商標取消審判
2017-300297
チャイルドスペースジャパン、チャイルドスペース
- 審判番号
- 2017-300297
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2012-018492外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 5517419
- 請求日
- 2017年04月28日
- 審決日
- 2022年12月02日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- T131 .1 -Y (W41)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5517419号商標の登録取消審判事件についてされた令和元年11月25日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(令和元年(行ケ)第10172号、令和3年6月24日判決言渡)があったので、さらに審理の上、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5517419号商標(以下「本件商標」という。)は、「Child’Space Japan」の文字と「チャイルドスペースジャパン」の文字とを上下二段に書した構成からなり、平成24年3月12日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナー・講習会の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),通訳,翻訳」を指定役務として、同年8月24日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録日は、平成29年5月16日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成26年5月16日から同29年5月15日までを、以下「要証期間」という。
また、本件商標の商標権者(被請求人)については、令和4年2月21日付け(受付日)で、特定承継による本件商標の権利の移転があった結果、商標権者が、「株式会社日本ソマティックライフ」(以下「前被請求人」又は「前商標権者」という場合がある。)から「ワイテック株式会社」(以下「ワイテック株式会社」と「前被請求人」をまとめていうときは「被請求人」という。)となった。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項により取り消されるべきである。
2 答弁及び回答に対する弁駁並びに陳述要領書における主張
(1)乙第1号証は、平成29年6月7日付けの「社会福祉法人池田てぞろ福祉会」(以下「池田てぞろ福祉会」という場合がある。)の理事長による「陳述書」であり、乙第4号証は、池田てぞろ福祉会の「代表者事項証明書」(乙4)であるところ、これによれば、池田てぞろ福祉会の理事長が乙第1号証の陳述書を書いたことについては認められる。
しかしながら、同人は、前被請求人が開催したとされる乙第2号証及び乙第3号証に記載の子育てワークショップなるものの開催を後援した社会福祉法人の代表者であり、協力者として前被請求人とは同じ立場にあった者というべきであるから、その陳述には証拠としての客観性を認め難いものである。
したがって、乙第1号証及び乙第4号証によっては、乙第2号証及び乙第3号証のチラシが実際に頒布され、「チャイルドスペースジャパン(Child’ Space Japan)」の名称で子育てワークショップが開催されたとは直ちには認め難い。
(2)前被請求人は、乙第5号証ないし乙第10号証を提出し、乙第2号証及び乙第3号証のチラシのとおり、「チャイルドスペースジャパン」の名称で「子育てワークショップ」を開催し、本件商標を使用している旨主張しているが、乙第5号証は、前被請求人が、フェルデンクライス・メソッドと称される学習・教育システムに基づくレッスン・ワークショップ・講座・講演会等の開催をその業務としていることのほかは、当該業務の出所表示として「Feldenkrais WEST JAPAN (又は「フェルデンクライスWest Japan」)」の標章を使用していることを示すにとどまるものであり、また、乙第2号証のチラシが示す説明会に3組の親子が参加したことを示すとして提出された乙第6号証のチャイルドスペースワークショップ名簿は、開催当日の日付の記載を認めることができるものの、例えば、参加者が自署したようなものではなく、前被請求人自身が作成したと思しきものであるから、少なくとも客観性の高い証拠とはいい難い。
乙第7号証の1として提出された乙第6号証の参加者中のY氏による陳述書においては、平成27年(2015年)1月31日における上記説明会への参加とその開催場所、乙第7号証の2のチラシをもって参加を誘った知人である池田てぞろ福祉会に勤務していたとされるI氏等及び上記チラシについて、当時受け取ったものの複写である旨述べられているが、それらが事実であることを客観的に裏付けるものはない。
乙第8号証として提出された池田てぞろ福祉会のホームページには、スタッフ紹介欄に、上記I氏に関する記述があるが、同時に前被請求人の代表者に関する記述もあり、すなわち、乙第7号証の1を陳述をしたY氏は、前被請求人の顧客ないしは生徒(生徒の保護者)ではあるとしても、前被請求人代表者の同僚の知人でもあり、そのような者の陳述のみをもって、乙第2号証のチラシが実際に頒布されたとは認め難いといわざるを得ない。
また、乙第3号証のチラシについては、前被請求人の代表者が作成し、社内のプリンターで印刷の後、前被請求人会社内のレッスン用スタジオに訪れる参加者などに頒布したほか、池田てぞろ福祉会に頒布を依頼したものであるとしても、その頒布や記載に係る説明会の開催の事実を示す客観性のある証拠の提出はない。
乙第2号証及び乙第3号証のチラシには、「チャイルドスペースメソッド説明会」の表示と当該「チャイルドスペースメソッド」についての説明があるが、「チャイルドスペースメソッド」の文字は、請求人が創始した子育てに関わる学習、教育の手法をいうものである(甲3)。
乙第10号証の1のN氏の発信メールにおける「チャイルドスペースのレッスン」なる表示については、上記の子育てに関わる学習、教育手法のレッスンのことが表現されたと認めるのが相当であり、ほかに「チャイルドスペースジャパン」なる組織ないしは団体等が存在することをうかがわせる記載はなく、「フェルデンクライスWEST JAPAN」並びに前被請求人代表者の氏名のみの記載がある一方で、乙第9号証の上記N氏による陳述書には「チャイルドスペースジャパン主催の~」なる記載があることに照らせば、同号証についてはその信ぴょう性について疑わしいものといわざるを得ない。
すなわち、乙第9号証の陳述書は、本件審判における答弁ないしは回答のために、上記N氏が前被請求人の要請に応じ陳述したと思しきものであるから、同氏においてチャイルドスペースのレッスンに参加したとの認識はあったとしても、チャイルドスペースジャパンなる組織、団体等が存在し、それが当該レッスンを主催するものであると認識しているかという点については疑問である。
以上のとおり、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、実際に本件商標を要証期間において使用したというのであれば、例えば、印刷物であれば、印刷業者による納品書や証明書等の提出、子育てワークショップなる教育ないしはレッスンの開催事実が存在するのであれば、開催の様子や看板、ポスター等の掲示物を撮影した写真(撮影日、撮影場所、撮影者が明確なもの)、又は参加者によるブログ等を含むインターネット上の記事等、より客観性の高い証拠方法が可能であったと考えられるが、前被請求人の提出に係る乙各号証には、要証期間において明らかに存在したと認められるものがなく、かつ、陳述は全て前被請求人と業務上の協力関係にある者や、前被請求人から指導を受ける立場の者(受講者ないしは生徒)によるものであるから、いずれも客観性に乏しく、かつ信ぴょう性についても疑わしいものといわざるを得ない。
加えて、乙第2号証及び乙第3号証のチラシについては、仮にその表示どおりの内容のものが実際に100枚印刷され、それらが上述のように頒布され、かつ、当該チラシに記載の説明会に少なくとも3組の親子が参加していたとしても、「チャイルドスペースメソッド」と称される教育・レッスン等が、それらの開催前後の要証期間に行われていた事実を確認することはできず、そうとすれば、前被請求人が本件商標を自己の役務の出所表示ないしは識別標識として、反復継続的に使用していたものとは認め難い。
(3)まとめ
したがって、前被請求人による証拠方法をもっては、本件商標が、要証期間に、我が国において、商標権者又は使用権者のいずれかにより、その指定役務のうちのいずれかの役務について使用されていたものとは認めることができない。
3 上申書(平成31年4月8日付け)における主張
(1)前被請求人は、第1回口頭審理の証人及び同人が理事長を務める池田てぞろ福祉会住吉作業所に対し、本件商標を使用許諾している旨主張し、また、証人は、上記口頭審理において、池田てぞろ福祉会住吉作業所において行われている作業並びにその使用名称に関する尋問に対し、「~リハビリテーションのときに、チャイルドスペースジャパンという名前でリハビリテーションを行なっている。」旨陳述したほか、使用態様に関する尋問に対し、「私のところはチャイルドスペースジャパンという片仮名で使っている。」旨陳述し、更に、同福祉法人の営業に係る「テゾリーナ」なる施設に関する尋問に対しては、「テゾリーナというのは療育施設で、~中略~療育の一環として、チャイルドスペースジャパンを使っている。」旨陳述した。
(2)しかしながら、前被請求人は、証人又は池田てぞろ福祉会による本件商標の使用事実について、答弁書及び回答書のいずれにおいても立証しておらず、上記(1)の主張及び陳述のみをもって、本件商標が、その指定役務について、要証期間に使用権者により使用されていたとは認めることができない。
さらに、証人又は池田てぞろ福祉会が「チャイルドスペースジャパン」の文字を使用していると称する役務は「リハビリテーション」であって、本件商標の指定役務とは無関係の役務であるから、使用許諾の有無に関わらず、証人又は池田てぞろ福祉会による使用の立証に何ら資するものではない。
しかも、証人が本件商標の使用権者であるとすると、証人と前被請求人は本件審判の結果について共通の利害を有する者といわなければないことから、乙第2号証及び乙第3号証のチラシの頒布事実に関する乙第1号証の陳述書、その他、証人の陳述には信ぴょう性を認め難く、証拠としての客観性を欠くものといわざるを得ない。
(3)まとめ
したがって、口頭審理を経てもなお、本件商標の使用事実について明らかになったとは認められない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証(枝番号を含む。)及び参考資料1ないし参考資料5を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標の使用事実の要点
本件商標の権利者(前被請求人)は、要証期間に、我が国において、本件審判の請求に係る指定役務中、「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナー・講習会の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供」について、本件商標を使用している。
(2)証拠の説明
ア 乙第1号証は、前被請求人が、池田てぞろ福祉会の運営する住吉作業所において、「チャイルドスペースジャパン」の名称で「子育てワークショップ」を開催した旨を内容とする「陳述書」である。
イ 乙第2号証は、配布された印刷物であり、乙第1号証を証明するためのものである。
ウ 乙第3号証は、配布された印刷物であり、乙第1号証を証明するためのものである。
エ 乙第4号証は、乙第1号証「陳述書」の陳述者である池田てぞろ福祉会理事長の代表者事項証明書である。
(3)使用の事実について
ア 乙第1号証ないし乙第3号証は、平成27年(2015年)1月31日と平成28年(2016年)6月4日の2回にわたって、前被請求人が、本件商標と社会通念上同一と認められる「チャイルドスペースジャパン」「Child’SpaceJapan」の名称を「子育てワークショップ」に使用した事実を証明するものである。なお、乙第1号証の陳述者は、乙第4号証にあるとおり、池田てぞろ福祉会の理事長である。
イ 使用役務について
乙第1号証の陳述書に添付の乙第2号証及び乙第3号証によれば、「子育てワークショップ」では「赤ちゃんの様々な必要に応じて効果的なスキルを駆使し問題に対処する方法を学びます」とある。また、乙第3号証には「育児を科学する新しい子育てワークショップ(体験学習)」とあることから、前被請求人が提供するサービスは「ワークショップの開催」であると同時に「子育てに関する知識の教授」であり、本件商標の指定役務中、「技芸・スポーツ又は知識の教授」及び「セミナー・講習会の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供」の範疇に属するものである。
ウ 使用商標について
本件商標は、片仮名「チャイルドスペースジャパン」と欧文字「Child’SpaceJapan」を二段に併記してなるものであり、その構成文字に相応して「チャイルドスペースジャパン」の称呼が生じ、また、当該構成文字は一般の辞書に掲載されるような成語ではないものの、「日本における子供の空間」ほどの漠然とした観念を生じるものである。
一方、乙第2号証及び乙第3号証の「子育てワークショップ」のチラシには、片仮名の「チャイルドスペースジャパン」と、欧文字「Child’SpaceJapan」がそれぞれ使用されている。
使用商標である「チャイルドスペースジャパン」及び「Child’SpaceJapan」の文字部分からは、共に「チャイルドスペースジャパン」の称呼が生じ、「日本における子供の空間」程の漠然とした観念を生じる。そうすると、本件商標と使用商標とは、その称呼及び観念を共通にするものであるから、両者は社会通念上同一の商標といえる。
エ 使用時期について
前被請求人が「子育てワークショップ」を開催したのは、平成27年(2015年)1月31日及び平成28年(2016年)6月4日であり、いずれも、要証期間である。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、要証期間に日本国内において前被請求人により、指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナー・講習会の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供」について使用されていたことが明らかである。
2 回答書における主張
(1)前被請求人は、乙第2号証及び乙第3号証のチラシにあるとおり、「チャイルドスペースジャパン」の名称で「子育てワークショップ」を開催し、本件商標を使用していることから、そのことを証明すべく、前被請求人のホームページ(乙5)、平成27年(2015年)1月31日付けで「チャイルドスペースジャパン」の名称で開催した「子育てワークショップ」の参加者名簿(乙6)、当該参加者のうちY氏の陳述書(乙7の1)及び同氏が受け取ったチラシ(写し)(乙7の2)を提出する。
(2)前被請求人のホームページ(乙5)によれば、前被請求人は、フェルデンクライス・メソッドという、様々な身体の動きを通じて脳を活性化し、その人の持つ潜在的な能力を引き出す学習と教育のシステムに基づいて、身体の動かし方のレッスンや、ワークショップ・講座・講演会を行っている会社である。
フェルデンクライス・メソッドは、子供の健やかな発達にも効果が期待できるため、前被請求人は子供を対象としたレッスンを定期的に行うほか、子育てワークショップも開催しているところ、前被請求人が子供を対象としたレッスンを定期的に行っていることは、乙第9号証のN氏の陳述書により明らかである。
乙第9号証によれば、N氏は平成25年(2013年)7月20日から現在まで、前被請求人が自身の会社にあるレッスン用のスタジオにおいて開催している子供の体の動かし方や遊びを通じて親子で学ぶという内容のレッスンに毎月1回参加しており、N氏が平成25年(2013年)7月20日からレッスンに参加していることは、前被請求人の代表者との電子メール(乙10)において、参加する日時の相談をしていることからも明らかである。
(3)上記のとおり、前被請求人は、通常、自身の会社にあるレッスン用のスタジオにおいて子供を対象としたレッスンやワークショップを行っているが、会社以外の会場でワークショップを開催することもあり、池田てぞろ福祉会の住吉作業所では、前被請求人が主催する子育てワークショップを平成27年(2015年)1月31日と平成28年(2016年)6月4日の2回開催しており、平成27年(2015年)1月31日付の参加者名簿(乙6)によれば、前者のワークショップには3組の親子が参加している。
そのうちの1人であるY氏の陳述書(乙7の1)によれば、 ア 平成27年(2015年)1月31日付のチャイルドスペースジャパンのワークショップに参加したこと、 イ 開催場所は、池田てぞろ福祉会の住吉作業所であったこと、 ウ チラシは、池田てぞろ福祉会で働いていたI氏から渡されたこと、 エ ワークショップでは、育児についての話のあと、子供の体の動かし方などについて教わったことなどが陳述されている。また、Y氏が受け取ったとしている、陳述書に添付のチラシ(写し)(乙7の2)は、乙第2号証のチラシと同一のものであり、当該チラシを渡した「I氏」とは、乙第6号証の参加者名簿に記載のあるI氏であり、池田てぞろ福祉会のホームページ中、「スタッフご紹介」ページにもその名が掲載されている(乙8)。
そして、チラシ(乙2、乙7の2)は、前被請求人の代表者がデザインし、社内プリンターで100枚印刷したものであり、ワークショップ開催の1か月ほど前の平成27年(2015年)1月初め頃から、前被請求人の会社において、レッスン等に訪れる参加者などに頒布し、また、ワークショップの開催場所である池田てぞろ福祉会にも当該チラシの頒布を依頼しており、Y氏の陳述(乙7の1)からすると、当該チラシは、少なくとも平成27年(2015年)1月31日より前に頒布されていたということができる。
また、乙第3号証のチラシも乙第2号証のチラシ同様、前被請求人の代表者がデザインし、社内プリンターで印刷したものであり、平成28年5月初め頃から、前被請求人の会社において頒布され、池田てぞろ福祉会にも頒布を依頼した。
以上より、本件商標の使用時期については、前被請求人は、平成27年(2015年)1月31日に、池田てぞろ福祉会において子育てワークショップを開催し、その宣伝広告をチラシ(乙2、乙7の2)によって行っており、当該ワークショップの参加者であるY氏の陳述書(乙7の1)によれば、チラシを受け取ったのはワークショップ開催前であるから、チラシ(乙2、乙7の2)は、少なくとも平成27年1月31日より前には頒布されていたと推認されるところ、当該期間は要証期間と認められる。
次に、使用商標、使用役務についてみるに、チラシ(乙2、乙7の2)にある「子育てワークショップ」とは、「赤ちゃんの様々な必要に応じて効果的なスキルを駆使し問題に対処する方法を学びます」と記載されており、また、実際にワークショップに参加したY氏の陳述書(乙7の1)には、「講師の先生から、育児についての話を聞かせてもらいながら、実際に子どもの身体に触れてもらい子供の身体の動かし方などについて教えていただきました。」とあることから、当日行われていた役務は、「ワークショップの開催」であると同時に「子育てに関する知識の教授」であるといえ、本件審判の請求に係る指定役務中、「技芸・スポーツ又は知識の教授」及び「セミナー・講習会の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供」に含まれる役務である。
また、チラシ(乙2、乙7の2)の下部には、「チャイルドスペースジャパン」及び「Child’ Space japan」の文字からなる使用商標の表示があり、これは、本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものである。
上記のとおり、前被請求人は、要証期間にその請求に係る指定役務中、「技芸・スポーツ又は知識の教授」及び「セミナー・講習会の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供」の範ちゅうに含まれる「子育てワークショップ」に係るチラシに、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布したと推認することができる。
そして、上記使用行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「役務に関する広告に標章を付して頒布する行為」に該当するものと認められる。
したがって、前被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を要証期間である平成27年(2015年)1月頃に本件審判の請求に係る指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授」及び「セミナー・講習会の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供」について使用したというのが相当である。
3 上申書(平成31年3月19日付け、令和元年5月9日付け)における主張
(1)池田てぞろ福祉会に対する使用許諾について
本件商標が登録された日以降に、前被請求人が池田てぞろ福祉会住吉作業所及び同会の代表者に対し、口頭において本件商標の使用を許諾した。
(2)証人の証言の信ぴょう性について
前被請求人の代表者と池田てぞろ福祉会の代表者である証人とは、法人を異にしているばかりでなく、それぞれの社会的地位及び役割が異なっており、それぞれの立場において経済的社会的活動を行っているのであって、たとえ利害が共通する部分があったとしても、その事実をもって宣誓した証人の証言に信ぴょう性がないというのは失当である。
(3)「リハビリテーション」の語について
証人尋問の証言中に「リハビリテーション」の語が出てくるが、これは本件商標の指定役務と関係はない。
「リハビリテーション」の語は、障害者が保護者と協力することによって社会復帰を求めた訓練の意味があり、それは広い意味での「教育」であるから、証人はその意味で発言したと思われる(参考資料1~参考資料5)。また、実際に池田てぞろ福祉会では障害者とその母親が協力して社会復帰するための訓練や教育を受けているのであるから、これは、第41類に含まれる「教育」の役務である。
第4 証拠調べ(証人尋問)
当審は、平成31年3月15日に、特許庁審判廷において、両当事者出頭のもとに、口頭審理及び証拠調べ(証人尋問)を行った。
第5 当審の判断
1 事実認定
被請求人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)乙第1号証は、池田てぞろ福祉会の理事長の陳述書(以下「池田てぞろ福祉会の理事長陳述書」という。)であるところ、これには、「平成29年6月7日」の記載、「〒563-0025 池田市城南3丁目4番8号 社会福祉法人池田てぞろ福祉会 理事長 K」の記載があり、平成27年(2015年)1月31日に前商標権者が「チャイルド スペース ジャパン」の名称で子育てワークショップを上記福祉会の住吉作業所で開催したこと、その後援として、添付資料1(乙2)を関係者に配布したこと、及び平成28年(2016年)6月4日に前商標権者が「チャイルド スペース ジャパン」の名称で子育てワークショップを池田てぞろ福祉会の放課後デイサービスのテゾリーナで開催したこと、その後援として、添付資料2(乙3)を関係者に配布したことなどが述べられている。
(2)乙第2号証(乙第1号証の添付資料1)は、「育児を科学する新しい子育てワークショップ! フェルデンクライス アシスタント トレーナー 藤井 里佳先生と学ぶ チャイルドスペースメソッド 説明会」を表題とするチラシ(以下「本件チラシ1」という。)であるところ、これには、「2015年1月31日(土) 時間:10:00~12:00」、「【会場】社会福祉法人池田てぞろ福祉会 住吉作業所」及びその住所、「【参加費】¥500」の記載があり、下部には、「チャイルド スペース ジャパン(R) Child’ Space Japan(R)」((R)はRの文字を○で囲んだもの。以下同じ。「(R)」の表示は、登録商標であることを表すにすぎないから、これを除いた「チャイルド スペース ジャパン」及び「Child’ Space Japan」の文字を、以下「使用商標」という。)の記載、「チャイルド スペース ジャパン 新大阪オフィス」及び住所、電話番号、E-mailアドレス等並びに「チャイルド スペース ジャパン(R) (株式会社日本ソマティックライフ)」、「後援:社会福祉法人池田てぞろ福祉会 住吉作業所」の記載がある。
また、本件チラシ1には、「赤ちゃんの様々な必要に応じて効果的なスキルを駆使し問題に対処する方法を学びます」の記載があり、9種類の事例が挙げられている。
(3)乙第3号証(乙第1号証の添付資料2)は、「育児を科学する新しい子育てワークショップ(体験学習) チャイルドスペースメソッド説明会」を表題とするチラシ(以下「本件チラシ2」といい、「本件チラシ1」とまとめていうときは、「本件チラシ」という。)であるところ、これには、「【会場】社会福祉法人池田てぞろ福祉会 放課後デイサービス テゾリーナ」及びその住所、「【日時】2016年6月4日(土) 時間:10:00~11:30」、「【参加費】500円」の記載があり、下部には、「主催:チャイルド スペース ジャパン(R) Child’ Space Japan(R)」(使用商標)の記載、「新大阪オフィス」及び住所、電話番号、E-mailアドレス等並びに「チャイルド スペース ジャパン(R)(株式会社日本ソマティックライフ)」、「後援:社会福祉法人池田てぞろ福祉会 住吉作業所 放課後デイサービス テゾリーナ」の記載がある。
また、本件チラシ2には、「赤ちゃんの様々な必要に応じて効果的なスキルを駆使し問題に対処する方法を学びます。」の記載があり、9種類の事例が挙げられている。
(4)乙第4号証は、池田てぞろ福祉会理事長の代表者事項証明書(以下「代表者事項証明書」という。)であるところ、これには、「名称」として「社会福祉法人池田てぞろ福祉会」の記載、「主たる事務所」として「大阪府池田市城南三丁目4番8号」の記載、「代表者の資格、氏名及び住所」として、「理事長 K」及び住所の記載がある。
(5)乙第6号証は、平成27年(2015年)1月31日に開催されたワークショップの参加者名簿とされるものであり、「チャイルドスペースワークショップ名簿」及び「2015/1/31」の記載、並びにI氏、Y氏等3組の親子の名前等が記載されている。
(6)乙第7号証の1は、「平成29年11月5日」付けの乙第6号証に記載されている参加者Y氏の陳述書(以下「Y氏陳述書」という。)であるところ、これには、平成27年(2015年)1月31日に池田てぞろ福祉会住吉作業所で行われたワークショップに参加したこと、池田てぞろ福祉会で働いていたI氏からチラシをもらったことなどが述べられており、また、「講師の先生から、育児についての話を聞かせてもらいながら、実際に子どもの身体に触れてもらい子供の身体の動かし方などについて教えていただきました。」の記載がある。さらに、本件チラシ1と同内容のチラシの写し(乙7の2)が添付されている。
(7)証拠調べ(証人尋問)について
証人(池田てぞろ福祉会理事長)は、「本件チラシは、平成26年(2014年)12月頃に作成されたものである。本件チラシは、いずれも、前被請求人代表者が作成したものであり、それぞれ、約50部預かった。」「本件チラシに記載の平成27年1月31日及び同28年6月4日以外に、池田てぞろ福祉会ではワークショップは行われていない。」旨述べた。また、「証人の施設にも本件チラシを保存しており、随時、利用者に配布したことがある。」旨述べ、その後、請求人代理人の「現在も保存しているのか?」という質問に対し、「今はない、もうかなり前なのであるかどうかもわからない。」旨述べた。
2 判断
上記1で認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標
本件チラシに記載された使用商標は、別掲のとおり、「チャイルド スペース ジャパン」の片仮名を青色のゴシック体で、「Child’ Space Japan」の欧文字を大文字の「C」、「S」及び「J」を赤色で、それ以外の文字を黒色のセリフ体でそれぞれ書したものをスペースを介して横一列に配してなる商標であるのに対し、本件商標は、「Child’Space Japan」の欧文字及び「チャイルドスペースジャパン」の片仮名をゴシック体で書したものを上下二段に配した商標であるから、本件商標と使用商標とは、文字の色彩、書体、スペースの有無及び文字の配置の仕方に差異を有するものの、双方とも一般的な書体で、かつ同一の文字構成からなり、また、スペースの有無等の差異によって別異の称呼及び観念が生じるものでもないことから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
(2)使用役務
前被請求人は、本件商標を「ワークショップの開催」と同時に「子育てに関する知識の教授」に使用していると主張するところ、本件チラシ1には、「育児を科学する新しい子育てワークショップ!」の記載、「チャイルドスペースメソッド 説明会」の記載及び「赤ちゃんの様々な必要に応じて効果的なスキルを駆使し問題に対処する方法を学びます」の記載が、また、本件チラシ2には、「育児を科学する新しい子育てワークショップ(体験学習)」の記載、「チャイルドスペースメソッド説明会」の記載及び「赤ちゃんの様々な必要に応じて効果的なスキルを駆使し問題に対処する方法を学びます」の記載が、さらに、Y氏陳述書には、「講師の先生から、育児についての話を聞かせてもらいながら、実際に子どもの身体に触れてもらい子供の身体の動かし方などについて教えていただきました。」の記載があることから、本件商標の使用に係る役務は、「ワークショップの開催」及び「子育てに関する知識の教授」(以下「使用役務」という。)と認められる。そして、当該役務は、請求に係る指定役務中、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナー・講習会の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供」の範疇に含まれるものである。
(3)使用時期及び使用場所
ア 池田てぞろ福祉会の理事長陳述書(乙1)の陳述者は、代表者事項証明書(乙4)の記載から、前被請求人の後援者である池田てぞろ福祉会の理事長K氏であると認められる。
イ 本件チラシ1及び本件チラシ2は、平成26年(2014年)12月頃に前商標権者代表者により作成され、池田てぞろ福祉会が、それぞれ約50部預かり、施設の利用者に配布されたことが認められる(乙1、乙2、乙3 証拠調べ(証人尋問))。
ウ 平成27年(2015年)1月31日に池田てぞろ福祉会住吉作業所において、前被請求人主催の子育てワークショップが開催され、そこに、上記イにより本件チラシ1を入手したY氏が参加したことが認められる(乙1、乙2、乙6、乙7の1、乙7の2)。
以上のとおり、使用時期については、前商標権者が本件チラシを作成した平成26年(2014年)12月頃から、遅くとも上記ワークショップが開催された同27年(2015年)1月31日までの期間であることが推認でき、この期間は要証期間である。
また、使用場所については、池田てぞろ福祉会住吉作業所及び同会放課後デイサービス テゾリーナの所在地である大阪府である。
(4)使用者
本件チラシには、前商標権者の名称及び居所と認められる「株式会社日本ソマティックライフ」及び「〒532-0003 大阪市淀川区宮原4-5-22-1103」の記載があることから、前商標権者が本件商標の使用者である(乙2、乙3)。
(5)使用行為
上記(3)のとおり、本件チラシは、前商標権者により作成され、池田てぞろ福祉会により配布されたことが認められ、当該配布は、使用役務の広告の頒布であるといえるので、当該使用役務の広告における使用商標の使用は、「使用役務に関する広告に標章を付して頒布する行為」(商標法第2条第3項第8号)が行われたものと認められる。
(6)小括
上記(1)ないし(5)で判断したとおり、本件商標の商標権者(前商標権者。以下「本件商標権者」という。)は、要証期間に日本国内において、請求に係る指定役務中、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナー・講習会の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供」の範疇に属する「ワークショップの開催」及び「子育てに関する知識の教授」に関するチラシ(広告)に本件商標と社会通念上同一の商標を付して頒布する行為(商標法第2条第3項第8号)をしていたものと認められる。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件商標権者が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件審判の請求に係る指定役務中の「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナー・講習会の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供」の範疇に属する「ワークショップの開催」及び「子育てに関する知識の教授」について本件商標を使用をしていたことを証明したといえる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-300297