することにより指定し,タッチにより入力を確定すると,読み出した検索デバイスを含む回路ブロックのみが表示されるコイル検索」は,コイルのデバイスを検索して,その回路ブロックを表示するものであるところ,当該コイルのデバイスは本件発明の出力要素に相当するから,本件発明の「表示されたラダー回路の入力要素が当該タッチにより指定されたときにその入力要素を出力要素とするラダー回路を検索して表示」する手段と対比すると,「出力要素についてラダー回路を検索して表示」する手段という点で一致する。 エ.引用発明の「『接点検索』のタッチキーをタッチにより指定し,入力画面においてデバイス名又はデバイス番号を入力することにより指定し,タッチにより入力を確定すると,読み出した検索デバイスを含む回路ブロックのみが表示される接点検索」は,接点のデバイスを検索して,その回路ブロックを表示するものであるところ,当該接点のデバイスは本件発明の入力要素に相当するから,本件発明の「表示されたラダー回路の出力要素が当該タッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する手段」と対比すると,「入力要素についてラダー回路を検索して表示する手段」という点で一致する。 (7)構成要件G及びG’について 引用発明の「A975GOT,A970GOT及びA960GOTに係る製品」が本件発明の「表示装置」に相当する。 (8)一致点及び相違点について 上記の(1)ないし(7)から,本件発明と引用発明は,以下の点で一致し,構成要件F及びF’について以下の相違点1で相違し,構成要件B及びB’について以下の相違点2で相違する(相違点を含む構成要件をB’’及びF’’の符号で記載する。)。 <一致点> 「A 機械・装置・設備等の制御対象を制御するプログラマブル・コントローラにおいて用いられる表示装置であって, B’’前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムと, C そのプログラムで異常現象の発生がモニタされたときにモニタされた異常現象に対応する異常種類を表示する手段と, D 表示された1又は複数の異常種類から1の異常種類に係る異常名称をタッチして指定するタッチパネルと, E 異常種類が当該タッチにより指定されたときにその指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段と,を有し, F’’前記ラダー回路を表示する手段は, タッチパネルと, 出力要素についてラダー回路を検索して表示し, 入力要素についてラダー回路を検索して表示する手段を含む G 表示装置。」である点。 <相違点1> 構成要件F’’に係るラダー回路を表示する手段が, 本件発明は「表示されたラダー回路の入出力要素のいずれかをタッチして指定する前記タッチパネルと,表示されたラダー回路の入力要素が当該タッチにより指定されたときにその入力要素を出力要素とするラダー回路を検索して表示し,表示されたラダー回路の出力要素が当該タッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する手段を含む」ものであるのに対して, 引用発明は「タッチキーと,『コイル検索』のタッチキーをタッチにより指定し,入力画面においてデバイス名又はデバイス番号を入力することにより指定し,タッチにより入力を確定すると,読み出した検索デバイスを含む回路ブロックのみが表示されるコイル検索と,『接点検索』のタッチキーをタッチにより指定し,入力画面においてデバイス名又はデバイス番号を入力することにより指定し,タッチにより入力を確定すると,読み出した検索デバイスを含む回路ブロックのみが表示される接点検索と,を含む」ものである点。 <相違点2> 構成要件B’’に係る制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムが, 本件発明は「当該異常現象が発生したのに対応して,前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラム」であるのに対して, 引用発明は,そのようなプログラムかどうか不明な点。 4.相違点2の判断 事案に鑑みて,まず,相違点2について応検討する。 甲16記載の技術的事項は,「プログラマブルコントローラ1の周辺装置2のモニタ部13が,ステップが一定時間移行しないことにより,前記プログラマブルコントローラ1の故障デバイス記憶部16に格納されたデバイスの状態のデータを読み出して停止したステップに関連するデバイスを確認すること。」(上記2.(9)ウ.)というものである。 甲16記載の技術的事項の「ステップが一定時間移行しないことにより,前記プログラマブルコントローラ1の故障デバイス記憶部16に格納されたデバイスの状態のデータ」は,ステップが一定時間移行しないという異常な現象が発生したことに対応して,プログラマブルコントローラ1の故障デバイス記憶部16の所定のアドレスに,デバイスの状態のデータが格納されることを意味し,デバイスの状態のデータが格納されれば,当該アドレスのデータが変化することは明らかであるから,甲16記載の技術的事項の「ステップが一定時間移行しないことにより,前記プログラマブルコントローラ1の故障デバイス記憶部16に格納されたデバイスの状態のデータ」は,本件発明の「当該異常現象が発生したのに対応して,前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したこと」に相当する。 また,甲16記載の技術的事項の「プログラマブルコントローラ1の周辺装置2のモニタ部13が,・・・データを読み出して停止したステップに関連するデバイスを確認すること。」は,デバイスの状態を,読み出したデータの変化によって認識することを意味し,モニタ部13がそのように認識するためのプログラムを有することは明らかであるから,甲16記載の技術的事項の「プログラマブルコントローラ1の周辺装置2のモニタ部13が,・・・データを読み出して停止したステップに関連するデバイスを確認すること。」は,本件発明の「前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムであって・・・データが変化したことを認識するプログラム」に相当するということができる。 そうすると,上記相違点2に係る本件発明の構成要件Bに相当する構成は,甲16記載の技術的事項に開示されているといえる。 そして,引用発明と甲16記載の技術的事項は,プログラマブル・コントローラの制御対象の異常を認識する技術として共通するから,引用発明のプログラムとして,甲16記載の技術的事項に係るプログラムを適用することは当業者が容易に想到できた事項である。 5.相違点1の判断 (1)本件発明のラダー回路の検索 ア.本件発明のラダー回路の検索は,「表示されたラダー回路の入力要素が当該タッチにより指定されたときにその入力要素を出力要素とするラダー回路を検索」(以下「入力要素のタッチ検索」という。)する機能と,「表示されたラダー回路の出力要素が当該タッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索」(以下「出力要素のタッチ検索」という。)する機能を有している。 イ.まず,入力要素のタッチ検索は,具体的には,本件特許に係る図面の図12のステップS51で「Addのアドレスを出力要素とする回路を検索表示」することで行われ,その検索の条件は,タッチされた要素のアドレスである「Addのアドレス」の条件と,そのアドレスを「出力要素とする」という条件の2種類の検索条件が存在するが,本件発明は,入力要素をタッチにより指定するだけで,当該2種類の検索条件が設定される。 ウ.同様に,出力要素のタッチ検索は,図12のステップS58で「Addのアドレスを入力要素とする回路を検索表示」することで行われ,本件発明は,出力要素をタッチにより指定するだけで,「Addのアドレス」の条件と,そのアドレスを「入力要素とする」条件の2種類の検索条件が設定される。 エ.このように,本件発明のラダー回路の検索は,入力要素や出力要素をタッチにより指定するだけで,2種類の検索条件が設定されるものである。 (2)引用発明のラダー回路の検索 ア.引用発明のラダー回路の検索は,「『接点検索』のタッチスイッチをタッチし,入力画面においてデバイス名又はデバイス番号を入力し,タッチにより入力を確定すると,読み出した検索デバイスを含む回路ブロックのみが表示される接点検索」と,「『コイル検索』のタッチスイッチをタッチし,入力画面においてデバイス名又はデバイス番号を入力し,タッチにより入力を確定すると,読み出した検索デバイスを含む回路ブロックのみが表示されるコイル検索」を有している。 イ.そして,引用発明の「接点」及び「コイル」は,本件発明の「入力要素」及び「出力要素」に相当するから,引用発明のコイル検索において,デバイス名又はデバイス番号として接点のデバイス名を入力すれば,そのデバイスをコイルとして含むラダー回路が検索されることになり,本件発明の「入力要素のタッチ検索」と同様の検索結果が得られるといえる。 しかし,引用発明のコイル検索は,「コイル検索」という検索条件を入力し,その後にデバイス名又はデバイス番号に関する検索条件を入力するから,2種類の検索条件を設定するために,2回の入力を必要とする。 ウ.同様に,引用発明の接点検索において,デバイス名又はデバイス番号としてコイルのデバイス名を入力すれば,そのデバイスを接点として含むラダー回路が検索されるから,本件発明の「出力要素のタッチ検索」と同様の検索結果が得られるといえるが,引用発明の接点検索は,「接点検索」という検索条件を入力し,その後にデバイス名又はデバイス番号に関する検索条件を入力するから,2種類の検索条件を設定するために,2回の入力を必要とする。 (3)相違点1の容易想到性 ア.引用発明は,「表示されたラダー回路の入出力要素のいずれかをタッチして指定するタッチパネル」を有していない上に,上記(1)及び(2)に示すように,本件発明と引用発明は,ラダー回路の検索のための条件入力に関して本質的に異なるといえるが,以下に示すように,相違点1は,引用発明及び各甲号証に記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。 イ.甲6,7,8,9,11,13及び14は,本件特許に係る出願後に作成ないし発行されるか,公知日が不明なものであるから,相違点1が,引用発明並びに甲6,7,8,9,11,13及び14に記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。 ウ.甲1,4,5,10,15,16及び17は,「表示されたラダー回路の入出力要素のいずれかをタッチして指定するタッチパネル」について記載も示唆もないから,相違点1が,引用発明並びに甲1,4,5,10,15,16及び17に記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。 エ.甲12に記載された技術的事項は,「押出しインターロック確認」の画面3のラダー回路の『押出安全』のリレーシンボルをタッチすることにより,『押出安全』をコイルとするラダー回路が表示され,バリカムエラーのリレーシンボルがONしていないことを確認できること。」(上記2.(8)イ.)である。 そして,甲12に記載された技術的事項の「ラダー回路」が本件発明の「表示されたラダー回路」に相当することは明らかであり,以下同様に,「『押出安全』のリレーシンボル」が「入力要素」に相当し,「タッチすること」が「当該タッチにより指定されたとき」に相当し,「『押出安全』をコイルとするラダー回路が表示」されることが,「その入力要素を出力要素とするラダー回路を検索して表示」することに相当する。 したがって,相違点1に係る本件発明の構成要件Fのうち,入力要素のタッチ検索の機能や,その検索により,タッチした入力要素を出力要素とするラダー回路を表示すること,及び,表示されたラダー回路の入力要素をタッチして指定するタッチパネルは,甲12に開示されているということができる。 しかし,甲12には,相違点1に係る本件発明の構成要件Fのうち,出力要素のタッチ検索の機能については,記載も示唆もないから,「表示されたラダー回路の入出力要素のいずれかをタッチして指定するタッチパネル」についても記載されているとはいえない。 したがって,仮に,引用発明に甲12記載の技術的事項を適用できるとしても,相違点1に係る本件発明の構成要件Fに到達するとはいえないから,相違点1は,引用発明及び甲12に記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。 6.請求人の主張に対して (1)構成要件Fを分断して相違点を認定し判断することについて ア.審決の予告において,構成要件Fを分断して相違点を認定し判断したことについて,請求人は,構成要件Fは,「入力要素又は出力要素の直接指定による検索」と「タッチパネルを用いた入力要素又は出力要素の直接指定」という2つの異なる技術から構成され,容易想到性を判断するにあたって分節された構成要件を一まとまりの技術として捉えなければならない理由はない旨を主張している(上記第5の3.[請求人](6)ア.)。 しかし,上記5.(1)に説示するとおり,本件発明は,構成要件Fにより,入力要素や出力要素をタッチにより指定するだけで,2種類の検索条件の両方について設定されるという機能を有するのであり,当該機能は,構成要件Fを一体として認識しなければ生じないものと評価するほかない。 イ.請求人は,入力要素を指定した場合には,コイル検索であることを指定しなくても,コイル検索が行われ,出力要素を指定した場合には,接点検索であることを指定しなくても,接点検索が行われることは,作業者の入力負担を軽減する程度のものであり,当業者が容易に行い得る設計事項にすぎない旨を主張している(上記第5の3.[請求人](6)イ.)。 しかし,構成要件Fのうち,出力要素のタッチ検索の機能(出力要素を指定した場合には,接点検索であることを指定しなくても,接点検索が行われること)は,いずれの甲号証にも記載や示唆がない以上,単に,当該機能を当業者が容易に行い得る設計事項と評価することはできない。 ウ.したがって,構成要件Fを分断して相違点を認定し判断することに関する請求人の主張は採用できない。 エ.(ア)また,仮に,構成要件Fを「入力要素又は出力要素の直接指定による検索」と「タッチパネルを用いた入力要素又は出力要素の直接指定」という2つの異なる技術として分断したとしても,以下に示すように,引用発明に「入力要素又は出力要素の直接指定による検索」及び「タッチパネルを用いた入力要素又は出力要素の直接指定」を適用することには阻害要因があるから,請求人の主張は採用できない。 (イ)上記5.(2)に示すように,引用発明のラダー回路の検索では,入力画面においてデバイス名又はデバイス番号を入力することで,任意のデバイスを検索することが可能であり,現在表示されているラダー回路図とは全く関係のないデバイスであっても,自由に表示させることができる。 これに対して,甲5(上記2.(7))に示すように,現在表示されているラダー回路図のコイルを指定して接点を検索することや,接点を指定してコイルを検索すること,すなわち,「入力要素又は出力要素の直接指定による検索」では,現在表示されているラダー回路図の入力要素又は出力要素に関係するデバイスしか検索することができず,任意のデバイスを検索する機能が制限されることになる。 (ウ)本件発明における入力要素のタッチ検索や,出力要素のタッチ検索は,現在表示されているラダー回路図の入力要素又は出力要素に関係するデバイスしか検索することができないが,これは,異常の原因を探索する目的に特化して検索を行うためであって,そもそも,現在表示されているラダー回路図と全く関係のないデバイスを検索する必要がないからである。 (エ)そして,甲3には,異常の原因を探索する目的に特化した検索として,「要因検索」(甲3の6-7ないし6-9ページ)が記載されていることから,引用発明のラダー回路の検索は,当該「要因検索」とは異なり,特定の目的に限らない,一般的な検索であると理解すべきである。 そうすると,現在表示されているラダー回路図とは全く関係のないデバイスであっても自由に表示できる,一般的な検索が可能な引用発明に対して,現在表示されているラダー回路図の入力要素又は出力要素に関係するデバイスしか検索することができない「入力要素又は出力要素の直接指定による検索」を適用することは,任意のデバイスを検索可能な機能を逆に制限することになるから,阻害要因があるといわざるを得ない。 (オ)次に,引用発明に「タッチパネルを用いた入力要素又は出力要素の直接指定」を適用することの適否についても検討する。 甲12に記載された技術的事項は,入力要素のタッチ検索の機能を開示する(上記5.(3)エ.)から,「タッチパネルを用いた入力要素の直接指定」が示されているといえるが,当該甲12に記載された技術的事項を引用発明に適用しても,現在表示されているラダー回路図の入力要素に関係するデバイスをタッチパネルにて指定して検索することしかできないことに変わりはないから,上記(エ)で説示する理由と同様に阻害要因があるといえる。 (カ)したがって,仮に,構成要件Fを「入力要素又は出力要素の直接指定による検索」と「タッチパネルを用いた入力要素又は出力要素の直接指定」という2つの異なる技術として分断したとしても,甲2及び3の記載に接した当業者が,引用発明に「入力要素又は出力要素の直接指定による検索」及び「タッチパネルを用いた入力要素又は出力要素の直接指定」を適用するとはいえない。 (2)構成要件Fの容易想到性について 請求人は,本件特許に係る出願前から,接点やコイルを直接指定して検索を行う表示装置が販売されており,検索対象の指定方法を入出力要素のタッチとするか,デバイス名又はデバイス番号の入力とするかということは,当業者が適宜選択すべき設計事項にすぎず,構成要件Fは容易想到である旨を主張している(上記第5の3.[請求人](3)ア.及びイ.)。 しかし,当該主張は,構成要件Fを「入力要素又は出力要素の直接指定による検索」と「タッチパネルを用いた入力要素又は出力要素の直接指定」という2つの異なる技術として認識すること,すなわち,実質的には,構成要件Fを分断して相違点を認定し判断することに等しいというべきところ,上記(1)に説示するとおり,構成要件Fは一体として認識すべきであるから,当該主張は採用できない。 (3)本件発明の作用効果について 請求人は,本件特許の明細書に記載された「因果関係の連鎖を遡及しすぎた場合には,出力要素をタッチする。すると,・・・ラダー回路に戻すことができる。・・」(【0041】)という作用効果は実現できないから,本件発明の進歩性を判断するにあたって考慮すべきでない旨を主張している(上記第5の3.[請求人](7)ア.及びイ.)。 しかし,上記5.(1)に説示するとおり,本件発明は,構成要件Fにより,出力要素をタッチにより指定するだけで,2種類の検索条件が設定されるという機能を有するものであり,その機能により,操作者の入力負担を軽減できるという効果も理解できるから,本件発明の進歩性を判断するにあたって,当該作用効果を考慮すべきでないとはいえない。 したがって,請求人の当該主張は採用できない。 第9 むすび 以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠によっては,本件発明に係る特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については,特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。

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2018-800131

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