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特許異議申立

2017-700932

認証のためのシステム、方法、プログラム、及びプログラムを記録した記録媒体

審判番号
2017-700932
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-155997外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年09月29日
審決日
2017年12月15日
公報発行日
2018年02月23日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.121-Y (G06F) / P1652.537-Y (G06F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第36条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6104439号発明「認証のためのシステム、方法、プログラム、及びプログラムを記録した記録媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6104439号の請求項1,3,6,11,16,18,21及び26に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第6104439号の請求項1乃至31に係る特許についての出願は,平成28年8月8日に特許出願され,平成29年3月10日にその特許権の設定登録がされ,その後,請求項1,3,6,11,16,18,21及び26に対して、特許異議申立人 當山章(以下単に「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明 特許第6104439号の請求項1,3,6,11,16,18,21及び26の特許に係る発明(以下,それぞれ「本件特許1」,「本件特許3」…,「本件特許26」という。)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1,3,6,11,16,18,21及び26に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 このうち本件特許1については次のとおりの発明と認める。 「【請求項1】 第1の端末と、 第2の端末と、 認証サブシステムと、 を備え、 前記認証サブシステムは、 記憶部と、 前記第1の端末から受信した識別情報と、前記第2の端末の固有IDと対応付けて前記記憶部に記憶されている識別情報を照合する識別情報照合部と、 前記第1の端末から受信した前記識別情報と一致する識別情報が、前記記憶部に記憶されていた場合、プッシュIDを生成すると共に、該プッシュIDを前記第1の端末に送信するプッシュID生成部と、 前記第1の端末から受信した前記識別情報と一致する前記識別情報に基づいて、該識別情報と対応付けて前記記憶部に記憶された前記第2の端末の固有IDを取得する第2端末固有ID取得部と、 前記第1の端末から受信したプッシュIDを前記記憶部に記憶させるプッシュID受付部と、 前記第2端末固有ID取得部により取得された前記第2の端末の固有IDに基づいて、前記第2の端末に、前記プッシュID生成部により生成された前記プッシュIDと、プッシュ認証操作開始要求を送信するプッシュ認証操作開始要求部と、 前記第2の端末から送信されたプッシュ認証操作完了通知を受信するプッシュ認証操作完了通知受付部と、 前記第2の端末から受信したプッシュIDと、前記記憶部に記憶された、前記第1の端末からの前記プッシュIDを照合するプッシュID照合部と、 を備え、 第1の端末は、 前記識別情報及び第1のプッシュ認証要求を前記識別情報照合部に送信し、 前記プッシュID生成部から受信した前記プッシュIDを記憶すると共に、該プッシュIDを前記プッシュID受付部に送信し、 第2の端末は、 前記プッシュ認証操作開始要求を受信すると、前記プッシュ認証のために、知識認証情報、所有物認証情報、及び生体認証情報の入力を伴わない所定の操作のみをユーザに促し、 前記ユーザにより、前記所定の操作が行われると、前記プッシュ認証操作開始要求部から受信した前記プッシュIDとプッシュ認証操作完了通知を前記プッシュ認証操作完了通知受付部に送信する、 認証システム。」 3.申立理由の概要 申立人は,証拠として甲第1号証ないし甲第7号証を提出し,取消理由1および取消理由2により,請求項1,3,6,11,16,18,21及び26に係る特許を取り消すべき旨主張している。 (取消理由1) (取消理由1-1) 本件特許1,11,16及び26は,甲第1号証に記載された発明,甲第2号証乃至甲第5号証に記載された技術常識,並びに,甲第4号証に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は特許法29条2項の規定に違反してなされたものであるので,同法113条2号の規定に該当し,取り消されるべきものである。 (取消理由1-2) 本件特許3及び18は,甲第1号証に記載された発明,甲第2号証乃至甲第5号証に記載された技術常識,並びに,甲第4号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は特許法29条2項の規定に違反してなされたものであるので,同法113条2号の規定に該当し,取り消されるべきものである。 (取消理由1-3) 本件特許6及び21は,甲第1号証に記載された発明,甲第2号証乃至甲第5号証に記載された技術常識,並びに,甲第4号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は特許法29条2項の規定に違反してなされたものであるので,同法113条2号の規定に該当し,取り消されるべきものである。 (取消理由2) 本件特許1,3,6,11,16,18,21及び26は,その記載が明確でなく,その特許は特許法36条6項2号の規定に違反してなされたものであるので,同法第113条4号の規定に該当し,取り消されるべきものである。 (証拠方法) 甲第1号証: ANDREW MATRONIK, "Google enables new two-step 'prompt' log-in verification from your phone", [online], 2016年6月20日,[平成29年9月27日検索], インターネット, <URL:https://www.androidcentral.com/google-enables-brand-new-two-step-log-option-your-phone?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+androidcentral+%28Android+Central%29&utm_content=Google+Internatinal#comments> (以下「引用例1」という。) 甲第2号証: “ローカル通知/リモート通知プログラミングガイド”, [online], 2015年12月17日, [平成29年9月27日検索], インターネット, <URL:https://developer.apple.com/jp/documentation/NetworkingInternet/Conceptual/RemoteNotificationsPG/Chapters/Introduction.html> (以下「引用例2」という。) (なお,公知日については,下記記載事項Kより認定した。) 甲第3号証: jonchambers, "Apple Developer Forums/Use cases for 'apns-id' header in HTTP/2-based APNs protocol?", [online], 2016年2月8日, [平成29年9月27日検索], インターネット, <URL:http://forums.developer.apple.com/thread/35582> (以下「引用例3」という。) 甲第4号証:特開2011-238036号公報(以下「引用例4」という。), 甲第5号証:特開2013-210871号公報(以下「引用例5」という。), 甲第6号証: ITTOUSAI, “Googleからのメッセージを取得してログインする”, [online], 2016年6月22日, [平成29年9月27日検索], インターネット, <http://japanese.engadget.com/2016/06/21/google-2-android-iphone/> (以下「引用例6」という。), 甲第7号証: SUMIT, "How to Enable Google Prompt To Make-2-Step Verification", 2016年6月29日, [平成29年9月27日検索], インターネット, <URL:http://www.stechguide.com/enable-google-prompt-to-make-2-step-verification/?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+stechguide+%28stechguide%29&utm_content=Google+International> (以下「引用例7」という。) 4.各引用例の記載について (1)引用例1 ア 引用例1に記載された事項 引用例1には,次の事項が記載されている。 A 「Having two-step verification enabled on your Google account is an absolute must for keeping it safe, and today Google has enabled yet another way to verify your log-in attempts called a "Google prompt." Now sitting alongside the Google Authenticator app, text messages and security keys is the option to simply verify log-in attempts by unlocking a registered phone - the feature was announced today for paid Google Apps accounts, but has also been enabled for personal Google accounts as well.」(第1段落) (仮訳: Googleアカウントにおける2段階の認証システムは、安全確保のために必須であり、今日のGoogleは、ユーザのログインの試みをさらに別の手法で認証する「Google prompt」と呼ばれる新たな手段を導入しています。この手法はGoogle Authenticator、テキストメッセージと並列して提供されており、セキュリティキーは、登録されたスマートフォンのロックを外すことによりログインの試みの認証を簡素化するオプションとして提供されています。この機能は、有償のGoogle Appsアカウント向けに本日付で発表された機能ですが、個人のGoogleアカウントにも導入されています。) B 「Once enabled through the Google security settings online, you can choose to have your phone prompt you with a full-screen notice any time a Google account log-in attempt was made - you simply tap "yes" on your phone and the log-in will be completed on the computer you tried to log in on. (You can also tap "no" if this was an unauthorized attempt.) The only requirements are a data connection on the phone and the latest version of Google Play Services. It can even be used on an iPhone using the Google Search app.」(第2段落) (仮訳: PromptをオンラインのGoogleセキュリティ設定上で一度有効にすると、Googleアカウントヘのログインの試みを行う度にスマートフォン上の全画面での通知によりpromptの起動が選択できます。ユーザは「はい」を端末上にタップするだけで、ログインを試みたコンピュータ上でのログインが完了します(許可されていないログインの場合はユーザは「いいえ」をタップします)。この機能に必要なものは手持ちのスマートフォンと最新バージョンのGoogle Play Services間のデータ接続です。 Google Search appを使用することにより、この機能をiPhoneでも使用できます。) C 「The new two-step option is not unlike Google's Smart Lock feature on Chrome OS, which lets you unlock your Chromebook when your registered phone is within Bluetooth range and unlocked.」(第3段落) (仮訳: この新しい二段階の認証オプションは、ユーザによって登録されたスマートフォンがBluetoothのネットワーク内に存在していて、ロックが解除されている場合にChromebookのロックを解除できるChrome OSにおけるGoogle Smart Lock機能と類似のものです。) D 「This new Google prompt two-step verification option removes the extra step of waiting for a text message to arrive or opening an app like Google Authenticator to enter a code - all you have to do is have your phone nearby and have it secured with a lock screen. It also can stand alongside the Google Authenticator (or a third-party authenticator) app, meaning you could have multiple devices that are able to handle log-ins. In other words, this just took away any excuse you could've previously had for not having two-step verification enabled on your account.」(第4段落) (仮訳: この新しいGoogle promptによる二段階の認証オプションは、テキストメッセージの到着を待つ、あるいはコードを入力するためにGoogle Authenticatorを開くという追加のステップを除去します。ユーザは自分のスマートフォンが身近にあり、そのスマートフォンが両面ロックされていてセキュアな状態であればよいだけです。また、この機能はGoogle Authenticator(あるいは第三者の認証アプリケーション)と並んで提供されているため、ユーザはログインに複数のデバイスを使えます。つまり、ユーザが自らのアカウントに二段階の認証オプションを採用しない理由は、これで一切なくなったということです。) E 引用例1の第1段落及び第2段落の間には,引用例1に示す情報を,ウェブブラウザのようなアプリケーションで読み込み,当該情報を表示した画面上,左下の「△」(右方向へその先が向けられているもの)をマウスなどでクリックすることによって順次表示される画面1乃至5が表示される。 当該操作によって表示される画面1乃至5は次の通りである。 画面1 画面2 画面3 画面4 画面5 イ 引用例1に記載された発明 1)上記記載事項Aによると,グーグル社が提供する2段階認証について,「グーグル プロンプト」と呼ばれる方法が新たに提供されて利用可能となったことを読み取ることができ,これは“2段階認証を実行するシステム”を示しているといえる。そして当該方法は,グーグルアカウント,すなわち“特定の個人のアカウント”に対応したものであること,記載事項Eの画面1乃至4の様子から,さらに当該“特定の個人のアカウントに対応付けて特定のスマートフォンを認証用のデバイスとして登録”することを読み取ることができる。 なお,申立人によると,当該スマートフォンの登録にあたっては,「電話番号」を登録すること(上記記載事項Eの画面1及び3)を示していることを主張しているが,上記記載事項A乃至Eのいずれにも,「電話番号」を登録することは明記されておらず,また,上記記載事項Eの画面1乃至5のいずれにも,「電話番号」を登録することを示す事実は見当たらない。 2)上記記載事項Bによると,あるコンピュータにおいて,特定の個人のアカウントへのログインを試みた際の動作を読み取ることができ,さらに上記記載事項Eの画面5の様子から,“コンピュータを用いて特定の個人のアカウントへのログインを実行すると,登録されたスマートフォン上に,ログインを試みていることを通知し,かつ,当該ログインの可否(「はい」又は「いいえ」)の操作をユーザに選択させるための通知を”行っていることを読み取ることができる。 3)上記記載事項Bによると,「Yes」をタップすること,すなわち「はい」を選択することによってログインがなされることを読み取ることができるから,引用例1には“ログインの可否において「はい」がユーザによってスマートフォン上で選択された場合に,ログインを実行したコンピュータのログインが完了する”ことを読み取ることができる。 4)上記1)乃至3)によれば,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「特定の個人のアカウントに対応付けて特定のスマートフォンを認証用のデバイスとして登録し, コンピュータを用いて特定の個人のアカウントへのログインを実行すると,登録されたスマートフォン上に,ログインを試みていることを通知し,かつ,当該ログインの可否(「はい」又は「いいえ」)の操作をユーザに選択させるための通知をし, ログインの可否において「はい」がユーザによってスマートフォン上で選択された場合に,ログインを実行したコンピュータのログインが完了する, 2段階認証を実行するシステム。」 (2)引用例2に記載された事項 引用例2には,次の事項が記載されている。 F 「一方、リモート通知(あるいは「プッシュ通知」)は、デバイスの外部から届きます。リモートサーバ(アプリケーションの通知プロバイダー)で発生し、デバイス上のアプリケーションに、Apple Push Notificationサービス(APNs)経由で配信(プッシュ)されます。」(「ローカル通知,リモート通知について」の項の「概要」のうち,「ローカル通知とリモート通知の違い」の項) G 「APNs Provider APIを活用すれば、iOS、tvOS、macOSデバイス上で動作しているアプリケーションに、あるいはiOSを経由してApple Watchに、リモート通知を送信できます。このAPIはHTTP/2ネットワークプロトコルを基盤としています。通知の送信はプロバイダーサーバからAPNsへのPOST要求で始まり、これにはJSONペイロードが収容されています。APNsはこれを受けて、指定されたユーザデバイス上で動作しているアプリケーションに通知を送ります。」(「APNs Provider API」の項) H 「APNsに安全に接続するため、プロバイダー認証トークンやプロバイダー証明書が有用です。この節ではトークンを使った接続について説明します。 Provider APIはJWT(JSON Web Token)の仕様に対応しており、プッシュ通知とともに、クレームと呼ばれる文やメタデータをAPNsに渡すことができます。詳しくは仕様文書(https://tools.ietf.org/html/rfc7519)を参照してください。また、JWTや、署名付きJWTを生成するためのライブラリについては、https://jwt.ioを参照してください。」(「APNs Provider API」の項のうち,「プロバイダー認証トークン」の項) I 「通知を識別する標準的なUUID。通知の送信時にエラーが発生した場合、APNsはこの値を使って、サーバに送信しようとした通知を識別します。 標準的な形式は32桁の16進小文字で、8-4-4-4-12桁ごとにハイフンで区切った文字列です。たとえば次のような形式です。 123e4567-e89b-12d3-a456-42665544000 このヘッダを省略した場合、APNsが新規にUUIDを生成し、応答に入れて返します。」(「APNs Provider API」の項のうち,「APNsへのHTTP/2要求」の項の「表6-2 APNsの要求ヘッダ」の「ヘッダ」“apns-id”に対応する「説明」の項) J 「要求のapns-id値を転記。要求にこの値がなかった場合、サーバが新規にUUIDを生成し、このヘッダに入れて返します。」(同「表6-3 APNs応答ヘッダ」の「ヘッダ名」“apns-id”の「値」の項) K 「2015年12月から利用できる、HTTP/2ベースのAPNs Provider APIの説明を追加しました。」(「改訂履歴」の中の,"2015/12/17"に対応する項) L 「プロバイダがApple Push Notificationサービスを使用してクライアントアプリケーションにPush Notificationを送信する仕組みについて説明したドキュメントの初版。」(同"2009/03/15"に対応する項) (3)引用例3に記載された事項 引用例3には,次の事項が記載されている。 M 「First, a small quibble with the definition: in practice, it appears that the `apns-id` header is always sent by the server regardless of whethere or not there was an error. In other words, responses to notifications accepted by the server will also include the `apns-id` header.」(第3段落) (仮訳: まず、定義に少々の疑問があります。事実上、'apns-id'ヘッダはエラーのあるなしに関わらず、常にサーバから送信されているようです。つまり、サーバが受理した通知への応答にも常に'apns-id'ヘッダは含まれているということです。) N 「Beyond that, though, we're a little unclear on the use cases for the `apns-id` header. It seems to be intended to correlate responses from the server with requests from the provider. That made a lot of sense back in pre-HTTP/2 days, but it seems to me that HTTP/2 already has a mechanism to correlate requests and responses (i.e. the stream ID). If that's already the case, what is the stream ID for? Also, what should the provider do with the `apns-id` if it's automatically generated by the server?」(第4段落) (仮訳: さらに我々は、'apns-id'ヘッダの使用例についてまだよく理解していません。 apns-idヘッダの使用は、サーバからの応答とプロバイダからのリクエストを相関付ける意図であるようです。それは以前のHTTP/2が使用されていた時代には確かに大きな意昧がありましたが、私の目にはHTTP/2には既にリクエストと応答を相関付けるメカニズムを有しているように見えます(例:stream ID)。それが正しいなら、stream IDは何のために存在しているのか?また、apns-idがサーバによって自動的に生成されるなら、プロバイダはこれをどう取り扱うべきなのでしょうか?) (4)引用例4について ア 引用例4に記載された事項 引用例4には次の事項が記載されている。 O 「【0013】 図1は、本発明の認証システムのネットワーク構成図を示す。本発明の認証システムは、インターネット10を介してパーソナルコンピュータ20(以下、クライアントPC20として参照する)に接続されるサーバ装置30と、移動体通信網12およびインターネット10を介してサーバ装置30と通信可能な移動携帯端末40を含んで構成されている。本システムにおいて、クライアントPC20は、必ずしもユーザが所有・管理するものである必要はない。すなわち、本発明の認証システムは、たとえば、宿泊先のホテルの貸出用パソコンや外出先の他人のパソコンを使用して構築することができる。 …(中略)… 【0017】 また、本実施形態におけるサーバ装置30は、ユーザからの要求に応じてネットワークを通して各種サービスを提供するサービスサーバであり、ユーザ認証機能を備える。サーバ装置30は、移動体通信網12あるいはインターネット10を介して携帯電話40およびクライアントPC20のいずれとも通信可能に構成されおり、クライアントPC通信部33、移動携帯端末通信部34、ログイン認証部35を含んで構成されている。なお、本発明におけるサーバ装置は、サービスサーバに限定されず、他のサービスサーバに代行してユーザ認証を実行する認証専用サーバであってもよい。以下の説明においては、サーバ装置30をサービスサーバ30として参照する。 【0018】 サービスサーバ30は、クライアントPC20のウェブブラウザ22から送信されたログイン要求に応答してクライアントセッションを生成し、これにクライアントセッションID(以下、CセッションIDとして参照する)を割り当てる。本実施形態におけるクライアントPC通信部33は、CセッションIDを表示するための情報を生成するクライアントセッションID表示情報生成部を含み、生成したクライアントセッションID表示情報をウェブブラウザ22に送信する。 【0019】 本実施形態におけるクライアントセッションID表示情報生成部は、クライアントセッションID表示情報をテキストデータとして生成することができる。その場合、CセッションIDを示す文字列がクライアントPC20のウェブブラウザ22によって表示装置26に表示される。ユーザは、表示装置26に表示された文字列を見ながら、モバイルブラウザ43に表示された入力フォームにこれを入力する。この場合、モバイルブラウザ43がクライアントセッションID入力部44をして機能する。一方、本実施形態においては、クライアントセッションID表示情報をQRコードとして生成することもできる。その場合、QRコードがクライアントPC20のウェブブラウザ22によって表示装置26に表示される。ユーザは、表示装置26に表示されたQRコードを携帯電話40に標準搭載されたQRコードリーダで読み取り、クライアントセッションIDを取得する。この場合、QRコードリーダがクライアントセッションID入力部44をして機能する。 …(中略)… 【0042】 ユーザは、携帯電話40の表示画面を見ながら、図9(a)に示すクライアントPC20に表示された認証ページの入力フォームにパスワード1「1234」およびパスワード2「5678」を入力し、「送信」アイコンを選択する。「送信」アイコンの選択に応答して、クライアントPC20は、入力された携帯認証用1TPW(パスワード1)とサーバ認証用1TPW(パスワード2)を関連付けてサービスサーバ30に送信する(ステップ314)。 …(中略)… 【0049】 本実施形態において、サービスサーバ30は、ステップ315で取得したMセッションIDとクライアントPC20のCセッションIDとを関連付けて一時記憶手段50に格納する(ステップ315-2)。すなわち、本実施形態においては、サービスサーバにアクセス権限を有するユーザの携帯電話のセッションとクライアントPC20のセッションが一時記憶手段50において関連付けられて管理される。なお、一時記憶手段50は、セッション管理データベースとして構成することができる。さらに、サービスサーバ30は、MセッションIDに関連付けられたCセッションIDの表示情報を含む確認ダイアログを生成する(ステップ315-3)。サービスサーバ30は、ステップ315で取得したMセッションIDが示すモバイルセッション内で生成した確認ダイアログを携帯電話40に送信する(ステップ315-4)。サービスサーバ30から確認ダイアログを受信した携帯電話40は、これを表示する(ステップ315-5)。 【0050】 図12(c)は、携帯電話40において、1TPW表示ページの上に確認ダイアログが重ねて表示された態様を示す。確認ダイアログには、CセッションID「abcdefgh」が表示され、「パソコン画面に表示されたセッションIDと同じですか?」という問いかけとともに、選択アイコン(「はい」、「いいえ」)が表示されている。ユーザは、図12(a)に示したクライアントPC20に表示された認証ページに表示されたCセッションID「abcdefgh」と、図12(c)に示した携帯電話40の確認ダイアログに表示されたCセッションID「abcdefgh」を比較する。図12に示す例においては、両画面に表示されたCセッションIDが同じなので、ユーザは、携帯電話40の確認ダイアログの「はい」アイコンを選択する。これに応答して、携帯電話40は、サービスサーバ30に承認応答を通知する(ステップ315-6)。サービスサーバ30は、この間、携帯電話40からの承認応答を待機しており、上記承認応答を受領すると、一時記憶手段50を検索して承認応答のMセッションIDに対応するCセッションIDを取得し、当該CセッションIDに基づいてクライアントセッションを検出して(ステップ315-7)、当該クライアントセッション内で認証結果(ログイン成功)をクライアントPC20に通知する(ステップ318)。以上、第1~第3の実施形態をもって、本発明の認証システムについて説明してきたが、上述した本発明の認証の手法は、シングルサインオンシステムに拡張することができる。この点について、本発明の第4の実施形態として、以下説明する。」 イ 引用例4に記載された発明 上記記載事項Oより,引用例4には,次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認める。 「インターネット10を介してクライアントPC20に接続されるサーバ装置30と,移動体通信網12およびインターネット10を介してサーバ装置30と通信可能な移動携帯端末40を含んで構成される認証システムであって, 前記サーバ装置30は,ユーザ認証機能を備え,移動体通信網12あるいはインターネット10を介して携帯電話40およびクライアントPC20のいずれとも通信可能に構成されており,クライアントPC通信部33,移動携帯端末通信部34,ログイン認証部35を含んで構成され,サーバ装置30はサービスサーバ30であり, 前記サービスサーバ30は,クライアントPC20のウェブブラウザ22から送信されたログイン要求に応答してクライアントセッションを生成し,これにCセッションIDを割り当て,クライアントPC通信部33は,CセッションIDを表示するための情報を生成するCセッションID表示情報生成部を含み,生成したCセッションID表示情報を前記クライアントPC20のウェブブラウザ22に送信し, 前記クライアントセッションID表示情報生成部は,CセッションID表示情報をテキストデータとして生成することができ,この場合,CセッションIDを示す文字列がクライアントPC20のウェブブラウザ22によって表示装置26に表示され,ユーザは,表示装置26に表示された文字列を見ながら,モバイルブラウザ43に表示された入力フォームにこれを入力し,この場合,モバイルブラウザ43がクライアントセッションID入力部44として機能し, ユーザは,前記携帯電話40の表示画面を見ながら,前記クライアントPC20に表示された認証ページの入力フォームにパスワード1「1234」およびパスワード2「5678」を入力し,「送信」アイコンを選択して,クライアントPC20は,入力された携帯認証用1TPW(パスワード1)とサーバ認証用1TPW(パスワード2)を関連付けてサービスサーバ30に送信し, 前記サービスサーバ30は,MセッションIDとクライアントPC20のCセッションIDとを関連付けて一時記憶手段50に格納し,これにより,サービスサーバにアクセス権限を有するユーザの携帯電話のセッションとクライアントPC20のセッションが一時記憶手段50において関連付けられて管理され,一時記憶手段50は,セッション管理データベースとして構成することができ,さらに,サービスサーバ30は,MセッションIDに関連付けられたCセッションIDの表示情報を含む確認ダイアログを生成して前記MセッションIDが示すモバイルセッション内で生成した確認ダイアログを携帯電話40に送信し,前記サービスサーバ30から前記確認ダイアログを受信した携帯電話40は,これを表示し, 前記確認ダイアログには,CセッションID「abcdefgh」が表示され,「パソコン画面に表示されたセッションIDと同じですか?」という問いかけとともに,選択アイコン(「はい」,「いいえ」)が表示され,ユーザは,クライアントPC20に表示された認証ページに表示されたCセッションID「abcdefgh」と,携帯電話40の確認ダイアログに表示されたCセッションID「abcdefgh」を比較し,両画面に表示されたCセッションIDが同じの場合,ユーザは,携帯電話40の確認ダイアログの「はい」アイコンを選択し,これに応答して,携帯電話40は,サービスサーバ30に承認応答を通知し,サービスサーバ30は,上記承認応答を受領すると,一時記憶手段50を検索して承認応答のMセッションIDに対応するCセッションIDを取得し,当該CセッションIDに基づいてクライアントセッションを検出して,当該クライアントセッション内で認証結果(ログイン成功)をクライアントPC20に通知する 認証システム。」(下線は,説明のために当審で付加。) (5)引用例5に記載された事項 引用例5には,次の事項が記載されている。 P 「【0022】 [第1実施形態] 図1及び図2に示すように、ドキュメント閲覧システム2は、データサーバ10と、第1携帯電話11と、第2携帯電話12とを備える。各携帯電話11,12は、インターネット15を介してデータサーバ10と通信可能となっている。 【0023】 データサーバ10は、インターネット15を介して各携帯電話11,12と通信を行うための通信部21と、ワードデータ、エクセルデータ、図面データ等の複数のドキュメントデータを記憶したデータベース(以下、DBと称する)22と、DB制御部23と、CPU24と、各携帯電話11,12でのドキュメントデータの閲覧を認証する認証部25とが設けられている。また、データサーバ10は、ドキュメントデータの形式(種別、解像度)を変換するデータ変換部26と、ドキュメントデータの一時的な閲覧を認証するための情報を生成する情報生成部27と、各携帯電話11,12との通信状態を検出する通信検出部28と、メモリ29が設けられている。各部は、データバス20を介してCPU24に接続されており、CPU24により統括的に制御される。また、複数のドキュメントデータは、それぞれ異なるセッションIDが割り振られている。 …(中略)… 【0034】 第2携帯電話12は、一時的閲覧用情報を受信すると、受信した一時的閲覧用情報に含まれるアクセス先URLに基づいて、インターネット15を介してデータサーバ10に接続するとともに、一時的閲覧要求情報(セッションID、第1携帯電話11のID、第2携帯電話12のID、LCD44の設定解像度データを含む)を情報生成部49で生成し、データサーバ10に送信する。 …(中略)… 【0045】 ドキュメントデータの閲覧が認証されていない第2携帯電話12を通信モードに切り換えて、インターネット15を介してデータサーバ10に接続し、メニューキー33を操作して、データサーバ10のDB22内のドキュメントデータから閲覧を要求するドキュメントデータを1つ選択すると、DB制御部23は、選択されたドキュメントデータのセッションIDを読み出し、通信部21から第2携帯電話に送信する。第2携帯電話12は、受信したセッションIDと、アクセス先URLと、第2携帯電話12のIDデータとを含む閲覧要求情報を生成し、短距離通信部48から第1携帯電話11に送信する(S7)。」 (6)引用例6に記載された事項 引用例6には,次の事項が記載されている。 Q 「従来の2段階認証のように認証アプリ(Authenticator)を開いたり、SMSが届くのを待ってトークンを手入力する必要なく、スマホに届く「ログインしようとしていますか?」通知に「はい」とタップするだけで認証できるようになります。」(第2段落) R 「対する 2SVはパスワードに加えてUSB接続のセキュリティキーや、ワンタイムトークン生成器(生成アプリ)、あるいはテキストメッセージや音声で届くトークンを組み合わせることで、もうひとつの鍵を持った本人であると認証して安全性を高める方式です。」(第5段落) S 「Googleの2段階認証プロセスに新たに加わったのは、スマートフォンに届く通知を利用する「Google prompt」方式。ログインを試行するとあらかじめ設定した端末に「ログインしようとしていますか?」と分かりやすいメッセージの通知が届き、「はい」を選択するだけで完了します。数字を読み取ったり、コピーして入力する手間はありません。」(第8段落) T 「Googleの2段階認証ではふたつ目の認証方式をログイン試行ごとに選べるため、「Googleからのメッセージ」をデフォルトにしても、その他の方式が使えなくなるわけではありません。」(第13段落) U 「データ通信がオフラインで通知が届かない場合は認証システムアプリを使ったり、音声またはSMSを使ったり、別の携帯電話やスマートフォン、メールアドレスにコードを送信するなど。持っていればUSBセキュリティキーと併用もできます。」(第14段落) (7)引用例7に記載された事項 引用例7には,次の事項が記載されている。 V 「Today we discuss How to Enable Google Prompt To Make 2-Step Verification On Android. Google added an extra layer of security to keep your account safe from hackers. With 2-Step Verification, you'll protect your account with both your password and your phone. Every time you Sign-in to your Google account it will ask for your password as well as six-digit code generated through a text message. But sometimes it's annoying to wait for the OTP and manually entering the code. Considering this Google announced a new feature called “Google prompt” for all users. Check below How to Enable Google Prompt To Make 2-Step Verification On Android.」(第1段落) (仮訳: ユーザが既に2段階認証を有効にしている場合、Google Promptを採用することにより、Googleの認証が簡単かつ迅速になります。Android端末およびiPone上でGoogle Promptを有効にすると、ユーザはアカウントにログインしようとする度に毎回OTPを入力する必要がなくなり、代わりに登録されたスマートフォン上にログインの確認画面が表示されます。Promptでは「ログインしようとしていますか?」というメッセージが「いいえ」および 「はい」ボタンと共に表示され、アカウント認証が行われます。2段階認証を行うためのGoogle Prompt の設定は、以下の手順にて行います。) W 「1) First, Go to myaccount.google.com and login with your Google account and click on ‘Signing in to Google‘ 2) Now enable 2-step verification by clicking on it. 3) Now click on ‘Get Started‘ and enter your Gmail Password. 4) Now enter your Phone Number. Google will use this number to send you verification codes. 5) Now enter the code Google sends you and click ‘Next‘. 6) In next window Click on the ‘Turn On‘ to enable 2-step verification. 7) Done! You enable 2-Factor Verification On Google account successfully. To enable Google Prompt follow below steps.」(第4段落) (仮訳: ・2段階認証のAndroid端末上での設定方法 1)まず、myaccount.Google.comにアクセスし、自分のGoogleアカウントにログインするために、「Googleにログイン」をクリックします。」 2)「Googleへのログイン」をクリックして2段階認証を有効にします。 3)「開始」をクリックしてGmailパスワードを入力します。 4)ユーザのスマートフォンの番号を入力します。Googleはそのスマートフォンの番号宛に認証コードを送付します。 5)Googleから送付された認証コードを入力し、「次へ」をクリック。 6)次の画面で2段階認証を有効にするために「有効にする」をク リックしてください。 7)完了しました! Googleアカウント向けに2段階認証が有効となりました。 Google Promptを設定するためには以下の手順に従ってください。) 5.対比・判断 1 取消事由1(特許法29条2項(進歩性))について (1)本件特許1について <対比> 引用発明と本件特許1とを対比する。 ア 引用発明の「コンピュータ」,「スマートフォン」は,本件特許1の「第1の端末」,「第2の端末」にそれぞれ相当する。 イ 引用発明の「2段階認証を実行するシステム」は,「コンピュータを用いて特定の個人のアカウントへのログインを実行」し,「ログインの可否において「はい」がユーザによってスマートフォン上で選択された場合に,ログインを実行したコンピュータのログインが完了する」ものであることから,本件特許1と“認証システム”であることで一致するといえる。 また,引用発明では,「特定の個人のアカウントに対応付けて特定のスマートフォンを認証用のデバイスとして登録」したり,「登録されたスマートフォン上に,ログインを試みていることを通知」したり,「当該ログインの可否(「はい」又は「いいえ」)の操作をユーザに選択させるための通知」をしたりするための,何らかのシステムが存在していることを読み取ることができるから,引用発明と本件特許1とは,上記アに示す事項と併せて,“第1の端末と、第2の端末と、認証サブシステムと、を備える認証システム”の点で一致するといえる。 ウ 引用発明では,「特定の個人のアカウントに対応付けて特定のスマートフォンを認証用のデバイスとして登録」していて,当該「登録」には,何らかの記憶手段が必要なことは自明であることから,本件特許1とは,“認証サブシステム”が,“記憶部”を備える点で一致するといえる。 エ 引用発明において,「特定の個人のアカウント」に関して,当該「アカウント」に対応するいわゆるユーザIDのような本件特許1の「識別情報」に相当する情報が存在することは明らかである。また引用発明において「コンピュータを用いて特定の個人のアカウントへのログインを実行すると,登録されたスマートフォン上に,ログインを試みていることを通知」していて,当該「登録されたスマートフォン」は,「特定の個人のアカウントに対応付け」られていることからして,当該「通知」を行うためには,「コンピュータ」(第1の端末)から「特定の個人のアカウント」,すなわち「識別情報」が入力されると,当該「特定の個人のアカウント」に対応付けられた「スマートフォン」,すなわち「第2の端末」が特定されているものと理解することができる。 そして,当該「第2の端末」の特定にあたっては,「識別情報」と「第2の端末」とが対応付けて登録されていることが前提となっていることは技術常識であり,また,当該特定にあたって,なんらかの情報,すなわち本件特許1の「第2の端末の固有ID」に相当するような情報を用いていることを推定することができる。 以上総合すると,引用発明と本件特許1とは,“前記第1の端末から受信した前記識別情報と一致する前記識別情報に基づいて、該識別情報と対応付けて前記記憶部に記憶された前記第2の端末の固有IDを取得する第2端末固有ID取得部”を有する点で一致するといえる。また,当該“第2端末固有ID取得部”において,“前記第1の端末から受信した前記識別情報と一致する前記識別情報に基づい”て,“第2の端末の固有IDを取得する”ための,「第1の端末」から得られた「識別情報」と,予め「記憶部」に記憶された「第2の端末の固有IDと対応」付けられた「識別情報」との間で所定の照合が行われることも自明であるから,引用発明と本件特許1とはさらに,“前記第1の端末から受信した識別情報と、前記第2の端末の固有IDと対応付けて前記記憶部に記憶されている識別情報を照合する識別情報照合部”を有する点でも一致するといえる。 オ 引用発明において,「コンピュータを用いて特定の個人のアカウントへのログインを実行すると,登録されたスマートフォン上に,ログインを試みていることを通知」していて,上記エで認定したとおり,本件特許1の「第2の端末の固有ID」に相当するような情報を用いて当該通知を行っていることを理解することができ,また,当該通知の際に表示される画面である上記記載事項Eの画面5は,本件特許1の「プッシュ認証操作開始要求」に相当する情報が,スマートフォン,すなわち「第2の端末」に送信されていることを読み取ることができるから,引用発明と本件特許1とは,“前記第2端末固有ID取得部により取得された前記第2の端末の固有IDに基づいて、前記第2の端末に、プッシュ認証操作開始要求を送信するプッシュ認証操作開始要求部”を有する点で一致するといえる。 カ 引用発明は,「ログインの可否において「はい」がユーザによってスマートフォン上で選択された場合に,ログインを実行したコンピュータのログインが完了する」ものであり,当該「「はい」がユーザによってスマートフォン上で選択され」,そのことが認証サブシステムに受け付けられていることを示しているといえることから,引用発明と本件特許1とは,“前記第2の端末から送信されたプッシュ認証操作完了通知を受信するプッシュ認証操作完了通知受付部”を有する点で一致するといえる。 キ 引用発明において,「登録されたスマートフォン上に,ログインを試みていることを通知し,かつ,当該ログインの可否(「はい」又は「いいえ」)の操作をユーザに選択させるための通知」をすることは,本件特許1の「前記プッシュ認証操作開始要求を受信すると、前記プッシュ認証のために、知識認証情報、所有物認証情報、及び生体認証情報の入力を伴わない所定の操作のみをユーザに促し」に相当することから,引用発明と本件特許1とは,“第2の端末は、前記プッシュ認証操作開始要求を受信すると、前記プッシュ認証のために、知識認証情報、所有物認証情報、及び生体認証情報の入力を伴わない所定の操作のみをユーザに促”す点で一致するといえる。 ク 引用発明において「ログインの可否において「はい」がユーザによってスマートフォン上で選択」することは,本件特許1において,「前記ユーザにより、前記所定の操作が行われる」に相当するといえ,その結果「ログインを実行したコンピュータのログインが完了する」ことから,引用発明においても本件特許1の「プッシュ認証操作完了通知を前記プッシュ認証操作完了通知受付部に送信」に相当する処理が行われているといえ,したがって引用発明と本件特許1とは,“前記ユーザにより、前記所定の操作が行われると、プッシュ認証操作完了通知を前記プッシュ認証操作完了通知受付部に送信する”点で一致するといえる。 ケ 上記ア乃至クにおける対比から,引用発明と本件特許1との間には,次の一致点,相違点が認められる。 [一致点] 第1の端末と、 第2の端末と、 認証サブシステムと、 を備え, 前記認証サブシステムは, 記憶部と, 前記第1の端末から受信した識別情報と、前記第2の端末の固有IDと対応付けて前記記憶部に記憶されている識別情報を照合する識別情報照合部と, 前記第1の端末から受信した前記識別情報と一致する前記識別情報に基づいて、該識別情報と対応付けて前記記憶部に記憶された前記第2の端末の固有IDを取得する第2端末固有ID取得部と, 前記第2端末固有ID取得部により取得された前記第2の端末の固有IDに基づいて、前記第2の端末に、プッシュ認証操作開始要求を送信するプッシュ認証操作開始要求部と, 前記第2の端末から送信されたプッシュ認証操作完了通知を受信するプッシュ認証操作完了通知受付部と, を備え, 第2の端末は, 前記プッシュ認証操作開始要求を受信すると、前記プッシュ認証のために、知識認証情報、所有物認証情報、及び生体認証情報の入力を伴わない所定の操作のみをユーザに促し, 前記ユーザにより、前記所定の操作が行われると、プッシュ認証操作完了通知を前記プッシュ認証操作完了通知受付部に送信する 認証システム。 [相違点] (相違点1) 本件特許1が,「前記第1の端末から受信した前記識別情報と一致する識別情報が、前記記憶部に記憶されていた場合、プッシュIDを生成すると共に、該プッシュIDを前記第1の端末に送信するプッシュID生成部」を有するのに対し,引用発明は,そのような構成を有することが不明な点。 (相違点2) 本件特許1が,「前記第1の端末から受信したプッシュIDを前記記憶部に記憶させるプッシュID受付部」を有するのに対し,引用発明は,そのような構成を有することが不明な点。 (相違点3) 本件特許1が,「プッシュ認証操作開始要求部」が,「プッシュ認証操作開始要求」を送信する際に,「プッシュID生成部により生成された前記プッシュID」も送信しているのに対し,引用発明は,そのような情報を送信しているか不明な点。 (相違点4) 本件特許1が,「前記第2の端末から受信したプッシュIDと、前記記憶部に記憶された、前記第1の端末からの前記プッシュIDを照合するプッシュID照合部」を有するのに対し,引用発明は,そのような構成を有することが不明な点。 (相違点5) 本件特許1が,「第1の端末」が「前記識別情報及び第1のプッシュ認証要求を前記識別情報照合部に送信し,前記プッシュID生成部から受信した前記プッシュIDを記憶すると共に、該プッシュIDを前記プッシュID受付部に送信」するものであるのに対し,引用発明は,そのような構成を有しているか不明な点。 (相違点6) 本件特許1の「第2の端末」が,「プッシュ認証操作完了通知受付部に送信する」情報が,「前記プッシュ認証操作開始要求部から受信した前記プッシュID」も含むものであるのに対し,引用発明は,そのような情報を送信するものか不明な点。 <判断> 事案に鑑み,先に,申立人も引用発明との間の相違点と認める,相違点4について判断する。 引用例4には,上記「4.各引用例の記載について」「(4)引用例4について」「イ 引用例4に記載された発明」の項で説示した,引用発明4が記載されている。 引用発明4は,本件特許1の「第1の端末」に相当する「クライアントPC20」と,同「第2の端末」に相当する「携帯電話40」との間で,「サービスサーバ30」を介して「CセッションID」を用いた通信を行うものである。そして,「携帯電話40」の画面には,「確認ダイヤログ」が表示され,当該ダイヤログに表示された「CセッションID」を,「ユーザ」が読み取り,「クライアントPC20」に表示された「CセッションID」との比較を,「ユーザ」が行って,「携帯電話40の確認ダイアログの「はい」アイコンを選択」した上で,「サービスサーバ30に承認応答を通知」するものである。(特に下線部を参照。) したがって,本件特許1の「プッシュID」が,「携帯電話40」(第2の端末)から受信されることや,記憶部に記憶された,「クライアントPC20」(第1の端末)からの「プッシュID」についての記載は認められないばかりか,認証サブシステム,すなわち引用発明4における,「サービスサーバ30」において,当該「プッシュID」を「照合」することも読み取ることはできない。 したがって,引用例4からは,相違点4に係る構成を見いだすことはできない。 相違点4に関する技術的事項は,その他引用例2乃至3及び5に記載された上記記載事項F乃至N及びPを参照したとしても,読み取ることはできない。 よって,引用例1乃至5のいずれにも,「前記第2の端末から受信したプッシュIDと、前記記憶部に記憶された、前記第1の端末からの前記プッシュIDを照合するプッシュID照合部」が記載されていない。したがって,本件特許1は,上記引用例1に記載された発明及び引用例4に記載された発明,並びに引用例2乃至3及び5から読み取ることのできる技術常識を勘案したとしても,当業者が容易になし得るものではない。 なお申立人は,特許異議申立書において,相違点4に関し,次のように主張している。 「構成要件1Kは,「前記第2の端末から受信したプッシュIDと,前記記憶部に記憶された,前記第1の端末からの前記プッシュIDを照合するプッシュID照合部と,を備え,」である。 これに対して,甲1発明は,サーバなどがスマートフォンから送信されたプッシュIDを受信することについては明らかでないものの,上述に記載されたように,ログイン認証などの端末を用いてサーバに記憶されたデータと照合して認証を実行する技術分野においては,甲第2号証から甲第5号証に記載されているように,サーバと端末間における各認証処理を識別するための認証に関するIDを,サーバ及び端末間において送受信することは技術常識である。 したがって,甲1発明には,端末としてのスマートフォンから送信された認証に関するIDを受信することを明示することができないとしても,これらの事項は甲第1号証に記載されているに等しい事項である。 一方,甲1発明は,このような認証処理を実行する際に,スマートフォンによって受信された認証に関するIDと,コンピュータから送信された認証に関するIDを照合しているかについては不明である。 しかしながら,甲第4号証に記載の甲4発明は,ワンタイムパスワードを用いた認証システムであるものの,サーバ装置において,認証を行う際に割り当てられたCセッションIDを,クライアントPCに送信し,当該送信したCセッションIDをクライアントPCから受信するとともに,受信したCセッションIDを記憶する構成を有している。 また,甲4発明は,サーバ装置において,移動携帯端末にCセッションIDを送信するとともに,当該移動携帯端末における承認応答を受領する際にCセッションIDも受信し,受信したCセッションIDに基づいて認証結果を判定する構成を有している。 確かに,甲4発明は,移動携帯端末から送信されたCセッションIDと,記憶されたCセッションIDとを照合していることを明示することができないが,記憶されたCセッションIDは,クライアントPCからCセッションIDを受信した際に取得したMセッションIDとともに記憶されており,かつ,移動携帯端末から受信したCセッションIDに基づいて認証結果を判定する際に,MセッションIDも用いている。してみれば,甲4発明は,クライアントPCから受信して記憶されたCセッションIDと,移動携帯端末から受信したCセッションIDを照合していることは明らかである。 すなわち,甲4発明は,当該相違点1において,第1の端末としてのクライアントPCから受信したログインに関するIDと,第2の端末としての移動携帯端末からのログインに関するIDを照合する構成を有していると言える。」(特許異議申立書59ページ8行乃至61ページ1行) 上記主張中で申立人も認めるとおり,引用例4(甲第4号証)は,移動携帯端末から送信されたCセッションIDと,記憶されたCセッションIDとを照合していることは記載されておらず,仮に,甲第2号証乃至甲第5号証(引用例2乃至5)において,「ログイン認証などの端末を用いてサーバに記憶されたデータと照合して認証を実行する技術分野」において,「サーバと端末間における各認証処理を識別するための認証に関するIDを,サーバ及び端末間において送受信すること」が技術常識であることが理解できるとしても,上記したとおり,「プッシュID」に関する記載や,当該「プッシュID」の「照合」についての記載を認めることができない以上,かかる主張は理由がない。 したがって,その余の相違点について判断するまでもなく,本件特許1は,引用例1乃至5に記載された事項から当業者が容易になし得たものとはいえない。 (2)本件特許3及び6について 本件特許3及び6は,本件特許1を更に減縮したものであるから,上記本件特許1についての判断と同様の理由により,上記引用例1に記載された発明,引用例4に記載された技術的事項,引用例2乃至5に記載された技術常識,さらに引用例6及び7に記載された技術的事項を勘案したとしても,当業者が容易になし得るものではない。 (3)本件特許11について 本件特許11も,「前記第2の端末から受信したプッシュIDと、前記記憶部に記憶された、前記第1の端末からの前記プッシュIDを照合するプッシュID照合部」との特定事項を含むから,上記本件特許1についての判断と同様の理由により,上記引用例1に記載された発明及び引用例4に記載された技術的事項並びに引用例2乃至5に記載された技術常識を勘案したとしても,当業者が容易になし得るものではない。 (4)本件特許16,18,21及び26について 本件特許16,18,21及び26は,概ね,本件特許1,3,6及び11と単にカテゴリーのみ異なるに過ぎず,上記本件特許1,3,6及び11についての判断と同様の理由により,上記引用例1に記載された発明,引用例4に記載された技術的事項,引用例2乃至5に記載された技術常識,さらに引用例6及び7に記載された技術的事項を勘案したとしても,当業者が容易になし得るものではない。 (5)小括 以上のとおり,本件特許1,3,6,11,16,18,21及び26は,引用例1に記載された発明及び引用例4に記載された技術的事項並びに引用例2乃至5に記載された技術常識を勘案し,かつ引用例6及び7に記載された技術的事項を加味したとしても,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 取消事由2(特許法36条6項2号(明確性))について 異議申立人は,請求項1,3,6,11,16,18,21及び26に記載された,「プッシュID」につき,その定義が特許請求の範囲,明細書及び図面に記載がなく,また,「プッシュID」が周知であったという事実もないことから,当該事項を含む特許請求の範囲の請求項1,3,6,11,16,18,21及び26に記載された発明は不明確である旨を主張しているので,この点を検討する。 (1)特許請求の範囲における,「プッシュID」について 特許請求の範囲の請求項1,3,6,11,16,18,21及び26のうち,請求項1,11,16及び26には「プッシュID」なる記載が存在し,同請求項3,6,18及び21には存在しない。 このうち,請求項1に記載された「プッシュID」につき,次の事項を読み取ることができる。 ア 「認証サブシステム」が備える,「プッシュID生成部」において生成されるものであり,当該生成された「プッシュID」は,「第1の端末」に送られるものであること。 イ 同じく「認証サブシステム」が備える「プッシュID受付部」によって,「第1の端末」から送信されて,同じく「認証サブシステム」が備える「記憶部」に記憶されるものであること。 ウ 同じく「認証サブシステム」が備える「プッシュ認証操作開始要求部」によって,「プッシュ認証操作開始要求」と共に「第2の端末」に送信されるものであること。 エ 同じく「認証サブシステム」が備える「プッシュID照合部」によって,「第2の端末」から送られた「プッシュID」と,「第1の端末」から送られ,同じく「認証サブシステム」が備える「記憶部」に記憶された「プッシュID」が照合されるものであること。 オ 「第1の端末」において,「識別情報」及び「第1のプッシュ認証要求」を「認証サブシステム」の「識別情報照合部」に送信して,「認証サブシステム」の「プッシュID生成部」が生成した「プッシュID」を記憶すると共に,当該記憶された「プッシュID」を「認証サブシステム」の「プッシュID受付部」に送信するものであること。 カ 「第2の端末」において,ユーザにより所定の操作が行われ,「認証サブシステム」の「プッシュ認証操作開始要求部」から送信された「プッシュID」と「プッシュ認証操作完了通知」を,「認証サブシステム」の「プッシュ認証操作完了通知受付部」に送信するものであること。 以上ア乃至カの記載から,「プッシュID」そのものの明示的な定義が特許請求の範囲に記載が無かったとしても,当該「プッシュID」と呼ばれるものが,請求項1に記載された「認証システム」を構成する「第1の端末」,「第2の端末」及び「認証サブシステム」の間でやりとりされる情報であって,「認証サブシステム」で生成され,記憶され,第1及び第2の端末に送信され,また受信されるなどするものであること,さらに「認証サブシステム」の「プッシュID照合部」において照合される対象であることなどは読み取ることができるといえる。したがって,特許請求の範囲に記載された「プッシュID」につき,その記載が明確でないとまではいえない。 また,請求項11,16及び26からも,上記ア乃至カに示された事項と概ね一致する内容を読み取ることができる。 (2)明細書における「プッシュID」について 本願明細書の発明の詳細な説明において,「プッシュID」につき,段落7-8,11,13-15,18-20,23,25-26,29,31-33,36-38,40,51,54,56-57,60,62-70,91-95,97-98,100-103,108-110にその記載が認められる。 上記箇所においても,特許請求の範囲に記載された程度の,どのような情報であるかを説示するのみであって,「プッシュID」がどのようなものであるかを明示的に定義する記載は存在しないものの,特許請求の範囲から読み取ることのできる上記ア乃至カに示した記載事項を説明するものであって,当該記載事項と矛盾するものでもなく,したがって特許請求の範囲に記載された「プッシュID」につき,その記載が明確でないとまではいえない。 (3)図面における「プッシュID」について 本願図面において「プッシュID」につき,図2,5a-5dに記載が認められるところ,特許請求の範囲に記載された上記ア乃至カに示した記載事項を説明するものであって,当該記載事項と矛盾するものでもなく,したがって特許請求の範囲に記載された「プッシュID」につき,その記載が明確でないとまではいえない。 (4)したがって,特許請求の範囲のうち,請求項1,3,6,11,16,18,21及び26の記載は,不明確なものとまではいえない。 6.むすび したがって,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1,3,6,11,16,18,21及び26に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に請求項1,3,6,11,16,18,21及び26に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。

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2017-700932

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    共通の審決分類: 121・G06F、537・G06F
  • 2024-700734異議申立 / 2025-03-25 / 訂正認容印刷物に印刷された文字情報を収集する方法、プログラム及び情報処理装置
    共通の審決分類: 121・G06F、537・G06F

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