特許訂正審判
2018-390023
光学ガラス、プリフォーム材及び光学素子
- 審判番号
- 2018-390023
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2016-147675
- 登録番号
- 特許第6033486号(P6033486)
- 請求日
- 2018年02月05日
- 審決日
- 2018年05月08日
- 公報発行日
- 2018年08月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】株式会社 オハラ
- 【請求人代理人】正林 真之
- 【請求人代理人】林 一好
- 【請求人代理人】新山 雄一
- 審判長/審判官
- 審判長 豊永 茂弘
- 審判官 山崎 直也
- 審判官 新居田 知生
- 分類
- P141 .851-Y (C03C) / P141 .853-Y (C03C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第3項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6033486号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第6033486号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-18〕について訂正することを認める。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本件特許第6033486号(以下、「本件特許」という。)は、平成23年10月 7日(優先権主張 平成22年10月 8日、平成23年 5月12日)に出願された特願2011-222417号の一部を平成28年 7月27日に新たな出願とした特願2016-147675号の請求項1~18に係る発明について、平成28年11月 4日に特許権の設定登録がされたものであって、平成29年 9月12日に本件特許の訂正を求める審判請求(以下、「先の審判請求」という。)がされ、平成29年11月30日に訂正拒絶理由が通知され、平成30年 1月 4日に、先の審判請求が取下げられたものである。
そして、本件審判は、本件特許の訂正を求め、平成30年 2月 5日に請求されたものである。
2.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、まとめて「本件特許明細書」という。)を、審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであって、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1~10(注:下線部が訂正箇所)である。
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、Nb2O5成分の含有量をさらに特定し、その含有量について「Nb2O5成分を0.1~14.674%含有し」に訂正する。
イ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1について、SiO2成分の含有量をさらに特定し、その含有量について「SiO2成分の含有量が13.0%以下であり」に訂正する。
ウ.訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1について、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)をさらに特定し、その数値範囲について「1.80以上1.95以下の屈折率(nd)を有し、30以上45以下のアッベ数(νd)を有し」に訂正する。
エ.訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1について、厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す波長λ70(以下、単に「波長λ70」という。)についてさらに特定し、その数値範囲について「厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す波長λ70が401.5nm以下である」に訂正する。
オ.訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2に「Nb2O5成分 0~10.0%」とあるのを、「Nb2O5成分 0.1~10.0%」に訂正する。
カ.訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に「SiO2成分の含有量が19.0%以下」とあるのを、「SiO2成分の含有量が11.601%以下」に訂正する。
キ.訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13に「1.75以上1.95以下の屈折率(nd)」とあるのを、「1.80以上1.92以下の屈折率(nd)」に訂正する。
ク.訂正事項8
特許請求の範囲の請求項13に「30以上50以下のアッベ数(νd)を有する」とある記載を削除する。
ケ.訂正事項9
特許請求の範囲の請求項15に「1250℃以下の液相温度を有する」とあるのを、「1160℃以下の液相温度を有し、前記液相温度は、ガラス試料を完全に熔融状態にし、1180℃以下の10℃刻みの温度まで降温して12時間保持して冷却した後に、得られるガラス表面及びガラス中に結晶が認められない一番低い温度である、」に訂正する。
コ.訂正事項10
本件特許明細書の段落【0087】にある「なお、実施例(No.1~No.4)は第1の光学ガラスに関する実施例であり、実施例(No.5~No.64)は第2の光学ガラスに関する実施例である。また、」との記載を削除する。
3.当審の判断
(1)訂正の目的、新規事項の追加、及び、特許請求の範囲の拡張/変更の有無について
ア.訂正事項1
訂正事項1は、請求項1においてNb2O5成分の含有量についてさらに特定し、その含有量について「Nb2O5成分を0.1~14.674%含有し」と訂正し、減縮するものである。
したがって、当該訂正事項1は、訂正前の請求項に記載された発明特定事項を限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0048】には、「従って、特に第1の光学ガラスにおける、酸化物換算組成のガラス全物質量に対するNb2O5成分の含有量を、好ましくは0.1%を下限と・・・してもよい」及び「従って、酸化物換算組成のガラス全物質量に対するNb2O5成分の含有量は・・・より好ましくは15.0%・・・を上限とする」と記載され、請求項1において「モル和(TiO2+WO3+Nb2O5)」が「2.253~14.674%」と特定されていることから、Nb2O5成分の含有量の上限が実質的に14.674%に限定されることが自明な点に基づくものであるから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項に適合するものである。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項に適合するものである。
イ.訂正事項2
訂正事項2は、請求項1においてSiO2成分の含有量についてさらに特定し、その含有量について「SiO2成分の含有量が13.0%以下であり」と訂正し、減縮するものである。
したがって、当該訂正事項2は、訂正前の請求項に記載された発明特定事項を限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0058】には、「従って、酸化物換算組成のガラス全物質量に対するSiO2成分の含有量は・・・も好ましくは13.0%を上限とする。」と記載されていたから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項に適合するものである。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ.訂正事項3
訂正事項3は、請求項1において屈折率(nd)及びアッベ数(νd)についてさらに特定し、その数値範囲について「1.80以上1.95以下の屈折率(nd)を有し、30以上45以下のアッベ数(νd)を有し」と訂正し、減縮するものである。
したがって、当該訂正事項3は、訂正前の請求項に記載された発明特定事項を限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0079】には、「特に、本発明の光学ガラスの屈折率(nd)は・・・最も好ましくは1.80を下限とし、好ましくは1.95・・・を上限とする。また、本発明の光学ガラスのアッベ数(νd)は、好ましくは30・・・を下限とし、・・・より好ましくは45・・・を上限とする」と記載されていたから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項に適合するものである。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項に適合するものである。
エ.訂正事項4
訂正事項4は、請求項1において波長λ70についてさらに特定し、その数値範囲について「厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す波長λ70が401.5nm以下である」と訂正し、減縮するものである。
したがって、当該訂正事項4は、訂正前の請求項に記載された発明特定事項を限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0080】には、「特に、本発明の光学ガラスは、ガラスの透過率で表すと、厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す波長(λ70)が・・・最も好ましくは420nm以下である。」と記載され、実施例3には波長λ70が401.5nmである光学ガラスが記載されていたから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項に適合するものである。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項に適合するものである。
オ.訂正事項5
訂正事項5は、請求項2の「Nb2O5成分 0~10.0%」を「Nb2O5成分 0.1~10.0%」と訂正し、減縮するものである。
したがって、当該訂正事項5は、訂正前の請求項に記載された発明特定事項を限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0048】には、「従って、特に第1の光学ガラスにおける、酸化物換算組成のガラス全物質量に対するNb2O5成分の含有量を、好ましくは0.1%を下限と・・・してもよい。」と記載されていたから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項に適合するものである。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項に適合するものである。
カ.訂正事項6
訂正事項6は、請求項7の「SiO2成分の含有量が19.0%以下」を「SiO2成分の含有量が11.601%以下」と訂正し、減縮するものである。
したがって、当該訂正事項6は、訂正前の請求項に記載された発明特定事項を限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0093】の実施例3にはSiO2成分の含有量が11.601%である光学ガラスが記載されていたから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項に適合するものである。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項に適合するものである。
キ.訂正事項7
訂正事項7は、請求項13の「1.75以上1.95以下の屈折率(nd)」を「1.80以上1.92以下の屈折率(nd)」と訂正し、減縮するものである。
したがって、当該訂正事項7は、訂正前の請求項に記載された発明特定事項を限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0079】には、「特に、本発明の光学ガラスの屈折率(nd)は・・・最も好ましくは1.80を下限とし、・・・より好ましくは1.92・・・を上限とする。」と記載されていたから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項に適合するものである。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項に適合するものである。
ク.訂正事項8
訂正事項8は、請求項13に「30以上50以下のアッベ数(νd)を有する」とある記載を削除するものであり、これは、訂正後の請求項1では「30以上45以下のアッベ数(νd)を有し」と特定されており、アッベ数(νd)として30以上45以下の数値範囲しか取り得ないこととの整合を図るため、アッベ数(νd)の数値範囲については訂正後の請求項1に記載される数値範囲によって自ずと定まることを明らかにするものである。
したがって、当該訂正事項8は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記のとおり、訂正後の請求項13におけるアッベ数(νd)の数値範囲は実質的に30以上45以下に限定されており、これは上記ウ.で検討したとおり、本件特許明細書の段落【0079】に記載されていたから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項に適合するものである。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項に適合するものである。
ケ.訂正事項9
訂正事項9は、請求項15の「1250℃以下の液相温度を有する」を「1160℃以下の液相温度を有し、前記液相温度は、ガラス試料を完全に熔融状態にし、1180℃以下の10℃刻みの温度まで降温して12時間保持して冷却した後に、得られるガラス表面及びガラス中に結晶が認められない一番低い温度である」と訂正するものであり、要するに、液相温度について「1250℃以下」を「1160℃以下」に減縮し、また、訂正前の請求項15で特定されていない液相温度の定義についても、「1180℃以下の10℃刻みの温度まで降温して12時間保持して冷却した後に、得られるガラス表面及びガラス中に結晶が認められない一番低い温度である」に減縮するものである。
したがって、当該訂正事項9は、訂正前の請求項に記載された発明特定事項を限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0081】には、「より具体的には、本発明の光学ガラスの液相温度は・・・最も好ましくは1160℃を上限とする。」及び「なお、本明細書中における「液相温度」とは、50mlの容量の白金製坩堝に30ccのカレット状のガラス試料を白金坩堝に入れて1250℃で完全に熔融状態にし、所定の温度まで降温して12時間保持し、炉外に取り出して冷却した後直ちにガラス表面及びガラス中の結晶の有無を観察し、結晶が認められない一番低い温度を表す」記載されていたから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第126条第5項に適合するものである。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第6項に適合するものである。
コ.訂正事項10
訂正事項10は、本件特許明細書の段落【0087】にある「なお、実施例(No.1~No.4)は第1の光学ガラスに関する実施例であり、実施例(No.5~No.64)は第2の光学ガラスに関する実施例である」との記載を削除する削除するものであり、これは、実施例(No.1~No.64)のすべてが「第1の光学ガラス」である「少なくともTiO2成分及び/又はNb2O5成分を含有するガラス」(段落【0040】)の例に属し、また、実施例(No.41~No.46)が「第2の光学ガラス」である「少なくともWO3成分を含有するガラス」(段落【0040】)の例に属することが、本件特許明細書の記載から明らかであるため、実施例の番号について誤って記載していることが明らかな上記記載を削除することで、第1及び第2の光学ガラスに属する実施例を明確にし、それにより発明の詳細な説明の記載の整合を図るものである。
したがって、当該訂正事項10は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
上記訂正事項10は、本件特許明細書の段落【0040】に記載される「TiO2成分、WO3成分及びNb2O5成分のうち、少なくともTiO2成分及び/又はNb2O5成分を含有するガラス」を第1の光学ガラスの実施例であることとと、「TiO2成分、WO3成分及びNb2O5成分のうち、少なくともWO3成分を含有するガラス」を第2の光学ガラスの実施例であることを明確にするものであり、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
また、訂正事項10は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項に適合するものである。
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項2~18は、訂正事項1~4に係る訂正前の請求項1の記載をそれぞれ直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1~4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、当該請求項1~18は、特許法126条第3項に規定する一群の請求項である。
また、訂正事項10は、この一群の請求項の全てについて明細書を訂正するものである。
したがって、本件訂正は、この一群の請求項について請求したものと認められ、特許法第126条第3項及び第4項に適合するものである。
(3)独立特許要件について
特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正後の請求項1に係る発明を含む一群の請求項〔1~18〕(以下、それぞれ「本件訂正発明1」~「本件訂正発明18」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
ここで、訂正された「本件訂正発明1」は、
「酸化物換算組成のガラス全物質量に対して、モル%で
B2O3成分を20.0~46.0%
La2O3成分を13.639~25.0%
ZnO成分を5.0~27.228%
ZrO2成分を1.0~15.0%
Nb2O5成分を0.1~14.674%
含有し、
Ta2O5成分の含有量が10.0%以下、
Li2O成分の含有量が1.166%以下、
Gd2O3成分の含有量が4.153%以下、
WO3成分の含有量が0.821%以下、
GeO2成分の含有量が1.0%以下、
Ga2O3成分の含有量が0.010%以下、
SiO2成分の含有量が13.0%以下
であり、
酸化物換算組成のガラス全物質量に対するモル和(TiO2+WO3+Nb2O5)が2.253~14.674%であり、
酸化物換算組成のガラス全物質量に対するLn2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Yb、Luからなる群より選択される1種以上)のモル和が17.130%以上30.0%以下であり、
前記Ln2O3成分のうち、2種以上の成分を含有し、
1.80以上1.95以下の屈折率(nd)を有し、30以上45以下のアッベ数(νd)を有し、厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す波長λ70が401.5nm以下である光学ガラス。」である。
ア.特許法第36条第6項第1号(サポート要件)及び第36条第4項第1号(実施可能要件)について
先の審判請求において、ZnOの下限値及びLa2O3の上限値について、特許法第36条第6項第1号及び第4項第1号に規定する要件を満たしていないことを訂正拒絶理由として通知していたところ、請求人は本件審判の請求書において、これらの成分の数値範囲についても、上記要件を満たしている旨主張していることから、まず、この点について、本件訂正発明1がサポート要件及び実施可能要件を満たすものであるか検討する。
ここで、本件特許に係る発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落【0009】に記載されているとおり「屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が所望の範囲内にありながら、耐失透性が高いプリフォーム材を、より安価に得ること」と認められる。
一方、本件特許明細書には、光学ガラスに含まれる各成分の取り得る含有量と寄与する効果が段落【0042】~【0077】において記載されるとともに、本件訂正発明1で特定する組成要件及び物性要件を満たす光学ガラスの実施例が記載されており、段落【0066】には、ZnO成分について、「ガラス転移温度(Tg)を低くし、且つ化学的耐久性を改善する成分である」ことが記載されており、ZnO成分がガラス転移温度を低くし、且つ化学的耐久性を改善する成分であることが理解される。
しかしながら、本件訂正発明1は、精密プレス成形のようにガラス転移温度が低いことを必ずしも必要とするものではないし、化学的耐久性についても、プリフォームを作製することや、そのプリフォームからガラス成形体を得ることに対して、直接的な影響を及ぼさない物性であるから、仮に、実施例に記載されたガラス組成に基いて、ZnO成分の含有量を5.0%まで減少させた場合であっても、本件特許に係る発明の課題を解決できるガラスを得られることは、当業者にとって明らかである。
また、La2O3成分についてみると、段落【0044】には「La2O3成分の含有量を30.0%以下にすることで、ガラスの安定性を高めることで失透を低減できる」と記載されていることから、La2O3成分の含有量が多いと、ガラスの安定性が低下し失透しやすくなることが理解される。
そして、La2O3成分と同様に含有量が多いとガラスの安定性を低下させる成分としては、段落【0066】にZnO成分等が開示されている。
してみれば、例えば、実施例3に記載されるLa2O3成分を14.617%含有し、ZnO成分を23.233%含有するガラス組成に基いて、La2O3成分を25.0%まで増加させた場合であっても、上記記載に基いて、ZnO成分の含有量を13%前後まで減少させれば、同様に安定なガラスを得られることは、当業者にとって明らかである。
さらに、ZnO成分及びLa2O3成分以外の各成分についても同様に、当業者であれば、実施例以外のガラス組成であっても、本件訂正発明1で特定されたガラス組成の範囲内において、実施例で開示された光学ガラス組成に基いて、発明の詳細な説明に記載された各成分の寄与する効果と本件特許に係る発明の課題を考慮して各成分の含有量を調整することにより、本件訂正発明1で特定される屈折率(nd)とアッベ数(νd)の数値範囲を満たす安定な光学ガラスが得られるものと認識できるものである。
よって、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、本件特許明細書は、当業者が本件訂正発明1を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。
また、本件訂正発明1を直接的又は間接的に引用する本件訂正発明2~18についても同様である。
イ.独立特許要件についてのまとめ
訂正事項1~10によって訂正された訂正後の請求項1~18に係る発明は、上記で検討した以外の理由もないことから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
4 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号を目的とするものであって、同条第3~7項に規定する要件を満たすものであるから、本件訂正を認める。
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2018-390023