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特許拒絶査定不服審判

2017-018872

原子炉部品をコロイド溶液で被覆する方法

審判番号
2017-018872
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-129369
請求日
2017年12月20日
審決日
2019年04月03日
公報発行日
2019年10月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】グローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ・エルエルシー
  • 【請求人代理人】荒川 聡志
  • 【請求人代理人】小倉 博
  • 【請求人代理人】黒川 俊久
  • 【請求人代理人】田中 拓人
審判長/審判官
  • 審判長 森 竜介
  • 審判官 西村 直史
  • 審判官 野村 伸雄
分類
P18 .121-WZ (G21D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-129369「原子炉部品をコロイド溶液で被覆する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月28日出願公開、特開2016- 14663〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成27年6月29日の出願(パリ条約による優先権主張 2014年(平成26年)7月3日、米国)であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 1月13日付け:拒絶理由通知 平成29年 4月11日  :意見書、手続補正書の提出 平成29年 8月30日付け:拒絶査定(同年9月5日送達) 平成29年12月20日  :審判請求書、手続補正書の提出 平成30年 9月20日付け:拒絶理由通知 平成30年12月21日  :意見書の提出 平成31年 2月12日  :審判請求人への問い合わせ 平成31年 2月28日  :上記問い合わせに対する回答 第2 本願発明 平成29年12月20日の手続補正による補正(以下「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 原子炉部品を被覆する方法であって、 前記原子炉部品をコロイド溶液に第1の割合で導入して浸漬部品を得る工程であって、 前記コロイド溶液は分散媒中に分散相を含有する非架橋混合物であり、前記分散相はn型金属酸化物粒子を含有する、工程と、 前記コロイド溶液から前記浸漬部品を第2の割合で取り出して湿潤部品を得る工程と、 前記湿潤部品を乾燥させて乾燥部品を得る工程と、 前記乾燥部品を焼成して被覆部品を得る工程と、 を含み、 前記コロイド溶液が2~3の範囲のpHを有し、 前記n型金属酸化物粒子がZnOを含む、 方法。」 第3 拒絶の理由 平成30年9月20日付けの当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。 この出願の請求項1ないし15に係る発明は、この出願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、この出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.特開2012-255211号公報 2.特開2012-26967号公報 3.特開2002-341086号公報 4.特開2003-232886号公報 5.神谷秀博 外1名,“ナノ粒子の分散挙動制御とその応用”,粉砕,ホソカワミクロン株式会社,2011年12月13日発行,No.55(2012),p.12-18 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 ア「【特許請求の範囲】 【請求項1】 酸化物皮膜の形成方法であって、当該方法が、 チタニア及びジルコニアの一方を含むナノ粒子0.5~35重量%を含有する水性コロイド懸濁液を金属表面に堆積させる工程と、 水性コロイド懸濁液を乾燥してグリーン皮膜を形成する工程と、 グリーン皮膜を500℃以下の温度に加熱してグリーン皮膜を緻密化し、金属表面に酸化物皮膜を形成する工程と を含んでおり、もって、酸化物皮膜のゼータ電位を、酸化物皮膜と接触する荷電粒子の電気的極性以下として、金属表面への荷電粒子の付着を最小限にする、方法。 【請求項2】 前記ナノ粒子の直径が200nm以下である、請求項1記載の方法。 【請求項3】 前記水性コロイド懸濁液が、さらに、水中に0.1%~10%の2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(C7H14O5)又はポリフルオロスルホン酸を含有する、請求項1記載の方法。 【請求項4】 前記金属表面を水性コロイド懸濁液中に25~35℃の温度で1分間~120分間浸漬することにより水性コロイド懸濁液を堆積させる、請求項1記載の方法。 【請求項5】 前記金属表面を1.0~10.0cm/分の速度で水性コロイド懸濁液から引き出す、請求項1記載の方法。 【請求項6】 前記水性コロイド懸濁液を25℃~35℃の温度で5分間~60分間風乾する、請求項1記載の方法。 【請求項7】 前記グリーン皮膜を100℃~500℃の温度に30分間~3時間加熱する、請求項1記載の方法。 【請求項8】 前記グリーン皮膜を1.0℃/分~10.0℃/分の速度で加熱する、請求項1記載の方法。」 イ「【0006】 別の態様では、本発明は、上記の方法で形成した皮膜並びにかかる皮膜で保護された部品を提供する。本皮膜は、冷却剤、例えば沸騰水型原子炉に用いる冷却水にしばしば存在する粒子に起因するファウリングから様々な種類の金属表面を保護するのに特に適している。例として、ニッケル基合金、鉄基合金、ステンレス鋼、例えばAISIタイプ304ステンレス鋼で形成した部品などがあり、その具体例としては、沸騰水型原子炉のジェットポンプアセンブリのノズル及びスロート部、インペラー、復水器管、再循環パイプ及び蒸気発生器部材があげられる。」 ウ「【0012】 多種多様な化学形態の「汚損層」、例えばFe2O3、Fe3O4、NiFe2O4、Fe2Cr2O4などがある。原子炉環境で最も重要な放射性種はCo-60であり、これは通常バルク原子炉水中にイオン種として存在する。金属部品の汚損層、即ち酸化物層上にCo-60が付着すると、Co-60は別の汚損/酸化物と反応してCoFe2O4(放射性汚損層)を形成する。他の金属イオン、例えばFe、Ni、Crなどと比べてCoイオンの拡散は速いので、CoはFe、Ni又はCrと容易に置き換わり、CoFe2O4を形成する。TiO2皮膜は化学的に安定であるので、上記化学反応を著しく減少し、CoFe2O4(放射性汚損層)の形成を抑制する。Fe2O3などのいくつかの他の酸化物即ち、汚損層がTiO2皮膜層上に付着することがあるが、速度論的にTiO2と反応することはない。 【0013】 本発明の1つの態様では、表面へのCo-60などの放射性種の蓄積は、対象の部品の表面、例えば放射性種と接触することのある原子炉の部品の金属表面に堆積される皮膜によって軽減することができる。一実施形態では、皮膜は、制御された厚さ及び放射性種、例えば沸騰水型原子炉を通って流れる冷却剤中に通常存在する放射性種の電気的極性とほぼ同等或いはそれより低いゼータ電位をもつ高密度の酸化物皮膜である。皮膜は、チタン酸化物(チタニア;TiO2)及び/又はジルコニウム酸化物(ジルコニア;ZrO2)からなるか少なくとも含有するナノ粒子の水性コロイド懸濁液から堆積するのが好ましい。コロイド懸濁液を被覆する表面に適用し、その後乾燥し、高温で熱処理して密度及び接着強度を増加させる。制御された厚みをもつ高密度の酸化物皮膜を実現するには、この方法の様々な側面、例えばコロイド懸濁液の化学、適用方法、乾燥条件及び熱処理温度が個々に及び/又は組み合わせて重要になると考えられる。以下に、これらの側面を説明する。 【0014】 定義上、コロイドは、第1物質の大きな分子又は超微細粒子が第2物質に分散してなる均質な非結晶性の物質である。コロイドには、ゲル、ゾル及びエマルジョンがあり、粒子は、沈澱せず、また懸濁液中の粒子のように普通の濾過や遠心力では分離することはできない。換言すれば、コロイド懸濁液(コロイド溶液又は単にコロイドともよばれる)は1つの物質が別の物質全体に均一に分散した種類の化学混合物である。分散物質の粒子は、混合物中に懸濁するだけであり、溶液の場合のように溶解しない。コロイド中の分散粒子は、別の物質(例えば、気体、液体又は固体)に均一に分散して均質な外観を維持するのに十分に小さいが、不溶となるのに十分に大きい。本発明では、分散物質は、チタニア及び/又はジルコニアの(又は含有する)ナノ粒子を含み、好ましい分散媒としての水中に分散される。分散ナノ粒子の直径は、好ましくは約200nm以下、さらに好ましくは150nm未満、最も好ましくは2~50nmの範囲である。コロイド懸濁液は、約0.5~約35重量%のナノ粒子、さらに好ましくは約5~約20重量%のナノ粒子を含有することができる。コロイド懸濁液は、好ましくは約0.1%~約10%の2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(C7H14O5)又はポリフルオロスルホン酸も水中に含有する。 【0015】 コロイド懸濁液の堆積は、浸漬、スプレー又は様々な他の方法(キャビティの充填など)によって行うことができるが、浸漬方法は、表面形態及び皮膜厚の制御の面から優れた結果が得られ、通常直進的プロセスにより被覆することが困難な表面の被覆を容易にすることを確かめた。好ましい実施形態では、部品を懸濁液中に、所望の厚さの懸濁液皮膜を蓄積するのに十分な時間浸漬することにより懸濁液を堆積させる。適当な時間は約1~約120分間の範囲である。10cm/分以下の速度、さらに好ましく約1~約5cm/分の速度で懸濁液から部品を引き出すことにより、懸濁液の層を約0.1~約10μm、さらに好ましくは約0.5~約2.0μmの制御された厚みに適用することができる。 【0016】 その後、コロイド懸濁液の層を風乾して部品表面にグリーン皮膜を得る。風乾は、ほぼ室温(約25℃)で約60分間以下、例えば約30秒間~約30分間、さらに好ましくは約1~10分間行うことができる。その後、グリーン皮膜を熱処理して皮膜を緻密化し、完全にセラミック(酸化物)化した皮膜を得る。このために、グリーン皮膜を好ましくは約1.0~10.0℃/分、さらに好ましくは約2~5℃/分の速度で加熱する。熱処理温度は、500℃以下、例えば100~500℃、さらに好ましくは150℃以下、最も好ましくは100~120℃の範囲にすることができる。熱処理温度を約30分間~約3時間、さらに好ましくは約45分間~約1時間維持する。熱処理時、高温でナノ粒子の凝固及び沈積が進行する。」 (2)引用発明 上記アないしウから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「沸騰水型原子炉における、ニッケル基合金、鉄基合金、ステンレス鋼などで形成した部品の金属表面への酸化物皮膜の形成方法であって、 チタニア及びジルコニアの一方を含むナノ粒子0.5~35重量%を含有する水性コロイド懸濁液中に前記金属表面を25~35℃の温度で1分間~120分間浸漬することにより、前記水性コロイド懸濁液を金属表面に堆積させる工程と、 1.0~10.0cm/分の速度で前記金属表面を水性コロイド懸濁液から引き出す工程と、 水性コロイド懸濁液を25℃~35℃の温度で5分間~60分間風乾してグリーン皮膜を形成する工程と、 グリーン皮膜を100℃~500℃の温度で30分間~3時間、1.0℃/分~10.0℃/分の速度で加熱してグリーン皮膜を緻密化し、金属表面に酸化物皮膜を形成する工程とを含み、 前記ナノ粒子の直径が200nm以下であり、 前記水性コロイド懸濁液が、水中に0.1%~10%の2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(C7H14O5)又はポリフルオロスルホン酸を含有する方法。」 第5 対比 請求項1に係る発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 1 引用発明の「チタニア及びジルコニアの一方を含むナノ粒子」、「水性コロイド懸濁液」、「水性コロイド懸濁液を金属表面に堆積させる工程」、「前記金属表面を水性コロイド懸濁液から引き出す工程」、「風乾してグリーン皮膜を形成する工程」及び「加熱してグリーン皮膜を緻密化し、金属表面に酸化物皮膜を形成する工程」は、本願発明の「分散相」又は「n型金属酸化物粒子」、「コロイド溶液」、「浸漬部品を得る工程」、「湿潤部品を得る工程」、「湿潤部品を乾燥させて乾燥部品を得る工程」及び「乾燥部品を焼成して被覆部品を得る工程」にそれぞれ相当する。 2 本願発明は「原子炉部品を被覆する方法」であり、引用発明は「沸騰水型原子炉における、ニッケル基合金、鉄基合金、ステンレス鋼で形成した部品などの金属表面への酸化物皮膜の形成方法」であるので、本願発明と引用発明とは共に「原子炉部品を被覆する方法」である。 3 引用発明の「水性コロイド懸濁液」は、「チタニア及びジルコニアの一方を含むナノ粒子」を含有し、「水中に0.1%~10%の2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(C7H14O5)又はポリフルオロスルホン酸を含有する」ものであって、架橋しているものではないから、引用発明の「水性コロイド懸濁液」と本願発明の「コロイド溶液」とは、「分散媒中に分散相を含有する非架橋混合物であり、前記分散相はn型金属酸化物粒子を含有する」点で一致する。 4 本願発明の「割合」とは、本願の請求項9及び段落0018の記載によれば、「速度」を意味する。そうすると、引用発明の「1.0~10.0cm/分の速度」は、本願の「第2の割合」に相当する。 5 したがって、本願発明と引用発明との間には、以下の一致点及び相違点がある。 ・一致点 「原子炉部品を被覆する方法であって、 前記原子炉部品をコロイド溶液に導入して浸漬部品を得る工程であって、 前記コロイド溶液は分散媒中に分散相を含有する非架橋混合物であり、前記分散相はn型金属酸化物粒子を含有する、工程と、 前記コロイド溶液から前記浸漬部品を第2の割合で取り出して湿潤部品を得る工程と、 前記湿潤部品を乾燥させて乾燥部品を得る工程と、 前記乾燥部品を焼成して被覆部品を得る工程と、 を含む、 方法。」 ・相違点1 n型金属酸化物粒子を含有するコロイド溶液が、本願発明では「ZnO」を含むものであって、「2~3の範囲のpHを有」するのに対し、引用発明では「チタニア及びジルコニアの一方」を含むものであって、pHの範囲は不明である点。 ・相違点2 原子炉部品のコロイド溶液への導入が、本願発明では「第1の割合」で行われるのに対し、引用発明ではそのようなことが不明である点。 第6 判断 上記相違点について判断する。 1 相違点1について 腐食防止のために原子炉の部材をTiO2(チタニア)、ZrO2(ジルコニア)またはZnOなどの金属酸化物で被覆する技術は、例えば、引用文献2(特許請求の範囲、段落0016ないし0019を参照。)、引用文献3(特許請求の範囲、段落0030ないし0031を参照。)及び引用文献4(特許請求の範囲)に記載されているように、本願の優先日前に周知である。 他方、安定化した金属酸化物のコロイド溶液を得る際に、金属酸化物の等電点のpHよりも水溶液のpHを酸またはアルカリ側にシフトさせることは、例えば、引用文献5の13ページ右欄下から8行~14ページ右欄7行、図3に記載されているように、本願の優先日前に技術常識であるといえる。 そして、引用発明においては、主にCoによる腐食防止の観点から、ゼータ電位を考慮して、チタニアまたはジルコニアによる被覆としたものであるが(引用文献1の段落0012、段落0013を参照。)、原子炉部品の腐食防止のために、どのような材料による被覆を施すかは原因等を考慮して当業者が適宜決定し得ることであること、TiO2(チタニア)、ZrO2(ジルコニア)及びZnOによる被覆がいずれも周知であることを考慮すれば、引用発明を、上記周知技術のようなのZnOによる原子炉部品を被覆する方法となすことは、当業者であれば容易になし得ることである。 また、上記技術常識を踏まえると、ZnOの安定したコロイド溶液を得るために、ZnOに適したpHに調整する必要があることは、当業者であれば容易に理解し得ることであって、また、発明の詳細な説明を参酌しても、pHの上限及び下限の数値に臨界的意義を認めることもできないから、ZnOを含むコロイド溶液のpHの数値範囲を2~3とすることは、当業者が適宜決定し得る設計的事項である。 2 相違点2について 前記上記第5の4のとおり、本願発明における「割合」とは「速度」を意味するところ、一定の品質の浸漬部品を得るために、所定の速度で、原子炉部品をコロイド溶液に導入するようになすことは、当業者であれば適宜なし得ることである。 したがって、引用発明において、原子炉部品のコロイド溶液への導入を「第1の割合」で行うようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。 よって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである。また、本願発明の作用効果についても、引用発明及び上記周知技術から、当業者が予測し得るものである。 3 本願発明の作用効果について 上記相違点1及び2を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 また、本願発明の「前記コロイド溶液が2~3の範囲のpHを有し、前記n型金属酸化物粒子が、ZnOを含む」ことの作用効果について、下記4のとおり、審判請求人に対して説明を求めたが、回答がなかった。 4 審判請求人の主張について 審判請求人は、平成30年12月21日の意見書において、概ね以下のようなことを主張している。 ア 本願発明の特徴は、「前記コロイド溶液が2~3の範囲のpHを有し、前記n型金属酸化物粒子が、ZnOを含む」ことであり、引用文献1~5には、かかる特徴について何ら記載がなく、また示唆するものでもない。 この点、引用文献5には、水溶液のpHを等電点のpHより酸、アルカリ側にシフトさせることが記載されているが、ZnOの等電点はpH9~10であることを鑑みると、かかるpHの範囲を避けるために強酸のpH2~3に設定することは当業者が適宜決定し得る設計的事項の範囲を超えるものであることは明らかである。 イ 上記主張について、「前記コロイド溶液が2~3の範囲のpHを有し、前記n型金属酸化物粒子が、ZnOを含む」ことの作用効果または技術上の意義について、上記意見書には記載されておらず、また明細書の発明の詳細な説明等にも記載されておらず、技術常識を踏まえてもからも明らかでないため、これについて、合議体は審判請求人に対して、平成31年2月12日に電話にて検討、説明を依頼した。その後、同年2月28日になって、上記作用効果及び技術上の意義について説明ができないとの回答があった。 ウ そうすると、出願人の上記主張には理由がなく、発明の詳細な説明や技術常識を参酌しても、「前記コロイド溶液が2~3の範囲のpHを有し、前記n型金属酸化物粒子が、ZnOを含む」ことに特段の作用効果や技術上の意義を認めることができないから、上記1で検討したように、相違点1に係る発明特定事項は、当業者が適宜決定し得る設計的事項である。 したがって、審判請求人の上記主張を採用することができない。 5 小括 よって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。

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