特許拒絶査定不服審判
2018-010953
位相ロックループ(PLL)アーキテクチャ
- 審判番号
- 2018-010953
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-547395外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年08月09日
- 審決日
- 2019年08月14日
- 公報発行日
- 2020年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (H03L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-547395「位相ロックループ(PLL)アーキテクチャ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月15日国際公開、WO2016/144486、平成30年 4月26日国内公表、特表2018-511991〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)2月12日(優先権主張 平成27年3月10日、米国)を国際出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 9月 8日 :手続補正書の提出
平成30年 1月31日付け:拒絶理由通知書
平成30年 3月28日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 4月 5日付け:拒絶理由通知書
平成30年 5月29日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 6月12日付け:拒絶査定
平成30年 8月 9日 :拒絶査定不服審判の請求
第2 本願発明について
本願の請求項1~24に係る発明は、 特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項19に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項19】
フィードバック信号を生成するために、電圧制御発振器(VCO)の出力信号の周波数を分割するように構成された周波数分割器と、
基準信号と前記フィードバック信号との間の位相差を検出するための手段と、
前記検出された位相差に基づいて制御電圧を発生するための手段と、ここにおいて、前記制御電圧は、アナログループフィルタを使用して発生される、
位相補正を行うために、前記制御電圧を使用して前記VCOの第1のキャパシタンスを同調させるための手段と、
前記制御電圧をデジタル信号に変換するための手段と、
前記デジタル信号を積分するための手段と、
周波数追跡を行うために、前記積分されたデジタル信号に基づいて前記VCOの第2のキャパシタンスを同調させるための手段と、
動作点電圧を発生するための手段と、
ほぼ前記動作点電圧に前記制御電圧の中心を置くための手段と
を備える、装置。」
第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~4、13~15及び19~21に係る発明は、本願の優先権主張の日の前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術並びに引用文献5及び6に示される周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。(請求項5~12、16~18及び22~24に係る発明については省略。)
引用文献1:特開2006-121365号公報
引用文献3:特表2005-538667号公報
引用文献5:特開2006-33803号公報
引用文献6:特開2006-279524号公報
(当審注:原査定にて「引用文献2」と記載されているものは、審査経緯に鑑み、「引用文献3」の誤記と認める。)
第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は強調のために当審が付した。
(1)「【0019】
すなわち、図1に示すPLL回路10は、位相比較器(PFD)12と、チャージポンプ(CP)14と、ループフィルタ(LF)16と、周波数粗調整回路(CT)18と、電圧制御発振器(VCO)20と、分周器(1/N)22とを備えている。」
(2)「【0022】
続いて、ループフィルタ16は、チャージポンプ14の出力とグランドとの間に直列に接続された抵抗素子32および容量素子34と、同じくチャージポンプ14の出力とグランドとの間に接続された容量素子36とによって構成されるローパスフィルタである。ループフィルタ16は、PLL回路10から出力される信号の発振周波数の安定性を向上させるために挿入されている。」
(3)「【0026】
電圧制御発振器20は、図4に示すように、LC発振回路およびその出力ノードに接続された複数のスイッチドキャパシタを備えている。また、各々のスイッチドキャパシタ46は、発振回路の出力ノードとグランドとの間に直列に接続された容量素子48及びスイッチ50を備えている。各々のスイッチ50のオンオフ制御入力には、周波数粗調整回路18のカウンタ40のカウント値が入力されている。」
(4)「【0029】
PLL回路10では、位相比較器12により、基準信号refと分周器20の出力信号との間の位相差が検出され、その検出結果であるアップ信号UPpfdおよびダウン信号DOWNpfdが出力される。例えば、基準信号refの位相よりも分周器22の出力信号の位相の方が進んでいる場合、ダウン信号DOWNpfdが出力され、遅れている場合にはアップ信号UPpfdが出力される。
【0030】
位相比較器12からアップ信号UPpfdが出力されると、チャージポンプ14のスイッチ26がオンし、直流電流源24によって、容量素子36及び容量素子34がチャージアップされコントロール電圧Vtuneが上昇する。逆に、ダウン信号DOWNpfdが出力されるとスイッチ28がオンし、直流電流源30によって容量素子36及び容量素子34がディスチャージされ、コントロール電圧Vtuneが下降する。
【0031】
周波数粗調整回路18では、比較器38により、コントロール電圧Vtuneと基準電圧とが比較される。例えば、コントロール電圧Vtuneが基準電圧の上限値以上であった場合、アップ信号UPctrが出力され、下限値以下であった場合、ダウン信号DOWNctrが出力される。これらのアップ信号UPctrおよびダウン信号DOWNctrに応じて、カウンタ40のカウント値がアップカウントまたはダウンカウントされる。」
(当審注:段落【0029】中の「分周器20」は、「分周器22」の誤記と認める。)
(5)「【0033】
電圧制御発振器20では、周波数粗調整回路18のカウンタ40のカウント値に応じて、各々のスイッチドキャパシタ46のスイッチ50のオンオフが切り替えられ、その発振周波数がスイッチドキャパシタ46の容量素子48の容量値を単位として粗調整される。」
(6)「【0035】
また、電圧制御発振器20では、ループフィルタ16を介して入力されるコントロール電圧Vtuneの電圧値に応じて、その発振周波数が可変容量44の容量値に応じて微調整される。」
(7)「【0037】
すなわち、前述の周波数粗調整回路18において、基準電圧の上限値および下限値は、可変容量44の容量値を変更することによって対応することが可能なコントロール電圧Vtuneの範囲(ファインチューンレンジ)を表す。コントロール電圧Vtuneがファインチューンレンジ内で変化する場合には、可変容量44の容量値を変更することによって、電圧制御発振器20の発振周波数が微調整される。
【0038】
一方、コントロール電圧Vtuneがファインチューンレンジを超えて変化した場合には、スイッチドキャパシタ46のオンオフが切り替えられ、容量素子48の容量値を単位として全体の容量値が変更され、これに応じて電圧制御発振器20の発振周波数が粗調整されるとともに、コントロール電圧Vtuneの電圧値に応じて電圧制御発振器20の発振周波数が微調整される。
【0039】
続いて、電圧制御発振器20の出力信号は、分周器22により1/Nの周波数に分周され、位相比較器12に入力される。以後同様にして、基準信号refと分周器22の出力信号との間の位相差が検出され、上述するように、電圧制御発振器20の出力信号の発振周波数が繰り返し変更されることにより、基準信号refと電圧制御発振器20の出力信号との間の位相および周波数が同期(ロック)される。」
(8)図1
(9)図4
2 前記1によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「位相比較器(PFD)12と、チャージポンプ(CP)14と、ループフィルタ(LF)16と、周波数粗調整回路(CT)18と、電圧制御発振器(VCO)20と、分周器(1/N)22とを備えるPLL回路10であって、
ループフィルタ16は、チャージポンプ14の出力とグランドとの間に直列に接続された抵抗素子32および容量素子34と、同じくチャージポンプ14の出力とグランドとの間に接続された容量素子36とによって構成されるローパスフィルタであり、
PLL回路10では、位相比較器12により、基準信号refと分周器22の出力信号との間の位相差が検出され、その検出結果であるアップ信号UPpfdおよびダウン信号DOWNpfdが出力され、
位相比較器12からアップ信号UPpfdが出力されると、チャージポンプ14のスイッチ26がオンし、直流電流源24によって、容量素子36及び容量素子34がチャージアップされコントロール電圧Vtuneが上昇し、ダウン信号DOWNpfdが出力されるとスイッチ28がオンし、直流電流源30によって容量素子36及び容量素子34がディスチャージされ、コントロール電圧Vtuneが下降し、
周波数粗調整回路18では、比較器38により、コントロール電圧Vtuneと基準電圧とが比較され、コントロール電圧Vtuneが基準電圧の上限値以上であった場合、アップ信号UPctrが出力され、下限値以下であった場合、ダウン信号DOWNctrが出力され、これらのアップ信号UPctrおよびダウン信号DOWNctrに応じて、カウンタ40のカウント値がアップカウントまたはダウンカウントされ、
電圧制御発振器20では、周波数粗調整回路18のカウンタ40のカウント値に応じて、各々のスイッチドキャパシタ46のスイッチ50のオンオフが切り替えられ、その発振周波数がスイッチドキャパシタ46の容量素子48の容量値を単位として粗調整され、
電圧制御発振器20では、ループフィルタ16を介して入力されるコントロール電圧Vtuneの電圧値に応じて、その発振周波数が可変容量44の容量値に応じて微調整され、
電圧制御発振器20の出力信号は、分周器22により1/Nの周波数に分周され、位相比較器12に入力され、
基準信号refと分周器22の出力信号との間の位相差が検出され、上述するように、電圧制御発振器20の出力信号の発振周波数が繰り返し変更されることにより、基準信号refと電圧制御発振器20の出力信号との間の位相および周波数が同期(ロック)される
PLL回路10。」
第5 対比
1 引用発明は「PLL回路10」であり、PLL回路は明らかに装置であるから、本願発明と引用発明とは「装置」である点で一致する。
引用発明のPLL回路10は「基準信号refと電圧制御発振器20の出力信号との間の位相および周波数が同期(ロック)される」ように動作するのであるから、引用発明の「基準信号ref」及び「電圧制御発振器20」は、それぞれ本願発明の「基準信号」及び「電圧制御発振器20」に相当する。
引用発明のPLL回路10は、基準信号refと「分周器22の出力信号」とを「位相比較器12」で比較することにより、「電圧制御発振器20」の出力信号の位相及び周波数を基準信号refと同期させるものであり、該「分周器22の出力信号」がPLL回路10におけるフィードバック制御のための信号であることは明らかであるから、引用発明の「分周器22」、「分周器22の出力信号」及び「位相比較器12」は、それぞれ本願発明の「周波数分割器」、「フィードバック信号」及び「位相差を検出するための手段」に相当する。
以上によれば、本願発明と引用発明とは、「フィードバック信号を生成するために、電圧制御発振器(VCO)の出力信号の周波数を分割するように構成された周波数分割器と、基準信号と前記フィードバック信号との間の位相差を検出するための手段と、を備える、装置。」である点で一致する。
2 引用発明の「コントロール電圧Vtune」は、「ループフィルタ16を介して」電圧制御発振器20に「入力される」ものである。そして、引用発明の「ループフィルタ16」は、「抵抗素子32」と「容量素子34」がグランドとの間に接続されており、「容量素子36」がグランドとの間に接続されているから、ローパスフィルタである。さらに、引用発明は「位相比較器12からアップ信号UPpfdが出力されると、チャージポンプ14のスイッチ26がオンし、直流電流源24によって、容量素子36及び容量素子34がチャージアップされコントロール電圧Vtuneが上昇し、ダウン信号DOWNpfdが出力されるとスイッチ28がオンし、直流電流源30によって容量素子36及び容量素子34がディスチャージされ、コントロール電圧Vtuneが下降」するものである。
以上によれば、引用発明の「コントロール電圧Vtune」は本願発明の「制御電圧」に相当する。そして、引用発明の「コントロール電圧Vtune」は、位相比較器12からのアップ信号UPpfd及びDOWNpfdに基づいて、チャージポンプ14並びに「ループフィルタ16」を構成する「容量素子36」及び「容量素子34」により発生されるものであるから、引用発明の少なくとも「ループフィルタ16」は、本願発明の「前記検出された位相差に基づいて制御電圧を発生するための手段」に相当する。
ここで、引用発明の「ループフィルタ16」は、前述の構成と動作に鑑みればアナログのローパスフィルタであると認められるから、本願発明と引用発明とは「前記制御電圧は、アナログループフィルタを使用して発生される」点で一致する。
3 引用発明の「電圧制御発振器20」は、「ループフィルタ16を介して入力されるコントロール電圧Vtuneの電圧値に応じて、その発振周波数が可変容量44の容量値に応じて微調整され」るものであるから、引用発明の「可変容量44」は、本願発明の「前記VCOの第1のキャパシタンス」に相当する。
そして、PLL回路の技術常識によれば、電圧制御発振器から出力される発振周波数を調整することにより、当該出力の位相と基準信号の位相との同期も達成されるのだから、本願発明と引用発明とは「位相補正を行うために、前記制御電圧を使用して前記VCOの第1のキャパシタンスを同調させるための手段」を備える点で一致する。
4 引用発明は「周波数粗調整回路18では、比較器38により、コントロール電圧Vtuneと基準電圧とが比較され、コントロール電圧Vtuneが基準電圧の上限値以上であった場合、アップ信号UPctrが出力され、下限値以下であった場合、ダウン信号DOWNctrが出力され、これらのアップ信号UPctrおよびダウン信号DOWNctrに応じて、カウンタ40のカウント値がアップカウントまたはダウンカウントされ」るものである。ここで、引用発明の「アップ信号UPctr」及び「ダウン信号DOWNctr」は、コントロール電圧Vtuneが基準電圧よりも高いか否か及び低いか否かの2値を表す信号であるから、本願発明の「デジタル信号」に相当する。そして、引用発明の「カウント値」は、「アップ信号UPctr」及び「ダウン信号DOWNctr」に応じてそれぞれカウントアップ及びカウントダウンされるものであるから、「アップ信号UPctr」を1、「ダウン信号DOWNctr」を-1として、それらを総計すなわち積分したものといえる。
以上によれば、引用発明の「カウント値」は、本願発明の「積分されたデジタル信号」に相当し、引用発明の「比較器38」及び「カウンタ40」は、それぞれ本願発明の「前記制御電圧をデジタル信号に変換するための手段」及び「前記デジタル信号を積分する手段」に相当する。
5 引用発明の「電圧制御発振器20」は、「周波数粗調整回路18のカウンタ40のカウント値に応じて、各々のスイッチドキャパシタ46のスイッチ50のオンオフが切り替えられ、その発振周波数がスイッチドキャパシタ46の容量素子48の容量値を単位として粗調整され」るのであるから、引用発明の「スイッチドキャパシタ46」は、本願発明の「前記VCOの第2のキャパシタンス」に相当し、本願発明と引用発明とは「周波数追跡を行うために、前記積分されたデジタル信号に基づいて前記VCOの第2のキャパシタンスを同調させるための手段」を備える点で一致する。
6 前記1~5によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「フィードバック信号を生成するために、電圧制御発振器(VCO)の出力信号の周波数を分割するように構成された周波数分割器と、
基準信号と前記フィードバック信号との間の位相差を検出するための手段と、
前記検出された位相差に基づいて制御電圧を発生するための手段と、ここにおいて、前記制御電圧は、アナログループフィルタを使用して発生される、
位相補正を行うために、前記制御電圧を使用して前記VCOの第1のキャパシタンスを同調させるための手段と、
前記制御電圧をデジタル信号に変換するための手段と、
前記デジタル信号を積分するための手段と、
周波数追跡を行うために、前記積分されたデジタル信号に基づいて前記VCOの第2のキャパシタンスを同調させるための手段と、
を備える、装置。」である点。
〈相違点〉
本願発明は「動作点電圧を発生するための手段」及び「ほぼ前記動作点電圧に前記制御電圧の中心を置くための手段」を有するのに対し、引用発明は当該手段を備えていることが明らかとはいえない点。
第6 判断
1 相違点について
引用発明は、「チャージポンプ14の出力とグランドとの間に直列に接続された抵抗素子32および容量素子34」及び「チャージポンプ14の出力とグランドとの間に接続された容量素子36」を備えるものであり、「位相比較器12からアップ信号UPpfdが出力されると、チャージポンプ14のスイッチ26がオンし、直流電流源24によって、容量素子36及び容量素子34がチャージアップされコントロール電圧Vtuneが上昇し、ダウン信号DOWNpfdが出力されるとスイッチ28がオンし、直流電流源30によって容量素子36及び容量素子34がディスチャージされ、コントロール電圧Vtuneが下降」するものである。
上記のように構成された引用発明において、容量素子34の一端がグランドに接続されているから、この一端はグランド電位に保持される。そして、容量素子34に蓄電されていない場合には、容量素子34の両端は同一電位となるから、この場合には他端もグランド電位となる。そして、容量素子34に電荷が蓄積されている場合には、蓄積された電荷に応じて容量素子34の他端の電位がグランド電位に対して上下に変動することが明らかである。このことは容量素子36についても同様である。また、抵抗素子32については、チャージポンプ14と容量素子34との間の電流に応じた電圧降下が生じることが明らかである。
そうすると、抵抗素子32と容量素子36との接続点のコントロール電圧Vtuneは、グランド電位を基準電圧として上下に変動することが明らかである。このような基準電圧は、通常、動作点電圧と呼ばれるものであり、したがって、引用発明における容量素子34及び36をグランドに接続する構成は「動作点電圧を発生するための手段」であるといえる。
他方、コントロール電圧Vtuneが、基準電圧であるグランド電位に対して上下にどの程度変動するのかは、引用文献1の記載からは必ずしも明らかではない。しかしながら、制御電圧の上下変動が想定される場合、電圧の増加及び減少のどちらにも同程度に対応できるように設計することが自然である。そうすると、引用発明において、上下に変動するコントロール電圧Vtuneの中心電圧をグランド電位にほぼ一致させることは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、格別のことではない。
以上によれば、前記相違点に係る構成は、引用発明から容易になし得るものである。
2 効果について
本願明細書によれば、本願の発明を実施するための形態は、以下の3つの効果を奏するとされている。
〈効果1〉PLL310は、図1中のPLL110の欠点を緩和する。第1に、バラクタ352は、PLLの性能へのバラクタ非線形性の影響を低減するために、比較的小さい線形領域にわたって動作させられ得る。これは、(バラクタ352を制御する)比例回路360は、位相補正を行うために、比較的小さい範囲にわたってバラクタ352を同調する必要があるにすぎないことがあるからである。バラクタ352は、キャパシタバンク355によって行われる周波数追跡のために広い同調範囲を必要としない。(【0031】)
〈効果2〉PLL310は、図1中のPLL110の欠点を緩和する。・・・第2に、アナログループフィルタ330は、大きい積分キャパシタを必要とせず、それにより、図1中のループフィルタ130と比較してアナログループフィルタ330のサイズを著しく低減する。これは、積分が積分回路362において実行されるからである。(【0031】)
〈効果3〉PLL310はまた、図2中のデジタルPLL210の欠点を緩和する。最初に、PLL310は、TDCを使用せず、したがって、上記で説明されたTDCに関連する問題を回避する。これは、ADC364は、十分に低い位相量子化ノイズ(phase quantization noise)を達成するのに十分に高い時間分解能を用いて実装することが困難であり得る、基準信号REFのエッジとフィードバック信号FBのエッジとの間の時間差をデジタル信号に変換することの代わりに、電圧(たとえば、制御電圧VCTRL)をデジタル信号に変換するからである。(【0032】)
まず、効果1について検討すると、本願の発明を実施するための形態はともかく、本願発明は、バラクタを線形領域で動作することについての限定を含まない。したがって、効果1のうち、バラクタ非線形性の影響を低減するという点については、本願発明の効果であるとは認められない。
そして、バラクタが広い同調範囲を必要としないという点については、引用発明が「コントロール電圧Vtuneがファインチューンレンジ内で変化する場合には、可変容量44の容量値を変更することによって、電圧制御発振器20の発振周波数が微調整され」(【0037】)、「一方、コントロール電圧Vtuneがファインチューンレンジを超えて変化した場合には、スイッチドキャパシタ46のオンオフが切り替えられ・・・これに応じて電圧制御発振器20の発振周波数が粗調整されるとともに、コントロール電圧Vtuneの電圧値に応じて電圧制御発振器20の発振周波数が微調整される」(【0038】)ものであることに鑑みれば、コントロール電圧Vtuneによる可変容量44の調整範囲は微調整の域を出ないのであるから、引用発明も本願発明と同様に、「バラクタが広い同調範囲を必要としない」という効果を奏する。
次いで、効果2について検討すると、本願発明は、「アナログループフィルタ中に大きい積分キャパシタを必要としない」ことを必須の要件としてはいない。したがって、効果2は本願発明の効果であるとは認められない。
仮に、効果2が本願発明の効果であるとしても、効果1で検討したように、引用発明においては「バラクタが広い同調範囲を必要としない」のであるから、引用発明のコントロール電圧Vtuneの変動範囲は小さいものであると認められ、そのようなコントロール電圧Vtuneを積分するための容量素子34は、比較的小さな容量で足りると認められる。したがって、引用発明も本願発明と同様に、「アナログループフィルタ中に大きい積分キャパシタを必要としない」という効果を奏する。
最後に、効果3について検討すると、引用発明は本願発明と同様に「電圧をデジタル信号に変換する」構成を有するのであるから、引用発明も本願発明と同様の効果を奏することが明らかである。
以上によれば、本願発明の効果は格別のものとは認められない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-010953