特許異議申立
2017-701021
航空機のインテーク構造
- 審判番号
- 2017-701021
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-064210
- 登録番号
- 特許第6128568号(P6128568)
- 請求日
- 2017年10月25日
- 審決日
- 2019年04月23日
- 公報発行日
- 2019年07月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社SUBARU
- 【権利者代理人】荒船 博司
- 【権利者代理人】荒船 良男
- 【異議申立人】恒川 朱美
- 審判長/審判官
- 審判長 島田 信一
- 審判官 氏原 康宏
- 審判官 尾崎 和寛
- 分類
- P1651.113-YAA(B64D) / P1651.121-YAA(B64D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6128568号発明「航空機のインテーク構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6128568号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第6128568号の請求項1及び4に係る特許を維持する。
特許第6128568号の請求項2及び3に係る特許についての特許異議申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6128568号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成27年3月26日に出願され、平成29年4月21日付けでその特許権の設定登録がされ、同年5月17日に特許掲載公報が発行されたところ、同年10月25日に特許異議申立人 恒川朱美(以下「申立人」という。)より請求項1~4に対して特許異議の申立てがされ、平成30年3月23日付けで取消理由が通知され、同年5月28日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年6月7日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年7月5日に申立人から意見書が提出され、同年10月4日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年12月10日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年12月21日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、平成31年2月1日に申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成30年12月10日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付された明細書及び特許請求の範囲(以下、それぞれ「本件明細書」、「本件特許請求の範囲」といい、図面を含めて「本件明細書等」という。)を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
なお、平成30年5月28日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
本件特許請求の範囲の請求項1に「機体前方から滑らかに隆起したバンプが設けられており、前記インテークの周辺の平面視において、前記バンプの最大幅が、前記インテークの最大幅よりも広い」と記載されているのを、「機体前方から滑らかに隆起し、前記インテーク内で機体後方へ滑らかに沈下するバンプが設けられており、前記インテークの周辺の平面視において、前記インテークよりも機体前方における前記バンプの最大幅が、前記インテークの最大幅よりも広く、前記バンプは、機体前方から前記インテークに向かって滑らかに幅が広がるように形成されており、前記インテークが開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記インテークの側方の位置まで延在している」に訂正する(請求項1を引用する請求項4も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
本件特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
本件特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか一項に記載の航空機のインテーク構造。」と記載されているのを、「請求項1に記載の航空機のインテーク構造。」に訂正する。
(5)訂正事項5
本件明細書の段落【0008】に「機体前方から滑らかに隆起したバンプが設けられており、前記インテークの周辺の平面視において、前記バンプの最大幅が、前記インテークの最大幅よりも広い」と記載されているのを、「機体前方から滑らかに隆起し、前記インテーク内で機体後方へ滑らかに沈下するバンプが設けられており、前記インテークの周辺の平面視において、前記インテークよりも機体前方における前記バンプの最大幅が、前記インテークの最大幅よりも広く、前記バンプは、機体前方から前記インテークに向かって滑らかに幅が広がるように形成されており、前記インテークが開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記インテークの側方の位置まで延在している」に訂正する。
(6)訂正事項6
本件明細書の段落【0009】に「請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の航空機のインテーク構造において、前記バンプは、機体前方から前記インテークに向かって滑らかに幅が広がるように形成されていることを特徴とする。請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の航空機のインテーク構造において、前記バンプは、当該バンプの幅方向において、前記インテークよりも側方まで延在する部分を備えることを特徴とする。請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の航空機のインテーク構造において」と記載されているのを、「請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の航空機のインテーク構造において」に訂正する。
訂正前の請求項1~4は一群の請求項に該当するから、訂正事項1~4に係る訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものである。また、訂正事項5及び6に係る明細書の訂正は、一群の請求項である請求項1~4について行うものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「バンプ」の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、当該構成の限定は、本件特許請求の範囲の請求項2の「前記バンプは、機体前方から前記インテークに向かって滑らかに幅が広がるように形成されている」、請求項3の「前記バンプは、当該バンプの幅方向において、前記インテークよりも側方まで延在する部分を備える」、本件明細書の段落【0014】の「バンプ21は、図2及び図3に示すように、機体前後方向に沿って、インテーク10aの直前から滑らかに幅広になりつつ隆起して、インテーク10aを過ぎた後に再び滑らかに沈下するように形成されている。」及び段落【0015】の「バンプ21のうち、インテーク10aの直前に位置する略前半部は、その幅(最大幅)W2がインテーク10aの幅(最大幅)W1よりも広く形成されている。」との記載事項並びに図2及び図3の図示内容に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
さらに、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
また、請求項1を引用する請求項4も同様に訂正するものであるが、当該訂正についても、請求項1と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(2)訂正事項2及び3について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2を削除するものであり、また、訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、訂正事項2及び3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって新規事項の追加に該当せず、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項2及び3によって請求項2及び3が削除されたことに伴い、訂正前の請求項4における引用請求項において請求項2及び3を引用しないようにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって新規事項の追加に該当せず、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項5及び6について
訂正事項5及び6は、上記訂正事項1~4の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項5及び6は、特許請求の範囲と明細書との整合をとるためのものであり、新規な事項を導入するものでないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
3 小括
したがって、本件訂正請求による訂正事項1~6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正を認める。
第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1及び4に係る発明(以下「本件発明1及び4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
なお、本件訂正により請求項2及び3は削除された。
「【請求項1】
機体前方からの空気を取り込む航空機のインテーク構造であって、
前記航空機の機体表面のうち、前記インテークの直前に位置する部分には、機体前方から滑らかに隆起し、前記インテーク内で機体後方へ滑らかに沈下するバンプが設けられており、
前記インテークの周辺の平面視において、前記インテークよりも機体前方における前記バンプの最大幅が、前記インテークの最大幅よりも広く、
前記バンプは、
機体前方から前記インテークに向かって滑らかに幅が広がるように形成されており、前記インテークが開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記インテークの側方の位置まで延在していることを特徴とする航空機のインテーク構造。
【請求項4】
前記バンプは、当該バンプの幅方向に圧力勾配を生じさせ、機体前方からの境界層を前記インテークの側部よりもさらに側方へ排除するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の航空機のインテーク構造。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~4に係る特許に対して平成30年10月4日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
[取消理由]
本件特許の訂正前の請求項1~4に係る発明は、
(1)甲第1号証に記載された発明に基いて、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり(以下「取消理由1」という。)
(2)甲第2号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術的事項(甲第1号証及び甲第4号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり(以下「取消理由2」という。)
(3)甲第4号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
・甲第1号証:米国特許第2990142号明細書
・甲第2号証:米国特許第8297058号明細書
・甲第3号証:Intake Aerodynamics(英),AIAA,1999,第2版,p338-339
・甲第4号証:米国特許第5779189号明細書
上記甲第1~4号証は、申立人が証拠として提出した甲第1~4号証である。
2 当審の判断
2-1 各甲号証の記載事項等
(1)甲第1号証の記載事項等
甲第1号証には以下の事項が記載されている。
なお、翻訳文は、申立人が提出した資料を参考にして当審で作成した。また、下線は当審で付した。以下同様。
(1a)1欄9~16行
「本発明は、超音速で流入する流体のために設計された流体取入口に関し、特に高速飛行のために設計された航空機用のスクープ型空気取入口に関する。航空機用の『スクープ型』空気取入口は、機体部材から横方向に突出する空気取入口を意味し、この取入口の入口開口は、周囲の気流に向かって前方または上流に向いている。」
(1b)1欄56~58行
「本発明の目的は、動圧の静圧への効率的な変換のためにスクープ型超音速空気取入口の新規の構造を提供することにある。」
(1c)3欄67~69行
「図5は、航空機の機体部材34の表面32から横方向に突出する取入口を備えた本発明を実施するスクープ型取入口30を示している。」
(1d)4欄2~12行
「取入口30の詳細は、図6~10で最も良く分かる。
図6~10を特に参照して、空気取入口30は、航空機の機体部材34から横方向に突出するスクープ構造40によって形成され、それによって、それらの間に前方に向けられた空気取入口通路を形成する。スクープ構造は、空気取入口の外壁を形成する内側圧縮面41を有しており、前記取入口の側壁を形成する一対の後退角付きの側壁42を有している。取入口の内壁は、前記取入口外壁41に対向する機体部材上のバンプ状の圧縮面44によって形成されている。」
(1e)4欄20~23行
「また、取入口10の側壁のように、スクープ側壁42は、それぞれ、取入口スロート部48で実質的に終了する線46に沿って取入口外壁41の前縁から後退角を付けられている。」
(1f)4欄32~43行
「圧縮面44は、機体部材34の隣接面32から突出するバンプの形態をなしている。例示されるように、このバンプは、取入口外壁41の前縁の上流の箇所で始まり、実質的に取入口スロート部48の領域における頂部52を形成すべく下流に延びている。バンプ面の上流部分は、流入する空気の主流方向に徐々に向く。取入口スロート部48の下流では、バンプの輪郭が、エンジン36と連通する通路38の形状に倣い、この通路は、前記取入口スロート部の下流の機体部材34に向かって湾曲している。」
(1g)4欄44行~5欄34行
「図5~10のバンプ44のような圧縮バンプは、バンプが位置すべき機体部材34と衝撃波が交差すると想定することによって構築できる。そして、バンプの輪郭は、衝撃波と機体部材との交差線62に沿って始まるそれらの流線によって定義される流面によって定まる。機体部材と交差する衝撃波を想定した際に、幾つかの因子の値が実際の考察から選択されなければならない。まず、バンプによって生じる圧縮量と、選択された主流マッハ数でバンプによって生じた初期の衝撃波(想定した衝撃波と一致する)によって生じる部分とを選択しなければならない。主流方向に対する初期衝撃波の(従って想定した衝撃波の)角度は、主流マッハ数および衝撃波による所望の圧力上昇から計算できる。バンプによって生じる流れ場のタイプも、実際の考察から選択される。例えば、軸対称な円錐形状の流れ場を選択することが可能である。さらに、衝撃波の軸と機体部材面の相対位置を選択しなければならない。なぜならば、この寸法Yo(図7, 17, 19および20)がバンプの幅、従って取入口のスピレージおよび抵抗を決めるからである。
バンプ44の設計において考慮される別の因子は、取入口外壁41に対するその軸方向位置である。例示されるように、バンプ44の前縁は、取入口外壁41の前縁から上流に離れた箇所に位置し、この距離は、図7においてXoとして示されている。この構造により、特定の比較的低い超音速飛行速度では、バンプ44から逸れた初期の円錐衝撃波は、線51(図7)によって示されるように、取入口外壁41の上流を通過し、外壁と交差しないことがある。この飛行速度では、線54は、取入口に入る空気の外側流線を表わし、それによって、この条件では、A'(図7)は取入口の捕獲面積の尺度とすることが可能であり、それは、取入口に流入する流管の面積である。より速い飛行速度では、線53は、前記初期衝撃波を表わし、例示されるように、それは取入口外壁41の前縁と交差する。線55は、さらに速い飛行速度での前記初期衝撃波を表わし、従って、前記衝撃波は、前記壁の前縁の下流の取入口外壁と交差する。初期衝撃波53を生じさせる飛行速度では、前記衝撃波のエンベロープが取入口の外形と一致した場合、線57は、取入口に入る空気の外側流線を表わし、A(図7)は、取入口の捕獲面積の尺度になる。実際には、図6~10の取入口構造では、バンプ44から逸れた円錐衝撃波は、スクープ外壁の外形と一致せず、その結果、その衝撃波53の条件では、ある程度の空気が取入口の側面を越えて溢れる。しかしながら、図7から、例えば衝撃波51を生じさせる条件から、飛行速度を増加させると、取入口の捕獲面積が増大することは明らかである。また、図7から、任意の特定の飛行速度での取入口の実際の捕獲面積がバンプの位置(つまり距離Xo)に依存することは明らかである。エンジンの必要空気質量流量もまた、飛行マッハ数の増加と共に増大する。距離Xoは、マッハ数による取入口の捕獲面積の変化が、取入口に入る空気質量流量のマッハ数による変化がエンジンの必要空気流量のマッハ数による変化に少なくとも近くなるように、選択される。」
(1h)8欄70行~第9欄12行
「超音速のスクープ型の取入口において44または44aのような三次元の圧縮バンプを組み込む利点は、そのような三次元のバンプが、機体部材34または34a上、およびそのバンプ自体上の取入口の上流に形成された空気の境界層を効率的に除去することである。直円錐(円錐60のような)は、バンプ中心線(例えば図18における線1-7)から遠ざかり流れと直交する向きに一定の圧力勾配を有した流れ場を理論上生じさせる。従って、記述したような三次元の圧縮バンプを組み込んだスクープ型の取入口が、二次元のランプ型のバンプを有したスクープ型の取入口よりも、また、明らかに、バンプを有していない従来のスクープ型の取入口よりも、三次元のバンプが、横方向に両側の方向に機体部材およびバンプに沿って流れる境界層を排除する圧力勾配を生成するという点で優れる。」
(1i)9欄22~31行
「それゆえに、図18において下流方向に見てバンプの左側部分(つまり流線1-1の左側)を流れる空気は、バンプの左側に向かって外方に方向変化し、また、同様に、バンプの右側部分を流れる空気は、広がる流線がそのように示すように、バンプの右側に向かって外方に方向変化する。結果としての効果は、境界層を両側に排除し、取入口本体に入らせないことである。」
(1j)図面には以下の図5~10、17、18、19が図示されている。
(1k)図6~10から、バンプ(圧縮面44)は、取入口外壁41の前縁の上流側の箇所から、取入口スロート部48の領域における頂部52にかけて滑らかに隆起し、頂部52から下流側に滑らかに沈下することが看取できる。
(1l)図6、18、19から、バンプ(圧縮面44)は、取入口外壁41の前縁の上流側の箇所から取入口30に向かって滑らかに幅が広がるように形成されていることが看取できる。
(1m)図6、9、10から、バンプ(圧縮面44)は、バンプの幅方向において、取入口30の側壁42の外側まで延在する部分を備えていることが看取できる。
以上によれば、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「航空機用のスクープ型空気取入口の構造であって、
取入口30の内壁は、バンプ状の圧縮面44によって形成され、このバンプは、取入口外壁41の前縁の上流の箇所で始まり、取入口スロート部48の領域における頂部52を形成すべく下流に延びていて、
取入口外壁41の前縁の上流側の箇所から、取入口スロート部48の領域における頂部52にかけて滑らかに隆起し、頂部52から下流側に滑らかに沈下していて、
バンプは、バンプの幅方向において、取入口30の側壁42の外側まで延在する部分を備え、
バンプは、取入口外壁41の前縁の上流側の箇所から取入口30に向かって滑らかに幅が広がるように形成され、
バンプが、横方向に両側の方向に機体部材およびバンプに沿って流れる境界層を排除する圧力勾配を生成する
航空機用のスクープ型空気取入口の構造」
(2)甲第2号証の記載事項等
甲第2号証には以下の事項が記載されている。
(2a)6欄1~19行
「8. A system for processing hypersonic airflow on a vehicle having an airbreathing propulsion system, comprising:
a forebody having a longitudinal axis extending along a length of the vehicle and a first surface extending the length of the forebody and comprising a plurality of longitudinal ramp segments, wherein the longitudinal ramp segments
are blended to form a generally smooth surface,
are formed at angles with respect to the vehicle longitudinal axis to form a series of angles that sequentially increase in a downstream direction toward the cowl, extend to cover the entire first surface of the forebody,
are contoured in the spanwise direction to divert boundary layer flow overboard, wherein the spanwise contours are super elliptical as defined by the equation:
(x/a)n+(y/b)n=1
where n>2 and a and b are radii, and the cowl captures an amount of uniform airflow sufficient to operate the airbreathing propulsion system. 」
「8. 空気吸入推進システムを有した機体上の極超音速気流を処理するシステムであって、
機体の長さに沿って延びた長手方向軸と、前部機体の長さ方向に延び、複数の長手方向傾斜区画を具備した第1表面とを有する前部機体を備え、
前記長手方向傾斜区画は、概して滑らかな面を形成するように混合され、カウルに向かって下流方向に連続して増加する一連の角度を形成するように前記機体長手方向軸に対する角度で形成され、前記前部機体の前記第1表面全体を覆うように延び、スパン方向に輪郭取りされ、それによって、境界層流れを機外に分離し、前記スパン方向の輪郭は、次の数式によって定義されるような超楕円であり:
(x/a)n+(y/b)n=1
ここで、n>2であり、aおよびbは半径であり、
前記カウルは、前記空気吸入推進システムを動作させるのに十分な均一の気流の量を捕獲するシステム。」
(2b)1欄15~18行
「The present invention relates in general to air craft engines and, in particular, to an improved system, method, and apparatus for a diverterless hypersonic inlet for integrated turbojet and ram-scramjet aircraft jet engine applications. 」
「本発明は、概して航空機エンジンに関し、特に、ターボジェットおよびラムスクラムジェット統合型航空機ジェットエンジン用途のためのダイバータレス極超音速空気取入口用の改良されたシステム、方法、および装置に関する。」
(2c)3欄66行~4欄11行
「The DHI 23 also comprises spanwise contours 47 that are formed on the forebody adjacent each lateral side of the cowl27. The spanwise contours 47 extend along both the longitudinal and lateral axes 31, 33. As best shown in FIG. 6, the spanwise contours 47 are designed to effectively divert and thin the boundary layer airflow for turbojet, ramjet, and scramjet engine applications. In contrast, an aircraft 51 with a conventional inlet 53 (top of FIG. 4 ) develops excessive boundary layer conditions 55 that degrade the performance 13 (see FIG. 1) of high speed aircraft engines. In one embodiment, the spanwise contours 47 are super elliptical as defined by the equation: (x/a)n+(y/b)n=1, wheren>2 and a and b are the ellipse radii. 」
「DHI 23 は、カウル27の側面にそれぞれ隣接する前部機体上に形成されたスパン方向の輪郭47も備えている。スパン方向の輪郭47は、長手方向軸31および横方向軸33に沿って延びている。図6において最も良く示されるように、スパン方向の輪郭47は、ターボジェット、ラムジェット、およびスクラムジェットのエンジン用途のために、境界層を有効に分離し薄くするように設計されている。これに対して、従来の空気取入口53 (図4の上段)を持つ航空機51は、高速航空機エンジンの性能13(図1を参照)を低下させる過度の境界層状態55を発達させる。一実施形態では、スパン方向の輪郭47は、次の方程式によって定義されるように超楕円である: (x/a)n+(y/b)n=1、ここで、n>2であり、aおよびbは楕円半径である。」
(2d)4欄17~53行
「Referring now to FIG. 8 , the present invention also comprises a method of designing a hypersonic inlet for an aircraft. In one embodiment, the method begins as indicated at step 81 , and comprises establishing a centerline geometry for a flowfield generator (FFG)(step 83); optimizing the FFG and a shock system 121(FIG. 5) configuration to fit aircraft geometrical constraints and engine airflow requirements (step 85); establishing spanwise contours for the FFG (step 87); gridding and running computation fluid dynamics (CFD) for the FFG (step 89); and iterating steps (a) through (d) until the desired cowl plane Mach number, flowfield uniformity, and geometrical constraints are achieved (step 91).
In one embodiment, the method further comprises streamline tracing 123(FIG. 7) a diverterless hypersonic inlet (DHI) forebody within a three-dimensional, FFG CFD solution and transferring the streamlines into a computer aided design (CAD) environment (step 93); surfacing streamlines of the DHI forebody in the CAD environment and consolidating them with a cowl assembly (step 95); gridding DHI geometry and running viscous CFD analysis (step 97); modifying the DHI geometry and confirming with follow-on viscous CFD runs (step 99); and then integrating the DHI geometry with geometry of the aircraft for aerodynamic analysis (step 101), before ending as indicated at step 103.
・・・
In step 87 , the method may comprise contouring each spanwise contour individually, wherein each spanwise contour affects a spanwise shape of generated shocks, lateral boundary layer migration, and capture area of the cowl. 」
「さて図8を参照して、本発明は、航空機用の極超音速空気取入口を設計する方法も含んでいる。一実施形態では、本方法は、ステップ81で示されるように開始し、流れ場生成器(FFG)用の中心線寸法を確立すること(ステップ83)、航空機の幾何学的な制約およびエンジン気流要件に適合させるべく、FFGおよび衝撃波系121(図5)の構成を最適化すること(ステップ85)、FFG用のスパン方向の輪郭を確立すること(ステップ87)、FFG用の数値流体力学(CFD)の計算格子生成および計算を実行すること(ステップ89)、ならびに、所望のカウル面のマッハ数、流れ場均一性、および幾何学的な制約が達成されるまでステップ(a)~(d)を繰り返すこと(ステップ91)を含んでいる。
一実施形態では、本方法は、さらに、三次元FFG CFD解析結果よりダイバータレス極超音速空気取入口(DHI)の前部機体の流線をトレース123(図7)し、流線をコンピュータ支援設計(CAD)環境に転送すること(ステップ93)、CAD環境においてDHI前部機体の流線より曲面を生成し、それらをカウルアセンブリに統合すること(ステップ95)、DHIの形状について計算格子を生成し、粘性CFD解析を実行すること(ステップ97)、DHIの形状を修正し、続いて粘性CFD解析により確認すること(ステップ99)、および、次いで、ステップ103で示されるように終了する前に、空力解析用の航空機の形状にDHI形状を統合すること(ステップ101)を含んでいる。
・・・
ステップ87では、本方法は、スパン方向の輪郭をそれぞれ個々に形成することを含むことが可能であり、ここでは、スパン方向の輪郭は、それぞれ、生じる衝撃波のスパン方向の形状、横方向の境界層の移動、およびカウルの捕獲面積に影響する。」
(2e)図面には以下の図2、3、5及び6が図示されている。
(2f)図3から、前部機体は、カウル27よりも機体前方の位置において、そのスパン方向でみて、カウル27の外側まで延在する部分を備えていることが看取できる。
(2g)図3、6から、前部機体は、機体前方からカウル27に向かって滑らかに幅が広がるように形成されていることが看取できる。
以上によれば、甲第2号証には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲2発明>
「ダイバータレス極超音速空気取入口用の改良されたシステムであって、
機体の長さに沿って延びた長手方向軸と、前部機体の長さ方向に延び、複数の長手方向傾斜区画を具備した第1表面とを有する前部機体を備え、
前記長手方向傾斜区画は、概して滑らかな面を形成するように混合され、カウル27に向かって下流方向に連続して増加する一連の角度を形成するように前記機体長手方向軸に対する角度で形成され、前記前部機体の前記第1表面全体を覆うように延び、スパン方向に輪郭取りされ、それによって、境界層流れを機外に分離し、前記スパン方向の輪郭は、次の数式によって定義されるような超楕円であり:
(x/a)n+(y/b)n=1
ここで、n>2であり、aおよびbは半径であり、
前部機体は、カウル27よりも機体前方の位置において、そのスパン方向でみて、カウル27の外側まで延在する部分を備えていて、
前部機体は、機体前方からカウル27に向かって滑らかに幅が広がるように形成されていて、
前記カウル27は、前記空気吸入推進システムを動作させるのに十分な均一の気流の量を捕獲するシステム。」
(3)甲第3号証の記載事項等
甲第3号証には以下の事項が記載されている。
(3a)9枚目4~12行
「14.2.2 バンプインテーク
‘バンプ’圧縮面を定義するのに、軸から外れた平面によって遮られた円錐まわりの流れ場における流線を利用する方法はferri氏によって示唆され、グラマン社の戦闘機:スーパータイガーに採用された。その目的は、従来の半円形インテークよりも広く平坦であるが、既知の衝撃波形状および流れ場を依然として使用するインテークを提供することである。円錐流れが衝撃波の背後に等エントロピー圧縮を生じさせるので(第5章)、定義された面は、インテーク入口から離れるように境界層を分離するのを助けるスパン方向の圧力勾配を有している。」
(4)甲第4号証の記載事項等
甲第4号証には以下の事項が記載されている。
(4a)11欄27~45行
「1. A system for diverting boundary layer air from an inlet for an aircraft engine comprising:
a bump having a surface raised outwardly from the body of the aircraft to begin diverting the boundary layer air from the inlet prior to the boundary layer air entering the inlet, the bump beginning prior to an opening of the inlet and extending toward the rear of the inlet to form at least a portion of an inner surface of the inlet; and
a cowl coupled to the body of the aircraft to define the opening of the inlet comprising;
an aft-closing portion closed against the body of the aircraft at the aft-most points of the opening of the inlet; and
a forward-swept portion, coupled to the aft-closing portion, that extends toward the front of the aircraft;
the cowl working in conjunction with the bump to further divert the boundary layer air and prevent substantially all of the boundary layer air from entering said inlet during operation. 」
「1.境界層の空気を航空機エンジンの吸気口からそらすシステムであって、
前記航空機の本体から隆起した表面を有しており、前記境界層の空気が前記吸気口に入る前に前記境界層の空気を前記吸気口からそらし始めるバンプであって、前記吸気口の開口部の前方から始まり前記吸気口の後方に向かって延びて、前記吸気口の内面の少なくとも一部を形成する、バンプと、
前記航空機の本体に結合されており、前記吸気口の開口部を画定するカウルであって、前記吸気口の前記開口部の前記最尾部の点で前記航空機の本体に対して閉鎖されている後方閉鎖部分と、前記後方閉鎖部分に結合されており、前記航空機の前方に向かって延びる前方掃引部分とを備える、カウルと、を備え、
前記カウルは前記バンプと連携して動作し、前記境界層の空気をさらにそらして、動作中に前記境界層の空気の実質的に全てが前記吸気口に入ることを防止する、
ことを特徴とするシステム。」
(4b)3欄下から16~9行
「The compression surface portion of the bump, can be designed to produce a conical flow field that can be equivalent to that of an axisymmetric body with a 12°semivertex angle isentropically blended to a 21°final turning angle. The span-wise static pressure on the surface can begin to divert boundary layer air outboard. The pressure differential between the inlet and the area surrounding the inlet further diverts the boundary layer air outboard. 」
「バンプの圧縮表面部分は、錐状流れ場であって、12度の半頂角と21度の最終転向角とが等エントロピー的に一体化している軸対称体の錐状流れ場と同等であるものを生成するように設計することができる。表面におけるスパン方向の静圧は、境界層の空気を外側にそらすことができる。吸気口と、吸気口を取り囲む領域との圧力差により、さらに境界層の空気を外側にそらすことができる。」
(4c)4欄1~22行
「FIG. 1A illustrates a side-mounted embodiment of the inlet 10 mounted to the body of an aircraft 90 with an opening 11 for receiving air into the inlet 10. The inlet 10 includes a bump 20 and a forward-swept, aft-closing cowl 30. The bump 20 is a raised surface formed outwardly from the aircraft towards the interior of the inlet 10. The bump 20 forms part of the inner surface of the inlet 10. The surface comprising the bump 20 begins to raise outwardly away from the body of the aircraft prior to the opening 11, so that boundary layer air will contact the bump 20 prior to arriving at the opening 11. The shape of the bump 20 can be varied depending on design parameters discussed more fully below.
As shown in FIG. 1B, this side-mounted embodiment of the bump 20 extends outwardly from the body of the aircraft 90 with highest point of the bump 20 approximately at the center of the inlet and the bump gradually lessens in height as it approaches the cowl 30. FIG. 1C shows a side-mounted embodiment of the surface forming the bump 20 that gradually increase in height away from the body of the aircraft 90 near the opening 11, reaches a peak at a point inside the inlet 10, then gradually decreases in height near the rear of the inlet 10. 」
「図1Aは、空気を吸気口10に受け入れる開口部11を有する航空機90の本体に取り付けられた、吸気口10の側面取り付けの一実施形態を示す。吸気口10は、バンプ20と、前方に掃引されて後方が閉鎖されたカウル30とを有している。バンプ20は、航空機から吸気ロ10の内部に向かって形成された隆起面である。バンプ20は、吸気ロ10の内面の一部を形成する。バンプ20を含む表面は、開口部11に達する前に境界層の空気がバンプ20に接触するように、開口部11の前に航空機の本体から外向きに隆起し始めている。バンプ20の形状は、下記に詳細に説明する設計パラメータに応じて変化させてもよい。
図1Bに示すように、バンプ20のこの側面取り付けの実施形態では、バンプは航空機90の本体から外側に延びており、吸気口の略中央部でバンプ20の高さが最も高くなり、バンプはカウル30に近づくにつれて徐々に高さが低くなる。
図1Cに示す面の側部取り付けの一実施形態では、開口部11の近傍にある航空機90の本体から離れると高さが徐々に高くなり、吸気ロ10の内側にある一点でピークに達し、その後、吸気口10の後方に近づくと高さが低くなる、バンプ20が形成されている。」
(4d)6欄17~51行
「As shown in FIG. 9A, the bump 20 comprises a compression surface 72, a transition shoulder 73, and a diffuser fairing 74. The shape of the compression surface 72 of the bump 20 can be determined by CFD computerized analysis. As illustrated in FIG. 5, in a computerized model, placing a virtual right circular cone 60 with a constant semi-vertex angle in a supersonic CFD derived flow field 61 will create a conical shock 62 field that is axisymmetric around the virtual cone 60 emanating from the apex 65 of the virtual cone 60. A plane of particles 63 is released and sent through the axisymmetric conical shock 62 at a distance above the apex of the cone known as k. The width of the cone formed by the conical shock 62 at the intersections of the conical shock cone with the plane of particles 63 is denoted as w. The ratio of k to w (k/w) is approximately 0.1 for the embodiment shown in FIG. 5. The particles 64 in the plane of particle released 63 propagate into the flow field and will alter course as the particles 64 pass through the conical shock 62. The shape formed above the original plane of release 63 after passing through the conical shock 62 defines the shape of a compression surface 72 that can be applied to the surface of the aircraft. If a compression surface 72 formed from this procedure is placed in the same flow field, the particles will flow as shown in FIG. 5. A computer program could store this compression surface 72 in its memory and apply the necessary contour of the compression surface 72 to the given shape of the aircraft. The computer must contain a definition of the flow field generated by the virtual cone and a definition of the particle release plane 63, then the computer program can generate the compression surface.
In an alternative embodiment, a parabolic shape, an elliptical shape, or a wedge could be used, rather than a right circular cone, to produce a flow field that could generate a compression surface 72. 」
「図9Aに示すように、バンプ20は、圧縮表面72と、移行肩部73と、ディフューザフェアリングフ74とを備える。バンプ20の圧縮表面72の形状は、CFDコンピュータ解析によって定めることができる。図5に示すように、コンピュータ化されたモデルにおいて、CFDで導出された超音速の流れ場61に一定の半頂角を有する仮想の直円錐60を配置すると、この仮想円錐60の周りに軸対称であり、頂点65から発する円錐状の衝撃62の場が形成される。粒子の平面63が放出されて、円錐の頂点より上方の距離kにある軸対称の円錐状の衝撃62まで送られる。円錐状の衝撃62によって円錐が形成されるが、粒子の平面63との交差部におけるこの円錐状の衝撃の円錐の幅はWで示される。図5に示す実施形態では、kとwとの比(k/w)は約0.1である。放出された粒子の平面63における粒子64は流れ場に伝播して、粒子64は円錐形の衝撃62を通過するにつれてその経路が変化する。円錐形の衝撃62を通過した後の、元の放出平面63の上方に形成された形状により、航空機の表面に適用可能な圧縮表面72の形状が画定される。この手順で形成した圧縮表面72を同じ流れ場に置くと、粒子は図5に示すように流れる。コンピュータプログラムは、この圧縮表面72をメモリに格納して、圧縮表面72が必要とする輪郭を航空機の所与の形状に適用してもよい。コンピュータは、仮想円錐が生成する流れ場の画定基準および粒子の放出平面63の画定基準を含まなければならず、これによって、コンピュータプログラムは圧縮表面を生成することができる。
代替の実施形態では、直円錐形状の代わりに、放物線形状、楕円形状、またはくさび形状を使用して、圧縮表面72を生成する流動場を生成してもよい。」
(4e)図面には、以下の図1A、図1C、図2B、図3及び図9Aが図示されている。
(4f)図1C、図3及び図9Aから、バンプは、吸気口の開口部の前方から滑らかに隆起し、吸気口の内側にある1点でピークに達し、その後、滑らかに沈下するものであることが看取できる。
(4g)図3から、バンプは、吸気口の開口部の前方から後方に向かって滑らかに幅が広がるように形成されていることが看取できる。
以上によれば、甲第4号証には以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲4発明>
「境界層の空気を航空機エンジンの吸気口からそらすシステムであって、
前記航空機の本体から隆起した表面を有しており、前記境界層の空気が前記吸気口に入る前に前記境界層の空気を前記吸気口からそらし始めるバンプであって、前記吸気口の開口部の前方から始まり前記吸気口の後方に向かって延びて、前記吸気口の内面の少なくとも一部を形成する、バンプと、
前記バンプは、吸気口の開口部の前方から滑らかに隆起し、吸気口の内側にある1点でピークに達し、その後、滑らかに沈下するものであり、
前記バンプは、吸気口の開口部の前方から後方に向かって滑らかに幅が広がるように形成され、
前記航空機の本体に結合されており、前記吸気口の開口部を画定するカウルであって、前記吸気口の前記開口部の前記最尾部の点で前記航空機の本体に対して閉鎖されている後方閉鎖部分と、前記後方閉鎖部分に結合されており、前記航空機の前方に向かって延びる前方掃引部分とを備える、カウルと、を備え、
前記カウルは前記バンプと連携して動作し、前記吸気口と、前記吸気口を取り囲む領域との圧力差により、前記境界層の空気を外側にさらにそらして、動作中に前記境界層の空気の実質的に全てが前記吸気口に入ることを防止する、
システム」
2-2 対比・判断
2-2-1 取消理由1(甲第1号証を主引例とするもの)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「航空機用のスクープ型空気取入口の構造」及び「取入口30」は、その機能、構造からみて、それぞれ本件発明1の「機体前方からの空気を取り込む航空機のインテーク構造」及び「インテーク」に相当するといえる。
(イ)甲1発明の「取入口30の内壁」に「形成され」る「バンプ状の圧縮面44」及び「バンプ」は、「取入口外壁41の前縁の上流の箇所で始まり、取入口スロート部48の領域における頂部52を形成すべく下流に延びてい」るから、航空機の機体表面のうち、取入口30の直前に位置する部分に形成されていることは明らかである。また、「取入口外壁41の前縁の上流の箇所」は、機体前方の場所であることは明らかであるから、「バンプ状の圧縮面44」及び「バンプ」は、機体前方から滑らかに隆起しているものであることは明らかである。さらに、「バンプ」は、「頂部52から下流側に滑らかに沈下して」おり、かかる「沈下」は、図6、7(摘示(1j))等を参照するに、取入口30より下流側(内側)の領域、すなわち、取入口30内で生じていることが明らかである。
そうすると、甲1発明の「バンプ状の圧縮面44」及び「バンプ」は、本件発明1の「バンプ」に相当し、上記(ア)をも踏まえると、甲1発明の「取入口30の内壁は、バンプ状の圧縮面44によって形成され、このバンプは、取入口外壁41の前縁の上流の箇所で始まり、取入口スロート部48の領域における頂部52を形成すべく下流に延びていて、取入口外壁41の前縁の上流側の箇所から、取入口スロート部48の領域における頂部52にかけて滑らかに隆起し、頂部52から下流側に滑らかに沈下していて」という構成は、本件発明1の「前記航空機の機体表面のうち、前記インテークの直前に位置する部分には、機体前方から滑らかに隆起し、前記インテーク内で機体後方へ滑らかに沈下するバンプが設けられており」という構成に相当するといえる。
(ウ)甲1発明の「バンプ」は、「バンプの幅方向において、取入口30の側壁42の外側まで延在する部分を備え」るものであるから、取入口30の周辺の平面視において、バンプの最大幅は取入口30の最大幅よりも広いことが明らかである。
したがって、上記(ア)(イ)をも踏まえると、甲1発明の「バンプは、バンプの幅方向において、取入口30の側壁42の外側まで延在する部分を備え」るという構成と、本件発明1の「前記インテークの周辺の平面視において、前記インテークよりも機体前方における前記バンプの最大幅が、前記インテークの最大幅よりも広く」という構成とは、「前記インテークの周辺の平面視において、前記バンプの最大幅が、前記インテークの最大幅よりも広く」という構成の限度で共通するといえる。
さらに、甲1発明の「バンプは、取入口外壁41の前縁の上流側の箇所から取入口30に向かって滑らかに幅が広がるように形成され」という構成と、本件発明1の「前記バンプは、機体前方から前記インテークに向かって滑らかに幅が広がるように形成されており、前記インテークが開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記インテークの側方の位置まで延在している」という構成とは、「前記バンプは、機体前方から前記インテークに向かって滑らかに幅が広がるように形成されている」という構成の限度で共通するといえる。
以上によれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点1>
「機体前方からの空気を取り込む航空機のインテーク構造であって、
前記航空機の機体表面のうち、前記インテークの直前に位置する部分には、機体前方から滑らかに隆起し、前記インテーク内で機体後方へ滑らかに沈下するバンプが設けられており、
前記インテークの周辺の平面視において、前記バンプの最大幅が、前記インテークの最大幅よりも広く、
前記バンプは、
機体前方から前記インテークに向かって滑らかに幅が広がるように形成されている、航空機のインテーク構造。」
<相違点1>
「バンプ」について、本件発明1では、バンプの最大幅の位置が「前記インテークよりも機体前方における」位置であって、バンプは「前記インテークが開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記インテークの側方の位置まで延在している」のに対して、甲1発明では、そのように特定されていない点。
イ 判断
相違点1について検討する。
(ア)本件発明1において、バンプの最大幅の位置が「前記インテークよりも機体前方における」位置であって、バンプは「前記インテークが開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記インテークの側方の位置まで延在している」ことの技術的意義について
本件明細書には以下の記載がある。
「【0006】
しかしながら、現在実用化されているダイバータレス・インテークでは、バンプの幅がインテークの幅よりも狭いものとなっている。そのため、インテークの側部近傍に気流の集中を生じさせ、空気抵抗の増加などの空力特性の悪化を招来してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、インテーク側部での気流の集中を抑制しつつインテークへの境界層の流入を抑制することを目的とする。
・・・
【0010】
本発明によれば、航空機の機体表面のうちインテークの直前に位置する部分に、機体前方から滑らかに隆起したバンプが設けられており、インテーク周辺の平面視において、このバンプの最大幅がインテークの最大幅よりも広く形成されている。
これにより、機体前方からインテークに向かう境界層が、バンプ上に生じる圧力勾配によってインテーク側部よりもさらに側方へ確実に排除される。
したがって、インテーク側部での気流の集中を抑制しつつ、インテークへの境界層の流入を抑制することができる。」
かかる記載によれば、本件発明1において、バンプの最大幅の位置が「前記インテークよりも機体前方における」位置であって、バンプは「前記インテークが開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記インテークの側方の位置まで延在している」こと(以下「事項A」ということもある。)の技術的意義は、境界層をインテーク側部よりもさらに側方に排除すること(以下「技術的意義I」ということもある。)、及び「インテーク側部での気流の集中を抑制」すること(以下「技術的意義II」ということもある。)にあるということができる。
(イ)甲1発明の「バンプの幅方向において、取入口30の側壁42の外側まで延在する部分を備える」ことの技術的意義について
甲第1号証には以下の記載がある。
「取入口30の詳細は、図6~10で最も良く分かる。
図6~10を特に参照して、空気取入口30は、航空機の機体部材34から横方向に突出するスクープ構造40によって形成され、それによって、それらの間に前方に向けられた空気取入口通路を形成する。スクープ構造は、空気取入口の外壁を形成する内側圧縮面41を有しており、前記取入口の側壁を形成する一対の後退角付きの側壁42を有している。取入口の内壁は、前記取入口外壁41に対向する機体部材上のバンプ状の圧縮面44によって形成されている。」(摘示(1d))
かかる記載と図5~10(摘示(1j))の図示内容を参照すると、甲1発明の「取入口30」(インテーク)は、スクープ構造40における「取入口外壁41」(本件発明1の実施例のダクト壁11に対応)の先端位置(図6の符合10の位置)からスクープ構造40における「側壁42」と機体部材34との接続位置付近(同符号9の位置)にかけて形成されているといえる(図5に示されるように後方に傾斜している。)。そして、前記先端位置から前記接続位置付近にかけての領域(以下「領域A」という。)で、「バンプ」は、取入口30の側壁42よりも幅方向にみて外側に延在する部分を備えていることがわかる。
ここで、「バンプ」を設けることの技術的意義は、機体前方から滑らかに隆起する圧縮面44等の作用により幅方向に圧力勾配を生じさせ、機体前方から取入口に向かう空気の境界層を横方向に流し排除するものであるといえるところ(摘示(1h)等参照。なお、これは技術常識でもある。)、甲1発明における上記領域Aに形成されるバンプの上記「延在する部分」もバンプの一部である以上、圧縮面44等の作用によって幅方向に圧力勾配が生じているといえること、また、上記領域Aは、スクープ構造40における「取入口外壁41」や「側壁42」により完全に囲まれているわけではないことから、上記領域Aにおいても当然に、機体前方から取入口に向かう空気の境界層は横方向に流され排除されるといえ、上記「延在する部分」の作用により、境界層は、取入口30の側壁42よりもさらに側方へ流され排除されると理解できる。
そうすると、甲1発明において、上記「バンプの幅方向において、取入口30の側壁42の外側まで延在する部分」を備えることの技術的意義は、境界層を取入口30の側壁42よりもさらに側方へ排除することにあるということができる。
(ウ)甲1発明の「側壁42」の最大幅は、本件発明1の「インテークの最大幅」に対応するといえ、甲1発明の「延在する部分」の最大幅は、本件発明1の「バンプの最大幅」に対応するといえるから、本件発明1の「バンプの最大幅」を「インテークの最大幅よりも広く」形成することの技術的意義と、甲1発明の「バンプの幅方向において、取入口30の側壁42の外側まで延在する部分を備え」ることの技術的意義とは、上記技術的意義Iの点で一応共通するということができる。
しかし、甲1発明は、バンプの最大幅の位置が「前記インテークよりも機体前方における」位置であって、バンプは「前記インテークが開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記インテークの側方の位置まで延在している」ものとして特定されるものではないから、上記技術的意義IIの「インテーク側部での気流の集中を抑制」することができるものとまでいうことはできない。
また、甲第1号証には、概略、バンプは、インテーク周辺の流体の流れ(衝撃波の発生状況)等を考慮してその形状や位置等の設計を行う旨が示されているが(摘示(1g)等参照)、その具体的な構造を、上記技術的事項IIをも企図して、上記事項Aのように構成することは記載も示唆もなされていない。
ここで、甲第2号証には、ターボジェットおよびラムスクラムジェット統合型航空機ジェットエンジン用途のためのダイバータレス極超音速空気取入口用の改良されたシステムに関する技術について記載されており(摘示(2a)(2b))、図3(摘示(2e))より、前部機体は、カウル27よりも機体前方の位置において、そのスパン方向でみて、カウル27の外側まで延在する部分を備えていることを看取することができるが、かかる部分は、あくまでも機体前方の形状・構造であって、バンプの形状・構造ということはできない。したがって、甲1発明に甲第2号証に記載された技術的事項を適用する動機付けが存在するということはできないし、仮に甲第2号証に記載された前部機体の構造を適用しても、甲第2号証に記載された前部機体は「バンプ」として構成されたものではないから、上記技術的事項IIをも企図した上記事項Aの構成を具備するバンプを設けることには至らない。
そして、本件発明1は、上記相違点1に係る本件発明1の構成により、「機体前方からインテークに向かう境界層が、バンプ上に生じる圧力勾配によってインテーク側部よりもさらに側方へ確実に排除される。」及び「インテーク側部での気流の集中を抑制しつつ、インテークへの境界層の流入を抑制することができる。」(段落【0010】)という格別の効果を奏するものである。
したがって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は容易想到とはいえないものであるから、本件発明1は、甲1発明に基いて、又は甲1発明及び甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(2)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定して発明を特定したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明に基いて、又は甲1発明及び甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
2-2-2 取消理由2(甲第2号証を主引例とするもの)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「ダイバータレス極超音速空気取入口用の改良されたシステム」は、その機能、構造からみて、本件発明1の「機体前方からの空気を取り込む航空機のインテーク構造」及び「航空機のインテーク構造」に相当するといえる。
(イ)甲2発明の「前部機体」は、「複数の長手方向傾斜区画を具備した第1表面とを有する」ものであって、かかる「長手方向傾斜区画は、概して滑らかな面を形成するように混合され、カウル27に向かって下流方向に連続して増加する一連の角度を形成するように」、「機体の長さに沿って延びた長手方向軸」「に対する角度で形成され」るとともに、「前記第1表面全体を覆うように延び、スパン方向に輪郭取りされ」るものであり、図3及び5(摘示(2e))の図示内容をも併せみると、「カウル27」の開口部の上流側、すなわち空気取入口の前方から機体の表面に対して滑らかに隆起した形状を有し、空気取入口の直前にも形成されていることが明らかである。
そうすると、甲2発明の「機体の長さに沿って延びた長手方向軸と、前部機体の長さ方向に延び、複数の長手方向傾斜区画を具備した第1表面とを有する前部機体を備え、前記長手方向傾斜区画は、概して滑らかな面を形成するように混合され、カウル27に向かって下流方向に連続して増加する一連の角度を形成するように前記機体長手方向軸に対する角度で形成され、前記前部機体の前記第1表面全体を覆うように延び、スパン方向に輪郭取りされ」るという構成と、本件発明1の「前記航空機の機体表面のうち、前記インテークの直前に位置する部分には、機体前方から滑らかに隆起し、前記インテーク内で機体後方へ滑らかに沈下するバンプが設けられており」という構成とは、「前記航空機の機体表面のうち、前記インテークの直前に位置する部分には、機体前方から滑らかに隆起する部分が設けられており」という構成の限度で共通するものといえる。
(ウ)甲2発明の「前部機体」は、「カウル27よりも機体前方の位置において、そのスパン方向でみて、カウル27の外側まで延在する部分を備えて」おり、図3(摘示(2e))の図示内容をも併せみると、「カウル27」の開口部の周辺の平面視において、「カウル27」より機体前方の位置における前部機体の最大幅は、「カウル27」の開口部を含む「カウル27」の最大幅よりも広いことが明らかである。
そして、「カウル27」の開口部は空気取入口、すなわち、インテークということができ、「スパン方向」は「カウル27」の幅方向ということができるから、甲2発明の「前部機体は、カウル27よりも機体前方の位置において、そのスパン方向でみて、カウル27の外側まで延在する部分を備えて」いるという構成と、本件発明1の「前記インテークの周辺の平面視において、前記インテークよりも機体前方における前記バンプの最大幅が、前記インテークの最大幅よりも広く」という構成とは、上記(ア)(イ)をも踏まえると、「前記インテークの周辺の平面視において、前記インテークよりも機体前方における前記部分の最大幅が、前記インテークの最大幅よりも広く」という構成の限度で共通するものといえる。
また、甲2発明の「前部機体」は、「機体前方からカウル27に向かって滑らかに幅が広がるように形成されて」いることから、かかる「前部機体」の構成と、本件発明1の「前記バンプは、機体前方から前記インテークに向かって滑らかに幅が広がるように形成されており、前記インテークが開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記インテークの側方の位置まで延在している」という構成とは、上記(ア)(イ)をも踏まえると、「前記部分は、機体前方から前記インテークに向かって滑らかに幅が広がるように形成されている」という構成の限度で共通するものといえる。
以上によれば、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点2>
「機体前方からの空気を取り込む航空機のインテーク構造であって、
前記航空機の機体表面のうち、前記インテークの直前に位置する部分には、機体前方から滑らかに隆起する部分が設けられており、
前記インテークの周辺の平面視において、前記インテークよりも機体前方における前記部分の最大幅が、前記インテークの最大幅よりも広く、
前記部分は、
機体前方から前記インテークに向かって滑らかに幅が広がるように形成されている航空機のインテーク構造。」
<相違点2>
機体前方から滑らかに隆起する「部分」について、本件発明1では、「バンプ」であって、「前記インテーク内で機体後方へ滑らかに沈下する」ものであり、さらに、「前記インテークが開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記インテークの側方の位置まで延在している」ものであるに対し、甲2発明では、「機体前部」であって、「バンプ」として特定されるものではなく、「前部機体」のカウル27内の構成は不明である点。
イ 判断
上記相違点2について検討する。
甲2発明の「前部機体」は、「複数の長手方向傾斜区画を具備した第1表面」を具備し、「前記長手方向傾斜区画は、概して滑らかな面を形成するように混合され、カウル27に向かって下流方向に連続して増加する一連の角度を形成するように前記機体長手方向軸に対する角度で形成され、前記前部機体の前記第1表面全体を覆うように延び、スパン方向に輪郭取りされ、それによって、境界層流れを機外に分離」するものであるから、甲2発明の「前部機体」と本件発明1の「バンプ」とは、それら構成が有する機能に照らして上記技術的意義Iの点で一応共通するものといえる。
しかし、甲2発明の「前部機体」は、あくまでも、カウル27よりも機体前方の形状・構造を特定することにとどまるものであって、本件発明1の「バンプ」に相当する構成として位置付けられ得るものではない(甲第2号証には、カウル27内の構成については記載も示唆もない。)。また、甲第2号証の図3(摘示(2e))に示される「前部機体」と「カウル27」の配設構造に照らせば、前部機体は、カウル27を支持する機体の構造部というべきであるから、そのような機体の構造部を、カウル27の支持には関与しないバンプとして構成すべき合理性もない。要するに、「前部機体」はあくまでも「機体」の構造であって「バンプ」の構造として位置付けられ得るものではない。
そうすると、甲第1号証(摘示(1f)(1j))や甲第4号証(摘示(4c)(4e))に、機体前方から滑らかに隆起し、インテーク内で機体後方へ滑らかに沈下するバンプが記載され、それが周知の技術的事項ということができたとしても、甲2発明の「前部機体」と甲第1号証や甲第4号証に記載された「バンプ」とが、同一の機能を有する構造物ということはできないことから、甲2発明の「前部機体」の構成として、上記甲第1号証や甲第4号証に記載された「バンプ」の構成を適用する動機付けが存在するということはできない。むしろ、甲2発明の「前部機体」が、カウル27を支持する機体の構造部であるならば、その構造をバンプとして構成することには阻害要因が存在するものということもできる(「前部機体」を、インテーク内で機体後方へ滑らかに沈下するように構成するならば、カウル27を支持する機体としての機能が失われるものとも解される。)。
したがって、上記相違点2に係る本件発明1の構成は容易想到とはいえないものであるから、本件発明1は、甲2発明及び周知の技術的事項(甲第1号証及び甲第4号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(2)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定して発明を特定したものであるから、本件発明1と同様に、甲2発明及び周知の技術的事項(甲第1号証及び甲第4号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
2-2-3 取消理由3(甲第4号証を主引例とするもの)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
(ア)甲4発明の「境界層の空気を航空機エンジンの吸気口からそらすシステム」は、甲4発明において「吸気口」からそらされるのは、境界層の空気であり、そらされない空気を「吸気口」に取り込むことは明らかであるから、本件発明1の「機体前方からの空気を取り込む航空機のインテーク構造」に相当するといえる。
(イ)甲4発明の「バンプ」は、「航空機エンジン」の「吸気口の開口部の前方から始まり前記吸気口の後方に向かって延びて、前記吸気口の内面の少なくとも一部を形成する」ものであるから、吸気口の開口部の直前に位置する部分に設けられていることが明らかである。また、「バンプ」は、「航空機の本体から隆起した表面を有しており」、かかる「隆起」は、「吸気口の開口部の前方から滑らかに隆起し」たものであるから、航空機の本体前方から滑らかに隆起したものであることが明らかである。さらに、「吸気口の内側にある1点でピークに達し、その後、滑らかに沈下するもの」であるから、吸気口の内側(吸気口内)で機体後方へ滑らかに沈下するものであることも明らかである。
ここで、甲4発明の「吸気口」は、本件発明1の「インテーク」に相当し、以下同様に「航空機の本体」は「機体」に、「バンプ」は「バンプ」に相当するといえるから、甲4発明の「前記航空機の本体から隆起した表面を有しており、前記境界層の空気が前記吸気口に入る前に前記境界層の空気を前記吸気口からそらし始めるバンプであって、前記吸気口の開口部の前方から始まり前記吸気口の後方に向かって延びて、前記吸気口の内面の少なくとも一部を形成する、バンプと、前記バンプは、吸気口の開口部の前方から滑らかに隆起し、吸気口の内側にある1点でピークに達し、その後、滑らかに沈下するものであ」るという構成は、本件発明1の「前記航空機の機体表面のうち、前記インテークの直前に位置する部分には、機体前方から滑らかに隆起し、前記インテーク内で機体後方へ滑らかに沈下するバンプが設けられて」いるという構成に相当するといえる。
さらに、甲4発明の「前記バンプは、吸気口の開口部の前方から後方に向かって滑らかに幅が広がるように形成され」という構成と、本件発明1の「前記バンプは、機体前方から前記インテークに向かって滑らかに幅が広がるように形成されており、前記インテークが開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記インテークの側方の位置まで延在している」という構成とは、「前記バンプは、機体前方から前記インテークに向かって滑らかに幅が広がるように形成されている」という構成の限度で共通するといえる。
以上によれば、本件発明1と甲4発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点3>
「機体前方からの空気を取り込む航空機のインテーク構造であって、
前記航空機の機体表面のうち、前記インテークの直前に位置する部分には、機体前方から滑らかに隆起し、前記インテーク内で機体後方へ滑らかに沈下するバンプが設けられており、
前記バンプは、
機体前方から前記インテークに向かって滑らかに幅が広がるように形成されている、航空機のインテーク構造。」
<相違点3>
バンプについて、本件発明1では、「前記インテークの周辺の平面視において、前記インテークよりも機体前方における前記バンプの最大幅が、前記インテークの最大幅よりも広く」構成されるとともに、バンプは「前記インテークが開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記インテークの側方の位置まで延在している」のに対して、甲4発明では、そのように特定されていない点。
イ 判断
相違点3について検討する。
甲4発明の「バンプ」は、「前記吸気口の内面の少なくとも一部を形成する」ものである。すなわち、甲第4号証には「バンプ20は、航空機から吸気口10の内部に向かって形成された隆起面である。」(摘示(4c))と記載されているとおり、吸気口の内部に向かって形成された隆起面であって、その構造は図1A(摘示(4e))にも示されているとおり、吸気口(インテーク)の周辺の平面視において、前記吸気口(インテーク)よりも機体前方におけるバンプの最大幅が、前記吸気口(インテーク)の最大幅よりも「狭く」構成されるものである。要するに、甲4発明の「バンプ」は、あくまでも吸気口(インテーク)の内面に形成されるものとして構成されるものであって、前記吸気口(インテーク)が開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記吸気口(インテーク)の側方の位置まで延在するように構成されるものではない。
また、甲第4号証の図1A(摘示(4e))に示されるカウル30の配設態様に照らせば、そのカウル30が形成する吸気口(インテーク)の最大幅よりも、バンプの機体前方における最大幅を「広く」構成するとともに、前記吸気口(インテーク)が開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記吸気口(インテーク)の側方の位置まで延在させることには、阻害要因が存在するものということもできる。
そして、甲第1号証には、上記「2 2-1(1)」で述べたとおりの甲1発明が記載され、また、甲第2号証には、上記「2 2-1(2)」で述べたとおりの甲2発明が記載されているが、それらの発明は、「バンプ」について、「前記インテークの周辺の平面視において、前記インテークよりも機体前方における前記バンプの最大幅が、前記インテークの最大幅よりも広く」構成されるとともに、バンプは「前記インテークが開口している機体前後方向位置の全体において、当該バンプの幅方向における前記インテークの側方の位置まで延在している」ものではないから、甲4発明に、甲1発明又は甲2発明の「バンプ」の構成を適用しても、上記相違点3に係る本件発明1の構成に至るものではない。
したがって、上記相違点3に係る本件発明1の構成は容易想到とはいえないものであるから、本件発明1は、甲4発明、甲1発明及び甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(2)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定して発明を特定したものであるから、本件発明1と同様に、甲4発明、甲1発明及び甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
[申立理由1]
請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、また、請求項1~3は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、上記請求項1~4に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
[申立理由2]
請求項2及び4に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に、甲第3号証に記載された発明を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許を受けることができない。
したがって、上記請求項2に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
2 検討
2-1 申立理由1について
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とは、上記「第4 2 2-2 2-2-1」で述べたとおり上記相違点1で相違するものであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明である、ということはできない。
また、本件発明1と甲2発明とは、上記「第4 2 2-2 2-2-2」で述べたとおり上記相違点2で相違するものであるから、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明である、ということはできない。
(2)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定して発明を特定したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明であるとも、また、甲第2号証に記載された発明であるともということはできない。
2-2 申立理由2について
上記「2-1(1)」で述べたとおり、本件発明1と甲1発明とは上記相違点1で相違し、本件発明1と甲2発明とは上記相違点2で相違するところ、甲第3号証には、インテーク入口から離れるように境界層を分離するのを助けるスパン方向の圧力勾配を有しているバンプについて記載されているが(摘示(3a))、かかるバンプの構造は、上記相違点1や上記相違点2に係る本件発明1の構成ということはできないから、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に、甲第3号証に記載された発明を適用しても本件発明1及び4に至るものではない。
3 小括
したがって、上記申立理由1及び2によっては、本件請求項1及び4に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び4に係る特許を取り消すことはできないし、他に本件請求項1及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2及び3に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項2及び3に対して、異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-701021