特許無効審判
2017-800020
紙製包装容器の製造法及び紙製包装容器
- 審判番号
- 2017-800020
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2002-516167
- 登録番号
- 4831592
- 請求日
- 2017年02月08日
- 審決日
- 2022年03月02日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エスアイジー テクノロジー アーゲー
- 【請求人代理人】越川 隆夫
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】高石 秀樹
- 【被請求人】テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ
- 【被請求人代理人】井戸川 義信
- 【被請求人代理人】塩月 秀平
- 【被請求人代理人】▲高▼梨 義幸
- 【被請求人代理人】稲葉 良幸
- 【被請求人代理人】阿部 豊隆
- 【被請求人代理人】澤井 光一
- 【被請求人代理人】黒田 裕也
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 久保 克彦
- 審判官 石井 孝明
- 分類
- P1123.832-YAA(B65D) / P1123.854-YAA(B65D) / P1123.121-YAA(B65D) / P1123.537-YAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第134条の2第9項、特許法第29条第2項、特許法第134条の2第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第123条第1項第2号、特許法第134条の3、特許法第134条の2第6項、特許法第134条の2第3項、特許法第123条第1項第4号、特許法第169条第2項
- データ出所
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事件の表示
上記当事者間の特許第4831592号「紙製包装容器の製造法及び紙製包装容器」の特許無効審判事件についてされた平成30年8月1日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成30年(行ケ)第10174号、令和1年12月26日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第4831592号の特許請求の範囲を令和2年3月27日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2及び3について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求及び答弁の趣旨
審理の全趣旨から見て、請求人は、特許第4831592号の請求項2及び3に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、被請求人は、本件審判の請求は、成り立たない、審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求めている。
第2 手続の経緯
特許第4831592号(以下「本件特許」という。)に係る主な手続の経緯を以下に示す。
平成13年7月30日 本件特許に係る国際出願(優先権主張平成12年7月31日)
平成23年9月30日 設定登録
平成29年2月8日 審判請求
平成29年5月30日 訂正の請求及び答弁書 (以下「答弁書(1)」という。)
平成29年6月30日付け 審理事項通知書(1)
平成29年7月21日 請求人・被請求人口頭審理陳述要領書(以下「請求人要領書(1)」等という。)
平成29年8月8日付け 補正許否の決定
平成29年8月9日付け 審理事項通知書(2)
平成29年8月28日 請求人・被請求人口頭審理陳述要領書(以下「請求人要領書(2)」等という。)
平成29年9月11日 第1回口頭審理
平成29年11月1日 審決の予告
平成30年2月13日 訂正の請求及び上申書(以下「被請求人上申書(1)という。」)
平成30年4月26日 弁駁書(以下「弁駁書(1)」という。)
平成30年8月1日付け 平成30年2月13日にした訂正請求に係る訂正を認めた上で、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「一次審決」という。)
平成30年8月9日 一次審決送達
平成30年12月5日 一次審決の取消を求める訴訟(平成30年(行ケ)第10174号、以下「一次審決取消訴訟」という。)の提起
令和元年12月26日 一次審決を取り消す旨の判決言渡
令和2年2月13日 訂正請求申立書
令和2年3月11日付け 訂正請求のための期間指定通知(特許法第134条の3)
令和2年3月27日 訂正の請求及び上申書(以下、この訂正の請求を「本件訂正請求」といい、この上申書を「被請求人上申書(2)」という。)
令和2年6月25日 弁駁書(以下「弁駁書(2)」という。)
令和2年12月7日 答弁書(以下「答弁書(2)」という。)
令和2年12月21日 被請求人上申書(以下「被請求人上申書(3)」という。)
以下、「審判請求書」を「請求書」と、「甲第1号証」等を「甲1」等と略記する。
第3 訂正の請求について
1. 訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第4831592号の特許請求の範囲を、本件訂正請求に係る訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2及び3について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
なお、平成29年5月30日及び平成30年2月13日の訂正の請求は、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなす。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に
「【請求項2】
ウェブ状包装材料の縦線シールによるチューブ状成形、
チューブ状包装材料内への被充填物の充填、
チューブ状包装材料の横断方向への横線シール、
一次形状容器の成形、
該一次形状容器の個々の切断、
折目線に沿った折畳みによる頂部、側壁及び底部を持つ最終形状への成形によって得られる紙製包装容器であって、
該頂部成形による折り込み片が側壁面上に折畳まれ、頂部が片流れ屋根形状に成形されることを特徴とする紙製包装容器。」(以下、「訂正前発明2」という。)とあるのを、
「【請求項2】
折目線に沿った折畳みによって成形された前面パネル、裏面パネル、側面パネル、頂部及び底部を持ち、内部に被充填物が充填された紙製包装容器であって、
前記裏面パネル、前記頂部及び前記底部にわたり縦線シールが設けられ、
前記頂部及び前記底部に横線シールが設けられ、
前記前面パネルの高さが前記裏面パネルの高さよりも低く、
前記頂部に設けられた横線シールは、前記前面パネルよりも前記裏面パネルに近い側に位置し、かつ、前記裏面パネル側に倒されて前記縦線シールと重なっており、
該頂部成形による折り込み片が前記側面パネル上に斜めに折り込まれ、頂部が片流れ屋根形状に成形されることを特徴とする紙製包装容器。」
と訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に
「【請求項3】
該紙製包装容器が、片流れ屋根形状の頂部に注出口を持つ、請求項2記載による紙製包装容器。」とあるのを、請求項2を引用しない独立形式に改めた上で、
「【請求項3】
折目線に沿った折畳みによって成形された前面パネル、裏面パネル、側面パネル、頂部及び底部を持ち、内部に被充填物が充填された紙製包装容器であって、
前記裏面パネル、前記頂部及び前記底部にわたり縦線シールが設けられ、
前記頂部及び前記底部に横線シールが設けられ、
前記前面パネルの高さが前記裏面パネルの高さよりも低く、
前記頂部に設けられた横線シールは、前記前面パネルよりも前記裏面パネルに近い側に位置し、かつ、前記裏面パネル側に倒されて前記縦線シールと重なっており、
該頂部成形による折り込み片が前記側面パネル上に斜めに折り込まれ、頂部が片流れ屋根形状に成形され、
該紙製包装容器が、片流れ屋根形状の頂部に注出口を持つ、紙製包装容器。」
と訂正する。
また、この訂正が認められる場合には、請求項3は、請求項2とは別の請求単位として扱われるよう求めるものである。
2. 訂正の適否
(1) 訂正事項1について
ア. 訂正の目的の適否
(ア) 訂正前の「ウェブ状包装材料の縦線シールによるチューブ状成形、チューブ状包装材料内への被充填物の充填、チューブ状包装材料の横断方向への横線シール、一次形状容器の成形、該一次形状容器の個々の切断、折目線に沿った折畳みによる頂部、側壁及び底部を持つ最終形状への成形によって得られる紙製包装容器であって、」という記載を、「折目線に沿った折畳みによって成形された前面パネル、裏面パネル、側面パネル、頂部及び底部を持ち、内部に被充填物が充填された紙製包装容器であって、前記裏面パネル、前記頂部及び前記底部にわたり縦線シールが設けられ、前記頂部及び前記底部に横線シールが設けられ、前記前面パネルの高さが前記裏面パネルの高さよりも低く、」とする訂正(以下「訂正事項1-1」という。)は、訂正前発明2の「折目線に沿った折畳みにより頂部,側壁及び底部」を持つものから、「折目線に沿った折畳みによって形成された前面パネル,裏面パネル,側面パネル,頂部及び底部」を持つものに限定し,さらに,訂正前発明2の「縦線シール」と「横線シール」の位置を限定し,「前面パネルの高さ」と「裏面パネルの高さ」の関係を特定するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、
(イ) 「前記頂部に設けられた横線シールは、前記前面パネルよりも前記裏面パネルに近い側に位置し、かつ、前記裏面パネル側に倒されて前記縦線シールと重なっており、」との記載を追加する訂正(以下「訂正事項1-2」という。)は、「横線シール」の位置と、その倒される向き、並びに倒された際の「縦線シール」との関係を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、
(ウ) 訂正前の「該頂部成形による折り込み片が側壁面上に折畳まれ」という記載を、「該頂部成形による折り込み片が前記側面パネル上に斜めに折り込まれ」とする訂正(以下「訂正事項1-3」という。)は、訂正事項1-1で「側壁」の一部を「側面パネル」に改めたこととの整合を図るために「側壁面」を「前記側面パネル」に改めるとともに、「折り込み片」の折り畳みは折り込まれる態様を含むものであるところ、折り込まれる向きを「前記側面パネル上に斜め」に限定したものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(エ) よって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に規定する、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ. 新規事項の有無
(ア) 訂正事項1-1の「折目線に沿った折畳みによって成形された前面パネル、裏面パネル、側面パネル、頂部及び底部を持ち、」は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)の段落【0029】の「側壁パネル3(前面3a、側面3b、裏面3c)」との記載、段落【0031】の「折目線に沿って折畳んで頂部、側壁及び底部を持つ最終形状に成形する紙製包装容器19」との記載、段落【0030】の「側面パネル3bの上方の折目線7c1は隣接する前面パネル3a及び裏面パネル3cの対応する折目線7a1と7a2とを結ぶ線上にある」との記載に基づくものであり、
訂正事項1-1の「内部に被充填物が充填された紙製包装容器」は、段落【0031】の「チューブ状包装材料内に充填パイプ14から被充填物を充填し、」との記載に基づくものであり、訂正事項1-1の「前記裏面パネル、前記頂部及び前記底部にわたり縦線シールが設けられ」は、【図3】の展開概略図において裏面パネル3cが幅方向両端に配置されたウェブ状包装材料が示され、段落【0029】に「包装材料の長手方向であって包装材料の端に設けられた縦シール用のシール領域5」と記載され、かつ当該シール領域5は、第3図をみると頂部である容器パネル4a2から底部である底面4aにかけて延びていることが看取できるから、ウェブ状包装材料の幅方向両端の裏面パネル3cが、頂部から底部にわたり、縦線シールにより繋ぎ合わされて紙製包装容器が組み立てられた際には、裏面パネル3cに縦線シールが設けられることになることに基づくものであり、
訂正事項1-1の「前記頂部及び底部に横線シールが設けられ」は、図3に頂部パネル4a1及び底面4aに横線シールのための横シール領域6が示され、段落【0029】に「チューブ状包装材料の横断方向であって隣接する前後に設けられた横線シールのための横シール領域6」と記載されていることから、横線シールにより紙製包装容器が組み立てられた際には、横線シールが頂部及び底部に設けられることになることに基づくものであり、
訂正事項1-1の「前記前面パネルの高さが前記裏面パネルの高さよりも低く、」は、段落【0030】の「前面パネル3aの高さが裏面パネル3cの高さより低く、」との記載に基づくものである。
(イ) 訂正事項1-2の「前記頂部に設けられた横線シールは、前記前面パネルよりも前記裏面パネルに近い側に位置し、かつ、前記裏面パネル側に倒されて前記縦線シールと重なっており、」は、【図3】の紙製包装容器の展開概略図において、容器の頂部を形成するパネル4a1、4a2の縦方向(【図3】において上下方向)の長さが、前者が後者よりも長い構成となっており、頂部に設けられた横線シールが前面パネル3aよりも裏面パネル3cに近い側に位置することが示されていること、【図1】及び【図7】において頂部パネル4a1に設けられた横線シール6が前面パネル3aよりも裏面パネル3cに近い側に位置して当該横線シール6が裏面パネル3c側に倒されていること、及び、段落【0036】の「この態様では、・・・横線シール6が上側(背面側)に倒され、・・・頂部パネル4a1と倒された横シール6とで片流れ屋根形伏Aを形成した容器」との記載に基づくものであり、かつ、【図3】には、斜線で塗りつぶされた部分である縦線シール5と、右端から図上左方に細長く伸びる横線シール6とが重なっていることの図示があり、さらに【図1】及び【図7】にも、縦線シール5と、横線シール6とが重なっていることの図示がある。
訂正事項1-2について、請求人は、弁駁書(2)において、「横線シールは、・・・前記裏面パネル側に倒されて前記縦線シールと重なって」の「重なって」の語は、本件特許明細書中の説明及び図面に見当たらない。横線シールが縦線シールの上に乗るとの記載もないし、図面から横線シールが縦線シールに当接していることも不明である。よって、この点についての訂正は、新規事項の追加にあた」る旨、主張する(弁駁書(2)87頁6行~88頁11行)。しかし、上記に示したように、本件特許の【図3】、【図1】及び【図7】には、縦線シール5と、横線シール6とが重なっていることの図示があるから、請求人の主張は失当である。
(ウ) 訂正事項1-3の「折り込み片が前記側面パネル上に斜めに折り込まれ」は、段落【0022】の「流通過程における物理的機械的な外部影響を受け易い容器頂部の四隅のうち、背面側の2隅若しくはその近傍が、斜に折り込まれたフラップによって横から保護されカバーされるので、容器ダメージを少なくすることができる。」との記載に基づくものである。
(エ) よって、訂正事項1は、いずれも本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ. 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア) 訂正事項1-1
a 「特許は,物の発明,方法の発明又は物を生産する方法の発明についてされるところ,特許が物の発明についてされている場合には,その特許権の効力は,当該物と構造,特性等が同一である物であれば,その製造方法にかかわらず及ぶこととなる。したがって、物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても、その特許発明の技術的範囲は、当該製造方法により製造された物と構造、特性等が同一である物として確定されるものと解するのが相当である」(最高裁平成24年(受)第1204号、第2658号同27年6月5日第二小法廷判決・民集69巻4号904頁参照。甲1,甲2)。と判示されている。
これを訂正前発明2についてみるに、訂正前発明2の特許請求の範囲(請求項2)の記載は、「ウェブ状包装材料の縦線シールによるチューブ状成形、チューブ状包装材料内への被充填物の充填、チューブ状包装材料の横断方向への横線シール、一次形状容器の成形、該一次形状容器の個々の切断、折目線に沿った折畳みによる頂部、側壁及び底部を持つ最終形状への成形によって得られる紙製包装容器であって、該頂部成形による折り込み片が側壁面上に折畳まれ、頂部が片流れ屋根形状に成形されることを特徴とする紙製包装容器。」であり、訂正前発明2は、物(紙製包装容器)の発明である。
そうすると、訂正前発明2の特許請求の範囲には、「ウェブ状包装材料の縦線シールによるチューブ状成形、チューブ状包装材料内への被充填物の充填、チューブ状包装材料の横断方向への横線シール、一次形状容器の成形、該一次形状容器の個々の切断、折目線に沿った折畳みによる頂部、側壁及び底部を持つ最終形状への成形によって得られる」との紙製包装容器の製造方法(本件製造方法)の記載があるが、訂正前発明2の要旨は、本件製造方法により製造された物に限定して認定されるべきではなく、本件製造方法により製造された物と構造、特性等が同一である物として認定されるべきである。
そして、訂正前発明2の特許請求の範囲の記載によれば、「縦線シール」と「横線シール」により容器とされ、容器に「被充填物が充填」され、「折目線に沿った折畳みによる頂部、側壁及び底部を持つ」ようにされ、「頂部成形による折り込み片」が「側壁面上に折畳まれ」、「頂部が片流れ屋根形状に成形され」た「紙製包装容器」は、本件製造方法の構成により製造された物と構造、特性等が同一の物であると認められる。
したがって、訂正前発明2の要旨は、「縦線シールと横線シールにより容器とされ、容器に被充填物が充填され、折目線に沿った折畳みにより頂部、側壁及び底部を持つようにされた紙製包装容器であって、該頂部成形による折り込み片が側壁面上に折畳まれ、頂部が片流れ屋根形状に成形されることを特徴とする紙製包装容器」であると解される。
このように訂正前発明2は、「頂部」について、「頂部成形による折り込み片が側壁面上に折畳まれ、頂部が片流れ屋根形状に成形され」る構成(構造)を備えることを特徴とする紙製包装容器の発明である。
b 訂正事項1-1は、訂正前発明2の「ウェブ状包装材料の縦線シールによるチューブ状成形、チューブ状包装材料内への被充填物の充填、チューブ状包装材料の横断方向への横線シール、一次形状容器の成形、該一次形状容器の個々の切断、折目線に沿った折畳みによる頂部、側壁及び底部を持つ最終形状への成形によって得られる紙製包装容器であって、」との記載を、本件発明2の「折目線に沿った折畳みによって形成された前面パネル、裏面パネル、側面パネル、頂部及び底部を持ち、内部に被充填物が充填された紙製包装容器であって、前記裏面パネル、前記頂部及び前記底部にわたり縦線シールが設けられ、前記頂部及び底部に横線シールが設けられ、前記前面パネルの高さが前記裏面パネルの高さより低く、」との記載に訂正するものである。
しかるところ、訂正事項1-1は、訂正前発明2の「折目線に沿った折畳みにより頂部、側壁及び底部」を持つものから、「折目線に沿った折畳みによって形成された前面パネル、裏面パネル、側面パネル、頂部及び底部」を持つものに限定し、さらに、訂正前発明2の「縦線シール」と「横線シール」の位置を限定し、「前面パネルの高さ」と「裏面パネルの高さ」の関係を特定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には当たらないものと認められる。
(イ) 訂正事項1-2
訂正事項1-2は、訂正前の請求項2の「横線シール」が設けられる位置を、「前記前面パネルよりも前記裏面パネルに近い側に位置し」と限定し、及び、倒される向きを、「前記裏面パネル側」に限定し、並びに、倒された際の「縦線シール」との関係を、「前記縦線シールと重なっており」、と限定するものであるから、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(ウ) 訂正事項1-3
訂正前の「該頂部成形による折り込み片が側壁面上に折畳まれ」という記載を、「該頂部成形による折り込み片が前記側面パネル上に斜めに折り込まれ」とする訂正は、上記ア.(ウ)に記載したように、訂正事項1-1で「側壁」の一部を「側面パネル」に改めたこととの整合を図るために「側壁面」を「前記側面パネル」に改めるとともに、「折り込み片」の折り畳みは折り込まれる態様を含むものであるところ、折り込まれる向きを「前記側面パネル上に斜め」に限定したものであるから、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(エ) 請求人は、弁駁書(2)において、次の主張をしている。
(当審注 数字を〇で囲んだものについては、「〇1」等と代用表記する。)
a 「訂正前本件発明2は、〇1チューブ状包装材料内への被充填物の充填の後、〇2一次形状容器の成形を行い、〇3「該」一次形状容器」を個々に切断し、〇4最終形状へ成形するという一連の製造プロセスにより得られる紙製包装容器の発明である」が、今回の訂正によって製造プロセスが削除されている。
b 横線シールが横断方向へ横断しなくてもよいように拡張されたため、訂正前の本件発明2には含まれない図R1(弁駁書(2)92頁)の展開図から組み立てられるような容器が、本件訂正発明2の技術的範囲に含まれることとなった。したがって、本件訂正発明2は、本件訂正により実質的に拡張ないしは変更されたこととなる。(弁駁書(2)88頁13行~96頁1行)
しかし、上記主張aは、上記訂正事項1-1が上記(1)ウ.(ア)に示したとおりであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないのであるから、請求人の主張は失当である。
そして、上記主張bは、本件発明2の「紙製包装容器」が、「牛乳、ジュース、清酒、焼酎、ミネラルウォーター及びその他飲料の液体食品を包装する」(本件特許明細書の段落【0041】)容器として機能するものであることからすると、本件発明2の「前記裏面パネルに縦線シールが設けられ、前記頂部及び前記底部に横線シールが設けられ」ることは、折目線で折った紙と紙をシールして、液体を収容する閉じた空間を形成するように「縦線シール」及び「横線シール」が配置されたものと解することができ、「縦線シール」と「横線シール」により容器とすることを特定するものといえる。そうすると、横線シールが横断方向へ横断しなくてもよいようなものは、液体を収容する閉じた空間を形成するものであるとはいえず、上記主張bのような容器は本件発明2に含まれるものであるとはいえないから、請求人の主張は、失当である。
(オ) まとめ
訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
(2) 訂正事項2について
ア.(ア) 訂正事項2のうち、訂正前請求項3について、「該紙製包装容器が、片流れ屋根形状の頂部に注出口を持つ、請求項2記載による紙製包装容器。」という記載を、「該紙製包装容器が、片流れ屋根形状の頂部に注出口を持つ、紙製包装容器。」と、請求項2を引用しない独立形式に改める訂正(以下「訂正事項2-1」という。)は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ) 訂正事項2のうち、訂正前の請求項3が引用する請求項2を、本件訂正請求後の請求項2の記載に訂正する訂正(以下「訂正事項2-2」という。)は、実質的に上記訂正事項1-1、1-2及び1-3からなるものであるから、上記訂正事項1-1、1-2及び1-3のそれぞれの目的から、訂正事項2-2は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ウ) よって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、第3号及び第4号に規定する、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ.(ア) 訂正事項2-1の独立形式に改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではなく、本件特許明細書の範囲内でした訂正であることは明らかである。
(イ) 訂正事項2-2は、上記ア.(イ)に示したとおり、実質的に訂正事項1-1、1-2及び1-3からなるものであり、訂正事項1-1、1-2及び1-3は、上記(1)イ.に示したとおり本件特許明細書の範囲内の訂正であることから、訂正事項2-2も、本件特許明細書の範囲内でした訂正である。
(ウ) 請求人は、弁駁書(1)において、
a 本件特許明細書の段落【0029】には「側壁パネル3(前面3a、側面3b、裏面3c)」と記載され、本件発明3の「該頂部成形による折り込み片が側壁面上に斜めに折り込まれ、前記背面側が高くなるように頂部が片流れ屋根形状に成形され、」は、「折り込み片が前面3aや裏面(背面)3c上に斜めに折り込まれ、頂部が片流れ屋根形状に成形される紙製包装容器」を含むこととなるが、本件特許明細書には、このような紙製包装容器は一切記載されていない旨(弁駁書(1)9頁下から4行~10頁16行)、
b また、本件発明3の「頂部に設けられた横線シール」が「前面より前記背面に近い側に位置」することについて、本件特許明細書には一切記載されていない旨(弁駁書(1)10頁17~22行)、それぞれ主張する。
しかし、上記主張aについては、紙製包装容器の側壁は、人から見える特定の面を前面としたときに、前面に対向する背面、前面と背面の間の側壁面からなるものとして理解することができるから当を得た主張ではない。
また、上記主張bについても、上述のとおり、【図3】の紙製包装容器の展開概略図の記載、【図1】及び【図7】の横線シールの図示内容、及び、段落【0036】の記載からみて、本件特許明細書に記載されていないものではない。
(エ) よって、訂正事項2は、いずれも本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ.(ア) 訂正事項2-1は、上記イ.(ア)に示したように、記載形式を独立形式に改める訂正であるから、実質的な内容の変更を伴うものではなく、特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。訂正事項2-2は、上記ア.(イ)に示したとおり、実質的に訂正事項1-1、1-2および1-3からなるものであり、上記(1)ウ.(ア)~(ウ)にそれぞれ示したように、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には当たらないから、訂正事項2-2も、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には当たらない。
(イ) 請求人は、弁駁書(1)において、
a 本件発明3は、訂正前の請求項3に係る発明には含まれていなかった「底部への横線シールが設けられていないもの」をも含むこととなり、実質上特許請求の範囲を拡張するものである旨(弁駁書(1)11頁1~14行)、
b 訂正前の請求項3は、「頂部、側壁、底部」を持つ円筒形状と捉えることができるのに対し、本件発明3は、「頂部、底部、前面、背面、側面(側面が1面)」を持つ断面三角形若しくは「頂部、底部、前面、背面、側面、側面(側面が2面)」を持つ断面四角形、その他の断面多角形と捉えることができ、実質上特許請求の範囲を変更するものである旨(弁駁書(1)11頁15~末行)、それぞれ主張する。
しかし、上記主張aについて検討すると、訂正後の請求項3は、「前記頂部及び前記底部に横線シールが設けられ」たものに限定されたから、上記請求人の主張は失当である。
また上記主張bについても、訂正前は「頂部、側壁、底部」と、前面と背面を含むか否か特定されていなかったものを、含むものに限定したのであるから、実質上特許請求の範囲を変更するものであるとの上記主張bは、当を得たものではない。
(ウ) したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3) 一群の請求項・別の訂正単位とする求めについて
訂正前の請求項3は、訂正前の請求項2を引用するものであるが、訂正事項2の引用関係の解消を目的とする訂正が認められ、当該訂正が認められる場合には、訂正後の請求項3は、請求項2とは別の訂正単位として扱われることを求めるものであるから、訂正事項1の請求項2の訂正及び訂正事項2の請求項3の訂正は、いずれも特許法第134条の2第3項に規定する、一群の請求項ごとにされたものであって、訂正後の請求項3は請求項2とは別の訂正単位とされるものである。
3. 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項2及び3について訂正を認める。
第4 本件特許発明
本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項2及び3に係る発明(以下「本件発明2」及び「本件発明3」という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項2及び3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
1. 本件発明2
「【請求項2】
折目線に沿った折畳みによって成形された前面パネル、裏面パネル、側面パネル、頂部及び底部を持ち、内部に被充填物が充填された紙製包装容器であって、
前記裏面パネル、前記頂部及び前記底部にわたり縦線シールが設けられ、
前記頂部及び前記底部に横線シールが設けられ、
前記前面パネルの高さが前記裏面パネルの高さよりも低く、
前記頂部に設けられた横線シールは、前記前面パネルよりも前記裏面パネルに近い側に位置し、かつ、前記裏面パネル側に倒されて前記縦線シールと重なっており、
該頂部成形による折り込み片が前記側面パネル上に斜めに折り込まれ、頂部が片流れ屋根形状に成形されることを特徴とする紙製包装容器。」
2. 本件発明3
「【請求項3】
折目線に沿った折畳みによって成形された前面パネル、裏面パネル、側面パネル、頂部及び底部を持ち、内部に被充填物が充填された紙製包装容器であって、
前記裏面パネル、前記頂部及び前記底部にわたり縦線シールが設けられ、
前記頂部及び前記底部に横線シールが設けられ、
前記前面パネルの高さが前記裏面パネルの高さよりも低く、
前記頂部に設けられた横線シールは、前記前面パネルよりも前記裏面パネルに近い側に位置し、かつ、前記裏面パネル側に倒されて前記縦線シールと重なっており、
該頂部成形による折り込み片が前記側面パネル上に斜めに折り込まれ、頂部が片流れ屋根形状に成形され、
該紙製包装容器が、片流れ屋根形状の頂部に注出口を持つ、紙製包装容器。」
第5 当事者の主張
1. 請求人の主張の概要及び証拠方法
請求人は、次の無効理由1及び2を主張し(第1回口頭審理調書)、
さらに、弁駁書(1)とともに甲20~甲22を提出して、弁駁書(2)とともに甲23~甲101を提出した。
(1) 無効理由
ア. 無効理由1(特許法第36条第6項第2号)
本件発明2及び3は、「ウェブ状包装用材料の縦線シールによるチューブ状成形、チューブ状包装材料内への被充填物の充填、チューブ状包装材料の横断方向への横線シール、一次形状容器の成形、該一次形状容器の個々の切断、折目線に沿った折り畳みによる頂部、側壁及び底部を持つ最終形状への成形によって得られる」という、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されているため、明確でないものであるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するので、それらの特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
イ. 無効理由2(特許法第29条第2項)
本件発明2及び3は、甲5に記載された発明、並びに甲6~甲13、甲16及び甲17に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2) 証拠方法
請求人は、請求書とともに甲1~甲7を、請求人要領書(1)とともに甲8~甲19を、弁駁書(1)とともに甲20~甲22を、弁駁書(2)とともに甲23~甲101を提出した。
なお、甲14~甲18については、上記「第2 手続の経緯」に係る補正許否の決定により許可しないとした理由に係る証拠であるが(以下「(不許可)」と付す。)、その後の第1回口頭審理において、甲16及び甲17を用いる理由については採用した(第1回口頭審理調書参照。以下「(口頭審理採用)と付す。」)。
甲1:最高裁判決(平成24年(受)第1204号)
甲2:最高裁判決(平成24年(受)第2658号)
甲3:「特許・実用新案審査基準 第II部第2章第3節 明確性要件」「4.3 製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合」、2016年3月23日更新
甲4:「特許・実用新案審査ハンドブック 第II部第2章 特許請求の範囲の記載要件」「2203 物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合の審査における留意事項」、2016年9月28日更新
甲5:独国実用新案第29716230号明細書
甲6:実願昭60-115780号(実開昭62-25623号)のマイクロフィルム
甲7:特開平5-310247号公報
甲8:特開平9-207935号公報
甲9:特開平9-234043号公報
甲10:特開2000-53127号公報
甲11:欧州特許出願公開第0947433号明細書
甲12:特開2000-25762号公報
甲13:特開平9-48432号公報
甲14:「Portion package for pourable food products」、Research Disclosure database number 414041、1998年10月(不許可)
甲15:特開平11-91792号公報(不許可)
甲16:特開平11-310230号公報(口頭審理採用)
甲17:特開平11-105857号公報(口頭審理採用)
甲18:イタリア国意匠出願(TO 2000 O 000049)(不許可)
甲18の2:請求人代理人、甲18と甲18の訳文との対応関係、平成31年2月5日作成
甲19:特開平7-10150号公報
甲20:中村直人、「枕状一次形状容器からの底部折り畳み形態1~3」、平成30年4月18日作成
甲21:中村直人、「カートンブランク方式と本件特許の方式の製造方法の比較図」、平成30年4月18日作成
甲22:清水正三、「特願2002-516167号の意見書」、平成22年9月2日
甲23:澤井光一、甲5の翻訳文、平成29年7月作成
甲23の2:請求人代理人、甲5と甲5訳文である甲23との対応関係、平成31年2月5日
甲24:特許第4831592号公報
甲26:実願昭61-88442号(実開昭62-200522号)マイクロフィルム
甲27:意匠登録第1068216号公報
甲28:意匠登録第1083589号公報
甲29:特開昭56-95807号公報
甲30:特開昭64-37306号公報
甲31:英国特許出願公告第1326697号明細書
甲31の2:甲31と甲31の訳文との対応関係
甲32:特表2000-506821号公報
甲33:実願昭61-88442号(実開昭62-200522号)のマイクロフィルム
甲34:特開平11-20823号公報
甲35の1:Leifeld und Lemke Prozesstechnik GmbH & Co. KG から SIG Combibloc GmbH への手紙、1999年3月22日作成
甲35の1A:Matthias Dmmers, GBV/RungeへのMEMO、1999年4月26日作成
甲35の1B:SIG Combitec International Systems GmbH, DIPL.- ING. DETLEV RUNGE への手紙、1999年4月20日作成
甲35の2:Leifeld und Lemke Prozesstechnik GmbH & Co. KG から GEA AGへの手紙、1999年3月23日
甲35の3:Leifeld und Lemke Prozesstechnik GmbH & Co. KG から Stork Food & Dairy Systems への手紙、1999年4月14日作成
甲35の4:Leifeld und Lemke Prozesstechnik GmbH & Co. KG から United Paper Mills への手紙、1999年3月24日作成
甲35の5:Leifeld und Lemke Prozesstechnik GmbH & Co. KG から International Paperへの手紙、1999年3月9日作成
甲35の6:Leifeld und Lemke Prozesstechnik GmbH & Co. KG から Tetra Pakへの手紙、1999年2月17日作成
甲35の6の2:甲35の6と甲35の6の訳文との対応関係
甲36:Josef Finnah、Declaration、平成31年1月9日作成
甲50:特許第4831592号認証付き原簿(認証日、平成31年2月6日)
甲51:Josef Finnah、Statement、2019年5月作成
甲52:特公昭63-17704号公報
甲53:意匠登録第1068975号公報
甲54:塩田健治、陳述書、2019年8月22日作成
甲55:山戸昇司、陳述書、2019年8月28日作成
甲56の1:山戸昇司、動画、2019年9月3日
甲56の2:山戸昇司、動画、2019年9月3日
甲56の3:山戸昇司、動画、2019年9月3日
甲56の4:山戸昇司、動画、2019年9月3日
甲56の5:山戸昇司、動画、2019年9月3日
甲56の6:山戸昇司、動画、2019年9月3日
甲57:山戸昇司、写真撮影報告書、2019年9月4日
甲58:住本充弘、陳述書、2019年9月10日
甲59:実開昭62-185204号公報及び実願昭61-73372号(実開昭62-185204号)のマイクロフィルム
甲60:寄本勝美監修、「紙パック宣言」、2009年8月25日、第1版第1刷発行、84~87ページ
甲61:水口眞一監修、「輸送・工業包装の技術」、(株)フジ・テクノシステム、2002年8月31日、初版第1刷発行、248~250ページ
甲62:実願昭60-58458号(実開昭61-175117号)のマイクロフィルム
甲63:実願昭60-68508号(実開昭61-183811号)のマイクロフィルム
甲64:特開昭63-64733号公報
甲65:特開平6-8930号公報
甲66:中井英一編集、「最新 包装システム化事典」、(株)フジ・テクノシステム、1995年6月1日、初版第1刷発行、708~727ページ
甲67:特開平6-183431号公報
甲68:特公平4-13217号公報
甲69:請求人、訴状(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成30年12月5日提出
甲70:請求人、上申書(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成30年12月11日提出
甲71:請求人、上申書(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成30年12月13日提出
甲72:請求人、証拠説明書(1)(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成30年12月19日提出
甲73:請求人、上申書(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成31年1月9日提出
甲74:請求人、訴状訂正申立書(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成31年1月9日提出
甲75:請求人、原告第1準備書面(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成31年1月16日提出
甲76:請求人、証拠説明書(2)(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成31年1月16日提出
甲77:請求人、訂正申立書(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成31年1月25日提出
甲78:請求人、証拠説明書(3)(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成31年2月7日提出
甲79:請求人、訂正申立書(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成31年2月14日提出
甲80:請求人、証拠説明書(4)(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成31年2月14日提出
甲81:請求人、原告第2準備書面(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年6月10日提出
甲82:請求人、証拠説明書(5)(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年6月10日提出
甲83:請求人、検証申出書(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年8月30日提出
甲84:請求人、原告第3準備書面(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年8月30日提出
甲85:請求人、証拠説明書(6)(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年8月30日提出
甲86:請求人、検証申出書(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年9月5日提出
甲87:請求人、証拠説明書(7)(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年9月5日提出
甲88:請求人、原告第4準備書面(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年9月11日提出
甲89:請求人、証拠説明書(8)(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年9月11日提出
甲90:請求人、原告第5準備書面(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年10月8日提出
甲91:請求人、証拠説明書(9)(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年10月8日提出
甲92:請求人、原告第6準備書面(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年11月26日提出
甲93:新村出編、「広辞苑 第四版」、岩波書店、1991年11月15日第四版第一刷発行、471ページ
甲94:実願昭60-188931号(実開昭62-95520号)のマイクロフィルム
甲95:意匠登録第1027266号公報
甲96:意匠登録第1057053号公報
甲97:意匠登録第1057075号公報
甲98:意匠登録第1057076号公報
甲99:意匠登録第1057077号公報
甲100:意匠登録第1057078号公報
甲101:実願昭55-108541号(実開昭57-37719号)のマイクロフィルム
2. 被請求人の主張及び証拠方法
被請求人は、請求人の主張に対して次の主張をしている。
(1) 請求人の無効理由に対して
ア. 無効理由1に対して
本件発明2は、製造方法の記載が削除されたものであって、その物(紙製包装容器)の構造又は特性を表していることがその請求項の記載から明らかであるので、本件発明2は明確性要件を充足するものである。(被請求人上申書(1)5頁9行~下から5行)
また、本件発明3は、「紙製包装容器」の構造又は特性を明らかにしたものであって、最高裁判決(最二小判平成27年6月5日(平成24年(受)1204号、同2658号))における「一般的には、当該製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表しているのかが不明であり、権利範囲についての予測可能性を奪われる」ことには該当しないものであるから、本件発明3は、不可能・非実際的事情がなくても明確性要件を充足するものである。(被請求人上申書(1)5頁下から4行~6頁13行)
イ. 無効理由2に対して
本件発明2及び3は、甲5~甲13、甲16及び甲17に記載された技術的事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではない。(第1回口頭審理調書,被請求人上申書(1)13頁13~16行、15頁12~15行)
(2) 証拠方法
被請求人は、被請求人要領書(1)とともに乙1を、被請求人上申書(2)とともに乙2及び乙3を、答弁書(2)とともに乙4~乙34を提出し、被請求人上申書(3)とともに乙23の抄訳及び乙28の抄訳を提出した。
乙1:澤井光一、「甲5の翻訳文」、平成29年7月作成
乙2:特開2008-150069号公報
乙3:特開2007-161257号公報
乙4:被請求人、答弁書(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成31年1月23日提出
乙5:被請求人、被告第1準備書面(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成31年4月8日提出
乙6:被請求人、証拠説明書(1)(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、平成31年4月8日提出
乙7:被請求人、被告第2準備書面(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年7月26日提出
乙8:被請求人、証拠説明書(2)(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年7月26日提出
乙9:被請求人、被告第3準備書面(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年11月19日提出
乙10:被請求人、証拠説明書(3)(平成30年(行ケ)10174号審決取消請求事件)、令和元年11月19日提出
乙11:特表2016-522124号公報
乙12:特表2018-506485号公報
乙13:特開2017-202868号公報
乙14:特表2016-527152号公報
乙15:特表2017-526550号公報
乙16:特表2018-506485号公報
乙17:特表2004-529008号公報
乙18:特開平11-171233号公報
乙19:実願昭49-128042号(実開昭51-54067号)のマイクロフィルム
乙20:米国特許第3082583号明細書
乙21:米国特許第3263391号明細書
乙22:特公昭35-16648号公報
乙23:米国特許第4891929号明細書
乙24:特公昭30-5447号公報
乙25:特公昭28-5500号公報
乙26:特公昭34-3200号公報
乙27:特公昭41-10318号公報
乙28:米国特許第3167232号明細書
乙29:実願平2-21355号(実開平3-111925号)のマイクロフィルム
乙30:特表平5-505999号公報
乙31:特開平7-187181号公報
乙32:特開平10-194207号公報
乙33:特開2000-313075号公報
乙34:新村出編、「広辞苑 第五版」、岩波書店、1998年11月11日第五版第一刷発行、2100ページ
第6 無効理由についての当審の判断
1. 無効理由1(特許法第36条第6項第2号)について
(1) 本件発明2について
ア. 本件発明2は、訂正前の請求項2の記載から、上記「本件製造方法の構成」に係る記載が削除され、請求人が主張する「物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている」ものではない。
イ.(ア) 請求人は、弁駁書(1)あるいは弁駁書(2)において、
a 訂正前の請求項2の「ウェブ状包装材料の縦線シールによるチューブ状成形、チューブ状包装材料内への被充填物の充填、チューブ状包装材料の横断方向への横線シール、一次形状容器の成形、該一次形状容器の個々の切断、」の記載が削除されたため、本件発明2の発明の外延が不明確である旨(弁駁書(1)12頁7~21行)、
b 本件発明2では、側面の数を限定していないので、断面4角形のものだけでなく、断面多角形のものをすべて含むことになり、発明が不明確である旨(弁駁書(1)12頁22行~13頁1行、弁駁書(2)96頁7行~97頁6行)、それぞれ主張する。
(イ) しかし、上記主張aについては、上記「第3 2.(1)ウ. (ア)a」で述べたように、最高裁判決(最二小判平成27年6月5日(平成24年(受)1204号、同2658号))の判示からすると、訂正前の請求項2の「本件製造方法の構成」の技術的範囲は、当該製造方法により製造された、「縦線シール」と「横線シール」により容器とされ、容器に「被充填物が充填」され、「折目線に沿った折畳み」により「頂部、側壁及び底部を持つ」ようにされた「紙製包装容器」と、構造、特性等が同一である物と解されるところ、これらの事項は、いずれも本件発明2において特定されており、物として変わるものではないといえるから、訂正前の請求項2から、本件製造方法の構成に係る記載が削除されたことをもって、本件発明2の発明の外延が不明確であるとする上記主張aは、当を得たものではない。
(ウ) また、上記主張bについても、本件発明2は、「前面パネル、裏面パネル、側面パネル、頂部及び底部」を持つ紙製包装容器であって、断面4角形のもののみに限定して解釈されるべき理由もないから、側面の数を限定せず、断面4角形のもの以外の断面多角形のものをすべて含むことになることをもって、発明が不明確であるとする請求人の上記主張bは、当を得たものではない。
よって、本件発明2は明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
(2) 本件発明3について
ア. 訂正事項2は、上記訂正前請求項3について、「該紙製包装容器が、片流れ屋根形状の頂部に注出口を持つ、請求項2記載による紙製包装容器。」という記載を、「該紙製包装容器が、片流れ屋根形状の頂部に注出口を持つ、紙製包装容器。」と、請求項2を引用しない独立形式に改める訂正事項2-1と、
イ. 訂正事項2のうち、訂正前の請求項3が引用する請求項2を、本件訂正請求後の請求項2の記載に訂正する訂正事項2-2とからなるものである。
ウ. そうすると、本件発明3も、訂正前の請求項2の記載から、上記「本件製造方法の構成」に係る記載が削除され、請求人が主張する「物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている」ものではない。
また、弁駁書(1)及び弁駁書(2)における請求人の反論は、上記(1)イ.(ア)a及びbに記載した本件発明2についてのものと同様に、当を得たものではない。
(3) 無効理由1についてのまとめ
したがって、本件発明2及び3は、いずれも明確であり、その特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号の規定に適合するから、特許法第123条第1項第4号に該当しない。
よって、無効理由1には理由がない。
2. 無効理由2(特許法第29条第2項)について
(1) 甲5の記載事項及び甲5発明
ア. 甲5の記載事項
甲5(独国実用新案第29716230号明細書)には、以下の記載がある。
なお、訳文は請求人が提出したものを参照する(被請求人要領書(2)「請求人提出の訳文を採用することに異論はない。」3頁「6(1)ア」)。
(ア) 「流動性媒体のための包装」
「本考案は、流動性媒体のための包装容器であって、少なくとも単層で容積を画定する被覆材料からなり、蓋要素により再閉鎖可能な開口を備え、該開口は、最初の充填後に初めて開放する前には、少なくとも、開口を取り囲む被覆材料と接続された実質的に平たい封印要素によって閉鎖されている、包装容器に関する。」(明細書1頁1~6行,訳文2頁8~11行)
(イ) 「従来技術において同種の包装容器が公知であり、多様に用いられている。特に、この種の包装容器は、例えば乳製品やジュースなどの液体のために使用される。」(1頁8行~11行,訳文2頁12行~13行)
「通常,このような包装容器は、賦形性で安定した外被から、例えば厚紙またはそれに類するものからなる。外被は、内面に液密のラミネート、フィルム、またはそれに類するものを有している。通常、このような包装容器は立方体形状である。面の領域には、蓋要素によって再閉鎖可能に形成された開口が設けられている。」(1頁13行~18行,訳文2頁14行~18行)
「このような包装容器は、開口領域において、開口が封印要素により、好ましくはフィルムにより閉鎖されることによって封印されている。それによって、包装容器の液密性が保証され、内容物の汚染が回避される。」(1頁20行~23行,訳文2頁19行~21行)
「通常、このような包装容器は、蓋要素を取り去り、封印要素を破壊するか、または取り囲む材料から少なくとも部分的に分離することによって開放される。そのことから、付加的に開放するという欠点があり、さらに、封印要素の完全に切り離された部分が包装容器の中に落ちかねない。それによって内容物が汚染される可能性があるか、または切り離された部分が不都合にも内容物と一緒に注ぎ出される。開口領域において封印要素が部分的にしか分離されないと、通常、内容物を調節しながら注ぎ出すことができなくなる。その場合、液体はどっと流れ出す。」(2頁1行~10行,訳文2頁22行~3頁4行)
「さらに,従来技術において、封印要素が、例えば、封印要素と接続されており、外側から把持することができ、かつ開口を閉鎖する封印要素の領域と一緒に取り去ることが可能である粘着テープなどの、外側の取っ手を備えることが公知である。次に、蓋要素が用いられる。この場合も付加的に開放する必要という欠点があり、さらに、付加的な要素を用いなければならない。このことは、属性的に対応する種類の大量生産品では極めて不経済である。」(2頁12行~19行,訳文3頁5行~10行)
(ウ) 「このような従来技術を出発点として、本考案は、属性的に対応する種類の包装容器を展開して経済的に製造できるようにするとともに、調節される開放と封印要素の取り去りとを保証するという課題にもとづいている。」(2頁21行~24行,訳文3頁11行~13行)
「上記課題の技術的解決のために、属性的に対応する包装容器は、包装容器を初めて開放するときに、開口の領域において、取り囲む材料から封印要素が分離され、かつ少なくとも蓋要素が初めて取り外されるまではこの蓋要素に付着しているように、蓋要素が封印要素と接続されていることにより展開される。」(2頁26行~31行,訳文3頁14行~17行)
(エ) 「本考案による実施形態により、蓋要素を取り去った後に封印要素を付加的に開放することが排除される。さらに、封印要素の切り離された部分は、少なくとも、蓋要素を初めて取り外すまでは蓋要素と接続されており、それによって、包装容器の外部に廃棄することができる。封印要素が蓋要素に永続的に固定されていてもよい。開口の領域における包囲する材料からの封印要素の分離は、蓋要素を動かすことによって、例えばねじる、高く持ち上げる、またはそれに類することによって行われる。このように動かすことによって、開口の領域において、取り囲む材料から封印要素が剥ぎ取られる。」(2頁33行~3頁7行,訳文3頁18行~25行)
「本考案による解決策は付加的要素の使用を回避し、このことが大量生産をより経済的にする。さらに、液体の調整されない注ぎ出し、または包装容器の内容物が汚染される可能性という上述の欠点が阻止される。」(3頁9行~12行,訳文3頁26行~4頁2行)
「蓋要素は、取っ手と接続領域と閉鎖領域とを含むことが有利である。接続領域は、通常、封印要素と接続するために平たくなっている。この場合、例えば、溶接、接着、またはそれと同等の技術による材料結合的な接続が形成されることが好ましい。取っ手は、包装容器の外部から蓋要素を把持するために用いられる。閉鎖領域は、蓋要素による開口の確実な閉鎖を確保する。包装容器の開口の領域に配置されているか、または包装容器と単一ピースに形成されているパイプ要素と組み合わせることによって、閉鎖領域は、例えば、雌ねじまたは雄ねじによって形成されていてもよい。本考案の有利な提案によって、蓋要素は、さらに、取り囲む材料から封印要素を分離するための分離要素を有していてもよい。このことは、例えば、好ましくは可動のカム要素を設けることによって行われてもよい。カム要素は、取り囲む材料から封印を切り離し、剥ぎ取りを補助する。」(3頁14行~29行,訳文4頁3行~13行)
「蓋要素は、キャップとして形成されていてもよく、この場合、特に有利な提案では、このキャップが、包装容器の開口内に、封印要素の平面まで突き出すポット状の領域を有していてもよい。その場合、ポット状の領域の底は、実質的に平たい接続領域であり、この接続領域の外面が封印要素と接続されている。」(3頁31行~36行,訳文4頁14行~17行)
「本考案の別の有利な提案では、蓋要素は、栓として形成されていてもよい。この栓は、例えば、雄ねじによりパイプと螺合されてもよい。」(4頁1行~3行,訳文4頁18行~19行)
「実質的に平たい接続領域の面積は,開口の面積に実質的に相当する。」(4頁5行~6行,訳文4頁20行)
「封印要素は、被覆材料と単一ピースに形成されていることが好ましく、例えば、多層の被覆材料の内側フィルムの部分である。しかし封印要素は、開口を取り囲む被覆材料と開口領域においてのみ接続されたフィルム片であってもよい。」(4頁8行~12行,訳文4頁21行~23行)
「本考案の別の有利な提案では、蓋要素は、不正開封防止部と協働して包装容器と接続されていてもよい。それによって、その包装容器が一旦開放されたものであるのか否かを外側から見分けられる。」(4頁14行~17行,訳文4頁24行~26行)
(オ) 「本考案により、再閉鎖可能な開口の場合に開口を閉鎖する封印要素の領域を確実に切り離し、および取り去ることを保証する、簡単かつ経済的に製造可能な包装容器が提供される。」(4頁19行~22行,訳文5頁1行~3行)
(カ) 「本考案の他の利点および特徴は、図をもとにした以下の説明から明らかになる。
図1は、包装容器の実施例の斜視図を示し、
図2は、図1による包装容器の前面図を示し、
図3は、図1による包装容器の側面図を示し、
図4は、図1による包装容器の平面図を示し、
図5は、包装容器の開口領域の断面の詳細図を示す。」(4頁24行~5頁2行,訳文5頁4行~9行)
「図1~図4に示された包装容器1は、それ自体公知のように底と側壁と上壁領域とを有する被覆2からなる。包装容器は、上面が傾けられたそれ自体公知の折り畳み式包装容器の形態で示されている。この包装容器は、上面の領域に開口領域3を有している。」(5頁4行~8行,訳文5頁10行~13行)
「図5によると、開口領域において、蓋4がねじ12によりパイプに締められている。両者は、不正開封防止部6によって互いに不動に固定されている。不正開封防止部は蓋4と接続されており、パイプ5に下から係合する。それによって蓋4を締めた場合に不正開封防止部6が破損する。」(5頁10行~14行,訳文5頁14行~17行)
「包装容器被覆2は、図示された実施例では多層に形成されている。最外側の層は平坦であり、その下に位置する実質的に硬い層8に開口が開けられる。この開口は、未開封状態では、すなわち最初の充填後、および包装容器を初めて開放する前には2つの内側層9、10によって閉鎖されている。層9、10は、開口領域において封印フィルム11をなす。パイプ5は、接続領域16において固定リングにより最外側の被覆層7と、例えば接着によって接続されている。さらに、突出リングが接続領域17を介して封印フィルム11と接続されている。」(5頁16行~25行,訳文5頁18行~24行)
「蓋4は、パイプ5の内部へ突き出すポット要素13を有している。ポット要素は、円錐状に先細りになり、内側へ円錐状に先細りになったパイプ5と合致する。ポット要素13は下部領域に平たい底14を有し、この底は、全面にわたって接続領域15を形成して、例えば接着、超音波溶接、ヒートシール、またはそれに類するものによって封印フィルム11と接続されている。包装容器内容物を取り扱う間にこれらの接続をなし得ることが有利である。」(5頁27行~34行,訳文5頁25行~6頁4行)
「包装容器1を最初の充填後に初めて開放するためには、蓋4をねじって締め、その際、不正開封防止部6が破壊され、さらに、開口を取り囲む領域から、すなわち封印フィルムとパイプ下縁部との間の接続領域17から封印フィルム11が分離される。封印フィルム11と蓋4のポット要素13の底14との間が接続されていることにより、蓋4の底14に接する封印フィルム11の切り離された切片は、蓋が取り去られるまでこの蓋に付着したままである。接続は解除不能であってもよいし、解除可能であってもよく、それによって、切り離された封印フィルム切片を、例えば蓋4が包装容器1から取り去られた後に、底14から引き抜いて、別個に廃棄することができる。」(6頁1行~12行,訳文6頁5行~13行)
「上述した実施例は,例示にすぎず,限定するものではない。」(6頁14行~15行,訳文6頁14行)
(キ) 「実用新案登録請求の範囲」
「1.流動性媒体のための包装容器であって、少なくとも単層で容積を画定する被覆材料からなり、蓋要素により再閉鎖可能な開口を備え、該開口は、最初の充填後に初めて開放する前には、前記開口を取り囲む前記被覆材料と少なくとも接続された実質的に平たい封印要素によって閉鎖されている、包装容器において、
前記包装容器を初めて開放するときに、前記開口の領域において前記取り囲む材料から封印要素が分離され、かつ少なくとも前記蓋要素が初めて取り外されるまでは前記蓋要素に付着しているように、前記蓋要素が前記封印要素と接続されていることを特徴とする、包装容器。
2.前記蓋要素は、取っ手と、接続領域と、閉鎖領域とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の包装容器。
3.前記蓋要素は、前記取り囲む材料から前記封印要素を分離するための分離要素を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の包装容器。
4.前記蓋要素はキャップであることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の包装容器。
5.前記蓋要素は、前記包装容器の開口内に、前記封印要素の平面まで突き出すポット状の領域を有することを特徴とする、請求項4に記載の包装容器。
6.前記蓋要素は栓であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の包装容器。
7.前記接続領域は、実質的に平たく形成されており、かつ実質的に前記開口の面積を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の包装容器。
8.前記封印要素は、前記被覆材料と単一ピースに形成されていることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の包装容器。
9.前記封印要素は、前記被覆材料の内側の層の部分であることを特徴とする、請求項8に記載の包装容器。
10.蓋要素と封印要素との間の接続は、材料結合的に形成されていることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の包装容器。
11.前記接続は、溶接によってなされることを特徴とする、請求項10に記載の包装容器。
12.前記開口の領域においてパイプ要素を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の包装容器。
13.前記蓋要素は、ねじにより閉鎖可能であることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の包装容器。
14.不正開封防止部を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の包装容器。」(8頁~9頁,訳文8頁~9頁)
(ク) 図1~図4から、容器の側壁は4面からなり、上面が傾けられているため、4面の側壁は、高さの低い面と、高さの高い面と、それらの間の側面からなることが看取できる。
4面の側壁に高さの低い面を設けるのは、その高さの低い面を手前に傾けて注ぎやすくするためと解されるところ、その高さの低い面は、人から見て「前面」であるといえ、その反対側の高さの高い面は「裏面」といえる。
(ケ) 図1及び図3から、三角形の折り込み片が、上面上に折り畳まれていることが看取でき、また、図1及び図4から、容器上面に三角形の折り込み片に比して小さな三角形部分が看取できる。
(コ) 図1及び図2から、容器の側壁の高さの低い面には、縦長の長方形部分が看取できる。
イ. 甲5発明
(ア) 甲5の「図1から図4に示された包装容器1は、それ自体公知のように底と側壁と上壁領域とを有する被覆2からなる。包装容器は、上面が傾けられたそれ自体公知の折り畳み式包装容器の形態で示されている。この包装容器は,上面の領域に開口領域3を有している。」(5頁4~8行、訳文5頁10~13行)などの記載から明らかなように、甲5に記載された内部に流動性媒体なる被充填物が充填される紙製の容器は、厚紙またはそれに類するものを原反として、内部の被充填物が漏れないように、容器の縦方向となる方向、並びに、底(底面)と上壁(上面)における容器の横方向となる方向のそれぞれにシール(以下、各々を「縦シール部分」、「横シール部分」という。)を施し、折り畳むことによって形成される容器であると解される。
そして、図1及び図2からは、容器の前面に縦長の長方形部分が看取できるところ、縦長の長方形部分は、折り畳むことによって形成される容器における、「縦シール部分」を示すものと理解できる。
(イ) 本件優先日当時の技術常識について
本件優先日当時(本件優先日平成12年7月31日)、紙製包装容器において、横線シールを横方向に横断的に設け、横線シールをする際に対向するシール領域同士が同じ長さとなるような構造とすることは、技術常識であったことが認められる(甲32,甲62,甲63,甲65,甲68,判決書60~66頁)。
(ウ) 上記(ア)で摘記した甲5の記載から、甲5の図1及び図4記載の包装容器1は、「上面が傾けられたそれ自体公知の折り畳み式包装容器」であることが理解でき、そして、甲5の図1及び図4の図示から、図4において左右の三角形の折り込み片の頂点の上側に描かれている2個の小さな三角形は、「横シール部分」を示したものと認められる。
甲5の図4には、2個の小さな三角形の間に、「横シール部分」が図示されてないが、[1]図4記載の包装容器1は、「上面が傾けられたそれ自体公知の折り畳み式包装容器」であり、[2]本件優先日当時、紙製包装容器において、横線シールを横方向に横断的に設け、縦線シールをする際に対向するシール領域同士を同じ長さとすることは技術常識であったこと、[3]甲5において「横シール部分」は、請求項1ないし14の考案特定事項とされていないから、図4において「横シール部分」の図示が省略されたとしても不自然ではないことに照らすと、甲5の図4の2個の小さな三角形の間の下側には、横方向に横断的に設けられた「横シール部分」が存在するけれども、その描写が省略されていると理解できる。
(エ) さらに、片流れ屋根形状であって、「横シール部分」が横方向に横断的に形成されている場合には、横線シールをする際に形成される折り畳み片(フラップ)において対向するシールが同じ長さとなるので、設計上、必ず「横シール部分」は後方寄り(「裏面」に近い位置)に位置することになるものと認められるから、甲5には、上面に設けられた横シール部分は、前面よりも裏面に近い側に位置し、かつ、裏面側に倒される構成を備えていることが開示されているものと認められる。
(オ) 以上から、甲5には、以下の「甲5発明」が記載されている。
《甲5発明》
「前面、裏面、側面、上面及び底面を有し、内部に被充填物が充填された厚紙の折り畳み式包装容器であって、
上面が前面に向けて傾けられており、
縦シール部分は前面に設けられ、
上面及び底面に横線シールが設けられ、
上面に設けられた横シール部分は、前面よりも裏面に近い側に位置し、かつ、裏面側に倒され、厚紙の成形による折り込み片が上面上に折り畳まれている、厚紙の折り畳み式包装容器。」
(2) 本件発明2について
ア. 本件発明2と甲5発明を対比する。
甲5発明の「厚紙の折り畳み式包装容器」は、本件発明2の「紙製包装容器」に相当し、いずれも内部に被充填物が充填されるものである。
また、甲5発明の「厚紙の折り畳み式包装容器」の「前面」、「裏面」、「側面」、「上面」、「底面」、「縦シール部分」及び「横シール部分」の各部分は、それぞれ、本件発明2の「紙製包装容器」の「前面パネル」、「裏面パネル」、「側面パネル」、「頂部」、「底部」、「縦線シール」及び「横線シール」に相当するものである。
さらに、甲5発明の「裏面」の高さは「前面」の高さに比べて高く、また、「上面」は、外観上、片流れ屋根形状ともいえる。
そうすると、本件発明2と甲5発明との一致点、相違点は、それぞれ次のとおりである。
<一致点A>
「折目線に沿った折畳みによって成形された前面パネル、裏面パネル、側面パネル、頂部及び底部を持ち、内部に被充填物が充填された紙製包装容器であって、
縦線シールが設けられ、
前記頂部及び前記底部に横線シールが設けられ、
前記前面パネルの高さが前記裏面パネルの高さよりも低く、
前記頂部に設けられた横線シールは、前記前面パネルよりも前記裏面パネルに近い側に位置し、かつ、前記裏面パネル側に倒され、
頂部が片流れ屋根形状に成形されることを特徴とする紙製包装容器。」
<相違点A>
本件発明2では、「裏面パネル、前記頂部及び前記底部にわたり縦線シールが設けられ」、「頂部に設けられた横線シールは、」「裏面パネル側に倒されて縦線シールと重なっており」、「該頂部成形による折り込み片が側面パネル上に斜めに折り込まれ」るのに対し、
甲5発明では、「縦シール部分は前面に設けられ」、「上面に設けられた横シール」は、「裏面パネル側に倒される」ものではあるものの、縦シールと重なるものであるか、明らかではなく、「厚紙の成形による折り込み片が上面上に折り畳まれている」点。
イ. 上記<相違点A>について検討する。
(ア) 容易想到性について
a <相違点A>に係る本件発明2の構成は、本件発明2における、頂部に設けられた横線シールは、前面パネルよりも裏面パネルに近い側に位置し、かつ、裏面パネル側に倒されて、縦線シールと重なってという構成[1]、
頂部成形による折り込み片が側面パネル上に斜めに折り込まれという構成[2]、及び、頂部及び底部にわたり裏面パネルに設けられる「縦線シール」と、裏面パネル側に倒された「横線シール」とが重なる構成[3]からなるものである。そして、甲5発明は、構成[1]の重なってが不明であることに加え、構成[2]及び構成[3]をそれぞれ欠くものであるところ、いずれの甲号証においても、相違点Aに係る当該3つの構成を備えた紙製包装容器は記載されていないし、示唆する記載もない。
b <相違点A>に基づく作用効果について
本件発明2は、上記相違点Aに係る構成を含め全体として、本件発明の課題(【0012】~【0014】)に対応する「折り込み、折り畳み部分が外側に設けられかつ片流れ屋根形状の紙製包装容器を得ることができ、ストレスが少なく、ひび割れが少なくすることができ」(【0019】)、「頂部の面積が広がり、比較的大型の注出口、開口装置、広口の注出装置(注出口)を取り付けることができ」、「ブリック状に比べ、より背の高い注出装置を取り付けることができ」(【0020】)、「より広い印刷面を前面に得ることができ、小売店舗の商品陳列棚で消費者により顧客吸引力のある容器にすることができ」(【0021】)、「流通過程における物理的機械的な外部影響を受け易い容器頂部の四隅のうち、背面側の2隅若しくはその近傍が、斜に折り込まれたフラップによって横から保護されカバーされるので、容器ダメージを少なくすることができ」(【0022】)、「前面側の2隅は頂部の下方に移動して外部影響を受け難くなり、その隅の角度が広角に広がり容器材料へのストレスが低下する」(【0022】)という作用効果を奏するものである。
特に、本件発明2の頂部に設けられた横線シールは、前面パネルよりも裏面パネルに近い側に位置し、かつ、裏面パネル側に倒されて、縦線シールと重なってという構成[1]、及び、頂部成形による折り込み片が側面パネル上に斜めに折り込まれという構成[2]は、外部影響を受け易い背面側の2隅に近接する場合には当然に、また2隅から多少離れることがあっても、それらの構成がない場合に比較して、背面側の2隅を横から及び上からも保護するカバーとなり得るものであるし、頂部及び底部にわたり裏面パネルに設けられる「縦線シール」と、裏面パネル側に倒された「横線シール」とが重なる構成[3]は、「横線シール」という保護カバーを「縦線シール」により支える構造であり、更に両シールともにパネル2枚分の厚さを有する部分であることを考慮すると、当該重なる構成は頂部にT字形等の骨組みを形成して、背面側の2隅、その近傍、又は2隅間の頂部を補強する構造でもあるから、以上の3つの構成は全て、「物理的機械的な外部影響を受け易い容器頂部の四隅のうち、背面側の2隅若しくはその近傍」における「容器ダメージを少なくすること」に向けられていると認められる。
その上、外部影響を受け易い背面側の2隅の保護を高めるべく、より一層「横線シール」を裏面パネルに近接させることは、より広い印刷面を得られることや、より広口ないし大型の注出装置を取り付けることが可能になるという格別の作用効果を奏するものである。
(イ) 「縦線シール」並びに「折り込み片」に係る個別の技術の適用について
a 縦線シールについて
(a) 縦線シール位置の前後面に係る変更とは、単に前面から後面に変える程度のことではなく、位置変更に伴い「縦線シール」以外の部分についても検討を要するものである。当該変更の検討には、製造に際し、シート状包装材料の縦線シール装置によるチューブ状成型後の折り畳みを考慮して、縦線シール位置及びその他の折り畳まれる部分について折目線の形成された展開図を作成することが技術常識である(本件特許明細書【0029】~【0031】、図3)。そうすると、縦線シールの位置の前後面に係る変更とは、紙製包装容器の基本設計に係る展開図を変えるということであって、紙製包装容器における設計思想を根本から変更すること、すなわち文献に記載された発明を他の発明へと変更することである。特に甲5発明は、上面が前面に向けて傾けられ、「前面」と「裏面」の高さが異なる紙製包装容器であるから、「縦線シール」の位置を「前面」から「裏面」へと変更することについては、垂直壁面がいずれも同じ高さの紙製包装容器にも増して、当該変更への阻害要因があるといえるし、この観点で考慮すると、「前面」と「裏面」の高さが異なる紙製包装容器と、垂直壁面がいずれも同じ高さの紙製包装容器とは、進歩性の判断に際し一線を画すべき異なる技術として検討すべきものである。
そうすると、垂直壁面がいずれも同じ高さの甲8の図1、図5、図13及び図19、甲9の図5、並びに甲10の図8及び9を含め、他の証拠には、縦線シールの位置と横線シールが倒される方向との組合せが記載されているが、これらの技術的事項を採用するということは、甲5発明を実質的に他の紙製包装容器の発明へと変更することに等しく、この点、当該変更には阻害要因がある。
(b) 請求人の主張について
請求人は弁駁書(2)(64頁4行~67頁1行)において、頂部が片流れ屋根形状であり、かつ、裏面パネルに縦線シールが設けられているものは、周知(周知例:甲14及び甲15)であり、本件優先日前から、当業者において、縦線シールの場所で印刷部分がずれてしまうという不都合が認識されていた(甲29及び甲30)から、印刷物がずれてしまうという不都合を回避するために、縦線シールを消費者の目につく前面パネルに設けずに、裏面パネルに設けようとすることは、当業者にとって容易であり、阻害事由も存在しない旨を主張する。
しかし、阻害要因があることについては、上記述べたとおりであるし、仮に、前パネルにおける印刷部分のずれが不都合であるとしても、左右いずれかの辺において前パネルの左右の辺の裏側に縦線シール部分が配されるように構成することで当該不都合を解決できるから、請求人が主張する上記不都合は、縦線シールを前面パネルに設けずに裏面パネルに設けようとすることの動機付けには成り得ない。
(c)「縦線シール」のまとめ
したがって、甲5発明において、「縦線シール」を設ける位置を、「表面」から「裏面」へ変更することは、当業者が容易になし得た事項ではない。
b 「折り込み片」について
(a) 甲5発明は、「折り込み片」を上面に折り畳むものであり、その構成からみても、容器の裏面側の2隅及び近傍を、横から保護しカバーすることで、容器のダメージを少なくするという技術的事項については考慮されていない。この点、本件発明2のように横方向に突出して横から保護するカバーとして機能する「折り込み片」は、商品として並べて出荷する際に、段ボール詰めなどにおいて収容効率が低下する構成といえるから、甲5発明において、「折り込み片」の折り込みを上面から側面へと単に変更することは、通常採用しないものである。
(b) 周知技術1(審決の予告24頁)について
審決の予告で認定した周知技術1は、「紙製包装容器において、頂部形成による折り込み片が側壁面上に折り畳まれている構造」であり、周知例として、甲6~甲10、甲16及び甲17を提示しているが、甲6~甲10については側面がいずれも同じ高さの容器であり、単に「頂部成形による折り込み片が側面パネル上に斜めに折り込まれ」というものであって、片流れ屋根形状の頂部でもないから、上記(a)で述べた効率低下の欠点を上回る積極的な動機付けを示すものではない。この点、請求人が弁駁書(2)(11頁3行~20頁14行)で主張する甲12、甲14、甲31~甲34についても同様である。
また、甲16及び甲17には、片流れ屋根形状の頂部から容器の内側に折り込む態様が示されているが、当該折り込みは側面上に折り込むものではなく、容器の内側に綺麗に折り込むものであり、横から保護するカバーとは成り得ない態様であるから、仮に甲5発明に変更を加えるとしても、むしろ<相違点A>に係る本件発明2の構成に想到し得ない変更を示唆するものである(この点、甲15も同様である。)。
(c) 甲35の1~6に示すレターに添付されている図面について
当該図面には、本件発明2と同様に頂部成形による折り込み片が側面パネル上に斜めに折り込まれる態様を示す図面と、甲5発明に係る図面とがそれぞれ添付されているが、答弁書(2)(12頁2~10行)において、訴訟段階における被告第1準備書面(乙5)を援用して被請求人が主張するとおり、当該図面については本件特許の優先日前に公知であったとは認められない。
なお、折り込み片が側面パネル上に斜めに折り込まれる態様を示す図面は、寸法が付され設計図といえるものの注出口の記載はなく、注出口が記載される図面は、甲5と同じく折り込み片を上面に折り畳むものであるから、当該レターの添付図面のみからは、むしろ甲5発明においては、側面パネルへの折り込みは行わないと考えられるものである。
以上から、周知技術1ないし周知例並びに他の証拠を参照しても、<相違点A>に係る本件発明2の構成は、容易に想到し得ないものである。
ウ. したがって、本件発明2の相違点Aに係る構成は、当業者が容易に想到することができたものではないから、本件発明2は、甲5発明、並びに甲6~甲13、甲16及び甲17に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 本件発明3について
ア. 上記第4の1.及び2.に示したように、本件訂正請求により訂正された本件発明2及び3を対比すると、本件訂正請求後の本件発明3は、実質的に、本件発明2の「紙製包装容器」において、「片流れ屋根形状の頂部に注出口を持つ」ものである。
イ. そして、上記(2)ア.~ウ.に示したように、本件発明2は、甲5発明、並びに甲6~甲13、甲16及び甲17に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2の特定事項にさらに「片流れ屋根形状の頂部に注出口を持つ」点で構成を付加し限定した本件発明3も、甲5発明、並びに甲6~甲13、甲16及び甲17に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ. よって、本件発明3は、甲5発明、並びに甲6~甲13、甲16及び甲17に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4) 無効理由2についてのまとめ
よって、本件発明2及び3は、甲5発明、並びに甲6~甲13、甲16及び甲17に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
よって、本件発明2及び3に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当するものではなく、無効理由2によっては無効とすべきではない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由によっては、本件発明2及び3に係る特許を無効にすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-800020