特許拒絶査定不服審判
2018-016848
防腐剤および外用組成物
- 審判番号
- 2018-016848
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-114378
- 請求日
- 2018年12月03日
- 審決日
- 2019年10月31日
- 公報発行日
- 2019年12月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社ピカソ美化学研究所
- 審判長/審判官
- 審判長 岡崎 美穂
- 審判官 關 政立
- 審判官 冨永 みどり
- 分類
- P18 .121-WY (A61K) / P18 .537-WY (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-114378「防腐剤および外用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月 7日出願公開、特開2015-218161、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年5月14日の出願であって、平成30年1月16日付けで拒絶理由が通知され、同年3月28日(受付日)に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月23日付けで拒絶査定がされ、その謄本は同年9月4日に送達され、これに対し、同年12月3日(受付日)に拒絶査定不服審判が請求がされ、当審より令和1年7月17日付けで拒絶理由が通知され、同年8月22日(受付日)に手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の理由の概要
平成30年8月23日付け拒絶査定(原査定)の理由は、本願請求項1~7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献
1.特開平7-138155号公報
3.特開2001-048725号公報
4.特開平5-148131号公報(周知技術を示す文献)
5.特開昭62-204839号公報(周知技術を示す文献)
6.特開昭62-238208号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2001-302433号公報(周知技術を示す文献)
第3 当審が通知した拒絶理由の概要
令和1年7月17日付けで当審が通知した拒絶理由は、請求項6(令和1年8月22日受付けの手続補正書による補正前のもの)には「請求項1~6に記載の防腐剤」と記載されているが、請求項6は防腐剤に係るものではないから、請求項6に係る発明は不明確であり、本願特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、というものである。
第4 本願発明
本願の請求項1~7に係る発明は、令和1年8月22日受付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載の事項により特定される以下のとおりのものである。
なお、以下、請求項1~7に係る発明をそれぞれ「本願発明1」~「本願発明7」という。
「特許請求の範囲
【請求項1】
ヒノキチオールの銅錯体と、ショ糖モノラウリン酸エステルを含むことを特徴とする防腐剤。
【請求項2】
ヒノキチオールと混合して、ヒノキチオールの銅錯体を生成させるために用いる銅化合物が、孔雀石抽出物、グルコン酸銅および硫酸銅から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の防腐剤。
【請求項3】
前記ヒノキチオールと銅とのモル比が、1:0.3~1:0.8モルであることを特徴とする請求項2に記載の防腐剤。
【請求項4】
ショ糖モノラウリン酸エステルが、ヒノキチオールに対して50倍量以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の防腐剤。
【請求項5】
pHが4~7.5であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の防腐剤。
【請求項6】
請求項1~5に記載の防腐剤を含む、外用組成物。
【請求項7】
ヒノキチオールの濃度が、0.00001重量%以上である、請求項6に記載の外用組成物。」
第5 引用文献の記載事項及び引用発明
1.引用文献1の記載事項及び引用発明
原査定において引用文献1として引用された特開平7-138155号公報には、以下の事項が記載されている。
(記載事項1-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 銅化合物とヒノキチオール及びその塩から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする抗微生物剤。
【請求項2】 ヒノキチオール-銅錯体及びその塩から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする抗微生物剤。」
(記載事項1-2)
「【0005】 本発明の抗微生物剤の有効成分として用いられるヒノキチオール-銅錯体又はその塩は、公知の化合物である。銅化合物とヒノキチオール及びその塩から選ばれた少なくとも1種を混合した場合に、ヒノキチオール-銅錯体又はその塩が生成することもあるが、この場合生成したヒノキチオール-銅錯体又はその塩を単離精製することなく、この混合物をそのまま本発明の有効成分として使用することができる。」
(記載事項1-3)
「【0043】
・・・
製造例17(清拭剤、エアゾール用原液)
流動パラフィン 0.3g
蔗糖脂肪酸エステル 2.0g
1,3-ブチレングリコール 3.0g
ヒノキチオール 0.02g
99.5%エタノール 5.0g
塩化銅(I) 0.01g
精製水にて全量 100.0g」
記載事項1-3から、引用文献1には、以下の発明(引用発明)が記載されているものと認められる。
「流動パラフィン 0.3g
蔗糖脂肪酸エステル 2.0g
1,3-ブチレングリコール 3.0g
ヒノキチオール 0.02g
99.5%エタノール 5.0g
塩化銅(I) 0.01g
精製水にて全量 100.0g
からなる清拭剤、エアゾール用原液」
2.引用文献3の記載事項
原査定において引用文献3として引用された特開2001-048725号公報には、以下の事項が記載されている。
(記載事項3-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】ショ糖ラウリン酸エステルを含有し、且つ、前記ショ糖ラウリン酸エステルのモノエステル含量が75%以上であることを特徴とする可溶化剤。
【請求項2】請求項1記載の可溶化剤を含有する化粧料。
【請求項3】ショ糖ラウリン酸エステルの含有量が0.01~5%である請求項2の化粧水」
(記載事項3-2)
「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは・・・これまで安全性、安定性の高い乳化剤及びゲル化剤として知られていたショ糖ラウリン酸エステルが、特定のモノエステル含量を有する場合には可溶化剤として機能することを見出し本発明を完成した。すなわち、本発明はショ糖ラウリン酸エステルを含有し、且つ、前記ショ糖ラウリン酸エステルのモノエステル含量が75%以上であることを特徴とする可溶化剤及びこれを配合した化粧料に関するものである。」
(記載事項3-3)
「【0012】本発明の化粧料において配合される、本発明に係る可溶化剤の配合量は・・・一般的には0.01~5重量%で、好ましくは0.1~2.0%である。また、本発明の化粧料においては可溶化剤として上記ショ糖ラウリン酸エステルの他に、本発明の効果を損なわない限り通常化粧料に用いられる他の成分も適宜配合することができる。
【0013】例えば、流動パラフィン・・・等の各種炭化水素・・・が挙げられるが、これらに限定されるものではない。」
3.引用文献4の記載事項
原査定において引用文献4として引用された特開平5-148131号公報には、以下の事項が記載されている。
(記載事項4-1)
「【0013】
【実施例】以下に、本発明の実施例を示す。尚、配合割合は重量部である。
【0014】実施例1 乳化タイプ入浴料
パールカルクエキス 0.1
流動パラフィン 80.9
可溶化剤 15
1,3-ブチレングリコール 2
香料 2」
4.引用文献5の記載事項
原査定において引用文献5として引用された特開昭62-204839号公報には、以下の事項が記載されている。
(記載事項5-1)
「・・・本発明の可溶化方法の応用としては、前述の点滴剤や注射液に代表される医薬品を初めとして、安全性の要求される食品,化粧品のほか、その他幅広い分野に亘って利用し得るものである。」(第5頁右上欄第14~17行)
(記載事項5-2)
「実施例3.
テトラグリセリンモノラウリルエーテル4gに流動パラフィン12gを加え、これに水相84gを攪拌下添加して、青色半透明可溶化物を得た。」(第6頁右上欄第3~6行)
5.引用文献6の記載事項
原査定において引用文献6として引用された特開昭62-238208号公報には、以下の事項が記載されている。
(記載事項6-1)
「本発明において被可溶化物として用いられる油溶性物質は主に香料であるが、通常化粧料に用いられる他の油溶性物質例えば炭化水素・・・が被可溶化物として挙げられる。好ましくは、流動パラフィン・・・等の常温で液状の油溶性物質である。
上記油溶性物質の配合量は可溶化化粧料全量中の0.005~3%であるが、好ましくは0.01~1%である。」(第2頁右下欄第1~11行)
6.引用文献7の記載事項
原査定において引用文献7として引用された特開2001-302433号公報には、以下の事項が記載されている。
(記載事項7-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】リン脂質、リゾリン脂質及び油を主成分としてなる組成物であって、質量比で、リン脂質:リゾリン脂質が10:1~2:3、リン脂質とリゾリン脂質:油が10:1~1:2の割合で配合されており、その組成物を水に溶解した場合の透明度が50%以上であることを特徴とするリン脂質組成物。
【請求項2】油としてスクワラン、シリコンオイル及び流動パラフィンの一以上を用いた請求項1記載のリン脂質組成物。
【請求項3】請求項1又は請求項2記載のリン脂質組成物を配合してなる化粧料。」
(記載事項7-2)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水に加えて攪拌混合するだけで組成物中の油を水中に透明に分散させることのできるリン脂質組成物及びこれを用いた化粧料に関する。」
(記載事項7-3)
「【0009】さらに、油としては、・・・流動パラフィンなどの鉱物油・・・等があり、本発明ではこれらを単体又は二つ以上の混合物として用いる。これらの油の中で、・・・流動パラフィンの単体又はこれらの二以上混合物は、水への可溶化容量が大きいので、特に望ましい。」
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
引用発明は、ヒノキチオールと塩化銅(I)を含むものであるが、これらは、多量の精製水中に含まれていることからみて、「ヒノキチオールの銅錯体」として存在しているものと認められる(記載事項1-1、1-2)。
また、本願発明1における「ショ糖モノラウリン酸エステル」は、ショ糖脂肪酸エステルである点に限り、引用発明における「蔗糖脂肪酸エステル」と一致するものといえ、本願発明1の「防腐剤」と引用発明の「清拭剤、エアゾール用原液」は、特定の用途に用いられる「剤」である点に限り一致するものといえる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、
「ヒノキチオールの銅錯体と、ショ糖脂肪酸エステルを含む剤」である点において一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は、「ショ糖モノラウリン酸エステル」を含むものであるのに対し、引用発明は、「蔗糖脂肪酸エステル」を含むものであるものの、蔗糖脂肪酸エステルがショ糖モノラウリン酸エステルであることは示していない。
(相違点2)
本願発明1は「防腐剤」であるのに対し、引用発明は「清拭剤、エアゾール原液」である。
(相違点3)
引用発明は流動パラフィン、1,3-ブチレングリコール、99.5%エタノール及び精製水を所定量含有するのに対し、本願発明1ではこれらの成分について規定されていない。
(2)相違点1について
引用文献3には、「ショ糖脂肪酸モノエステル」に関し、「モノエステル含有量が75%以上であるショ糖ラウリン酸エステル」を化粧料における可溶化剤として用いることが記載され(記載事項3-1、3-2)、併せて、該化粧料に適宜配合される他の成分の一つとして「流動パラフィン」が記載されている(記載事項3-3)。しかし、これらの記載は、「モノエステル含有量が75%以上であるショ糖ラウリン酸エステル」が化粧料における可溶化剤として用いられることを示すだけであって、引用発明の「清拭剤、エアゾール原液」における「蔗糖脂肪酸エステル」が「可溶化剤」として用いられていることを示唆するものでも、引用発明の「清拭剤、エアゾール原液」に可溶化剤が必要であることを示唆するものでもないから、引用文献3の記載は、引用発明において「モノエステル含有量が75%以上であるショ糖ラウリン酸エステル」を使用することを動機付けるものではない。
引用文献4~7には、化粧料組成物に含有される流動パラフィンの可溶化に関する記載があるだけで、引用発明において「ショ糖モノラウリン酸エステル」を使用することを動機付ける記載は何ら見い出せない。
したがって、相違点1は引用文献3~7の記載から当業者が容易に想到し得るものではない。
(3)本願発明1の効果について
本願明細書には、ヒノキチオールの銅錯体を含有する防腐剤に、界面活性剤としてショ糖モノラウリン酸エステル(ラウリン酸スクロース)を配合した場合(実施例1~5、9)、他の界面活性剤(ミリスチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース等)を配合した場合(比較例1~14、特に比較例12~14)と異なり、45℃、5℃、室温のいずれの温度条件においても濁りや沈殿が長期間生じないといった効果が奏されることが具体的に示されており、そのような効果は、引用文献1及び3~7の記載からは当業者にも予測し得ないものである。
(4)小括
以上のとおりであるから、相違点2、3について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1及び3~7に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2.本願発明2~7について
本願発明2~5は、本願発明1を更に限定した発明であり、本願発明6及び7は、本願発明1~5の防腐剤を含む外用組成物に係る発明であり、これらの発明は、本願発明1と同様に、少なくとも上記相違点1において引用発明と相違し、本願発明1と同様の効果を奏するものと認められるから、本願発明2~7も、引用文献1及び3~7に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 原査定について
上記のとおり、本願発明1~7は、引用文献1及び3~7に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定には理由がなく、これを維持することはできない。
第8 当審が通知した拒絶理由について
令和1年8月22日受付けの手続補正書による補正により、同補正前の請求項6の「請求項1~6に記載の防腐剤」なる記載が「請求項1~5に記載の防腐剤」と補正され、これによって当審が通知した拒絶理由は解消した。
第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審が通知した理由によって本願を拒絶することはできない。
また、他に拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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