特許異議申立
2017-700477
抄紙用織物
- 審判番号
- 2017-700477
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-113305外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年05月16日
- 審決日
- 2017年08月09日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日本フエルト株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人 大島特許事務所
- 【異議申立人】日本フイルコン 株式会社
- 【異議申立人代理人】小松 純
- 分類
- P1651.121-Y (D21F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6025659号発明「抄紙用織物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6025659号の請求項1-8に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第6025659号の請求項1-8に係る特許についての出願は、平成25年5月29日に特許出願され、平成28年10月21日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年5月16日に特許異議申立人日本フイルコン株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
2.本件発明
特許第6025659号の請求項1-8の特許に係る発明(以下、「本件発明1-8」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本件発明2-8は、いずれも、本件発明1の特定事項を全て含むものである。そのうち、本件発明1は、以下のとおりである。
「【請求項1】
任意の本数の製紙面側緯糸及び前記製紙面側緯糸の1/2~2/3の本数の走行面側緯糸を組として含む緯糸と、前記走行面側緯糸及び前記製紙面側緯糸に織り込まれた経糸とを有する抄紙用織物であって、
4本の前記経糸と、複数組の前記緯糸とがサブユニットを形成し、
前記サブユニット内の両端に配置された第1経糸及び第4経糸は、前記走行面側緯糸における共通の第1走行面側緯糸のみの下方を通過すると共にその両隣の前記走行面側緯糸の上方を通過し、
前記第1経糸は、前記製紙面側緯糸における任意の第1製紙面側緯糸のみの上方を通過すると共にその両隣の前記製紙面側緯糸の下方を通過し、
前記第4経糸は、前記第1製紙面側緯糸と異なる第2製紙面側緯糸のみの上方を通過すると共にその両隣の前記製紙面側緯糸の下方を通過し、
前記第1製紙面側緯糸の全てと前記第2製紙面側緯糸の全てとは互いに組をなす緯糸であり、
前記サブユニット内の内側に配置された第2経糸及び第3経糸は、前記第1走行面側緯糸と異なる共通の第2走行面側緯糸のみの下方を通過すると共にその両隣の前記走行面側緯糸の上方を通過し、
前記第2経糸は、前記第1及び第2製紙面側緯糸と異なる第3製紙面側緯糸のみの上方を通過すると共にその両隣の前記製紙面側緯糸の下方を通過し、
前記第3経糸は、前記第1~第3製紙面側緯糸の全てと異なる第4製紙面側緯糸のみの上方を通過すると共にその両隣の前記製紙面側緯糸の下方を通過し、
前記第3製紙面側緯糸の全てと前記第4製紙面側緯糸の全てとは互いに組をなす緯糸であり、
前記第1走行面側緯糸、前記第2走行面側緯糸、前記第1製紙面側緯糸、前記第2製紙面側緯糸、前記第3製紙面側緯糸、及び前記第4製紙面側緯糸のそれぞれは、少なくとも1本であり、
前記サブユニットは、前記経糸の延在方向において2等分された第1領域及び第2領域を有し、前記第1領域において前記第1経糸及び前記第4経糸が前記走行面側緯糸に織り込まれると共に、前記第2経糸及び前記第3経糸が前記製紙面側緯糸に織り込まれ、前記第2領域において前記第2経糸及び前記第3経糸が前記走行面側緯糸に織り込まれると共に、前記第1経糸及び前記第4経糸が前記製紙面側緯糸に織り込まれ、
複数の前記サブユニットが、前記緯糸の延在方向において隣り合う前記サブユニットと前記経糸の延在方向に偏倚して配置されることによって完全組織が形成されることを特徴とする抄紙用織物。」
3.申立理由の概要
申立人は、証拠として特開2007-46188号公報(以下「甲第1号証」という。)を提出し、請求項1-8に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1-8に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。
4.甲第1号証の記載
甲第1号証の、特に段落0041-0043、図5に記載の比較例1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「16本の製紙面側緯糸33(図5(a)の符号1、3、4、6、7、9、10、12、13、15、16、18、19、21、22、24の16本)及び前記製紙面側緯糸33の1/2の本数の走行面側緯糸34(図5(a)の符号2、5、8、11、14、17、20、23の8本)を組として含む緯糸と、前記走行面側緯糸34及び前記製紙面側緯糸33に織り込まれた経糸31・32とを有する抄紙用織物であって、
4本の前記経糸31・32と、複数組の前記緯糸33・34とがサブユニットを形成し、
前記サブユニット内の両端に配置された経糸32b及び経糸31aは、前記走行面側緯糸34における共通の走行面側緯糸34(図5(a)における符号23)の下方を通過すると共に、経糸32bはその両隣の走行面側緯糸34(同2・20)のうちの一方(同20)の上方を通過すると共に他方(同2)の下方を通過し、経糸31aはその両隣の走行面側緯糸34(同2・20)の上方を通過し、
経糸31bは、製紙面側緯糸33(同22)のみの上方を通過すると共にその両隣の製紙面側緯糸33(同21・24)の下方を通過し、
経糸32aは、製紙面側緯糸33(同21・24)の上方を通過すると共に製紙面側緯糸33(同1・22)の下方を通過し、
前記製紙面側緯糸33(同22)の全てと製紙面側緯糸33(同24)の全てとは互いに組をなす緯糸であり、
複数の前記サブユニットが、前記緯糸の延在方向において隣り合う前記サブユニットと前記経糸の延在方向に偏倚して配置されることによって完全組織が形成されることを特徴とする抄紙用織物。」
5.判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「経糸32b」、「経糸31b」、「経糸32a」、「経糸31a」は、それぞれ本件発明1における「第1経糸」、「第2経糸」、「第3経糸」、「第4経糸」に相当する。また、甲1発明における「製紙面側緯糸33」、「走行面側緯糸34」のうち、図5(a)における符号「22」、「23」、「24」のものは、それぞれ本件発明1における「第3製紙面側緯糸」、「第1走行面側緯糸」、「第4製紙面側緯糸」に相当する。
そうすると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は第1経糸が下方を通過する走行面側緯糸の両隣の走行面側緯糸の上方を第1経糸が通過する(特許異議申立書「(4-1)A.本件特許発明」における本件発明1の構成ハの一部)ものであるのに対し、甲1発明はこのような発明特定事項を有しない点。
<相違点2>
本件発明1は「前記第1経糸は、前記製紙面側緯糸における任意の第1製紙面側緯糸のみの上方を通過すると共にその両隣の前記製紙面側緯糸の下方を通過」する(同、構成ニ)ものであるのに対し、甲1発明はこのような発明特定事項を有しない点。
<相違点3>
本件発明1は「前記第4経糸は、前記第1製紙面側緯糸と異なる第2製紙面側緯糸のみの上方を通過すると共にその両隣の前記製紙面側緯糸の下方を通過」する(同、構成ホ)ものであるのに対し、甲1発明はこのような発明特定事項を有しない点。
<相違点4>
本件発明1は「前記第1製紙面側緯糸の全てと前記第2製紙面側緯糸の全てとは互いに組をなす緯糸」である(同、構成ヘ)のに対し、甲1発明はこのような発明特定事項を有しない点。
<相違点5>
本件発明1は「前記サブユニット内の内側に配置された第2経糸及び第3経糸は、前記第1走行面側緯糸と異なる共通の第2走行面側緯糸のみの下方を通過すると共にその両隣の前記走行面側緯糸の上方を通過」する(同、構成ト)ものであるのに対し、甲1発明はこのような発明特定事項を有しない点。
<相違点6>
本件発明1は「前記第3経糸は、前記第1~第3製紙面側緯糸の全てと異なる第4製紙面側緯糸のみの上方を通過」する(同、構成リの一部)ものであるのに対し、甲1発明はこのような発明特定事項を有しない点。
<相違点7>
本件発明1は「前記第1走行面側緯糸、前記第2走行面側緯糸、前記第1製紙面側緯糸、前記第2製紙面側緯糸、前記第3製紙面側緯糸、及び前記第4製紙面側緯糸のそれぞれは、少なくとも1本」である(同、構成ル)のに対し、甲1発明はこのような発明特定事項を有しない点。
<相違点8>
本件発明1は「前記サブユニットは、前記経糸の延在方向において2等分された第1領域及び第2領域を有し、前記第1領域において前記第1経糸及び前記第4経糸が前記走行面側緯糸に織り込まれると共に、前記第2経糸及び前記第3経糸が前記製紙面側緯糸に織り込まれ、前記第2領域において前記第2経糸及び前記第3経糸が前記走行面側緯糸に織り込まれると共に、前記第1経糸及び前記第4経糸が前記製紙面側緯糸に織り込まれ」る(同、構成ヲ)ものであるのに対し、甲1発明はこのような発明特定事項を有しない点。
イ 判断
本件発明1は、本件特許明細書の段落0007に記載のとおり、下記の効果を奏するものである。
「経糸が走行面側緯糸1本の走行面側を通過することによって形成されるナックル部が、経糸の延在方向に対して傾斜した方向に連なることが防止される。これにより、抄紙用織物の走行安定性が向上する。また、抄紙用織物が経糸の延在方向に対して傾斜した方向にずれ難くなり、抄紙用織物の寸法変化が抑制される。」
具体的には、本件特許明細書の段落0039、0041等に記載のとおり、第1経糸が走行面側緯糸に織り込まれることによって形成されるナックル部と第2経糸が走行面側緯糸に織り込まれることによって形成されるナックル部とが経糸の延在方向と平行な直線状に配置され、第4経糸が走行面側緯糸に織り込まれることによって形成されるナックル部と第3経糸が走行面側緯糸に織り込まれることによって形成されるナックル部とも同様に経糸の延在方向と平行な直線状に配置されるようになることで、ナックル部の配列パターンは経糸の延在方向と傾斜しなくなり、抄紙用ワイヤーは走行時における直進性が向上し、走行安定性が向上する。また、抄紙用ワイヤーは、経糸2の延在方向に対して傾斜した方向にずれ難くなるため、幅詰まりが抑制され、寸法安定性が向上する、という効果を奏するものである。
甲第1号証には、上記相違点1-8のようにすること、特に相違点1及び5のようにすることで、本件発明1のようにナックル部の配列パターンが経糸の延在方向と傾斜しなくなり、走行安定性や寸法安定性を向上させるという効果を奏することは、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立人の主張について
特許異議申立書において申立人は、本件発明1と甲1発明との各相違点は、設計変更の範囲に属する相違にすぎない旨を主張する(特許異議申立書第5頁第1行-第12頁第18行)。
また、特許異議申立書において申立人は、各相違点には有利な効果に相当するものがない旨を主張する。
しかし、上記各相違点が設計変更の範囲に属する相違にすぎないとする具体的な理由は記載されていないし、甲1発明は、図5において経糸31a・31b・32a・32bが走行面側緯糸34の走行面側を通過することで形成されるナックル部(いずれも、図5(a)において○印で囲まれた箇所内にある)は、経糸の延在方向に対して傾斜した方向に連なるものであるのに対し、本件発明1は、ナックル部の配列パターンが経糸の延在方向と傾斜しないようにすることで、走行安定性と寸法安定性が向上するという有利な効果を得るものであることは、上記イに示したとおりである。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。
(2)本件発明2-8について
本件発明2-8は、本件発明1の特定事項をすべて含むものであり、本件発明1についてと同様の理由で、本件発明2-8は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)小括
よって、本件発明1-8は、特許法第29条第2項に違反してされたものとすることはできない。
6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1-8を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1-8を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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