特許拒絶査定不服審判
2018-003045
糖アルコールの内部脱水生成物を製造するための改善された方法
- 審判番号
- 2018-003045
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-539621外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年03月02日
- 審決日
- 2019年01月22日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】アーチャー-ダニエルズ-ミッドランド カンパニー
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 【請求人代理人】江口 昭彦
- 【請求人代理人】内藤 和彦
- 分類
- P18 .121-WY (C07D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-539621「糖アルコールの内部脱水生成物を製造するための改善された方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 8日国際公開、WO2014/070371、平成28年 1月28日国内公表、特表2016-502513、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2013年10月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年10月31日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成29年5月10日付けの拒絶理由に対し同年8月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年3月2日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 原査定の拒絶理由の概要
原査定(平成29年12月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
原査定の拒絶の理由は、平成29年5月10日付けの拒絶理由通知における理由2であり、その理由2の概要は、この出願の請求項1-13に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1-3に記載された発明に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
引用文献1.特表2005-509667号公報(審決注:拒絶理由通知に記載した米国特許出願公開第2008/0213439号明細書に関し、平成29年8月24日の意見書には、審査官から特表2005-509667号公報の誤りだとの連絡があり、請求人はこの文献に基づいて対応した旨記載されている(意見書第2頁第34行~第38行参照)。また、拒絶査定では、再度上記米国特許出願公開明細書が引用文献等一覧に記載されているものの、拒絶査定の理由中における摘記箇所は特表2005-509667号公報に基づくものであり、請求人も過去の経緯も踏まえ、この文献に基づいて対応した旨記載されている(審判請求書第5頁第16行~第21行参照)。したがって、本審決においても、引用文献1は、上記米国特許出願公開明細書ではなく、特表2005-509667号公報であるとして検討する。)
引用文献2.特表2003-535866号公報
引用文献3.米国特許出願公開第2007/0173652号明細書
第3 本願発明
この出願の特許請求の範囲の記載は、平成29年8月24日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項によって特定された以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
酸触媒の存在下にて1種又は複数種のヘキシトールを脱水して、粗製脱水生成物混合物を形成する工程;
前記粗製脱水生成物混合物からクロマトグラフィーによりイオン種を実質的に分離する工程であって、前記脱水生成物混合物中のイオン種の中で最も高い濃度のカチオンに相当する、カチオン形の少なくとも1つの強酸カチオン交換樹脂を使用したイオン排除クロマトグラフィーによって、イオン種が少なくとも一部分離される、工程;
次いで、その残余を更なる処理にかけて、前記残余と比較して1種又は複数種のイソヘキシドが豊富な生成物が生成される工程;
を含む、
1種又は複数種のイソヘキシドを製造するプロセス。
【請求項2】
前記脱水、クロマトグラフィー分離及び更なる処理工程後の残留物であって、1種又は複数種の未転化ヘキシトール、前記1種又は複数種のヘキシトールからの1種又は複数種のモノ脱水物質、又は未転化物質とモノ脱水物質の両方を含有する残留物が、前記脱水工程に再循環される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記の更なる処理前に、前記残余に少なくとも1種類の酸化防止剤を添加することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記粗製脱水生成物混合物の前記残留物及び1種又は複数種のイソヘキシドが豊富な前記生成物のうちの1つ又は両方を、水素源を使用して触媒の存在下にて水素化する工程をさらに含む、請求項1又は3に記載のプロセス。
【請求項5】
イオン種が、イオン排除クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーの両方で除去される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
イオン排除クロマトグラフィーの後、イオン交換クロマトグラフィーが実施される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
少なくとも1種類の吸着剤と前記残余を接触させることをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記少なくとも1種類の吸着剤が、活性炭吸着剤を含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記粗製脱水生成物混合物が、クロマトグラフィーで処理される前に、少なくとも1つのナノ濾過又は限外濾過膜を通過する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
イオン排除及びイオン交換の後に炭素又は樹脂床吸着工程を更に含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
イオン種が、イオン排除クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィー工程により分離され、前記プロセスが、イオン排除及びイオン交換の上流にナノ濾過又は限外濾過工程を更に含み、イオン排除及びイオン交換の後に炭素又は樹脂床吸着工程を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記残余が、持ち越され得る樹脂及び炭素のいずれかを除去するための更なる処理の前に濾過される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
イオン種が、イオン排除クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィー工程により分離され、
前記プロセスが、イオン排除及びイオン交換の上流にナノ濾過又は限外濾過工程を更に含み、
前記プロセスが、イオン排除及びイオン交換の後に炭素又は樹脂床吸着工程を更に含み、
前記残余が、持ち越され得る樹脂及び炭素のいずれかを除去するための更なる処理の前に濾過され、
前記脱水、クロマトグラフィー分離及び更なる処理工程後の残留物であって、1種又は複数種の未転化ヘキシトール、前記1種又は複数種のヘキシトールからの1種又は複数種のモノ脱水物質、又は未転化物質とモノ脱水物質の両方を含有する残留物が、前記脱水工程に再循環され、
前記プロセスが、前記の更なる処理前に、前記残余に少なくとも1種類の酸化防止剤を添加することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。」(以下「本願発明1」~「本願発明13」という。)
第4 引用文献、引用発明等
ア 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化糖の内部脱水生成物の組成物の製造方法であり:
a)前記生成物が豊富な蒸留物を得るための、前記内部脱水素生成物を含む媒体を蒸留する工程、
b)任意に、得られた蒸留物を精製する、少なくとも1の後処理工程、
c)工程a)で得られた、及びその後の任意で工程b)に供した蒸留物を、前記蒸留物中に主に含まれている前記内部脱水生成物の安定性の改善を可能とする、ガス状の形態ではない安定性改善剤と接触させる、後処理工程、
d)任意に、得られた水素化糖の内部脱水生成物の組成物を成形する、後処理工程:
を含む製造方法。」
(1b)「【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、前記出願では、このように得られた精製組成物であり、販売されなければならない精製組成物の長時間にわたる安定性という問題点、特に一般的な保存温度(すなわち一般的には0と40℃の間)での長時間にわたる安定性については、具体的に触れられていない。」
(1c)「【0025】
そして、これらの研究を更に探求することにより、本出願会社は、驚くべきことであり予想しなかったことに、a)特異的な安定化剤の(本出願の場合は非ガス状の形態での)、b)調製方法の特定の時間での(本出願の場合は実際の蒸留工程後での)使用によってのみ、この目的を達成でき、特に、少なくとも常温で又は温和な気温での保存特性が改善されたイソソルビド組成物を調製できることを見出した。これらの研究のために、本出願会社は、後述する、40℃での保存における安定性を調べる試験を開発した。この試験によって、実際に産業界においては、より低い温度、すなわち室温で一般的に保存されている組成物の安定性を、より迅速に評価することができた。」
(1d)「【0066】
有利なことに、工程a)の蒸留の後に、工程b)の得られた蒸留物の精製が行われる。
【0067】
第一の形態に従えば、工程b)は、一般的に溶液に溶けている蒸留物を、脱色手法及びイオン交換手法から選択される精製手法の少なくとも1つで処理する精製工程からなる。
【0068】
“脱色手法”という表現は、特に、粒状又は粉状の活性炭及び吸着樹脂を意味すると理解される。
【0069】
一例として、製品“CECA DC 50”のような粒状の活性炭、製品“NORIT SX +”のような粉状の活性炭及び/又は“DUOLITE XAD 761”、“MACRONET NM-600”又は“MACRONET MN-400”と呼ばれる製品のような樹脂を、単独で又は組み合わせて、使用することができる。
【0070】
“イオン交換手法”という表現は、特に、弱又は強陰イオン樹脂、及び弱又は強陽イオン樹脂を意味すると理解される。
【0071】
一例として、樹脂“AMBERLITE IRA 910”のような強陰イオン樹脂又は樹脂“PUROLITE C 150 S”のような強陽イオン樹脂を、単独で又は組み合わせて、使用することができる。
【0072】
イオン交換手法は、有利には、少なくとも1の陰イオン樹脂及び少なくとも1の陽イオン樹脂を含むことができる。好ましくは、この手法は、陰イオン樹脂及び陽イオン樹脂からなる混床式、又は、陽イオン樹脂及びそれに続く陰イオン樹脂からなる連続式、又は、陰イオン樹脂及びそれに続く陽イオン樹脂からなる連続式からなる。
【0073】
好ましくは、本発明による方法の工程b)では、工程a)で得られた蒸留物を、少なくとも1の活性炭及び少なくとも1のイオン性又は非イオン性樹脂を用いて、任意の順番で処理する。
【0074】
大変有利なことには、前記蒸留物は、最初に活性炭で処理し、その後に、少なくとも1の樹脂及びその後に再度活性炭で処理する。」
(1e)「【実施例】
【0112】
(実施例1)
“NEOSORBR 70/02”という名前で出願人によって販売されている、70%DMを含むソルビトール溶液1 kg、及び、濃硫酸7 gを、ジャケット付き攪拌反応器内で混和する。最初の反応媒体に含まれている水及びソルビトール脱水反応によって得られる水を除去するために、得られた混合物を5時間、真空下(約100 mbarの圧力)で加熱する。
【0113】
その後、粗反応性生成物を約100℃まで冷やし、その後に50%水酸化ナトリウム溶液11.4 gで中和する。その後、中和したイソソルビド組成物を、真空下(50 mbarより低い圧力)で蒸留する。
【0114】
その後、40%DMを含む溶液を得るために、薄く色付いた(薄黄色)粗イソソルビド蒸留物を蒸留水に溶かす。
【0115】
その後、この溶液を、“CECA DC 50”粒状活性炭カラムに、0.5 BV/h (Bed Volume/hour)の速度で浸透させる。得られた脱色したイソソルビド組成物を、2 BV/hの速度で、“PUROLITE C 150 S”強陽イオン樹脂カラムとその後の“AMBERLITE IRA 910”強陰イオン樹脂カラムに連続して通す。
【0116】
その後、イソソルビド溶液を、真空下で直接濃縮する。含水率が0.3%である白い粉末を得るために、得られた溶けた塊を、後で粉砕する大きな結晶からなる“凝集した生成物(massed product)”の形態で、冷却して結晶化させる。
【0117】
そのギ酸の含有量及びモノアンハイドロヘキソースの含有量は、それぞれ、0.0005%(5 ppm)より少ない。それぞれは、前記組成物の乾燥重量に対する乾燥重量で表される。
【0118】
このイソソルビドの凝集した生成物20 gを50 ml入るガラスの入れ物に直接入れ、密閉した後に、40℃に維持したオーブン内に置く。
【0119】
この条件下で一ヶ月保存すると、イソソルビド組成物は1000 ppmのギ酸及び約7000 ppmのモノアンハイドロヘキソースを含有している。
【0120】
それ故、試験に供した、イソソルビドの“凝集した生成物(massed product)”は、本発明の目的において安定であるとみなすことができない。」
(1f)「【0121】
(実施例2)
本実施例では、本発明に従って、蒸留後に、実施例1に記した活性炭及びその後の樹脂での精製からなる処理によって、直接得られたイソソルビド溶液の画分を回収し、溶液の乾燥物質含量及びイソソルビドの純度を測定した。
【0122】
回収してすぐに、前記画分に、前記画分に含まれているイソソルビドの重量に占める割合(乾燥重量/乾燥重量)で0.005%(50 ppm)に相当する量のNaBH4を混和し、その後、実施例1に記したのと同じ条件で濃縮工程を直接行う。
【0123】
冷却後に得られた凝集した生成物は、論理的に実施例1で得られた凝集した生成物と同じオーダーである純度(約99.1%)、並びに、ギ酸及びモノアンハイドロヘキソースの含有量を有している。
【0124】
しかしながら、実施例1と同様の条件下で1ヶ月保存すると、蒸留後にNaBH4で調整したイソソルビド組成物は、ギ酸及びモノアンハイドロヘキソースの含有量がそれぞれ、5 ppmより少ない。
【0125】
それ故、この組成物は、本発明の目的において安定であるとみなすことができる。
【0126】
更なる測定により、実際に、同じ条件下で6ヶ月以上たっても、この同じ組成物は、ギ酸の含有量が5 ppmより少なく、モノアンハイドロヘキソースの含有量が50 ppmより少なかった。それ故、この組成物は、本発明の目的において少なくとも六ヶ月の安定性を有している。」
(1g)「【0136】
(実施例5)
本実施例では、本発明に従って、
1)活性炭及び樹脂を通した後、蒸留物を、20℃で1時間、5%(乾燥重量/乾燥重量)の粉状の活性炭“NORIT SX +”で処理すること、及び
2)濃縮前に、それぞれ50 ppmのNaBH4、モルフォリン、BHT又はビタミンCを蒸留物へ添加すること:
以外は、実施例2に記載された方法で実験を行う。
【0137】
濃縮工程及び冷却工程後に直接得られた、それぞれ四つの凝集した生成物を、実施例1と同じ条件で保存した。
【0138】
40℃で1又は2時間保存した後では、四つの生成物の全てで、ギ酸の含有量が5 ppmに達せず、モノアンハイドロヘキソースの含有量も50 ppmに達しなかった。
【0139】
NaBH4又はモルフォリンで処理した蒸留物から得られた凝集した生成物を、同じ条件で、六ヶ月以上保存した試験では、保存性が、少なくともこの期間際立って保たれていた。
【0140】
それ故、少なくとも二ヶ月、特に少なくとも六ヶ月安定であるイソソルビド組成物を得ることができる。」
イ 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された上記引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの水素添加糖の内部脱水生成物を含有する組成物の精製方法であって、
a)前記組成物を、再溶解した後に、または再溶解せずに、少なくとも1つの脱色手段で処理する任意の工程;
b)任意に脱色処理された前記組成物を、引き続き少なくとも1つのイオン交換手段で処理する工程;
c)得られた組成物を、引き続き少なくとも1つの脱色手段で処理する工程;
を含むことを特徴とする精製方法。」
(2b)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも1つの水素添加糖の内部脱水生成物を含有する組成物の精製のための新規な方法に関する。
本発明はまた、こうして得られる精製組成物の、特に化学、製薬、化粧品、及び食品工業を企図する、ポリマー性または非ポリマー性、生分解性または非生分解性の生成物または混合物の調製における使用にも関する。」
(2c)「【0019】
【発明が解決しようとする課題】
出願人によれば、実際に、これまでは、例えば少なくとも98.5%の純度(乾燥/乾燥)を有し、白色(粉末として)または無色(溶液として)であり、優れた安定性を有する組成物(例えばイソソルビド)を、工業的慣行において、蒸留工程に次いで有機溶媒からの結晶化の工程を連続的に行うことを必要とせずに効果的に調製することは不可能であった。
【0020】
【課題を解決するための手段】
実際、脱水の工程から誘導される媒質の単純な蒸留及び、その冷却による「凝集した(massed)」タイプの組成物への転化からなる別経路では、精製の点で、特に色(黄色から褐色)及び安定性の点で、充分な結果を得ることが不可能である。予め再溶解した留出物を粒状活性炭で処理する更なる工程を、蒸発の前に行うことにより、色の点では改善された組成物を得ることができるが、純度の点では全く改善されない。さらにまた、こうした組成物は、比較的に経時的に限定された安定性を有する。出願人は、多大な研究の後に、純度が高く、優れた安定性のイソヘキシド及び他の脱水水素添加糖に基づく組成物を、溶媒媒質からの結晶化の工程を行う必要無しに得ることが可能であり、これが、少なくとも1つの脱色処理工程及び少なくとも1つのイオン交換工程を特定の順序で行うことで可能になることを見出した。」
(2d)「【0024】
別の変形によれば、工程b)において使用されるイオン交換手段は、少なくとも1つのアニオン樹脂及び少なくとも1つのカチオン樹脂を含む。好ましくは、この手段は、アニオン樹脂とカチオン樹脂との混合ベッドか、またはカチオン樹脂の後にアニオン樹脂が続く連続物か、またはアニオン樹脂の後にカチオン樹脂が続く連続物から構成される。非常に有利な方法では、使用される樹脂は、強カチオン樹脂及び強アニオン樹脂である。」
(2e)「【0050】
【実施例】
(実施例1)
出願人により「NEOSORB(登録商標)70/02」の名で市販の、70%DM含有のソルビトール溶液1kg及び7gの濃硫酸を、被覆した撹拌反応器に仕込む。得られた混合物を真空下で(圧力は約100mbar)5時間加熱して、当初の反応媒質中に含まれる水分およびソルビトール脱水反応から得られる水分を除去する。
【0051】
粗製の反応生成物をおよそ100℃に冷却した後、11.4gの50%水酸化ナトリウム溶液で中和する。こうして中和されたイソソルビド組成物は、その後真空下で(圧力は約50mbar)蒸留する。
【0052】
僅かに有色(明黄色)の粗製イソソルビド留出物を、その後蒸留水に溶解させて、40%DMを含有する溶液を得る。
【0053】
その後、この溶液は、「CECA DC 50」タイプの活性炭カラムを0.5BV/時(ベッド体積/時間)の速度で透過させる。こうして得られた脱色イソソルビド組成物は、その後2BV/時の速度で、「PUROLITE C 150 S」タイプの強カチオン樹脂のカラムを、次いで「AMBERLITE IRA 910」タイプの強アニオン樹脂のカラムを、連続して通過させる。
【0054】
この溶液は、その後「NORIT SX+」タイプの粉末活性炭で20℃にて1時間に亘って処理する。
使用する活性炭は、乾燥重量/溶液の乾燥重量として表して5%の量である。
【0055】
濾過の後、前記イソソルビド溶液を真空下で濃縮する。得られた溶融固体は、冷却すると大型の結晶の「凝集生成物」の形態で結晶化し、その後これを粉砕して、0.3%の水分含量、即ち99.7%のDMを有する白色粉末を得る。
【0056】
このイソソルビド組成物は、本発明に従って得られるものであるが、下記の特徴を有する(パーセンテージは前記組成物の全重量に対して表される)。
水 :0.3%
イソソルビド :98.8%
イソマンニド :0.3%
他のジアンヒドロヘキシトール :0.3%
モノアンヒドロペンチトール :<0.025%
デオキシヘキシトール :<0.070%
蟻酸 :<0.0005%
pH* :6.6
電気伝導性* :<20μS/cm
*:前記組成物をDM5%にまで希釈した後に測定。
【0057】
得られた組成物は、本発明に従うものであり、然るに98.8/99.7、すなわち約99.1%のイソソルビド純度を有する。
【0058】
このイソソルビドの凝集生成物20gを、共せんプラスチック容器に仕込み、これをオーブン中で60℃にて貯蔵する。これらの条件下での貯蔵2日間後、この組成物がpHに関して僅かに変化したが(0.6pH単位の減少)、特にそのイソソルビド純度、その蟻酸濃度、及びその電気伝導性には著しい変化がなく、前記蟻酸濃度及び電気伝導性は非常に低レベルに維持されることが認められる。」
ウ 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された上記引用文献3には、次の事項が記載されている。以下、訳文で示す。
(3a)「請求の範囲
1.二無水糖アルコールを製造する方法であって、
第1反応器中でポリオールを第1の触媒の存在下で反応させて単環糖を製造する工程;単環糖を第2反応器に移す工程;第2反応器中で第2の触媒の存在下で二無水糖アルコールに転換する工程を含む方法。
・・・
15.下記式の糖生成物を形成する方法であって、
第1の容器に以下の反応物を供給し、
触媒の存在下で以下の式の少なくとも一つの無水糖アルコールに転換し、第2の容器に移し、
第2の容器中で脱水反応により少なくとも一つの無水糖アルコールから糖生成物を製造する方法。
・・・
18.脱水反応は添加した水素の存在下で行われる、請求項15に記載の方法。」(第6頁左欄第14行-第7頁左欄第2行)
エ 引用文献に記載された発明
(ア)引用文献1に記載された発明
引用文献1には、
「【請求項1】
水素化糖の内部脱水生成物の組成物の製造方法であり:
a)前記生成物が豊富な蒸留物を得るための、前記内部脱水素生成物を含む媒体を蒸留する工程、
b)任意に、得られた蒸留物を精製する、少なくとも1の後処理工程、
c)工程a)で得られた、及びその後の任意で工程b)に供した蒸留物を、前記蒸留物中に主に含まれている前記内部脱水生成物の安定性の改善を可能とする、ガス状の形態ではない安定性改善剤と接触させる、後処理工程、
d)任意に、得られた水素化糖の内部脱水生成物の組成物を成形する、後処理工程:
を含む製造方法。」が記載されている(摘記(1a))。
そして、特許請求の範囲に対応した具体例の記載として、まず、実施例1では、「70%DMを含むソルビトール溶液1 kg、及び、濃硫酸7 gを、ジャケット付き攪拌反応器内で混和する。最初の反応媒体に含まれている水及びソルビトール脱水反応によって得られる水を除去するために、得られた混合物を5時間、真空下(約100 mbarの圧力)で加熱する。
その後、粗反応性生成物を約100℃まで冷やし、その後に50%水酸化ナトリウム溶液11.4 gで中和する。その後、中和したイソソルビド組成物を、真空下(50 mbarより低い圧力)で蒸留する。
その後、40%DMを含む溶液を得るために、薄く色付いた(薄黄色)粗イソソルビド蒸留物を蒸留水に溶かす。
その後、この溶液を、“CECA DC 50”粒状活性炭カラムに、0.5 BV/h (Bed Volume/hour)の速度で浸透させる。得られた脱色したイソソルビド組成物を、2 BV/hの速度で、“PUROLITE C 150 S”強陽イオン樹脂カラムとその後の“AMBERLITE IRA 910”強陰イオン樹脂カラムに連続して通す。
その後、イソソルビド溶液を、真空下で直接濃縮する。含水率が0.3%である白い粉末を得るために、得られた溶けた塊を、後で粉砕する大きな結晶からなる“凝集した生成物(massed product)”の形態で、冷却して結晶化させる。」ことが記載されている(摘記(1e))。
また、実施例5では、「本実施例では、本発明に従って、
1)活性炭及び樹脂を通した後、蒸留物を、20℃で1時間、5%(乾燥重量/乾燥重量)の粉状の活性炭“NORIT SX +”で処理すること、及び
2)濃縮前に、それぞれ50 ppmのNaBH4、モルフォリン、BHT又はビタミンCを蒸留物へ添加すること:以外は、実施例2に記載された方法で実験を行う。」ことが記載されている(摘記(1g))。
そして、実施例2では「本実施例では、本発明に従って、蒸留後に、実施例1に記した活性炭及びその後の樹脂での精製からなる処理によって、直接得られたイソソルビド溶液の画分を回収し、溶液の乾燥物質含量及びイソソルビドの純度を測定した。
回収してすぐに、前記画分に、前記画分に含まれているイソソルビドの重量に占める割合(乾燥重量/乾燥重量)で0.005%(50 ppm)に相当する量のNaBH4を混和し、その後、実施例1に記したのと同じ条件で濃縮工程を直接行う。」ことが記載されている(摘記(1f))。
そうすると、引用文献1には、
「ソルビトール溶液及び濃硫酸を混和して脱水して、粗反応性生成物を形成する工程、
粗反応性生成物を水酸化ナトリウム溶液で中和したイソソルビド組成物を、真空下で蒸留する工程、
粗イソソルビド蒸留物を蒸留水に溶かした溶液を粒状活性炭カラムで処理し、得られた脱色したイソソルビド組成物を強陽イオン樹脂カラムとその後の強陰イオン樹脂カラムに連続して処理する工程、
活性炭及び樹脂を通した後の蒸留物を、粉状の活性炭で処理する工程、
濃縮前に、BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)等を蒸留物へ添加する工程、
得られたイソソルビド溶液を真空下で濃縮する工程、
を含むイソソルビド組成物を製造するプロセス」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
(イ)引用文献2に記載された発明
引用文献2には、
「【請求項1】
少なくとも1つの水素添加糖の内部脱水生成物を含有する組成物の精製方法であって、
a)前記組成物を、再溶解した後に、または再溶解せずに、少なくとも1つの脱色手段で処理する任意の工程;
b)任意に脱色処理された前記組成物を、引き続き少なくとも1つのイオン交換手段で処理する工程;
c)得られた組成物を、引き続き少なくとも1つの脱色手段で処理する工程;
を含むことを特徴とする精製方法。」が記載されている(摘記(2a))。
そして、特許請求の範囲に対応した実施例として、
「70%DM含有のソルビトール溶液1kg及び7gの濃硫酸を、被覆した撹拌反応器に仕込む。得られた混合物を真空下で(圧力は約100mbar)5時間加熱して、当初の反応媒質中に含まれる水分およびソルビトール脱水反応から得られる水分を除去する。
粗製の反応生成物をおよそ100℃に冷却した後、11.4gの50%水酸化ナトリウム溶液で中和する。こうして中和されたイソソルビド組成物は、その後真空下で(圧力は約50mbar)蒸留する。
僅かに有色(明黄色)の粗製イソソルビド留出物を、その後蒸留水に溶解させて、40%DMを含有する溶液を得る。
その後、この溶液は、「CECA DC 50」タイプの活性炭カラムを0.5BV/時(ベッド体積/時間)の速度で透過させる。こうして得られた脱色イソソルビド組成物は、その後2BV/時の速度で、「PUROLITE C 150 S」タイプの強カチオン樹脂のカラムを、次いで「AMBERLITE IRA 910」タイプの強アニオン樹脂のカラムを、連続して通過させる。
この溶液は、その後「NORIT SX+」タイプの粉末活性炭で20℃にて1時間に亘って処理する。
使用する活性炭は、乾燥重量/溶液の乾燥重量として表して5%の量である。
濾過の後、前記イソソルビド溶液を真空下で濃縮する。得られた溶融固体は、冷却すると大型の結晶の「凝集生成物」の形態で結晶化し、その後これを粉砕して、0.3%の水分含量、即ち99.7%のDMを有する白色粉末を得る。」ことが記載されている(摘記(2e))。
そうすると、引用文献2には、
「ソルビトール溶液及び濃硫酸を混和して脱水して、粗製の反応生成物を形成する工程、
粗製の反応生成物を水酸化ナトリウム溶液で中和したイソソルビド組成物を、真空下で蒸留する工程、
粗イソソルビド蒸留物を蒸留水に溶かし、この溶液を活性炭カラムで処理し、得られた脱色したイソソルビド組成物を強カチオン樹脂カラムとその後の強アニオン樹脂カラムに連続して処理する工程、
活性炭及び樹脂を通した後の蒸留物を、粉末活性炭で処理する工程、得られたイソソルビド溶液を真空下で濃縮する工程、
を含むイソソルビド組成物を製造するプロセス」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
第5 対比・判断
ア 本願発明1と引用発明1について
(ア)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「ソルビトール溶液」は、六炭糖であるから、本願発明1の「ヘキシトール」に相当する。引用発明1の「濃硫酸を混和して脱水」は、本願発明1の「酸触媒の存在下にて・・・脱水」に相当する。引用発明1の「粗反応性生成物」は、脱水反応の生成物であるから、本願発明1の「粗製脱水生成物混合物」に相当する。引用発明1の「強陰イオン樹脂カラムに連続して処理する工程、活性炭及び樹脂を通した後の蒸留物を、粉状の活性炭で処理する工程、濃縮前に、BHT等を蒸留物へ添加する工程、得られたイソソルビド溶液を真空下で濃縮する工程」は、濃縮によってイソヘキシドの割合が高まっていることは明らかであるので、本願発明1の「その残余を更なる処理にかけて、前記残余と比較して1種又は複数種のイソヘキシドが豊富な生成物が生成される工程」に該当する。引用発明1の「イソソルビド組成物」は、本願発明1の「1種又は複数種のイソヘキシド」に相当する。引用発明1の「強陽イオン樹脂カラム・・・に連続して処理する工程」は、強陽イオン樹脂カラムを用いてイオン種を実質的に分離する工程である限りにおいて、本願発明1の「クロマトグラフィーによりイオン種を実質的に分離する工程」に相当する。
(一致点)
「酸触媒の存在下にてヘキシトールを脱水して、粗製脱水生成物混合物を形成する工程;
強陽イオン樹脂カラムを用いてイオン種を実質的に分離する工程;
次いで、その残余を更なる処理にかけて、前記残余と比較して1種又は複数種のイソヘキシドが豊富な生成物が生成される工程;
を含む、1種又は複数種のイソヘキシドを製造するプロセス。」
(相違点)
(相違点1)
強陽イオン樹脂カラムを用いてイオン種を実質的に分離する工程に関して、本願発明1は、「脱水生成物混合物中のイオン種の中で最も高い濃度のカチオンに相当する、カチオン形の少なくとも1つの強酸カチオン交換樹脂を使用したイオン排除クロマトグラフィーによって、イオン種が少なくとも一部分離される」と特定しているのに対し、引用発明1は強陽イオン樹脂カラムで処理すると記載されるのみであって、「脱水生成物混合物中のイオン種の中で最も高い濃度のカチオンに相当する、カチオン形の少なくとも1つの強酸カチオン交換樹脂を使用」することや、「イオン排除クロマトグラフィーによって」「分離される」とはされていない点
(相違点2)
本願発明1は、「酸触媒の存在下にてヘキシトールを脱水して、粗製脱水生成物混合物を形成する工程」の後、「前記粗製脱水生成物混合物からクロマトグラフィーによりイオン種を実質的に分離する工程」を有しているのに対し、引用発明1は、「ソルビトール溶液及び濃硫酸を混和して脱水して、粗反応性生成物を形成する工程」の後であって、「強陽イオン樹脂カラムとその後の強陰イオン樹脂カラムに連続して処理する工程」の前に、「粗反応性生成物を水酸化ナトリウム溶液で中和したイソソルビド組成物を、真空下で蒸留する工程、粗イソソルビド蒸留物を蒸留水に溶かした溶液を粒状活性炭カラムで処理し」(以下「蒸留工程」という。)ている点
(イ)判断
a 相違点1について
上記相違点1について検討すると、引用文献1では、「強陽イオン樹脂カラム」と記載されるのみであって、脱水生成物混合物中のイオン種の中で最も高い濃度のカチオンに関する記載はされていない。
そして、引用文献1において、強陽イオン樹脂カラムは、引用発明1の精製方法におけるイオン交換手法(【0070】~【0072】)の具体化手段として記載されており、実施例で用いられている樹脂カラムの商品名等からすると、イオン交換クロマトグラフィーが行われているといえるものの、「イオン排除クロマトグラフィー」については、何ら記載されていない(摘記(1d))。
そして、イオン交換クロマトグラフィーとイオン排除クロマトグラフィーは、それぞれカラムの種類として強陽イオン樹脂を用いることがあるものの、分析・分離する対象物によって、基材上の官能基や塩形が適宜変更されるものであり、その分離機構も異なるものである。したがって、分離技術・手法として異なるものといえ、基材として同じ樹脂が用いられているからといって、両者が同一操作であるとはいえない。
そして、イオン排除クロマトグラフィーが精製手段として分離機構が異なる以上、引用文献1に強陽イオン樹脂カラムを用いることが記載されているからといって、当該記載に接した当業者がイオン排除クロマトグラフィーを用いるという動機付けがあるとはいえず、さらに、強陽イオン樹脂カラムを用いる際に、「脱水生成物混合物中のイオン種の中で最も高い濃度のカチオンに相当する、カチオン形の少なくとも1つの強酸カチオン交換樹脂を使用」するものでもない。
よって、当業者といえども、引用発明1において相違点1に係る「脱水生成物混合物中のイオン種の中で最も高い濃度のカチオンに相当する、カチオン形の少なくとも1つの強酸カチオン交換樹脂を使用」することや、「イオン排除クロマトグラフィー」を用いることを容易に想到することはできないといえる。
b 相違点2について
上記相違点2について検討する。
イオン種を実質的に分離する工程に関して、引用発明1においては、蒸留工程を含めた前工程を経た後に、イオン種を実質的に分離することを前提にしているのに対して、本願発明1においては、蒸留工程を経ることなく、直接クロマトグラフィーによりイオン種を実質的に分離している。
引用文献1には、その請求項の記載を参酌すると、「水素化糖の内部脱水生成物の組成物の製造方法であって、a)工程で蒸留物を得た後、任意のb)工程の精製工程後、c)工程でガス状の形態ではない安定性改善剤と接触させる、後処理工程を含む製造方法」である(摘記(1a))。そして、少なくとも1つのアニオン樹脂及び少なくとも1つのカチオン樹脂を用いるイオン交換手法は、工程b)において使用されるものであると記載されている(摘記(1d))。
引用文献1では、蒸留工程後の安定化剤の使用によってのみ目的を達成することができると記載されていることからすると(摘記(1c))、蒸留工程を経ることなくイオン交換手法を適用することは想定されていないといえる。
したがって、引用発明1において、相違点2に係る「蒸留工程」を経ることなく、粗製脱水生成物混合物をクロマトグラフィーによりイオン種を実質的に分離することは、当業者といえども容易に想到することはできない。
(ウ)本願発明2-13と引用発明1について
本願発明2-13も、本願発明1の「イオン排除クロマトグラフィーによって、イオン種が少なくとも一部分離される」との特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1に基いて容易に発明することができたものとはいえない。
(エ)引用文献3について
また、上述のとおり本願発明1-13は、引用発明1に基いて容易に発明できたものとはいえないため、糖生成物を製造する際に水素を用いることに関して記載のある(摘記(3a)参照)引用文献3について考慮したとしても、本願発明1-13は、当業者であっても、引用発明1および引用文献3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
イ 本願発明1と引用発明2について
(ア)対比
本願発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「ソルビトール溶液」は、六炭糖であるから、本願発明1の「ヘキシトール」に相当する。引用発明2の「濃硫酸を混和して脱水」は、本願発明1の「酸触媒の存在下にて・・・脱水」に相当する。引用発明2の「粗製の反応生成物」は、脱水反応の生成物であるから、本願発明1の「粗製脱水生成物混合物」に相当する。引用発明2の「強アニオン樹脂カラムに連続して処理する工程、活性炭及び樹脂を通した後の蒸留物を、粉末活性炭で処理する工程、得られたイソソルビド溶液を真空下で濃縮する工程」は、濃縮によってイソヘキシドの割合が高まっていることは明らかであるので、本願発明1の「その残余を更なる処理にかけて、前記残余と比較して1種又は複数種のイソヘキシドが豊富な生成物が生成される工程」に該当する。引用発明2の「イソソルビド組成物」は、本願発明1の「1種又は複数種のイソヘキシド」に相当する。引用発明2の「強カチオン樹脂カラム・・・に連続して処理する工程」は、強カチオン樹脂カラムを用いてイオン種を実質的に分離する工程である限りにおいて、本願発明1の「クロマトグラフィーによりイオン種を実質的に分離する工程」に相当する。
(一致点)
「酸触媒の存在下にてヘキシトールを脱水して、粗製脱水生成物混合物を形成する工程;
強カチオン樹脂カラムを用いてイオン種を実質的に分離する工程;
次いで、その残余を更なる処理にかけて、前記残余と比較して1種又は複数種のイソヘキシドが豊富な生成物が生成される工程;
を含む、1種又は複数種のイソヘキシドを製造するプロセス。」
(相違点)
(相違点1)
強カチオン樹脂カラムを用いてイオン種を実質的に分離する工程に関して、本願発明1は、「脱水生成物混合物中のイオン種の中で最も高い濃度のカチオンに相当する、カチオン形の少なくとも1つの強酸カチオン交換樹脂を使用したイオン排除クロマトグラフィーによって、イオン種が少なくとも一部分離される」と特定しているのに対し、引用発明2は強カチオン樹脂カラムで処理すると記載されるのみであって、「脱水生成物混合物中のイオン種の中で最も高い濃度のカチオンに相当する、カチオン形の少なくとも1つの強酸カチオン交換樹脂を使用」することや、「イオン排除クロマトグラフィーによって」「分離される」とはされていない点
(相違点2)
本願発明1は、「酸触媒の存在下にてヘキシトールを脱水して、粗製脱水生成物混合物を形成する工程」の後、「前記粗製脱水生成物混合物からクロマトグラフィーによりイオン種を実質的に分離する工程」を有しているのに対し、引用発明2は、「ソルビトール溶液及び濃硫酸を混和して脱水して、粗製の反応生成物を形成する工程」の後であって、「強カチオン樹脂カラムとその後の強アニオン樹脂カラムに連続して処理する工程」の前に「粗製の反応生成物を水酸化ナトリウム溶液で中和したイソソルビド組成物を、真空下で蒸留する工程、粗イソソルビド蒸留物を蒸留水に溶かし、この溶液を活性炭カラムで処理し」(以下「蒸留工程」という。)ている点
(イ)判断
a 相違点1について
上記相違点1について検討すると、引用文献2では、「強カチオン樹脂カラム」と記載されるのみであって、脱水生成物混合物中のイオン種の中で最も高い濃度のカチオンに関する記載はされていない。
そして、引用文献2において、強カチオン樹脂カラムは、イオン交換手段(【0024】)の具体化手段として記載されており、実施例で用いられている樹脂カラムの商品名等からすると、イオン交換クロマトグラフィーが行われているといえるものの、「イオン排除クロマトグラフィー」については、何ら記載されていない(摘記(2d))。
そして、イオン交換クロマトグラフィーとイオン排除クロマトグラフィーは、それぞれカラムの種類として強カチオン樹脂を用いることがあるものの、分析・分離する対象物によって、基材上の官能基や塩形が適宜変更されるものであり、その分離機構も異なるものである。したがって、分離技術・手法として異なるものといえ、基材として同じ樹脂が用いられているからといって、両者が同一操作であるとはいえない。
そして、イオン排除クロマトグラフィーが精製手段として分離機構が異なる以上、引用文献2に強カチオン樹脂カラムを用いることが記載されているからといって、当該記載に接した当業者がイオン排除クロマトグラフィーを用いるという動機付けがあるとはいえず、さらに、強カチオン樹脂カラムを用いる際に、「脱水生成物混合物中のイオン種の中で最も高い濃度のカチオンに相当する、カチオン形の少なくとも1つの強酸カチオン交換樹脂を使用」するものでもない。
よって、当業者といえども、引用発明2において相違点1に係る「脱水生成物混合物中のイオン種の中で最も高い濃度のカチオンに相当する、カチオン形の少なくとも1つの強酸カチオン交換樹脂を使用」することや、「イオン排除クロマトグラフィー」を用いることを容易に想到することはできないといえる。
b 相違点2について
上記相違点2について検討する。
イオン種を実質的に分離する工程に関して、引用発明2においては、蒸留工程を含めた前処理を経た後に、強カチオン樹脂カラムを用いるイオン種を実質的に分離することを前提にしているのに対して、本願発明1においては、蒸留工程を経ることなく、直接クロマトグラフィーによりイオン種を実質的に分離している。
引用文献2には、その請求項の記載を参酌すると、少なくとも1つの水素添加糖の内部脱水生成物を含有する組成物の精製方法であって、a)工程で組成物を再溶解した後、または再溶解せずに、脱色手段で処理した組成物について、b)工程において、イオン交換手段で処理する工程を含むものである(摘記(2a))そして、少なくとも1つのアニオン樹脂及び少なくとも1つのカチオン樹脂を用いるイオン交換手法は、工程b)において使用されるものであると記載されている(摘記(2d))。
引用文献2においては、ソルビトール溶液及び濃硫酸を混和して脱水して、粗製の反応生成物を形成する工程、水酸化ナトリウム溶液で中和したイソソルビド組成物を、真空下で蒸留する工程の後、粗イソソルビド蒸留物を蒸留水に溶かして溶液を得ており(摘記(2e))、蒸留工程を経ることなくイオン交換手段を適用することは想定されていないといえる。
したがって、引用発明2において、相違点2に係る「蒸留工程」を経ることなく、粗製脱水生成物混合物をクロマトグラフィーによりイオン種を実質的に分離することは、当業者といえども容易に想到することはできない。
(ウ)本願発明2-13と引用発明2について
本願発明2-13も、本願発明1の「イオン排除クロマトグラフィーによって、イオン種が少なくとも一部分離される」との特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明2に基いて容易に発明することができたものとはいえない。
(エ)引用文献3について
また、上述のとおり本願発明1-13は、引用発明2に基いて容易に発明できたものとはいえないため、糖生成物を製造する際に水素を用いることに関して記載のある(摘記(3a)参照)引用文献3について考慮したとしても、本願発明1-13は、当業者であっても、引用発明2および引用文献3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-13は、当業者が引用発明1-3に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-003045