特許拒絶査定不服審判
2018-006544
電子情報システム及びそのプログラム
- 審判番号
- 2018-006544
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-068020外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年05月14日
- 審決日
- 2019年11月06日
- 公報発行日
- 2019年12月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社ユピテル
- 【請求人】株式会社ユピテル鹿児島
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014- 68020「電子情報システム及びそのプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 2日出願公開、特開2015-191435、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月28日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 9月 8日付け:拒絶理由通知書
平成29年11月10日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 2月 7日付け:拒絶査定
平成30年 5月14日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 元年 5月 9日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 7月12日 :意見書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(平成30年2月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(理由1)本願請求項1-3、5-7、14、17、24-26、28に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(理由2)本願請求項4、8-13、15-16、18-22、25に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明、引用文献B、Eに記載された技術、及び、引用文献C-Dに記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(理由4)本願は、特許請求の範囲の請求項22-28の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
引用文献等一覧
A.特開2005-174356号公報
B.特開2012-168595号公報
C.特開2013-257762号公報
D.特開2011-154546号公報
E.特開2010-013090号公報
第3 当審拒絶理由の概要
令和元年5月9日に当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
(理由1)本願請求項1-27に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術、及び、引用文献3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2005-174356号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特表2012-502364号公報(当審において新たに引用した文献)
3.特開2006-300786号公報(当審において新たに引用した文献)
第4 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、令和元年7月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
ユーザーによる対象物の動きをジェスチャー検出手段で検出し、検出した対象物の動きによるジェスチャーの認識結果に基づいて所定の処理を行う電子情報システムにおいて、
前記対象物が遠方からジェスチャー検出手段の方向に接近して所定の音出力基準領域内に入った段階で所定の音の出力を開始して、ジェスチャーの認識中に継続して音を出力し、当該継続した音の出力中に前記対象物が前記音出力基準領域内から所定の移動方向判断領域方向に進入した場合、音が連続的に変化したとユーザーが認識できる状態で音を変える一方、前記対象物が前記音出力基準領域内から移動方向判断領域方向に進入せずに音出力基準領域の外に離脱する場合に音の出力を停止させる制御を行う制御手段を備えること
を特徴とする電子情報システム。」
また、本願発明2-15の概要は以下のとおりである。
本願発明2-14は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明15は、本願発明1-14のいずれかに対応する、カテゴリ表現が異なる「プログラム」の発明である。
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
当審拒絶理由に引用された引用文献1(特開2005-174356号公報)には、図面(特に、図1-2、8)とともに、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下、同様。)。
ア 段落【0001】
「【0001】
本発明は車載情報機器を始めとする各種の情報機器に対し、操作入力を行う操作入力装置および方法に関する。」
イ 段落【0012】-【0013】
「【0012】
本発明は自動車を運転する運転者が、前方を注視したままで、安定して車載機器の操作を行うことが難しかった現状を解決しようとするものである。また、その際に有効である、形状ジェスチャ、方向ジェスチャをより効率的に安定して入力できるようにすることを目的とする。
【0013】
さらに、これは運転者だけでなく、助手席者も操作することも想定し、画面を見ながら操作する際の効果的な操作方法を発明する。また、車載という特殊な環境の中でより安全に、安定して動作させることも目的とする。また、車載に限らず、さまざまな機器で用いることのできる、汎用的なジェスチャ入力方法の確立を目的とする。」
ウ 段落【0017】-【0034】
「【0017】
以下、図面に従い本発明の実施の形態を説明する。
<概要> 図1は、本発明の実施形態の一例である。第1のジェスチャ検出部1と第2のジェスチャ検出部2は、異なる種類のジェスチャを検出するものである。そして、操作種類選択部3は、第1のジェスチャ検出部1の検出結果に従い、操作の種類を選択する。パラメータ変更部4は、操作種類選択部3で選択された操作の中で、変更可能なパラメータを第2のジェスチャ検出部2の結果に従って変更する。
【0018】
操作入力処理部5は、操作種類選択部3とパラメータ変更部5の結果に従い、どのような操作が行われたかを決定する。操作実行部6は決定された操作を実行する。操作入力処理部5は、第1、第2のジェスチャ検出部および操作種類選択部3、パラメータ変更部4を制御し、これらが動作しないようにすることもできる。従って、状況に応じて、どちらか一方のジェスチャ検出のみを行わせたりすることができる。
【0019】
<詳しい構成> 図1をより具体的に示したのが図2である。ここでは第1のジェスチャ検出部は、形状ジェスチャを検出する、形状ジェスチャ検出部7であり、第2のジェスチャ検出部は方向ジェスチャを検出する方向ジェスチャ検出部8である。
【0020】
ここで、「形状ジェスチャ」とは「手の形で表されるジェスチャ」であり、「方向ジェスチャ」とは「動いた方向を示すジェスチャ」である。この中で、形状ジェスチャの場合には、必ずしも手が動いていなくても良く、その意味で「ジェスチャ」という言葉が当てはまりにくいこともあるが、ここでは広く捉えて、形状の提示もジェスチャのひとつとして扱う。
【0021】
<検出手段の詳述> ここで、2つのジェスチャ検出部について、詳述する。
具体例として、上記の形状ジェスチャとは、「グー」「チョキ」「パー」といったじゃんけんで提示するような手の形状である。あるいは、「5本の指のうちどの指を伸ばすか」、あるいは「人差し指と親指で丸を作る」など手によって表現されるさまざまな形のことを指す。
・・・(中略)・・・
【0024】
発明者らは、特開平10-177449にあるように、発光手段と、これと同期して動作するイメージセンサによって、物体形状を高速に検出できる画像入力装置を開発した。これは、物体に典型的には赤外光を照射し、これと同期した動作をするイメージセンサを用いて、物体反射光のみを画像として取り出す装置である。反射光の強さは一般的に物体までの距離の2乗に反比例するため、近くの物体が遠くの背景から容易に切り出すことができる。
・・・(中略)・・・
【0031】
一方、方向ジェスチャは、このような画像入力装置から得られる画像から、手の動き方向を抽出することによって行える。例えば、特開平10-177449における画像入力装置を用いた場合、画像には背景は写らず、手の形状のみが写っているので、この画像の重心計算を行えば、手の位置が求められる。その軌跡を追跡することで基本的な動きを検出することが可能である。
・・・(中略)・・・
【0034】
いずれにしても、得られた手形状データから、位置の情報を取り出し、その軌跡を解析することによって動きジェスチャを検出するのがよい。通常のCCDカメラを使った場合でも色情報などにより、手の形状がきちんと切り出すことができれば、そこから位置情報を取り出すことが可能である。方向ジェスチャを検出する方法については、実施例の後の方で詳しく述べる。」
エ 段落【0066】-【0077】
「【0066】
<方向ジェスチャの入力方法> ここからは、上記に述べた実施例の一要素となっている、方向ジェスチャの入力方法について詳細に述べる。方向ジェスチャの入力を実現する際に重要な点がある。それは繰り返し同じ方向のジェスチャが入力されうることであり、そのときに安定して検出できることが重要である。例えば、特願平9-199647で提案されている手振り入力装置では、装置の前を手が横切ることで入力を行っている。
【0067】
しかし、このような装置で、同じ方向のジェスチャを繰り返すと誤動作を起こす可能性がある。すなわち、例えば、「右」、「右」と繰り返して入力する際には、2回の右方向ジェスチャの間で、手が一旦左側に戻らなくてはならない。この際に、これが左方向ジェスチャと誤認識され、「右」、「右」と入力したつもりが、「右」、「左」、「右」と入力されてしまうことになる。これを防ぐには、左に戻すときには、センサに検知されないような位置を通って手が戻ることが必要である。そのような動作をしなければならないとすると、繰り返し同じ方向のジェスチャを入力するのは至極面倒くさいものになってしまう。
【0068】
<動いて、戻って、方向入力とする> それを解決するための方向ジェスチャ入力方法を図8に示す。これは、安定して方向ジェスチャを取得するための処理をフローチャートで表している。
【0069】
まず、使用者が手をカメラセンサの前に出したとき、直ちに動き情報を検出してしまうと、誤動作の原因になる。従って、まず使用者はカメラセンサの前に手を出し、静止させることによって、これから方向ジェスチャを入力することを知らせる。装置は、物体が画面中央の所定の領域内で一定時間静止したことを検出することによって(S23,S24)、使用者が方向ジェスチャを入力しようとしていると判断し、方向ジェスチャの検出を開始する。
【0070】
手の位置の軌跡を追跡し、いずれかの方向に一定量だけ動いたことを検出する(S25,S26)。検出する方向の数は、例えば4方向のジェスチャ検出であれば4つであるし、8方向であれば斜め方向も含め8つである。また、動きが上下左右だけでなく、奥行き方向であっても検出する場合もある。
【0071】
ある方向に一定量動いたことが検出されたら、次は反対方向、すなわち戻る方向に、一定量移動するかどうかを監視する(S27)。そして、反対方向に一定量移動し(S28)、そこでさらに一定時間静止したことを検出したとき(S29,S30)、方向ジェスチャがあったと判断する(S31)。ここで述べている「静止」した状態とは、厳密には静止していなくとも、動きが小さいときを含む。
・・・(中略)・・・
【0074】
<音のフィードバック> また、方向ジェスチャを入力する際にも、音をフィードバックさせ、操作者に入力が受け付けられたことを知らせるのは有効である。図8の場合は、最後の静止状態で方向ジェスチャの検出が完了した時点で音を発生させる。また、入力された方向によって異なる音を発生させると、使用者は正しい入力が行われたことを確実に知ることができる。
【0075】
<2度の音でフィードバック> 音をフィードバックさせるときに、2段階で音を発生させると、さらに効果的な場合がある。図8中で、いずれかの方向に一定量動いたことを検出した時点で、一つ目の音を鳴らし、戻って静止して、方向ジェスチャが検出されたとき2つ目の音を鳴らす。
【0076】
このときに、いずれかの方向に動いた音と、戻って方向ジェスチャが検出されたときの音を変えておく。すると、万一、戻る動作が、はじめのいずれかの方向に動く動作と誤って認識されたときでも、使用者にはそれがすぐに判る。また、一つ目の音は、方向によって異ならせても良いが、戻る音は、いずれの場合でも同じにしたほうがよい。
【0077】
例えば、上下左右の一つ目の音を「パ」「ピ」「プ」「ペ」、2つ目の音を全て「ポ」にすると、上下左右の音フィードバックとして、使用者には、「パポ」「ピポ」「プポ」「ペポ」と聞こえることになる。スムーズに操作が行えるようになれば、これらはそれぞれひとつの効果音のようにも聞こえ、使用者にとって、違和感はない。」
よって、上記各記載事項を関連図面に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「 車載情報機器に対し、操作入力を行う操作入力装置において、
第2のジェスチャ検出部2は、ジェスチャを検出し、パラメータ変更部4は、変更可能なパラメータを第2のジェスチャ検出部2の結果に従って変更し、
第2のジェスチャ検出部は方向ジェスチャを検出するものであって、ここで、「方向ジェスチャ」とは「動いた方向を示すジェスチャ」であり、
ジェスチャ検出部は、発光手段と、これと同期して動作するイメージセンサによって、物体形状を高速に検出できる画像入力装置から得られる画像から、手の位置を求め、その軌跡を追跡することで基本的な動きを検出し、その軌跡を解析することによって動きジェスチャを検出し、
安定して方向ジェスチャを取得するための処理において、
使用者はカメラセンサの前に手を出し、静止させることによって、これから方向ジェスチャを入力することを知らせ、
装置は、物体が画面中央の所定の領域内で一定時間静止したことを検出することによって、方向ジェスチャの検出を開始し、手の位置の軌跡を追跡し、いずれかの方向に一定量だけ動いたことを検出し、ある方向に一定量動いたことが検出されたら、次は反対方向、すなわち戻る方向に、一定量移動するかどうかを監視し、そして、反対方向に一定量移動し、そこでさらに一定時間静止したことを検出したとき、方向ジェスチャがあったと判断し、
方向ジェスチャを入力する際に、音をフィードバックさせ、操作者に入力が受け付けられたことを知らせるために、いずれかの方向に一定量動いたことを検出した時点で、一つ目の音を鳴らし、戻って静止して、方向ジェスチャが検出されたとき2つ目の音を鳴らし、このときに、一つ目の音は、方向によって異ならせる、
車載情報機器。」
2.引用文献2について
原審拒絶理由に引用された引用文献2(特表2012-502364号公報)には、図面とともに、段落【0060】-【0065】に、以下の記載がある。
「【0060】
操作者は、起立または着座して、1つのオーディオ・チャネルを聞いている。概念的に、このオーディオは、「聴覚面」と呼ばれる垂直面に存在し、この面には、幾何学的に、彼女の耳が含まれる。追加のオーディオ・チャネルは、この聴覚面に平行な追加の面内に存在するが、z-軸に沿って前方または後方に変位されている。
【0061】
彼女の手を開いて、彼女の前9インチのところに保持し、掌を前方に向けて、プッシュバック・システムを投入する。数個の近接する面におけるオーディオが、差別的に徐々に現れ、各々の音量は、現行チャネルの面からのその元の距離に逆に依存する。実際には、2つまたは4つの追加チャネルを聴取可能にすることは、知覚的に非現実的である。同時に、「オーディオ・グリフ」が徐々に現れて、近接度フィードバックを与える。初期状態では、操作者の手がデッド・ゾーン内に保持されているが、グリフは辛うじて聞くことができる2音調の和音である(初期状態では、調和している)。
【0062】
操作者が彼女の手を前方または後方に、デッド・ゾーンを通過するように移動させると、オーディオ・チャネルの音量は一定のままであるが、グリフの音量が増大する。手がデッド・ゾーンの前または後ろの閾値と交差すると、グリフはその「アクティブな」音量に到達する(未だ現行チャネルの音量に従う)。
【0063】
一旦操作者の手が、例えば、前方方向に、アクティブ・ゾーンを通過して移動始めると、オーディオ・チャネルに期待される効果が得られる。現行のチャネル面が聴覚面から更に遠離るように押され、その音量が徐々に減少する(そして、これらのチャネルの音量はなおも更に先に進む(forward))。一方、「背後の」(dorsal)チャネル面の音量は、それが聴覚面に近づくに連れて、増大する。
【0064】
一方、オーディオ・グリフはモードを切り換えている。手の前方への繰り出しには、トーンの1つの周波数上昇が伴い、「中点」において、聴覚面が1つのオーディオ・チャネル面および次のオーディオ・チャネル面に二等分すると、トーンが正確な1/5を形成する(数学的に、これは三全音 間隔(triton interval)であるべきであるが、これを避けるべき理由がふんだんにある)。可変トーンの周波数は、手が更に前方に移動し続けるにしたがって、最終的に操作者が次のオーディオ面に「到達」するまで、上昇し続ける。次のオーディオ面に到達した時点で、トーンは正確に1オクターブに広がる。
【0065】
種々のチャネルの視聴が続き、操作者は彼女の手を前後に平行移動させて、各々に順番にアクセスする。最後に、1つを選択するためには、単に彼女の手を閉じて、プッシュバック・セッションを終了させ、オーディオ面の集合体を整列状態(alignment)に「素早く変化させる」(spring)。他の(選択されなかった)チャネルは、グリフと同様に、徐々に消えて行き聞こえなくなる。」
(なお、段落【0061】の「初期状態では、調和している」、段落【0064】の「トーンが正確な1/5を形成する」との記載は、国際公開第2010/028176号の対応する箇所(第18頁第10行-第19頁第6行)の記載からみて、それぞれ「初期状態では、同音である」、「トーンが正確な五度を形成する」の誤訳であると認められる。)
3.引用文献3について
原審拒絶理由に引用された引用文献3(特開2006-300786号公報)には、図面とともに、段落【0025】に、以下の記載がある。
「【0025】
図5は、制御部16の動作フローを示す図である。制御部16は、動き予測部18から、予測結果を受け取ると(ステップS201)、現在時刻T0から時刻のカウントを開始し(ステップS202)、変更開始時刻T1に到達したか否かを判定する(ステップS203)。時刻T1に到達すると、制御部16は、物体検出部12の検出動作を制限する(ステップS204)。検出動作の制限とは、例えば物体検出部12の検出距離を短くすることである。図6(a)に示すように、通常時に、物体検出部12から距離D1の範囲にある物体の動きを検出が可能であるとき、制限時に、検出可能な距離をD2(D2<D1)に設定し、運転席34まで到達しないようにする。または、図6(b)に示すように、通常時に、物体検出部12が検出範囲θ1内で物体の動きを検出可能であるとき、制限時に、運転席が検出範囲から除外されるように検出範囲θ2に設定する。これ以外にも、物体検出部12の検出レベルまたは検出感度を低下させたり、物体の動きを検出するための閾値を高くするようにしてもよい。」
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「使用者」の「手」は、本願発明1の「ユーザーによる対象物」に相当する。
イ 引用発明の「第2のジェスチャ検出部は方向ジェスチャを検出するものであって、ここで、「方向ジェスチャ」とは「動いた方向を示すジェスチャ」であり、ジェスチャ検出部は、発光手段と、これと同期して動作するイメージセンサによって、物体形状を高速に検出できる画像入力装置から得られる画像から、手の位置を求め、その軌跡を追跡することで基本的な動きを検出」するから、引用発明の、「第2のジェスチャ検出部」が「手の」「動きを検出」することは、本願発明1の「ユーザーによる対象物の動きをジェスチャー検出手段で検出」することに相当する。
ウ 引用発明の「車載情報機器」は、「第2のジェスチャ検出部」が、「手の位置を求め、その軌跡を追跡することで基本的な動きを検出し、その軌跡を解析することによって動きジェスチャを検出」し、「パラメータ変更部4」が、「変更可能なパラメータを第2のジェスチャ検出部2の結果に従って変更」するから、引用発明の、「変更可能なパラメータを」「第2のジェスチャ検出部」が「手の」「動きを検出」「することによって動きジェスチャを検出」した「結果に従って変更」することは、本願発明1の「検出した対象物の動きによるジェスチャーの認識結果に基づいて所定の処理を行う」ことに相当する。
エ 引用発明の「車載情報機器」は、「安定して方向ジェスチャを取得するための処理において、使用者」が「カメラセンサの前に手を出し、静止させることによって、これから方向ジェスチャを入力することを知らせ、装置」が、「物体が画面中央の所定の領域内で一定時間静止したことを検出することによって、方向ジェスチャの検出を開始し、手の位置の軌跡を追跡し、いずれかの方向に一定量だけ動いたことを検出し、ある方向に一定量動いたことが検出されたら、次は反対方向、すなわち戻る方向に、一定量移動するかどうかを監視し、そして、反対方向に一定量移動し、そこでさらに一定時間静止したことを検出したとき、方向ジェスチャがあったと判断」するものであって、「方向ジェスチャを入力する際に、音をフィードバックさせ、操作者に入力が受け付けられたことを知らせるために、いずれかの方向に一定量動いたことを検出した時点で、一つ目の音を鳴らし、戻って静止して、方向ジェスチャが検出されたとき2つ目の音を鳴ら」す、要するに、「方向ジェスチャの検出を開始し」てから「方向ジェスチャが検出され」るまでの間に、「一つ目の音を鳴ら」すから、本願発明1の「ジェスチャーの認識中に継続して音を出力」することと、「ジェスチャーの認識中に」「音を出力する」点で共通するといえる。
また、引用発明の「車載情報機器」が、「一つ目の音を鳴ら」すための制御を行う何らかの制御手段を備えることは、明らかである。
オ 引用発明の「車載情報機器」は、本願発明1の「電子情報システム」に相当する。
よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は、次のとおりであるといえる。
[一致点]
「 ユーザーによる対象物の動きをジェスチャー検出手段で検出し、検出した対象物の動きによるジェスチャーの認識結果に基づいて所定の処理を行う電子情報システムにおいて、
ジェスチャーの認識中に音を出力する制御を行う制御手段を備える
電子情報システム。」
[相違点1]
本願発明1では、「前記対象物が遠方からジェスチャー検出手段の方向に接近して所定の音出力基準領域内に入った段階で所定の音の出力を開始」する制御を行うのに対して、引用発明では、「音出力基準領域」が設定されておらず、そのような制御を行っていない点。
[相違点2]
音の出力に関して、本願発明1では、「ジェスチャーの認識中に継続して音を出力」する制御を行うのに対して、引用発明では、方向ジェスチャの検出を開始してから方向ジェスチャが検出されるまでの間の所定の時点で、一つ目の音を鳴らすのみで、音の出力を「ジェスチャーの認識中に継続」する制御を行っていない点。
[相違点3]
本願発明では、「当該継続した音の出力中に前記対象物が前記音出力基準領域内から所定の移動方向判断領域方向に進入した場合、音が連続的に変化したとユーザーが認識できる状態で音を変える一方、前記対象物が前記音出力基準領域内から移動方向判断領域方向に進入せずに音出力基準領域の外に離脱する場合に音の出力を停止させる制御を行う」のに対して、引用発明では、そのような制御を行っていない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、音出力基準領域及び移動方向判断領域に基づく、音の出力の制御に関連する、上記相違点1、3について先にまとめて検討する。
引用文献2(上記「第5」2.を参照。)には、2音調の和音を、2音調の1つの周波数を操作者の手の位置に応じて変化させながら、出力し続けることが記載されている。
しかし、音出力基準領域及び移動方向判断領域を設定することが、そもそも、引用文献1-3のいずれにも記載も示唆もなく、また、音出力基準領域及び移動方向判断領域を設定し、本願発明の上記相違点1、3に係る構成とすることが、本願出願前における周知技術であるともいえない。
そして、本願発明1は、本願発明1の上記相違点1、3に係る構成によって、本願明細書の段落【0005】に記載されている、「ユーザー」が「ジェスチャーの認識中であることを音によって知ることができる」との効果、及び、令和元年7月12日に提出された意見書において、請求人が主張する、「ジェスチャー認識中に手などを動かすことにより、継続している音が変わったときに移動方向判断領域に手の位置が入ったことを認識できるとともに、継続している音が変わらない間は移動方向判断領域に手の位置が入っていないことを認識でき」、「また継続している音の出力が停止した場合、そのときの手の位置が音出力基準領域の外になる位置であることを認識できる」との効果を有するものである。
なお、請求人の上記主張は、本願明細書の段落【0031】、【0032】等の記載から、自明である。
したがって、本願発明1は、上記相違点2を検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明、引用文献1-3に記載された技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
2.本願発明2-15について
上記「第4」のとおり、本願発明2-14は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明15は、本願発明1-14のいずれかに対応する、カテゴリ表現が異なる「プログラム」の発明であって、本願発明1の「対象物が遠方からジェスチャー検出手段の方向に接近して所定の音出力基準領域内に入った段階で所定の音の出力を開始して、」「当該継続した音の出力中に前記対象物が前記音出力基準領域内から所定の移動方向判断領域方向に進入した場合、音が連続的に変化したとユーザーが認識できる状態で音を変える一方、前記対象物が前記音出力基準領域内から移動方向判断領域方向に進入せずに音出力基準領域の外に離脱する場合に音の出力を停止させる制御を行う制御手段」と実質的に同一の構成を備えるものである。
よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-15も、当業者であっても、引用発明、引用文献1-3に記載された技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
1.原査定の理由1-2について
令和元年7月12日付けの手続補正で補正された請求項1-15は、「対象物が遠方からジェスチャー検出手段の方向に接近して所定の音出力基準領域内に入った段階で所定の音の出力を開始して、」「当該継続した音の出力中に前記対象物が前記音出力基準領域内から所定の移動方向判断領域方向に進入した場合、音が連続的に変化したとユーザーが認識できる状態で音を変える一方、前記対象物が前記音出力基準領域内から移動方向判断領域方向に進入せずに音出力基準領域の外に離脱する場合に音の出力を停止させる制御を行う制御手段」を備えるものとなっており、拒絶査定において引用された引用文献Aに記載された発明ではなく、また、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献Aに記載された発明、引用文献B、Eに記載された技術及び引用文献C-Dに記載された周知技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1-2を維持することはできない。
2.原査定の理由4について
原査定の理由4は、請求項22-28の「距離短縮手段」が発明の詳細な説明に記載されていないというものであるが、平成30年5月14日付けの手続補正により、請求項22が削除された。したがって、原査定の理由4を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-006544