特許拒絶査定不服審判
2018-014147
ツバキ科植物由来の生物活性組成物および飲料、機能性食品、栄養補給品、サプリメントなどにおけるその使用
- 審判番号
- 2018-014147
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-557167
- 請求日
- 2018年10月25日
- 審決日
- 2020年03月24日
- 公報発行日
- 2020年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アイエスピー インヴェストメンツ エルエルシー
- 【請求人代理人】小林 浩
- 【請求人代理人】大森 規雄
- 【請求人代理人】鈴木 康仁
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 秀次
- 審判官 中島 庸子
- 審判官 天野 宏樹
- 分類
- P18 .55 -Z (A23L) / P18 .56 -Z (A23L) / P18 .575-Z (A23L) / P18 .113-Z (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項、特許法第159条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-557167「ツバキ科植物由来の生物活性組成物および飲料、機能性食品、栄養補給品、サプリメントなどにおけるその使用」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月14日国際公開、WO2014/124370、平成28年 5月12日国内公表、特表2016-513099〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年2月10日(パリ条約による優先権主張 平成25年2月8日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年9月25日付け拒絶理由に対して、平成30年4月16日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月13日付けで拒絶査定され、同年10月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 平成30年10月25日付け手続補正についての補正却下の決定
[結論]
平成30年10月25日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1の、
「【請求項1】
液体中に分散された少なくとも1つの生物活性組成物を含む飲料であって、
前記液体が、水、ショットドリンク、機能性飲料、緑茶、ウーロン茶、紅茶、白茶、フレーバーティー、ソフトドリンク、コーヒー、ミルク、シェーキ、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、スポーツドリンク、フルーツジュース、野菜ジュース、人工甘味料入りのジュース、発泡水、パンチ、サイダー、および栄養補助飲料からなる群から選択され、
前記生物活性組成物が、ツバキ科(Theacea)植物に由来する単離された生物活性画分を含み、前記生物活性画分が、細胞壁画分、細胞壁画分抽出物、膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁漿液、およびそれらの組合せからなる群から選択される、飲料。」(補正前)を、
「【請求項1】
抗酸化物質としてヒト対象に使用するための、液体中に分散された少なくとも1つの生物活性組成物を含む飲料であって、
前記液体が、水、ショットドリンク、機能性飲料、緑茶、ウーロン茶、紅茶、白茶、フレーバーティー、ソフトドリンク、コーヒー、ミルク、シェーキ、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、スポーツドリンク、フルーツジュース、野菜ジュース、人工甘味料入りのジュース、発泡水、パンチ、サイダー、および栄養補助飲料からなる群から選択され、
前記生物活性組成物が、ツバキ科(Theacea)植物に由来する単離された生物活性画分を含み、前記生物活性画分が、膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁漿液、およびそれらの組合せからなる群から選択され、
前記生物活性画分は、飲料としてヒト対象に経口投与されるとき、抗酸化活性を有し、
前記生物活性組成物の酸素ラジカル吸収能(ORAC)が、前記生物活性組成物を含まない緑茶飲料と比較して、20倍を超えて高い、飲料。」(補正後)とするものである。
2.目的要件について
本件補正によって、
(1)飲料が含む生物活性画分の選択肢から「細胞壁画分、細胞壁画分抽出物」が除かれて、「膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁漿液、およびそれらの組合せからなる群から選択され」るものに限定され、
(2)飲料の用途が「抗酸化物質としてヒト対象に使用するための」ものに特定され、
(3)飲料が含む生物活性画分の機能について、
「前記生物活性画分は、飲料としてヒト対象に経口投与されるとき、抗酸化活性を有し、
前記生物活性組成物の酸素ラジカル吸収能(ORAC)が、前記生物活性組成物を含まない緑茶飲料と比較して、20倍を超えて高い」ことが特定された。
そして、上記(1)~(3)の事項は、いずれも補正前の発明の限定的減縮に相当すると認められる。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項に掲げる事項を目的とするものと認められる。
3.新規事項の追加について
本願明細書には、上記(3)の補正事項に関して次の記載がある。
「【0272】
結論
適用した特徴付けおよびフィンガープリンティング法からのデータは、緑茶および紅茶伝統的調製物と比較した場合に注目すべき定量的差異を、Zeta Fraction(商標)技術を使用して得たPurecentia(商標)チャノキ(Camellia sinensis)の組成物において示す。Purecentia(商標)チャノキ(Camellia sinensis)は、さらに高い固体含有量、特定のピークのより良い提示、および化合物のより広い多様性を有する、さらに、伝統的紅茶および緑茶調製物よりもさらに高いL-テアニン濃度を有する。全体としてPurecentia(商標)チャノキ(Camellia sinensis)は、伝統的紅茶および緑茶伝統的調製物よりもさらに高い濃度を有し、さらなる構成要素を含有する。Purecentia(商標)チャノキ(Camellia sinensis)の活性は、試験した市販の緑茶飲料の最良の性能よりも20倍を超えて高く、5%Purecentia(商標)チャノキ(Camellia sinensis)飲料プロトタイプでさえ試験したすべての市販の飲料に勝っている。これは、Purecentia(商標)チャノキ(Camellia sinensis)が既存の飲料に抗酸化活性を加えるため、またはそれをベース活性成分として使用して機能性飲料を作るための強力な成分である可能性があることを示唆している。化粧用成分Recentia(登録商標)CSは、パーソナルケアジェルプロトタイプ中でその抗酸化活性を保持しており、製剤の他の構成成分の抗酸化活性を保つことを助ける。」
そして、上記『Purecentia(商標)チャノキ(Camellia sinensis)』について、本願明細書は、次のように記載されている。
「【0242】
Purecentia(商標)チャノキ(Camellia sinensis)調製物:Purecentia(商標)チャノキ(Camellia sinensis)を、その開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれるKoganov US7,473,435、8,043,635および8,318,220に記載のプロセスにより調製した。[5~7]」
ここで、上記段落【0242】で引用されたKoganovの米国特許公報[5~7]は、いずれも拒絶査定で引用文献1として引用された特表2007-517907号公報のパテントファミリーであるから、これらの米国特許公報に記載のプロセスにより調製されたチャノキ調製物とは、引用文献1の実施例1及び図1に示されるような方法でチャノキ(Camellia sinensis)から分離されたものであるもの、すなわち、引用文献1の請求項1に記載された「細胞壁画分、細胞壁画分抽出物、膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁液、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、ツバキ科植物に由来する単離された生物活性画分を含む生物活性組成物」であると認められ、また、引用文献1の記載、特に表15、表16の記載よれば、「細胞壁画分、細胞壁画分抽出物、膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁液」はそれぞれ異なる有効成分を異なる割合で含有し、異なる生理活性を示すものと認められる。
しかし、本願明細書の記載からは、『Purecentia(商標)チャノキ(Camellia sinensis)』が「細胞壁画分、細胞壁画分抽出物、膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁液」のいずれであるかが明らかでない。
そうすると、本願明細書には『Purecentia(商標)チャノキ(Camellia sinensis)』が生物活性組成物である場合に、「前記生物活性組成物の酸素ラジカル吸収能(ORAC)が、前記生物活性組成物を含まない緑茶飲料と比較して、20倍を超えて高い」ことが示されていると認められるが、『Purecentia(商標)チャノキ(Camellia sinensis)』が「細胞壁画分、細胞壁画分抽出物、膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁液」のいずれに該当するか明らかでないから、本願明細書に上記補正事項(1)(3)に特定される事項、すなわち、生物活性組成物が含む生物活性画分が「膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁漿液、およびそれらの組合せからなる群から選択され」るものである場合に、「前記生物活性組成物の酸素ラジカル吸収能(ORAC)が、前記生物活性組成物を含まない緑茶飲料と比較して、20倍を超えて高い」ことが記載ないし示唆されているとはいえない。
したがって、本件補正は、本願明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件補正は、本願明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でする補正ではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
なお、仮に、本願において「膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁漿液、およびそれらの組合せからなる群から選択され」るものはいずれも、「酸素ラジカル吸収能(ORAC)が、前記生物活性組成物を含まない緑茶飲料と比較して、20倍を超えて高い」ものであって、本件補正が新規事項を追加するものではないとしても、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明の限定的減縮に相当するところ、以下4.のとおり、補正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができる(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する)ものとはいえない。
4.独立特許要件について
(1)引用文献1
拒絶査定で引用文献1として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表2007-517907号公報には次の記載がある。
(1-1)
「【請求項1】
細胞壁画分、細胞壁画分抽出物、膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁液(cell juice serum)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、ツバキ科植物に由来する単離された生理活性画分を含む生物活性組成物。」
(1-2)
「【0033】
本発明の1つの局面において、生理活性画分は、少なくとも1つの哺乳動物細胞機能に対する調節活性を有し得る。そのような調節活性には、例えば、細胞増殖抑制活性、細胞増殖促進活性、酵素分泌活性、酵素阻害活性、抗酸化活性、UV保護活性、抗炎症活性、創傷治癒活性、および/またはこれらの活性の組み合わせが含まれ得る。細胞増殖抑制活性に関して、そのような活性は癌細胞の増殖抑制を含み得る。本発明の生物活性画分によって増殖が抑制され得る適切な癌細胞には、非限定的に、乳癌細胞/または結腸癌細胞が含まれ得る。記載の細胞増殖抑制活性には、白血病細胞の増殖抑制もまた含まれ得る。本発明の生理活性画分によって増殖が抑制され得る適切な白血病細胞には、非限定的に、単球性白血病細胞が含まれ得る。」
(1-3)
「【0042】
一例として、(本明細書において上記した)本発明の生理活性画分を調製するための全体的な工程を、図1に模式的に示す。加工段階の詳細については、実施例(下記)においてさらに説明する。図1に示すように、ツバキ科植物の新鮮なバイオマス10(例えば、新鮮な植物バイオマス)を、硬い細胞壁を破壊するのに効果的な条件下で粉砕、離解、および圧搾20に供し、それによって植物細胞汁30および細胞壁32を得る。新鮮なバイオマス10はまた、比較試験および評価用の陽性対照150を生成するために、従来の茶の製法22にも使用する。細胞汁30を凝固40(例えば、マイクロ波)に供して、新鮮な植物バイオマス10の膜画分成分の量的な凝固を達成する。凝固40は、次に細胞汁30の他の非凝固成分から凝固膜画分を分離し得るのに十分である。図1に示すように、そのような分離の1つの態様は冷却および遠心分離42によって達成され、膜画分(沈殿)50、ならびに葉緑素およびリン脂質などの特定の葉緑体膜成分を含まない上清60が得られる。」
(1-4)
「
」
(1-5)
「【0049】
本発明はまた、生理活性組成物の低分子量かつ還元非酸化成分を液体に選択的に分散させるための装置に関する。1つの態様において、装置は本発明の生理活性組成物を含む。生理活性組成物はろ過ポーチ中に封入され得る。適切なろ過ポーチは、生理活性組成物の低分子量かつ還元非酸化成分を液体に選択的に分散させるのに効率的なポーチであってよい。1つの態様において、ポーチは、ポーチ内からの生理活性組成物の低分子量かつ還元非酸化成分の液体への分散を可能にし、ポーチ内からの高分子量かつ酸化成分の液体への分散を抑制する選択膜を含む。本明細書で使用する「低分子量かつ還元非酸化成分」という用語は、約5,000ダルトン以下である本発明の生理活性組成物の成分を含む。本方法の1つの態様において、生理活性組成物は安定化剤をさらに含み得る(その適切な例は本明細書に記載の通りである)。本方法の別の態様において、生理活性組成物は、局所的に許容される担体をさらに含み得る(その適切な例は本明細書に記載の通りである)。
【0050】
本発明はまた、低分子量かつ還元非酸化生理活性組成物を含む治療飲料を作製する方法に関する。本方法は、本発明の方法に従って作製される装置を提供する段階を含む。生理活性組成物の低分子量かつ還元非酸化成分の液体への分散をもたらすのに効果的な条件下で、装置を液体と接触させる。本方法の1つの態様において、生理活性組成物は安定化剤をさらに含み得る(その適切な例は本明細書に記載の通りである)。本方法の別の態様において、生理活性組成物は、局所的に許容される担体をさらに含み得る(その適切な例は本明細書に記載の通りである)。本方法での使用に適した液体には、非限定的に水が含まれる。水は熱くても冷たくてもよい。本発明はさらに、本方法に従って生成される治療飲料に関する。」
(1-6)
【0079】
実施例5―細胞汁液に由来する局所成分SFの調製
細胞汁液(組成物D)は、安定性の欠如ならびに色および匂いの悪化が原因で、局所産物の活性成分として使用することができない。記載する手順により細胞汁液画分が改良され、安定でかつ活性のある局所成分SFが得られ得る・・・・
【0080】
実施例6―細胞汁液画分に由来する局所成分SFの製品規格
局所成分SFは、実施例5に上記した工程に従って調製した。・・・・
【0085】
局所成分SFは、光から保護される密閉容器中で15~25℃で保存した場合、少なくとも12~18ヶ月間安定である(すなわち、物理的および化学的完全性を維持する)ことが判明した。局所成分SFは生分解性産物である。比較臨床評価において、局所成分は、表7に要約した生物活性を示した。
【0086】
(表7)局所成分SFの生理活性
参考文献:[1]Cannel et al., Planta Medica 54:10-14 (1988)、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0087】
表7から、局所成分SFがスーパーオキシド捕捉活性を示したことが示される。比較臨床評価において、局所成分SFは、乾物69.5μg/mlという濃度でチトクロムc還元の50%抑制(ICR50)を示した。陽性対照(ロスマリン酸)のICR50 = 26.5μg/mlであった。抗酸化特性に加えて、局所成分SFは、ペプチド加水分解酵素、例えば、エラスターゼ、ゼラチナーゼBまたはいわゆるマトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP-9)、およびトリプシンに対する抗タンパク質分解活性を示した。これらの酵素の中で特有の位置を占めるのは、相乗的に作用し、また皮膚炎症において極めて重要な役割を担うエラスターゼおよびMMP-9である。MMP-9およびエラスターゼはいずれも白血球(好中球)から分泌されること、およびこれらの酵素は炎症をもたらす最終経路における重要な酵素であることに留意されたい。調製物が両酵素(エラスターゼおよびMMP-9)を阻害し得るならば、そのような調製物は炎症過程の治療に非常に有効であると見なされることが一般に同意される。」
(1-7)
「【0102】
茶樹(カメリア・シネンシス)の葉が、(-)-エピカテキン、(-)-エピカテキン-3-ガラート、(-)-エピガロカテキン、および(-)エピガロカテキン-3-ガラートを含む、抗酸化活性を有するポリフェノールを高濃度で含むことが見出された。緑茶抽出物は、過酸化水素およびスーパーオキシドラジカルに対する抗酸化活性、ならびに酸化的細胞障害の抑制を示す。この抽出物はまた、腫瘍促進の機構としての可能性が考えられる細胞間通信の抑制もまた妨げ得る。UV誘導性免疫抑制と皮膚癌の発症との間には密接な関係があり、緑茶抽出物は、UV-B照射によって起こる炎症および免疫抑制を防ぐことが見出されている。飲料水中に加えて経口投与した、または局所的に適用した緑茶抽出物は、動物モデルにおいて、UV-B-誘導性の皮膚癌発症を防止する。これらの結果から、経口的に摂取する緑茶抽出物が皮膚癌の予防に役立ち得ることが示される。」
(1-8)
「【0223】
(表16)生理活性カメリア組成物のカテキン含量
」
(4)引用発明
上記(1)(1-1)、(1-5)より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「細胞壁画分、細胞壁画分抽出物、膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁液(cell juice serum)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、ツバキ科植物に由来する単離された生理活性画分を含む生理活性組成物を含む治療飲料。」
(5)対比
本願の補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)と、引用発明を対比する。
引用文献1の発明の詳細な説明の段落【0002】~【0225】の記載は、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0003】~【0022】、【0031】~0233】とほぼ同じであり、また、引用文献の図1~38と本願の図1~35も同じであり、さらに、両者の各生物活性(生理活性)画分の調整方法(実施例1及び図1)が同じであるから、引用発明の「膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁液(cell juice serum)およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、ツバキ科植物に由来する単離された生理活性画分」、及びこれを含む「生理活性組成物」は、本願補正発明の「膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁漿液、およびそれらの組合せからなる群から選択され」る「ツバキ科(Theacea)植物に由来する単離された生物活性画分」、及びこれを含む「生物活性組成物」に相当すると認められる。
また、引用発明の「生理活性組成物を含む治療飲料」は、本願補正発明の飲料と同じく「液体中に分散された少なくとも1つの生物活性組成物を含む飲料」であると認められる。
そうすると、両者は、
「液体中に分散された少なくとも1つの生物活性組成物を含む飲料であって、
前記生物活性組成物が、ツバキ科(Theacea)植物に由来する単離された生物活性画分を含み、前記生物活性画分が、膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁漿液、およびそれらの組合せからなる群から選択される、飲料。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明は「抗酸化物質としてヒト対象に使用するための」飲料であるのに対して、引用発明は治療飲料である点。
(相違点2)
本願補正発明では「前記液体が、水、ショットドリンク、機能性飲料、緑茶、ウーロン茶、紅茶、白茶、フレーバーティー、ソフトドリンク、コーヒー、ミルク、シェーキ、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、スポーツドリンク、フルーツジュース、野菜ジュース、人工甘味料入りのジュース、発泡水、パンチ、サイダー、および栄養補助飲料からなる群から選択され、」と特定されているのに対して、引用発明では液体について具体的に特定されていない点。
(相違点3)
本願補正発明では生物活性画分について「飲料としてヒト対象に経口投与されるとき、抗酸化活性を有」することが特定され、また、生物活性画分を含む生物活性組成物について「酸素ラジカル吸収能(ORAC)が、前記生物活性組成物を含まない緑茶飲料と比較して、20倍を超えて高い」ことが特定されているのに対し、引用発明はこれらについて特定されていない点。
(6)相違点についての判断
(相違点1)及び(相違点3)について
引用発明の治療飲料が「ヒト対象に使用するための」ものである場合を包含することは明らかである。
また、引用文献1には、上記(1-6)のとおり、細胞汁液に由来する局所成分SFが抗酸化特性を有していることが記載されており、茶樹(カメリア・シネンシス)の葉が有する(-)-エピカテキン、(-)-エピカテキン-3-ガラート、(-)-エピガロカテキン、および(-)エピガロカテキン-3-ガラートを含むポリフェノールが抗酸化活性を有することが記載されており(上記(1-7))、表16(上記(1-8))のとおり、膜画分抽出物や細胞汁液は、ポリフェノール成分を含有するものである。
そうすると、引用発明の生理活性画分やこれを含む生理活性組成物は、抗酸化活性を有しており、引用発明の治療飲料は「抗酸化物質としてヒト対象に使用するための」飲料に該当するものであって、引用発明の飲料が含む生理活性画分は「飲料としてヒト対象に経口投与されるとき、抗酸化活性を有」するものと認められる。
そして、引用発明の「膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁液(cell juice serum)」と、本願補正発明の「膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁漿液」とは、ツバキ科植物という同じ原料を用いて調製されており、引用文献1(実施例1及び図1)に示されている調製方法は、本願明細書等(実施例1及び図1)に示されている調製方法と同じであるから、引用発明の「膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁液(cell juice serum)、およびこれらの組合せからなる群から選択され」るものは、いずれも本願補正発明の「膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁漿液、およびそれらの組合せからなる群より選択され」るものと同じになり、本願補正発明のものと同じ成分を含有するものとなるといえる。
そうすると、引用発明の「膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁液(cell juice serum)、およびこれらの組合せからなる群から選択され」る生理活性画分は、本願補正発明の生物活性画分と同じく「抗酸化活性」などの生物活性を有しているといえ、これらを含む生理活性組成物は本願補正発明と同じく「酸素ラジカル吸収能(ORAC)が、前記生物活性組成物を含まない緑茶飲料と比較して、20倍を超えて高い」という性質を有しているものと認められる。
よって、相違点1、相違点3は、実質的な相違点ではない。
(相違点2)について
引用発明の治療用飲料はヒトなどの治療に使用するものであって、ヒトが飲用できる水などの液体に生理活性組成物を分散させたものであると認められるから、相違点2は実質的な相違点とはいえない。
以上のとおり、本願補正発明は引用文献1に記載された発明と同一である。
(7)審判請求人の主張について
審判請求人は審判請求書において以下の点を主張している。
「引用文献1には、引用文献1に記載の飲料と比較して、より高容量のテアニンまたはより高容量のカテキンおよびテアフラビンを含み、その酸素ラジカル吸収能(ORAC)が20倍を超えて高い生物活性組成物は、教示も示唆もされていない。また、引用文献1には、このような高レベルの抗酸化活性作用について何らデータは提供されていない。」
しかし、引用文献1に記載された生理活性画分と、本願補正発明の生物活性画分とは原料及び調製方法が同じであるから、引用発明の各画分が本願補正発明の各画分と「物」として相違する、すなわち、各画分が含有する有効成分やその量において相違するとは認められない。
引用発明の生理活性画分やこれを含む生理活性組成物は、本願補正発明の生物活性画分や生物活性組成物と同様の抗酸化活性や酸素ラジカル吸収能(ORAC)を有していると認められ、また、本願においてデータで示されたテアニン含有量などを有していると認められる。
(8)小括
本件補正は、本願明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でする補正ではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
また、補正後の請求項1に係る発明は引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものとはいえず、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
第3 本願発明
平成30年10月25日付け手続補正は却下されたので、本願の請求項1~13に係る発明は、平成30年4月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載されたとおりのものであり、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2に補正前のものとして記載した請求項1に特定されるとおりのものである。
そして、本願補正発明は、本願発明に加えて、
(1)飲料が含む生物活性画分の選択肢から「細胞壁画分、細胞壁画分抽出物」が除かれて、「膜画分、膜画分抽出物、細胞質画分、細胞質画分抽出物、細胞汁漿液、およびそれらの組合せからなる群から選択され」るものに限定され、
(2)飲料の用途が「抗酸化物質としてヒト対象に使用するための」ものに特定され、
(3)飲料が含む生物活性画分の機能について、
「前記生物活性画分は、飲料としてヒト対象に経口投与されるとき、抗酸化活性を有し、
前記生物活性組成物の酸素ラジカル吸収能(ORAC)が、前記生物活性組成物を含まない緑茶飲料と比較して、20倍を超えて高い」ことが特定されたものである。
第4 当審の判断
1.原査定の概要
原査定は、この出願の請求項1~8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。
(引用文献1)
特表2007-517907号公報
2.判断
上記第2 で述べたとおり、本願補正発明は引用文献1に記載された発明と同一であるところ、上記第3 のとおり、本願補正発明は本願発明を(1)~(3)の点でさらに限定した発明であるから、本願発明は本願補正発明と同様の理由から引用文献1に記載された発明と同一である。
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-014147