特許無効審判
2017-800151
被覆ケーブルの被覆剥離装置
- 審判番号
- 2017-800151
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2012-279240
- 登録番号
- 特許第5699121号(P5699121)
- 請求日
- 2017年12月13日
- 審決日
- 2019年04月09日
- 公報発行日
- 2019年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大川三基 株式会社
- 【請求人代理人】福井 仁
- 【請求人代理人】成生 憲治
- 【被請求人】株式会社 MKエレクトロニクス
- 【被請求人代理人】中川 邦雄
- 審判長/審判官
- 審判長 飯田 清司
- 審判官 加藤 浩一
- 審判官 深沢 正志
- 分類
- P1113.121-YAA(H02G) / P1113.152-YAA(H02G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第126条第6項、特許法第134条の2第1項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第126条第7項、特許法第123条第1項第6号、特許法第134条の2、特許法第29条第1項、特許法第134条の2第3項、特許法第126条第4項、特許法第123条第1項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5699121号発明「被覆ケーブルの被覆剥離装置」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5699121号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-3〕,4,5について訂正することを認める。
本件審判の請求は,成り立たない。
審判費用は,請求人の負担とする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第5699121号についての手続の経緯の概要は,以下のとおりである。
特許出願(特願2012-279240号)
出願日 平成24年12月21日
出願審査請求書 平成26年 7月29日
拒絶理由通知書(発送日) 平成26年10月15日
手続補正書・意見書 平成26年11月 7日
最後の拒絶理由通知書(発送日) 平成26年11月25日
手続補正書・意見書 平成27年 1月21日
特許査定(発送日) 平成27年 2月 5日
登録日 平成27年 2月20日
無効審判請求 平成29年12月13日付け
手続補正書(審判請求書) 平成30年 2月21日付け
被請求人:審判事件答弁書 平成30年 5月 1日付け
被請求人:訂正請求書 平成30年 5月 1日付け
被請求人:手続補正書(訂正請求書)平成30年 6月10日付け
審尋 平成30年 6月21日付け
請求人:回答書 平成30年 7月 9日付け
請求人:審判事件弁駁書 平成30年 7月19日付け
審理事項通知書 平成30年 8月 9日付け
請求人 :口頭審理陳述要領書 平成30年 9月28日付け
被請求人:口頭審理陳述要領書 平成30年 9月28日付け
被請求人:口頭審理陳述要領書(2)平成30年10月12日付け
口頭審理 平成30年10月12日
被請求人:上申書 平成30年10月26日付け
請求人 :上申書 平成30年11月 9日付け
請求人 :上申書 平成30年11月12日付け
審尋 平成30年11月15日付け
請求人:回答書 平成30年12月 4日付け
請求人:手続補正書(回答書) 平成30年12月21日付け
審尋 平成30年12月27日付け
被請求人:回答書 平成31年 1月21日付け
第2 訂正の請求について
1 訂正請求の内容
本件審判の手続において,被請求人より平成30年5月1日付けで提出され,平成30年6月10日付けで補正された訂正請求書で,特許権者が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は,以下のとおりである。
(1)一群の請求項1ないし3に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載されている「斜めのガイド孔」を,「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2,3も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に記載されている「前記貫通孔に位置する腕部」を,「前記貫通孔に位置し前記被膜ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2,3も同様に訂正する)。
ウ 訂正事項3
明細書段落0012の(1)について,訂正後の請求項1の記載に整合させる訂正をする((1)の記載を引用する(2),(3)も同様に訂正する)。
(2)請求項4に係る訂正
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に記載されている「斜めのガイド孔」を,「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に記載されている「前記貫通孔に位置する腕部」を,「前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」に訂正する。
カ 訂正事項6
明細書段落0012の(4)について,訂正後の請求項4の記載に整合させる訂正をする。
(3)請求項5に係る訂正
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5に記載されている「斜めのガイド孔」を,「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」に訂正する。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項5に記載されている「前記貫通孔に位置する腕部」を,「前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」に訂正する。
ケ 訂正事項9
明細書段落0012の(5)について,訂正後の請求項5の記載に整合させる訂正をする。
2 訂正の適否の判断
2-1 請求項1ないし3に係る訂正
(1)訂正事項1について
a.訂正の目的について
訂正後の請求項1は,「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」との記載により,訂正前の請求項1に係る発明における「斜めのガイド孔」の形状をより具体的に特定し,更に限定するものである。
すなわち,訂正事項1は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである(訂正後の請求項2,3も同様である)。
b.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記aの理由から明らかなように,訂正事項1は,「斜めのガイド孔」という発明特定事項を概念的により下位の「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」にするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
すなわち,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである(訂正後の請求項2,3も同様である)。
c.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」と,明示的に明細書にその表現はないが,図7-8,11-12,17-19には,「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」が明確に開示されている。
したがって,当該訂正事項1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである(訂正後の請求項2,3も同様である)。
d.特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許無効審判事件においては,訂正前の請求項1~5について無効審判の請求の対象とされているので,訂正前の請求項1~3に係る訂正事項1に関して,特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2について
a.訂正の目的について
訂正後の請求項1は,「前記貫通孔に位置し前記被膜ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」との記載により,訂正前の請求項1に係る発明における「前記貫通孔に位置する腕部」の形状をより具体的に特定し,更に限定するものである。
すなわち,訂正事項2は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである(訂正後の請求項2,3も同様である)。
b.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記aの理由から明らかなように,訂正事項2は,「前記貫通孔に位置する腕部」という発明特定事項を概念的により下位の「前記貫通孔に位置し前記被膜ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」にするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
すなわち,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである(訂正後の請求項2,3も同様である)。
c.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
「前記被膜ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」と,明示的に明細書にその表現はないが,図7-8,11-12,17-19には,「前記被膜ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」が明確に開示されている。
したがって,当該訂正事項2は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである(訂正後の請求項2,3も同様である)。
d.特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許無効審判事件においては,訂正前の請求項1~5について無効審判の請求の対象とされているので,訂正前の請求項1~3に係る訂正事項2に関して,特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3について
a.訂正の目的について
訂正事項3は,明細書の記載を,訂正後の請求項1~3の記載に単に整合させる訂正であるので,特許法第134条の2ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b.その他訂正要件について
訂正事項3は,明細書の記載を,訂正後の請求項1~3の記載に整合させただけであるので,上記(1),(2)と同じく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正でなく,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項及び第5項に適合するものである。
c.明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項3は,一群の請求項1~3について行うものである。
したがって,訂正事項3は,特許法第134条の2第9項で準用する同条第126条第4項に適合するものである。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項2及び3は,訂正前の請求項1を引用していることから,訂正前の請求項1~3は一群の請求項である。
また,訂正事項3は,願書に添付した明細書の段落【0012】の訂正を含むところ,段落【0012】には,請求項1~3に対応する内容が記載されている。
したがって,訂正事項1~3は,一群の請求項ごとにされており,特許法第134条の2第3項の規定に適合する。
2-2 請求項4に係る訂正
(1)訂正事項4について
a.訂正の目的について
訂正後の請求項4は,「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」との記載により,訂正前の請求項4に係る発明における「斜めのガイド孔」の形状をより具体的に特定し,更に限定するものである。
すなわち,訂正事項4は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記aの理由から明らかなように,訂正事項4は,「斜めのガイド孔」という発明特定事項を概念的により下位の「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」にするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
すなわち,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
c.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」と,明示的に明細書にその表現はないが,図7-8,11-12,17-19には,「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」が明確に開示されている。
したがって,当該訂正事項4は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
d.特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許無効審判事件においては,訂正前の請求項1~5について無効審判の請求の対象とされているので,訂正前の請求項4に係る訂正事項4に関して,特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項5について
a.訂正の目的について
訂正後の請求項4は,「前記貫通孔に位置し前記被膜ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」との記載により,訂正前の請求項4に係る発明における「前記貫通孔に位置する腕部」の形状をより具体的に特定し,更に限定するものである。
すなわち,訂正事項5は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記aの理由から明らかなように,訂正事項5は,「前記貫通孔に位置する腕部」という発明特定事項を概念的により下位の「前記貫通孔に位置し前記被膜ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」にするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
すなわち,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
c.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
「前記被膜ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」と,明示的に明細書にその表現はないが,図7-8,11-12,17-19には,「前記被膜ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」が明確に開示されている。
したがって,当該訂正事項5は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
d.特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許無効審判事件においては,訂正前の請求項1~5について無効審判の請求の対象とされているので,訂正前の請求項4に係る訂正事項5に関して,特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項6について
a.訂正の目的について
訂正事項6は,明細書の記載を,訂正後の請求項4の記載に単に整合させる訂正であるので,特許法第134条の2ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b.その他訂正要件について
訂正事項6は,明細書の記載を,訂正後の請求項4の記載に整合させただけであるので,上記(1),(2)と同じく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正でなく,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項及び第5項に適合するものである。
c.明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項6は,請求項4について行うものである。
したがって,訂正事項6は,特許法第134条の2第9項で準用する同条第126条第4項に適合するものである。
2-3 請求項5に係る訂正
(1)訂正事項7について
a.訂正の目的について
訂正後の請求項5は,「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」との記載により,訂正前の請求項5に係る発明における「斜めのガイド孔」の形状をより具体的に特定し,更に限定するものである。
すなわち,訂正事項7は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記aの理由から明らかなように,訂正事項7は,「斜めのガイド孔」という発明特定事項を概念的により下位の「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」にするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
すなわち,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
c.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」と,明示的に明細書にその表現はないが,図7-8,11-12,17-19には,「斜めの角度一定で閉じたガイド孔」が明確に開示されている。
したがって,当該訂正事項7は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
d.特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許無効審判事件においては,訂正前の請求項1~5について無効審判の請求の対象とされているので,訂正前の請求項5に係る訂正事項7に関して,特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項8について
a.訂正の目的について
訂正後の請求項5は,「前記貫通孔に位置し前記被膜ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」との記載により,訂正前の請求項5に係る発明における「前記貫通孔に位置する腕部」の形状をより具体的に特定し,更に限定するものである。
すなわち,訂正事項8は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記aの理由から明らかなように,訂正事項8は,「前記貫通孔に位置する腕部」という発明特定事項を概念的により下位の「前記貫通孔に位置し前記被膜ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」にするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
すなわち,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
c.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
「前記被膜ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」と,明示的に明細書にその表現はないが,図7-8,11-12,17-19には,「前記被膜ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部」が明確に開示されている。
したがって,当該訂正事項8は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
d.特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許無効審判事件においては,訂正前の請求項1~5について無効審判の請求の対象とされているので,訂正前の請求項5に係る訂正事項8に関して,特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項9について
a.訂正の目的について
訂正事項9は,明細書の記載を,訂正後の請求項5の記載に単に整合させる訂正であるので,特許法第134条の2ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b.その他訂正要件について
訂正事項9は,明細書の記載を,訂正後の請求項5の記載に整合させただけであるので,上記(1),(2)と同じく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正でなく,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項及び第5項に適合するものである。
c.明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項9は,請求項5について行うものである。
したがって,本件請求は,特許法第134条の2第9項で準用する同条第126条第4項に適合するものである。
3 むすび
本件訂正のうち訂正事項1,2,4,5,7及び8は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するので,訂正後の請求項〔1~3〕,4,5について訂正を認める。
本件訂正のうち訂正事項3,6及び9は,特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する特許法第126条第4項,第5項及び第6項に適合するので,訂正後の明細書について訂正を認める。
第3 本件訂正発明
上記第2より,本件特許5699121号の請求項1ないし5に係る発明(以下「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明5」という。)は,次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】
芯材の外周を被覆した被覆ケーブルの前記被覆を回転する複数枚の刃で輪切りに切断し前記被覆ケーブルから切断した被覆を前記被覆ケーブルの長手方向に移動させ前記芯材を露出させる被覆ケーブルの被覆剥離装置であって,
中心に前記被覆ケーブルを挿通する穴及び外側に前記刃と同数の貫通孔を有する回転体,及び前記回転体に連設し前記刃を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する刃スライド保持部よりなる刃部回転機構と,
前記被覆ケーブルの長手方向に直交する方向の同一面に等間隔で配置され前記被覆ケーブル中心方向にスライドしつつ前記同一面で回転することで前記被覆を輪切りに切断する複数の刃,前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部よりなる回転刃部と,
前記ドーナツ部を前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向に直動させる刃部直動機構と,
前記被覆ケーブルの端部を当接させて前記刃による前記被覆のカット位置を決めるストッパと,
からなり,
前記被覆ケーブルの端部を前記ストッパに当接した上で前記被覆ケーブルを固定し,
前記刃部直動機構で前記ドーナツ部を前記回転体方向である前方にデジタル制御で直動させることで前記刃を前記スライド溝に沿って前記被覆ケーブル中心方向にスライドさせつつ回転する前記刃の刃先で形成される内接円の径を前記直動で任意の大きさにデジタル制御し,
前記刃部回転機構を回転させることで前記被覆ケーブルの被覆を前記複数の刃で輪切りに切断し,
前記刃部回転機構及び回転刃部を前記直動方向と逆向きに後退させることで切断された被覆を前記刃の刃先に係止して前記被覆ケーブルの長手方向に移動させ前記芯材を露出させることを特徴とする
被覆ケーブルの被覆剥離装置。
【請求項2】
前記複数の刃を3枚又は4枚とし,かつ前記刃の刃先の一端部又は両端部を切り欠きとしたことを特徴とする請求項1に記載の被覆ケーブルの被覆剥離装置。
【請求項3】
前記複数の刃を,
一方の面に刃先に向け傾斜面を備える板刃を前記被覆ケーブルを挟み刃先が対向する2枚で一組の板刃で,2組の計4枚とし,異なる組の板刃は,90度回転した位置で,他方の組の平坦面同士が向き合う位置に配置され,前記スライド溝にスライド可能に保持されたことを特徴とする請求項1に記載の被覆ケーブルの被覆剥離装置。
【請求項4】
被覆ケーブルを固定した上で,前記被覆ケーブルの長手方向と直交する同一面に等間隔で配置した複数の刃を,
前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向のデジタル制御による直動で前記被覆ケーブルの中心に向けスライドさせつつ回転させ,
前記被覆ケーブルの被覆を前記刃の回転で輪切りに切断し,
前記直動方向と逆向きに前記刃を後退させることで,
切断された被覆を前記刃の刃先に係止して前記被覆ケーブルの長手方向に移動させ,
前記被覆ケーブルの芯材を露出させる被覆ケーブルの被覆剥離方法であって,
中心に前記被覆ケーブルを挿通する穴及び外側に前記刃と同数の貫通孔を有する回転体,及び前記回転体に連設し前記刃を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する刃スライド保持部よりなる刃部回転機構と,
前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部よりなる回転刃部とを備えた被覆ケーブルの被覆剥装置によって,
前記刃部回転機構及び前記回転刃部の回転及び前記回転刃部の直動によってスライドするとともに回転する前記刃の刃先で形成される内接円の径を前記直動で任意の大きさにデジタル制御することを特徴とする
被覆ケーブルの被覆剥離方法。
【請求項5】
被覆ケーブルを固定した上で,前記被覆ケーブルの長手方向と直交する同一面に等間隔で配置した複数の刃を,前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向のデジタル制御による直動で前記被覆ケーブルの中心に向けスライドさせつつ回転させ,前記被覆ケーブルの被覆を前記刃の回転で輪切りに切断し,前記直動方向と逆向きに前記刃を後退させることで,切断された被覆を前記刃の刃先に係止して前記被覆ケーブルの長手方向に移動させ,前記被覆ケーブルの芯材を露出させる被覆ケーブルの被覆剥装置であって,
中心に前記被覆ケーブルを挿通する穴及び外側に前記刃と同数の貫通孔を有する回転体,及び前記回転体に連設し前記刃を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する刃スライド保持部よりなる刃部回転機構を備え,
前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部よりなる回転刃部の回転及び直動によってスライドするとともに回転する前記刃の刃先で形成される内接円の径を前記直動で任意の大きさにデジタル制御することを特徴とする
被覆ケーブルの被覆剥離装置。」
第4 請求人の主張
1 これに対して,請求人は,「1 特許第5699121号発明の特許請求の範囲の請求項1から請求項5に記載された発明についての特許を無効とする。2 審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」との審決を求め,証拠方法として,審判請求書に添付して,以下の甲第1号証-甲第9号証(枝番を含む。以下同じ。)を,平成30年12月4日付けの回答書に添付して,以下の甲第10号証-甲第12号証を提出している。
なお,平成30年9月28日付け口頭審理陳述要領書と同時に提出された甲第8号証は,口頭審理において参考資料とされた。
・甲第1号証:大川三基株式会社「回転式端末剥離機 ワイヤー・スキン・マシン KIND2-80型 設計図面」
・甲第2号証の1:電子メール「クランプ,アーム構想図」(件名)
・甲第2号証の2:電子メール「KIND2-80クランプ構想図」(件名)
・甲第2号証の3:電子メール「KIND2-80クランプ構想II」(件名)
・甲第2号証の4:電子メール「KIND2-80クランプ構想III」(件名)
・甲第2号証の5:電子メール「KIND2-80図面」(件名)
・甲第2号証の6:電子メール「KIND2-80図面」(件名)
・甲第2号証の7:電子メール「KIND2-80図面」(件名)
・甲第2号証の8:電子メール「KIND2-80突当ユニット変更構想」(件名)
・甲第2号証の9:電子メール「KIND2-80ABCDE製作図」(件名)
・甲第2号証の10:電子メール「KIND2-80C,D,E製作図」(件名)
・甲第2号証の11:電子メール「KIND2-80 11月変更分」(件名)
・甲第3号証:「電気と工事」2011年6月号,特別企画
・甲第4号証の1:電子メール「電設工業展フォローの件」(件名)
・甲第4号証の2:カタログご請求リスト(ワゴジャパン株式会社)
・甲第4号証の3:カタログご請求リスト(株式会社田島工務店)
・甲第4号証の4:カタログご請求リスト(日新電工株式会社)
・甲第4号証の5:カタログご請求リスト(津田特殊電機株式会社)
・甲第4号証の6:カタログご請求リスト(日新電機株式会社)
・甲第4号証の7:カタログご請求リスト(東急テクノシステム株式会社)
・甲第4号証の8:カタログご請求リスト(JA熊本果実連)
・甲第4号証の9:カタログご請求リスト(タイコエレクトリックジャパン合同会社)
・甲第4号証の10:カタログご請求リスト(株式会社TJMデザイン(田島グループ))
・甲第4号証の11:カタログご請求リスト(株式会社エーデン)
・甲第4号証の12:カタログご請求リスト(愛光電気株式会社)
・甲第4号証の13:カタログご請求リスト(有限会社送電テクノス)
・甲第4号証の14:カタログご請求リスト(七星科学研究所)
・甲第4号証の15:カタログご請求リスト(株式会社正興電機製作所)
・甲第4号証の16:カタログご請求リスト(オリエンタルモーター株式会社)
・甲第4号証の17:カタログご請求リスト(株式会社レント(レンタル業者))
・甲第4号証の18:カタログご請求リスト(中立電機株式会社)
・甲第4号証の19:カタログご請求リスト(樋野電機工業有限会社)
・甲第4号証の20:カタログご請求リスト(株式会社豊電子工業)
・甲第4号証の21:カタログご請求リスト(東日本旅客鉄道株式会)
・甲第4号証の22:カタログご請求リスト(株式会社協和エクシオ)
・甲第4号証の23:カタログご請求リスト(パナソニック電工電路株式会社)
・甲第4号証の24:カタログご請求リスト(株式会社Mahina)
・甲第5号証の1:注文書
・甲第5号証の2:注文書
・甲第5号証の3:注文書
・甲第5号証の4:注文書
・甲第5号証の5:注文書
・甲第5号証の6:注文書
・甲第5号証の7:設備納品書 兼 請求書(正)
・甲第5号証の8:注文書
・甲第5号証の9:納品書控え
・甲第5号証の10:納品書控え
・甲第5号証の11:納品伝票(A)
・甲第5号証の12:納品書控え
・甲第5号証の13:納品書控え
・甲第5号証の14:納品書控え
・甲第5号証の15:納品書控え
・甲第5号証の16:納品書控え
・甲第5号証の17:納品書控え
・甲第5号証の18:納品書控え
・甲第6号証:取扱説明書 ワイヤースキンマシン KIND2-80型シリーズ
・甲第7号証の1:「ロータリーストリッパーKIND 2-80型」という名称の動画を紹介するウェブサイトである「https://www.youtube.com/watch?v=5v68PuN-vhY」の画面を印刷したもの
・甲7号証の2:「ロータリーストリッパーKIND2-81」という名称の動画を紹介するウェブサイトである「https://www.youtube.com/watch?v=9IM9wVs4SQ4」の画面を印刷したもの
・甲第7号証の3:「2PNCT電線加工試験」という名称の動画を紹介するウェブサイトである「https://www.youtube.com/watch?v=JQTx5gc6j1g」の画面を印刷したもの
・甲第8号証の1:大川三基株式会社製「ワイヤースキンKIND2-80型」設計図面の剥刃組立図
・甲第8号証の2:大川三基株式会社製「ワイヤースキンKIND2-80型」設計図面の突当ユニット組立図
・甲第9号証の1:「ロータリーストリッパーKIND2-80型」という名称の動画のデータ「KIND2-80.m4v」
・甲第9の2:「ロータリーストリッパーKIND2-81」という名称の動画のデータ「KIND2-81AIFF.m4v」
・甲第10号証:特開2000-152451号公報
・甲第11号証:津村利光・徳丸芳男(1973).機械設計1 実務出版株式会社 pp.26-29.
・甲第12号証:「HENRY T.BROWN(1896)FIVE HUNDRED AND SEVEN MECHANICAL MOVEMENTS. BROWN & SEWARD. pp.64-65.」
なお,被請求人は,甲第1号証ないし甲第6号証,甲第7号証の1,甲第7号証の2,甲第7号証の3,甲第8号証の1,甲第8号証の2,甲第9号証の1及び甲第9号証の2の成立を認めている。
2 そして,請求人が,審判請求書,審判事件弁駁書,口頭審理,上申書及び回答書において主張したことを整理すると,無効理由について,概ね次のように主張しているものと認められる。
(1)無効理由2(特許法第123条第1項第6号)の概要
本件訂正発明1~5は,甲第3号証に記載のとおり,本件訂正発明1の出願前である2011年5月25日~5月27日に開催された「2011電設工業展」の株式会社ニチフのブースにて出展された甲1発明を見学した被請求人が出願したものであり,被請求人の発明したものではなく,被請求人は,特許を受ける権利を有しない。
本件特許は,特許を受ける権利を有しない被請求人の特許出願に対してされたものであり,特許法第123条第1項第6号に該当し,本件特許は無効とすべきである。
(2)無効理由3(特許法第29条第2項)の概要
下記ア-エのとおり,本件特許の請求項1-5に係る各発明は,その出願前に日本国内において公然知られた発明であり,公然実施された発明であり,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,本件訂正発明1-5に係る発明は,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。
ア 甲第3号証,甲第4号証の1~24から,KIND2-80型が,「2011電設工業展」の株式会社ニチフのブースに出展されたことで,甲第1号証に記載された構造を有する装置に係る発明は,公然知られた発明(29条1項1号に掲げる発明)となった。
イ 甲第5号証の1ないし18,甲第6号証から,ワイヤースキンマシンKIND2-80型が,納品書記載の各社に譲渡(納品)されたことで,甲第1号証に記載された構造を有する装置に係る発明が,公然実施された発明(29条1項2号に掲げる発明)となった。
ウ 甲第7号証の1~3,甲第9号証の1,2から,KIND2-80型の動作を説明する動画が,インターネットにアップロードされたことによって,甲第1号証に記載された構造を有する装置に係る発明が,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(29条1項3号に掲げる発明)となった。
エ 本件訂正発明1~5と甲1発明とは,若干の差異はあるが,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば,甲1発明に基いて,容易に発明をすることができたものである。
なお,無効理由1(特許法第29条第1項)についての主張は,平成30年10月12日の口頭審理において取り下げられた。
第5 被請求人の主張
被請求人は,平成30年5月1日付けの審判事件答弁書によれば,「(1)本件無効審判の請求は成り立たない。(2)審判請求費用については,請求人が負担すべきものとする。との審決を求める。」との審決を求め,請求人の主張する無効理由が,訂正後の請求項1ないし5に係る発明について成り立たないと主張している。
なお,被請求人は,証拠方法として平成30年5月1日付けの審判事件答弁書に添付して乙第1号証を提出したが,前記乙第1号証は,口頭審理において取り下げられた。
また,被請求人は,証拠方法として平成31年1月21日付けの回答書に添付して,以下の乙第1号証,乙第2号証を提出し,本件特許発明のさらなる効果を主張している。
しかしながら,被請求人が,乙第1号証,乙第2号証に基づいて主張しようとする「本件特許発明(訂正後)では,ドーナツ部21における角度固定の腕部22及び穴21bを採用するため,十分な拡張空間を有するため,オプションを採用することができます。」との効果は,本件特許明細書に記載されたものではなく,しかも,乙第1号証の発行日が,平成27年10月7日(出願日:平成27年2月18日)であり,乙第2号証の発行日が,平成27年6月1日(出願日:平成27年2月10日)であって,いずれの日付も,本件特許の出願日である,平成24年12月21日よりも後の日付であることから,乙第1号証及び乙第2号証が,本件特許発明の,甲1発明に対する進歩性を肯定する根拠となり得ないことは明らかである。
したがって,乙第1号証及び乙第2号証を取り調べることが必要であるとは認められないから,特許法第151条で準用する民事訴訟法第181条第1項の規定により,乙第1号証及び乙第2号証の取り調べは行わない。
・乙第1号証:特許第5791137号公報
・乙第2号証:意匠登録第1524997号公報
第6 無効理由について
1 甲号証について
(1)甲第1号証の記載事項
ア 本件特許に係る出願前に作成された文書の写しである甲第1号証は,「回転式端末剥離機 ワイヤー・スキン・マシン KIND2-80型 設計図面」の写しであって,以下の事項が記載されていることが読み取れる。
(ア)甲第1号証の第1ページに,「回転式端末剥離機」,「ワイヤー・スキン・マシン KIND2-80型 設計図面」,「2010年6月~2010年10月」,「大川三基株式会社」の記載,並びに,「作図」欄に「佐藤」,「検図」欄に「大川」,及び,「承認」欄に「大川三基 ’10.11.08 大川」の記載がされていること。
(イ)甲第1号証第5頁の図番「80-Y01」には,以下の「剥刃組立図」が記載されている。
そして,甲第1号証の他のページの記載,及び,技術常識を参酌することで,上記「剥刃組立図」から,以下の事項を見て取ることができる。
(i)「剥刃組立図」が,「回転式端末剥離機」である「ワイヤー・スキン・マシン」における,ワイヤー,すなわち,芯材の外周を被覆した被覆ケーブルの端末から,回転式の切刃によって,前記被覆を輪切りに切断し,前記被覆ケーブルから前記切断した被覆を剥離し,前記芯材を露出させる機構の説明図であること。
(ii)「剥刃組立図」に,符号36で示される「切刃フランジ」が,中心に穴を有する回転体であること。
(iii)「剥刃組立図」に,符号44で示される「スライドベース」が,符号46で示される「切刃」を,前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有すること。
(iv)前記「スライドベース」が,前記「切刃フランジ」に連接することで,前記「切刃」を回転させる機構を構成すること。
(v)「剥刃組立図」に,符号46で示される「切刃」は4枚であって,これらは,一方の面に刃先に向け傾斜面を備える板刃を,前記被覆ケーブルを挟み刃先が対向する2枚で一組の板刃で,2組の計4枚とし,異なる組の板刃は,90度回転した位置で,他方の組の平坦面同士が向き合う位置に配置され,前記「スライドベース」のスライド溝にスライド可能に保持されており,前記被覆ケーブル中心方向にスライドしつつ同一面で回転することで前記被覆を輪切りに切断するものであること。
(vi)「剥刃組立図」に,符号42で示される「ローラ金具B」が,前記切刃の端部をスライド可能に係止するものであり,符号40で示される「切込アーム」の一方端部に形成された,一端が開放されたU字状のガイドに係合すること。
(vii)前記「切刃」,前記「ローラ金具B」,及び,前記「切込アーム」が,回転する刃部を構成すること。
(viii)「剥刃組立図」に,符号35で示される「押エリングB」が,前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向に直動することで,戻しバネユニットによって,その自由端が開径方向に付勢されている前記「切込アーム」の中間領域を押圧し,前記「切込アーム」の他端を軸として,前記自由端を閉径方向に回動させることで,前記「切刃」を,前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライドさせること。
(ix)「剥刃組立図」の,「ステッピングモーター」の駆動によって,前記「押エリングB」を前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向に直動させ,前記「押エリングB」の前記直動の距離に応じて回動する「切込アーム」の回動量の変化によって,前記「切刃」を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライドさせる距離を調整することで,前記「切刃」の刃先で形成される内接円の径を任意の大きさに制御すること。
(ウ)甲第1号証第60頁の図番「80-Y02」には,以下の「突当ユニット組立図」が記載されている。
そして,甲第1号証の他のページの記載,及び,技術常識を参酌することで,上記「突当ユニット組立図」から,以下の事項を見て取ることができる。
(i)「突当ユニット組立図」が,「回転式端末剥離機」である「ワイヤー・スキン・マシン」における,突当ユニットの説明図であること。
(ii)「突当ユニット組立図」に,符号1で示される「突当金具」が,被覆ケーブルの端部を当接させて,前記「切刃」による前記被覆のカット位置を決めるストッパであること。
(エ)甲第1号証第74頁の図番「80-Y03」は,「クランプ組立図」であって,同図から,前記被覆ケーブルを固定する機構を見て取ることができる。
イ そうすると,上記「剥刃組立図」,「突当ユニット組立図」,「クランプ組立図」及び,甲第1号証の他の図面の記載,並びに,請求人が平成30年7月9日に提出した回答書における回答から,技術常識に照らして,甲第1号証には,以下の発明(以下「甲1発明」)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
ワイヤー,すなわち,芯材の外周を被覆した被覆ケーブルの端末から,回転式の切刃によって,前記被覆を輪切りに切断し,前記被覆ケーブルから前記切断した被覆を剥離し,前記芯材を露出させる「ワイヤー・スキン・マシン」すなわち,「回転式端末剥離機」であって,
中心に穴を有する回転体である「切刃フランジ」,及び前記「切刃フランジ」に連接する「スライドベース」よりなる,前記「切刃」を回転させる機構であって,前記「スライドベース」が,前記「切刃」を,前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する機構と,
4枚の「切刃」であって,これらは,一方の面に刃先に向け傾斜面を備える板刃を,前記被覆ケーブルを挟み刃先が対向する2枚で一組の板刃で,2組の計4枚とし,異なる組の板刃は,90度回転した位置で,他方の組の平坦面同士が向き合う位置に配置され,前記「スライドベース」のスライド溝にスライド可能に保持されており,前記被覆ケーブル中心方向にスライドしつつ同一面で回転することで前記被覆を輪切りに切断するものである「切刃」,一方端部に形成された一端が開放されたU字状のガイドを有する「切込アーム」,及び前記「切刃」の端部をスライド可能に係止するものであり前記「切込アーム」の一方端部に形成された一端が開放されたU字状のガイドに係合する「ローラ金具B」よりなる回転する刃部である機構と,
戻しバネユニットによって,その自由端が開径方向に付勢されている前記「切込アーム」の中間領域を押圧し,前記「切込アーム」の他端を軸として,前記自由端を閉径方向に回動させる,前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向に直動する「押エリングB」からなる機構と,
被覆ケーブルの端部を当接させて,前記「切刃」による前記被覆のカット位置を決めるストッパである「突当金具」と,
被覆ケーブルを固定する「クランプ」と,
からなり,
「ステッピングモーター」の駆動によって,前記「押エリングB」を前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向に直動させ,前記「押エリングB」の前記直動の距離に応じて回動する「切込アーム」の回動量の変化によって,前記「切刃」を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライドさせる距離を調整することで,前記「切刃」の刃先で形成される内接円の径を任意の大きさに制御する
「回転式端末剥離機」。
(2)甲第10号証の記載事項
ア 本件特許に係る出願の出願日(以下「本件特許出願日」という。)前に頒布された刊行物である甲第10号証には,以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。以下同じ。)
「【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態の具体例を図面を用いて詳細に説明する。図1~図2は,本発明に係る電線皮剥き装置の一実施例を示すものである。この電線皮剥き装置1は,カム孔(カム部)2,3を有する一対のカッタベース4,5と,両カム孔2,3に係合する一本のピン状の移動子6を備えた軸部材7と,軸部材7に固定された電線位置決め板(電線位置決め部)8と,軸部材7を進退させるボールねじ軸9(ねじ軸)とを含むものである。
【0010】カム孔2,3は,図3にも示す如く,電線軸方向に延びる共通の真直部2a,3aと,真直部2a,3aから外向き(電線径方向)に傾斜(湾曲)して延びる傾斜部2b,3bとで構成されている。真直部2a,3aの長さは移動子6の外径よりも十分に大きく設定されている。両カム孔2,3の真直部2a,3aは上下に整合して,常に位置ずれなく貫通している。両傾斜部2b,3bは左右対称に形成されている。
【0011】一対のカッタベース4,5は板状に形成され,上下に重なって(カッタベース5が上側,カッタベース4が下側に)配置されて,左右(電線径方向)にスライド自在である。図1の皮剥きカッタ10,11の全開状態で一対のカッタベース4,5は左右にずれて位置し,全閉状態で上下に整合する。各カッタベース4,5の両側部には半円状の溝121 ,122 ,131 ,132 が形成され,カッタベース4,5の上側及び下側の支持基板14,15(図2)の何れかに,溝121 ,122 ,131 ,132 に係合するストッパピン16,17が固定されている。
【0012】各カッタベース4,5の前端側にホルダ18,19を介して皮剥きカッタ10,11が固定されている。図3の如く上側のカッタベース5のホルダ19は下寄りに,下側のカッタベース4のホルダ18は上寄りに配置され,両ホルダ18,19が左右に対向して位置する。両カッタベース4,5及び両ホルダ18,19は同一形状のものを反転して使用している。一対の皮剥きカッタ10,11の間に電線(図示せず)がセットされる。
【0013】皮剥きカッタ10,11の前方に一対の電線クランプ20,21が配置されている。一対の電線クランプ20,21は,図示しない一対のクランプベースに固定され,各クランプベースにラックが設けられ,各ラックにピニオンが歯合して,一方のクランプベースが圧力シリンダ22のロッド部23に連結されて,圧力シリンダ22の駆動で皮剥きカッタ10,11が左右に開閉する。あるいは,モータ(符号22で代用)のプーリ(符号23で代用)にベルト(図示せず)を介して左右逆ねじのボールねじ軸(図示せず)で開閉してもよい。
【0014】一対のカッタベース4,5は上下一対の支持基板14,15(図2)に挟まれるように保持されている。各支持基板14,15の前後端には位置決め用の突条24,25(図2)が対向して設けられ,各カッタベース4,5は突条24,25に沿ってカッタ開閉方向にスライド自在である。支持基板14,15は後側の環状部材26に固定されている。
【0015】移動子6は両カム孔2,3を貫通して軸部材7に固定されている。図4にも示す如く,移動子6は中央のピン6aと,ピン6aの長手方向中央に設けられたベアリング6bとで構成されている。軸部材7の先端側は略コの字状に切欠形成され,上下の壁部53,54の孔55にピン6aの上下端部が支持され,両壁部53,54の間の矩形状の切欠部52内にベアリング6bが位置し,ベアリング6bが各カッタベース4,5(図3)のカム孔2,3に回動自在に係合している。
【0016】軸部材7は本例で略長方形状に形成されている。図2の如く,軸部材7の前端には電線位置決め板8が垂直に固定されている。電線位置決め板8は長方形状に形成され,電線位置決め板8の上下両端部に電線軸方向のスライドバー28,29が固定されている。電線位置決め板8には電線の先端が当接位置決めされる。上下の支持基板14,15には,スライドバー28,29に対する筒状のガイド30,31が設けられている。電線位置決め板8は軸部材7と一体に電線軸方向に進退可能である。
【0017】図4にも示す如く,軸部材7の後端に爪状のシャンク32が設けられ,シャンク32がボールねじ軸9(図1,図2)の前端側の周溝33に係合している。ボールねじ軸9の前端の頭部は例えばベアリング(図示せず)を介してシャンク32の内側の溝56内に回動自在に支持されている。シャンク32は回動せず,ボールねじ軸9のみが回動する。ボールねじ軸9はナット部34(図1,図2)すなわち雌ねじ部材に係合すると共に軸受35で回動自在に支持され,例えばナット部34と軸受35(図2)とはケース36の内部で回動自在に連結され,ナット部34に大径のギヤ37が固定され,ギヤ37はサーボモータ38側のピニオンギヤ39に歯合している。ケース36はベースプレート40に固定されている。
【0018】ボールねじ軸9は軸方向中間部において支持具42でベースプレート40に回動自在に支持されている。ベースプレート40は電線軸方向のレール43にスライドガイド44を介してスライド自在に係合し,ベースプレート40の後端にシリンダ45のロッド46が連結されている。
【0019】サーボモータ38の駆動(正転ないし逆転)でギヤ39,37を介してナット部34が回動し,ボールねじ軸9が軸方向に移動する。それによって軸部材7が引っ張られて後退し,あるいは押されて前進する。軸部材7の後退時にピン状の移動子6が一体に軸方向に後退し,各カム孔2,3の真直部2a,3aから傾斜部2b,3bに沿って移動する。カム孔2,3は逆ハの字状になる。それによって一対のカッタベース4,5が皮剥きカッタ10,11と共に閉止方向に移動し,電線の絶縁被覆に切れ込みを入れる。シリンダ45を圧縮してロッド46を後退させることで,ベースプレート40が皮剥きカッタ10,11と一体に後退し,それにより,電線の絶縁被覆が導体部から離脱する。
【0020】また,サーボモータ38を逆転して軸部材7を前進させることで,移動子6に沿ってカム孔2,3が逆ハの字状から図1のハの字状に移動し,カッタベース4,5と一体に皮剥きカッタ10,11が開く。皮剥きカッタ10,11の切れ込み深さは,移動子6をカム溝2,3の傾斜部2b,3bのどの位置で停止させるかによって決定される。この調整は軸部材7の進退方向の位置設定で行われる。
【0021】移動子6がカム孔2,3の真直部2a,3aを移動している時は,一対のカッタベース4,5は閉止方向に何ら移動しない。従って皮剥きカッタ10,11は何ら開閉しない。この真直部2a,3aは,軸部材7の先端の電線位置め板8の位置を電線軸方向に規定するためのものであり,真直部2a,3aの長さの範囲内の任意の位置に移動子6を位置させることで,電線位置め板8の位置を所望に変化させることができる。移動子6の位置は,ボールねじ軸9による軸部材7の進退動作によって決定されることはいうまでもない。
【0022】それによって電線の皮剥き長さが任意に設定され,各種の電線の皮剥きに対応可能となる。また,カム孔2,3と移動子6とを用いることで,カッタベース4,5が小型化され,且つ従来(図3,図4)のように皮剥きカッタをボールねじ軸で駆動するといった大がかりな機構が不要となる。なお,電線位置決め板8を軸部材7の先端で代用することも可能である。
【0023】また,上記構成は電線皮剥き方法としても有効である。すなわち,この電線皮剥き方法は,一対のカッタベース4,5のカム孔2,3に移動子6を係合させ,移動子6を電線軸方向に進退させて,一対のカッタベース4,5と一体に皮剥きカッタ10,11を開閉させる電線皮剥き方法であって,カム孔2,3の電線軸方向の真直部2a,3aの範囲内で移動子6の位置を規定することで,移動子6と一体に電線位置決め板8の位置を調整し,電線位置決め板8に電線の先端を突き当てることを特徴としている。
【0024】前記ベースプレート40の前端側には大径な軸受47が固定され,軸受47に環状部材26が回転自在に支持され,環状部材26は一対の支持基板14,15に連結されている。環状部材26の後端には大径のギヤ48が固定され,ギヤ48はサーボモータ49(図1)側のピニオンギヤ50に歯合している。サーボモータ49の駆動でギヤ50,48及び環状部材26を介して支持基板14,15が皮剥きカッタ10,11と一体に回動し,電線の絶縁被覆が周方向に完全に切断される。
【0025】皮剥きカッタ10,11はカッタベース4,5と支持基板14,15と軸部材7と環状部材26と一体に回動する。軸部材7はシャンク32によってボールねじ軸9とは別個に回動自在である。従来のようにサーボモータやボールねじ軸を皮剥きカッタと一体に回動させることがないから,電線皮剥き装置1が小型化すると共に,サーボ部分(NC部分)の衝撃対策が不要となり,コストが安く済む。
【0026】
【発明の効果】以上の如く,請求項1記載の発明によれば,移動子に対して一対のカッタベースをカム孔に沿って皮剥きカッタの開閉方向に移動させることで,皮剥きカッタの開閉方向の駆動機構が簡素化・小型化・軽量化される。そして,従来のカッタベースを直接,ねじ軸とサーボモータとで駆動するという大がかりな機構が不要となる。また,請求項2記載の発明によれば,カム孔の真直部に沿って移動子を移動させることで,軸部材に進退動作とは関係なく皮剥きカッタの開閉方向の位置を一定に規定することができる。また,請求項3,5記載の発明によれば,請求項2のカム孔の真直部の長さの範囲で電線位置決め部の位置を自在に規定することができ,種々の電線の皮剥き長さに容易に対応して,皮剥き長さの調整を正確に行うことができる。また,皮剥き長さの調整機構が従来の大がかりなNC機構に較べて簡素化・低コスト化する。また,請求項4記載の発明によれば,電線の絶縁被覆を周方向に切断する際に,カッタベースと軸部材とが回動するのみであり,従来のようにカッタベースとねじ軸とサーボモータ(NC部)といった重量物を回動させる必要がなくなるから,切断動作が迅速化すると共に,電線皮剥き装置の耐久性が増し,且つ装置の剛性(強度)を従来のように上げる必要がなくなり,電線皮剥き装置の小型,軽量化,低コスト化が達成される。」
「
」
イ 上記記載から,甲第10号証には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
(ア)カム孔(カム部)2,3を有する一対のカッタベース4,5と,両カム孔2,3に係合する一本のピン状の移動子を備えた軸部材と,軸部材に固定された電線位置決め板(電線位置決め部)と,軸部材を進退させるボールねじ軸(ねじ軸)とを含む電線皮剥き装置であって,
前記カム孔2,3は,電線軸方向に延びる共通の真直部と,前記真直部から外向き(電線径方向)に傾斜(湾曲)して延びる傾斜部とで構成されており,
前記一対のカッタベース4,5は板状に形成され,上下に重なって配置されて,左右(電線径方向)にスライド自在であり,さらに,これらの一対のカッタベース4,5は,後側の環状部材に固定されている上下一対の支持基板に挟まれるように保持されており,前記各支持基板の前後端に対向して設けられた位置決め用の突条に沿って,各カッタベース4,5はカッタ開閉方向にスライド自在とされており,
前記各カッタベース4,5の前端側にホルダを介して皮剥きカッタが固定されており,
前記皮剥きカッタの前方に一対の電線クランプが配置されており,
移動子は両カム孔2,3を貫通して軸部材に固定されており,
サーボモータの駆動によって軸部材が引っ張られて後退し,軸部材の後退時にピン状の移動子が一体に軸方向に後退し,各カム孔2,3の真直部から傾斜部に沿って移動し,それによって一対のカッタベース4,5が皮剥きカッタと共に閉止方向に移動し,電線の絶縁被覆に切れ込みを入れ,シリンダを圧縮してロッドを後退させることで,ベースプレートを皮剥きカッタと一体に後退させ,それにより,電線の絶縁被覆を導体部から離脱させる
電線皮剥き装置。
(イ)移動子が,電線軸方向に延びる共通の真直部と,真直部から外向き(電線径方向)に傾斜(湾曲)して延びる傾斜部とで構成されているカム孔の真直部を移動している時は,一対のカッタベースは閉止方向に何ら移動せず,従って皮剥きカッタは何ら開閉しないので,当該真直部の長さの範囲内の任意の位置に移動子を位置させることで,当該移動子を備える軸部材に固定された電線位置め板の位置を所望に変化させ,これによって電線の皮剥き長さを任意に設定することができ,各種の電線の皮剥きに対応可能となるので,皮剥き長さの調整機構が従来の大がかりなNC機構に較べて簡素化・低コスト化すること。
(ウ)カム孔(カム部)2,3を有する一対のカッタベース4,5と,両カム孔2,3に係合する一本のピン状の移動子を備えた軸部材とからなる機構を用いることで,前記軸部材を進退させて,一本のピン状の移動子に対して一対のカッタベースをカム孔に沿って皮剥きカッタの開閉方向に移動させることができるので,皮剥きカッタの開閉方向の駆動機構が簡素化・小型化・軽量化されること。
(3)甲第11号証の記載事項
ア 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された刊行物である甲第11号証には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
「第1章 機械と機構 4.カム装置
(審決注.前ページから続く)が原節となり,これに直接接触する従節に運動を伝えるものである。構造はかんたんであるが,複雑な運動が得られるので,各種の製造機械,とくに自動機械にひろく用いられる。
1.カムの種類
カムは,接触部が平面運動をする平面カム(plane cam)と,立体的な運動をする立体カム(solid cam)とに大別される。これらのなかには,カムにみぞなどをつけて,運動が確実に伝わるようにしたものがある。これを確動カム(positive motion cam)とよんでいる。
(1)平面カム
平面カムのうちで最もひろく用いられるのは,特殊な輪郭をもった回転板をカムとしたもので,板カム(plate cam)とよばれる。図1-29は,板カムCが等速回転すると,従節Fが等速往復運動をするもので,カムの形からハートカム(heart cam)という。図(a)では,Fの先端がCとすべりあいながら運動を伝えるので,接触面の摩擦が大きく,摩耗しやすい。この欠点を少なくするために,図(b)のようにFの先端にころをつけることがある。
(図1-29:省略,図1-30:省略)
図(a),(b)では,Cの回転がはやいとFがCから浮き上がることがある。これを防ぐため,ばねなどによってFをCにおしつけたり,図(c)のように,カムにみぞを設けたりして,従節の動きが確実になるように確動カムにする。確動カムには,図1-30のようなものもある。図(a)は従節の平行な2平面で三角カムをはさみ,カムが回転しても従節との間にすきまができないようにしたカムで,ヨークカムという。
図(b)では,カムC1,C2が,それぞれのカム軸に固定されている等しい平歯車G1,G2とともに回転する。両カムは,従節Fのころをはさみながら回転し,Fに上下に往復する角運動を与えている。
多くのばあい,原節は回転運動をするが,カムCが往復直線運動
をするばあいもあり,これを直動カム(translation cam,図1-31)という。
また,ばあいによっては,従節Cのほうが特殊な形をしたカムになっていることがあり,これを逆カム(inverse cam,図1-32)という。
(2)立体カム
立体カム(図1-33)には,円筒・円すい・球などの回転体の表面にみぞをつけ,このみぞに従節の一部がはまりこんで運動を伝えるものが多い。円筒カム・円すいカム・球面カムもまた確動カムである(図(a),(b),(c))。
また,図(d)のように,円筒上にカム片をボルトで取り付けるようにした調整カムは,工作機械や各種の自動機械に使われている。
図(e)のエンドカム(end cam)もまた立体カムで,カムみぞを設けるかわりに,みぞの曲線に沿って回転体の端面を切断したものである。
(図1-33:省略)
図(f)のように,回転軸に斜めに平面板を取り付けたものを斜板カム(swash plate)という。これは軸の回転によって,従節Fが往復直線運動をし,平面板の傾斜角をかえて,行程をかえることができる。
2.板カムの設計
(1)変位線図
カムを設計するには,カムの回転に応じた従節の位置を知ることが必要である。いっぱんにカムは等速回転をしているから,カムの回転角を横軸にとり,従節の動きを縦軸にとってグラフをえがけば,この関係がよくわかる。このグラフをカムの変位線図という。
図1-34では,カムの1回転に対する従節の関係位置を変位曲線Oabcで示している。OX上でOからの距離はカムの回転角,OXバー(審決注.OXの上に横棒)からの垂直距離は,それぞれのカムの位置での従節の動きをあらわす。
(図1-34:省略,問4.:省略)」
イ 上記記載から,甲第11号証には,以下の技術的事項が記載されている認められる。
(ア)原節が,これに直接接触する従節に運動を伝える機構を有するカム装置は,かんたんな構造で複雑な運動が得られるので,各種の製造機械,とくに自動機械にひろく用いられており,
当該カムは,接触部が平面運動をする平面カムと,立体的な運動をする立体カムとに大別され,
平面カムのうちで最もひろく用いられるのは,特殊な輪郭をもった回転板をカムとしたもので,板カムとよばれ,
多くのばあい,原節は回転運動をするが,カムが往復直線運動をするばあいもあり,これを直動カムとよび,
立体カムには,円筒・円すい・球などの回転体の表面にみぞをつけ,このみぞに従節の一部がはまりこんで運動を伝えるものが多いこと。
(イ)図1-31から,板カムの一種である直動カムの,
左右の軸受けに,横方向に往復直線運動可能に保持された,下端縁が水平で上端縁が右肩上がりの輪郭をもった板カムCと,
前記板カムCの上方に設けられた軸受けによって上下方向に運動可能に保持される,前記板カムCの前記上端縁に,先端につけられたころによって直接接触し,前記板カムCの横方向への往復直線運動によって,前記板カムCの鉛直上下方向に運動する,従節Fと
を有する構造を見て取ることができる。
(4)甲第12号証の記載事項
ア 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された刊行物である甲第12号証には,以下の事項が記載されている。
「
」
「252. A and B are two rollers which require to be equally moved to and fro in the slot,C. This is accomplished by moving the piece, D, with oblique slotted arms, up and down.」(日本語訳:252.A及びBは,スロットC内で前後に均等に移動する必要がある2つのローラである。これは,斜めの細長いアームを用いて,ピースDを上下に動かすことによって達成される。)
イ 上記記載から,甲第12号証には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
2つのローラA及びBを,スロットC内で前後に均等に移動する必要がある場合に使用される機構であって,
2つのローラA,Bをスライド可能に係止するとともに先端部が中心側に位置し反先端部側が外側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し回動しない角度固定の斜めの細長いアーム,及び前記アームを立設するピースDを用いて,ピースDを上下に動かすことによって,2つのローラA,Bを,右に開口するスロットC内で,前後に均等に移動させる機構。
2 無効理由3(特許法第29条第2項)について
事案にかんがみ,最初に無効理由3について検討する。
(1)本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と甲1発明
本件訂正発明1と,甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「切刃」は,本件訂正発明1の「刃」に相当する。そして,甲1発明において,回転式の切刃によって被覆を輪切りに切断し,被覆ケーブルから前記切断した被覆を剥離する際に,前記切断した被覆は,被覆ケーブルの長手方向に移動して芯材を露出させるといえる。
したがって,甲1発明の「ワイヤー,すなわち,芯材の外周を被覆した被覆ケーブルの端末から,回転式の切刃によって,前記被覆を輪切りに切断し,前記被覆ケーブルから前記切断した被覆を剥離し,前記芯材を露出させる『ワイヤー・スキン・マシン』すなわち,『回転式端末剥離機』」は,本件訂正発明1の「芯材の外周を被覆した被覆ケーブルの前記被覆を回転する複数枚の刃で輪切りに切断し前記被覆ケーブルから切断した被覆を前記被覆ケーブルの長手方向に移動させ前記芯材を露出させる被覆ケーブルの被覆剥離装置」に相当する。
(イ)甲1発明の「切刃フランジ」及び「スライドベース」は,それぞれ本件訂正発明1の「回転体」及び「刃スライド保持部」に相当する。
したがって,甲1発明の「中心に穴を有する回転体である『切刃フランジ』,及び前記『切刃フランジ』に連接する『スライドベース』よりなる,前記『切刃』を回転させる機構であって,前記『スライドベース』が,前記『切刃』を,前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する機構」と,本件訂正発明1の「中心に前記被覆ケーブルを挿通する穴及び外側に前記刃と同数の貫通孔を有する回転体,及び前記回転体に連設し前記刃を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する刃スライド保持部よりなる刃部回転機構」とは,中心に穴を有する回転体,及び前記回転体に連設し前記刃を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する刃スライド保持部よりなる刃部回転機構である点で一致する。
(ウ)甲1発明の「切込アーム」と,本件訂正発明1とは,「腕部」と,前記刃の端部をスライド可能に係止するとともにガイドを有する腕部である点で一致する。
したがって,甲1発明の「4枚の『切刃』であって,これらは,一方の面に刃先に向け傾斜面を備える板刃を,前記被覆ケーブルを挟み刃先が対向する2枚で一組の板刃で,2組の計4枚とし,異なる組の板刃は,90度回転した位置で,他方の組の平坦面同士が向き合う位置に配置され,前記『スライドベース』のスライド溝にスライド可能に保持されており,前記被覆ケーブル中心方向にスライドしつつ同一面で回転することで前記被覆を輪切りに切断するものである『切刃』,一方端部に形成された一端が開放されたU字状のガイドを有する『切込アーム』,及び前記『切刃』の端部をスライド可能に係止するものであり前記『切込アーム』の一方端部に形成された一端が開放されたU字状のガイドに係合する『ローラ金具B』よりなる回転する刃部である機構」と,本件訂正発明1の「前記被覆ケーブルの長手方向に直交する方向の同一面に等間隔で配置され前記被覆ケーブル中心方向にスライドしつつ前記同一面で回転することで前記被覆を輪切りに切断する複数の刃,前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部よりなる回転刃部」とは,前記被覆ケーブルの長手方向に直交する方向の同一面に等間隔で配置され前記被覆ケーブル中心方向にスライドしつつ前記同一面で回転することで前記被覆を輪切りに切断する複数の刃,前記刃の端部をスライド可能に係止するとともにガイドを有する腕部よりなる回転刃部である点で一致する。
(エ)甲1発明の「戻しバネユニットによって,その自由端が開径方向に付勢されている前記『切込アーム』の中間領域を押圧し,前記『切込アーム』の他端を軸として,前記自由端を閉径方向に回動させる,前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向に直動する『押エリングB』からなる機構」と,本件訂正発明1の「前記ドーナツ部を前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向に直動させる刃部直動機構」とは,刃部直動機構である点で一致する。
(オ)甲1発明の「被覆ケーブルの端部を当接させて,前記『切刃』による前記被覆のカット位置を決めるストッパである『突当金具』」は,本件訂正発明1の「前記被覆ケーブルの端部を当接させて前記刃による前記被覆のカット位置を決めるストッパ」に相当する。
(カ)技術常識に照らして,甲1発明の「クランプ」は,被覆ケーブルの端部を「突当金具」に当接した上で被覆ケーブルを固定するものといえる。
したがって,甲1発明は,本件訂正発明1の「前記被覆ケーブルの端部を前記ストッパに当接した上で前記被覆ケーブルを固定し」を満たす。
(キ)技術常識に照らして,「ステッピングモーター」の駆動は,デジタル制御であるといえる。したがって,甲1発明における,「押エリングB」の被覆ケーブルの長手方向と平行な方向への直動,及び,前記直動によって駆動される「切刃」の刃先で形成される内接円の径を任意の大きさの制御は,いずれもデジタル制御に該当する。
したがって,甲1発明の「「ステッピングモーター」の駆動によって,前記「押エリングB」を前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向に直動させ,前記「押エリングB」の前記直動の距離に応じて回動する「切込アーム」の回動量の変化によって,前記「切刃」を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライドさせる距離を調整することで,前記「切刃」の刃先で形成される内接円の径を任意の大きさに制御する」と,本件訂正発明1の「前記刃部直動機構で前記ドーナツ部を前記回転体方向である前方にデジタル制御で直動させることで前記刃を前記スライド溝に沿って前記被覆ケーブル中心方向にスライドさせつつ回転する前記刃の刃先で形成される内接円の径を前記直動で任意の大きさにデジタル制御し」とは,前記刃部直動機構を前記回転体方向である前方にデジタル制御で直動させることで前記刃を前記スライド溝に沿って前記被覆ケーブル中心方向にスライドさせつつ回転する前記刃の刃先で形成される内接円の径を前記直動で任意の大きさにデジタル制御する点で一致する。
(ク)してみれば,本件訂正発明1と,甲1発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。
<一致点>
「芯材の外周を被覆した被覆ケーブルの前記被覆を回転する複数枚の刃で輪切りに切断し前記被覆ケーブルから切断した被覆を前記被覆ケーブルの長手方向に移動させ前記芯材を露出させる被覆ケーブルの被覆剥離装置であって,
中心に穴を有する回転体,及び前記回転体に連設し前記刃を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する刃スライド保持部よりなる刃部回転機構と,
前記被覆ケーブルの長手方向に直交する方向の同一面に等間隔で配置され前記被覆ケーブル中心方向にスライドしつつ前記同一面で回転することで前記被覆を輪切りに切断する複数の刃,前記刃の端部をスライド可能に係止する部材よりなる回転刃部と,
刃部直動機構と,
前記被覆ケーブルの端部を当接させて前記刃による前記被覆のカット位置を決めるストッパと,
からなり,
前記被覆ケーブルの端部を前記ストッパに当接した上で前記被覆ケーブルを固定し,
前記刃部直動機構を前記回転体方向である前方にデジタル制御で直動させることで前記刃を前記スライド溝に沿って前記被覆ケーブル中心方向にスライドさせつつ回転する前記刃の刃先で形成される内接円の径を前記直動で任意の大きさにデジタル制御し,
前記刃部回転機構を回転させることで前記被覆ケーブルの被覆を前記複数の刃で輪切りに切断し,
前記刃部回転機構及び回転刃部を前記直動方向と逆向きに後退させることで切断された被覆を前記刃の刃先に係止して前記被覆ケーブルの長手方向に移動させ前記芯材を露出させる被覆ケーブルの被覆剥離装置。」
<相違点>
本件訂正発明1と甲1発明とは,刃部直動機構を直動させることで刃をスライド溝に沿って被覆ケーブル中心方向にスライドさせて前記刃の刃先で形成される内接円の径を任意の大きさに制御する機構が,
本件訂正発明1では,
中心に被覆ケーブルを挿通する穴及び外側に刃と同数の貫通孔を有する回転体,及び前記回転体に連設し前記刃を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する刃スライド保持部よりなる刃部回転機構と,前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部よりなる回転刃部とからなり,
前記刃部直動機構で前記ドーナツ部を前記回転体方向である前方にデジタル制御で直動させることで前記刃を前記スライド溝に沿って前記被覆ケーブル中心方向にスライドさせて前記刃の刃先で形成される内接円の径を前記直動で任意の大きさに制御するものであるのに対して,
甲1発明では,
中心に穴を有する回転体である「切刃フランジ」,及び前記「切刃フランジ」に連接する「スライドベース」よりなる,前記「切刃」を回転させる機構であって,前記「スライドベース」が,前記「切刃」を,前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する機構と,一方端部に形成された一端が開放されたU字状のガイドを有する「切込アーム」,及び前記「切刃」の端部をスライド可能に係止するものであり前記「切込アーム」の一方端部に形成された一端が開放されたU字状のガイドに係合する「ローラ金具B」よりなる回転する刃部である機構とからなり,
「押エリングB」で,戻しバネユニットによって,その自由端が開径方向に付勢されている前記「切込アーム」の中間領域を押圧し,前記「切込アーム」の他端を軸として,前記自由端を閉径方向に回動させることで,前記「切刃」を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライドさせて,前記「切刃」の刃先で形成される内接円の径を任意の大きさに制御するものである点で相違する。
なお,上記相違点を,本件訂正発明1と甲1発明の個別の部材について整理すると,
本件訂正発明1では,刃部回転機構の回転体が,「中心に前記被覆ケーブルを挿通する穴及び外側に前記刃と同数の貫通孔を有」し,回転刃部が,「前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部」を備え,「前記ドーナツ部」が,「刃部直動機構」によって,「前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向に直動さ」れるものと特定されているのに対して,
甲1発明では,刃部回転機構の回転体が,中心の穴に,被覆ケーブルが挿通するか否かが明らかでなく,さらに,前記刃部回転機構の回転体が「外側に前記刃と同数の貫通孔を有する」という構成を備えおらず,
刃の端部をスライド可能に係止する部材が,「ローラ金具B」であって,一方端部に形成された一端が開放されたU字状のガイドを有する「切込アーム」の当該U字状のガイドに前記「ローラ金具B」が係合し,被覆ケーブルの長手方向と平行な方向に直動する「押エリングB」が,戻しバネユニットによって,その自由端が開径方向に付勢されている前記「切込アーム」の中間領域を押圧することで,前記「切込アーム」の他端を軸として回動させて,刃の端部をスライドさせるものであり,
「腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部」を備えていない点で相違するといえる。
イ 相違点についての判断
(ア)特許法29条1項は,「産業上利用することができる発明をした者は,次に掲げる発明を除き,その発明について特許を受けることができる。」と定め,同項1号として,「特許出願前に日本国内又は外国において」「公然知られた発明」,同項2号として,「特許出願前に日本国内又は外国において」「公然実施をされた発明」,及び,同項3号として,「特許出願前に日本国内又は外国において」「頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」を挙げている。
また,同条2項は,特許出願前に当業者が同条1項各号に定める発明に基づいて容易に発明をすることができたときは,その発明については,特許を受けることができない旨を規定し,いわゆる進歩性を有していない発明は特許を受けることができないことを定めている。
そして,上記進歩性に係る要件が認められるかどうかは,特許請求の範囲に基づいて特許出願に係る発明(「本件訂正発明1」)を認定した上で,同条1項各号所定の発明と対比し,一致点及び相違点を認定し,相違点について,当業者が,出願時の技術水準に基づいて,上記相違点について,本件訂正発明1に係る構成を採用することを容易に想到することができたかどうかを検討することによって行う。
(イ)本件訂正発明1は,甲1発明と対比して,上記ア(ク)<相違点>に記載したとおりの相違点が存在すると認められる。
そこで,上記相違点について,当業者が,出願時の技術水準に基づいて,上記相違点について,本件訂正発明1に係る構成を採用することを容易に想到することができたかどうかを検討する。
(ウ)出願時の技術水準について検討すると,上記1(2)の記載から,「電線皮剥き装置」という技術分野において,
「電線軸方向に延びる共通の真直部と,前記真直部から外向き(電線径方向)に傾斜(湾曲)して延びる傾斜部とで構成され」る「カム孔(カム部)を有する一対の」「板状に形成され,上下に重なって配置されて,左右(電線径方向)にスライド自在であ」る「カッタベースと,両カム孔に係合する一本のピン状の移動子を備えた軸部材と」,「軸部材を進退させるボールねじ軸(ねじ軸)とを含む」機構を,
「サーボモータの駆動によって軸部材が引っ張られて後退し,軸部材の後退時にピン状の移動子が一体に軸方向に後退し,各カム孔の真直部から傾斜部に沿って移動し,それによって一対のカッタベースが皮剥きカッタと共に閉止方向に移動」させるという用途,すなわち,「軸部材」の直動を,「皮剥きカッタ」の電線中心方向へのスライドという運動へと,その運動の方向を変更させるという用途に用いることが,本願の出願前に知られていたといえる。(甲第10号証)
(エ)また,上記1(3)の記載から,「機械設計」という一般的な技術分野において,
接触部が平面運動をする平面カムと,立体的な運動をする立体カムとに大別されるカム装置が,各種の製造機械,とくに自動機械にひろく用いられており,
前記平面カムのうちで最もひろく用いられるのは,特殊な輪郭をもった回転板をカムとる板カムとよばれるものであるが,カムが往復直線運動をする直動カムとよばれるものも知られており,
前記直動カムとして,
左右の軸受けに,横方向に往復直線運動可能に保持された,下端縁が水平で上端縁が右肩上がりの輪郭をもった板カムCと,
前記板カムCの上方に設けられた軸受けによって上下方向に運動可能に保持される,前記板カムCの前記上端縁に,先端につけられたころによって直接接触し,前記板カムCの横方向への往復直線運動によって,前記板カムCの鉛直上下方向に運動する,従節Fと
を有する構造が,本願の出願前に知られていたといえる。(甲第11号証)
(オ)さらに,上記1(4)の記載から,「MECHANICAL MOVEMENTS」という,一般的な技術分野において,
2つのローラA及びBを,スロットC内で前後に均等に移動する必要がある場合に使用される機構であって,
2つのローラA,Bをスライド可能に係止するとともに先端部が中心側に位置し反先端部側が外側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し回動しない角度固定の斜めの細長いアーム,及び前記アームを立設するピースDを用いて,ピースDを上下に動かすことによって,2つのローラA,Bを,右に開口するスロットC内で,前後に均等に移動させる機構が,本願の出願前に知られていたといえる。(甲第12号証)
(カ)そして,甲第10号証の「カッタベース」が有する「電線軸方向に延びる共通の真直部と,前記真直部から外向き(電線径方向)に傾斜(湾曲)して延びる傾斜部とで構成され」る「カム孔(カム部)」の前記「前記真直部から外向き(電線径方向)に傾斜(湾曲)して延びる傾斜部」は,「テーパ」ということができ,また,甲第11号証の板カムCの「上端縁が右肩上がりの輪郭」,及び,甲第12号証の「先端部が中心側に位置し反先端部側が外側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔」もまた「テーパ」ということができるから,これら,甲第10~12号証の記載から,本件特許の出願前に,「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」が周知であったことが認められる。
(キ)そこで,出願時の技術水準として,「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」が周知であることを前提として,当業者が,甲1発明において,上記相違点について,本件訂正発明1に係る構成を採用することを容易に想到することができたかについて検討する。
(ク)本件訂正発明1は,上記ア(ク)<相違点>に記載したとおり,刃部直動機構を直動させることで刃をスライド溝に沿って被覆ケーブル中心方向にスライドさせて前記刃の刃先で形成される内接円の径を任意の大きさに制御する機構として,
「中心に被覆ケーブルを挿通する穴及び外側に刃と同数の貫通孔を有する回転体,及び前記回転体に連設し前記刃を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する刃スライド保持部よりなる刃部回転機構と,前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部よりなる回転刃部とからな」る具体的な構造を採用するものである。
一方,上記(カ)のとおり,本願の出願前に,「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」が周知であったことは認められるものの,本件訂正発明1が備える上記の具体的な構造が本件特許の出願前に知られていたことは,請求人が提出した証拠方法によっては認めることはできない。
また,「刃部直動機構を直動させることで刃をスライド溝に沿って被覆ケーブル中心方向にスライドさせて前記刃の刃先で形成される内接円の径を任意の大きさに制御する」という動作を,「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」を用いて実現するにあたり,本件訂正発明1が備える前記具体的な構造が唯一の解決手段であって,甲1発明に,「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」を適用した場合に,必然的に,本件訂正発明1が備える前記具体的な構造を採用することに至るものであるとも認められない。
このことは,甲第10号証には,本件訂正発明1の前記具体的な構造とは異なる構造によって,前記「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」を実現した電線皮剥き装置が開示されていることからも明らかである。
そして,甲1発明において,「刃部直動機構を直動させることで刃をスライド溝に沿って被覆ケーブル中心方向にスライドさせて前記刃の刃先で形成される内接円の径を任意の大きさに制御する」という動作を,「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」を用いて実現するにあたり,本件訂正発明1が備える上記の具体的な構造を採用すること,すなわち,
甲1発明では,刃部回転機構の回転体が,中心の穴に,被覆ケーブルが挿通するか否かが明らかでなく,さらに,前記刃部回転機構の回転体が「外側に前記刃と同数の貫通孔を有する」という構成を備えおらず,刃の端部をスライド可能に係止する部材が,「ローラ金具B」であって,一方端部に形成された一端が開放されたU字状のガイドを有する「切込アーム」の当該U字状のガイドに前記「ローラ金具B」が係合し,被覆ケーブルの長手方向と平行な方向に直動する「押エリングB」が,戻しバネユニットによって,その自由端が開径方向に付勢されている前記「切込アーム」の中間領域を押圧することで,前記「切込アーム」の他端を軸として回動させて,刃の端部をスライドさせるものであり,「腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部」を備えていないという構造を,
本件訂正発明1で採用する,刃部回転機構の回転体が,「中心に前記被覆ケーブルを挿通する穴及び外側に前記刃と同数の貫通孔を有」し,回転刃部が,「前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部」を備え,「前記ドーナツ部」が,「刃部直動機構」によって,「前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向に直動さ」れる構造にすることが,当業者にとって容易であったとは,請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては認めることはできない。
(ケ)そもそも,甲1発明において,「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」を採用する動機を見いだすことができないが,仮に,甲第10~12号証の記載に基づいて,本願の出願前に,「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」が周知であることから,甲1発明において,「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」を採用する動機が存在すると認めたとしても,甲第10号証に記載されているように,「電線皮剥き装置」において,「電線軸方向に延びる共通の真直部と,前記真直部から外向き(電線径方向)に傾斜(湾曲)して延びる傾斜部とで構成され」た「カム孔(カム部)2,3を有する一対のカッタベース4,5と,両カム孔2,3に係合する一本のピン状の移動子を備えた軸部材」からなる「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」によって,「一対のカッタベース4,5が皮剥きカッタと共に閉止方向に移動し,電線の絶縁被覆に切れ込みを入れ」る構造が,本件の出願前に知られているのであるから,甲1発明において,「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」を採用する場合には,当業者は,甲第10号証に記載された前記の構造を採用することが自然かつ合理的であり,本件訂正発明1が備える上記の具体的な構造を採用することに到達することが容易であったとは認めることはできない。
すなわち,上記1(2)イ(イ)及び(ウ)のとおり,甲第10号証には,「電線皮剥き装置」が前記の構造を採用することによって,「移動子が,電線軸方向に延びる共通の真直部と,真直部から外向き(電線径方向)に傾斜(湾曲)して延びる傾斜部とで構成されているカム孔の真直部を移動している時は,一対のカッタベースは閉止方向に何ら移動せず,従って皮剥きカッタは何ら開閉しないので,当該真直部の長さの範囲内の任意の位置に移動子を位置させることで,当該移動子を備える軸部材に固定された電線位置め板の位置を所望に変化させ,これによって電線の皮剥き長さを任意に設定することができ,各種の電線の皮剥きに対応可能となるので,皮剥き長さの調整機構が従来の大がかりなNC機構に較べて簡素化・低コスト化」し,かつ,「カム孔(カム部)2,3を有する一対のカッタベース4,5と,両カム孔2,3に係合する一本のピン状の移動子を備えた軸部材とからなる機構を用いることで,前記軸部材を進退させて,一本のピン状の移動子に対して一対のカッタベースをカム孔に沿って皮剥きカッタの開閉方向に移動させることができるので,皮剥きカッタの開閉方向の駆動機構が簡素化・小型化・軽量化される」という効果が奏されることが示されている。
一方,甲1発明において,「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」を採用する際に,本件訂正発明1に係る「前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部」という構造を採用した場合には,「ガイド孔」が「斜めの角度一定」であることから,甲第10号証に記載された構造の「カム孔の真直部を移動している時は,一対のカッタベースは閉止方向に何ら移動せず,従って皮剥きカッタは何ら開閉しないので,当該真直部の長さの範囲内の任意の位置に移動子を位置させることで,当該移動子を備える軸部材に固定された電線位置め板の位置を所望に変化させ,これによって電線の皮剥き長さを任意に設定することができ,各種の電線の皮剥きに対応可能となるので,皮剥き長さの調整機構が従来の大がかりなNC機構に較べて簡素化・低コスト化」するという効果を奏することができず,さらに,甲第10号証に記載された構造の「一本のピン状の移動子に対して一対のカッタベースをカム孔に沿って皮剥きカッタの開閉方向に移動させることができるので,皮剥きカッタの開閉方向の駆動機構が簡素化・小型化・軽量化される」という効果を奏することもできなくなるといえる。
そうすると,甲1発明において,「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」を採用する際に,本件訂正発明1が備える具体的な構造を採用することに至るには,甲第10号証の記載に照らして阻害事由が存在するものと認められる。
したがって,甲第10~12号証の記載に基づいて,本願の出願前に,「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」が周知であることから,甲1発明において,「テーパーを利用して運動の方向を変更する機構」を採用する動機が存在すると認めたとしても,当業者が,甲1発明において,上記相違点について,本件訂正発明1に係る構成を採用することを容易に想到することができたとは認めることはできない。
(コ)してみると,甲1発明から,本件訂正発明1が容易に発明をすることができたとはいえないのであるから,甲1発明が,「特許出願前に日本国内又は外国において」「公然知られた発明」,「特許出願前に日本国内又は外国において」「公然実施をされた発明」,あるいは,「特許出願前に日本国内又は外国において」「頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」であるかについては検討するまでもなく,本件訂正発明1が,特許法第29条第2項の規定に反しているとの理由は成り立たない。
ウ 請求人の主張について
(ア)請求人は,平成30年7月19日付けの審判事件弁駁書において,「したがって,本件特許発明は,被請求人の主張したように,刃部直動機構の運動方向(被覆ケーブルの長手方向と平行な方向)を被覆ケーブルの長手方向と直交する方向に刃をスライドさせる運動方向に変更する機構の細部において相違点を有していると考えられる。しかしながら,所定の運動方向を他の運動方向に変更する板カムの機構は,先行技術文献を例示するまでもなく周知の技術であり,このような設計変更は,甲1発明に基づいて当業者が容易になし得ることである。」と主張する。
しかしながら,所定の運動方向を他の運動方向に変更する板カムの機構が周知の技術であるとしても,請求人が提出した証拠方法によっては,甲1発明に,板カムを用いる動機を見いだすことはできないし,さらに,仮に,甲1発明に,所定の運動方向を他の運動方向に変更する板カムの機構を適用することに思い至ったとしても,上記イで検討したように,本件訂正発明1との相違点に係る具体的な構造を採用することは,当業者にとって容易であったとは認められない。
したがって,請求人の主張は採用することができない。
(イ)さらに,請求人は,平成30年9月28日付けの口頭審理陳述要領書において,「イ 相違点i)について 甲1発明を利用し公然実施されていた製品であるロータリーストッパーKIND2-80型は,刃部回転機構の回転体(『押ェリングB』)が『中心に被覆ケーブルを挿通する穴』を有している。したがって,甲1発明から,刃部回転機構の回転体が,『中心に前記被覆ケーブルを挿通する穴』があるとの構成に想い到ることは,極めて容易である。ウ 相違点ii)について 本件訂正発明は,回転刃部の腕部(甲1発明の『切込アーム』に相当する)の進退を阻害しないように,刃部回転機構の回転体が『外側に前記刃と同数の貫通孔を有」しているに過ぎない。したがって,甲1発明から,刃部回転機構め回転体が「外側に前記刃と同数の貫通孔を有』しているとの構成に想い到ることは容易である。エ 相違点iii)について 本件訂正発明におけるガイド孔(板カムの機構)は,テーパーを利用して運動の方向を変更する極めて一般的な機構である。ここで,甲1発明におけるU宇状のガイドは,切込アームに形成されているが,このU字状のガイドを閉じて長孔とした場合であっても,その機械要素の機能に何ら影響を与えるものではない。また,甲1発明における『切込アーム』は,『押ェリングB』の直動の距離に応じて回動するが,仮に『切込アーム』および『押ェリングB』を一体化した場合であっても,その機械要素の機能に何ら影響を与えるものではない。甲第8号証は,請求人の作成した参考構想図である。この参考構想図は,甲1発明において,『切込アーム』および『押ェリングB』を一体化した場合における『切込アーム』,『押ェリングB』,および『切刃』などの動きを説明する図である。この参考構想図では,押ェリングBの移動後における『切込アーム』,『押ェリングB』,および『切刃』などの位置を二点鎖線で示している。このように,『切込アーム』および『押エリングB』を一体化した場合であっても,『切刃』は,本件訂正発明と同様に,被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライドすることになる。したがって,甲1発明から,回転刃部が『前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構の外側に位置し反先端部が中心に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回転しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿入する穴を有するドーナッツ部』を備え,『前記ドーナッツ部』が『刃部直道機構』によって『前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向に直動さ』れるものとの構成に想い到ることは容易である。」と主張し,
さらに,請求人は,平成30年11月9日付けの上申書において,「(イ)また,本件特許発明のように,テーパーを利用して運動の方向を変更する機構は,例えば,特開2000-152451に記載された発明のように極めて一般的である。したがって,甲1発明における『切込アーム』および『押ェリングB』を一体化して『被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部』の構成を採用し,この腕部に形成されたテーパーを利用して運動の方向を変更する機構とした点のみを相違点とする本件特許発明を想到することは当業者であれば格別困難なことではなく,被請求人の主張した『本件特許発明は,進歩性を有する』は失当である。」と主張する。
しかしながら,テーパーを利用して運動の方向を変更する機構が極めて一般的であることから,直ちに,「『ステッピングモーター』の駆動によって,前記『押エリングB』を前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向に直動させ,前記『押エリングB』の前記直動の距離に応じて回動する『切込アーム』の回動量の変化によって,前記『切刃』を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライドさせる距離を調整することで,前記『切刃』の刃先で形成される内接円の径を任意の大きさに制御する」機構を備える甲1発明において,「甲1発明における『切込アーム』および『押ェリングB』を一体化して『被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部』の構成を採用し,この腕部に形成されたテーパーを利用して運動の方向を変更する機構」とすることに思い至ることが,当業者にとって容易であったとは認めることはできない。
したがって,請求人の主張は採用することができない。
(ウ)なお,請求人は,平成30年9月28日付けの口頭審理陳述要領書の「オ 補足」において,「前述したように『切込アーム』および『押ェリングB』を一体化し,本件訂正発明と同様の構造を採用した場合には,テーパーの角度(θ)を小さくすれば『押ェリングB』の直線移動量は大きくなるので,装置の大型化を招いてしまうことになり,テーパーの角度(θ)を大きくすれば『切刃』の進退方向と直交する方向の分力は大きくなるので,『切刃』を介して『スライドペース』のスライド溝に大きな負荷がかかってしまい,ひいては『切刃』のスライドにブレがでてしまうという問題がある。このため,甲1発明は,『押ェリングB』の直動の距離に応じて回動する『切込アーム』の回動量の変化によって,『切刃』を被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライドさせる距離を調整している。また,U宇状のガイドを閉じて長孔とし,本件訂正発明と同様の構造を採用した場合には,例えば,ワイヤーカットを用いて部品を成形すると2工程かかってしまうことになるので,部品の生産性が低下してしまうという問題がある。・・・このため,甲1発明は,部品の生産性を向上させるべく『切込アーム』にU字状のガイドを形成している。」と説示し,本件訂正発明1の品質が甲1発明の品質に劣ると主張する。
しかしながら,本件訂正発明1の品質が甲1発明の品質に「劣る」場合に,甲1発明において,本件訂正発明1に係る構成を採用して,当該「劣る」品質とすることに動機を見いだすことはできない。
すなわち,請求人の前記主張からは,甲1発明において,相違点について,本件訂正発明1の構成を採用しようとすることを妨げる理由,すなわち,阻害事由の存在を認めることができるとしても,当該主張によって,本件訂正発明1を,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると認めることはできない。
したがって,請求人の主張は採用することができない。
(エ)さらに,請求人は,平成30年11月9日付けの上申書において,「しかしながら,甲1発明は,次頁に記載したように,『切刃』の移動量Yと,『押エリングB』の移動量Xとの近似関数を予め定めておき,デジタル制御をするものである。したがって,口頭審理陳述要領書(2)の5頁6行目において,被請求人の主張した『甲1発明では,極めて煩雑な移動制御を必要とする』は失当である。」として,次ページにおいて,「L-Sin(θB-(θC-Sin-1((H-x)/分線C)))=移動量y」とする関数を提示する。
しかしながら,被請求人が,平成30年10月12日付けの口頭審理陳述要領書(2)で説明する刃26の移動度と腕部22の移動度の関係式ある「X=Y・tanθ」が,甲1発明における前記関数と比較して簡易であることは明らかであり,本件訂正発明1は,当該関係式を用いて「回転する複数の刃の刃先で形成される内接円の径(被覆の切り込み深さ)を任意の大きさにデジタル制御可能な,被覆ケーブルの被覆装置を提供する」(明細書【0011】)という効果を奏するものと認められる。
(2)小括
以上検討したように,本件訂正発明1は,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(3)本件訂正発明2,3について
本件訂正発明2,3は,「第3 本件訂正発明」で認めたとおりであり,再掲すると,以下のとおりである。
「【請求項2】
前記複数の刃を3枚又は4枚とし,かつ前記刃の刃先の一端部又は両端部を切り欠きとしたことを特徴とする請求項1に記載の被覆ケーブルの被覆剥離装置。
【請求項3】
前記複数の刃を,
一方の面に刃先に向け傾斜面を備える板刃を前記被覆ケーブルを挟み刃先が対向する2枚で一組の板刃で,2組の計4枚とし,異なる組の板刃は,90度回転した位置で,他方の組の平坦面同士が向き合う位置に配置され,前記スライド溝にスライド可能に保持されたことを特徴とする請求項1に記載の被覆ケーブルの被覆剥離装置。」
本件訂正発明2,3も,本件訂正発明1の「中心に被覆ケーブルを挿通する穴及び外側に刃と同数の貫通孔を有する回転体,及び前記回転体に連設し前記刃を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する刃スライド保持部よりなる刃部回転機構」,及び,「前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部よりなる回転刃部」という構成を備えるものであるから,本件訂正発明1と同じ理由により,当業者であっても,甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。
したがって,本件訂正発明2,3が,特許法第29条第2項の規定に反しているとの理由は成り立たない。
(4)本件訂正発明4について
本件訂正発明4は,「第3 本件訂正発明」で認めたとおりであり,再掲すると,以下のとおりである。
「【請求項4】
被覆ケーブルを固定した上で,前記被覆ケーブルの長手方向と直交する同一面に等間隔で配置した複数の刃を,
前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向のデジタル制御による直動で前記被覆ケーブルの中心に向けスライドさせつつ回転させ,
前記被覆ケーブルの被覆を前記刃の回転で輪切りに切断し,
前記直動方向と逆向きに前記刃を後退させることで,
切断された被覆を前記刃の刃先に係止して前記被覆ケーブルの長手方向に移動させ,
前記被覆ケーブルの芯材を露出させる被覆ケーブルの被覆剥離方法であって,
中心に前記被覆ケーブルを挿通する穴及び外側に前記刃と同数の貫通孔を有する回転体,及び前記回転体に連設し前記刃を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する刃スライド保持部よりなる刃部回転機構と,
前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部よりなる回転刃部とを備えた被覆ケーブルの被覆剥装置によって,
前記刃部回転機構及び前記回転刃部の回転及び前記回転刃部の直動によってスライドするとともに回転する前記刃の刃先で形成される内接円の径を前記直動で任意の大きさにデジタル制御することを特徴とする
被覆ケーブルの被覆剥離方法。」
本件訂正発明4は,本件訂正発明1に対応する方法の発明であり,本件訂正発明1の「中心に被覆ケーブルを挿通する穴及び外側に刃と同数の貫通孔を有する回転体,及び前記回転体に連設し前記刃を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する刃スライド保持部よりなる刃部回転機構」,及び,「前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部よりなる回転刃部」に対応する構成を備えるものであるから,本件訂正発明1と同じ理由により,当業者であっても,甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。
したがって,本件訂正発明4が,特許法第29条第2項の規定に反しているとの理由は成り立たない。
(5)本件訂正発明5について
本件訂正発明5は,「第3 本件訂正発明」で認めたとおりであり,再掲すると,以下のとおりである。
「【請求項5】
被覆ケーブルを固定した上で,前記被覆ケーブルの長手方向と直交する同一面に等間隔で配置した複数の刃を,前記被覆ケーブルの長手方向と平行な方向のデジタル制御による直動で前記被覆ケーブルの中心に向けスライドさせつつ回転させ,前記被覆ケーブルの被覆を前記刃の回転で輪切りに切断し,前記直動方向と逆向きに前記刃を後退させることで,切断された被覆を前記刃の刃先に係止して前記被覆ケーブルの長手方向に移動させ,前記被覆ケーブルの芯材を露出させる被覆ケーブルの被覆剥装置であって,
中心に前記被覆ケーブルを挿通する穴及び外側に前記刃と同数の貫通孔を有する回転体,及び前記回転体に連設し前記刃を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する刃スライド保持部よりなる刃部回転機構を備え,
前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部よりなる回転刃部の回転及び直動によってスライドするとともに回転する前記刃の刃先で形成される内接円の径を前記直動で任意の大きさにデジタル制御することを特徴とする
被覆ケーブルの被覆剥離装置。」
本件訂正発明5も,本件訂正発明1の「中心に被覆ケーブルを挿通する穴及び外側に刃と同数の貫通孔を有する回転体,及び前記回転体に連設し前記刃を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する刃スライド保持部よりなる刃部回転機構」,及び,「前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部よりなる回転刃部」という構成を備えるものであるから,本件訂正発明1と同じ理由により,当業者であっても,甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。
したがって,本件訂正発明5が,特許法第29条第2項の規定に反しているとの理由は成り立たない。
(6)小括
以上のとおりであるから,無効理由3に理由はない。
(7)むすび
以上のとおり,請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては,本件訂正発明1ないし5についての特許を無効にすることができない。
3 無効理由2(特許法第123条第1項第6号)について
(1)当審の判断
特許を受ける権利は,発明者が原始的に取得した上で,使用者等に承継される(特許法第29条第1項柱書,平成27年改正前特許法第35条第2項)ところ,被請求人が本件訂正発明1ないし5について記載した明細書を添付して特許出願をした事実から,本件特許の特許公報に記載されているとおり,「株式会社MKエレクトロニクス」の斉藤和明が本件訂正発明1ないし5の発明者であり,被請求人がその権利を承継したものと推定される。
一方,請求人は,甲1発明を根拠にして,本件訂正発明1ないし5は,被請求人が発明したものではないと主張している。
そこで,本件訂正発明1ないし5の発明者について検討する。
発明者とは,技術的思想の創作行為,とりわけ従前の技術的課題の解決手段に係る発明の特徴的部分の完成に現実に関与したものである。
本件訂正発明1ないし5の特徴的部分は,従来,螺旋回転する刃によって形成される被覆ケーブルの被覆のカット径をデジタル制御することができず(本件明細書段落【0006】),V刃は被覆を移動させるとき力が除去部に均等に伝わらず,芯材を傷つけて,或いは,折れやすくしてしまう(本件明細書段落【0009】)という課題があったところ,この課題を解決する手段,すなわち,V刃の欠点を解消し,回転する複数の刃の刃先で形成される内接円の径を任意の大きさにデジタル制御可能ならしめる手段(本件明細書段落【0011】)である。
そして,この手段は本件訂正発明1ないし5の「中心に被覆ケーブルを挿通する穴及び外側に刃と同数の貫通孔を有する回転体,及び前記回転体に連設し前記刃を前記被覆ケーブルの長手方向と直交する方向にスライド可能に保持するスライド溝を有する刃スライド保持部よりなる刃部回転機構」,及び,「前記刃の端部をスライド可能に係止するとともに先端部が前記刃部回転機構方向の外側に位置し反先端部側が中心側に位置する斜めの角度一定で閉じたガイド孔を有し前記貫通孔に位置し前記被覆ケーブルに対して遠近方向に回動しない角度固定の腕部,及び前記腕部を立設し前記被覆ケーブルを挿通する穴を有するドーナツ部よりなる回転刃部」という構成によって担われており,この点で甲1発明と相違するから,甲1発明は,本件訂正発明1ないし5の発明者を判断するには無関係というべきである。
また,このことは,審判請求書に添付して提出された甲第2号証ないし甲第9号証の2を含め,請求人が提出した証拠方法のすべてを検討しても何ら左右されるものではない。
よって,無効理由2に関する請求人の主張は,その前提自体が誤りであり,採用できない。
そして,本件訂正発明1ないし5について記載した明細書を添付して特許出願をした者が被請求人であること及び被請求人の主張内容からみて,被請求人は,本件訂正発明1ないし5に係る発明者から特許を受ける権利を正当に承継した者であると推認できる。
したがって,本件訂正発明1ないし5についての特許は,発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものではないから,特許法第123条第1項第6号に該当するということはできない。
すなわち,無効理由2に理由はない。
(2)請求人の主張について
請求人は,平成30年12月4日付けの回答書において,「なお,テーパーを利用して運動の方向を変更する機構は,『特開2000-152451号公報』(甲第10号証)に記載されているのみならず,機械要素の一般的な教科書において,それこそ数十年前から掲載されている極めて一般的な技術であることから(甲第11号証および甲12号証),請求人は,本件特許技術が進歩性を有しない技術であること及び冒認出願であることをあわせて主張いたします。」及び「請求人は,本件訂正前の特許発明に対し,特許を無効とする審判を請求しました。本件訂正前の特許発明は,被請求人自らが訂正請求をしなければならなかったことや,請求人の提出した平成30年11月9日付け上申書の記載から明らかなとおり,その大部分につき甲1発明を模倣したものです。本件訂正後の特許発明は,訂正前の特許発明のうち甲1発明に記載のない技術のみを殊更に抽出し強調することにより,本件特許発明の権利を維持しようとするものです。しかしながら,この部分の技術は,甲1発明に記載がないとはいえ,本上申書5(1)記載のとおり,機械要素の一般的な教科書の記載や,『特開2000-152451号公報』に記載された技術を模倣したものです。本件特許技術は,訂正前のものであれば,甲1発明の模倣というべきものですが,訂正後のものであっても,甲1発明の一部を極めて一般的な技術に置き換えたものに過ぎず,甲1発明と実質的に同一な発明であり,進歩性を有しないというにとどまらず,特許を受ける権利を有しない者による冒認出願であると考えます。いずれにせよ,本件特許発明は,無効とするのが相当です。」と主張する。
しかしながら,上記(1)のとおり,本件訂正発明1ないし5は,甲1発明と関係なく発明されたものであるから,特許を受ける権利を有しない者による冒認出願であるとは認められない。したがって,請求人の主張は採用することができない。
第7 むすび
以上のとおり,請求人が主張する理由及び証拠方法によっては,本件訂正により訂正された請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効にすることはできない。
また,他にこれら発明についての特許を無効とすべき理由を発見しない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
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2017-800151