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特許異議申立

2018-700252

ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散

審判番号
2018-700252
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-253283
登録番号
特許第6203810号(P6203810)
請求日
2018年03月26日
審決日
2019年07月12日
公報発行日
2020年03月27日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】ピクセリジェント・テクノロジーズ,エルエルシー
  • 【権利者代理人】小野 新次郎
  • 【権利者代理人】野矢 宏彰
  • 【権利者代理人】小林 泰
  • 【権利者代理人】竹内 茂雄
  • 【権利者代理人】山本 修
  • 【権利者代理人】松本 謙
  • 【異議申立人】横山 範子
審判長/審判官
  • 審判長 豊永 茂弘
  • 審判官 後藤 政博
  • 審判官 金 公彦
分類
P1651.113-ZAB(C01G) / P1651.121-ZAB(C01G) / P1651.536-ZAB(C01G) / P1651.537-ZAB(C01G) / P1651.841-ZAB(C01G) / P1651.851-ZAB(C01G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6203810号発明「ナノ結晶の合成、キャップ形成および分散」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 平成30年 9月11日付け訂正請求において、特許第6203810号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4について訂正することを認める。 特許第6203810号の請求項1~3、5~22に係る特許を取り消す。 特許第6203810号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6203810号の請求項1ないし22に係る特許についての出願は、平成23年10月26日(パリ条約による優先権主張 2010年10月27日 アメリカ合衆国(US) 2011年 4月25日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特願2013-536771号の一部を新たに外国語書面による特許出願としたものであって、平成29年 9月 8日に特許権の設定登録がされ、平成29年 9月27日にその特許公報が発行され、その後、平成30年 3月26日に、特許異議申立人 横山範子 により特許異議の申立てがされ、平成30年 6月 8日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年 9月11日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、平成30年10月15日付けで訂正拒絶理由が通知され、平成30年12月 6日に意見書が提出された。その後、当審において、平成31年 3月 4日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかったものである。 第2 訂正の内容及び適否 1 訂正の内容 本件訂正請求に係る訂正の内容は、以下のとおりである(下線部は、訂正箇所を示す)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「少なくとも1種のキャッピング剤により少なくとも部分的にキャップされたジルコニアナノ結晶の溶媒中の分散物であって、当該分散物は、該分散物が10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、15%よりも大きな最小透過率であり、かつ、該分散物の遊離キャッピング剤濃度がGCにより測定して100,000μg/ml以下である、前記分散物。」 とあるのを、 「少なくとも1種のキャッピング剤により少なくとも部分的にキャップされたジルコニアナノ結晶の有機溶媒中の非水分散物であって、当該分散物は、該分散物が52.4重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、39.8%よりも大きな最小透過率であり、かつ、該分散物の遊離キャッピング剤濃度がGCにより測定して100,000μg/ml以下であり、前記有機溶媒は、トルエン、キシレン、ヘプタン、メシチレン、イソプロパノール、メタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)、および2-プロポキシ-プロパノール(PnP)、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ケトン、環状ケトン、メチルペンタノール、ナフサ、ペンタン、デカン、クロロホルムおよびこれらの混合物を含む、前記分散物。」 に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に 「エタノール中のシロキサンスピンオンポリマー、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロピルアルコールまたはこれらの溶媒の混合物」 とあるのを、 「エタノールかプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)かイソプロピルアルコールかまたはこれらの溶媒の混合物中のシロキサンスピンオンポリマー」 に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項22に 「少なくとも1種の共有結合キャッピング剤により少なくとも部分的にキャップされたジルコニアナノ結晶の溶媒中の分散物であって、当該分散物は、該分散物が10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、15%よりも大きな最小透過率であり、かつ、該分散物の遊離キャッピング剤濃度がGCにより測定して100,000μg/ml以下である、前記分散物。」 とあるのを、 「少なくとも1種の共有結合キャッピング剤により少なくとも部分的にキャップされたジルコニアナノ結晶の有機溶媒中の非水分散物であって、当該分散物は、該分散物が52.4重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、39.8%よりも大きな最小透過率であり、かつ、該分散物の遊離キャッピング剤濃度がGCにより測定して100,000μg/ml以下であり、前記有機溶媒は、トルエン、キシレン、ヘプタン、メシチレン、イソプロパノール、メタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)、および2-プロポキシ-プロパノール(PnP)、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ケトン、環状ケトン、メチルペンタノール、ナフサ、ペンタン、デカン、クロロホルムおよびこれらの混合物を含む、前記分散物。」 に訂正する。 (5)訂正事項5 明細書の段落【0035】に 「(例えば、エタノール中のシロキサンスピンオンポリマー)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロピルアルコール、またはこれらの溶媒の混合物であるJSRミクロトップコート(4-メチル-2-ペンタノール中のNFCTCX014)」 とあるのを、 「(例えば、エタノールかプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)かイソプロピルアルコールかまたはこれらの溶媒の混合物中のシロキサンスピンオンポリマー)、JSRミクロトップコート(4-メチル-2-ペンタノール中のNFCTCX014)」 に訂正する。 (6)訂正事項6 明細書の段落【0177】に 「エタノール中のシロキサンスピンオンポリマー、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロピルアルコール、またはこれらの溶媒の混合物であるJSRミクロトップコート(4-メチル-2-ペンタノール中のNFCTCX014)」 とあるのを、 「エタノールかプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)かイソプロピルアルコールかまたはこれらの溶媒の混合物中のシロキサンスピンオンポリマー、JSRミクロトップコート(4-メチル-2-ペンタノール中のNFCTCX014)」 に訂正する。 (7)訂正事項7 明細書の段落【0543】に 「エタノール中のシロキサンスピンオンポリマー、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロピルアルコール、またはこれらの溶媒の混合物であるJSRミクロトップコート(4-メチル-2-ペンタノール中のNFCTCX014)」 とあるのを、 「エタノールかプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)かイソプロピルアルコールかまたはこれらの溶媒の混合物中のシロキサンスピンオンポリマー、JSRミクロトップコート(4-メチル-2-ペンタノール中のNFCTCX014)」 に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1において「ジルコニアナノ結晶の溶媒中の分散物であって、」及び「以下である」と特定していたものを、「ジルコニアナノ結晶の有機溶媒中の非水分散物であって、」及び「以下であり、前記有機溶媒は、トルエン、キシレン、ヘプタン、メシチレン、イソプロパノール、メタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)、および2-プロポキシ-プロパノール(PnP)、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ケトン、環状ケトン、メチルペンタノール、ナフサ、ペンタン、デカン、クロロホルムおよびこれらの混合物を含む」と特定する訂正(以下、「訂正事項1a」という。)、並びに訂正前の請求項1において「分散物が10重量%のナノ結晶を含有するとき、」及び「15%よりも大きな最小透過率」であると特定していたものを、「分散物が52.4重量%のナノ結晶を含有するとき、」及び「39.8%よりも大きな最小透過率」であると特定する訂正(以下、「訂正事項1b」という。)からなるものである。 上記訂正事項1a、1bについて、訂正の適否について以下に検討する。 ア 訂正の目的について 訂正事項1aは、訂正前の請求項1において、「分散物」の「溶媒」についてどのような溶媒であるのか特定していなかったところ、「・・・ ジルコニアナノ結晶の有機溶媒中の非水分散物であって ・・・以下であり、前記有機溶媒は、トルエン、キシレン、ヘプタン、メシチレン、イソプロパノール、メタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)、および2-プロポキシ-プロパノール(PnP)、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ケトン、環状ケトン、メチルペンタノール、ナフサ、ペンタン、デカン、クロロホルムおよびこれらの混合物を含む」と特定することにより、請求項1に係る発明における溶媒を具体的に特定して限定するものである。 次に、訂正事項1bは、訂正前の請求項1において、透過率を測定する対象となる分散物が10重量%のナノ結晶を含有するとき、15%よりも大きな最小透過率であることを特定していたのに対して、本件訂正により、分散物が52.4重量%のナノ結晶を含有するとき、39.8%よりも大きな最小透過率であることを特定するものである。 分散物におけるナノ結晶の含量が増加するにつれて、分散物の透過率は減少することが技術常識であるところ、本件発明1において、52.4重量%のナノ結晶を含有するとき、39.8%よりも大きな最小透過率を達成することは、10重量%のナノ結晶を含有するとき、15%の最小透過率を達成することよりも本件発明1に係る分散物の特性(透過率)をより限定する(より高いレベルに特定する)ものであるといえるから、本件訂正は、本件発明1の特定事項を限定するものである。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加について 訂正事項1aのうち、請求項1の「分散物」が有機溶媒中の非水分散物である点、及び当該有機溶媒が「トルエン、キシレン、ヘプタン、メシチレン、イソプロパノール、メタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)、および2-プロポキシ-プロパノール(PnP)、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ケトン、環状ケトン、メチルペンタノール」を含む点は、訂正前の請求項4及び本件明細書の段落【0077】などの記載から導き出される事項である。 次に、訂正事項1aのうち、「ナフサ、ペンタン、デカン、クロロホルム」については、本件明細書の段落【0511】に「ZrO2 ・・・ の合成したままのナノ結晶は、疎水性の溶媒とマトリックス中での分散を促進するためにキャップされてもよい。このキャップ交換プロセスは、合成したままのナノ結晶を、特定の量のキャッピング剤とともに、または比較的疎水性の溶媒中のキャッピング剤とともに分散または浮遊させることを含んでいてもよく、このとき疎水性の溶媒は、・・・ ナフサ、トルエン、ヘプタン、ペンタン、デカン、クロロホルムを含めた溶媒から選択される。」と、キャップ交換プロセスに用いる溶媒であることが記載され、また、本件明細書の段落【0103】の「例えば酸化ジルコニウムのナノ結晶を含む ・・・ 本開示のナノ結晶の分散体であって、ここで記述される透過率の特徴を有するものは、ろ過を行うか、あるいはろ過することなく ・・・ 追加の清澄化および/または分離技術は、場合により必要としない。」と、調製された分散体は、溶媒の分離工程は場合により必要としない、すなわち、キャップ交換反応に用いた溶媒を、そのまま分散体の溶媒として用いることが記載されていることからして、非水分散物の有機溶媒として「ナフサ、ヘプタン、ペンタン、デカン、クロロホルム」を含む点は、これらの記載から導き出せる事項である。 したがって、訂正事項1aにおいて、非水分散物の有機溶媒の特定は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 訂正事項1bについて、特許権者は、訂正請求書及び平成30年12月6日付けの意見書において、図25はPGMEAの中に分散した52.4重量%のキャップされたZrO2ナノ結晶の紫外線-可視光スペクトルを示すものであって、図25の400nmの光学濃度0.4を、本件明細書の段落【0067】の数6の式に代入し、数4の式で定義された透過率を計算すると、T=0.398(39.8%)という値が求められることから、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であると主張している(訂正請求書7ページ下から6行~8ページ5行、意見書6ページ下から4行~8ページ3行)。 しかし、図25は、そもそも精密な図であるとはいえないので、52.4重量%のZrO2ナノ結晶を含有する分散物において、波長400nmにおける光学濃度が0.4であると断定することはできず、また、本件明細書等にも図25の波長400nmにおける光学濃度の具体的な値は何ら記載されていない。 さらに、この分散物における遊離キャッピング剤濃度も不明である。 そうすると、本件明細書等からは、請求項1に記載された遊離キャッピング剤濃度を満たす分散物が、52.4重量%のZrO2ナノ結晶を含有するときに、波長400nmにおける透過率の下限が39.8%であることは導出できないから、訂正事項1bは、願書に添付した明細書等の範囲内においてした訂正であるとはいえない。 また、訂正事項1は、訂正事項1aにより、有機溶媒が、トルエン等であることを特定するものであり、かつ、訂正事項1bにより、当該有機溶媒を用いた分散物が、39.8%よりも大きな最小透過率であることを特定するものである。 しかし、訂正の根拠とする図25は、本件明細書の段落【0102】によれば、PGMEA、すなわちプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに分散した52.4重量%のZrO2ナノ結晶の紫外線-可視光スペクトルを示すものであり、また、溶媒の種類によって、ZrO2ナノ結晶の分散性が変化し最小透過率も変化することは技術常識である。 そうすると、PGMEA以外の他のトルエン等の有機溶媒について、図25のPGMEAと同一の紫外線-可視光スペクトルを示すとはいえないから、他のトルエン等の有機溶媒において、分散物が52.4重量%のナノ結晶を含有するとき、39.8%よりも大きな最小透過率であることは、本件明細書等には記載されていないし、また、本件明細書等から自明な事項であるともいえない。 したがって、訂正事項1によって、PGMEA以外の有機溶媒を用いた分散物が52.4重量%のナノ結晶を含有するとき、39.8%よりも大きな最小透過率であることに変更することについても、願書に添付した明細書等の範囲内においてした訂正であるとはいえない。 これについて、特許権者は、上記意見書において、適合する溶媒とキャッピング剤の組み合わせにより、分散物の光学濃度は同様なものとなり、分散物の品質が良好である限り、溶媒の選択は分散物の光学濃度に違いをもたらさないと主張している(上記意見書8ページ5行~10ページ5行)。 しかし、同じキャッピング剤であっても、上記のとおり溶媒に応じて分散物の分散状態は影響を受けることは技術常識であり、また、本件明細書において、各種溶媒に対して同様な光学濃度が得られるキャッピング剤が具体的に開示されているわけでもないから、当該訂正は、願書に添付した明細書等から導き出せる事項であるとはいえず、上記主張は採用できない。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合しないから、訂正事項1については、訂正を認めることができない。 (2) 訂正事項2、5について 訂正前の請求項3は「マトリックスポリマー」を規定するものであるところ、訂正前の「プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロピルアルコールまたはこれらの溶媒の混合物」はポリマーではないから、当該記載は不明確である。 ここで、訂正前の本件明細書の段落【0035】にも同様な記載があるが、当該箇所に対応する外国語書面には、「Siloxane-spin-on polymers in Ethanol, Propylene Glycol Methyl Ether Acetate (PGMEA), isopropyl alcohol or mixture of these solvents」(7ページ最下行~8ページ1行)という記載があるから、上記記載は誤訳であることが明らかである。 したがって、訂正事項2は、上記外国語書面の記載を根拠として、当該部分を正しく訳出することにより訂正するものであり、また、訂正事項5は、段落【0035】の記載を上記外国語書面の記載を根拠として同様に訂正するものであるから、これらの訂正は、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものに該当し、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項22について、訂正事項1と同様の訂正をしようとするものである。 そうすると、訂正事項4についても、上記(1)ア、イに記載したとおりであって、訂正事項1と同様の結論が導かれる。 (5) 訂正事項6、7について 訂正前の本件明細書の段落【0177】及び段落【0543】には、「エタノール中のシロキサンスピンオンポリマー、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロピルアルコールまたはこれらの溶媒の混合物であるJSRミクロトップコート(4-メチル-2-ペンタノール中のNFCTCX014)」という記載があるところ、それぞれの段落に対応する外国語書面には、「Siloxane-spin-on polymers in Ethanol, Propylene Glycol Methyl Ether Acetate (PGMEA), isopropyl alcohol or mixture of these solvents」(37ページ16行~17行、100ページ下から8行~下から7行)という記載があるから、上記各記載は誤訳であることが明らかである。 したがって、訂正事項6、7は、上記外国語書面の各記載を根拠として、当該部分を正しく訳出することにより訂正するものであるから、これらの訂正は、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものに該当し、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 一群の請求項について 訂正事項1~3に係る訂正前の請求項1~21は、請求項2~21が請求項1を引用するものであって、請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~21は、一群の請求項である。 ただし、特許権者は、訂正事項3による請求項4についての訂正が認められる場合には、請求項4は一群の請求項である請求項1~3及び請求項5~21とは別途訂正することを求めている。 4 明細書の訂正と関係する請求項についての説明 訂正事項5~7は、訂正事項1~3の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であり、一群の請求項1~21の全てに関係する訂正である。 したがって、訂正事項5~7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。 5 まとめ 本件訂正請求の訂正のうち、訂正事項3は、上記2(3)に記載のとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 そして、上記3に記載のとおり、特許権者は、訂正事項3によって請求項4についての訂正が認められる場合には、請求項4は一群の請求項である請求項1~3及び請求項5~21とは別途訂正することを求めているから、訂正後の請求項4は訂正を認める。 これに対して、本件訂正請求の訂正のうち、訂正事項1及び訂正事項4は、上記2(1)、(4)に記載のとおり、特特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合しない。 そして、訂正事項1は、請求項1~21からなる一群の請求項を訂正するものであり、また、訂正事項4は、請求項22を訂正するものであるから、その他の訂正要件の適否によらず、本件訂正請求のうち、請求項1~3、5~21及び明細書の訂正は認めることができない。 第3 取消理由についての判断 1 本件発明 上記第2のとおり、訂正事項1、2、4~7による本件訂正は認めることはできないから、本件請求項1~3、5~22に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明3」、「本件発明5」~「本件発明22」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~3、5~22に記載された次の事項により特定されるものである。 「【請求項1】 少なくとも1種のキャッピング剤により少なくとも部分的にキャップされたジルコニアナノ結晶の溶媒中の分散物であって、当該分散物は、該分散物が10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、15%よりも大きな最小透過率であり、かつ、該分散物の遊離キャッピング剤濃度がGCにより測定して100,000μg/ml以下である、前記分散物。 【請求項2】 前記キャッピング剤が、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、2-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]-トリメトキシシラン、メトキシ(トリエチレンオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オレイルアルコール、ドデシルアルコール、オクタデカノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、オクタン酸、酢酸、プロピオン酸、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、オレイン酸、安息香酸、およびこれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の分散物。 【請求項3】 ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)(ABS)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、セルロイド、セルロースアセテート、ポリ(エチレン-ビニルアセテート)(EVA)、ポリ(エチレン-ビニルアルコール)(EVOH)、フルオロプラスチック、ポリアクリレート(Acrylic)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PAまたはナイロン)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリブタジエン(PBD)、ポリブチレン(PB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリカーボネート(PC)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHAs)、ポリケトン(PK)、ポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンクロリネート(PEC)、ポリイミド(PI)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSU)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリウレタン(PU)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ(スチレン-アクリロニトリル)(SAN)、スピンオンガラス(SOG)ポリマー、エタノール中のシロキサンスピンオンポリマー、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロピルアルコールまたはこれらの溶媒の混合物、およびその混合物から選択される少なくとも1種のマトリックスポリマーをさらに含む請求項1に記載の分散物。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 前記ジルコニアナノ結晶は、1nm~5nmの平均サイズ範囲である、請求項1に記載の分散物。 【請求項6】 前記分散物の最小透過率が室温で貯蔵したとき三週間を超えて安定である、請求項1に記載の分散物。 【請求項7】 最小透過率が、該分散物が分散物溶媒中10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、20%よりも大きい、請求項1に記載の分散物。 【請求項8】 遊離キャッピング剤濃度が、GCにより測定したとき、8000μg/ml以下である、請求項1に記載の分散物。 【請求項9】 最小透過率が、該分散物が分散物溶媒中10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、25%よりも大きい、請求項1に記載の分散物。 【請求項10】 最小透過率が、該分散物が分散物溶媒中10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、30%よりも大きい、請求項1に記載の分散物。 【請求項11】 最小透過率が、該分散物が分散物溶媒中10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、40%よりも大きい、請求項1に記載の分散物。 【請求項12】 最小透過率が、該分散物が分散物溶媒中10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、50%よりも大きい、請求項1に記載の分散物。 【請求項13】 最小透過率が、該分散物が分散物溶媒中10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、60%よりも大きい、請求項1に記載の分散物。 【請求項14】 最小透過率が、該分散物が分散物溶媒中10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、70%よりも大きい、請求項1に記載の分散物。 【請求項15】 最小透過率が、該分散物が分散物溶媒中10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、80%よりも大きい、請求項1に記載の分散物。 【請求項16】 最小透過率が、該分散物が分散物溶媒中10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、90%よりも大きい、請求項1に記載の分散物。 【請求項17】 遊離キャッピング剤濃度が、GCにより測定したとき、1500μg/ml以下である、請求項1に記載の分散物。 【請求項18】 遊離キャッピング剤濃度が、GCにより測定したとき、250μg/ml以下である、請求項1に記載の分散物。 【請求項19】 遊離キャッピング剤濃度が、GCにより測定したとき、50μg/ml以下である、請求項1に記載の分散物。 【請求項20】 遊離キャッピング剤濃度が、GCにより測定したとき、10μg/ml以下である、請求項1に記載の分散物。 【請求項21】 遊離キャッピング剤濃度が、GCにより測定したとき、5μg/ml以下である、請求項1に記載の分散物。 【請求項22】 少なくとも1種の共有結合キャッピング剤により少なくとも部分的にキャップされたジルコニアナノ結晶の溶媒中の分散物であって、当該分散物は、該分散物が10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、15%よりも大きな最小透過率であり、かつ、該分散物の遊離キャッピング剤濃度がGCにより測定して100,000μg/ml以下である、前記分散物。」 2 取消理由の概要 平成30年 6月 8日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 理由1 本件発明1~22は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 理由2 本件発明1~22は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 理由3 本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~22を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないため、その発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 理由4 本件発明1~22は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないため、その発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 理由5 本件発明1~22は、特許請求の範囲の記載が不明確であるため、その発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 記 甲1:特開2010-132494号公報(甲第1号証) 甲3:C-W Chen et al. "An aqueous process for the production of fully dispersible t-ZrO2 nanocrystals",Journal of the Taiwan Institute of Chemical Engineers,Vol.40, 2009, p.296-301 (甲第3号証) 甲4:特開2007-119617号公報(甲第4号証) 甲5:特開2006-299126号公報(甲第5号証) 3 取消理由1、2について(特許法第29条第1項第3号、同条第2項) (1)刊行物の記載事項 ア 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明 (ア)甲1の記載事項 1a 「 【請求項1】 波長400nmにおける透過率が35%以上であり、波長800nmにおける透過率が95%以上であり、温度25℃における粘度が20mPa・s以下である酸化ジルコニウム粒子含有率20重量%以上の酸化ジルコニウム分散液。 ・・・・・ 【請求項5】 ジルコニウム塩を水中にてアルカリと反応させて、酸化ジルコニウム粒子のスラリーを得、次いで、このスラリーを濾過、洗浄し、リパルプして、得られたスラリーにこのスラリー中のジルコニウム1モル部に対して有機酸1モル部以上を加え、170℃以上の温度にて水熱処理した後、得られた酸化ジルコニウム粒子水分散液を洗浄、濃縮することを特徴とする、波長400nmにおける透過率が35%以上であり、波長800nmにおける透過率が95%以上であり、温度25℃における粘度が20mPa・s以下である酸化ジルコニウム粒子含有率20重量%以上の酸化ジルコニウム水分散液の製造方法。」 1b「【0033】 有機酸は、スラリー中の酸化ジルコニウム粒子又は酸化ジルコニウムと前記安定化元素との共沈物の粒子を相互に電荷的に反発させることによって分散させる、所謂酸解膠させるために用いられる。特に、本発明によれば、スラリーを過酷な条件下に水熱処理するので、酸化ジルコニウム粒子又は上記酸化ジルコニウムと前記安定化元素との共沈物の粒子は、より効果的に解膠される。 【0034】 上記有機酸としては、好ましくは、カルボン酸やヒドロキシカルボン酸が用いられ、これらカルボン酸やヒドロキシカルボン酸は塩であってもよい。そのような有機酸の具体例としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸とその塩、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等の多塩基酸とその塩、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸とその塩を挙げることができる。上記カルボン酸塩やヒドロキシカルボン酸塩としては、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩のようなアルカリ金属塩が好ましく用いられる。」 1c「【0042】 従って、本発明において、酸化ジルコニウム分散液における分散媒は、水又は有機溶媒又はこれらの混合物である。 【0043】 本発明において、上記有機溶媒は、特に限定されるものではないが、好ましくは、水混和性有機溶媒である。このような水混和性有機溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール等の脂肪族アルコール類、酢酸エチル、ギ酸メチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン類、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類や、これらの2種以上の混合物であるが、特に、好ましくは、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はこれらの混合物である。」 1d「【0047】 本発明による樹脂組成物は、上述した本発明による酸化ジルコニウム分散液を樹脂に均一に分散させることによって得ることができる。酸化ジルコニウムの樹脂に対する割合は、得られる樹脂組成物の用途や要求特性にもよるが、通常、樹脂100重量部に対して、酸化ジルコニウム5~350重量部の範囲である。 【0048】 本発明において、上記樹脂は特に限定されるものではなく、得られる樹脂組成物の用途や要求特性に応じて適宜に選べばよい。具体例として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー三元共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸エチル)共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体等のオレフィンの単独又は共重合体であるポリオレフィン樹脂、スチレンのような芳香族ビニルモノマーの単独重合体やABS樹脂等のような共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート等のポリエステル、6-ナイロン、6,6-ナイロン、12-ナイロン、46-ナイロン、芳香族ポリアミド等のポリアミド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、ポリカーボネート、スチレン-共役ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリクロロプレン等のエラストマー、ポリ塩化ビニル、多官能(メタ)アクリレート又はそれを含む架橋性組成物を重合、架橋させてなる架橋重合体等を挙げることができる。また、必要に応じて、樹脂として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂やシリコーン樹脂も用いられる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。」 1e 「【実施例】 【0051】 以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。 【0052】 以下において、限外濾過には旭化成ケミカルズ(株)製「マイクローザ」(型式ACP-0013)、分画分子量13000)を用いた。 【0053】 酸化ジルコニウム分散液の分散径は動的光散乱法(日機装(株)製UPA-UT)によって測定した。ここに、分散径とは、分散液中に分散している粒子の大きさ(直径)である。また、酸化ジルコニウム分散液の透過率は、光路長が10mmのセルに分散液を充填して、可視紫外分光光度計(日本分光(株)製V-570)にて測定した。酸化ジルコニウム分散液の粘度は、音叉型振動式SV型粘度計(エー・アンド・デイ(株)製 SV-1A )にて測定した。」 1f 「【0059】 (酸化ジルコニウム分散液C) 0.6モル/L濃度のオキシ塩化ジルコニウム水溶液0.76Lと1.7モル/L濃度の水酸化ナトリウム水溶液0.53Lを調製した。予め、純水0.74Lを張った沈殿反応器に上記オキシ塩化ジルコニウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に注ぎ、オキシ塩化ジルコニウムを中和して、酸化ジルコニウム粒子のスラリーを得た。得られたスラリーを濾過、洗浄し、スラリーの酸化ジルコニウム含有率が5.6重量%となるように純水にリパルプして、スラリー1Lを得た。このスラリーの電気伝導度は258μS/cmであった。 【0060】 酢酸 82.2g(上記スラリー中のジルコニウム1モル部に対して3モル部)を上記スラリーに加え、200℃で3時間水熱処理して半透明の分散液を得た。この半透明の分散液を限外濾過膜にて洗浄、濃縮し、酸化ジルコニウム含有率30重量%の酸化ジルコニウム分散液Cを得た。」 1g 「【0080】 第1表及び第2表において、粒度分布D50は体積基準での累積粒度分布の小粒子側から50体積%の粒子径を表し、粒度分布Dmaxは体積基準で得られる粒度分布の最大粒子径を表す。」 1h 「【表1】 」 (イ)甲1に記載された発明 甲1の記載事項1a、1fによると、甲1には、酸化ジルコニウム粒子のスラリーに酢酸を加え、水熱処理して得られた酸化ジルコニウム分散液が記載されている。 上記酸化ジルコニウム分散液は、酸化ジルコニウム粒子が水中で分散しているから、酸化ジルコニウムの水中の分散体を含んでいるといえる。 記載事項1bによると、酢酸は、共沈物の粒子を相互に電荷的に反発させるために表面処理を行うものであるから、酢酸は、表面修飾剤であるといえる。 記載事項1fによると、酸化ジルコニウム含有率30重量%の酸化ジルコニウム分散液Cは、酸化ジルコニウムのスラリーに酢酸を加えて水熱処理して半透明の液を得て、これを限外濾過膜で洗浄、濃縮して得られたものである。 また、記載事項1hの表1によると、上記酸化ジルコニウムの分散液Cは、粒度分布D50が5.2nm、波長800nmにおける透過率が95.8%、波長400nmにおける透過率が42.8%である。 記載事項1eによると、上記酸化ジルコニウム分散液の透過率は、光路長が10mmのセルに分散液を充填して測定したものである。 これらのことを踏まえると、甲1には、 「酢酸により表面修飾された粒度分布D50が5.2nmである酸化ジルコニウム粒子の水中の分散体であって、当該分散体は、該分散体が30重量%の前記酸化ジルコニウム粒子を含有するとき、波長400nmにおける10mmの光路長を有するセルで測定された場合、透過率が42.8%であり、かつ、水熱処理して得られたスラリーを限外濾過膜にて洗浄、濃縮して得られた分散体。」 の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 イ 甲3の記載事項 (ア)甲3の記載事項 3a 「The surface modification was perfomed under acidic conditions. The hydrothermal products was filtered and washed with deionized water. Tartartic acid(TA) or citric acid (CA), at the amount of ~2 mmol/g ZrO2 was added, and the pH was adjusted to 1.6 with hydrochrolic acid to obtain a white paste after ultra-sonification. Modified nanocrystals were filterd out, and re-dispersed in water as neutral sol having 10wt% zirconia for later characterizations. The modification of oleic acid followed similar procedures but a heating at 90℃ to 1 h was needed. The pH value was at about 6 and the amount of OA added was 6mmol/g ZrO2. 」(297ページ右欄36~45行) 「表面改質は酸性条件下で行った。水熱生成物を濾過し、脱イオン水で洗浄した。約2mmol/g ZrO2の量の酒石酸(TA)またはクエン酸(CA)を加え、塩酸でpHを1.6に調整して、超音波処理後に白色ペーストを得た。改質されたナノ結晶を濾過し、10wt%のジルコニアを有する中性ゾルとして水中に再分散させて、後のキャラクタリゼーションを行った。 オレイン酸による改質は、同様の手順に従ったが、90℃、1時間の加熱が必要であった。pH値は約6であり、OAの添加量は6mmol/g ZrO2であった。」(甲3の抄訳文) 3b「 」(300ページ 図6)「図6 1cm石英UVセルで測定した再分散ゾルの透明度。破線は、与えられた濃度において異なるZrO2粒子径を仮定して式(1)から算出した。」(甲3の抄訳文) (イ)甲3に記載された発明 記載事項3aによると、甲3には、水熱反応により得られたジルコニアのナノ結晶に、酒石酸又はクエン酸を加えることで得られた、表面改質したジルコニアナノ結晶の分散液が記載されている。 上記分散液は、上記ジルコニアナノ結晶が水に分散しているから、ジルコニアナノ結晶の水中の分散体を含んでいるといえる。 記載事項3bの図6によると、10重量%のZrO2の水性ゾルの透過率は、1cmの石英UVセルで測定したとき波長400nm~750nmにおいて20%より大きい最小透過率を示しているといえる。 これらのことを踏まえると、甲3には、 「酒石酸又はクエン酸により表面改質されたジルコニアナノ結晶の水中の分散体であって、当該分散体は、該分散体が10重量%のジルコニアナノ結晶を含有するとき、400nm以上で1cmの光路を有する石英セルで測定した場合、400nm~750nmにおいて20%より大きい最小透過率であり、表面改質されたジルコニアナノ結晶の白色ペーストを濾過し、水に再分散することにより得られた分散体。」 の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 ウ 甲4の記載事項 (ア)甲4の記載事項 4a 「【請求項1】 表面修飾剤により表面が修飾されかつ分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の正方晶ジルコニア粒子を含有してなることを特徴とするジルコニア透明分散液。 【請求項2】 前記表面修飾剤は、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物、界面活性剤、チタンカップリング剤の群から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1記載のジルコニア透明分散液。 【請求項3】 前記アルコキシシラン化合物は、シランカップリング剤であることを特徴とする請求項2記載のジルコニア透明分散液。」 4b 「【0018】 「ジルコニア透明分散液」 本発明のジルコニア透明分散液は、表面修飾剤により表面が修飾されかつ分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の正方晶ジルコニア粒子と、分散媒とを含む分散液である。 上記の表面修飾剤としては、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物、界面活性剤、チタンカップリング剤の群から選択された1種または2種以上が好適に用いられる。 これらの表面修飾剤のうち特に好ましいのは、アルコキシシラン化合物としてはシランカップリング剤であり、シロキサン化合物としては変性シリコーンである。 【0019】 シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。」 4c 「【0029】 分散媒は、基本的には、水、有機溶媒、液状の樹脂モノマー、液状の樹脂オリゴマーのうち少なくとも1種以上を含有したものである。 上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。」 4d 「【0032】 このジルコニア透明分散液は、正方晶ジルコニア粒子の含有率を5重量%とした場合、光路長を10mmとしたときの可視光透過率が90%以上が好ましく、より好ましくは95%以上である。 この可視光透過率は、正方晶ジルコニア粒子の含有率により異なり、正方晶ジルコニア粒子の含有率が1重量%では95%以上、正方晶ジルコニア粒子の含有率が40重量%では80%以上である。」 4e 「【0033】 「透明複合体」 本発明の透明複合体は、表面修飾剤により表面が修飾されかつ分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の正方晶ジルコニア粒子を樹脂中に分散した複合体である。 樹脂としては、可視光線あるいは近赤外線等の所定の波長帯域の光に対して透明性を有する樹脂であればよく、熱可塑性、熱硬化性、可視光線や紫外線や赤外線等による光(電磁波)硬化性、電子線照射による電子線硬化性等の硬化性樹脂が好適に用いられる。 【0034】 このような樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリシクロヘキシルメタクリレート等のアクリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアミド、フェノール-ホルムアルデヒド(フェノール樹脂)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクレート・スチレン共重合体(MS樹脂)、ポリ-4-メチルペンテン、ノルボルネン系ポリマー、ポリウレタン、エポキシ、シリコーン等が挙げられ、特に好ましくは、シリコーン、エポキシ、アクリレートである。」 4f 「【0052】 「透明複合体の製造方法」 本発明の透明複合体は、次に挙げる方法により作製することができる。 まず、上述した本発明のジルコニア透明分散液と、樹脂のモノマーやオリゴマーを、ミキサー等を用いて混合し、流動し易い状態の樹脂組成物とする。 次いで、この樹脂組成物を金型を用いて成形、または金型あるいは容器内に充填し、次いで、この成形体もしくは充填物に加熱、あるいは紫外線や赤外線等の照射を施し、この成形体もしくは充填物を硬化させる。」 4g 「【0056】 [ジルコニア透明分散液の作製および評価] 「実施例1」 オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40L(リットル)に溶解させたジルコニウム塩溶液に、28%アンモニア水344gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体スラリーを調整した。 次いで、このスラリーに、硫酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加えた。このときの硫酸ナトリウムの添加量は、ジルコニウム塩溶液中のジルコニウムイオンのジルコニア換算値に対して30重量%であった。 【0057】 次いで、この混合物を、乾燥器を用いて、大気中、130℃にて24時間、乾燥させ、固形物を得た。 次いで、この固形物を自動乳鉢等により粉砕した後、電気炉を用いて、大気中、500℃にて1時間焼成した。 次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去した後、乾燥器にて乾燥させ、ジルコニア粒子を作製した。 【0058】 次いで、このジルコニア粒子10gに、分散媒としてトルエンを85g、表面修飾剤としてシランカップリング剤KBM-1403(信越化学(株)社製)を5g加えて混合し、正方晶ジルコニア粒子の表面を表面修飾剤により修飾した。その後分散処理を行い、実施例1のジルコニア透明分散液(Z1)を作製した。 【0059】 次いで、このジルコニア透明分散液のジルコニア粒子の分散粒径及び分散液の可視光透過率を測定した。 分散粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置(Malvern社製)を用い、ジルコニア透明分散液中のジルコニア粒子の含有量を1重量%に調製したものを測定用試料とした。また、データ解析条件としては、粒子径基準を体積基準とし、分散粒子であるジルコニアの屈折率を2,15、分散媒であるトルエンの屈折率を1.49とした。 【0060】 また、分散液の可視光透過率は、上記の分散液のジルコニア含有率をトルエンを用いて5重量%に調製した試料を石英セル(10mm×10mm)に入れ、この試料の光路長10mmとしたときの可視光透過率を分光光度計(日本分光社製)を用いて測定した。ここでは、透過率が80%以上を「○」、80%未満を「×」とした。 表1に、これらの測定結果を示す。 ・・・・・ 」 4h 「【表1】 」 (イ)甲4に記載された発明 記載事項4aによると、甲4には、表面修飾剤であるシランカップリング剤により表面が修飾されかつ分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の正方晶ジルコニア粒子のジルコニア透明分散液が記載されているといえる。 記載事項4bによると、上記ジルコニア透明分散液は、上記正方晶ジルコニア粒子と、分散媒とを含む分散液である。 上記ジルコニア透明分散液は、正方晶ジルコニア粒子が分散媒中で分散しているから、正方晶ジルコニア粒子の分散媒中の分散体を含んでいるといえる。 記載事項4d、4g、4hによると、ジルコニア透明分散液は、正方晶ジルコニア粒子の含有率を5重量%とした場合、光路長を10mmとしたときの可視光透過率が90%以上であって、実施例2は、分散粒径が9nmであり、可視光透過率は92%である。 これらのことを踏まえると、甲4には、 「シランカップリング剤により表面修飾された分散粒径が9nmである正方晶ジルコニア粒子の分散媒中の分散体であって、当該分散体は、該分散体が、5重量%の前記正方晶ジルコニア粒子を含有するとき、光路長を10mmとしたときの可視光透過率が92%である、分散体。」 の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。 エ 甲5の記載事項 5a「【請求項1】 ナノフィラーを溶媒中に分散させるとともに、所定の改質剤を添加して表面改質する工程と、 前記ナノフィラーを含む前記溶媒を直接洗浄し、前記溶媒中に前記改質剤の残存成分として存在している遊離改質剤を除去して精製する工程と、 を具えることを特徴とする、ナノフィラーの表面改質方法。 【請求項2】 前記ナノフィラーの前記溶媒中での濃度が、前記溶媒の前記直接洗浄の前後において略同一であることを特徴とする、請求項1に記載のナノフィラーの表面改質方法。 【請求項3】 前記溶媒の前記直接洗浄は、限外濾過及び遠心分離の少なくとも一方の手段を用いて行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載のナノフィラーの表面改質方法。」 5b「【0005】 ナノフィラーの表面改質の手段としては、アルキルリチウム、アルキルアルミニウムなどの有機金属、チタンカップリング剤、シランカップリング剤、シリル化剤などと、ナノフィラー表面の水酸基などを反応させる方法が一般的である。 【0006】 一方、ナノフィラーに十分な機能を付与するためには、より多くの機能性化学種を結合させる必要がある。このためにはより多くの表面改質剤を使用することになるが、特にシランカップリング剤、シリル化剤では、ナノフィラーに化学的に結合しなかったカップリング剤や、カップリング剤同士が結合してできた縮合物が、結果的にナノフィラーの添加効果・ポリマーナノコンポジットとしての機能を損なうという問題があった。 【0007】 さらに、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂といった透明性を有する樹脂については、無機微粒子が凝集してしまうと急速に透明性を損なう。カップリング剤がオリゴマー化した後に粒子間をつなぐような振る舞いを許すと、凝集を惹き起こす元になるため、極力未反応物、縮合物などは除去する必要がある。 【0008】 これまでに上記のような未反応のカップリング剤や、カップリング剤同士が結合してできた縮合物からなる遊離成分(以下「遊離改質剤」と呼ぶ)の低減の為に、各種の検討が行われてきた。」 5c「【0031】 <遊離改質剤の除去・精製> 次いで、前記表面改質処理が終了した後の、前記ナノフィラーが残存している溶媒を直接洗浄して、前記ナノフィラーの表面に化学的に結合して表面改質に寄与していない遊離改質剤を除去して精製する。本発明では、前記遊離改質剤が残存している溶媒に対して乾燥処理や固液分離などの手法を施すことなく、前記溶媒を直接洗浄して前記遊離改質剤を除去するようにしている。したがって、前記遊離改質剤の除去精製を効率的に行うことができるようになる。 【0032】 なお、前記溶媒の直接洗浄の前後において、前記表面改質ナノフィラーの、前記溶媒中における含有量が略同一であるようにすることが好ましい。これによって、前記直接洗浄による前記表面改質ナノフィラーの損失を防止することができる。なお、“略同一”とは、洗浄前の濃度を1とした場合に洗浄後の濃度が0.8~1.2の範囲にある状態を意味する。 【0033】 また、前記直接洗浄は、限外濾過及び遠心分離の少なくとも一方の手段を用いて行うことが好ましい。これによって、上述したような要件を満足する直接洗浄を簡易に行うことができるようになる。 【0034】 限外濾過は、膜分離のうち2nm~100nmレベルに適用される濾過技術であり、本来、水系溶媒中のたんばく質除去、精製などに用いられている技術である。本発明では、これを有機溶媒系で用い、遊離改質剤の除去手段に採用した。濾過膜の選択は、遊離改貿剤が通過でき、ナノフィラーは殆ど通過しないような分画分子量を適宜選択すればよい。限外濾過装置は、スケールに合わせて任意の市販の装置を用いればよく、例えば、クラレ製「CHARACTER(R)」シリーズ、オルガノ製「オルファインMTA」シリーズ、ダイセンメンプレン・システムズ製「MOLSEP」シリーズなどが挙げられる。 【0035】 限外濾過操作としては、限外濾過装置にポンプとともに循環流路をセットし、改質後のナノフィラー分散オルガノゾルを加圧しつつ循環させ、濾液側に溶媒を流して遊離改質剤を洗い流す。この際、オルガノゾル側には随時純溶媒を補給し、ゾルの濃度をほぼ一定に保つようにすることがきわめて重要で、濃度上昇によるフィラーの凝集や沈殿を防ぐことができる。 【0036】 遠心分離を行う場合は、少量の場合、一般的な超遠心分離機を用いて、溶媒の揮発分を補充しながら数十分の遠心分離を数回繰り返し、フィラー分が沈降管の底から2割程度の高さになった時点で上澄み溶媒を捨て、フィラーをスラリー状で回収する。スケールが大きい場合は、例えば三菱化工機製のナノ粒子対応デカンタ「分離板型セントリフユージDZ」などを用いることができる。いずれの場合も、ナノフィラースラリーの回収後は速やかに開始時と同濃度となるように溶媒を補充することで、ナノフィラーの凝集を防ぐことができる。」 5d「【0037】 <残存量管理/分析> 遊離改質剤の除去が確実に行えたかどうかを確認する為には、改質剤であるシランカップリング剤・シリル化剤に必ず含まれる「Si-置換基」の結合を検出できる、29Si-NMR分析が最も有効な手法である。Si原子に1つの有機置換基が結合している場合、即ちRSiO3/2の式で表されるSiは通称“T単位”と呼ばれ、そのピークは置換基の電子吸引性/供与性にも依るが一般にTMSをOppmとした場合のケミカルシフトで-40から-85ppmの範囲に現れる。Si原子に2つの有機置換基が結合している場合、即ちRR’SiO2/2の式で表されるSiは通称“D単位”と呼ばれ、そのピークは一般にケミカルシフト5から-45ppmの範囲に現れる。Si原子に3つの有機置換基が結合している場合、即ちRR’R’’SiO2/2の式で表されるSiは通称D単位と呼ばれ、そのピークは一般にケミカルシフト30から-20ppmの範囲に現れる。 【0038】 使用する表面改質剤についての29Si-NMR分析を行っておくことで、未反応時のピーク位置が確認できる。一般に加水分解によってケミカルシフトは一側へと移行するが、原料ピークに対して5-10ppmの巾で移行するため、容易に識別できる。29Si-NMR分析の際には、Fe,Crなどの錯体を緩和試薬として微量添加することで緩和時間が短縮される。緩和試薬の効果により改質剤、およびその分解物のピークは鋭敏となって検出が容易となる。一方、ナノフィラー表面に結合した改質剤由来のSi原子は非常に拘束度が高く、緩和試薬存在下でも鋭いピークとはならない。従って、遊離改質剤の除去操作の前後で溶液の29Si-NMR分析を行い、同レンジのチャートを取得して鋭敏なピークの高さを測ることで、残存している遊離改質剤の量を管理できる。すなわち、前記ピークが高い場合は、前記遊離改質剤の残存量が多いことを表し、前記ピークが低い場合は、前記遊離改質剤の残存量が少なくことを表している。 【0039】 前記遊離改質剤の削減量は除去操作前の1/10のレベルまで削減されることが望ましいが、実際には本発明の操作を行うことによってほぼ検出限界以下にまですることができる。なお、ナノフィラー表面に結合した改質剤の検出については、前記ナノフィラーをソックスレー抽出したのち、CP/MAS-NMRなどの固体29Si-NMR分析をおこなうことで可能である。」 5e「【0040】 <ポリマーナノコンポジット> 本発明のポリマーナノコンポジットは、上述のような表面改質処理及び遊離改質剤の除去精製の工程を経て得た表面改質ナノフィラーと、所定の有機ポリマーとからなる。前記表面改質ナノフィラーは、上述したような工程を経て遊離改質剤が効率良くほぼ完全に除去されているので、前記有機ポリマー中に分散配合させてポリマーナノコンポジットを作製した際に、このコンポジット中に前記遊離改質剤が実質的に存在しないようにすることができる。なお、この“実質的に存在しない”とは、例えば、前記ポリマーナノコンポジットにおいて、前述した29Si-NMR分析を行い、そのピークが検出限界以下である場合を意味する。 【0041】 前記有機ポリマーは、任意の有機ポリマーを採用可能であるが、ナノフィラーの特徴である可視光を散乱しない特性を生かし、目的とするポリマーナノコンポジットの透明性を十分に確保すべく、光線透過率80%以上の透明樹脂から構成することが好ましい。この様な透明樹脂としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、PMMAやPMAなどのアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、透明ポリプロピレン樹脂、透明ABS樹脂、透明ポリスチレン、透明エボキシ樹脂、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、    ポリエーテルサルフォン、透明ナイロン樹脂、透明ポリプチレンテレフタレート(PBT)、透明フッ素樹脂、ポリ-4-メチルペンテン(PMP)、透明フェノキシ樹脂、透明ポリイミド樹脂、透明フェノール樹脂、MS樹脂(メチルメタリレートスチレンモノマー共重合体)などが挙げられる。なかでも入手のしやすさ及びコストの観点から、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂のいずれかを用いることが望ましい。 【0042】 本発明におけるナノコンポジット中のナノフィラーの濃度は、固形分として0.2~60重量%の範囲が好ましい。0.2重量%未満では機械的強度などの諸特性の向上が認められ難くなる。60重量%を超えると比重の増加が無視できなくなるばかりでなく、衝撃強度の低下も無視できないものとなる。一般に、ポリマーに無機微粒子を大量に配合すると衝撃強度が減少するが、本発明のナノコンポジットはナノオーダーの無機微粒子が均一分散したものなので、衝撃強度の低下は実用上小さいが、60重量%を超えるとこれが無視できなくなる。より好ましくは1~30重量%がよい。 【0043】 (ポリマーナノコンポジットの製造方法) 本発明のポリマーコンポジットの製造方法は、前記ポリマーナノコンポジットを構成する有機ポリマーの種類に応じて、適宜選択することができるが、ナノフィラーの凝集を避ける為、有機ポリマーあるいはその原料モノマーとの混合前に、前記ナノフィラーを乾燥粉体とする手法は極力避ける必要がある。 【0044】 好ましい第1の方法としては、所定の有機溶媒中に上記のようにして得た表面改質ナノフィラーを分散させ、ナノフィラー分散溶液を作製した後、前記ナノフィラー分散溶液と前記有機ポリマーとを混合し、溶融混練することによって目的とするポリマーナノコンポジットを得るものである。混練機は、二軸押出成形機、真空微量混練押出機、ラボブラストミル等を用いることができる。 【0045】 好ましい第2の方法としては、前記ナノフィラー分散溶液に対して有機ポリマーを分散混合し、高温減圧下において溶媒のみを留去して、目的とするポリマーナノコンポジットを得るものである。」 (2)発明の対比・判断 ア 本件発明1について (ア)甲1発明との対比・判断 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「酢酸」、「表面修飾」、「粒度分布D50が5.2nmである酸化ジルコニウム粒子」、「水」、「分散体」は、「キャッピング剤」、「キャップ」、「ジルコニアナノ結晶」、「溶媒」、「分散物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一応相違する。 相違点1-1:本件発明1は、「分散物が10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、15%よりも大きな最小透過率」が特定されているのに対して、甲1発明は、「分散体が30重量%の酸化ジルコニウム粒子を含有するとき、波長400nmにおける10mmの光路長を有するセルで測定された場合、透過率が42.8%」である点。 相違点1-2:本件発明1は、「分散物の遊離キャッピング剤濃度がGCにより測定して100,000μg/ml以下である」ことが特定されているのに対して、甲1発明は、分散物は「水熱処理して得られたスラリーを限外濾過膜にて洗浄、濃縮して得られ」ることが規定されている点。 上記相違点について検討する。 ● 相違点1-1について 酸化ジルコニウムナノ粒子の分散液は、400nm~800nmの範囲で波長が高いほど透過率は増加し、また、酸化ジルコニウムナノ粒子の濃度が低下するほど透過率が上昇することは技術常識である。 そうすると、30重量%の酸化ジルコニウム粒子を含有し、波長400nmにおける透過率が42.8%である甲1発明に係る分散体は、これよりも酸化ジルコニウム粒子の含有量が低いときの波長400nm~750nmの範囲の最小透過率は、42.8%よりも大きな値であるといえるので、甲1発明は、相違点1-1に係る本件発明1の特定事項を充足しているといえる。 したがって、相違点1-1は、実質的な相違点ではない。 ● 相違点1-2について 甲1発明は、限外濾過膜にて洗浄するものであるから、遊離した表面修飾剤の濃度(キャッピング剤濃度)は、相違点1-2に係る本件発明1の特定事項を充足する蓋然性が高いといえる。 また、仮にそうでないにしても、甲5には、樹脂にナノフィラー分散液を添加する際に、ナノフィラーに結合しなかった表面改質剤は、除去する必要に応じて、当該表面改質剤を検出限界以下にすること(記載事項5c~5e)が記載されているところ、甲1発明も、記載事項1dによると、樹脂に分散させるナノ粒子分散液に関するものであるから、甲1発明において、本件発明1で特定する遊離キャッピング剤濃度になるまで洗浄することは、当業者であれば容易になし得るものである。 よって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)甲3発明との対比・判断 本件発明1と甲3発明とを対比すると、 甲3発明の「酒石酸又はクエン酸」、「表面改質」、「ジルコニアナノ結晶」、「水」、「分散体」は、「キャッピング剤」、「キャップ」、「ジルコニアナノ結晶」、「溶媒」、「分散物」に相当する。 また、甲3発明の「分散体が10重量%のジルコニアナノ結晶を含有するとき、400nm以上で1cmの光路を有する石英セルで測定した場合、400nmで20%より大きい最小透過率」である点は、本件発明1の「分散物が10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、15%よりも大きな最小透過率」を充足しているといえる。 そうすると、本件発明1と甲3発明とは、以下の点で一応相違する。 相違点3-1:本件発明1は、「分散物の遊離キャッピング剤濃度がGCにより測定して100,000μg/ml以下である」ことが特定されているのに対して、甲3発明は、分散体は「表面改質されたジルコニアナノ結晶の白色ペーストを濾過し、水に再分散することで得られ」ることが規定されている点。 上記相違点3-1について検討する。 記載事項3aによると、甲3発明では、ジルコニアナノ結晶を表面改質する際に、約2mmol/gZrO2 量の酒石酸又はクエン酸が使用されており、酒石酸の分子量は150.87、クエン酸の分子量は192.124であるから、表面改質においてZrO21gあたり、酒石酸は0.302g(=2×150.87/1000)、クエン酸は0.384g(=2×192.124/1000)がそれぞれ使用されている。 そうすると、ろ過によって酒石酸、クエン酸が一切除去されないとしても、再分散した10%ジルコニア水性ゾル中に存在し得る酒石酸の量は最大3.0%(=30000μ/g ≒0.302×10/100)、クエン酸の量は最大3.84%(=38400μ/g ≒0.384×10/100)であるから、水性ゾル1ml中において、酒石酸、クエン酸の量は、相違点3-1に係る本件発明1の規定量100000μ/g以下(0.1g/ml以下)である蓋然性が高いといえる。 したがって、上記相違点3-1は、実質的な相違点ではない。 よって、本件発明1は、甲3に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ウ)甲4発明との対比・判断 本件発明1と甲4発明とを対比すると、 甲4発明の「シランカップリング剤」、「表面修飾」、「分散粒径が9nmの正方晶ジルコニア粒子」、「分散媒」、「分散体」は、それぞれ「キャッピング剤」、「キャップ」、「ジルコニアナノ結晶」、「溶媒」、「分散物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲4発明とは、以下の点で相違する。 相違点4-1:本件発明1が「分散物が10重量%のナノ結晶を含有するとき、400nmから750nmまでの波長範囲における10mmの光路を有する融解石英のキュベットの中で測定された場合、15%よりも大きな最小透過率」であるのに対して、甲4発明は「分散体は、分散粒径が9nmの正方晶ジルコニア粒子の含有率を5重量%とした場合、光路長を10mmとしたときの可視光透過率が92%」である点。 相違点4-2:本件発明1が「分散物の遊離キャッピング剤濃度がGCにより測定して100,000μg/ml以下」であるのに対して、甲4発明は遊離した表面修飾剤の濃度については何も規定されていない点。 ● 相違点4-1について 甲4の記載事項4dによると、正方晶ジルコニア粒子の含有率が40重量%では、可視光透過率は80%以上であることが記載されているから、含有率が10重量%のときの透過率は、40重量%のときの透過率よりも大きな透過率であるといえるので、甲4発明は、相違点1-1に係る本件発明1で規定する最小透過率を充足する蓋然性が高いといえる。 したがって、相違点4-1は、実質的な相違点ではない。 ● 相違点4-2について 甲5には、樹脂にナノフィラー分散液を添加する際に、ナノフィラーに結合しなかった表面改質剤は、除去する必要に応じて、当該表面改質剤を検出限界以下にすること(記載事項5c~5e)が記載されているところ、記載事項4e、4fによると、甲4発明も樹脂に分散させるナノ粒子透明分散液に関するものであるから、甲4発明において、本件発明1に規定する遊離キャッピング剤濃度になるまで洗浄することは、当業者であれば容易になし得るものである。 よって、本件発明1は、甲4に記載された発明及び甲5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明2について 本件発明2は、キャッピング剤として酢酸などの有機酸を含むところ、甲1発明は、酢酸により酸化ジルコニウム粒子を表面修飾するものであり、また、甲1には、記載事項1bによると、プロピオン酸等の有機酸により表面修飾することが記載されているから、本件発明2は、甲1に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 甲3発明は、酒石酸又はクエン酸によりジルコニア粒子を修飾するものであるところ、甲1の記載事項1bによると、酢酸及び酒石酸に加えて、他の酢酸などの有機酸により酸化ジルコニウム粒子を修飾することが記載されていることから、甲3発明において、酢酸などの有機酸を用いることは、当業者であれば容易になし得るものである。 よって、本件発明2は、甲3に記載された発明及び甲1に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明2は、キャッピング剤として、n-プロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤を含むところ、甲4発明は、記載事項4eによると、同様なシランカップリング剤を用いることを想定しているから、この点は新たな相違点とはならない。 よって、本件発明2は、甲4に記載された発明及び甲5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件発明3について 本件発明3でさらに特定した事項は、甲1の記載事項1dによると、甲1に記載された事項である。 よって、本件発明3は、甲1に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ジルコニアナノ結晶の分散液に対し、マトリックスポリマーを混合すること、及びマトリックスポリマーとして各種樹脂を用いることは、甲1の記載事項1d、甲4の記載事項4e、甲5の記載事項5eによると、周知慣用技術である。 よって、本件発明3は、甲3に記載された発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明3でさらに特定した事項は、甲4の記載事項4eによると、甲4に記載された事項である。 よって、本件発明3は、甲4に記載された発明及び甲5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 本件発明5について 本件発明5でさらに特定した事項は、甲1発明として認定した事項であるから、この点は、新たな相違点とはならない。 よって、本件発明5は、甲1に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明5でさらに特定した事項は、甲4の記載事項4a、4bによると、甲4に記載された事項である。 よって、本件発明5は、甲4に記載された発明及び甲5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 オ 本件発明6について 本件明細書の段落【0102】、【0104】によると、本件発明6で特定した「分散物の最小透過率が室温で貯蔵したとき三週間を超えて安定である」ことは、本件発明1の特定事項を充足することにより、達成されることであると認められるところ、甲1発明は、上記ア(ア)に記載のとおり、本件発明1の特定事項を充足している。 よって、本件発明6は、甲1に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 同様な理由により、本件発明6は、甲3に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 上記ア(ウ)に記載のとおり、本件発明1は、甲4に記載された発明及び甲5に記載された技術事項から導出されるものである。 よって、上記と同様な理由により、本件発明6は、甲4に記載された発明及び甲5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 カ 本件発明7、9~16について 上記ア(ア)の相違点1-1の判断と同様な理由により、甲1発明は、本件発明7、9~16で特定された最小透過率を充足している、もしくは充足する蓋然性が高いといえる。 よって、本件発明7、9~16は、甲1に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 上記ア(イ)の対比に示したとおり、甲3発明は、本件発明7で特定された最小透過率を充足しているといえる。 よって、本件発明7は、甲3に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 甲4の記載事項4dに、甲4に記載のジルコニア透明分散液の可視光透過率は、正方晶ジルコニア粒子の含有率が40重量%では80%以上であるとされているから、甲4発明は、本件発明7、9~15で特定された最小透過率を充足しているといえる。 また、甲4は、記載事項4b、4cによると、本件発明で規定するキャッピング剤と溶媒とを開示するから、本件発明7、9~15で特定する最小透過率は、甲4発明において、当業者が適宜調整可能であるといえる。 よって、本件発明7、9~15は、甲4に記載された発明及び甲5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 キ 本件発明8、17~21について 甲1発明に係る分散体は、水熱処理して得られたスラリーを限外濾過膜にて洗浄することが規定されている。 そして、甲5の記載事項5c、5dによると、限外濾過又は遠心分離により、遊離表面修飾剤を検出限界以下となるまで除去できるといえる。 そうすると、甲1発明に係る分散体は、検出限界以下まで遊離表面修飾剤を除去している蓋然性が高いといえる。 よって、本件発明8、17~21は、甲1に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、甲1に記載された発明及び甲5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 上記「相違点4-2について」の判断と同様な理由により、甲4発明において、遊離表面修飾剤の濃度を検出限界以下とすることは、当業者であれば容易になし得るものである。 よって、本件発明8、17~21は、甲4に記載された発明及び甲5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ク 本件発明22について 本件発明22は、キャッピング剤について、「共有結合キャッピング剤」であることが特定された以外は、本件発明1と共通するものである。 ここで、本件明細書の段落【0021】には、「酸化物物質の表面を不動態化するためのキャッピング剤として用いられる他の種類の有機化合物としては、オルガノカルボン酸およびオルガノアルコールがある。オルガノカルボン酸の頭部はカルボン酸(-COOH)基であり、オルガノアルコールは-OH基である。頭部は、表面に存在するヒドロキシル基(-OH)または-OR基(Rはアルキルまたはアリール)との共有結合によって酸化物の表面に固着するが、これによりアルコールまたは水は副生物として脱離する。官能化オルガノカルボン酸およびオルガノアルコールの尾部は、様々な長さのアルキル鎖、アリール基、エーテル基、アミン、チオール、またはカルボン酸からなり得る。」と記載されている。 一方、甲1発明に係る分散体は、酸化ジルコニウム粒子が酢酸により表面修飾されたものであるところ、技術常識からみて、本件発明22と同様に同様に、酢酸は共有結合によって酸化ジルコニウム粒子に固着しているといえる。 その他の対比・判断は、上記ア(ア)の本件発明1と甲1発明との対比・判断と同様である。 よって、本件発明22は、甲1に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 甲3発明に係る分散体は、 ジルコニアナノ結晶が酒石酸又はクエン酸により表面改質されたものであるから、上記甲1発明と同様な理由により、酒石酸又はクエン酸は共有結合によって酸化ジルコニウム粒子に固着しているといえる。 その他の対比・判断は、上記ア(イ)の本件発明1と甲3発明との対比・判断と同様である。 よって、本件発明22は、甲3に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件明細書の段落【0019】には、「官能化オルガノシランは、ナノ結晶質の酸化物物質の表面をキャッピング剤として存在させるために用いられる一般的な種類の有機化合物である。これらのオルガノシランは典型的には頭部成分と尾部成分からなる。官能化オルガノシランの頭部は典型的にはトリアルコキシシラン基とトリクロロシラン基のいずれかであるが、しかし二置換および一置換されたアルコキシシランとクロロシランも可能である。頭部は、表面に存在するヒドロキシル基(-OH)または-OR基(Rはアルキル基またはアリール基)との共有結合によって酸化物の表面に固着するが、これによりアルコール、アルキルクロリド、水またはHClは副生物として脱離する。官能化オルガノシランの尾部は、様々な長さのアルキル鎖、アリール基、またはエーテル基、アミン、チオール、またはカルボン酸のうちの一つ以上を含み得る。」と記載され、及び段落【0032】には、上記官能化オルガノシランとしてシランカップリング剤が列挙されている。 一方、甲4発明に係る分散体は、酸化ジルコニウム粒子がシランカップカップリング剤により表面修飾されたものであるところ、技術常識からみて、本件発明22と同様にシランカップリング剤は共有結合によって酸化ジルコニウム粒子に固着しているといえる。 その他の対比・判断は、上記ア(ウ)の本件発明1と甲4発明との対比・判断と同様である。 よって、本件発明22は、甲4に記載された発明及び甲5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 取消理由3、4について(特許法第36条第4項第1号、同条第36条第6項第1号)について 本件発明1~3、5~22について (1) 本件発明1、7、9~16において、最小透過率を特定している。 しかし、これらの透過率を達成する具体的手段について、本件明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載がない。 すなわち、分散物は、キャッピング剤の種類や溶媒の種類に応じて分散性が異なることから、これに伴って、分散物の最小透過率も変化し得る。 また、本件明細書の段落【0102】及び図25を参照すると、「PGMEAの中に分散した52.4重量%のキャップされたZrO2ナノ結晶の紫外線-可視光スペクトル」が示されているところ、仮に、図25から、波長400nmにおける光学濃度は、0.4であるとしたとき、本件明細書の段落【0062】~【0068】に記載の式を計算すると、約39.8%となる。 そして、図25及びこれを説明する本件明細書の段落【0102】以外に、ZrO2ナノ結晶の透過率を測定した実施例についての記載はない。 (2) 本件発明1、8、17~22において、GCにより測定された分散物の遊離キャッピング剤濃度について特定している。 しかし、こられの遊離キャッピング剤濃度を達成する分散物の具体的な構成について、本件明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載がない。 すなわち、本件明細書の段落【0105】及び図26には、「PGMEAの中に分散したキャップされたZrO2ナノ結晶のGCプロット」について記載されているが、どのようなキャッピング剤を使用したかについては記載がなく、また、下記5(1)に記載したように、遊離キャッピング剤濃度をGCにより測定することができない。 (3) したがって、本件発明において特定する「最小透過率」及び「遊離キャッピング剤濃度」を同時に満足する分散物について、本件明細書の発明の詳細な説明には、具体的には何ら記載がない。 上記(1)~(3)に記載のとおりであるから、本件明細書に接した当業者は、当該技術分野における技術常識を考慮しても、どのようにキャッピング剤及び溶媒とを組み合わせ、また、どのように調製されたジルコニアナノ結晶を分散させることで、本件発明で特定する透過率及び遊離キャッピング剤濃度を満足する分散体を得ることができるのかを理解することができない。 よって、本件発明1~3、5~22は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえず、また、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~3、5~22を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。 5 取消理由5について(特許法第36条第6項第2号) (1)本件発明1~3、5~22 本件発明において、GCにより測定される「分散物の遊離キャッピング剤濃度」が特定されている。 しかし、ジルコニアナノ結晶をキャップしたキャッピング剤と、遊離キャッピング剤とは同一の化合物であるから、分散体の遊離キャッピング剤のみを単独で測定することができない。 また、図26における分散体におけるキャッピング剤が具体的にどのような化合物であるのかも不明であるため、GCにより特定可能である化合物であるのかも不明である。 したがって、本件発明において規定されたキャッピング剤濃度の範囲は不明確である。 よって、本件発明1~3、5~22は明確でない。 (2)本件発明2 本件発明2で特定する「キャッピング剤」である「ベンジルアルコール、フェノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オレイルアルコール」は、本件明細書の段落【0107】によると、溶媒としても使用されるものである。 そうすると、上記のキャッピング剤を使用した場合、溶媒と区別できない。 したがって、本件発明2は明確でない。 (3)本件発明3 本件発明3で「マトリックスポリマー」として特定された「プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロピルアルコールまたはこれらの溶媒の混合物」は、ポリマーであるとはいえない。 よって、本件発明3は明確でない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、平成30年 6月 8日付けで通知した取消理由により、本件請求項1~3、5~22に係る特許は、取り消すべきものである。 また、本件請求項4は、訂正により削除されたため、本件請求項4に係る特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する

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2018-700252

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