特許拒絶査定不服審判
2018-007411
高エネルギービーム溶接用被接合部材及び接合体の製造方法
- 審判番号
- 2018-007411
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-021725外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年05月30日
- 審決日
- 2019年04月22日
- 公報発行日
- 2019年06月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社神戸製鋼所
- 【請求人代理人】特許業務法人栄光特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (B23K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-21725「高エネルギービーム溶接用被接合部材及び接合体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年8月20日出願公開、特開2015-147236、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成26年2月6日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年 7月26日付け:拒絶理由通知
平成29年10月24日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年 2月27日付け:拒絶査定(原査定)
平成30年 5月30日 :審判請求と同時に手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(平成30年2月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1~5、8~9に係る発明は、本願の出願前に頒布された引用文献1に記載された発明に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
本願請求項1、3、5、7~9に係る発明は、本願の出願前に頒布された引用文献2に記載された発明に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
本願請求項1~12に係る発明は、本願の出願前に頒布された引用文献1に記載された発明又は引用文献2に記載された発明及び引用文献3~5に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開平9-10973号公報
2.特表2013-510727号公報
3.特開平6-77678号公報
4.特開2011-173146号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2006-346741号公報(周知技術を示す文献)
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
本件補正によって、補正前の、平成29年10月24日にされた手続補正により補正された請求項1、5~6の「溶接位置」を「高エネルギービームが照射される側の面の溶接位置」と限定を付加し、請求項1の「溶加材」について、「少なくとも一部が前記第1部材内に埋め込まれ又はねじ込まれている」を「円盤状又は平板状で、その一部が貫通することなく前記第1部材内に埋め込まれ又はねじ込まれて固定されている」と限定を付加する補正がなされた(下線は請求人が付与)。
また、請求項5~6の「前記第1部材と同種又は異種の金属材料からなる第2部材」を「前記第1部材と同種の金属材料からなる第2部材」と限定を付加し、請求項5の「溶加材」について、「溶加材を接触配置し、前記溶加材の少なくとも一部を、前記第1部材及び前記第2部材のいずれか一方又は両方に埋め込む」を「円盤状又は平板状の溶加材を接触配置し、前記溶加材の一部を、貫通させることなく前記第1部材及び前記第2部材のいずれか一方又は両方に埋め込んで固定する」と限定を付加し、同様に、請求項6の「溶加材」について、「溶加材を接触配置し、前記溶加材の少なくとも一部を、前記第1部材及び前記第2部材のいずれか一方又は両方にねじ込む」を「円盤状又は平板状の溶加材を接触配置し、前記溶加材の一部を、貫通させることなく前記第1部材及び前記第2部材のいずれか一方又は両方にねじ込んで固定する」と限定を付加する補正がなされた(下線は請求人が付与)。
さらに、明細書の段落【0008】及び段落【0009】において、上記の請求項1、5~6における補正と記載を整合させる補正がなされた。
当該補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか、また、当該補正は新規事項を追加するものではないかについて検討する。
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「溶接位置」、「溶加材」及び「第2部材」について、限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、当該補正事項は、当初明細書の段落【0014】、【0015】、【0023】、【0029】に記載されているから、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1~12に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1~12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明12」という。)は、平成30年5月30日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である(下線は請求人が付与)。
「【請求項1】
金属材料からなる第1部材と、
前記第1部材の高エネルギービームが照射される側の面の溶接位置に接触配置された1又は2個以上の溶加材と、
を有し、
前記溶加材は、円盤状又は平板状で、その一部が貫通することなく前記第1部材内に埋め込まれ又はねじ込まれて固定されている高エネルギービーム溶接用被接合部材。
【請求項2】
前記第1部材は、所定形状に成形されている請求項1に記載の高エネルギービーム溶接用被接合部材。
【請求項3】
更に、前記第1部材と同種又は異種の金属材料からなり、前記第1部材の少なくとも一部に重ね合わされた第2部材を有する請求項1又は2に記載の高エネルギービーム溶接用被接合部材。
【請求項4】
前記第2部材は、所定形状に成形されている請求項3に記載の高エネルギービーム溶接用被接合部材。
【請求項5】
金属材料からなる第1部材と、前記第1部材と同種の金属材料からなる第2部材とを重ね合わせて、重ね継手を形成する工程と、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方の高エネルギービームが照射される側の面の溶接位置に円盤状又は平板状の溶加材を接触配置し、前記溶加材の一部を、貫通させることなく前記第1部材及び前記第2部材のいずれか一方又は両方に埋め込んで固定する工程と、
前記第1部材と前記第2部材と前記溶加材を高エネルギービーム溶接する工程と、
を有する接合体の製造方法。
【請求項6】
金属材料からなる第1部材と、前記第1部材と同種の金属材料からなる第2部材とを重ね合わせて、重ね継手を形成する工程と、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方の高エネルギービームが照射される側の面の溶接位置に円盤状又は平板状の溶加材を接触配置し、前記溶加材の一部を、貫通させることなく前記第1部材及び前記第2部材のいずれか一方又は両方にねじ込んで固定する工程と、
前記第1部材と前記第2部材と前記溶加材を高エネルギービーム溶接する工程と、
を有する接合体の製造方法。
【請求項7】
前記溶加材を配置する工程の後、前記重ね継ぎ手を形成する工程を行う請求項5又は6に記載の接合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の被接合部材を高エネルギービーム溶接して接合体を得る接合体の製造方法。
【請求項9】
前記高エネルギービーム溶接は、電子ビーム溶接又はレーザ溶接であることを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項10】
前記高エネルギービーム溶接はレーザ溶接であり、レーザ光をデフォーカス状態で照射する請求項9に記載の接合体の製造方法。
【請求項11】
前記高エネルギービーム溶接はレーザ溶接であり、リモート溶接を行う請求項9又は10に記載の接合体の製造方法。
【請求項12】
前記高エネルギービーム溶接はレーザ溶接であり、レーザ光を螺旋状、渦巻き状、円形状又は同心円状に照射する請求項9~11のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。」
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審にて付与。以下同)。
ア 段落【0008】
「【作用】重ね合せたパネルのギャップが過大であっても、補助プレートが溶材となって溶着し、確実な溶接が達成される。」
イ 段落【0009】
「【実施例】図1~図6は本発明のレーザ溶接構造を示す説明図である。本発明のレーザ溶接構造にあっても、第1のパネル部材110のフランジ部112と、第2のパネル部材120のフランジ部122を重ね合せたフランジ部の一方からレーザビームを照射してレーザビーム溶接を施すことは同様である。」
ウ 段落【0012】
「図4は、この補助プレート130を重ね合せたフランジ部112,122の穴114,124に嵌合させた状態で、レーザビーム30によって重ね溶接W2を施した状態を示す。」
エ 段落【0014】
「図6は、補助プレートとピン部の断面形状の変形例を示すレーザビームによる溶接条件に対応して、半円柱状の本体130aと先丸のピン部132aを有するものや、半円柱の頭部を平坦にした本体130bと先丸のピン部132bを有するもの等、種々の形状のものを用意することができる。
オ 段落【0015】
「尚、本発明はスチール(鋼板)のみに有効な方法を提供するものではなく、軽量材であるアルミ合金の場合にも有効である。このアルミ合金系の溶接の場合、単に溶着金属の不足を補うという効果だけでなく、レーザ溶接の重大課題である溶接後の割れ(凝固割れ)を防止するのに有効な化学成分系の調整(チューニング)にも効果が期待できる。すなわち、アルミ合金は鉄に比べて熱伝導率が大きく、溶接時の冷却速度が速い。このために、溶接部に凝固割れが発生し易い。本発明にあっては、アルミ5000系の母材(Al-Mg系)の場合、補助プレートとして同じアルミ合金系でもSi(シリコン)量を高目に設定しておくと、溶接後の割れ発生を防止することができる。」
カ 図3
キ 図5
ク 図6
(2)上記(1)での記載から,引用文献1には,次の技術的事項が開示されていると認められる。
ア 上記(1)オから、第1のパネル部材110が金属材料からなると認められる。
イ 上記(1)ア~ウ及びキから、前記第1のパネル部材110のレーザビーム30が照射される側の面の溶接位置に接触配置された溶材としての補助プレート130が開示されている。
ウ 上記(1)エ及びキから、前記溶材としての補助プレート130は、種々の形状の本体130とピン部132からなり、ピン部132が貫通して前記第1のパネル部材110に埋め込まれていると認められる。
エ 上記(1)イから、レーザ溶接構造が開示されている。
(3)上記(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。
「金属材料からなる第1のパネル部材110と、
前記第1のパネル部材110のレーザビーム30が照射される側の面の溶接位置に接触配置された溶材としての補助プレート130と、
を有し、
前記溶材としての補助プレート130は、種々の形状の本体130とピン部132からなり、ピン部132が貫通して前記第1のパネル部材に配置されているレーザ溶接構造」
2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 段落【0006】
「したがって、本開示は、鋼種の異なる構造体をレーザ溶接する方法に関する。この方法は、第1の鋼種・成分から作製される第1の構造体を提供すること、および第2の鋼種成分から作製される第2の構造体を提供することを含む。第1の構造体の少なくとも一部が、第2の構造体の少なくとも一部に重なるように、第1の構造体を第2の構造体の隣に配置することによって、溶接領域を形成する。第1の構造体と、第2の構造体と、溶加材との溶接接合部を形成する成分を含有する溶加材を選択し、これにより、この溶接接合部が、所定の微細構造を有するようにする。溶加材を溶接領域の隣に配置する。レーザビームを溶接領域に向けることによって、第1の構造体と、第2の構造体と、溶加材との溶接接合部を形成し、この溶接接合部が、所定の微細構造を有するようにする。」
イ 段落【0028】
「次に、図9を参照すると、上記の方法はさらに、第1の構造体162と第2の構造体164との間の間隙169内に溶加材168を配置するステップを含む。間隙169は、第1の構造体162、第2の構造体164、またはこれらの両方に位置する表面溝、窪み、リング、または孔などであってもよい。・・・」
ウ 段落【0029】
「次に、図10を参照すると、上記の方法はさらに、第1の構造体172および/または第2の構造体174の上面に溶加材178を配置するステップを含む。この例の場合、第1の構造体172はTWIP鋼であり、第2の構造体174はHSLAなどの低~中炭素鋼であり、溶加材178はSTS310などの高Ni、高Cr溶加材合金層である。第1の構造体172は、第2の構造体174の隣に直接配置され、溶加材178は、特定の溶接領域で溶接される、第1の構造体172の上面に配置され、これにより、溶加材は、溶接される両構成部品の上にあることとなる。」
エ 図9~10
(2)上記(1)での記載から,引用文献2には,次の技術的事項が開示されていると認められる。
ア 上記(1)ウから、第1の構造体172は金属材料からなると認められる。
イ 上記(1)ア~ウから、前記第1の構造体172のレーザビームが照射される側の面の溶接位置に接触配置された溶加材178が開示されている。
ウ 上記(1)エから、前記溶加材178は平板状で、その一部が貫通することなく前記第1の構造体172の上面に配置されていると認められる。
エ 上記(1)アには、溶接接合部が開示されている。
(3)上記(2)から、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されていると認められる。
「金属材料からなる第1の構造体172と、
前記第1の構造体172のレーザビームが照射される側の面の溶接位置に接触配置された溶加材178と、
を有し、
前記溶加材178は平板状で、その一部が貫通することなく前記第1の構造体172の上面に配置されている溶接接合部。」
3.その他の文献について
原査定において引用された引用文献3の段落【0018】には、金属部材をねじ込むことが記載されている。
原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献4の段落【0042】には、円形状等にレーザ照射を行い溶接を行うことが、原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献5の段落【0014】には、リモート溶接により部材をレーザ溶接することがそれぞれ記載されている。
また、前置報告書において周知技術を示す文献として新たに引用された特開昭63-80988号公報(以下、「引用文献6」という。)の第2頁左下欄第9~13行及び第2図等には、円盤状の溶加材が整流子片に埋め込まれていることが記載されている。
さらに、当審にて新たに引用する特開2005-120891号公報(以下、「引用文献7」という。)の段落【0017】~【0020】、図5等には、円柱状の溶加材が冠部に埋め込まれて固定されて、レーザ溶接されることが記載されており、当審にて新たに引用する米国特許4642446号明細書(以下、「引用文献8」という。)の第3欄第33~47行、図2等には、ニッケルコーティング領域を含めてレーザ溶接されることが記載されている。
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1との対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明1における「第1のパネル部材110」、「レーザビーム30」、「溶材としての補助プレート130」、「レーザ溶接構造」は、それぞれ、本願発明1における「第1部材」、「高エネルギービーム」、「溶加材」、「高エネルギービーム溶接用被接合部材」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点1があるといえる。
(一致点)
「金属材料からなる第1部材と、
前記第1部材の高エネルギービームが照射される側の面の溶接位置に接触配置された1又は2個以上の溶加材と、
を有する高エネルギービーム溶接用被接合部材。」
(相違点1)
本願発明1の高エネルギービーム溶接用被接合部材の溶加材は、円盤状又は平板状で、その一部が貫通することなく前記第1部材内に埋め込まれ又はねじ込まれて固定されているのに対して、引用発明の補助プレート130(「溶加材」に相当)は、種々の形状の本体130とピン部132からなり、ピン部132が貫通して前記第1のパネル部材に配置されている点。
(2)相違点1についての判断
上記相違点1について検討すると、円盤状の溶加材が整流子片に埋め込まれていることは、上記「第5」3の引用文献6に記載されているといえるものの、引用文献6では、溶加材は溶接領域まで届いており、さらに溶接領域を越えて溶加材を貫通させるかどうかは観念できないとともに、引用文献6の溶加材は、整流子片とともに他の部材と接合されるわけではないので、引用文献6の溶加材と整流子片を溶接用被接合部材と認定することはできない。
なお、請求人は、審判請求書の第6頁第15~19行において、「・・・本発明は、溶加材が第1部材の溶接位置に埋め込まれ又はねじ込まれることで固定されるため、被接合部材を移動させた場合でも、溶加材の位置が変更される虞がない、また、溶加材が第1部材の高エネルギービームが照射される側の面に配置されるため、溶加材をターゲットポインターとして利用できるという本願独特の効果を奏する」と本願発明1の効果を説明している。
上記「第5」3の引用文献7の円柱状の溶加材が埋め込まれる冠部は、溶接用被接合部材ではないので、相違点1に係る「高エネルギービーム溶接用被接合部材の溶加材は、円盤状又は平板状で、その一部が貫通することなく前記第1部材内に埋め込まれ又はねじ込まれて固定されている」と認めることはできない。また、上記「第5」3の引用文献8のニッケルコーティング領域を溶加材が埋め込まれ固定されているものと認定することもできない。
以上のように、引用文献1及び引用文献6~8のいずれにおいても、高エネルギービーム溶接用被接合部材の溶加材が、その一部が貫通することなく前記第1部材内に埋め込まれ又はねじ込まれて固定されている旨の記載は無いこと、他のいずれの文献にも当該記載は無いことに鑑みれば、引用文献1に接した当業者が、溶加材を、その一部が貫通することなく前記第1部材内に埋め込まれ又はねじ込まれて固定させるように構成することの動機付けを認めることはできない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、引用文献6に記載された技術的事項等に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
(3)引用発明2との対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明2における「第1の構造体172」、「溶加材178」、「溶接接合部」は、それぞれ、本願発明1における「第1部材」、「溶加材」、「高エネルギービーム溶接用被接合部材」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点2があるといえる。
(一致点)
「金属材料からなる第1部材と、
前記第1部材の高エネルギービームが照射される側の面の溶接位置に接触配置された1又は2個以上の溶加材と、
を有し、
前記溶加材は、平板状であり、その一部が貫通することなく、前記第1部材に対して配置されている高エネルギービーム溶接用被接合部材。」
(相違点2)
本願発明1の高エネルギービーム溶接用被接合部材の溶加材は、前記第1部材内に埋め込まれ又はねじ込まれて固定されているのに対して、引用発明の溶加材178(「溶加材」に相当)は、前記第1の構造体172(「第1部材」に相当)の上面に配置されている点。
(4)相違点2についての判断
上記相違点2について検討すると、円盤状の溶加材が埋め込まれていることは、上記「第5」3の引用文献6に記載されているといえるものの、引用文献6の溶加材は、整流子片とともに他の部材と接合されるわけではないので、引用文献6の溶加材と整流子片を溶接用被接合部材と認定することはできない。
なお、請求人は、審判請求書の第6頁第15~19行において、「・・・本発明は、溶加材が第1部材の溶接位置に埋め込まれ又はねじ込まれることで固定されるため、被接合部材を移動させた場合でも、溶加材の位置が変更される虞がない、また、溶加材が第1部材の高エネルギービームが照射される側の面に配置されるため、溶加材をターゲットポインターとして利用できるという本願独特の効果を奏する」と本願発明1の効果を説明している。
引用文献2の段落【0028】には、溶加材が表面溝、窪み、リング、または孔などに配置されることが記載される実施例が記載されている(上記「第5」2(1)イ及びエ参照)ものの、当該実施例における溶加材は、「高エネルギービームが照射される側の面の溶接位置に接触配置された」ものではない。
また、上記「第5」3の引用文献7の円柱状の溶加材が埋め込まれる冠部は、溶接用被接合部材ではないので、相違点2に係る「高エネルギービーム溶接用被接合部材の溶加材は、円盤状又は平板状で、その一部が貫通することなく前記第1部材内に埋め込まれ又はねじ込まれて固定されている」構成と認めることはできない。さらに、上記「第5」3の引用文献8のニッケルコーティング領域を溶加材が埋め込まれ固定されているものと認定することもできない。
以上のように、引用文献2及び引用文献6~8のいずれにおいても、高エネルギービーム溶接用被接合部材の溶加材が、前記第1部材内に埋め込まれ又はねじ込まれて固定されている旨の記載は無いこと、他のいずれの文献にも当該記載は無いことに鑑みれば、引用文献2に接した当業者が、溶加材を、前記第1部材内に埋め込まれ又はねじ込まれて固定させるように構成することの動機付けを認めることはできない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明2、引用文献6に記載された技術的事項等に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2~12について
本願発明5~6も、本願発明1の「溶加材は、円盤状又は平板状で、その一部が貫通することなく前記第1部材内に」「固定されている高エネルギービーム溶接用被接合部材」と実質的に同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1又は引用発明2及び引用文献3~6等に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
本願発明2~4、7~12についても、それぞれ、本願発明1、5~6を引用するものであり、同様である。
第7 原査定についての判断
審判請求時の補正により、補正後の請求項1の「溶加材」は、「円盤状又は平板状で、その一部が貫通することなく前記第1部材内に埋め込まれ又はねじ込まれて固定されている」(下線は請求人が付与)という事項を有するものとなり、また、補正後の請求項5~6も同様の事項を有するものとなった。さらに、補正後の請求項2~4、7~12についても、それぞれ、補正後の請求項1、5~6を引用するものであり、同様である。
そして、当該事項は、原査定における引用文献1~5には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1~12は、当業者であっても、原査定における引用文献1~5に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-007411