特許拒絶査定不服審判
2024-020377
外部発振器の制御及び較正
- 審判番号
- 2024-020377
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-527078
- 請求日
- 2024年12月19日
- 審決日
- 2025年07月07日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アナログ ディヴァイスィズ インク
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】飯田 雅人
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 丸山 高政
- 審判官 寺谷 大亮
- 分類
- P18 .121-Z (H03L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-527078「外部発振器の制御及び較正」拒絶査定不服審判事件〔令和4年6月16日国際公開、WO2022/126097、令和5年11月17日国内公表、特表2023-548568〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)12月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2020年12月8日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 6年 3月26日付け 拒絶理由通知書
7月 1日 意見書・手続補正書
8月 6日付け 拒絶査定
12月19日 審判請求書
以下では、令和6年8月6日付け拒絶査定を「原査定」という。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載されたとおりのものと認定する。
後の参照の便宜のため、請求項1の記載に記号A~Gを付して以下のように分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A 電子発振器システムであって、
B 半導体ダイと、
C 前記半導体ダイの外部にある制御可能発振器と、
D 前記制御可能発振器の発振周波数を調整するように構成された第1のバラクタと、
E 前記制御可能発振器の前記発振周波数を調整するように構成された第2のバラクタと、を備え、
F 前記半導体ダイは、
F1 前記第1のバラクタを制御することによって前記制御可能発振器に微調整を提供するように構成された位相ロックループ(PLL)と、
F2 前記第2のバラクタを制御することによって前記制御可能発振器に粗調整を提供するように構成された較正回路と、
F3 前記第2のバラクタを制御する粗制御電圧を出力するように構成された粗調整電圧ピンと
F′ を備える、
G 電子発振器システム。
第3 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
1.(進歩性)この出願の請求項1、6、12、13、16、18及び20に係る発明は、以下の文献1に記載された発明及び文献2に示される周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、
この出願の請求項2及び14に係る発明は、以下の文献1に記載された発明、文献2に示される周知技術及び文献3に示される周知技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、
この出願の請求項8に係る発明は、以下の文献1に記載された発明、文献2に示される周知技術及び文献4に示される周知技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、
この出願の請求項9、10、17及び19に係る発明は、以下の文献1に記載された発明、文献2に示される周知技術及び文献5に示される周知技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、
この出願の請求項11に係る発明は、以下の文献1に記載された発明、文献2に示される周知技術及び文献6に示される周知技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
請求項1、2、6、8~14及び16~20に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
文献1.特開平9-162730号公報
文献2.特開2005-229548号公報(周知技術を示す文献)
文献3.特開平11-298324号公報(周知技術を示す文献)
文献4.特開2015-154394号公報(周知技術を示す文献)
文献5.特開2012-239168号公報(周知技術を示す文献)
文献6.特開2007-110504号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載内容
原査定の拒絶の理由で引用された特開平9-162730号公報(以下「引用文献」という。)の記載及び該記載から認定される発明(以下「引用発明」という。)は、以下のとおりである。
1 引用文献の記載
引用文献には、以下の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した。
(1)「【0031】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図1乃至図3を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態であるPLL回路の回路構成を示す図である。本回路の特徴は、ロック時に、低いループゲインを有するメインループにより低雑音化を維持しながら、ワンチップ・マイコンにより制御される高変換利得のサブループにより、単一のVCOで幅広い周波数捕獲領域を得ている点にある。
【0032】まず、本発明によるPLL回路の構成を説明する。本発明のPLL回路は、従来例の図7に示したPLL回路と同様にLC共振を利用したVCO50を用いている。VCO50は、共振用のバリキャップとして粗調(course)用Cc52と微調(fine)用Cf54とを備え、これらバリキャップ52、54はコイル56を介し及び直接にVCO制御用IC58に接続されている。コイル56及びVCO制御用IC58を共通回路部として、バリキャップ54を含む回路を微調発振回路部、バリキャップ52を含む回路を粗調発振回路部と呼ぶこととする。」
(2)「【0034】ローパス・フィルタ34の出力は、VCO50のバリキャップCf54に微調発振回路部の制御電圧Vcfとして入力されるとともに、バッファ60を介してワンチップ・マイコン10のA/Dコンバータ62に入力される。」
(3)「【0036】D/Aコンバータ66の出力はローパス・フィルタ(LPF-c)68を介して、VCO50のバリキャップCc52に粗調発振回路部の制御電圧Vccとして入力される。
【0037】本発明のPLL回路のVCO50が従来の図7のPLL回路と異なるのは共振用のバリキャップとして粗調(course)用Cc52と微調(fine)用Cf54とを備えている点にある。この場合、VCO50の発振周波数fは次のようになる。
【0038】
f(Vcf,Vcc) = 1/2π*{L(Cc+Cf)}-1/2
・・・(1)
【0039】ここにおいて、Cf54は微調発振回路部の制御電圧Vcfに対して、発振可能周波数fをVCXOと同程度の+/-0.01%程度可変できる小さなdCf/dVcfを有するものを選択する。」
(4)「【0041】PLLがロックしているとき、粗調回路の制御電圧(Vcc)は固定されており、帰還がかかっているのは、可変分周器14-->位相比較器18-->チャージポンプ30-->LPF-f34-->VCO50の微調発振回路からなるメインループだけであるため、VCO50の変換利得Kは次式で与えられる。」
(5)「【0048】仮にVcfのダイナミック・レンジを0-5Vとし、周波数がf(initial)からf(final)に上がったとすれば、Vcfは上限5Vにはりつき、PLLのロックははずれる。このときA/Dコンバータ62の出力は最大となり、マイコン10はロックがはずれたと判断し、D/Aコンバータ66への出力を1ステップ変化させ、Vccを少し上げる。粗調発振回路部の変換利得は大きいので、発振周波数は大きく変化し上昇していく。
【0049】この状態で、マイコン10はメインループのアクイジョンタイムの間待った後、再度Vcfを参照し、ロックしていなければ出力をもう1ステップ上げる。このような動作を繰り返すことにより、Vcfは図2の破線の軌跡をたどり、最終的にDAC66の出力がステップ5でメインループがロックする。」
(6)図1
[図:0001429810000001.jpg]
【0031】の記載によれば、図1はPLL回路の回路構成を示しているので、図1によれば、PLL回路は、可変分周器14、位相比較器18、チャージ・ポンプ30、LPF-f34及びVCO50からなるメインループと、ワンチップ・マイコン10、EEPROM12、D/Aコンバータ66、LPF-c68及びVCO50を含むサブループとを備えると解される。
2 引用発明の認定
引用文献に記載された「ワンチップ・マイコン」(【0031】)、「ワンチップ・マイコン10」(【0034】、図1)及び「マイコン10」(【0048】、【0049】)は、同一のものを表していると解されるので、以下の引用発明の認定では、これらを「マイコン10」に表記を統一する。
引用文献に記載された「粗調(course)用Cc52」(【0032】、【0037】)、「バリキャップ52」(【0032】)及び「バリキャップCc52」(【0036】)は、同一のものを表していると解されるので、以下の引用発明の認定では、これらを「粗調用バリキャップCc52」に表記を統一する。
引用文献に記載された「微調(fine)用Cf54」(【0032】、【0037】)、「バリキャップ54」(【0032】)及び「バリキャップCf54」(【0034】)は、同一のものを表していると解されるので、以下の引用発明の認定では、これらを「微調用バリキャップCf54」に表記を統一する。
引用文献に記載された「ローパス・フィルタ(LPF-c)68」(【0036】)及び「LPF-c68」(図1)は、同一のものを表していると解されるので、以下の引用発明の認定では、これらを「LPF-c68」に表記を統一する。
引用文献に記載された「ローパス・フィルタ34」(【0034】)及び「LPF-f34」(図1)は、同一のものを表していると解されるので、以下の引用発明の認定では、これらを「LPF-f34」に表記を統一する。
以上を踏まえると、前記1の記載により、引用文献には、以下に示す引用発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明を記号a~iで分説し、「構成a」のようにして参照する。
〈引用発明〉
a 可変分周器14、位相比較器18、チャージ・ポンプ30、LPF-f34及びVCO50からなるメインループと、マイコン10、EEPROM12、D/Aコンバータ66、LPF-c68及びVCO50を含むサブループとを備えるPLL回路であって、(図1)
b ロック時に、低いループゲインを有するメインループにより低雑音化を維持しながら、マイコン10により制御される高変換利得のサブループにより、単一のVCOで幅広い周波数捕獲領域を得、(【0031】)
c VCO50は、共振用のバリキャップとして粗調用バリキャップCc52と微調用バリキャップCf54とを備え、(【0032】)
d LPF-f34の出力は、VCO50の微調用バリキャップCf54に微調発振回路部の制御電圧Vcfとして入力され、(【0034】)
e D/Aコンバータ66の出力はLPF-c68を介して、VCO50の粗調用バリキャップCc52に粗調発振回路部の制御電圧Vccとして入力され、(【0036】)
f VCO50の発振周波数fは、
f(Vcf,Vcc) = 1/2π*{L(Cc+Cf)}-1/2
となり、(【0037】、【0038】)
g PLLがロックしているとき、粗調回路の制御電圧(Vcc)は固定されており、(【0041】)
h PLLのロックがはずれるときA/Dコンバータ62の出力は最大となり、マイコン10はロックがはずれたと判断し、D/Aコンバータ66への出力を1ステップ変化させ、Vccを少し上げ、この状態でロックしていなければ出力をもう1ステップ上げ、このような動作を繰り返すことにより、最終的にメインループがロックする、(【0048】、【0049】)
i PLL回路。
第5 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 発明特定事項A及びGについて
発明特定事項Aは「電子発振器システムであって、」というものであり、発明特定事項Gは「電子発振器システム。」というものである。
引用発明は、「VCO50」を備える「PLL回路」である(構成a)から、本願発明の「電子発振器システム」に相当する。
よって、本願発明と引用発明とは、「電子発振器システムであ」る点で一致する。
2 発明特定事項Bについて
発明特定事項Bは「半導体ダイと、」というものである。
引用発明は、半導体ダイを備えることが特定されていない点で、本願発明と相違する。
3 発明特定事項Cについて
発明特定事項Cは「前記半導体ダイの外部にある制御可能発振器と、」というものである。
引用発明の「VCO50」は、本願発明の「制御可能発振器」に相当する。
よって、本願発明と引用発明とは、「制御可能発振器」を備える点で共通するものの、本願発明の「制御可能発振器」は「前記半導体ダイの外部にある」のに対し、引用発明では半導体ダイについて特定されていないため、「VCO50」が半導体ダイの外部にあるとはいえない点で相違する。
4 発明特定事項D及びEについて
発明特定事項Dは「前記制御可能発振器の発振周波数を調整するように構成された第1のバラクタと、」というものであり、発明特定事項Eは「前記制御可能発振器の前記発振周波数を調整するように構成された第2のバラクタと、を備え、」というものである。
引用発明の「VCO50」は、「共振用のバリキャップとして粗調用バリキャップCc52と微調用バリキャップCf54とを備え」(構成c)、VCO50の発振周波数fは、「1/2π*{L(Cc+Cf)}-1/2」となる(構成f)から、引用発明の「微調用バリキャップCf54」及び「粗調用バリキャップCc52」は、「VCO50の発振周波数f」を調整するように構成されており、前者を第1のバラクタ、後者を第2のバラクタと呼ぶことは任意である。
よって、本願発明と引用発明とは、「前記制御可能発振器の発振周波数を調整するように構成された第1のバラクタと、」「前記制御可能発振器の前記発振周波数を調整するように構成された第2のバラクタと、を備え」る点で一致する。
5 発明特定事項F1について
発明特定事項F1は「前記第1のバラクタを制御することによって前記制御可能発振器に微調整を提供するように構成された位相ロックループ(PLL)と、」というものである。
引用発明の「可変分周器14、位相比較器18、チャージ・ポンプ30、LPF-f34及びVCO50からなるメインループ」(構成a)は、一般的な位相ロックループ(PLL)であるから、本願発明の「位相ロックループ(PLL)」に相当する。
引用発明では、「LPF-f34の出力は、VCO50の微調用バリキャップCf54に微調発振回路部の制御電圧Vcfとして入力され」る(構成d)から、引用発明の「LPF-f34」を含む「メインループ」は、「微調用バリキャップCf54」を制御すると解される。
そして、引用発明の「制御電圧Vcf」により、「微調用バリキャップCf54」の容量Cfが定まり、「VCO50」の発振周波数fは、構成fのように制御されると解される。
よって、本願発明と引用発明とは、「前記第1のバラクタを制御することによって前記制御可能発振器に微調整を提供するように構成された位相ロックループ(PLL)」を備える点で一致する。
6 発明特定事項F2について
発明特定事項F2は「前記第2のバラクタを制御することによって前記制御可能発振器に粗調整を提供するように構成された較正回路と、」というものである。
引用発明は、「PLLのロックがはずれるときA/Dコンバータ62の出力は最大となり、マイコン10はロックがはずれたと判断し、D/Aコンバータ66への出力を1ステップ変化させ、Vccを少し上げ、この状態でロックしていなければ出力をもう1ステップ上げ、このような動作を繰り返すことにより、最終的にメインループがロックする」ものであり(構成h)、「Vcc」は、「VCO50の粗調用バリキャップCc52に」入力される「粗調発振回路部の制御電圧Vcc」である(構成e)から、引用発明の「マイコン10」及び「D/Aコンバータ66」は、「VCO50」の粗調整を提供するように構成されているといえる。
また、引用発明では、「PLLがロックしているとき、粗調回路の制御電圧(Vcc)は固定されて」いる(構成g)ものであり、構成hの動作を考慮すると、Vccは、ロックが外れているときにロックできるように変化させるものと解される。よって、「制御電圧Vcc」を生成する「マイコン10」及び「D/Aコンバータ66」は、引用発明の「PLL回路」がロック外れを起こすようなVccを較正するための回路であるといえる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記第2のバラクタを制御することによって前記制御可能発振器に粗調整を提供するように構成された較正回路」を備える点で一致する。
7 発明特定事項F3について
発明特定事項F3は「前記第2のバラクタを制御する粗制御電圧を出力するように構成された粗調整電圧ピンと」というものである。
引用発明は、制御電圧を出力するピンについて特定されていない点で、本願発明と相違する。
8 発明特定事項F及びF′について
発明特定事項F及びF′は、「前記半導体ダイは」、発明特定事項F1~F3「を備える、」というものである。
前記2のとおり、引用発明は、半導体ダイを備えることが特定されていない点で、本願発明と相違する。
9 一致点及び相違点
前記1~8によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「電子発振器システムであって、
制御可能発振器と、
前記制御可能発振器の発振周波数を調整するように構成された第1のバラクタと、
前記制御可能発振器の前記発振周波数を調整するように構成された第2のバラクタと、を備え、
前記第1のバラクタを制御することによって前記制御可能発振器に微調整を提供するように構成された位相ロックループ(PLL)と、前記第2のバラクタを制御することによって前記制御可能発振器に粗調整を提供するように構成された較正回路と、を備える、電子発振器システム。」である点。
〈相違点〉
本願発明は「半導体ダイ」を備えるのに対し、引用発明は、半導体ダイを備えることが特定されていない点。(発明特定事項B)
それに付随する相違点として、本願発明の「制御可能発振器」は「前記半導体ダイの外部にある」のに対し、引用発明の「VCO50」が半導体ダイの外部にあるとはいえない点(発明特定事項C)に加え、本願発明の「位相ロックループ(PLL)」及び「較正回路」が「前記半導体ダイ」に備わる(発明特定事項F、F1、F2、F′)のに対し、引用発明の「メインループ」、「マイコン10」及び「D/Aコンバータ66」は、半導体ダイに備わるとは特定されない点。
さらに、本願発明は「前記半導体ダイ」に「前記第2のバラクタを制御する粗制御電圧を出力するように構成された粗調整電圧ピン」を備えるのに対し、引用発明は半導体ダイに粗調整電圧ピンを備えることが特定されない点。(発明特定事項F、F3、F′)
第6 進歩性の判断
以下では、本願発明の引用発明に対する進歩性の有無を判断する。
1 相違点についての判断
一般に、電子回路のどの部分を1つの半導体ダイに集積するかは、設計的事項に過ぎない。例えば、PLLについて、PFD(位相比較器)、VCO、帰還回路及びLPFを、すべて同一の半導体チップ上に形成しても、VCOを外付けにしても良いことは、当審で新たに引用する特開2000-295098号公報(平成12年10月20日公開)に開示される(【0042】)ように、周知技術である。
そして、引用発明において、VCOを外付けとし、それ以外のすべてを同一の半導体チップに集積することを阻害する要因はない。
そうすると、引用発明の「PLL回路」のうち、「VCO50」のみを外付けとし、それ以外のすべてを同一の半導体チップ(半導体ダイ)に集積するよう設計することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、格別のこととは認められない。
そして、引用発明において「VCO50」のみを外付けとしたならば、「VCO50」の「粗調用バリキャップCc52」に対して「制御電圧(Vcc)」を出力するためのピンを設けることは、当然のことである。
したがって、相違点に係る構成は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易になし得たと認められる。
2 効果について
引用発明及び周知技術に鑑みれば、本願発明の効果は、格別のものとは認められない。
3 請求人の主張について
請求人は、概略、以下の主張1及び2を主張する。
主張1 引用文献及び文献2(当審注:特開2005-229548号公報)は、いずれも「前記半導体ダイは、前記第1のバラクタを制御することによって前記制御可能発振器に微調整を提供するように構成された位相ロックループ(PLL)と、前記第2のバラクタを制御することによって前記制御可能発振器に粗調整を提供するように構成された較正回路と、前記第2のバラクタを制御する粗制御電圧を出力するように構成された粗調整電圧ピンとを備える」という本願発明の構成を開示も示唆もしていないので、当業者は、引用文献及び文献2に基づき、本願の補正後の請求項1、13、18に係る発明に容易に想到しうるものではない。(意見書3頁、下線は請求人が付した。)
主張2 引用文献と文献2の発明は、解決しようとする課題が異なるため、当業者は、引用発明に文献2に記載の発明を適用する動機付けがない。
さらに、文献2は、ループフィルタ(LPF)5や発振回路6がチップ内に含まれずに外付けとなれば、PLL周波数シンセサイザを構成する回路基板の全体の面積が大きくなるという問題があると述べている。たとえ、引用文献に文献2を適用して、ワンチップマイコン10とディスクリート構成のPLL回路とを一つのICとして集積化したとしても、本願発明の「前記半導体ダイの外部にある制御可能発振器」に対する阻害要因があると考える。
よって、引用発明のPLL回路において、文献2に開示されるようにPLL回路を適宜IC化する構成を適用し、ワンチップマイコン10とディスクリート構成のPLL回路とを一つのICとして集積化し本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものではないと思料する。(審判請求書7~8頁)
(1)主張1について
請求人は、要するに、引用文献及び文献2には、発明特定事項F~F′、特に、発明特定事項F3が記載も示唆もされていないと主張する。
この点については、第5、9に示したとおり、本願発明と引用発明との相違点となるものの、該相違点は、前記1のとおり、当業者が容易になし得たから、請求人の主張は採用できない。
(2)主張2について
原査定で引用された文献2は、「発振回路において、PLL回路を適宜IC化して実装する」(原査定1頁)という周知技術を示すために引用されたに過ぎず、文献2全体の記載から、課題等を含めて技術的思想を引用するものではない。文献2に記載された「PLL周波数シンセサイザを構成する回路基板の全体の面積が大きくなるという問題」(【0013】)は、文献2の全体に記載された発明に特有の事情であり、前記周知技術に普遍的に存在する事情ではない。そもそも、前記1で触れたように、電子回路のどの部分を1つの半導体ダイに集積するかは、設計的事項に過ぎない。
そして、前記1で触れたように、引用発明にはVCOを外付けとし、それ以外のすべてを同一の半導体チップに集積することを阻害する要因はない。
よって、請求人の主張は採用できない。
4 進歩性についての小括
以上のとおりであるから、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものと認められる。
第7 むすび
前記第6のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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