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特許拒絶査定不服審判

2018-009913

同軸ケーブルおよびその構築方法

審判番号
2018-009913
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-547457外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年07月19日
審決日
2019年11月13日
公報発行日
2020年05月29日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01B) / P18 .575-Z (H01B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-547457「同軸ケーブルおよびその構築方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月19日国際公開、WO2014/093267、平成28年 2月 8日国内公表、特表2016-503945〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1.手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)12月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年12月13日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年11月30日付けの拒絶理由の通知に対して、平成30年3月5日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年3月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年7月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2.平成30年7月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年7月19日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正について(補正の内容) 平成30年7月19日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、 本件補正前に、 「【請求項1】 同軸ケーブルであって、 導電性中心部材と、 前記導電性中心部材を取囲む誘電性絶縁層と、 外側保護シースと、 前記誘電性絶縁層と前記外側保護シースとの間にはさまれた編組みEMIシールド層とを備え、前記編組みEMIシールド層は、ハイブリッド糸で編まれ、前記ハイブリッド糸は、少なくとも1本の非導電性フィラメントに絡ませられるかまたは少なくとも1本の非導電性フィラメントとともに提供される少なくとも1本の導電性ワイヤフィラメントを含み、前記非導電性フィラメントは、前記非導電性フィラメントの外面にコーティング材料を塗布して接着させることによって処理されるか、前記外面にテクスチャ付与面が設けられる、同軸ケーブル。 【請求項2】 前記編組みEMIシールド層は、もっぱら前記ハイブリッド糸で編まれる、請求項1に記載の同軸ケーブル。 【請求項3】 前記少なくとも1本の非導電性フィラメントは、前記編組みEMI層に対して弾性跳ね返りの向上をもたらす、請求項1に記載の同軸ケーブル。 【請求項4】 前記少なくとも1本の非導電性フィラメントは、前記編組みEMI層に対して耐衝撃性の向上をもたらす、請求項1に記載の同軸ケーブル。 【請求項5】 前記外側保護シースは、先行技術の同軸ケーブルの外側シースに対して厚みが減少している、請求項1に記載の同軸ケーブル。 【請求項6】 前記同軸ケーブルの質量は、先行技術の同軸ケーブルの質量に対して減少している、請求項1に記載の同軸ケーブル。 【請求項7】 前記少なくとも1本の非導電性フィラメントのうちの少なくとも1本は、マルチフィラメントである、請求項1に記載の同軸ケーブル。 【請求項8】 前記少なくとも1本の非導電性フィラメントのうちの少なくとも1本は、モノフィラメントである、請求項7に記載の同軸ケーブル。 【請求項9】 同軸ケーブルを構築する方法であって、 導電性部材を設けることと、 前記導電性部材の周りに絶縁層を形成することと、 前記絶縁層の周りにシールド層を編むことと、 前記シールド層の周りに外側保護シースを形成することと、 少なくとも1本の非導電性フィラメントに絡ませられるかまたは少なくとも1本の非導電性フィラメントとともに提供される少なくとも1本の導電性ワイヤフィラメントを含むハイブリッド糸から少なくとも部分的に前記シールド層を編むこととを備え、前記非導電性フィラメントは、前記非導電性フィラメントの外面にコーティング材料を塗布して接着させることによって処理されるか、前記外面にテクスチャ付与面が設けられる、方法。 【請求項10】 もっぱら前記ハイブリッド糸から前記シールド層を編むことをさらに含む、請求項9に記載の方法。 【請求項11】 複数の非導電性フィラメントを有する前記ハイブリッド糸を提供することをさらに含む、請求項9に記載の方法。 【請求項12】 前記複数の非導電性フィラメントのうちの少なくとも1本をマルチフィラメントとして提供することをさらに含む、請求項11に記載の方法。 【請求項13】 前記複数の非導電性フィラメントのうちの少なくとも1本をモノフィラメントとして提供することをさらに含む、請求項12に記載の方法。 【請求項14】 前記外側保護シースの厚みを先行技術の同軸ケーブルの外側シースに対して減少させることをさらに含む、請求項9に記載の方法。 【請求項15】 前記同軸ケーブルの総質量を先行技術の同軸ケーブルの質量に対して減少させることをさらに含む、請求項9に記載の方法。」 とあったところを、 本件補正により、 「【請求項1】 同軸ケーブルであって、 導電性中心部材と、 前記導電性中心部材を取囲む誘電性絶縁層と、 外側保護シースと、 前記誘電性絶縁層と前記外側保護シースとの間にはさまれて穏やかな摩耗防止内側および外側面を有する編組みEMIシールド層とを備え、前記編組みEMIシールド層は、ハイブリッド糸で編まれ、前記ハイブリッド糸は、少なくとも1本の非導電性フィラメントに絡ませられるかまたは少なくとも1本の非導電性フィラメントとともに提供される少なくとも1本の導電性ワイヤフィラメントを含み、前記非導電性フィラメントは、前記非導電性フィラメントの外面にコーティング材料を塗布して接着させることによって処理されるか、前記外面にテクスチャ付与面が設けられる、同軸ケーブル。 【請求項2】 前記編組みEMIシールド層は、もっぱら前記ハイブリッド糸で編まれる、請求項1に記載の同軸ケーブル。 【請求項3】 前記編組みEMI層は、弾性跳ね返りを有する、請求項1に記載の同軸ケーブル。 【請求項4】 前記編組みEMI層は、耐衝撃性を有する、請求項1に記載の同軸ケーブル。 【請求項5】 前記少なくとも1本の非導電性フィラメントのうちの少なくとも1本は、マルチフィラメントである、請求項1に記載の同軸ケーブル。 【請求項6】 前記少なくとも1本の非導電性フィラメントのうちの少なくとも1本は、モノフィラメントである、請求項5に記載の同軸ケーブル。 【請求項7】 同軸ケーブルを構築する方法であって、 導電性部材を設けることと、 前記導電性部材の周りに絶縁層を形成することと、 前記絶縁層の周りに穏やかな摩耗防止内側および外側面を有するシールド層を編むことと、 前記シールド層の周りに外側保護シースを形成することと、 少なくとも1本の非導電性フィラメントに絡ませられるかまたは少なくとも1本の非導電性フィラメントとともに提供される少なくとも1本の導電性ワイヤフィラメントを含むハイブリッド糸から少なくとも部分的に前記シールド層を編むこととを備え、前記非導電性フィラメントは、前記非導電性フィラメントの外面にコーティング材料を塗布して接着させることによって処理されるか、前記外面にテクスチャ付与面が設けられる、方法。 【請求項8】 もっぱら前記ハイブリッド糸から前記シールド層を編むことをさらに含む、請求項7に記載の方法。 【請求項9】 複数の非導電性フィラメントを有する前記ハイブリッド糸を提供することをさらに含む、請求項7に記載の方法。 【請求項10】 前記複数の非導電性フィラメントのうちの少なくとも1本をマルチフィラメントとして提供することをさらに含む、請求項9に記載の方法。 【請求項11】 前記複数の非導電性フィラメントのうちの少なくとも1本をモノフィラメントとして提供することをさらに含む、請求項10に記載の方法。」 とするものである。(下線部は、補正箇所である。) 2.補正の適否 本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項である「編組みEMIシールド層」が「穏やかな摩耗防止内側および外側面を有する」とした限定を付加するものである。また、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)を検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、「上記1.」に本件補正による請求項1として記載したとおりのものである。 (2)引用文献、引用発明 (ア)引用文献1 原査定の拒絶の理由において引用された、実願平2-70952号(実開平4-29118号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付加した。以下、同じ。) a.「2.実用新案登録請求の範囲 (1) 少なくとも一本の絶縁心線で構成されるケーブルコアの外側に、シールド層として導電性の素線を編組もしくは横巻きしてなるシールドケーブルにおいて、前記素線は、抗張力のある可撓性芯体のまわりに導電性線条が巻装されたものであることを特徴とするシールドケーブル。」(明細書1頁4-10行) b.「[実施例] 次に、図面に基づきこの考案についてさらに詳しく説明する。第1図は、この考案によるシールドケーブルの一実施例を示す横断面図である。図示のシールドケーブル1は、撚線導体2の外周に絶縁体3を被覆してなる絶縁心線4をケーブルコアとし、そしてこのケーブルコア4の外側には、第2図に示すシールド素線10の編組によるシールド層5と、シース6とが設けられた構成となっている。ここでシールド素線10は、第2図に詳細に示されるように、例えばポリエステル繊維の撚糸のように抗張力と可撓性を備えた素材を芯体11とし、このまわりに導電性線条として銅箔等の導電性の良好な金属箔12a,12bを互いに逆方向となるように螺旋状に巻き重ねたものである。」(明細書4頁14行-5頁9行) c.「なお、芯体11の外周に巻装される導電性線条は、図では二層巻き(12a,12b)の例が示されているが、これを一層にしたり、あるいは三層以上にしてもよい。また、その巻き方についても実施例のように若干の隙間を残すようにして巻いたり、あるいは重ねてもよい。導電性線条12a,12bとしては、一般に厚さ0.01~0.1mm、幅0.2~2mm程度の銅箔その他導電性のよい金属箔、あるいはこれらの箔に銀・錫・ニッケルなどのメッキを施したもの、またはプラスチックフィルムに金属を蒸着またはラミネートしてテープ状にしたもの等がケーブルの可撓性を害することなく好適に用いられる。そして、これらを密巻きあるいは重ね巻きにすると、シールド素線としての可撓性および屈曲寿命はより向上し、ケーブル全体に好影響を与える。また、導電性線条は必ずしも金属箔テープに限らず、丸細線などを用いてもよい。」(明細書5頁10行-6頁7行) d.「また、可撓性芯体11としては、必要な可撓性と引張り強度を得るために、例えばポリアミド系糸、ポリエステル系糸、延伸処理を施したフッ素樹脂系糸、その他各種の合成樹脂製のマルチまたはモノフィラメント糸、あるいは細紐状物、綿糸、絹糸、麻糸などの天然繊維糸などを条件に応じて適宜選択することができる。 このようにシールド層5が、可撓性に富む素線10からなる本考案によるシールドケーブル1では、ケーブル全体の可撓性に大きな影響を及ぼすシールド層5の可撓性が高いので、ケーブル全体として屈曲や捻回等の外力に対して円滑に追従し、かつ屈曲寿命も大幅に向上する。さらに、絶縁心線についても、その導体をシールド素線と同様な構成のものとすれば、ケーブルの屈曲特性、伸縮特性は一段と向上する。」(明細書6頁8行-7頁3行) e.「なお、上記実施例ではケーブルコアが一本の絶縁心線で構成される同軸ケーブル構造の例について説明したが、これを複数本にした多心ケーブルに適用してもよく、また編組構造のシールド層に代えて横巻きにすることも可能であり、この考案の技術思想の範囲内での種々の変更実施はもちろん可能である。」(明細書7頁16行-8頁2行) f.「図1 」 g.「図2 」 ・上記b及びfには、撚線導体2の外周に絶縁体3を被覆してなる絶縁心線4をケーブルコアとし、そしてこのケーブルコア4の外側には、シールド素線10の編組によるシールド層5と、シース6とが設けられた構成となっているシールドケーブル1が記載されている。 ・上記b及びgには、シールド素線10は、ポリエステル繊維の撚糸のように抗張力と可撓性を備えた素材を芯体11とし、このまわりに導電性線条として銅箔等にニッケルなどのメッキを施した金属箔12a,12bを互いに逆方向となるように螺旋状に巻き重ねたものであることが記載されている。 ・上記cには、導電性線条12a,12bとしては、一般に厚さ0.01~0.1mm、幅0.2~2mm程度の銅箔その他導電性のよい金属箔であること、また、必ずしも金属箔テープに限らず、導電性線条は丸細線などを用いてもよいことが記載されている。 ・上記dには、前記可撓性芯体11としては、必要な可撓性と引張り強度を得るために、例えばポリアミド系糸、ポリエステル系糸、延伸処理を施したフッ素樹脂系糸、その他各種の合成樹脂製のマルチまたはモノフィラメント糸、あるいは細紐状物、綿糸、絹糸、麻糸などの天然繊維糸などを条件に応じて適宜選択することができることが記載されている。 ・上記eには、シールドケーブル1が同軸ケーブル構造であることが記載されている。 したがって、上記引用文献1の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 「撚線導体2の外周に絶縁体3を被覆してなる絶縁心線4をケーブルコアとし、そしてこのケーブルコア4の外側には、シールド素線10の編組によるシールド層5と、シース6とが設けられた構成となっているシールドケーブル1であって、 前記シールド素線10は、ポリエステル繊維の撚糸のように抗張力と可撓性を備えた素材を芯体11とし、このまわりに導電性線条として銅箔等にニッケルなどのメッキを施した金属箔12a,12bを互いに逆方向となるように螺旋状に巻き重ねたものであって、 前記導電性線条12a,12bは、厚さ0.01~0.1mm、幅0.2~2mm程度の銅箔その他導電性のよい金属箔であって、また、必ずしも金属箔テープに限らず、丸細線などを用いてもよいものであって、 前記可撓性芯体11としては、必要な可撓性と引張り強度を得るために、例えばポリアミド系糸、ポリエステル系糸、延伸処理を施したフッ素樹脂系糸、その他各種の合成樹脂製のマルチまたはモノフィラメント糸、あるいは細紐状物、綿糸、絹糸、麻糸などの天然繊維糸などを条件に応じて適宜選択することができる、 同軸ケーブル構造のシールドケーブル1。」 (イ)引用文献2 拒絶査定において引用された、国際公開第2011/028460号(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(当審仮訳は、引用文献2の公表公報である特表2013-515331号公報を参考にした。) 「 [0047] As shown in Figure 13, in accordance with yet another presently preferred aspect of the invention, a hybrid yam member 12 is constructed generally the same as described above and shown in Figures 11 and 12 by serving two or more conductive wire filaments 16 extending in abutment with an outer surface of a single nonconductive filament, shown here as a nonconductive monofilament 14. However, prior to serving the conductive wire filaments 16 about the nonconductive filament 14, the nonconductive monofilament 14 is either treated by first applying and adhering a coating material CM to its outer surface, or the outer surface has a texturized surface TS provided thereon in a texturizing process. The coating material CM or texturized surface TS acts to inhibit the conductive wire filaments 16 from slipping relative to the underlying nonconductive monofilament 14. 」 (当審仮訳: [0047] 図13に示されるように、本発明のさらに別の現状の好ましい局面によれば、ハイブリッド糸部材12は、ここでは非導電性モノフィラメント14として示されている1本の非導電性フィラメントの外面と当接して延びる2本以上の導電性ワイヤフィラメント16を供することによって、上述の、図11および図12に示されたものと概して同じように構築される。しかしながら、非導電性フィラメント14の周りに導電性ワイヤフィラメント16を供する前に、非導電性モノフィラメント14は、まずその外面にコーティング材料CMを塗布して付着させることによって処理されるか、または、外面はテクスチャード加工プロセスにおいてその上にテクスチャ構造面TSを設けている。コーティング材料CMまたはテクスチャ構造面TSは、導電性ワイヤフィラメント16が、下にある非導電性モノフィラメント14に対して滑ることを抑制するように作用する。) 上記引用文献2の記載及び図面、並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用文献2には以下の技術事項(以下、「引用文献2に記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。 「ハイブリッド糸において、該糸を構成するフィラメントの外面にコーティング材料を塗布して接着させることによって処理されるか、前記外面にテクスチャ構造面を設けること。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明「撚線導体2」、「絶縁体3」、及び「シース6」は、各々、本件補正発明の「導電性中心部材」、「導電性中心部材を取囲む誘電性絶縁層」、及び「外側保護シース」に相当する。 b.引用発明の「シールド層5」は、銅箔等にニッケルメッキを施した金属箔からなる導電性線条のシールド素線10を編組にしたものであり電磁波のシールドと認められることから、本件補正発明の「編組みEMIシールド層」に相当する。 また、引用発明の「シールド層5」は、絶縁体3の外側にシースととも設けられ、シースは外部被覆であることから、本件補正発明の「前記誘電性絶縁層と前記外側保護シースとの間にはさまれた編組みEMIシールド層」に相当する。 但し、「編組みEMIシールド層」が、本件補正発明では「穏やかな摩耗防止内側および外側面を有する」のに対して、引用発明ではその旨の特定がされていない点で相違する。 c.引用発明の「芯体11」は、ポリエステル繊維のマルチまたはモノフィラメント糸とすることができるから、本件補正発明の「非導電性フィラメント」を含むものである。 但し、本件補正発明では「前記非導電性フィラメントは、前記非導電性フィラメントの外面にコーティング材料を塗布して接着させることによって処理されるか、前記外面にテクスチャ付与面が設けられる」のに対して、引用発明ではその旨の特定がされていない点で相違する。 d.引用発明の「導電性線条」は、丸細線とすることができる。また、金属箔とした際にはその厚さが0.01~0.1mm、幅が0.2~2mm程度であり、丸細線とした際には、通常「導電性線条」の層の厚さを同じとすることから、その径が0.01~0.1mm程度の糸状のものと認められる。してみると、丸細線は導電性のフィラメントといえる。 したがって、引用発明の「導電性線条」は、本件補正発明の「導電性ワイヤフィラメント」を含むものである。 e.そして、引用発明の「シールド素線10」は、「芯体11」と「導電性線条」とからなるものであるから、本件補正発明の「前記ハイブリッド糸」に相当する。 また、引用発明の「シールド素線10の編組によるシールド層5」は、本件補正発明の「前記編組みEMIシールド層は、ハイブリッド糸で編まれ」に相当する。 さらに、引用発明の「シールド素線10は、ポリエステル繊維の撚糸のように抗張力と可撓性を備えた素材を芯体11とし、このまわりに導電性線条として銅箔等の導電性の良好な金属箔12a,12bを互いに逆方向となるように螺旋状に巻き重ねたものであ」ることは、本件補正発明の「前記ハイブリッド糸は、少なくとも1本の非導電性フィラメントに絡ませられるかまたは少なくとも1本の非導電性フィラメントとともに提供される少なくとも1本の導電性ワイヤフィラメントを含」むことに相当する。 f.引用発明の「シールドケーブル1」は、「撚線導体2」、「絶縁体3」、「シース6」、及び「シールド層5」を備え同軸ケーブル構造であるから、本件補正発明の「同軸ケーブル」に相当する。 したがって、本件補正発明と引用発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、また、相違している。 (一致点) 「同軸ケーブルであって、 導電性中心部材と、 前記導電性中心部材を取囲む誘電性絶縁層と、 外側保護シースと、 前記誘電性絶縁層と前記外側保護シースとの間にはさまれた編組みEMIシールド層とを備え、前記編組みEMIシールド層は、ハイブリッド糸で編まれ、前記ハイブリッド糸は、少なくとも1本の非導電性フィラメントに絡ませられるかまたは少なくとも1本の非導電性フィラメントとともに提供される少なくとも1本の導電性ワイヤフィラメントを含む、同軸ケーブル。」 (相違点1) 編組みEMIシールド層が、本件補正発明では「穏やかな摩耗防止内側および外側面を有する」のに対して、引用発明ではその旨の特定がされていない点。 (相違点2) 本件補正発明では「前記非導電性フィラメントは、前記非導電性フィラメントの外面にコーティング材料を塗布して接着させることによって処理されるか、前記外面にテクスチャ付与面が設けられる」のに対して、引用発明ではその旨の特定がされていない点。 (4)判断 上記各相違点について検討する。 (相違点1)について 本件補正発明の「穏やかな摩耗防止内側および外側面を有する」ことに関する本件の発明の詳細な説明としては、段落【0022】に「とにかく、非導電性糸20は、ワイヤフィラメント22に対して比較的柔らかく、そのため、シールド層16に穏やかな摩耗防止内側および外側面を提供し、最終的に絶縁層14および外側保護シース24に対する摩耗の可能性を減少させる。」と記載されている。 してみると、非導電性糸20が、ワイヤフィラメント22に対して比較的柔らかければ、すなわち、シールド層の「非導電性フィラメント」(非導電性糸20)及び「導電性ワイヤフィラメント」(ワイヤフィラメント22)が本件補正発明と同様の材料で構成されていれば、シールド層は穏やかな摩耗防止内側および外側面を有するものと認められる。 そして、本件補正発明の「非導電性フィラメント」に関しては、発明の詳細な説明の段落【0022】に「ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、綿、レーヨン、および上記の全ての材料の難燃性(fire retardant:FR)バージョンから形成され得る。」ことが、また、「導電性ワイヤフィラメント」に関しては、段落【0023】に「しかし、例えば銅、すずまたはニッケルめっき銅、アルミニウム、および銅被覆アルミニウムまたはすずめっき銅などの他の導電性合金などの金属ワイヤの他の導電性の連続的な撚り線が使用されてもよい。」と記載されている。 一方、引用発明においては、「可撓性芯体11」はポリエステルであって、導電性線条は銅であることから、本件補正発明と同様の材料といえる。 したがって、引用発明の「シールド層5」も、穏やかな摩耗防止内側および外側面を有するものと認められる。 してみると、相違点1は実質的な相違点とは認められない。 (相違点2)について ハイブリッド糸において、該糸を構成するフィラメントの外面にコーティング材料を塗布して接着させることによって処理されるか、前記外面にテクスチャ付与面を設けることは、例えば引用文献2に記載されるように周知の技術である。 したがって、引用発明におけるシールド素線(ハイブリッド糸)を構成する可撓性芯体11(フィラメント)に該周知の技術を適用して、本件補正発明の相違点2の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 そして、本件補正発明の作用効果も、引用発明、及び周知の技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)結語 以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 平成30年7月19日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成30年3月5日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものである。ここで、平成30年3月13日付けの拒絶査定の理由は、「請求項7に係る発明は、引用文献1及び周知技術(例えば、引用文献2)により容易になし得た」ものである。 そこで、請求項7について検討する。 1.本願発明 請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は上記「第2 1.」に本件補正前の請求項7として記載したとおりのものである。 2.引用文献、引用発明 引用発明等は、上記「第2 2.(2)引用文献、引用発明」の項で記載したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明を対比するに、本願発明は上記本件補正発明から「穏やかな摩耗防止内側および外側面を有する」という事項を省き、「非導電性フィラメント」に関して「前記少なくとも1本の非導電性フィラメントのうちの少なくとも1本は、マルチフィラメントである」と特定したものである。 そうすると、本願発明と引用発明は、上記「第2 2.(3)対比」における相違点2に加え以下の点で相違する。 (相違点3) 本願発明では「前記少なくとも1本の非導電性フィラメントのうちの少なくとも1本は、マルチフィラメントである」のに対して、引用発明ではその旨の特定がされていない点で相違する。 しかしながら、上記「第2 2.(4)判断」で検討したように、相違点2の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 また、上記「第2 2.(3)対比 c」で検討したように、引用発明において芯体11(「非導電性フィラメント」)は、ポリエステル繊維のマルチまたはモノフィラメント糸から選択することができることから、相違点3の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項7に係る発明は引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-009913

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