特許訂正審判
2017-390155
基板の搬出入方法とロボット
- 審判番号
- 2017-390155
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2006-210451
- 登録番号
- 特許第4470922号(P4470922)
- 請求日
- 2017年12月25日
- 審決日
- 2018年02月14日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】AIメカテック 株式会社
- 【請求人代理人】牧野 知彦
- 【請求人代理人】中村 守
- 審判長/審判官
- 審判長 森 竜介
- 審判官 星野 浩一
- 審判官 居島 一仁
- 分類
- P141 .161-Y (G02F) / P141 .851-Y (G02F) / P141 .853-Y (G02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項3号特許法126条3項特許法126条7項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第3項、特許法第126条第4項、特許法第29条の2、特許法第126条第7号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第4470922号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第4470922号の明細書及び特許請求の範囲を本件訂正審判請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[2-3]について訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第4470922号は、平成14年7月1日に出願した特願2002-191579号(以下「原出願」という。)の一部を平成18年8月2日に新たな特許出願としたものであり、以後の主な手続は以下のとおりである。
平成21年 9月30日:拒絶理由通知(10月6日発送)
同年12月 1日:手続補正書・意見書
平成22年 2月 3日:特許査定(2月9日送達)
同年 3月12日:設定登録
同年 6月 2日:特許掲載公報発行
平成29年10月23日:一回目の訂正審判の請求
同年12月11日:審決(12月21日送達)
同年12月25日:二回目の訂正審判(本件訂正審判)の請求
第2 訂正の適否
1 訂正の要旨
平成29年12月25日付けの訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。また、本件訂正請求書による訂正を、以下「本件訂正」という。)は、特許第4470922号の明細書及び特許請求の範囲を本件訂正審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[2-3]について訂正することを認める、との審決を求めるものである。
2 訂正の内容(当審注:訂正箇所に下線を付した。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2の「前記チャンバ内に搬入して前記上テーブルに受け渡し、」との記載を、
「前記チャンバ内に搬入して、該搬入された前記基板を、粘着材により物理的に保持する保持機構を備えた前記上テーブルに受け渡し、」と訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件特許明細書の段落【0011】の「前記一方のアームに保持された前記基板を前記チャンバ内に搬入して前記上テーブルに受け渡し、」との記載を、
「前記一方のアームに保持された前記基板を前記チャンバ内に搬入し、該搬入された前記基板を、粘着材により物理的に保持する保持機構を備えた前記上テーブルに受け渡し、」と訂正する。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項について
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の「上テーブル」を、「搬入された基板を、粘着材により物理的に保持する保持機構を備えた」ものに限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことから、特許法第126条第6項の規定に適合する。
また、本件特許明細書の【0029】に「減圧状態での上側テーブル2による上側基板の保持機構は、静電チャックにより電気的に保持する機構、あるいは粘着材により物理的に保持する機構のいずれでも良い。」と、【0030】に「上側テーブル2と下側テーブル24の吸着方法の組み合わせは、上側テーブル2,下側テーブル24いずれも静電チャックとするか、上側テーブル2、あるいは下側テーブル24のいずれか一方を静電チャックとし他方を粘着材とすることが基準となる平坦部を持ち、テーブル間を平行に組立てることが容易となり、よって上下の基板を均一に貼り合せることが可能となるという点で好ましい。」と、【00390】に「上側テーブル2が粘着を利用している場合には、複数のピンにより上側基板を機械的に下側の基板に押し付け、ピンを下側に押し付けた状態で上側テーブル2のみを上昇することにより上側の基板の保持を中断する。」と記載されているから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてなされるものであることは明らかであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正事項1に伴い訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことから、特許法第126条第6項の規定に適合する。
また、また、本件特許明細書の【0029】に「減圧状態での上側テーブル2による上側基板の保持機構は、静電チャックにより電気的に保持する機構、あるいは粘着材により物理的に保持する機構のいずれでも良い。」と、【0030】に「上側テーブル2と下側テーブル24の吸着方法の組み合わせは、上側テーブル2,下側テーブル24いずれも静電チャックとするか、上側テーブル2、あるいは下側テーブル24のいずれか一方を静電チャックとし他方を粘着材とすることが基準となる平坦部を持ち、テーブル間を平行に組立てることが容易となり、よって上下の基板を均一に貼り合せることが可能となるという点で好ましい。」と、【00390】に「上側テーブル2が粘着を利用している場合には、複数のピンにより上側基板を機械的に下側の基板に押し付け、ピンを下側に押し付けた状態で上側テーブル2のみを上昇することにより上側の基板の保持を中断する。」と記載されているから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてなされるものであることは明らかであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)一群の請求項
ア 訂正前の請求項2及び請求項3は、訂正前の請求項3が、請求項2の記載を引用し、訂正事項1により記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものであり、訂正前において「一群の請求項」に該当するものであるから、本件訂正は、一群の請求項ごとになされたものであって、特許法第126条第3項の規定に適合する。
イ 訂正事項2は、訂正事項1に伴って本件特許明細書の【0011】に記載されている請求項2に対応する部分について訂正するものであって、訂正後の請求項2及び訂正後の請求項2の記載を引用する請求項3を含めた一群の請求項2及び請求項3の全てに関係することから、本件訂正は、特許法第126条第4項の規定に適合する。
4 独立特許要件について
訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、同条第7項の規定に基づき、訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて、以下に検討する。
(1)訂正後の発明
本件訂正後の請求項2及び請求項3に係る発明は、以下のとおりのものである(以下「本件訂正発明2」及び「本件訂正発明3」という。)。
なお、訂正箇所に下線を付した。
「【請求項2】
チャンバ内に上下に2枚の基板を対向して間隔を開けて保持するための上テーブルと下テーブルとを設け、この上テーブルを移動してテーブル間隔を縮めることで基板を貼り合せる基板組み立て装置に基板を搬出入するロボットにおいて、
2つのアームを有し、
前記2つのアームのうちの一方のアームで前記2枚の基板のうちの一方の基板を保持すると同時に、他方のアームで他方の基板を保持して前記基板組み立て装置に移動し、前記一方のアームに保持された前記基板を前記チャンバ内に搬入して、該搬入された前記基板を、粘着材により物理的に保持する保持機構を備えた前記上テーブルに受け渡し、しかる後、前記一方のアームに前記チャンバ内の貼り合わせが完了した基板を保持して前記チャンバ内から搬出するとともに、前記他方のアームに保持された前記基板を前記チャンバ内に搬入して前記下テーブルに受け渡すことを特徴とするロボット。
【請求項3】
請求項2に記載のロボットにおいて、
前記一方のアームと前記他方のアームとは、前記一方のアームが下側に、前記他方のアームが上側に夫々位置し、
前記一方のアームが前記チャンバ内に前記基板を搬入したときには、前記一方のアームは前記上テーブルが降下して当該基板を吸着する位置に設定され、
前記他方のアームが前記チャンバ内に前記基板を搬入したときには、前記他方のアームは前記下テーブル側の保持爪昇降機構が上昇して当該基板を持ち上げる位置に設定される
ことを特徴とするロボット。」
(2)特許法第29条の2についての判断
ア 独立特許要件に関し、請求人は、原出願の出願日(平成14年7月1日)前の出願であって、本件特許出願の出願日後に公開された下記の3件の特許出願を提示している。
特願2002-181395号(特開2003-241202号公報)
特願2002-188279号(特開2003-233053号公報)
特願2002-188557号(特開2003-255297号公報)
上記特許出願は、何れも、「液晶表示素子用真空貼り合わせ装置」に関するものである。
イ 特願2002-181395号の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「先願明細書1」という。)には、図とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【0059】以下、上述したような構成を有する本実施形態の液晶表示素子用貼り合わせ装置を用いた基板間の貼り合わせ過程をより概略的に説明する。
【0060】まず、図4のように、ローダ部300は各アーム310,320を制御して下部ステージにローディングされる第1基板510と、上部ステージにローディングされる第2基板520とをそれぞれ搭載する。この状態で真空チャンバ110の出入口111が開放すると、前記ローダ部は第2アーム320を制御し、シール剤が塗布された前記第2基板520を開放した出入口111を介して真空チャンバ110内の上側空間に設けられた上部ステージ121に搬入する。
【0061】この場合、上部ステージ121に連結された真空ポンプ123が動作することにより、前記上部ステージ121に形成された各真空ホール121bに真空力を伝達して、第2アーム320により搬入された第2基板520を吸着して前記上部ステージ121に固定する。
【0062】仮に、かかる過程において、下部ステージ122に貼り合わせ済みの基板が存在するときは、前記第2アーム320が前記第2基板を搬入した後に前記貼り合わせ基板をアンローディングすることが好ましい。
【0063】そして、前記過程が完了して第2アームが真空チャンバの外部に抜け出ると、ローダ部は第1アーム310を制御して、前記液晶が滴下された第1基板510を前記真空チャンバ110内の下部ステージ122に搬入する。
【0064】その後、下部ステージ122に連結された真空ポンプ(図示せず)が動作することにより、第1アーム310により搬入された第1基板510を吸着して前記下部ステージ122に固定する。そして、前記ローダ部の第1アームは真空チャンバの外部に抜け出ることにより、各基板510、520のローディング過程が完了する。
【0065】前記した過程で一般にシール剤が塗布された第2基板520を液晶が滴下された第1基板510より先に搬入させる理由は、第1基板510を先に搬入した状態で第2基板520を搬入すると、前記第2基板520の搬入過程中に発生し得る塵埃などが前記既に搬入されていた第1基板510の液晶が滴下された領域に落ちることがあるので、このような問題を未然に防止するためである。
【0066】そして、前記した過程を通じて各基板510、520のローディングが完了すると、前記真空チャンバ110の出入口111に設けられた遮蔽ドア114(図6A参照)が動作しつつ前記出入口111を閉鎖することにより、前記真空チャンバ110の内部は密閉した状態になる。」
(イ)図4は、以下のものである。
上記記載からして、先願明細書1には、次の発明(以下「先願発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「液晶表示素子用貼り合わせ装置の真空チャンバ110内に基板を搬出入するための、第1アーム310及び第2アーム320を有するローダ部300であって、
前記第1アーム310は、真空チャンバ110内の下部ステージ122に搬入される液晶が滴下された第1基板を搭載し、第2アーム320は、真空チャンバ110内の上部ステージ121に搬入されるシール材が塗布された第2基板を搭載し、
第2アーム320により前記上部ステージ121に搬入された第2基板は、上部ステージ121に連結された真空ポンプ123が動作することにより前記上部ステージ121に吸着して固定され、
前記下部ステージ122に貼り合わせ済みの基板が存在するときは、前記第2アーム320が前記第2基板を搬入した後に前記貼り合わせ基板を搬出し、
前記第2アーム320が真空チャンバ110の外部に抜けると、前記第1アーム310が前記第1基板を前記真空チャンバ110内の下部ステージ122に搬入する、ローダ部300。」
ウ 当審の判断
(ア)本件訂正発明2と先願発明1とを対比する。
a 先願発明1の「真空チャンバ110」は、本件訂正発明2の「チャンバ」に相当し、
以下、同様に、
「上部ステージ121」は、「上テープ」に、
「下部ステージ122」は、「下テーブル」に、
「第1アーム310及び第2アーム320」は、「2つのアーム」に、
「ローダ部300」は、「ロボット」に相当する。
b 先願発明1の「第2基板」は、「上部ステージ121」に吸着して固定されることから、該「上部ステージ121」は、基板を物理的に保持する保持機構を備えているといえる。
c また、先願発明1の「液晶表示素子用貼り合わせ装置」は、「上部ステージ121」の「シール材が塗布された第2基板」と「下部ステージ122」の「液晶が滴下された第1基板」を貼り合わせ、「貼り合わせ済みの基板」が「下部ステージ122」に位置することから、先願発明1の「ローダ部300」は、「基板を貼り合せる基板組み立て装置」に「基板」を搬出入する装置(ロボット)であるといえる。
d してみると、本件訂正発明2と先願発明1とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「チャンバ内に上下に2枚の基板を対向して間隔を開けて保持するための上テーブルと下テーブルとを設け、この上テーブルを移動してテーブル間隔を縮めることで基板を貼り合せる基板組み立て装置に基板を搬出入するロボットにおいて、
2つのアームを有し、
前記2つのアームのうちの一方のアームで前記2枚の基板のうちの一方の基板を保持すると同時に、他方のアームで他方の基板を保持して前記基板組み立て装置に移動し、前記一方のアームに保持された前記基板を前記チャンバ内に搬入して、該搬入された前記基板を物理的に保持する保持機構を備えた前記上テーブルに受け渡し、しかる後、前記一方のアームに前記チャンバ内の貼り合わせが完了した基板を保持して前記チャンバ内から搬出するとともに、前記他方のアームに保持された前記基板を前記チャンバ内に搬入して前記下テーブルに受け渡す、ロボット。」
e 一方、両者は、以下の点で相違する。
<相違点>
基板を物理的に保持する保持機構に関して、
本件訂正発明2は、「粘着材により基板を物理的に保持する」のに対して、
先願発明1は、吸着(真空力)により基板を物理的に保持する点。
(イ)また、特願2002-188279号の願書に最初に添付された明細書又は図面、及び特願2002-188557号の願書に最初に添付された明細書又は図面にも、先願発明1と同様の「液晶表示素子用貼り合わせ装置の真空チャンバ110内に基板を搬出入するための、第1アーム310及び第2アーム320を有するローダ部300」が記載され、何れも、吸着(真空力)により基板を物理的に保持するものであって、粘着材により基板を物理的に保持することは記載されていない。
(ウ)そして、両者の「基板を物理的に保持する機構」は、構造的に全く異なるものであって、「粘着材により基板を物理的に保持する」ことが周知技術ないし慣用技術であるか否かにかかわらず、本件訂正発明2と先願発明1との相違点が、課題解決のための具体化手段における微差であるということはできない。
(エ)まとめ
本件訂正発明2、及び本件訂正発明2の発明特定事項をすべて備える本件訂正発明3は、上記3件の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であるとはいえない。
(3)独立特許要件についてのまとめ
以上の検討によれば、本件訂正発明2及び本件訂正発明3について、特許出願の際独立して特許を受けられないとすべき理由を発見しない。
また、他に本件訂正発明2及び本件訂正発明3について、特許出願の際独立して特許を受けられないとすべき理由を発見しない。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第7号の規定に適合する。
5 訂正の適否についてのまとめ
本件訂正請求は適法であることから、訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[2-3]について訂正することを認める。
第3 むすび
以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第3項から第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
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