特許拒絶査定不服審判
2018-002185
静電チャック、チャンバ及び静電チャックの製造方法
- 審判番号
- 2018-002185
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-541702外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年02月16日
- 審決日
- 2019年04月08日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】北京北方▲華▼▲創▼▲微▼▲電▼子装▲備▼有限公司
- 【請求人代理人】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-541702「静電チャック、チャンバ及び静電チャックの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 9日国際公開、WO2015/101259、平成29年 2月 2日国内公表、特表2017-504195、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成26年(2014年)12月29日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2013年12月31日(以下,「本願優先日」という。),中国)とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 5月26日付け 拒絶理由通知
平成29年 8月28日 意見書・手続補正
平成29年10月18日付け 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成30年 2月16日 審判請求・手続補正
平成30年11月 9日付け 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)
平成31年 2月 7日 意見書・手続補正(以下,「当審補正」という。)
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし15に係る発明は,以下の引用文献1ないし4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2013-120835号公報
2.特開2000-281000号公報
3.国際公開第2012/050072号
4.特開2013-45989号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願の請求項1,5ないし11及び15に係る発明は,以下の引用文献1,Aに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2013-120835号公報
A.特開2010-016363号公報
第4 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)は,当審補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
チャックベースと,
チャックベースの上方に配置されたヒータと,
前記ヒータの上方に設置され,内部に静電引力を発生するための電極が設置されている絶縁層と,を備える静電チャックであって,
前記チャックベースと前記ヒータとの間に積層されて断熱層を構成する断熱層シート材をさらに含み,
前記断熱層シート材は,個別に予め製造された断熱層シート材であり,
前記断熱層シート材が複数層の断熱フィルムを含むことを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記断熱フィルムの材料はポリイミドであり,前記複数層の断熱フィルムは真空ホットプレスを経て前記断熱層シート材を形成することを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記断熱フィルムの厚さが0.04mm~0.06mmであり,前記断熱層シート材の厚さが0.3mm~0.6mmであることを特徴とする請求項2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記断熱層シート材の上部表面が前記ヒータに接着され,前記断熱層シート材の下部表面が前記チャックベースに接着されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記絶縁層の材質がアルミナセラミックス又は窒化アルミニウムセラミックスであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記絶縁層内に,前記絶縁層温度を均一になるように,温調ガスを導入するために用いられるガス導入通路がさらに設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記絶縁層と前記ヒータとの間に積層される金属層をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項8】
前記チャックベース内に,前記静電チャックを冷却するための冷却液体を導入するために用いられる冷却チャネルが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項9】
ベースを含むチャンバであって,
請求項1から8のいずれか1項に記載の前記ベースに設置された静電チャックを含むことを特徴とするチャンバ。
【請求項10】
請求項1に記載の静電チャックの製造方法であって,
少なくとも,
断熱層シート材を製造して獲得する断熱層シート材の製造ステップと,
断熱層シート材を前記チャックベースと前記ヒータとの間に積層して断熱層を形成する断熱層シート材の装着ステップと,
を含み,
前記断熱層シート材は,個別に予め製造された断熱層シート材であり,
前記断熱層シート材の製造ステップにおいて,まず複数層の断熱フィルムを獲得し,その後複数層の断熱フィルム全体を加工して断熱層シート材を形成することを特徴とする製造方法。
【請求項11】
前記断熱層シート材の製造ステップにおいて,まず複数層の材料がポリイミドである断熱フィルムを製造し,その後真空ホットプレスプロセスを利用して複数層の断熱フィルムの全体を断熱層シート材に製造することを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記断熱層シート材の製造ステップにおいて,まず厚さが0.04mm~0.06mmである複数の断熱フィルムを製造し,その後真空ホットプレスプロセスを利用して複数層の断熱フィルムの全体を厚さが0.3mm~0.6mmである断熱層シート材に製造することを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記断熱層シート材の装着ステップにおいて,前記断熱層シート材の上部表面を前記ヒータに接着し,前記断熱層シート材の下部表面を前記チャックベースに接着して断熱層を形成することを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の製造方法。」
第5 引用文献及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1
当審拒絶理由及び原査定に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は,基体上に載置された吸着対象物を吸着する静電チャックを有する基板温調固定装置及びその製造方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,フィルムヒータの場合,接着層の耐熱性の問題から,約150℃以上の高温で使用することが困難である。
【0007】
本発明は,上記の点に鑑みてなされたものであり,ヒータを静電チャックの基体の裏面に直接形成し,ヒータを覆うように耐熱層を形成することにより,従来よりも高温で使用可能な基板温調固定装置及びその製造方法を提供することを課題とする。」
「【0013】
〈第1の実施の形態〉
[基板温調固定装置の構造]
まず,第1の実施の形態に係る基板温調固定装置の構造について説明する。図1は,第1の実施の形態に係る基板温調固定装置を簡略化して例示する断面図である。図1を参照するに,基板温調固定装置10は,静電チャック20と,接着層31と,断熱層32と,ベースプレート40とを有する。
【0014】
静電チャック20は,基体21と,電極22と,発熱体23と,耐熱層24とを有するクーロン力型静電チャックであり,吸着対象物を吸着保持する機能を有する。静電チャック20は,接着層31及び断熱層32を介して,ベースプレート40上に固定されている。
【0015】
基体21は,基板温調固定装置10の吸着対象物である半導体ウェハ(シリコンウエハ等)等の基板(図示せず)が載置される載置面を有する部材である。基体21は誘電体であり,例えば,Al2O3,AlN等のセラミックスを用いることができる。基体21の厚さは,例えば,1~20mm程度とすることができる。基体21の外径は,例えば,6インチ,8インチ,12インチ,18インチ等とすることができる。
【0016】
基体21の比誘電率(1KHz)は,例えば,9~10程度,基体21の体積抵抗率は,例えば,1012~1018Ωm程度とすることができる。基体21の載置面は,エンボスタイプの表面形状を有してもよい。基体21の載置面をエンボスタイプの表面形状とすることにより,吸着対象物である基板(図示せず)の裏面側に付着するパーティクルを低減できる。
【0017】
電極22は,薄膜電極であり,基体21に内蔵されている。電極22は,給電部(図示せず)を介して,基板温調固定装置10の外部に設けられた直流電源(図示せず)に接続される。電極22に給電部(図示せず)を介して直流電源(図示せず)から所定の電圧が印加されると,吸着対象物である基板(図示せず)との間にクーロン力が発生し,吸着対象物である基板(図示せず)を基体21の載置面に吸着保持する。吸着保持力は,電極22に印加される電圧が高いほど強くなる。電極22は,単極形状でも,双極形状でも構わない。電極22の材料としては,例えば,タングステン,モリブデン等を用いることができる。
【0018】
発熱体23は,基体21の裏面(載置面の反対面)に所定のパターンで直接形成されている。発熱体23は,基板温調固定装置10の外部から電圧を印加されることで発熱し,基体21の載置面が所定の温度となるように加熱する。発熱体23は,例えば,基体21の載置面の温度を250℃~300℃程度まで加熱することができる。
【0019】
発熱体23の材料としては,例えば,銅(Cu)やタングステン(W),ニッケル(Ni)等を用いることができる。発熱体23の厚さは,例えば,5~30μm程度とすることができる。なお,発熱体23を基体21の裏面に直接形成することの効果については,後述する。
【0020】
耐熱層24は,発熱体23を覆うように,基体21の裏面に形成されている絶縁層である。耐熱層24の材料としては,耐熱性(例えば,300℃以上)及び絶縁性に優れた材料を選定することが好ましく,例えば,ポリイミド等の絶縁性樹脂,低融点ガラス,アルミナ,シリカ等の無機系材料をベースにした無機接着材等を用いることができる。耐熱層24の熱膨張率は,基体21の熱膨張率と同程度であることが好ましい。耐熱層24の厚
さは,例えば,30~200μm程度とすることができる。
【0021】
このように,耐熱層24に耐熱温度の高い材料(発熱体23の最高温度に耐える材料)を選定することにより,耐熱層24が発熱体23の最高温度に耐えることが可能になると共に,発熱体23の温度が接着層31及び断熱層32に伝わり難くなる。そのため,接着層31及び断熱層32の材料選定の自由度を向上することが可能となり,例えば,接着層31及び断熱層32には耐熱温度の低い材料(例えば,150℃程度)を選定することができる。
【0022】
接着層31は,静電チャック20をベースプレート40上に固定するために設けられている。接着層31は,静電チャック20の基体21とベースプレート40との熱膨張率差に起因して生じる応力を緩和することができる。接着層31の材料としては,柔軟性に優れた材料を選定することが好ましく,例えば,シリコーン等の絶縁性樹脂を用いることができる。接着層31はフィラーを含有してもよいが,フィラーの含有量が少ない方が柔軟性を向上しやすい。接着層31の厚さは,例えば,50~500μm程度とすることができる。
【0023】
断熱層32は,発熱体23の発した熱がベースプレート40側に逃げることを防止するために設けられている。断熱層32の材料としては,例えば,フィラーを含有したシリコーン等の絶縁性樹脂を用いることができる。断熱層32において,フィラーの含有量を増やすことにより,断熱性を向上することができる。断熱層32の厚さは,所定の断熱性を有する程度に厚くすることが好ましく,例えば,500~2000μm程度とすることができる。なお,接着層31と断熱層32とに,同一の絶縁性樹脂を用いる必要はない。
【0024】
ベースプレート40は,静電チャック20を支持するための部材である。ベースプレート40の材料としては,例えば,アルミニウム(Al)等を用いることができる。ベースプレート40がAlである場合には,その表面にアルマイト層(硬質の絶縁層)を形成しても構わない。ベースプレート40には,水路(図示せず)が設けられており,基体21の温度制御を行う。
【0025】
水路(図示せず)は,基板温調固定装置10の外部に設けられた冷却水制御装置(図示せず)に接続されている。冷却水制御装置(図示せず)は,冷却水を水路(図示せず)に循環させる。冷却水を循環させベースプレート40を冷却することで,接着層31及び断熱層32を介して基体21を冷却できる。
【0026】
基体21やベースプレート40の内部に,ガス流路(図示せず)を設けてもよい。基板温調固定装置10の外部に設けられたガス圧力制御装置(図示せず)からガス流路(図示せず)に不活性ガス(例えば,HeやAr等)を注入して,基体21の載置面と基板(図示せず)との間に形成された空間に充填する。充填された不活性ガスは,基体21と基板(図示せず)との間の熱伝導性を向上させ,基板(図示せず)の温度の均一化を図ることができる。
【0027】
[基板温調固定装置の製造方法]
次に,第1の実施の形態に係る基板温調固定装置の製造方法について説明する。図2~図5は,第1の実施の形態に係る基板温調固定装置の製造工程を例示する図である。なお,図3及び図4は,便宜上,図1とは上下が反転した状態で描かれている。
(中略)
【0035】
次に,図5に示す工程では,図2に示す構造体の断熱層32上に接着層31を形成し,接着層31を硬化させる前に,接着層31上に静電チャック20を搭載する。その後,必要に応じて静電チャック20をベースプレート40側に押圧しつつ,接着層31を硬化温度以上に加熱して硬化させる。これにより,図1に示す基板温調固定装置10が完成する。
【0036】
接着層31を形成するには,図2に示す工程と同様に,フィルム状の材料をラミネートしてもよいし,液状又はペースト状の材料を塗布してもよい。接着層31の材料としては,例えば,シリコーン等の絶縁性樹脂を用いることができる。接着層31の厚さは,例えば,50~500μm程度とすることができる。なお,接着層31は,硬化後にも柔軟性を有している。」
「【0049】
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態では,第1の実施の形態とは接着層の構造が異なる基板温調固定装置の他の例を示す。なお,第3の実施の形態において,既に説明した実施の形態と同一構成部品についての説明は省略する。
【0050】
図8は,第3の実施の形態に係る基板温調固定装置を簡略化して例示する断面図である。図8を参照するに,基板温調固定装置10Bは,接着層31と断熱層32が接着層33に置換された点が基板温調固定装置10(図1参照)と相違する。
【0051】
接着層33は,1つの層のみから構成されている。前述のように,接着層31と断熱層32とに同一の絶縁性樹脂を用いる必要はないが,接着層31と断熱層32とにフィラーの含有量の異なる同一の絶縁性樹脂を用いることもできる。
【0052】
そこで,基板温調固定装置の接着層に要求される柔軟性及び断熱性の仕様によっては,フィラーの含有量を調整した1つの層のみから構成された接着層を用いることができる。例えば,接着層33としては,所定量のフィラーを含有するシリコーン樹脂等を用いることができる。
【0053】
このように,要求仕様によっては,第1の実施の形態の接着層と断熱層の両方の機能を適度に備えた1層のみから構成された接着層を用いてもよく,この場合にも第1の実施の形態と同様の効果を奏する。」
(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には「第3の実施の形態」として,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ベースプレートと,
ベースプレートの上方に配置された発熱体を覆う耐熱層と,
耐熱層の上方に配置され,電極を内蔵する基体と,
基体と耐熱層との間に積層された接着層をさらに含み,
接着層は,1つの層のみから構成され,
接着層を形成するには,フィルム状の材料をラミネートする,
基板温調固定装置。」
2 引用文献Aの記載
当審拒絶理由に引用された引用文献Aには,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0036】
[実施例1]
第1実施形態のウエハ載置装置20に相当する一具体例を以下の手順により作製した。まず,静電チャック22を次のようにして作製した。すなわち,窒化アルミニウム粉末を径380mm,厚さ5mmに一軸成形し,その上にモリブデン製メッシュ(径292mm)からなる内部電極28を設置し,さらにその上から窒化アルミニウム粉末を載せて成形し,全厚25mmの成形体を得た。これを一軸ホットプレス焼成炉内に黒鉛冶具とともに設置し,窒素雰囲気中,1850℃で1トンの圧力をかけて2時間焼成し,内部電極28を埋設した焼結体を得た。この焼結体を研削加工することにより静電チャック22を得た。なお,研削加工時に,内部電極28からウエハ載置面24までの厚みが1mm,ウエハ載置面24の直径が298mm,段差部26からウエハ載置面24までの高さが4mm,段差部26を含む焼結体の直径が376mm,底面から段差部26までの高さが4mm,焼結体の全厚が8mmとなるようにした。この静電チャック22のウエハ載置面24とは反対側の面から内部電極28に達する孔を穿孔し,その孔に内部電極28と接続する導電部材をロウ付けにより接合した。なお,図1~図7にはこうした導電部材の図示を省略した。
【0037】
冷却板40は,アルミニウム合金製で全厚が20mm,フランジ部44の厚みが12mm,冷却板本体42の直径(静電チャック22との接合面の直径)が376mm,フランジ部44を含めた直径が416mmで,PCD(ピッチ・サークル・ダイアミタ)が370mmの位置に等間隔で12個の直径2mmの貫通孔(冷却用ガス通路50の第1通路51)を有し,冷媒通路46が内蔵されたものを用いた。また,保護リング30は,シリコン金属製で外径が385mm,リング本体32の内径及び厚みがそれぞれ299mm及び5mm,スカート部34の内径及び高さが377mm及び12mmのものを用いた。なお,図1及び図2の保護リング30には切欠溝32aが形成されているが,実施例1では切欠溝32aの外径は301mmで深さ1.2mmとした。接着シート47は,シリコーン樹脂製で,外径が364mm,厚みが0.78mmのものを用いた。
【0038】
そして,冷却板40と静電チャック22とを接着シート47を用いて接合した。接合時,3者が同軸上に並ぶようにした。これにより,静電チャック22の外周縁(径376mmの円)から内側へ6mmの幅でリング状の外周領域48(=第2通路52)が形成された。この外周領域48には,冷却板40のPCD370mm上に等間隔に設けられた12個の貫通孔(=第1通路51)から冷却用ガスが導入される。最後に,静電チャック22の段差部26に保護リング30のリング本体32の裏面を載置し,実施例1のウエハ載置装置を得た。」
3 引用文献2の記載
原査定に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0003】
【従来の技術】人工衛星または宇宙探査機などのスペースクラフトは,飛行中に,アルベド,地球からの赤外線束,太陽線束などの外部熱線束にさらされる。
【0004】これらの外部熱線束からスペースクラフトに搭載された装備を保護するために,スペースクラフト構造の外面の大部分を断熱材で被覆するのが普通である。通常「超断熱材(super isolation)」と称されているこの材料は,一般に,カプトン(Kapton)(商標)等の断熱プラスチック材シートの積層として構成される。」「【0027】
【発明の実施の形態】図1は,衛星などのスペースクラフト11の外部構造をなすパネル10の一部を示している。パネル10は通常,その各面が外皮10b,10cで被覆されたハニカム構造のコア10a(図2)を含むサンドイッチパネル形をしている。変形実施形態では,ハニカム構造のコア10aをセルラーフォームコアに代えることができる。パネル10の外皮10b,10cとコア10aは,たとえばアルミニウム製である。
【0028】操作時に熱を発散可能な設備12は,パネル10の内面14に固定される。パネル10に設備12を固定するために使用される手段は,当業者にとって周知であり,本発明の一部をなさない。簡略化するため,この手段は図示しない。
【0029】図1および図2で概略的に示したように,パネル10は,その外面18の大部分が,「超断熱材」と一般に称される断熱材16で被覆されている。既に述べたように,超断熱材16は,カプトン(商標)等の断熱プラスチック材からなる多数のシートまたはフィルムを積み重ねて構成される。パネル10の外面18に超断熱材16を固定するために用いられる手段は,当業者にとって周知であり,本発明の一部をなさない。従って,理解を容易にするために,この手段は図示しない。」
4 引用文献3の記載
原査定に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
「技術分野
[0001] 本願の第一の発明は,無機物からなる基板とポリイミドフィルムから構成されてなる積層体の製造などに使用されるポリイミドフィルムとその製造方法であり,更に詳しくは,半導体素子,MEMS素子,ディスプレイ素子など薄膜からなり,微細な加工が必要となるデバイスを,ポリイミドフィルム表面に形成するにあたり,一時的ないし半永久的に,ポリイミドフィルムを支持体となる無機物からなる基板に貼り合わせた積層体などを得るためのポリイミドフィルムとその製造方法である。
好ましくは,線膨張係数が低めの特定範囲にある,耐熱性と絶縁性に優れた薄いポリイミドなどのフィルムと,それとほぼ同程度の線膨張係数を有するガラス板,セラミック板,シリコンウエハ,金属から選ばれた一種の無機物からなる基板とが積層された寸法安定性と耐熱性と絶縁性に優れた積層体およびこれを利用した,半導体素子が形成された半導体付加積層体などを得るためのポリイミドフィルムとその製造方法に関するものである。
より好ましくは,無機化合物又は有機化合物からなる微粒子などの滑材の含有量を表裏で異なるように規制した,滑り性のある易滑性でかつ一方の面が極めて平滑な多層ポリイミドフィルムを使用して製造された特殊ポリイミドフィルムに関し,銅張積層基板,回路基板などに有効に使用できる多層ポリイミドフィルムに関するものである。」
「[0033] 本発明におけるポリイミドフィルムを無機層に重ね合わせて,接合して積層する際に好ましく使用される加圧加熱処理とはプレス,ラミネート,ロールラミネートを指し,それぞれ温度を加えながら行なうもので,望ましくは真空中でこれらの操作を行なうものである。真空中でのプレス例えば井元製作所製11FDでのプレス,真空にしてロール式のフィルムラミネーターあるいは真空にした後に薄いゴム膜によりガラス全面に一度に圧力を加えることに出来るフィルムラミネーター例えば名機製作所MVLPによる真空ラミネートといった方式が使える。」
5 引用文献4の記載
原査定に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0064】
(第4の実施の形態)
前述した第1~第3実施形態では,ウェハを冷却するタイプの静電チャックについて説明しており,その場合は伝熱用ガスが冷却用ガスとして機能する。図8に示すように,ベースプレート20の内部に,冷却水路22の代わりに加熱機構としてヒータ電極24を設けることにより,ウェハを加熱するタイプの静電チャック1cとしてもよい。」
第6 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
ア 引用発明の「ベースプレート」は,本願発明の「チャックベース」に相当する。
イ 引用発明の「発熱体を覆う耐熱層」は,「発熱体」と相まって「静電チャック」を構成するもの(前記第5の1(1)【0014】)であり「発熱体」を覆って「層」とするものであるから,本願発明の「ヒータ」に相当する。
ウ 引用発明の「電極を内蔵する基体」は,「誘電体であり」(同【0015】),その「電極」は「クーロン力が発生」するもの(同【0017】)であるから,本願発明の「内部に静電引力を発生するための電極が設置されている絶縁層」に相当する。
エ 引用発明の「基体と耐熱層との間に積層された接着層」は「フィルム状の材料をラミネート」して形成され,「断熱層」の機能を備える(同【0053】)から,本願発明の「前記チャックベースと前記ヒータとの間に積層されて断熱層を構成する断熱層シート材」に相当する。
オ 引用発明の「基板温調固定装置」は,本願発明の「静電チャック」に相当する。
カ すると,本願発明と引用発明とは,下記キの点で一致し,下記クの点で相違する。
キ 一致点
「チャックベースと,
チャックベースの上方に配置されたヒータと,
前記ヒータの上方に設置され,内部に静電引力を発生するための電極が設置されている絶縁層と,を備える静電チャックであって,
前記チャックベースと前記ヒータとの間に積層されて断熱層を構成する断熱層シート材をさらに含む,
ことを特徴とする静電チャック。」
ク 相違点
(ア)相違点1
本願発明では「前記断熱層シート材は,個別に予め製造された断熱層シート材であ」るのに対し,引用発明ではこの旨の明示がない点。
(イ)相違点2
本願発明では「前記断熱層シート材が複数層の断熱フィルムを含む」のに対し,引用発明では「接着層は,1つの層のみから構成され」る点。
(2)判断
相違点2について検討すると,引用発明では「接着層は,1つの層のみから構成される」ところ,これを「複数層の断熱フィルムを含む」ものとすることは,以下の理由で,動機づけを欠く。
引用発明の「接着層」は「接着層と断熱層の両方の機能を適度に備え」(前記第5の1(1)【0053】),「断熱層の厚さは,所定の断熱性を有する程度に厚くする」(同【0023】)ものであり,「冷却水を循環させベースプレートを冷却することで,断熱層を介して基体を冷却」する(同【0025】)ものであって,断熱性が高すぎると断熱層を介して基体を冷却することができなくなるから,適度の断熱性を有するものである。
引用発明の「接着層」を「複数層の断熱フィルムを含む」ものとすると,前記の点に鑑みて,断熱性が高くなりすぎるから,そのようにすることは,動機づけられないというべきである。
なお,引用文献2(前記第5の3)には「多数のシート又はフィルムを積み重ねて構成される」「超断熱材」が開示されているが,これは「スペースクラフト構造の外面を被覆する」ものであり,過酷な宇宙空間で用いられ超断熱性が要求されるものであるから,前記の点に鑑みて,引用発明に採用する動機づけに欠けるというべきである。
また,引用文献3(前記第5の4)には「線膨張係数が低めの特定範囲にある,耐熱性と絶縁性に優れた薄いポリイミドなどのフィルム」である「多層ポリイミドフィルム」が開示されているが,この「多層ポリイミドフィルム」が適度の断熱性を有するかどうかは不明であり,やはり,引用発明に採用する動機づけに欠ける。
その他,引用文献1,A,4には,「接着層は,1つの層のみから構成される」ところ,これを「複数層の断熱フィルムを含む」ものとすることに関して,記載も示唆もない。
(3)まとめ
よって,相違点1について検討するまでもなく,本願発明1は,引用文献1,A,2ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2ないし13について
本願発明2ないし13は,本願発明1を直接又は間接に引用するものであり,本願発明1の発明特定事項をすべて備え,さらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記1と同様の理由により,引用文献1,A,2ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第7 原査定についての判断
前記第6のとおり,本願発明1ないし13は,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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2018-002185